説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】NOxトラップ触媒を備えた排気浄化装置において、S脱離処理時におけるH2S濃度を低減させ、臭気を抑制することができるようにする。
【解決手段】内燃機関1の排気通路13に設けられ、排気の空燃比がリーンである酸化雰囲気において排気中の窒素酸化物及び硫黄成分を吸着するNOxトラップ触媒23と、空燃比がリッチである還元雰囲気においてNOxトラップ触媒23に吸着された硫黄成分をNOxトラップ触媒23から脱離させるS脱離処理を実行するS脱離処理実行手段35とを備え、S脱離処理実行手段35は、S脱離処理の実行中に所定の制限条件が成立したらNOxトラップ触媒23から硫黄成分が脱離する領域を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気に含まれる窒素酸化物を吸着して排気を浄化するNOxトラップ触媒を備えた排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の排気に含まれる窒素酸化物(以下、NOxという)を浄化するための触媒として、NOxトラップ触媒(吸蔵型NOx触媒、吸蔵還元型NOx触媒とも呼ばれる)を備えた排気浄化装置が知られている。このNOxトラップ触媒は、酸素過剰な雰囲気(酸化雰囲気又はリーンともいう)においてNOxを硝酸塩として触媒の担体表面上に吸着し、酸素濃度が低い雰囲気(還元雰囲気又はリッチともいう)において吸着したNOxを放出して還元する機能を有する。
【0003】
NOxトラップ触媒を備えた排気浄化装置は、NOxトラップ触媒に吸着されたNOxの量(以下、NOx吸着量という)が飽和状態に近づくと、NOxトラップ触媒の周辺雰囲気をリッチにして、NOxトラップ触媒に燃料等の不完全燃焼により生じる一酸化炭素(CO)等の還元剤を供給し、NOxトラップ触媒に吸着された硝酸塩と排気中のCO等の還元剤とを反応させる。これにより、NOxトラップ触媒からNOxを放出させるとともに、放出されたNOxを還元して無害な窒素(N2)にした上で大気中に排出する。
【0004】
ところで、NOxトラップ触媒は、一般に排気中に含まれている硫黄成分(サルファ,以下、単にSとも表現する)も吸着する性質を有している。NOxトラップ触媒に吸着された硫黄成分は硝酸塩よりも化学的安定性が高いため、NOxトラップ触媒からNOxを放出させるためにNOxトラップ触媒の周辺雰囲気をリッチにしたとしても、僅かな量しか放出されない。そのため、NOxトラップ触媒に残留する硫黄成分は時間とともに増加してしまい、NOxトラップ触媒の本来の機能であるNOxを吸着するという能力(性能)が低下してしまう。
【0005】
したがって、NOxトラップ触媒の本来の機能を低下させないために、NOxトラップ触媒に吸着された硫黄成分を定期的に放出する、いわゆるS脱離処理(以下、Sパージともいう)を実行する技術が知られている。例えば特許文献1の排気浄化装置では、内燃機関の膨張行程に追加燃料を噴射するなどして、NOx触媒を昇温させて高温にするとともに、大量のCOを還元剤としてNOx触媒に供給する。これにより、NOx触媒に吸着された硫黄成分とCOとを反応させて、NOx触媒から硫黄成分を放出させる制御(Sパージ運転)を行っている。
【0006】
ところで、Sパージを実施するには、NOxの放出処理時よりもNOxトラップ触媒を高温にする必要があり、これに対処すべくNOxの放出処理よりも多くの燃料を噴射させる(すなわち、空燃比をよりリッチにさせる)必要があるため、燃費の悪化が懸念される。そのため、NOxトラップ触媒に吸着された硫黄成分を素早く放出して燃費悪化を抑制することが好ましい。この硫黄成分の放出速度(以下、S放出速度という)を向上させるためには、少なくともNOxトラップ触媒の下流側の空燃比を定常的にリッチにしておくことが望まれている。
【0007】
また、S放出速度は、NOxトラップ触媒に吸着されている硫黄成分の量が多いSパージ開始時は速く、Sパージが進行して吸着された硫黄成分の量が少なくなるほど遅くなることが知られている。このS放出速度を向上させる技術として、例えば特許文献2には、SOx被毒回復制御(Sパージ運転)中において、吸蔵還元型NOx触媒から放出されるSOxの放出速度の低下度合いを推定し、低下度合いが大きくなるに従ってNOx触媒をより高温側の目標温度まで昇温させる排気浄化システムが開示されている。このシステムによれば、SOx放出速度の低下度合いが増大しても、触媒床温をより高温側の目標温度まで上昇させることによってNOx触媒におけるSOxの還元反応を高め、SOxの離脱速度(すなわちS放出速度)が低下することを抑制し、短期間でSOx被毒回復制御が完了できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−229864号公報
【特許文献2】特開2009−68481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、NOxトラップ触媒の下流側の空燃比を定常的にリッチとすると、NOxトラップ触媒から放出される硫黄成分の大部分は硫化水素(H2S)として大気中に放出されることになる。このH2Sは、健康に直接影響を与えない僅かな量(レベル)であっても、人間の敏感な嗅覚ではH2S独特の臭気を感じ取ることがある。そのため、放出されるH2Sの量(すなわち、H2S濃度)はできるだけ抑えることが望まれている。
【0010】
本件はこのような課題に鑑み案出されたもので、NOxトラップ触媒を備えた排気浄化装置において、S脱離処理時におけるH2S濃度を低減させ、臭気を抑制することができるようにした、内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的の一つとする。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)ここで開示する内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に設けられ、排気の空燃比がリーンである酸化雰囲気において前記排気中の窒素酸化物及び硫黄成分を吸着するNOxトラップ触媒と、前記空燃比がリッチである還元雰囲気において前記NOxトラップ触媒に吸着された前記硫黄成分を前記NOxトラップ触媒から脱離させるS脱離処理を実行するS脱離処理実行手段とを備え、前記S脱離処理実行手段は、前記S脱離処理の実行中に所定の制限条件が成立したら前記硫黄成分が脱離する前記NOxトラップ触媒の領域を制限することを特徴としている。なお、ここでいう領域とは空間的な領域を意味する。
【0012】
(2)前記NOxトラップ触媒に吸着された前記硫黄成分の量を推定する吸着S量推定手段と、前記吸着S量推定手段により推定した前記硫黄成分の量に基づいて前記NOxトラップ触媒から前記硫黄成分が脱離されるときの放出速度を推定するS放出速度推定手段と、前記S放出速度推定手段により推定された前記放出速度が所定速度以上の場合に、前記制限条件が成立したと判定する判定手段とを備えることが好ましい。
【0013】
(3)前記S脱離処理実行手段は、前記領域が制限されているときに所定の制限解除条件が成立したら前記領域の制限を解除してS脱離処理を実行することが好ましい。
(4)前記判定手段は、前記S放出速度推定手段により推定された前記放出速度が所定速度未満の場合に前記制限解除条件が成立したと判定することが好ましい。
【0014】
(5)前記NOxトラップ触媒に流入する排気の空燃比を制御する空燃比制御手段を備え、前記空燃比制御手段は、前記空燃比が理論空燃比よりもリッチであるリッチ継続時間と前記空燃比が理論空燃比よりもリーンであるリーン継続時間とを周期的に繰り返すように前記空燃比を制御し、前記S脱離処理実行手段は、前記空燃比制御手段による前記空燃比制御によって、前記NOxトラップ触媒のうち排気上流側となる前方温度と排気下流側となる後方温度とを前記NOxトラップ触媒から前記硫黄成分が脱離し始める温度であるS脱離開始温度を挟んで上下に前記周期的に変化させ、前記前方温度と前記後方温度とを所定の位相のずれを持ってスイングさせることにより、前記硫黄成分が脱離する前記領域を制限することが好ましい。
【0015】
(6)前記S脱離実行手段が、前記所定の位相を逆位相とし、前記S脱離開始温度において前記位相が反転するようにスイングさせることにより、前記硫黄成分が脱離する前記領域を制限することが好ましい。
(7)前記空燃比制御手段が、前記リッチ継続時間における理論空燃比に対するリッチ度合いを制御し、前記リッチ継続時間と前記リーン継続時間とを略同じにすることが好ましい。
(8)前記NOxトラップ触媒が前記排気通路に直列に2つ配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
開示の内燃機関の排気浄化装置によれば、NOxトラップ触媒から硫黄成分を脱離させるS脱離処理の実行中に所定の制限条件が成立したら、NOxトラップ触媒から硫黄成分が脱離される領域(空間的領域)を制限するため、NOxトラップ触媒に吸着された硫黄成分がNOxトラップ触媒全体から一気に放出されることを防ぐことができる。つまり、単位時間当たりにNOxトラップ触媒から放出される硫黄成分の量を減らすことができるので、大気中に放出される単位時間当たりのH2Sの放出量を減らすことができる。言い換えると、大気中に放出されるH2S濃度の最大値(すなわち、H2S濃度のピークの値)を下げることができる。これにより、H2Sの臭気を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置を示す模式的な全体構成図である。
【図2】NOxトラップ触媒に吸着された硫黄成分の量(吸着S量)とS脱離処理時に硫黄成分が放出される速度(S放出速度)との関係を示すグラフである。
【図3】S脱離処理時を説明するグラフであり、(a)が空燃比制御により変化する排気の空燃比の状態、(b)が空燃比制御に伴って変化するNOxトラップ触媒の温度状態、(c)がS脱離処理時のS放出速度の変化を示す。
【図4】S脱離処理の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0019】
[1.装置構成]
本実施形態の排気浄化装置は、車両に搭載されたディーゼルエンジン(内燃機関)1に適用される。図1には、エンジン1に設けられる複数のシリンダ2のうちの一つを示すが、他のシリンダ2も同様の構成である。エンジン1のシリンダ2内には、上下方向に往復摺動するピストン3が設けられる。ピストン3は、コネクティングロッド4を介してクランクシャフト5に接続される。ピストン3は、その頂面に燃焼室となるキャビティ3aが形成されている。
【0020】
シリンダ2上部のシリンダヘッド6には、燃料噴射用のインジェクタ7が設けられる。インジェクタ7は、その先端部がシリンダ2の筒内空間に突出して設けられ、シリンダ2内に直接燃料を噴射する。インジェクタ7から噴射される燃料の噴射方向は、ピストン3のキャビティ3aに向かう方向に設定される。また、インジェクタ7の基端部には燃料配管7aが接続され、この燃料配管7aから加圧された燃料がインジェクタ7に供給される。
【0021】
シリンダヘッド6には、シリンダ2の筒内空間と連通する吸気ポート8及び排気ポート9が設けられ、これらの各ポート8,9を開閉するための吸気弁10及び排気弁11が設けられる。吸気ポート8には、図示しないエアクリーナやスロットルバルブ等を備えた吸気通路12が接続され、排気ポート9には排気通路13が接続される。この排気通路13には、排気通路13内に燃料を添加する燃料添加装置14が設けられ、燃料添加装置14の下流側に排気を浄化するための排気浄化装置20が介装される。また、排気通路13には、排気通路13を流通する排気の温度を検出する温度センサ15と、排気の空燃比を検出する空燃比センサ16と、排気の流量を検出する流量センサ17とが設けられる。
【0022】
排気浄化装置20は、排気上流側から順に配置された、前段酸化触媒21,フィルタ22,NOxトラップ触媒23及び後段酸化触媒24から構成される。ここでは、排気通路13に介装された三つのケース内にそれぞれ、前段酸化触媒21及びフィルタ22、NOxトラップ触媒23、後段酸化触媒24が収容される。
前段酸化触媒21は、排気中の成分に対する酸化能を持った酸化触媒であり、金属,セラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。
【0023】
フィルタ22は、排気中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)を捕集する多孔質フィルタ(例えば、セラミックフィルタ)である。なお、PMとは、炭素からなる黒煙(すす)の周囲に燃え残った燃料や潤滑油の成分,硫黄化合物等が付着した粒子状の物質である。フィルタ22の内部は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数に分割されている。この壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成され、排気が壁体の近傍や内部を通過する際に壁体内,壁体表面にPMが捕集される。フィルタ22では、捕集したPMを連続的に酸化させて除去し、排気を浄化する再生制御が実施される。
【0024】
NOxトラップ触媒23は、酸素過剰な酸化雰囲気(排気の空燃比が理論空燃比よりもリーンな状態)において窒素酸化物(以下、NOxという)を硝酸塩として触媒の担体表面上に吸着し、酸素濃度が低い還元雰囲気(排気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな状態)において吸着したNOxを放出して還元する機能を有する。NOxトラップ触媒23は吸着できるNOxの量(すなわち、最大量)が決まっており、NOxトラップ触媒23に吸着されたNOxの量がこの最大量(すなわち、飽和状態)に近づくと、吸着されたNOxを放出し還元浄化する制御(以下、この制御をNOxパージという)が実施される。
【0025】
NOxパージは、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気を酸素濃度が低い還元雰囲気(リッチ)にし、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)等の還元剤をNOxトラップ触媒23に供給することで実施される。ここでは、NOxトラップ触媒23の上流側に設けられた燃料添加装置14から排気通路13に燃料を添加することによって、空燃比のリッチ化や還元剤の供給を行う。NOxパージの実施によって、NOxトラップ触媒23からNOxを放出させるとともに、放出されたNOxを還元して無害な窒素(N2)に変換して排気を浄化する。
【0026】
なお、図1に示す排気浄化装置20では、同一性能を有する同一形状のNOxトラップ触媒23が排気通路13に直列に2つ配置されている。以下、排気上流側に配置されたNOxトラップ触媒23を前段NOxトラップ触媒23Fといい、排気下流側に配置されたNOxトラップ触媒23を後段NOxトラップ触媒23Rという。また、両者を特に区別しない場合は、単にNOxトラップ触媒23という。
【0027】
NOxトラップ触媒23の下流側に配置された後段酸化触媒24は、前段酸化触媒21と同様、排気中の成分に対する酸化能を持った酸化触媒であり、金属,セラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。
温度センサ15,空燃比センサ16及び流量センサ17は、いずれもフィルタ22の下流側であってNOxトラップ触媒23の上流側に設けられ、NOxトラップ触媒23に流入する排気の温度,空燃比及び流量をそれぞれ検出する。これらセンサ15,16,17で検出された情報は、ECU30へ送信される。
【0028】
ECU(電子制御装置)30は、各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUでの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等を備えている。ECU30の入力側には、温度センサ15,空燃比センサ16及び流量センサ17が接続され、出力側には燃料添加装置14が接続される。ECU30は、上記した再生制御やNOxパージ等の様々な制御を実施するものであるが、ここでは特に以下のSパージを実行する。
【0029】
Sパージとは、NOxトラップ触媒23に吸着された硫黄成分を定期的に放出する、いわゆるS脱離処理のことである。NOxトラップ触媒23は、排気中のNOxだけでなく、一般に排気に含まれている硫黄成分(サルファ,以下、単にSとも表現する)も吸着する。NOxトラップ触媒23は、上記したように触媒の担体表面上に吸着できるNOxの量が決まっているため、硫黄成分が吸着されることにより吸着できるNOxの量が減少してしまう。さらに硫黄成分は、上記のNOxパージでは僅かな量しか放出されないため時間とともに増加し、これによりNOxトラップ触媒23の本来の機能であるNOxを吸着する能力が低下してしまう。これを防ぐために実施されるのがSパージである。
【0030】
[2.制御構成]
次に、本実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置の制御構成について、図1,図2及び図3(a)〜(c)を用いて説明する。
ECU30は、上記のSパージを実行するために、吸着S量推定部31としての機能要素と、S放出速度推定部32としての機能要素と、判定部33としての機能要素と、空燃比制御部34としての機能要素と、Sパージ実行部35としての機能要素とを有している。
【0031】
吸着S量推定部(吸着S量推定手段)31は、NOxトラップ触媒23に吸着された硫黄成分の量(以下、吸着S量という)SADを推定するものである。吸着S量SADは、エンジン1から排出される硫黄成分の量に依存し、エンジン1から排出される硫黄成分の量は、エンジン1において使用される燃料の量と燃料の種類とに依存する。そのため、吸着S量推定部31は、例えば前回のSパージの終了後から使用された燃料量Fを積算し、以下の式(1)に示すように、この積算使用燃料量ΣFに燃料の種類に応じた係数kを乗算することで吸着S量SADを推定する。係数kは、燃料の種類(例えば、日本で使用される燃料か、アメリカで使用される燃料か等)によって異なる値である。これは、使用される燃料の種類によって排出される硫黄成分の量が異なるからである。
【0032】
また、吸着S量推定部31は、Sパージ実行中では、上記した積算使用燃料量ΣFに係数kを乗算して推定した吸着S量SADから、後述のS放出速度推定部32により推定されるS放出速度VにSパージ時間tSPを乗算して求めた放出S量SEX(=V×tSP)を減算する。これにより、Sパージ実行中にNOxトラップ触媒23に吸着されている硫黄成分の量を推定する。以下、Sパージ実行中の吸着S量を残留吸着S量SREと呼ぶ。
【0033】
以上の吸着S量SAD及び残留吸着S量SREの推定手法を式で表すと、以下の式(1)及び(2)となる。
S=SAD=ΣF×k ・・・(1)
S=SRE=SAD−V×tSP ・・・(2)
これら推定された吸着S量SAD及び残留吸着S量SREの情報は、S放出速度推定部32及び判定部33に伝達される。なお、以下、吸着S量SAD及び残留吸着S量SREとを特に区別しない場合は、単に吸着S量という。
【0034】
S放出速度推定部(S放出速度推定手段)32は、吸着S量に基づいてNOxトラップ触媒23から硫黄成分が放出(脱離)されるときの放出速度(以下、S放出速度という)Vを推定するものである。S放出速度Vは、吸着S量と排気の空燃比(A/F)と温度と流量とに依存するが、ここでは吸着S量に着目してS放出速度Vを推定する。NOxトラップ触媒23に流入する排気の条件(すなわち、排気の空燃比,温度及び流量)が一定ならば、図2に示すように吸着S量が多いほどS放出速度Vが大きくなる。そのため、様々な排気の条件に対応させた図2に示すようなマップを予め複数記憶しておき、複数のマップの中から温度センサ15,空燃比センサ16及び流量センサ17によって検出された値に対応するマップを選択する。このマップに、吸着S量推定部31で推定された吸着S量を適用することでS放出速度Vを推定する。
【0035】
なお、図2において、実線は後述の制限Sパージを実施した場合の吸着S量に対するS放出速度VSLを示し、一点鎖線は通常のSパージを実施した場合の吸着S量に対するS放出速度VSを示す。図2に示すように、S放出速度Vは、吸着S量が同じ場合、通常のSパージよりも制限Sパージを実施するほうが小さい。以下、通常のSパージ時の放出速度をS放出速度VS、制限Sパージ時の放出速度を制限S放出速度VSLと表し、これらを特に区別しない場合はS放出速度Vという。推定されたS放出速度Vは、判定部33へ伝達される。
【0036】
判定部(判定手段)33は、Sパージが必要であるか否かの判定と、Sパージ開始条件が成立したか否かの判定と、Sパージを実行する際に制限制御が必要であるか否かの判定と、制限制御を解除するか否かの判定とを実施するものである。以下、これらの判定について説明する。
【0037】
判定部33は、まず、吸着S量推定部31で推定された吸着S量SADに基づいて、Sパージが必要であるか否かを判定する。判定部33は、吸着S量推定部31で推定された吸着S量SADと予め設定された所定値STHとを比較し、吸着S量SADが所定値STH以上の場合にSパージが必要であると判定し、吸着S量SADが所定値STH未満の場合にSパージが必要でないと判定する。すなわち、以下の(3)が成立した場合はSパージが必要であると判定する。なお、この判定に用いられる所定値STHは、例えば予め実験等によりNOxトラップ触媒23のNOx浄化性能が低下する程度に硫黄成分が蓄積したと考えられる吸着S量である。
(3)吸着S量SAD≧所定値STH
【0038】
判定部33は、上記の(3)が成立したら、Sパージを開始できるか否か、言い換えると、Sパージを実施することができるか否か(すなわち、Sパージ開始条件が成立したか否か)を判定する。このSパージ開始条件は、例えば車両が高速道路等の道路を高速で走行中や郊外等を安定して走行中に、排気が高温で安定していることである。なお、上記の(3)が成立した場合であっても、Sパージ開始条件が成立しない場合は、Sパージは実行されない。
【0039】
判定部33は、上記(3)のSパージ開始条件が成立したと判定したら、Sパージを実行する際に制限制御が必要であるか否かを判定する。制限制御とは、単位時間当たりにNOxトラップ触媒23から放出される硫黄成分の量を制限する制御である。以下、この制御を制限Sパージという。すなわち、制限Sパージとは、硫黄成分が放出されるNOxトラップ触媒23の領域を制限する制御である。ここでいう領域とは空間的な領域(すなわち、場所)を意味する。言い換えれば、制限Sパージは、NOxトラップ触媒23から硫黄成分が放出される場所を制限し、部分的にNOxトラップ触媒23から硫黄成分を脱離するということである。制限Sパージを実行する具体的な制御については後述する。
【0040】
判定部33は、S放出速度推定部32で推定された通常のSパージを実施した場合のS放出速度VSと予め設定された第一所定速度VTH1とを比較し、S放出速度VSが第一所定速度VTH1以上の場合に制限制御が必要であると判定し、S放出速度VSが第一所定速度VTH1未満の場合に制限制御が必要でない(すなわち、通常のSパージでよい)と判定する。すなわち、制限Sパージの開始条件(制限条件)は、以下の(4)の条件である。なお、この判定に用いられる第一所定速度VTH1は、例えば人間がH2S臭気を感じない程度のH2S濃度を予め実験等により求め、このH2S濃度から算出されたS放出速度である。
(4)S放出速度VS≧第一所定速度VTH1
【0041】
判定部33は、上記(4)の制限条件が成立して制限Sパージが実施されているときに、制限Sパージ(制限制御)を解除するか否かを判定する。制限制御の解除とは、制限Sパージを終了し、通常のSパージに切り替えることを意味する。判定部33は、吸着S量推定部31で推定された制限Sパージの実行中の残留吸着S量SREに基づき、S放出速度推定部32で推定された制限Sパージ実行中のS放出速度VSLと予め設定された第二所定速度VTH2とを比較し、制限S放出速度VSLが第二所定速度VTH2未満の場合に制限制御を解除すると判定し、制限S放出速度VSLが第二所定速度VTH2以上の場合に制限制御を解除しないと判定する。すなわち、制限Sパージの解除条件(制限解除条件)は、以下の(5)の条件である。なお、この判定に用いられる第二所定速度VTH2は、例えば第一所定速度VTH1よりも小さいS放出速度である。
(5)制限S放出速度VSL<第二所定速度VTH2
【0042】
空燃比制御部(空燃比制御手段)34は、NOxトラップ触媒23に流入する排気の空燃比(A/F)を制御するものである。一般に空燃比を制御するには空気量と燃料量とを制御すればよいが、ここでは出力に影響を与えず排気の空燃比のみを制御するために、燃料添加装置14から排気通路13内に添加される燃料添加量を制御する。この空燃比制御部34は、排気の空燃比を理論空燃比よりもリッチにする場合は燃料添加装置14から添加される燃料量を増加させ、空燃比を理論空燃比よりもリーンにする場合は燃料添加装置14から添加される燃料量を減少させる(又は添加される燃料量をゼロにさせる)。
【0043】
また、空燃比制御部34は、理論空燃比に対するリッチ度合い(リッチA/F)や空燃比がリッチであるリッチ継続時間の制御や、空燃比がリーンであるリーン継続時間の制御を行う。言い換えると、空燃比制御部34は、燃料添加装置14から添加される燃料量や燃料添加時間を制御する。
【0044】
また、空燃比制御部34は、燃料添加装置14から添加される燃料量や燃料添加時間を制御することにより、排気の空燃比を制御するとともに排気の温度制御も行う。すなわち、空燃比制御部34は、排気の温度を上昇させる場合は燃料添加装置14から添加される燃料量を増加させて前段酸化触媒21で酸化反応(燃焼)させ、排気の温度を低下させる場合は燃料添加装置14から添加される燃料量をゼロにさせる。
【0045】
Sパージ実行部(S脱離処理実行手段)35は、Sパージ開始条件が成立したときの判定部33による判定結果に応じて、制限Sパージ又は通常のSパージを実行するものである。Sパージ実行部35は、判定部33によりSパージを実施可能であると判定されて制限制御が必要であると判定された場合(上記の制限条件(4)が成立した場合)は、制限制御を解除すると判定されるまで制限Sパージを実行する。また、Sパージ実行部35は、判定部33によりSパージを実施可能であると判定されたが制限制御は必要ないと判定された場合(上記の制限条件(4)が成立しない場合)、及び、制限制御を実施中に制限制御を解除すると判定された場合(上記の制限解除条件(5)が成立した場合)は、通常のSパージを実行する。
【0046】
Sパージを実行するためには、以下の(6)及び(7)をともに成立させる必要がある。
(6)NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気がリッチ
(7)NOxトラップ触媒23の温度≧S脱離開始温度TSP
言い換えると、NOxトラップ触媒23において、この(6)及び(7)がともに成立している部分からは硫黄成分が放出され、少なくともいずれか一方の条件しか成立していない部分からは硫黄成分が放出されない。なお、ここでいうS脱離開始温度TSPとは、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気がリッチの場合にNOxトラップ触媒23から硫黄成分が脱離し始めるときの温度であり、触媒によって異なる。
【0047】
Sパージ実行部35は、上記の(7)を利用して制限Sパージを実行する。すなわち、制限Sパージは、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気を常にリッチな状態に維持しながら、NOxトラップ触媒23において、S脱離開始温度TSP以上の部分とS脱離開始温度TSP未満の部分とを意図的に作る。これにより、NOxトラップ触媒23から硫黄成分が放出される領域を制限して、NOxトラップ触媒23全体で見たときに単位時間当たりに放出される硫黄成分の量を制限する(すなわち、減少させる)。制限Sパージは、Sパージ実行部35が空燃比制御部34に指令を出すことにより実行する。
【0048】
Sパージ実行部35から制限Sパージ実行の指令を受けた空燃比制御部34は、NOxトラップ触媒23において、S脱離開始温度TSP以上の部分とS脱離開始温度TSP未満の部分とを作るために、リッチ継続時間とリーン継続時間とを周期的に繰り返すように空燃比を制御する。さらに、空燃比制御部34は、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気を常にリッチな状態に維持するために、空燃比がリッチのときのリッチ度合いを制御する。すなわち、空燃比制御部34は、燃料添加装置14により燃料を添加する時間(リッチ継続時間)と、燃料を添加しない時間(リーン継続時間)とを周期的に交互に繰り返す(すなわち、空燃比を周期的にリッチとリーンとにスイングさせる)。そして、このように空燃比をスイングさせながら、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気が定常的にリッチとなるように、添加燃料量を制御して、リッチ継続時間におけるリッチ度合いを制御する。
【0049】
空燃比制御部34により空燃比がスイングされた場合、NOxトラップ触媒23に流入する排気の温度も空燃比のスイングに追従して上昇及び低下を周期的に繰り返す。これにより、NOxトラップ触媒23の温度も上昇及び低下を周期的に繰り返す。すなわち、排気の空燃比を制御することにより、NOxトラップ触媒23の温度が変化するため、NOxトラップ触媒23の温度が上記のS脱離開始温度TSPを挟んで上下に周期的に変化するように、予め空燃比制御部34による空燃比制御(リッチ継続時間とリーン継続時間との周期やリッチ度合い)を設定しておく。これにより、空燃比制御部34による空燃比制御が実施されれば、自動的に制限Sパージが実行される。
【0050】
なお、ここでは、NOxトラップ触媒23は排気通路13に直列に2つ配置されているため、上流側の前段NOxトラップ触媒23Fの方が下流側の後段NOxトラップ触媒23Rよりも先に排気の温度変化の影響を受ける。つまり、排気の温度が上昇すると、前段NOxトラップ触媒23Fが先に温度上昇し、次いで後段NOxトラップ触媒23Rが温度上昇する。同様に、排気の温度が低下すると、前段NOxトラップ触媒23Fが先に温度低下し、次いで後段NOxトラップ触媒23Rが温度低下する。
【0051】
Sパージ実行部35は、空燃比制御部34による空燃比のスイング制御により前段NOxトラップ触媒23Fの温度(以下、前方温度ともいう)TFと後段NOxトラップ触媒23Rの温度(以下、後方温度ともいう)TRとの間に温度のずれを生じさせる。すなわち、Sパージ実行部35は、空燃比制御部34による空燃比制御によって、NOxトラップ触媒23の前方温度TFと後方温度TRとがS脱離処理開始温度TSPを挟んで上下に周期的に変化し、さらに前方温度TFと後方温度TRとが所定の位相のずれを持ってスイングするように制御する。
【0052】
これにより、S脱離開始温度TSPを超えている部分ではSパージが実行され、S脱離開始温度TSP未満の部分ではSパージが実行されないこととなり、NOxトラップ触媒23全体で見ると、放出される硫黄成分の量が制限される(減少する)。なお、このとき、前段NOxトラップ触媒23Fと後段NOxトラップ触媒23Rとの位相のずれが逆位相になり、位相の反転がS脱離開始温度TSPになるように空燃比制御部34による空燃比制御を設定すれば、前段NOxトラップ触媒23Fから硫黄成分が放出されているときには後段NOxトラップ触媒23Rからは硫黄成分が放出されず、後段NOxトラップ触媒23Rから硫黄成分が放出されているときには前段NOxトラップ触媒23Fからは硫黄成分が放出されない。つまり、常に一定量の硫黄成分がNOxトラップ触媒23から放出されることとなる。
【0053】
以上が制限Sパージについての制御内容である。これに対して、通常のSパージは、制限SパージではないSパージのことであり、NOxトラップ触媒23全体をSパージができる状態にして行うSパージのことである。Sパージ実行部35は、通常のSパージを実行する場合は、NOxトラップ触媒23全体において上記の(6)及び(7)をともに成立させて、NOxトラップ触媒23全体から硫黄成分を放出させる。Sパージ実行部35は、NOxトラップ触媒23から硫黄成分が放出され終わったら(すなわち、残留吸着S量SREがゼロになったら)、Sパージを終了する。すなわち、これがSパージ終了条件である。
【0054】
次に、図3(a)〜(c)を用いて、上記したSパージ実行部35による制御内容を説明する。図3(a)は、Sパージ実行部35からの指令に基づいて空燃比制御部34において行われる空燃比制御によって変化する空燃比(A/F)の状態を示すグラフであり、理論空燃比(ストイキ)に対して、空燃比が大きくなるほどリーン度合いが大きく、空燃比が小さくなるほどリッチ度合いが大きい。また、図3(a)中、実線がNOxトラップ触媒23に流入する排気の空燃比であり、一点鎖線がNOxトラップ触媒23の出口側の空燃比である。このNOxトラップ触媒23の出口側の空燃比は、NOxトラップ触媒23周辺の空燃比(周辺雰囲気)に対応する。
【0055】
図3(b)は、図3(a)に示す空燃比制御に伴って変化するNOxトラップ触媒23の温度状態を示すグラフであり、実線が前段NOxトラップ触媒23Fの温度TF、一点鎖線が後段NOxトラップ触媒23Rの温度TRである。また、図3(c)は、Sパージ時のS放出速度の変化を示すグラフであり、実線が本排気浄化装置によるS放出速度、一点鎖線が従来の排気浄化装置によるS放出速度である。また、図3(a)〜(c)の横軸の時間は全て対応している。
【0056】
図3(a)に示すように、時間t0において、判定部33により制限Sパージが必要であると判定されると、Sパージ実行部35は、空燃比制御部34に対して制限Sパージの空燃比制御を実施するように指令を出す。この指令を受けた空燃比制御部34は、まず空燃比をストイキよりもリッチにする。これにより、図3(b)に示すようにNOxトラップ触媒23の温度が上昇する。そして、前段NOxトラップ触媒23Fの温度(前方温度)TFが先にS脱離開始温度TSPに達し、S脱離開始温度TSPよりも高い温度となる。このときの時間(前方温度TFがS脱離開始温度TSPに達した時間)をt1とする。
【0057】
図3(a)に示すように、空燃比制御部34は、時間t1になったら(すなわち、前方温度TFがS脱離開始温度TSPに達したら)徐々に空燃比を大きくしていき、ストイキよりもリーンにする(リーン継続の開始)。これにより、上昇していた前方温度TFは徐々に低下し、S脱離開始温度TSPよりも低い温度になる。一方、後段NOxトラップ触媒23Rは、前段NOxトラップ触媒23Fに遅れて温度が上昇する。ここでは、図3(b)に示すように、前方温度TFが低下してS脱離開始温度TSPに達したときに、後段NOxトラップ触媒23Rの温度(後方温度)TRが上昇してS脱離開始温度TSPに達するようになっている。つまり、前方温度TFと後方温度TRとがS脱離開始温度TSPを境界に逆位相のずれを持つようになっている。
【0058】
空燃比制御部34は、予め設定されたリーン継続時間(ストイキよりもリーンな状態の時間)の半分が終了したら、再び空燃比を小さくしていき、ストイキになった時点でリーン継続時間終了となり、さらに空燃比をストイキよりもリッチにする(リッチ継続の開始)。空燃比が再びストイキよりもリッチになると、前方温度TFは再び上昇してS脱離開始温度TSPに達し、S脱離開始温度TSPよりも高い温度となる。後段NOxトラップ触媒23Rは、前段NOxトラップ触媒23Fに遅れて温度が低下するため、前方温度TFが上昇し始めたときに後方温度TRは低下し始め、前方温度TFが上昇してS脱離開始温度TSPに達したときにS脱離開始温度TSPに達し、S脱離開始温度TSPよりも低くなる。
【0059】
空燃比制御部34は、予め設定されたリッチ継続時間(ストイキよりもリッチな状態の時間)の半分が終了したら、再び空燃比を大きくしていき、ストイキになった時点でリッチ継続時間終了となり、さらに空燃比をストイキよりもリーンにして上記したリーン継続を開始する。このように、Sパージ実行部35は、空燃比制御部34によってNOxトラップ触媒23に流入する排気の空燃比をリッチとリーンとを繰り返すようにスイングさせる。これによりNOxトラップ触媒23の前方温度(前段NOxトラップ触媒23Fの温度)TFと後方温度(後方NOxトラップ触媒23Rの温度)TRとが、S脱離開始温度TSPを挟んで逆位相のずれを持って上下にスイングされる。
【0060】
また、Sパージ実行部35は、空燃比制御部34によってNOxトラップ触媒23に流入する排気の空燃比をリッチとリーンとを繰り返すようにスイングさせるが、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気(すなわち、NOxトラップ触媒23の出口側の空燃比)は、図3(a)中に一点鎖線で示すように平均的に常時リッチ状態となるように、リッチ継続時間におけるリッチ度合いを制御している。すなわち、ストイキに対するリッチ度合いがリーン度合いよりも大きくなるように(リッチ側への振幅が大きくなるように)制御される。なお、ここでは、リッチ度合いを制御することにより、リッチ継続時間とリーン継続時間とが略同じに設定されている。
【0061】
このような制限SパージによってNOxトラップ触媒23から放出される硫黄成分は、図3(c)に実線で示すような速度で放出される。図3(c)中に実線で示すように、前方温度TFがS脱離開始温度TSPに達した時間t1から、NOxトラップ触媒23から硫黄成分が放出され始め、前方温度TFがS脱離開始温度TSP以上の状態では前段NOxトラップ触媒23Fから硫黄成分が放出される。
【0062】
従来であれば、NOxトラップ触媒23全体から一気に硫黄成分が放出され始めるため、一点鎖線で示すようにS放出速度(すなわち、単位時間あたりに放出される硫黄成分の量)は急上昇し、短い時間で大量の硫黄成分が放出される。このため、H2Sが大量に生成されてH2S濃度が高くなり、H2S独特の臭気を感じてしまう。
【0063】
これに対して、制限Sパージを行うと、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気は常にリッチな状態となっているが、制限Sパージ実行中は、前方温度TFと後方温度TRとが交互にS脱離開始温度TSPを超えるため、前段NOxトラップ触媒23Fと後段NOxトラップ触媒23Rとから交互に硫黄成分が放出される。言い換えると、NOxトラップ触媒23の温度がS脱離開始温度TSPを超えている部分と超えていない部分とに分かれているため、S脱離開始温度TSPを超えている部分からしか硫黄成分が放出されない。
【0064】
すなわち、上記した(6)は常に成立しているが、(7)が成立している部分と成立していない部分とがあるため、NOxトラップ触媒23全体で見ると、放出される硫黄成分の量が従来に比べて大幅に抑制される。なお、図3(c)中のVTH1は制限Sパージの開始条件(制限条件)で用いられる第一所定速度、VTH2は制限Sパージの解除条件(制限解除条件)で用いられる第二所定速度である。
【0065】
制限SパージによりNOxトラップ触媒23から硫黄成分が放出され続けると、NOxトラップ触媒23に吸着している残留吸着S量SREが徐々に減少する。これにより、制限Sパージ中のS放出速度(制限S放出速度)VSLは徐々に低下し、第二所定速度VTH2よりも小さい速度になる。制限S放出速度VSLが低下して第二所定速度VTH2に達した時間をt2とする。つまり、時間t2において制限制御が解除され、制限Sパージから通常のSパージに移行する。
【0066】
Sパージ実行部35は、時間t2になると、空燃比制御部34に対して通常のSパージの空燃比制御を実施するように指令を出す。この指令を受けた空燃比制御部34は、図3(a)に示すように、空燃比のスイングをやめて常時リッチとする。これにより、図3(b)に示すように、前方温度TF及び後方温度TRが常にS脱離開始温度TSP以上の温度に保持される。つまり、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気が常にリッチ状態であり、且つ、NOxトラップ触媒23の温度がS脱離開始温度TSPよりも高いため、NOxトラップ触媒23全体(すなわち、前段NOxトラップ触媒23F及び後段NOxトラップ触媒23R)から残った硫黄成分が放出される。
【0067】
そして、図3(c)に示すように、残留吸着S量SREが徐々に減少することによりS放出速度も徐々に低下し、残留吸着S量SREがなくなったらS放出速度もゼロとなる。このときの時間t3がSパージ終了時間である。
【0068】
なお、図3(c)では、本排気浄化装置によるSパージと従来の手法によるSパージとの終了する時間が略同じになっている。これは、制限Sパージを用いた場合、制限Sパージ実行中の硫黄放出量(S放出速度)が制限されても、制限Sパージから通常のSパージに移行した後に全ての硫黄成分が素早く放出されるからである。つまり、制限SパージによってS放出速度のピーク値を低くしながら、Sパージを実行する時間は従来と略変わらないのである。
【0069】
[3.フローチャート]
次に、図4を用いてECU30で実行されるSパージ制御(S脱離処理制御)の手順の例を説明する。このフローチャートは、所定の周期T(例えば、数[s]周期)で動作する。また、下記の各ステップは、コンピュータのハードウェアに割り当てられた各機能(手段)が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することによって実施される。
【0070】
本排気浄化装置は、ドライバによるイグニッションスイッチ(図示略)のオン操作が行われ、エンジン1が始動したら以下の制御フローをスタートする。なお、フローチャート中のフラグFは、Sパージ実行部35による制御モード(制御状態)を示し、フラグF=0はSパージが実施されていない状態、フラグF=1は制限Sパージ実行中、フラグF=2は通常のSパージ実行中を示す。なお、制御開始時はフラグFはF=0に設定されている。
【0071】
図4に示すように、ステップS10において、フラグFがF=0であるか否かが判定される。制御開始時はフラグFはF=0のためYESルートからステップS20へ進む。ステップS20では、温度センサ15,空燃比センサ16及び流量センサ17のそれぞれの検出値(センサ値)や、前回のSパージの終了後からの使用燃料量Fの積算値ΣFを取得する。ステップS30では、ステップS20で取得した積算値ΣFからNOxトラップ触媒23に吸着されている硫黄成分の量(吸着S量)SADが推定される。
【0072】
次いでステップS40において、ステップS30で推定した吸着S量SADが予め設定された所定値STH以上であるか否かが判定される。つまり、ステップS40の判定は上記の(3)のSパージが必要であるか否かの判定であり、判定部33によって判定される。吸着S量SADが所定値STH以上の場合はSパージが必要であると判定され、ステップS50へ進み、判定部33によりSパージを実施することができるか否か(Sパージ開始条件が成立したか否か)が判定される。ステップS40において吸着S量SADが所定値STH未満であると判定された場合及びステップS50においてSパージを実施できないと判定された場合は、いずれもリターンする。
【0073】
また、ステップS50においてSパージ開始条件が成立したら、ステップS60へ進んでS放出速度VSが推定される。そして、SステップS70において、S放出速度VSが予め設定された第一所定速度VTH1以上であるか否かが判定される。すなわち、ステップS70の判定は上記の制限Sパージの開始条件(4)であり、判定部33によって判定される。S放出速度VSが第一所定速度VTH1以上の場合はステップS80へ進み、ステップS80においてフラグFがF=1に設定され、ステップS90においてSパージ実行部35により制限Sパージが実行される。一方、ステップS70においてS放出速度VSが第一所定速度VTH1未満であると判定された場合は、ステップS140へ進み、フラグFがF=2に設定されて、ステップS150へ進む。
【0074】
ステップS90において制限Sパージが実行されると、NOxトラップ触媒23から硫黄成分が徐々に放出される。ステップS100では、NOxトラップ触媒23に残っている硫黄成分の量(残留吸着S量)SREが推定される。なお、このときの残留吸着S量SREは、制限Sパージ開始直後(すなわち、ステップS100に最初に進んだとき)は、吸着S量SADがそのまま残留吸着S量SREとして推定され、次の制御周期からは前回の周期においてステップS110で推定された制限S放出速度VSLを用いて上記した式(2)を用いて推定される。
【0075】
次いでステップS110では、残留吸着S量SREから制限S放出速度VSLが推定される。そして、ステップS120において、制限S放出速度VSLが予め設定された第二所定速度VTH2未満か否かが判定される。つまり、ステップS120の判定は上記の制限Sパージの解除条件(5)であり、判定部33により判定される。制限S放出速度VSLが第二所定速度VTH2未満の場合は、ステップS130へ進み、フラグFがF=2に設定され、制限制御が解除される。そして、ステップS150において通常のSパージが実行される。
【0076】
一方、ステップS120において、制限S放出速度VSLが第二所定速度VTH2以上であると判定された場合は、NOルートからリターンする。この場合、フラグFがF=1に設定されているため、ステップS10の判定によりNOルートからステップS180へ進み、フラグFがF=1であるか否かが判定され、この場合はフラグFがF=1のためYESルートからステップS90へ進み、制限Sパージが実行される。そして、ステップS120の判定により通常のSパージに移行するまで制限Sパージが実行される。
【0077】
また、ステップS150では通常のSパージが実行される。これにより、NOxトラップ触媒23から硫黄成分が徐々に放出されるため、ステップS160において残留吸着S量SREを推定し、ステップS170において硫黄成分がNOxトラップ触媒23から放出され終わったか否か(すなわち、Sパージ終了条件が成立したか否か)が判定される。Sパージ終了条件が成立したら制御フローを終了し、Sパージ終了条件が成立していなかったらリターンしてステップS10の判定へ進む。この場合は、ステップS10及びステップS180の判定で共にNOとなるため、ステップS150へ進んで通常のSパージが実行され、Sパージ終了条件が成立するまで繰り返される。
【0078】
[4.効果]
したがって、本排気浄化装置によれば、NOxトラップ触媒23から硫黄成分を脱離させるS脱離処理(Sパージ)の実行中に上記した制限条件(4)が成立したら、NOxトラップ触媒23から硫黄成分が脱離される領域(すなわち、Sパージが実行される部分)を制限するため、NOxトラップ触媒23に吸着された硫黄成分がNOxトラップ触媒23全体から一気に放出されることを防ぐことができる。つまり、単位時間当たりにNOxトラップ触媒23から放出される硫黄成分の量を減らすことができるので、大気中に放出される単位時間当たりのH2Sの放出量を減らすことができる。言い換えると、大気中に放出されるH2S濃度の最大値(すなわち、H2S濃度のピーク値)を下げることができる。これにより、H2Sの臭気を抑制することができる。
【0079】
また、NOxトラップ触媒23から放出されるS放出速度VSが所定速度(第一所定速度)VTH1以上の場合に制限条件が成立したと判定するため、硫黄成分が脱離する領域を制限してSパージを行うべきか否か(すなわち、制限Sパージを実行するか否か)の判断を適切に行うことができる。S放出速度VSが第一所定速度VTH1以上の場合(すなわち、大量の硫黄成分が一気に放出されてS放出速度のピーク値を下げる必要があると推定される場合)は、硫黄成分の脱離を制限して行うことにより、H2S臭気を確実に抑制することができる。
【0080】
また、制限Sパージ実行中(すなわち、領域制限中)に上記の制限解除条件(5)が成立したら、制限Sパージを解除して(領域制限を解除して)、通常のSパージを実行するため、素早くNOxトラップ触媒23から硫黄成分を放出することができる。つまり、S放出速度のピーク値を抑制しながら、Sパージを実行する時間は従来と略同じにすることができ、燃費悪化を抑制することができる。
【0081】
また、推定したS放出速度(制限S放出速度)VSLが所定速度(第二所定速度)VTH2未満の場合に制限解除条件が成立したと判定するため、硫黄成分の脱離領域の制限を解除するべきか否か(制限Sパージから通常のSパージに移行するか否か)の判断を適切に行うことができる。制限S放出速度VSLが第二所定速度VTH2未満になったら通常のSパージに移行するため、早期にSパージを終了することができる。
【0082】
また、空燃比制御部34によりリッチ継続時間とリーン継続時間とを周期的に繰り返されることによって、NOxトラップ触媒23の前方温度TFと後方温度TRとをS脱離開始温度TSPを挟んで周期的に変化させ、前方温度TFと後方温度TRとを所定の位相のずれを持ってスイングさせることによりS脱離領域を制限するため、NOxトラップ触媒23の前方と後方とで領域を制限し、H2S濃度のピーク値を低減させることができる。
【0083】
また、NOxトラップ触媒23前方温度TFと後方温度TRとがS脱離開始温度TSPを境に逆位相にスイングされるため、NOxトラップ触媒23全体でみると放出される硫黄成分の量がばらつかないようにすることができる。
また、空燃比制御部34が、リッチ継続時間におけるリッチ度合いを制御することによりNOxトラップ触媒23周辺の空燃比を常時リッチに維持し、リッチ継続時間とリーン継続時間とを略同じにすることにより、制御を簡素化することができる。
【0084】
また、ここでは2つのNOxトラップ触媒23(前段NOxトラップ触媒23F及び後段NOxトラップ触媒23R)が排気通路13に直列に配置(タンデム配置)されることにより、上流側のNOxトラップ触媒23Fの温度(前方温度)TFと下流側のNOxトラップ触媒23Rの温度(後方温度)TRとの位相のずれをはっきりと設定することができる。つまり、Sパージされる領域をより明確に区画することができ、制限Sパージをより正確に実行することができる。
【0085】
[5.変形例]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上記の実施形態では、制限Sパージの開始条件(制限条件)と解除条件(制限解除条件)とで異なる所定速度を用いて判定を行ったが、所定速度は同じであってもよい。すなわち、第一所定速度VTH1と第二所定速度VTH2とが同じ値であってもよい。この場合、制御構成が簡素化される。
【0086】
また、上記実施形態では、S放出速度VSを推定して、S放出速度VSに基づいて制限Sパージを実行するか否かを判定しているが、制限Sパージを実行するか否かの判定は、例えば吸着S量SADに基づいて行ってもよい。NOxトラップ触媒23に吸着されている硫黄成分の量が多いほど放出されるときの速度が大きくなるため、吸着S量SADがある判定閾値よりも多くなったら制限Sパージを実行するとしてもよい。この場合、S放出速度を推定する必要がないため、制御構成が簡素化される。
【0087】
また、吸着S量SADの推定は、上記の他に、例えば吸着S量とエンジン1の作動時間との関係を予め実験等により求めてマップ化しておき、エンジン1の作動時間を積算して、積算した作動時間をこのマップに適用することにより吸着S量を推定してもよい。また、例えば、吸着S量と走行距離との関係を予めマップ化しておき、前回Sパージを実施したときからの走行距離を取得してこのマップに適用することにより推定してもよい。また、マップではなく予め実験等により求めた数式を用いて推定してもよい。
【0088】
この他、吸着S量やS放出速度を検出できるセンサを設けた場合は、これらによって直接検出してもよい。この場合は、吸着S量推定部31やS放出速度推定部32を設ける必要はない。
また、上記の制限Sパージや通常のSパージを行う場合に、NOxトラップ触媒23を予めある程度昇温しておいてからSパージを実行するように構成してもよい。この場合、NOxトラップ触媒23がS脱離開始温度TSPに達するまでにかかる時間を短縮することができ、早期にSパージを開始することができる。
【0089】
また、制限Sパージから通常のSパージに移行せず、制限Sパージのみを実施するようにしてもよい。この場合、制限解除条件の判定等は不要である。
また、上記の実施形態では、NOxトラップ触媒23から硫黄成分が脱離する領域の制限を、排気の空燃比を制御することにより実施したが、NOxトラップ触媒23の温度条件を場所によって(すなわち、NOxトラップ触媒23において部分的に)変更することができるような構成であれば、領域制限は空燃比制御によるものに限られない。
【0090】
また、制限Sパージを実行するときに、リッチ継続時間とリーン継続時間とを異なるようにしてもよい。この場合、例えばリッチ度合いに応じてリッチ継続時間を制御することにより、NOxトラップ触媒23の周辺雰囲気を常時リッチにするようにしてもよい。
また、上記実施形態では、NOxトラップ触媒23が直列に2つ配置されているが、NOxトラップ触媒23は1つでもよい。この場合であっても、NOxトラップ触媒23の排気上流側となる前方温度と排気下流側となる後方温度とで温度差が生じ、上記した制限Sパージと同様の作用,効果を得ることができる。また、NOxトラップ触媒23は3つ以上配置されていてもよい。
【0091】
また、排気通路13に設けた燃料添加装置14の代わりに燃料噴射用のインジェクタ7を用いてもよい。
また、排気浄化装置20(前段酸化触媒21,フィルタ22,NOxトラップ触媒23及び後段酸化触媒24)は、排気通路13に上記の順に配置されていればよく、図1のような形状及び収納状態に限られない。
また、NOxトラップ触媒を有するものであればディーゼルエンジンに限られない。
【符号の説明】
【0092】
1 ディーゼルエンジン(内燃機関)
13 排気通路
14 燃料添加装置
15 温度センサ
16 空燃比センサ
17 流量センサ
20 排気浄化装置
21 前段酸化触媒
22 フィルタ
23 NOxトラップ触媒
24 後段酸化触媒
30 ECU(電子制御装置)
31 吸着S量推定部(吸着S量推定手段)
32 S放出速度推定部(S放出速度推定手段)
33 判定部(判定手段)
34 空燃比制御部(空燃比制御手段)
35 Sパージ実行部(S脱離処理実行手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、排気の空燃比がリーンである酸化雰囲気において前記排気中の窒素酸化物及び硫黄成分を吸着するNOxトラップ触媒と、
前記空燃比がリッチである還元雰囲気において前記NOxトラップ触媒に吸着された前記硫黄成分を前記NOxトラップ触媒から脱離させるS脱離処理を実行するS脱離処理実行手段とを備え、
前記S脱離処理実行手段は、前記S脱離処理の実行中に所定の制限条件が成立したら前記硫黄成分が脱離する前記NOxトラップ触媒の領域を制限する
ことを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記NOxトラップ触媒に吸着された前記硫黄成分の量を推定する吸着S量推定手段と、
前記吸着S量推定手段により推定した前記硫黄成分の量に基づいて前記NOxトラップ触媒から前記硫黄成分が脱離されるときの放出速度を推定するS放出速度推定手段と、
前記S放出速度推定手段により推定された前記放出速度が所定速度以上の場合に、前記制限条件が成立したと判定する判定手段とを備える
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記S脱離処理実行手段は、前記領域が制限されているときに所定の制限解除条件が成立したら前記領域の制限を解除してS脱離処理を実行する
ことを特徴とする、請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記S放出速度推定手段により推定された放出速度が所定速度未満の場合に前記制限解除条件が成立したと判定する
ことを特徴とする、請求項3記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記NOxトラップ触媒に流入する排気の空燃比を制御する空燃比制御手段を備え、
前記空燃比制御手段は、前記空燃比が理論空燃比よりもリッチであるリッチ継続時間と前記空燃比が理論空燃比よりもリーンであるリーン継続時間とを周期的に繰り返すように前記空燃比を制御し、
前記S脱離処理実行手段は、前記空燃比制御手段による前記空燃比制御によって、前記NOxトラップ触媒のうち排気上流側となる前方温度と排気下流側となる後方温度とを前記NOxトラップ触媒から前記硫黄成分が脱離し始める温度であるS脱離開始温度を挟んで上下に前記周期的に変化させ、前記前方温度と前記後方温度とを所定の位相のずれを持ってスイングさせることにより、前記硫黄成分が脱離する前記領域を制限する
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記S脱離実行手段が、前記所定の位相を逆位相とし、前記S脱離開始温度において前記位相が反転するようにスイングさせることにより、前記硫黄成分が脱離する前記領域を制限する
ことを特徴とする、請求項5記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記空燃比制御手段が、前記リッチ継続時間における理論空燃比に対するリッチ度合いを制御し、前記リッチ継続時間と前記リーン継続時間とを略同じにする
ことを特徴とする、請求項5又は6記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記NOxトラップ触媒が前記排気通路に直列に2つ配置される
ことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−53583(P2013−53583A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193038(P2011−193038)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】