説明

内燃機関の燃料供給系の診断装置

【課題】燃料供給系の故障による燃料圧力の異常を、高精度に診断でき、以って、故障状態での運転の継続を回避又は抑制できる診断装置を提供する。
【解決手段】空燃比フィードバック補正係数が下限値に張り付いていて、空燃比がリッチ傾向であり、かつ、燃料ポンプの電流が通常よりも高い場合には、燃圧を調整するプレッシャレギュレータの閉固着を推定する。そして、走行中に閉固着を推定した場合には、燃料ポンプの印加電圧を低下させて運転を継続させ、一旦キースイッチがオフされると、内燃機関の再始動を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射装置に対し、燃料ポンプによって燃料を圧送する燃料供給系における異常の有無を判定する診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃圧センサで検出される燃料圧力を所定圧に保つように、燃料ポンプの駆動電圧をフィードバック制御する燃料供給系において、内燃機関の要求燃料量と前記駆動電圧のフィードバック補正値とに基づいて、燃料供給経路の異常を検出することが開示されている。
【特許文献1】特開2006−161675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、燃料ポンプを用いる燃料供給系としては、配管途中に機械式のプレッシャレギュレータを備え、燃料圧力が設定圧を超えたときに前記プレッシャレギュレータが開弁して燃料配管内の燃料をリリーフすることで、燃料圧力を前記設定圧に保持させるシステムがある。
上記システムにおいて、例えば前記プレッシャレギュレータが閉状態に固着し、たとえ燃料圧力が設定圧を超えても開動作しないようになると、燃料圧力の調整が不能になって、燃料の圧力は異常上昇してしまう。
【0004】
しかし、異常な高燃圧になったときに燃料配管内の燃料をリリーフするリリーフバルブを前記プレッシャレギュレータとは別に備えるのが一般的であるため、プレッシャレギュレータが閉状態に固着した場合は、前記プレッシャレギュレータの開弁圧よりも高い前記リリーフバルブの開弁圧に、燃料圧力が保持されることになる。
このとき、燃料圧力が目標圧よりも高くなって、燃料噴射弁から単位時間当たりに噴射される燃料量が多くなるものの、空燃比フィードバック制御によって噴射量が減少補正されることで空燃比のオーバーリッチが防がれるために、運転性が大きく変化せず、そのまま運転が継続されてしまう可能性があった。
【0005】
上記のような場合、燃料配管内の燃料圧力は、通常運転時の目標圧よりも高いから、燃料配管の継手部等からの燃料漏れや、燃料ポンプの負荷が高くなって、燃料ポンプが過熱し、燃料ポンプを故障させてしまうなどの不具合が生じる可能性がある。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、燃料供給系の故障による燃料圧力の異常を高精度に診断でき、以って、故障状態での運転の継続を回避又は抑止できる診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明では、燃料ポンプの制御状態と、内燃機関における空燃比制御状態とから、燃料供給系における異常の有無を判定するようにした。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によると、内燃機関における空燃比制御状態、換言すれば、内燃機関のベース空燃比がリッチ傾向かリーン傾向にあるのかと同時に、燃料ポンプの制御状態を検出することにより、燃料噴射装置に対する燃料圧力の高低を推定できる。
このため、たとえ、実際の空燃比としては大きく運転性を損ねることのない状態に制御されていたとしても、ベース空燃比のずれが燃料供給系の異常に因るものであるか否かを判断でき、燃料供給系の異常を精度よく診断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態における車両用内燃機関の燃料供給系を示すシステム図である。
図1において、燃料噴射弁1は、車両に搭載される内燃機関2の各気筒の吸気ポートに設置される燃料噴射装置であり、内燃機関2は、ポート噴射式内燃機関である。
【0009】
各燃料噴射弁1は燃料ギャラリーパイプ3に接続され、燃料ギャラリーパイプ3内の燃料を、内燃機関2に噴射供給する。
前記燃料ギャラリーパイプ3には、燃料ポンプ4の吐出口に一端が接続される燃料配管5の他端が接続される。
前記燃料ポンプ4は、内燃機関2の燃料を蓄える燃料タンク10の内部に固定され、燃料タンク10内の燃料を吸込口4aから吸い込んで、前記燃料ギャラリーパイプ3(燃料噴射弁1)に向けて圧送する。
【0010】
尚、燃料フィルタ6は、燃料ポンプ4の吸込口4aを覆うようにして設けられ、燃料ポンプ4が燃料中に混入するごみなどを吸い込まないようにしている。
前記燃料配管5は、前述のように、燃料ポンプ4の吐出口に一端が接続され、燃料タンク10の上壁を貫通して燃料ギャラリーパイプ3にまで延設されるが、燃料タンク10内に配設される燃料配管5の部分には、リターン配管7の一端が接続され、該リターン配管7の他端は、燃料タンク10内に開放されている。
【0011】
また、前記リターン配管7の途中には、該リターン配管7を開閉するプレッシャレギュレータ8が介装されている。
前記プレッシャレギュレータ8は、前記燃料配管5内の燃料の圧力が設定圧(目標圧)を超えたとき(前記燃料配管5内の燃料の圧力と基準圧との差圧が設定圧を超えたとき)に開弁し、前記燃料配管5内の燃料の圧力が設定圧(目標圧)以下であるとき(前記燃料配管5内の燃料の圧力と基準圧との差圧が設定圧以下であるとき)に閉弁状態を保持する機械式の弁機構である。
【0012】
前記プレッシャレギュレータ8が開弁して、燃料配管5内の燃料が燃料タンク10内にリリーフされると、燃料配管5内の燃料圧力が低下することになる。
従って、前記燃料配管5内の燃料の圧力が設定圧を超えたとき(前記燃料配管5内の燃料の圧力と基準圧との差圧が閾値を超えたとき)に前記プレッシャレギュレータ8が開弁することで、前記燃料配管5内の燃料の圧力が前記設定圧を超えることが抑止され、結果的に、前記燃料配管5内の燃料の圧力(燃料噴射弁1に対する燃料の供給圧)が前記設定圧付近に保持されることになる。
【0013】
これにより、前記燃料噴射弁1の単位開弁時間当たりの燃料噴射量が一定値に保持され、前記燃料噴射弁1は、その開弁時間に比例する量の燃料を噴射することになる。
更に、前記燃料配管5内の圧力が、前記プレッシャレギュレータ8における設定圧(目標圧)よりも高い許容最大圧を超えたときに開弁し、燃料配管5内の燃料を燃料タンク10内にリリーフするリリーフバルブ9が、燃料タンク10内に配設される燃料配管5の部分に設けられている。
【0014】
尚、前記リリーフバルブ9は、前記燃料ポンプ4に内設させることが可能である。
また、前記プレッシャレギュレータ8における設定圧(目標圧)は、例えば350kPa程度であり、前記リリーフバルブ9の開弁圧は、例えば700kPa程度に設定される。
前記プレッシャレギュレータ8が例えば閉状態に固着して、燃料配管5内の燃料の圧力が設定圧を超えてもプレッシャレギュレータ8が開弁しないと、燃料の圧力が前記設定圧を超えて高くなる。
【0015】
しかし、前記リリーフバルブ9が正常に動作する場合には、燃料配管5内の燃料の圧力が前記許容最大圧を超えるようになれば、前記リリーフバルブ9が開弁して燃料がリリーフされるので、前記許容最大圧を超えて圧力が上昇することが阻止される。
前記燃料噴射弁1による燃料噴射を制御する電子コントロールユニット(ECU)11には、各種センサからの検出信号が入力され、該検出信号に基づいて前記燃料噴射弁1に出力する開弁駆動パルス信号のパルス幅(噴射時間、燃料噴射量)を算出する。
【0016】
前記各種センサとしては、内燃機関2の吸入空気流量QAを検出するエアフローセンサ12、内燃機関2のクランク軸の回転に応じたパルス信号CAを出力するクランク角センサ13、内燃機関2の排気管内の酸素濃度に基づき空燃比信号AFを出力する空燃比センサ14などが設けられている。
前記電子コントロールユニット11は、前記エアフローセンサ12で検出された吸入空気流量QAと、クランク角センサ13からのパルス信号CAに基づいて算出した機関回転速度NEとから、基本噴射パルス幅(基本燃料噴射量)TP(TP=K*QA/NE:Kは定数)を算出する。
【0017】
また、前記電子コントロールユニット11は、前記基本噴射パルス幅TPを補正するための空燃比フィードバック補正係数KAFを、前記空燃比センサ14で検出される実際の空燃比と目標空燃比(例えば理論空燃比)との偏差に基づく、比例・積分・微分動作などによって設定する。
上記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)で基本噴射パルス幅TPを補正することで、内燃機関2の実際の空燃比を目標空燃比に近づける空燃比フィードバック制御がなされる。
【0018】
前記電子コントロールユニット11は、前記基本噴射パルス幅TPを、前記空燃比フィードバック補正係数KAFなどによって補正して、最終的な燃料噴射パルス幅(燃料噴射量)TIを決定する。
そして、前記パルス幅TIの開弁駆動パルス信号を、各燃料噴射弁1に対し、各気筒の吸気行程にタイミングを合わせてそれぞれに出力する。
【0019】
前記燃料ポンプ4は、モータでポンプを回転駆動する電動式のポンプであり、バッテリVBを電源として動作する。
前記バッテリVBは、電源リレー21及び前記電子コントロールユニット11に内蔵された駆動回路22を介して前記燃料ポンプ4(モータ)に接続され、更に、前記燃料ポンプ4(モータ)の駆動電流を検出する電流検出回路23が、前記電子コントロールユニット11内に設けられている。
【0020】
前記電子コントロールユニット11は、マイクロコンピュータ(CPU)24を備え、該マイクロコンピュータ(CPU)24は、前記駆動回路22に制御信号を出力し、前記駆動回路22によって燃料ポンプ4の通電制御のデューティ比(オン時間割合)を調整して、燃料ポンプ4への印加電圧を制御する。
更に、前記電流検出回路23で検出された駆動電流値の情報が、前記マイクロコンピュータ(CPU)24に入力されるようになっている。
【0021】
また、前記電子コントロールユニット11は、前記燃料ポンプ4、プレッシャレギュレータ8、燃料配管5などを含んでなる燃料供給系における異常の有無を診断する演算処理機能を備えている。
図2及び図3のフローチャートに示すルーチンは、前記異常診断の処理を示すものである。
【0022】
尚、以下に示す異常診断処理は、電流検出回路23やエアフローセンサ12等の各種センサに異常がないと診断されていることを前提に実行されるものとする。
ステップS101では、通常に燃料ポンプ4への通電制御を行う。
前記通常の通電制御とは、例えば、機関負荷TP及び機関回転速度NEに応じて燃料ポンプ4(モータ)のオンデューティを決定する処理であり、換言すれば、内燃機関2の燃料消費量に応じて燃料ポンプ4の印加電圧(吐出量)を制御する処理である。
【0023】
但し、燃料ポンプ4に対して一定電圧を印加するように構成することができる。
ステップS102では、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が、上限値(増量側判定基準)に張り付いているか(KAF=上限値)、下限値(増量側判定基準)に張り付いているか(KAF=下限値)、上限値と下限値とで挟まれる可変範囲内の値であるか(下限値<KAF<上限値)を判断する。
【0024】
前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の初期値は1.0であり、KAF>1.0で燃料噴射量(噴射パルス幅)を増量補正し、KAF<1.0で燃料噴射量(噴射パルス幅)を減量補正することになる。
従って、実際の空燃比が目標空燃比よりもリーンであれば、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)を1.0よりも大きくすることで燃料噴射量を増量補正して空燃比をリッチ化させ、実際の空燃比が目標空燃比よりもリッチであれば、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)を1.0よりも小さくすることで燃料噴射量を減量補正して空燃比をリーン化させる。
【0025】
そして、前記上限値は、空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の可変範囲の上限を定めた値であり、実際の空燃比が目標よりもリーンであっても、前記空燃比フィードバック補正係数KAFが上限値を超えないようにしてある。
また、前記下限値は、空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の可変範囲の下限を定めた値であり、実際の空燃比が目標よりもリッチであっても、前記空燃比フィードバック補正係数KAFが下限値を下回る値に設定されないように制限され、前記上限値と下限値とで挟まれる初期値を含む可変範囲内で、空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が変更される。
【0026】
ここで、前記ステップS102の判定において、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が上下限値に張り付いているか否かを判定させる代わりに、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が増量側閾値(>1.0)を超えているか、減量側閾値(<1.0)を下回っているかを判断させる構成とし、かつ、前記増量側閾値を上限値よりも小さい値に設定し、前記減量側閾値を下限値よりも大きい値に設定させることができる。
【0027】
但し、前記上下限値及び前記増量・減量側閾値(増量側判定基準・減量側判定基準)は、プレッシャレギュレータ8による調整圧のばらつきや燃料噴射弁1の噴射量ばらつき、更に、エアフローセンサ12の検出ばらつきなどを要因とする空燃比のばらつきを吸収する場合には、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が到達しない値であり、燃料供給系や燃料噴射弁1や噴射量演算に用いる各種センサなどに異常が生じ、通常のばらつき範囲を超える空燃比変化が生じた場合に、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が達するような値に設定されているものとする。
【0028】
尚、空燃比フィードバック補正係数KAFの値を機関の運転領域毎に空燃比学習補正値として学習し、該空燃比学習補正値と空燃比フィードバック補正係数KAFとで噴射パルス幅を補正することで、空燃比フィードバック補正係数KAFによる補正なしで目標空燃比付近に補正できるようにする場合には、前記空燃比学習補正値又は空燃比フィードバック補正係数KAFと空燃比学習補正値とを総合した補正レベルが、閾値を超えているか否かを判断させるようにする。
【0029】
ステップS102で、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が、上限値と下限値とで挟まれる可変領域内の値である(又は、増量・減量側閾値で挟まれる正常領域内である)と判断された場合には、燃料供給系に異常はないものと判断し、ステップS103へ進んで、前記燃料ポンプ4の通常制御をそのまま継続させる。
一方、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が下限値に張り付いている(減量側閾値を下回っている)と判断された場合、即ち、判定基準を超える減量補正状態であるときには、ステップS104へ進む。
【0030】
尚、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が下限値に張り付いている(減量側閾値を下回っている)状態が、基準時間以上に継続しているときに、ステップS104へ進むようにして、一時的な空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の減少変化が、燃料供給系の異常として判断されないようにできる。
ステップS104では、燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値よりも高いか否かを判断する。
【0031】
前記最大電流判定値は、プレッシャレギュレータ8の調圧ばらつきや、燃料配管の圧力損失のばらつきなどを考慮し、プレッシャレギュレータ8で燃料圧力が調整されている状態での最大燃圧PMAX時の電流を基準に設定され、かつ、燃料ポンプ4の電源電圧、即ち、バッテリ電圧が高いほど、より高い値に設定される(図4参照)。
図4において、最大燃圧PMAXを通る縦線α1と、12Vと付記された右肩上がりの直線βとの交点γ1が、12Vの電源電圧であるときに、プレッシャレギュレータ8で最大燃圧に調圧された場合の電流レベル、即ち、最大電流判定値SLMAXを示し、燃料ポンプ4の電源電圧が高いほど、前記直線βは、電流が高くなる側に平行移動し、最大電流判定値SLMAXも高くなる。
【0032】
換言すれば、プレッシャレギュレータ8で正常に燃圧が調整されている場合には、燃料ポンプ4の電流が、最大電流判定値SLMAXを超えることはなく、燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAX(最大値)を超えている場合には、燃圧が正常範囲を超えて高くなっていると推定できる。
そこで、ステップS104で、そのときの燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAXを超えていると判断された場合には、燃圧がプレッシャレギュレータ8の設定圧を超えて異常に高くなっていると推定される。
【0033】
即ち、燃圧センサによって燃圧を直接的に検出することなく、燃圧が異常に高くなっている異常状態を検知できる。
また、先にステップS102の判断で空燃比がリッチ化する傾向にあることが判定されているから、プレッシャレギュレータ8の閉固着故障によって燃圧が高くなったために、燃料噴射弁1の単位時間当たりの噴射量がプレッシャレギュレータ8の正常時よりも多くなっているものと推定される。
【0034】
一方、ステップS104で、そのときの燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAX以下であると判断された場合には、空燃比がリッチ化する傾向にあるものの、プレッシャレギュレータ8によって正常圧に調圧されており、少なくとも燃料供給系に異常はないと判断されるから、ステップS105へ進んで、前記燃料ポンプ4の通常制御をそのまま継続させる。
【0035】
ステップS104で、そのときの燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAXを超えていると判断された場合は、ステップS106へ進み、燃料供給系(プレッシャレギュレータ8)の異常(異常高圧状態)を車両の運転者に警告すべく、警告灯31を点灯させる。
これにより、運転者は、燃料供給系に異常が発生したことを知ることができ、その後にフェイルセーフ処理がなされた場合にその要因を認識することができ、また、車両を停止させるなどの対応を行えることになる。
【0036】
更に、次のステップS107では、車両が走行中であるか否かを、車速センサ32で検出される車速VSPに基づいて判断する。
車速VSPが略0km/hで車両が停止している場合(内燃機関2の始動後のファーストアイドル状態である場合)には、ステップS108へ進んで、燃料ポンプ4の通電を制御する制御信号のデューティ比を零にして、燃料ポンプ4に対する電源供給(電圧印加)を強制的に遮断して、燃料ポンプ4の動作を停止させる。
【0037】
前記燃料ポンプ4の動作が停止すると、燃料圧力が設定圧以下にまで低下し、たとえ燃料噴射弁1を開弁させたとしても、吸入空気量に見合う燃料を噴射させることができず、正常な着火燃焼が行えなくなるので、内燃機関2は停止することになる。
ここで、燃料ポンプ4に対する電源供給(電圧印加)を強制的に遮断すると同時に、燃料噴射弁1の開弁駆動及び点火を強制的に停止させることができる。
【0038】
更に、次のステップS109では、内燃機関2の再始動(燃料噴射・点火)を禁止する。
尚、前記再始動の禁止措置は、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましく、再始動の禁止装置の解除は、前記電子コントロールユニット11に対する外部からの解除信号の入力などによって行わせることができる。
【0039】
上記のように、燃料ポンプ4の動作を停止させ、内燃機関2を停止させれば、燃料配管内の圧力が過剰に高い状態のまま、燃料ポンプ4の駆動が継続されてしまうことを防止でき、燃料配管の継手部等からの燃料漏れや、燃料ポンプの過熱などを回避又は抑制できる。
本実施形態の燃料供給系には、リリーフバルブ9が備えられているため、プレッシャレギュレータ8がたとえ開弁しなくなった(閉固着した)としても、燃圧がリリーフバルブ9の開弁圧以上に上昇することはないが、上記のように、プレッシャレギュレータ8による調圧時よりも燃圧が高くなっていることを判断し、燃料ポンプ4の動作を停止させれば、高い燃圧のまま燃料ポンプ4の駆動が継続されてしまうことを防止できる。
【0040】
一方、車両の走行中(ファーストアイドル状態から車両を走行させ始めた後)に、燃料ポンプ4への電源供給を遮断し、内燃機関2を強制的に停止させると、運転者の運転意図に反する動きすることになるので好ましくない。
そこで、ステップS107で車速VSPが零でなく、車両の走行中である(ファーストアイドル状態から車両を走行させ始めた後)と判断された場合には、ステップS110へ進んで、燃料ポンプ4の印加電圧を強制的に低下させる処理を実行することで、内燃機関2の運転を継続させつつ、燃圧の低下を図る。
【0041】
そして、ステップS111では、キースイッチがオフされた後は、内燃機関2の再始動を禁止させる設定を行う。
この再始動の禁止措置も、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましい。
従って、車両を走行させてから、プレッシャレギュレータ8に故障が生じると、燃料ポンプ4の印加電圧を強制的に低下させる処理を実行させながら、内燃機関2の運転を継続させ、車両を停止させてキースイッチがオフされると、再始動が禁止され、プレッシャレギュレータ8が故障した状態のままでの再走行が回避される。
【0042】
尚、ステップS110における印加電圧の低下処理は、燃料ポンプ4の通電を制御する制御信号のデューティ比を一定値或いは一定割合だけ低下させる処理であっても良いし、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が初期値に近づくように、燃料ポンプ4の通電を制御する制御信号のデューティ比をフィードバック制御させる処理であってもよい。
【0043】
更に、車両の停止状態(ファーストアイドル状態)で、燃料供給系(プレッシャレギュレータ8)の異常を判定した場合も、燃料ポンプ4の印加電圧を強制的に低下させる処理をして、内燃機関2を停止させないようにしてもよく、また、再始動の禁止措置を行わない代わりに、燃料ポンプ4の動作開始時から、通常よりも低下させたデューティ比(電圧)で燃料ポンプ4を駆動させるようにすることができる。
【0044】
更に、燃料ポンプ4の印加電圧を低下させるときに、同時に、内燃機関2の負荷(吸入空気量)に制限を加えるようにすることができる。具体的には、モータでスロットルバルブを開閉する電子制御スロットルを備える機関では、前記電子制御スロットルの最大開度を、通常よりも小さく設定し、低開度領域でのみスロットル開度を変化させるようにする。
【0045】
以上の処理は、ステップS102で前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が下限値に張り付いている(減量側閾値を下回っている)と判断された場合、換言すれば、ベース空燃比がリッチ傾向である場合の処理である。
ステップS102で、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が上限値に張り付いている(増量側閾値を超えている)と判断され、ベース空燃比がリーン空燃比である場合、即ち、判定基準を超える増量補正状態であるときには、ステップS112へ進む。
【0046】
尚、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が上限値に張り付いている(増量側閾値を上回っている)状態が、基準時間以上に継続しているときに、ステップS112へ進むようにして、一時的な空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の増大変化が、燃料供給系の異常として判断されないようにできる。
ステップS112では、燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が最小電流判定値よりも低いか否かを判断する。
【0047】
前記最小電流判定値は、プレッシャレギュレータ8の調圧ばらつきや、燃料配管の圧力損失のばらつきなどを考慮し、プレッシャレギュレータ8で燃料圧力が調整されている状態での最小燃圧PMIN時の電流を基準に設定され、かつ、燃料ポンプ4の電源電圧、即ち、バッテリ電圧が高いほど、より高い値に設定される(図4参照)。
図4において、最小燃圧PMINを通る縦線α2と、12Vと付記された右肩上がりの直線βとの交点γ2が、12Vの電源電圧であるときに、プレッシャレギュレータ8で最小燃圧に調圧された場合の電流レベル、即ち、最小電流判定値SLMINを示し、燃料ポンプ4の電源電圧が高いほど、前記直線βは、電流が高くなる側に平行移動する。
【0048】
換言すれば、プレッシャレギュレータ8で正常に燃圧が調整されている場合には、燃料ポンプ4の電流が、最小電流判定値SLMINを下回ることはなく、燃料ポンプ4の電流が最小電流判定値SLMINを下回っている場合には、燃圧が正常範囲よりも低くなっていると推定できる。
即ち、プレッシャレギュレータ8が正常に調圧動作している場合には、前記最大電流判定値SLMAXと最小電流判定値SLMINとの間で、燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が変化し、燃料ポンプ4の電流が前記最大電流判定値SLMAXと最小電流判定値SLMINとで挟まれる領域から外れる場合には、プレッシャレギュレータ8が正常に調圧動作しておらず、燃圧が正常時(プレッシャレギュレータ8の設定圧)よりも高いか低いものと推定できる
そこで、ステップS112で、そのときの燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が最小電流判定値SLMINを下回っていると判断された場合には、燃圧が異常に低くなっていると推定され、然も、先にステップS102の判断で空燃比がリーン化する傾向にあることが判定されているから、燃料配管の破損による燃料漏れや、プレッシャレギュレータ8の開固着故障によって燃圧が低くなったために、燃料噴射弁1の単位開弁時間当たりの噴射量が正常時よりも少なくなっているものと推定される。
【0049】
上記のように、燃圧センサによって燃圧を直接的に検出することなく、燃圧が異常に低くなっている異常状態を検知でき、更に、空燃比がリーン化していることから、燃料漏れの発生を推定できる。
一方、ステップS112で、そのときの燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が最小電流判定値SLMIN以上である(SLMAX≧ポンプ電流≧SLMIN)と判断された場合には、空燃比がリーン化する傾向にあるものの、プレッシャレギュレータ8によって正常圧に調圧されており、少なくとも燃料供給系(プレッシャレギュレータ8)に異常はないと判断されるから、ステップS113へ進んで、前記燃料ポンプ4の通常制御をそのまま継続させる。
【0050】
ステップS112で、そのときの燃料ポンプ4の電流(ポンプ負荷)が最小電流判定値SLMINを下回っていると判断された場合は、ステップS114へ進み、燃料供給系の異常(低圧異常・漏れ発生)を車両の運転者に警告すべく、警告灯31を点灯させる。
更に、次のステップS115では、車両が走行中であるか否かを、車速センサ32で検出される車速VSPに基づいて判断する。
【0051】
車速VSPが略0km/hで車両が停止している場合(内燃機関2の始動後のファーストアイドル状態である場合)には、ステップS116へ進んで、燃料ポンプ4の通電を制御する制御信号のデューティ比を零にして、燃料ポンプ4に対する電源供給(電圧印加)を強制的に遮断して、燃料ポンプ4の動作を停止させる。
前記燃料ポンプ4の動作が停止すると、更に燃圧が低下し、たとえ燃料噴射弁1を開弁させたとしても、吸入空気量に見合う燃料を噴射させることができず、正常な着火燃焼が行えなくなるので、内燃機関2は停止することになる。
【0052】
ここで、燃料ポンプ4に対する電源供給(電圧印加)を強制的に遮断すると同時に、燃料噴射弁1の開弁駆動及び点火を強制的に停止させることができる。
更に、次のステップS117では、内燃機関2の再始動(燃料噴射・点火)を禁止する。
尚、前記再始動の禁止措置は、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましく、再始動の禁止装置の解除は、前記電子コントロールユニット11に対する外部からの解除信号の入力などによって行わせることができる。
【0053】
上記のように、燃料ポンプ4の動作を停止させ、内燃機関2を停止させれば、燃料配管内からの燃料漏れが発生している状態のまま内燃機関2の運転が継続されてしまうことを防止できる。
一方、ステップS115で車速VSPが零でなく、車両の走行中であると判断された場合(ファーストアイドル状態から車両を走行させ始めた後)には、ステップS118へ進んで、運転者に対して、車両を停車させ、かつ、内燃機関2を停止させる(キースイッチをオフする)ことを促す音声案内又は警告文の表示などを行う。
【0054】
次のステップS119では、前記運転停止の警告から一定時間が経過した時点で、内燃機関2の運転が継続されている場合に、内燃機関2を強制的に停止させる処理を実行することで、運転者が警告に従った操作を行わずに、運転が継続されてしまうことを防止する。
更に、ステップS120では、内燃機関2の再始動を禁止する設定を行う。
【0055】
この再始動の禁止措置も、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましい。
尚、上記実施形態では、図1に示したように、プレッシャレギュレータ8を燃料タンク10内に配置したが、図5に示すように、燃料ギャラリーパイプ3の下流側から燃料タンク10内に燃料を戻すリターン配管41を設け、前記リターン配管41の途中であって、前記燃料タンク10の外部に、プレッシャレギュレータ42を介装させることができる。
【0056】
そして、図5に示すように、プレッシャレギュレータ42を燃料タンク10の外側に配置した燃料供給系においても、図2,3のフローチャートに示した異常診断の処理をそのまま適用することが可能である。
次に、燃料噴射弁が内燃機関の燃焼室内(筒内)に直接燃料を噴射する筒内直接噴射式内燃機関に対して燃料を供給する燃料供給系を対象とする実施形態を説明する。
【0057】
図6は、筒内直接噴射式内燃機関における燃料供給系を示す図である。
燃料噴射弁51は、筒内直接噴射式内燃機関52の各気筒の燃焼室内(筒内)に燃料を直接噴射するように設置される燃料噴射装置である。
各燃料噴射弁51は燃料ギャラリーパイプ53に接続され、燃料ギャラリーパイプ53内の高圧燃料を、内燃機関52の各燃焼室内(筒内)に直接噴射する。
【0058】
前記燃料ギャラリーパイプ53には、高圧ポンプ(機関駆動式燃料ポンプ)54で昇圧された燃料が高圧燃料配管55を介して供給される。
前記高圧ポンプ54は、内燃機関52のカムシャフトに設けたカム54bによって往復動するピストン54aによって燃料を昇圧して吐出する機関駆動式のプランジャポンプである。
【0059】
前記高圧ポンプ54には、低圧ポンプ(電動式燃料ポンプ)56から吐出された燃料が低圧燃料配管57を介して供給される。
前記高圧ポンプ54の吸い込み口54cには、該吸い込み口54cを開閉する電磁弁58が介装されており、前記電磁弁58の開期間を可変に制御することで、高圧ポンプ54の吐出圧を制御できるようになっている。
【0060】
前記低圧ポンプ56は、電動式ポンプであり、内燃機関52の燃料を蓄える燃料タンク59の内部に固定され、燃料タンク59内の燃料を吸込口56aから吸い込んで、前記高圧ポンプ54に向けて圧送する。
尚、燃料フィルタ56bは、低圧ポンプ56の吸込口56aを覆うようにして設けられ、低圧ポンプ56が燃料中に混入するごみなどを吸い込まないようにしている。
【0061】
前記低圧燃料配管57は、低圧ポンプ56の吐出口に一端が接続され、燃料タンク59の上壁を貫通して高圧ポンプ58にまで延設されるが、燃料タンク59内に配設される低圧燃料配管57の部分には、リターン配管60の一端が接続され、該リターン配管60の他端は、燃料タンク59内に開放されている。
また、前記リターン配管60の途中には、該リターン配管60を開閉するプレッシャレギュレータ61が介装されている。
【0062】
前記プレッシャレギュレータ61は、前記低圧燃料配管57内(低圧系)の燃料の圧力が設定圧(目標圧)を超えたときに開弁し、前記低圧燃料配管57内の燃料の圧力が設定圧(目標圧)以下であるときに閉弁状態を保持する機械式の弁機構である。
前記プレッシャレギュレータ61が開弁して、低圧燃料配管57内の燃料が燃料タンク59内にリリーフされると、低圧燃料配管57内の燃料圧力が低下することになる。
【0063】
従って、前記低圧燃料配管57内の燃料の圧力が設定圧を超えたときに前記プレッシャレギュレータ61が開弁することで、前記低圧燃料配管57内の燃料の圧力が前記設定圧を超えることが阻止され、結果的に、前記低圧燃料配管57内の燃料の圧力が前記設定圧付近に保持されることになる。
これにより、高圧ポンプ58に対して一定圧の燃料を供給でき、前記電磁弁58の開期間を可変に制御することで、高圧ポンプ58の吐出圧、即ち、燃料噴射弁51への燃料の供給圧を高精度に制御できる。
【0064】
更に、前記低圧燃料配管57内の圧力が、前記プレッシャレギュレータ61における設定圧(目標圧)よりも高い許容最大圧を超えたときに開弁し、低圧燃料配管57内の燃料を燃料タンク59内にリリーフするリリーフバルブ62が、燃料タンク59内に配設される低圧燃料配管57の部分に設けられている。
尚、前記リリーフバルブ62は、前記燃料ポンプ56に内設させることが可能である。
【0065】
また、前記燃料ギャラリーパイプ53の下流側と燃料タンク59内とを接続する高圧リリーフ配管63が設けられており、該高圧リリーフ配管63の途中には、燃料ギャラリーパイプ53内(高圧系)の圧力が燃料噴射弁51への燃料の目標供給圧よりも高い限界圧(高圧系の許容最大圧)を超えたときに開弁する高圧リリーフバルブ64が設けられている。
【0066】
前記燃料噴射弁51による燃料噴射を制御する電子コントロールユニット(ECU)71には、各種センサからの検出信号が入力され、該検出信号に基づいて前記燃料噴射弁51に出力する開弁駆動パルス信号のパルス幅(燃料噴射量)を算出する。
前記各種センサとしては、内燃機関52の吸入空気流量QAを検出するエアフローセンサ72、内燃機関52のクランク軸の回転に応じたパルス信号CAを出力するクランク角センサ73、内燃機関52の排気管内の酸素濃度に基づき空燃比信号AFを出力する空燃比センサ74、前記燃料ギャラリーパイプ53内の燃料圧力を検出する圧力センサ75などが設けられている。
【0067】
前記電子コントロールユニット71は、前記エアフローセンサ72で検出された吸入空気流量QAと、クランク角センサ73からのパルス信号CAに基づいて算出される機関回転速度NEとから、基本噴射パルス幅TP(TP=K*QA/NE:Kは定数)を算出する。
また、前記電子コントロールユニット71は、前記基本噴射パルス幅TPを補正するための空燃比フィードバック補正係数KAFを、前記空燃比センサ74で検出される実際の空燃比と、目標空燃比(例えば理論空燃比)との偏差に基づく、比例・積分・微分動作によって設定する。
【0068】
上記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)で基本噴射パルス幅TPを補正することで、内燃機関52の実際の空燃比を目標空燃比に近づける空燃比フィードバック制御がなされる。
前記電子コントロールユニット71は、前記基本噴射パルス幅TPを、前記空燃比フィードバック補正係数KAFなどによって補正して、最終的な燃料噴射パルス幅TIを決定する。
【0069】
そして、前記パルス幅TIの開弁駆動パルス信号を、各燃料噴射弁1に対し、各気筒の吸気行程或いは圧縮行程にタイミングを合わせてそれぞれに出力する。
前記低圧ポンプ56は、モータでポンプを回転駆動する電動式のポンプであり、バッテリVBを電源として動作する。
前記バッテリVBは、電源リレー81及び前記電子コントロールユニット71に内蔵された駆動回路82を介して前記低圧ポンプ56(モータ)に接続され、更に、前記低圧ポンプ56(モータ)の駆動電流を検出する電流検出回路83が、前記電子コントロールユニット71内に設けられている。
【0070】
前記電子コントロールユニット71は、マイクロコンピュータ(CPU)84を備え、該マイクロコンピュータ(CPU)84は、前記駆動回路82に制御信号を出力し、前記駆動回路82によって低圧ポンプ56のデューティ比(オン時間割合)を調整して、低圧ポンプ56への印加電圧を制御する。
更に、前記電流検出回路83で検出された駆動電流値の情報が、前記マイクロコンピュータ(CPU)84に入力されるようになっている。
【0071】
また、電子コントロールユニット71(マイクロコンピュータ84)は、前記圧力センサ75の出力を入力し、圧力センサ75で検出される前記燃料ギャラリーパイプ53内の燃料圧力が、設定圧(目標圧)に近づくように、前記電磁弁58の開期間をフィードバック制御する。
また、前記電子コントロールユニット11は、前記低圧ポンプ56、プレッシャレギュレータ61、低圧燃料配管57、電磁弁58を含んでなる燃料供給系における異常の有無を診断する演算処理機能を備えている。
【0072】
図7〜図9のフローチャートに示すルーチンは、図6に示した筒内直接噴射式内燃機関52の燃料供給系における異常診断の処理を示すものである。
ステップS201では、通常に低圧ポンプ56への通電制御を行う。
前記通常の通電制御とは、例えば、機関負荷TP及び機関回転速度NEに応じて低圧ポンプ56(モータ)のオンデューティを決定する処理であり、換言すれば、内燃機関52の燃料消費量に応じて低圧ポンプ56の印加電圧(吐出量)を制御する処理である。
【0073】
但し、低圧ポンプ56に対して一定電圧を印加するように構成することができる。
ステップS202では、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が、上限値(増量側判定基準)に張り付いているか(KAF=上限値)、下限値(増量側判定基準)に張り付いているか(KAF=下限値)、上限値と下限値とで挟まれる可変範囲内の値であるか(下限値<KAF<上限値)を判断する。
【0074】
前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の初期値は1.0であり、KAF>1.0で燃料噴射量(噴射パルス幅)を増量補正し、KAF<1.0で燃料噴射量(噴射パルス幅)を減量補正することになる。
従って、実際の空燃比が目標空燃比よりもリーンであれば、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)を1.0よりも大きくすることで燃料噴射量を増量補正して空燃比をリッチ化させ、実際の空燃比が目標空燃比よりもリッチであれば、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)を1.0よりも小さくすることで燃料噴射量を減量補正して空燃比をリーン化させる。
【0075】
そして、前記上限値は、空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の可変範囲の上限を定めた値であり、実際の空燃比が目標よりもリーンであっても、前記空燃比フィードバック補正係数KAFが上限値を超えないようにしてある。
また、前記下限値は、空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の可変範囲の下限を定めた値であり、実際の空燃比が目標よりもリッチであっても、前記空燃比フィードバック補正係数KAFが下限値を下回る値に設定されないように制限され、前記上限値と下限値とで挟まれる初期値を含む可変範囲内で、空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が変更される。
【0076】
ここで、前記ステップS202の判定において、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が上下限値に張り付いているか否かを判定させる代わりに、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が増量側閾値(>1.0)を超えているか、減量側閾値(<1.0)を下回っているかを判断させる構成とし、かつ、前記増量側閾値を上限値よりも小さい値に設定し、前記減量側閾値を下限値よりも大きい値に設定させることができる。
【0077】
但し、前記上下限値及び前記増量・減量側閾値(増量側判定基準・減量側判定基準)は、プレッシャレギュレータ61による調整圧のばらつきや燃料噴射弁51の噴射量ばらつき、更に、エアフローセンサ72の検出ばらつきなどを要因とする空燃比のばらつきを吸収する場合には、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が到達しない値であり、燃料供給系や燃料噴射弁51や噴射量演算に用いる各種センサなどに異常が生じ、通常のばらつき範囲を超える空燃比変化が生じた場合に、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が達するような値に設定されているものとする。
【0078】
尚、空燃比フィードバック補正係数KAFの値を機関の運転領域毎に空燃比学習補正値として学習し、該空燃比学習補正値と空燃比フィードバック補正係数KAFとで噴射パルス幅を補正することで、空燃比フィードバック補正係数KAFによる補正なしで目標空燃比付近に補正できるようにする場合には、前記空燃比学習補正値又は空燃比フィードバック補正係数KAFと空燃比学習補正値とを総合した補正レベルが、閾値を超えているか否かを判断させるようにする。
【0079】
ステップS202で、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が、上限値と下限値とで挟まれる可変領域内の値である(又は、増量・減量側閾値で挟まれる正常領域内である)と判断された場合には、燃料供給系に異常はないものと判断し、ステップS203へ進んで、前記低圧ポンプ56の通常制御をそのまま継続させる。
一方、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が下限値に張り付いている(減量側閾値を下回っている)と判断された場合、即ち、判定基準を超える減量補正状態であるときには、ステップS204へ進む。
【0080】
尚、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が下限値に張り付いている(減量側閾値を下回っている)状態が、基準時間以上に継続しているときに、ステップS204へ進むようにして、一時的な空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の減少変化が、燃料供給系の異常として判断されないようにできる。
ステップS204では、低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値よりも高いか否かを判断する。
【0081】
前記最大電流判定値は、プレッシャレギュレータ61の調圧ばらつきや、燃料配管の圧力損失のばらつきなどを考慮し、プレッシャレギュレータ61で低圧燃料配管57内の燃料圧力が調整されている状態での最大燃圧PMAX時の電流を基準に設定され、かつ、低圧ポンプ56の電源電圧、即ち、バッテリ電圧が高いほど、より高い値に設定される(図4参照)。
【0082】
図4において、最大燃圧PMAXを通る縦線α1と、12Vと付記された右肩上がりの直線βとの交点γ1が、12Vの電源電圧であるときに、プレッシャレギュレータ61で最大燃圧に調圧された場合の電流レベル、即ち、最大電流判定値SLMAXを示し、低圧ポンプ56の電源電圧が高いほど、前記直線βは、電流が高くなる側に平行移動し、最大電流判定値SLMAXも高くなる。
【0083】
換言すれば、プレッシャレギュレータ61で正常に燃圧が調整されている場合には、低圧ポンプ56の電流が、最大電流判定値SLMAXを超えることはなく、低圧ポンプ56の電流が最大電流判定値SLMAX(最大値)を超えている場合には、燃圧が正常範囲を超えて高くなっていると推定できる。
そこで、ステップS204で、そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAXを超えていると判断された場合には、プレッシャレギュレータ61の閉固着故障によって、低圧系の燃圧がプレッシャレギュレータ61の設定圧を超えて異常に高くなっていると推定される。
【0084】
また、先にステップS202の判断で空燃比がリッチ化する傾向にあることが判定されているから、プレッシャレギュレータ8の閉固着故障によって低圧系(低圧燃料配管57内)での燃圧が設定圧よりも高くなったために、高圧燃料配管55の燃圧を電磁弁58の制御によって目標圧付近に制御できず、高圧系における燃圧も目標圧よりも高くなっているものと推定される。
【0085】
一方、ステップS204で、そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAX以下であると判断された場合には、空燃比がリッチ化する傾向にあるものの、プレッシャレギュレータ8によって正常圧(設定圧)に調圧されており、少なくとも低圧系に異常はないと判断されるから、ステップS205へ進んで、前記低圧ポンプ56の通常制御をそのまま継続させる。
【0086】
ステップS204で、そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAXを超えていると判断された場合は、ステップS206へ進み、燃料供給系(プレッシャレギュレータ61)の異常(高圧異常)を車両の運転者に警告すべく、警告灯31を点灯させる。
これにより、運転者は、燃料供給系に異常が発生したことを知ることができ、その後にフェイルセーフ処理がなされた場合にその要因を認識することができ、また、車両を停止させるなどの対応を行えることになる。
【0087】
更に、次のステップS207では、車両が走行中であるか否かを、車速センサ76で検出される車速VSPに基づいて判断する。
車速VSPが0km/hで車両が停止している場合(内燃機関52の始動後のファーストアイドル状態である場合)には、ステップS208へ進んで、低圧ポンプ56の通電を制御する制御信号のデューティ比を零にして、低圧ポンプ56に対する電源供給(電圧印加)を強制的に遮断して、燃料ポンプ4の動作を停止させる。
【0088】
ここで、低圧ポンプ56に対する電源供給(電圧印加)を強制的に遮断すると同時に、燃料噴射弁51の開弁駆動及び点火を強制的に停止させることができる。
更に、次のステップS209では、内燃機関52の再始動(燃料噴射・点火)を禁止する。
尚、前記再始動の禁止措置は、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましく、再始動の禁止装置の解除は、前記電子コントロールユニット71に対する外部からの解除信号の入力などによって行わせることができる。
【0089】
上記のように、低圧ポンプ56の動作を停止させ、内燃機関52を停止させれば、低圧系の燃料配管内の圧力が過剰に高い状態のまま運転が継続されてしまうことを防止でき、燃料ポンプの過熱などを回避できる。
本実施形態の燃料供給系には、リリーフバルブ62,64が設けられているため、プレッシャレギュレータ61がたとえ開弁しなくなった(閉固着した)としても、低圧系及び高圧系の燃圧がリリーフバルブ62,64の開弁圧以上に上昇することはないが、上記のように、プレッシャレギュレータ61による正常な調圧時よりも燃圧が高くなっていることを判断し、低圧ポンプ56の動作を停止させれば、高い燃圧のまま運転が継続されてしまうことを防止できる。
【0090】
一方、車両の走行中(ファーストアイドル状態から車両を走行させ始めた後)に、低圧ポンプ56への電源供給を遮断し、内燃機関52を停止させると、車両が不用意に減速してしまうことになるので好ましくない。
そこで、ステップS207で車速VSPが零でなく、車両の走行中である(ファーストアイドル状態から車両を走行させ始めた後)と判断された場合には、ステップS210へ進んで、低圧ポンプ56の印加電圧を強制的に低下させる処理を実行することで、内燃機関52の運転を継続させつつ、燃圧の低下を図る。
【0091】
そして、ステップS211では、キースイッチがオフされた後は、内燃機関52の再始動を禁止させる設定を行う。
この再始動の禁止措置も、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましい。
従って、車両を走行させてから、プレッシャレギュレータ61に故障が生じると、低圧ポンプ56の印加電圧を強制的に低下させる処理を実行させながら、内燃機関52の運転を継続させ、車両を停止させてキースイッチがオフされると、再始動が禁止され、プレッシャレギュレータ61が故障した状態のままでの再走行が回避される。
【0092】
尚、ステップS210における印加電圧の低下処理は、低圧ポンプ56の通電を制御する制御信号のデューティ比を一定値或いは一定割合だけ低下させる処理であっても良いし、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が初期値に近づくように、低圧ポンプ56の通電を制御する制御信号のデューティ比をフィードバック制御させる処理であってもよい。
【0093】
更に、車両の停止状態(ファーストアイドル状態)で、燃料供給系(プレッシャレギュレータ61)の異常を判定した場合も、低圧ポンプ56の印加電圧を強制的に低下させる処理をして、内燃機関52を停止させないようにしてもよく、また、再始動の禁止措置を行わない代わりに、低圧ポンプ56の動作開始時から、通常よりも低下させたデューティ比(電圧)で低圧ポンプ56を駆動させるようにすることができる。
【0094】
更に、低圧ポンプ56の印加電圧を低下させるときに、同時に、内燃機関52の負荷(吸入空気量)に制限を加えるようにすることができる。具体的には、モータでスロットルバルブを開閉する電子制御スロットルを備える機関では、前記電子制御スロットルの最大開度を、通常よりも小さく設定し、低開度領域でのみスロットル開度を変化させるようにする。
【0095】
上記の処理は、ステップS202で前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が下限値に張り付いている(減量側閾値を下回っている)と判断された場合、換言すれば、ベース空燃比がリッチ傾向である場合の処理である。
尚、ベース空燃比とは、空燃比を目標空燃比に近づけるための補正を行わない場合の空燃比を示す。
【0096】
ステップS202で、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が上限値に張り付いている(増量側閾値を超えている)と判断され、ベース空燃比がリーン空燃比である場合、即ち、判定基準を超える増量補正状態であるときには、ステップS212以降の処理と、ステップS221以降の処理とを並行して実行する。
尚、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が上限値に張り付いている(増量側閾値を上回っている)状態が、基準時間以上に継続しているときに、ステップS212及びステップS221へ進むようにして、一時的な空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)の増大変化が、燃料供給系の異常として判断されないようにできる。
【0097】
ステップS212では、低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最小電流判定値よりも低いか否かを判断する。
前記最小電流判定値は、プレッシャレギュレータ61の調圧ばらつきや、燃料配管の圧力損失のばらつきなどを考慮し、プレッシャレギュレータ61で燃料圧力が調整されている状態での最小燃圧PMIN時の電流を基準に設定され、かつ、低圧ポンプ56の電源電圧、即ち、バッテリ電圧が高いほど、より高い値に設定される(図4参照)。
【0098】
図4において、最小燃圧PMAXを通る縦線α2と、12Vと付記された右肩上がりの直線βとの交点γ2が、12Vの電源電圧であるときに、プレッシャレギュレータ61で最小燃圧に調圧された場合の電流レベル、即ち、最小電流判定値SLMINを示し、低圧ポンプ56の電源電圧が高いほど、前記直線βは、電流が高くなる側に平行移動する。
換言すれば、プレッシャレギュレータ61で正常に燃圧が調整されている場合には、低圧ポンプ56の電流が、最小電流判定値SLMINを下回ることはなく、低圧ポンプ56の電流が最小電流判定値SLMINを下回っている場合には、低圧系の燃圧が正常範囲よりも低くなっていると推定できる。
【0099】
即ち、プレッシャレギュレータ61が正常に調圧動作している場合には、前記最大電流判定値SLMAXと最小電流判定値SLMINとの間で、低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が変化し、低圧ポンプ56の電流が前記最大電流判定値SLMAXと最小電流判定値SLMINとで挟まれる領域から外れる場合には、プレッシャレギュレータ61が正常に調圧動作しておらず、低圧系の燃圧が正常時(プレッシャレギュレータ8の設定圧)よりも高いか低いものと推定できる。
【0100】
そこで、ステップS212で、そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最小電流判定値SLMINを下回っていると判断された場合には、低圧燃料配管57内の燃圧が異常に低くなっていると推定される。
然も、先にステップS202の判断で空燃比がリーン化する傾向にあることが判定されているから、燃料配管の破損による燃料漏れや、プレッシャレギュレータ61の開固着故障によって、低圧燃料配管57内での燃圧が設定圧よりも低くなったことで、高圧燃料配管55内の圧力も目標圧に制御できずに低下したものと推定される。
【0101】
一方、ステップS212で、そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最小電流判定値SLMIN以上であると判断された場合には、空燃比がリーン化する傾向にあるものの、プレッシャレギュレータ61によって正常圧に調圧されており、少なくとも低圧燃料供給系に異常はないと判断されるから、ステップS213へ進んで、前記低圧ポンプ56の通常制御をそのまま継続させる。
【0102】
ステップS212で、そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最小電流判定値SLMINを下回っていると判断された場合は、ステップS214へ進み、燃料供給系の異常(低圧異常・漏れ発生)を車両の運転者に警告すべく、警告灯31を点灯させる。
更に、次のステップS215では、車両が走行中であるか否かを、車速センサ76で検出される車速VSPに基づいて判断する。
【0103】
車速VSPが0km/hで車両が停止している場合(内燃機関52の始動後のファーストアイドル状態である場合)には、ステップS216へ進んで、低圧ポンプ56の通電を制御する制御信号のデューティ比を零にして、低圧ポンプ56に対する電源供給を遮断することで、高圧ポンプ54への燃料供給を停止し、燃料噴射を不能として、内燃機関52を強制的に停止させる。
【0104】
ここで、低圧ポンプ56に対する電源供給(電圧印加)を強制的に遮断すると同時に、燃料噴射弁51の開弁駆動及び点火を強制的に停止させることができる。
更に、次のステップS217では、内燃機関52の再始動(燃料噴射・点火)を禁止する。
尚、前記再始動の禁止措置は、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましく、再始動の禁止装置の解除は、前記電子コントロールユニット71に対する外部からの解除信号の入力などによって行わせることができる。
【0105】
上記のように、低圧ポンプ56の動作を停止させ、内燃機関52を停止させれば、燃料配管内からの燃料漏れが発生している状態のまま運転が継続されてしまうことを防止できる。
一方、ステップS215で車速VSPが零でなく、車両の走行中であると判断された場合(ファーストアイドル状態から車両を走行させ始めた後)には、ステップS218へ進んで、運転者に対して、車両を停車させ、かつ、内燃機関52を停止させる(キースイッチをオフする)ことを促す音声案内又は警告文の表示などを行う。
【0106】
次のステップS219では、前記運転停止の警告から一定時間が経過した時点で、内燃機関52の運転が継続されている場合に、内燃機関52を強制的に停止させる処理を実行することで、運転者が警告に従った操作を行わずに、運転が継続されてしまうことを防止する。
更に、ステップS220では、内燃機関52の再始動を禁止する設定を行う。
【0107】
この再始動の禁止措置も、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましい。
一方、ステップS221では、そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が、前述した最大電流判定値SLMAX以下であるか否かを判断する。
そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAX以下であると判断された場合には、空燃比がリーン化する傾向にあるものの、プレッシャレギュレータ61によって正常圧に調圧されており、少なくとも低圧燃料供給系に異常はないと判断されるから、ステップS222へ進んで、前記低圧ポンプ56の通常制御をそのまま継続させる。
【0108】
ステップS221で、そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAXを超えていると判断された場合は、プレッシャレギュレータ61の閉固着によって低圧燃料配管57内での燃圧が設定圧よりも高くなっているものと推定される。
また、内燃機関52の空燃比がリーン化する傾向であることが判定されており、低圧系の燃圧が正常時よりも高いのに、空燃比がリーン化している場合には、前記電磁弁58の閉固着の可能性がある。
【0109】
即ち、電磁弁58が閉固着すると、たとえ低圧系の燃圧が高くなっていたとしても、高圧ポンプ54への燃料供給が行われないことで、燃料噴射弁51からの噴射量が不足し、空燃比がリーン化し、前記空燃比フィードバック補正係数KAF(空燃比補正値)が上限値に張り付く(増量側閾値を超える)ようになる。
従って、ステップS221で、そのときの低圧ポンプ56の電流(ポンプ負荷)が最大電流判定値SLMAXを超えていると判断された場合には、プレッシャレギュレータ61及び電磁弁58の閉固着を推定し、ステップS223へ進む。
【0110】
ステップS223では、燃料供給系の異常(低圧系の圧力異常上昇&噴射不能異常)を車両の運転者に警告すべく、警告灯31を点灯させる。
更に、次のステップS224では、車両が走行中であるか否かを、車速センサ76で検出される車速VSPに基づいて判断する。
車速VSPが0km/hで車両が停止している場合(内燃機関52の始動後のファーストアイドル状態である場合)には、ステップS225へ進んで、低圧ポンプ56の通電を制御する制御信号のデューティ比を零にして、低圧ポンプ56に対する電源供給を遮断することで、高圧ポンプ54への燃料供給を停止し、燃料噴射を不能として、内燃機関52を強制的に停止させる。
【0111】
ここで、低圧ポンプ56に対する電源供給(電圧印加)を強制的に遮断すると同時に、燃料噴射弁51の開弁駆動及び点火を強制的に停止させることができる。
更に、次のステップS226では、内燃機関52の再始動(燃料噴射・点火)を禁止する。
尚、前記再始動の禁止措置は、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましく、再始動の禁止装置の解除は、前記電子コントロールユニット71に対する外部からの解除信号の入力などによって行わせることができる。
【0112】
上記のように、低圧ポンプ56の動作を停止させ、内燃機関52を停止させれば、低圧系内の圧力が異常に高い状態での運転を速やかに終了させることができ、また、空燃比のオーバーリーンによる排気温度の上昇を抑制・回避して、排気系部品(空燃比センサ、触媒等)を保護することができる。
一方、ステップS224で車速VSPが零でなく、車両の走行中であると判断された場合(ファーストアイドル状態から車両を走行させ始めた後)には、ステップS227へ進んで、運転者に対して、車両を停車させ、かつ、内燃機関52を停止させる(キースイッチをオフする)ことを促す音声案内又は警告文の表示などを行う。
【0113】
次のステップS228では、前記運転停止の警告から一定時間が経過した時点で、内燃機関52の運転が継続されている場合に、内燃機関52を強制的に停止させる処理を実行することで、運転者が警告に従った操作を行わずに運転が継続されてしまうこと、換言すれば、低圧系が高い圧力状態でかつ空燃比のオーバーリーン状態のまま放置されることを防止する。
【0114】
更に、ステップS229では、内燃機関52の再始動を禁止する設定を行う。
この再始動の禁止措置も、何らかのメンテナンスがなされるまで解除されないようにすることが好ましい。
上記実施形態では、電動ポンプである燃料ポンプ4,低圧ポンプ56を燃料タンク内に配置したが、燃料タンクの外側に配置される構成でもよい。
【0115】
また、プレッシャレギュレータ9,42,61は、機械式の弁機構の他、電子制御される電磁弁であっても良く、更に、プレッシャレギュレータを備えず、燃料圧力が目標圧力に近づくように、電動式燃料ポンプの吐出量(印加電圧)を制御するよう構成された燃料供給系であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施形態におけるポート噴射式内燃機関の燃料供給系のシステム図である。
【図2】図1の燃料供給系に適用される診断処理を示すフローチャートである。
【図3】図1の燃料供給系に適用される診断処理を示すフローチャートである。
【図4】上記診断処理に用いる電流の判定基準の特性を説明するための線図である。
【図5】図2,3の診断処理の適用が可能な燃料供給系の別の例を示すシステム図である。
【図6】本発明の実施形態における筒内直接噴射式内燃機関の燃料供給系のシステム図である。
【図7】図6の燃料供給系に適用される診断処理を示すフローチャートである。
【図8】図6の燃料供給系に適用される診断処理を示すフローチャートである。
【図9】図6の燃料供給系に適用される診断処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0117】
1…燃料噴射弁(燃料噴射装置)、2…内燃機関、3…燃料ギャラリーパイプ、4…燃料ポンプ、5…燃料タンク、8,42,61…プレッシャレギュレータ、9…リリーフバルブ、10…燃料タンク、11…電子コントロールユニット(ECU)、12,72…エアフローセンサ、13,73…クランク角センサ、14,74…空燃比センサ、32,76…車速センサ、23…電流検出回路、54…高圧ポンプ、56…低圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料噴射装置に対し、燃料ポンプによって燃料を圧送する燃料供給系の診断装置であって、
前記燃料ポンプの制御状態と、前記内燃機関における空燃比制御状態とから、前記燃料供給系における異常の有無を判定する内燃機関の燃料供給系の診断装置。
【請求項2】
前記燃料ポンプが電動式の燃料ポンプであり、かつ、前記内燃機関の空燃比が目標空燃比に近づくように前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正するための空燃比補正値がフィードバック制御され、前記燃料ポンプの駆動電流と前記空燃比補正値とから、前記燃料供給系における異常の有無を判定することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料供給系の診断装置。
【請求項3】
前記電動式の燃料ポンプの駆動電流が閾値よりも大きく、かつ、空燃比補正値が判定基準を超える減量補正状態であるときに、前記燃料供給系の異常を判定することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の燃料供給系の診断装置。
【請求項4】
前記電動式の燃料ポンプの駆動電流が閾値よりも小さく、かつ、空燃比補正値が判定基準を超える増量補正状態であるときに、前記燃料供給系の異常を判定することを特徴とする請求項2記載の内燃機関の燃料供給系の診断装置。
【請求項5】
前記燃料供給系の異常が判定された場合に、前記電動式の燃料ポンプに印加する電圧を小さく制限することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料供給系の診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−53741(P2010−53741A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218405(P2008−218405)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】