説明

内燃機関の運転制御方法

【課題】2台のターボ過給機を直列に配した従来の内燃機関において、その駆動トルクを増大する必要が生じた場合、出力増大が一時的に途切れる場合がある。
【解決手段】第1のターボ過給機23と、この第1のターボ過給機23よりも排気通路22の上流側にこれと直列に配されてエンジン10の低回転領域にて主として用いられる第2のターボ過給機24と、第1のターボ過給機23の排気タービン23eを迂回する第1のバイパス通路35を開閉するための第1の開閉弁36と、第2のターボ過給機24の吸気タービン24iを迂回する第3のバイパス通路30を開閉するための第3の開閉弁31とを具えた本発明による内燃機関の運転制御方法は、エンジン10に関する駆動トルクの増大要求があった場合、第1の開閉弁36を閉じて第1のバイパス通路35を塞いだ後、第3の開閉弁31を開いて第3のバイパス通路30を開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1のターボ過給機と、この第1のターボ過給機に対して直列に配された第2のターボ過給機とを具えた内燃機関の運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の出力の向上を企図して複数のターボ過給機を組み込んだ内燃機関が特許文献1や特許文献2などで知られている。これらは何れも第1のターボ過給機と、この第1のターボ過給機よりも排気通路の上流側にこれと直列に配されて内燃機関の低回転領域にて主として用いられる第2のターボ過給機とを具えている。また、このような構成の場合、第1のターボ過給機の排気タービンを迂回する第1のバイパス通路を開閉するための第1の開閉弁や、第2のターボ過給機の排気タービンを迂回する第2のバイパス通路を開閉するための第2の開閉弁も一般的に具えている。
【0003】
特許文献1には、車両が高回転かつ高負荷運転領域にある場合、第1の開閉弁を全閉状態に制御すると共に第2の開閉弁を全開状態に制御し、第1のターボ過給機を最大限に機能させるようにした技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、車両が低回転かつ低負荷運転領域にあって、排気温を上昇させることが望まれる場合、第1の開閉弁を全閉状態に制御すると共に第2の開閉弁を全開状態に制御するようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−191667号公報
【特許文献2】特開2010−203426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、第1の開閉弁の閉弁動作と第2の開閉弁の開弁動作とを同時に制御しているため、第1の開閉弁が全閉状態にならないうちに第2の開閉弁を介して第2のバイパス通路から第1のバイパス通路へと排気の一部が流入する可能性がある。この結果、一時的に内燃機関の出力が低下する、いわゆる息継ぎ現象が発生するおそれがある。
【0007】
特許文献2においては、車両が低回転かつ低負荷運転領域にあるにもかかわらず第1の開閉弁を全閉状態に制御すると共に第2の開閉弁を全開状態に制御しているため、すべての吸気が第1のターボ過給機の吸気タービンを通過することとなる。この結果、負圧が発生してタービン回転軸から潤滑油の吸い出しが起こり、潤滑油の消費が増大してしまう問題が生ずる。しかも、過給効率の悪い第1のターボ過給機の排気タービンに敢えて排気を導いているため、燃費も悪化してしまう問題があった。
【0008】
本発明の目的は、複数のターボ過給機が組み込まれた内燃機関において、出力の上昇と燃費の抑制とを両立させ得る内燃機関の運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による内燃機関の運転制御方法は、第1のターボ過給機と、この第1のターボ過給機よりも排気通路の上流側にこれと直列に配されて内燃機関の低回転領域にて主として用いられる第2のターボ過給機と、前記第1のターボ過給機の排気タービンを迂回する第1のバイパス通路を開閉するための第1の開閉弁と、前記第2のターボ過給機の排気タービンを迂回する第2のバイパス通路を開閉するための第2の開閉弁と、前記第2のターボ過給機の吸気タービンを迂回する第3のバイパス通路を開閉するための第3の開閉弁とを具えた内燃機関の運転制御方法であって、内燃機関に関する駆動トルクの増大要求の有無を判定するステップと、内燃機関に関する駆動トルクの増大要求があった場合、前記第1の開閉弁を閉じて前記第1のバイパス通路を塞ぐステップと、前記第1の開閉弁を閉じて前記第1のバイパス通路を塞いだ後、前記第3の開閉弁を開いて前記第3のバイパス通路を開放するステップとを具えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明によると、内燃機関に関する駆動トルクの増大要求があった場合、第1の開閉弁を閉じて第1のバイパス通路を塞ぎ、すべての排気が第1のターボ過給機の排気タービンへと導かれ、第1のターボ過給機による過給が始まる。次いで、第3の開閉弁を開いて第3のバイパス通路を開放し、第1のターボ過給機の吸気タービンにて過給された吸気が第3の開閉弁が配された第3のバイパス通路を通って内燃機関へと導かれる。
【0011】
本発明による内燃機関の運転制御方法において、第3の開閉弁を開いて第3のバイパス通路を開放した後、第2の開閉弁を開いて第2のバイパス通路を開放するステップをさらに具えることができる。
【0012】
また、第3の開閉弁の上流側および下流側の前記第3のバイパス通路の圧力を検出するステップをさらに具え、第3の開閉弁の上流側および下流側の第3のバイパス通路の圧力差が所定値以下の場合、第2の開閉弁を開いて第2のバイパス通路を開放するステップを実行することが好ましい。
【0013】
第1のターボ過給機に連結されてこれを駆動し得る補助駆動モーターをさらに具え、第1の開閉弁を閉じて第1のバイパス通路を塞いだ後、補助駆動モーターを駆動して第1のターボ過給機の回転上昇を補助するステップをさらに具えることができる。この場合、第1の開閉弁を開いて第1のバイパス通路に排気を導くことによって第1のターボ過給機の過回転を抑制するステップと、この第1のターボ過給機の過回転を抑制するステップに先立って、補助駆動モーターに対する通電を停止するステップとをさらに具えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の内燃機関の運転制御方法によると、内燃機関に関する駆動トルクの増大要求があった場合、第1のバイパス通路を塞いだ後、第3のバイパス通路を開放するようにしたので、排気をすべて第1の排気ターボ過給機の排気タービンへと導くことができる。この結果、過給圧の低下を抑制して過給のいわゆる息継ぎ現象を防止し、より自然な加速感を得ることができる。
【0015】
第3のバイパス通路を開放した後、第2のバイパス通路を開放するようにした場合、第1のターボ過給機によって得られる過給圧が第3のバイパス通路へと導かれる結果、吸気のポンピングロスを低減して燃費の向上を図ることができる。
【0016】
第3の開閉弁の上流側および下流側の第3のバイパス通路の圧力差が所定値以下の場合、第2のバイパス通路を開放するステップを実行することにより、この第2のバイパス通路を開放するステップを確実に第3のバイパス通路を開放した後に行うことができる。
【0017】
第1のバイパス通路を塞いだ後、補助駆動モーターを駆動して第1のターボ過給機の回転上昇を補助するようにした場合、第1のターボ過給機による過給圧の迅速な上昇を見込むことができる。
【0018】
第1のターボ過給機の過回転を抑制する際に、あらかじめ補助駆動モーターに対する通電を停止するようにした場合、無駄な電力消費を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の対象となる内燃機関の吸排気系を模式的に表す概念図である。
【図2】第1および第2のターボ過給機に関する流量と圧力比と効率との関係を模式的に表すグラフである。
【図3】図1に示した実施形態における過給圧の制御手順を表すフローチャートである。
【図4】図1に示した実施形態におけるアクセルペダルの開度と、第1および第2のターボ過給機のタービン軸回転速度と、吸気バイパス弁,第1排気バイパス弁,第2排気バイパス弁の開閉状態と、補助駆動モーターに対する通電のオン/オフとの関係を模式的に表すタイムチャートである。
【図5】図1に示した実施形態における過給圧の別な制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による運転制御方法をシーケンシャルタイプの2段式ターボ過給機が組み込まれた圧縮点火方式の内燃機関に対して応用した実施形態について、図1〜図4を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、本発明はこのような実施形態のみに限らず、要求される特性に応じてその構成を自由に変更することが可能である。例えば、ガソリンやアルコールまたはLNG(液化天然ガス)などを燃料としてこれを点火プラグにて着火させる火花点火式内燃機関に対しても本発明は有効である。
【0021】
本実施形態におけるエンジンシステムの主要部を模式的に図1に示すが、吸排気のための動弁機構やスロットル弁およびEGR装置の他、エンジンの円滑な運転に必要なセンサー類の一部なども便宜的に省略している。
【0022】
本実施形態におけるエンジン10は、燃料である軽油を燃料噴射弁11から圧縮状態にある燃焼室12内に直接噴射することにより、自然着火させる圧縮点火式の多気筒(図示例では4気筒)内燃機関である。しかしながら、本発明の特性上、単気筒の内燃機関であってもかまわない。この燃料噴射弁11から燃焼室12内に供給される燃料量および噴射時期は、車両の運転状態に基づいてECU(Electronic Control Unit)15により制御される。ここで言う車両の運転状態は、クランク角センサー13によって検出されるエンジン10のクランク角位相や、運転者によるアクセルペダル14の踏み込み量などを含む。アクセルペダル14の踏み込み量は、アクセル開度センサー16によって検出され、その検出情報がECU15に出力される。本実施形態では、ECU15がアクセル開度センサー16からの検出情報に基づき、アクセルペダル14の踏み込み量の変化率、つまりアクセル開度の変化率αnを連続的に算出する。そして、これが正の所定値αRを越えた場合、エンジン10の駆動トルクの増大要求があると判断する。
【0023】
吸気マニホールド17を介してエンジン10に接続する吸気管18は、吸気マニホールド17と共に吸気通路19を画成する。同様に、排気マニホールド20を介してエンジン10に接続する排気管21は、排気マニホールド20と共に排気通路22を画成する。
【0024】
第1および第2のターボ過給機23,24は、これら吸気管18と排気管21とに跨がって直列に配されている。エンジン10の低回転領域にて主として用いられる第2のターボ過給機24は、第1のターボ過給機23よりも吸気通路19の下流側、つまり排気通路22の上流側に配されている。
【0025】
本実施形態における第1のターボ過給機23のタービン軸23aには、ECU15により作動が制御される誘導形の補助駆動モーター25が連結されている。エンジン10の駆動トルクの増大要求があった場合、ECU15は補助駆動モーター25に通電して相対的に慣性質量の大きなタービン軸23aの迅速な回転上昇を助ける。本実施形態において、補助駆動モーター25に対する通電は、後述する第1排気バイパス弁の全閉直後に行うことにより、無駄な電力消費を極力回避している。
【0026】
第1のターボ過給機23の吸気タービン23iが位置する吸気通路19の上流側および下流側の吸気管18には、この吸気管18に対して並列に配される第1吸気バイパス管26との分岐部27dおよび合流部27cが形成されている。つまり、第1吸気バイパス管26は、その両端が吸気通路19の上流側の分岐部27dと下流側の合流部27cとで吸気管18に接続し、第1のターボ過給機23の吸気タービン23iを迂回する第1吸気バイパス通路27を画成する。従って、分岐部27dにて吸気通路19から分岐する第1吸気バイパス通路27は、第1のターボ過給機23の吸気タービン23iを迂回した状態でその下流側の合流部27cにて吸気通路19に再び合流する。
【0027】
第1吸気バイパス管26の途中には、第1吸気バイパス通路27を開閉し得る機械式の逆止め弁28が組み込まれており、この逆止め弁28の上流側と下流側との差圧に応じてその開度が自動的に変更されるようになっている。
【0028】
なお、本発明においては、上述した第1吸気バイパス通路27や逆止め弁28を省略することも可能であるが、逆止め弁28を設けたことにより、タービン軸23aの回転を潤滑するための潤滑油が吸気通路19側に吸い出されるのを防止することができる。
【0029】
第2のターボ過給機24の吸気タービン24iが位置する吸気通路19の上流側および下流側の吸気管18には、この吸気管18に対して並列に配される第2吸気バイパス管29との分岐部30dおよび合流部30cが形成されている。つまり、第2吸気バイパス管29は、その両端が吸気通路19の上流側の分岐部30dと下流側の合流部30cとで吸気管18に接続し、第2のターボ過給機24の吸気タービン24iを迂回する第2吸気バイパス通路30を画成する。従って、分岐部30dにて吸気通路19から分岐する第2吸気バイパス通路30は、本発明における第3のバイパス通路として機能し、第2のターボ過給機24の吸気タービン24iを迂回した状態でその下流側の合流部30cにて吸気通路19に再び合流する。なお、吸気管18と第2吸気バイパス管29との分岐部30dは、先の第1吸気バイパス管26と吸気管18との合流部27cよりも吸気通路19の下流側に位置している。
【0030】
第2吸気バイパス管29の途中には、第2吸気バイパス通路30を開閉するための吸気バイパス弁31が本発明の第3の開閉弁として設けられている。この吸気バイパス弁3125には、吸気バイパス弁駆動モーター32が連結され、その作動が車両の運転状態に応じてECU15により制御される。なお、この吸気バイパス弁31の開度を検出するための図示しない弁開度センサーを吸気バイパス弁31に連結し、その検出情報をECU15に出力することも有効である。この場合、弁開度センサーからの情報に基づいて後述する第2排気バイパス弁駆動モーターの作動開始時期をより適切に制御することが可能となる。
【0031】
吸気管18と第2吸気バイパス管29との合流部29cよりもさらに下流側の吸気管18には、吸気通路19を流れる吸気の充填密度を高めるために吸気を冷却するインタークーラー33が組み込まれている。
【0032】
一方、第1のターボ過給機23の排気タービン23eが位置する排気通路22の上流側および下流側の排気管21には、この排気管21に対して並列に配される第1排気バイパス管34との分岐部35dおよび合流部35cが形成されている。つまり、第1排気バイパス管34は、その両端が排気通路22の上流側の分岐部35dと下流側の合流部35cとで排気管21に接続し、第1のターボ過給機23の排気タービン23eを迂回する第1排気バイパス通路35を画成する。従って、分岐部35dにて排気通路22から分岐する第1排気バイパス通路35は、本発明における第1のバイパス通路として機能し、第1のターボ過給機23の排気タービン36bを迂回した状態でその下流側の合流部35cにて排気通路22に合流する。
【0033】
第1排気バイパス管34の途中には、第1排気バイパス通路35を開閉するための第1排気バイパス弁36が本発明における第1の開閉弁として設けられている。この第1排気バイパス弁36には、第1排気バイパス弁駆動モーター37が連結され、その作動が車両の運転状態に応じてECU15により制御される。なお、この第1排気バイパス弁36の開度を検出するための図示しない弁開度センサーを第1排気バイパス弁36に連結し、その検出情報をECU15に出力することも有効である。この場合、弁開度センサーからの情報に基づいて先の吸気バイパス弁駆動モーター32の作動開始時期をより適切に制御することが可能となる。
【0034】
第2のターボ過給機24の排気タービン24eが位置する排気通路22の上流側および下流側の排気管21には、この排気管21に対して並列に配される第2排気バイパス管38との分岐部39dおよび合流部39cが形成されている。つまり、第2排気バイパス管38は、その両端が排気通路22の上流側の分岐部39dと下流側の合流部39cとで排気管21に接続し、第2のターボ過給機24の排気タービン24eを迂回する第2排気バイパス通路39を画成する。従って、分岐部39dにて排気通路22から分岐する第2排気バイパス通路39は、本発明における第2のバイパス通路として機能し、第2のターボ過給機24の排気タービン24eを迂回した状態でその下流側の合流部39cにて排気通路22に再び合流する。なお、排気管21と第2排気バイパス管38との合流部39cは、排気管21と先の第1排気バイパス管34との分岐部35dよりも排気通路22の上流側に位置している。
【0035】
第2排気バイパス管38の途中には、第2排気バイパス通路39を開閉するための第2排気バイパス弁40が本発明における第2の開閉弁として設けられている。この第2排気バイパス弁40には、第2排気バイパス弁駆動モーター41が連結され、その作動が車両の運転状態に応じてECU15により制御される。
【0036】
排気管21と第1排気バイパス管34との合流部35cよりも下流側に位置する排気管21には、燃焼室12内での混合気の燃焼により生成する有害物質を無害化するための排気浄化装置42が連結されている。この排気浄化装置42により、エンジン10から排出される排気中の有害物質が吸着または無害化され、清浄な排気が排気管21から大気中に放出される。
【0037】
先のECU15は、アクセル開度センサー16からの検出情報に基づき、アクセルペダル開度の変化率αnを算出し、これが正の所定値αR以上であると判断した場合、運転者が車両の加速を要求していると判断し、以下に説明する本発明の制御を実行する。すなわち、ECU15は第1排気バイパス弁36を閉じて第1排気バイパス通路35を塞いだ後、吸気バイパス弁31を開いて第2吸気バイパス通路30を開放する。さらにその後、第2排気バイパス弁40を開いて第2排気バイパス通路39を開放する。これにより、排気をすべて第1の排気ターボ過給機23の排気タービン23eへと導くことができる。この結果、過給圧の低下を抑制して過給のいわゆる息継ぎ現象を防止し、より自然な加速感を得ることができる。しかも、第1のターボ過給機23によって得られる過給圧が第2吸気バイパス通路30へと導かれる結果、吸気のポンピングロスを低減して燃費の向上を図ることができる。
【0038】
ここで、第1および第2のターボ過給機23,24の過給効率を図2に模式的に示す。破線の等高線が第1のターボ過給機23の効率を示し、実線が第2のターボ過給機24の効率を示しており、実線の等高線で示す第2のターボ過給機24が有効に働くパーシャル域、つまりエンジン10の低回転領域である。このパーシャル域においては、第1のターボ過給機23が機能しないように、ECU15は第1排気バイパス弁36の開度を全閉以外に制御する。換言すると、エンジン回転速度Neが例えばNR(一般的な乗用自動車の場合、例えば毎分2200回転程度)以下のパーシャル域から外れている場合、第1のターボ過給機23のタービン軸23aはある程度高速回転しているので、上述した本発明の制御は実行されない。なお、エンジン回転速度Neは、クランク角センサー13からの検出情報に基づいてECU15にて算出される。
【0039】
このような過給圧の制御手順を図3に示す。また、アクセルペダル14の開度と第1排気バイパス弁36,第2排気バイパス弁40,吸気バイパス弁31の開閉状態と第1および第2のターボ過給機23,24のタービン軸回転速度と補助駆動モーター25に対する通電のオン/オフとの関係を模式的に図4に示す。すなわち、まずS1のステップにてアクセル開度の変化率αnが所定値αRよりも大きいか否かを判定する。アクセル開度の変化率αnが所定値αR以下である、すなわち運転者が車両の加速を希望していないと判断した場合には、何もせずに終了する。
【0040】
また、S1のステップにてアクセル開度の変化率αnが所定値αRよりも大きい、すなわちエンジン10に関する駆動トルクの増大要求があったと判断した場合には、S2のステップに移行する。そして、エンジン回転速度Neが所定値NRよりも小さいか否かを判定し、ここでエンジン回転速度Neが所定値NR以上である、すなわちエンジン10がパーシャル領域にないと判断した場合には、何もせずに終了する。これは、第1のターボ過給機23の23aの回転がすでに上昇しているため、本発明の制御を実行する必要がないからである。
【0041】
また、S2のステップにてエンジン回転速度Neが所定値NRよりも小さい、すなわちエンジン10がパーシャル領域にあると判断した場合には、S3のステップに移行する。このS3のステップでは、第1排気バイパス弁駆動モーター37を駆動し、第1排気バイパス弁36を強制的に全閉状態に移行させる。このようにして第1排気バイパス通路35を完全に閉鎖し、エンジン10からの排気をすべて第1のターボ過給機23の排気タービン23eに流入させ、第1のターボ過給機23を作動させる。
【0042】
次いで、S4のステップにて補助駆動モーター25に通電し、第1のターボ過給機23のタービン軸23aの迅速な回転上昇を図る。なお、補助駆動モーター25を組み込まない場合には、図4中の二点鎖線で示すように、第1のターボ過給機23のタービン軸回転速度の上昇が緩慢となることに注意されたい。つまり、補助駆動モーター25を用いることによって、アクセルペダル14の踏み込み操作に対する出力の応答性を高めることができる。本実施形態では、第1排気バイパス弁36が全閉状態になった時点で補助駆動モーター25に対する通電が行われる。
【0043】
しかる後、S5のステップに移行して吸気バイパス弁駆動モーター32を駆動し、吸気バイパス弁31を強制的に全開状態に移行させる。この結果、第1のターボ過給機23によって得られる過給圧が吸気バイパス通路30および第2の過給機24の吸気タービン24iの両方に供給されることとなり、過給圧の低下を抑制して過給のいわゆる息継ぎ現象を防止し、より自然な加速感を得ることができる。
【0044】
吸気バイパス弁31が全開状態に移行したならば、直ちにS6のステップに移行して第2排気バイパス弁40を全開状態に移行させ、エンジン10からの排気を第2排気バイパス通路39から第1のターボ過給機23の排気タービン23eへと導く。これにより、第2のターボ過給機24に対する負荷が回避され、先の第1のターボ過給機23の作動によって得られる過給圧が吸気バイパス通路30へと導かれる結果、吸気のポンピングロスを低減して燃費の向上を図ることができる。
【0045】
次に、S7のステップにてアクセル開度の変化率αnが所定値αR以下であるか否か、つまりエンジン10に関する駆動トルクの増大要求の有無が判定される。ここで、アクセル開度の変化率αnが所定値αR以下になった、すなわちエンジン10に関する駆動トルクの増大要求がないと判断した場合には、S8のステップに移行して補助駆動モーター25に対する通電を停止する。次いで、S9のステップにて第1排気バイパス弁36の開度をこの時の運転状態に応じてECU15により第1排気バイパス弁駆動モーター25を介して制御し、再びS1のステップに戻ってアクセル開度の変化率αnが所定値αRよりも大きいか否かを判定する。
【0046】
このように、エンジン10のパーシャル域にて駆動トルクの増大要求があった場合、第1排気バイパス弁36の全閉→吸気バイパス弁31の全開→第2排気バイパス弁40の全開の順に制御することにより、吸気の息継ぎを確実に防止することができる。また、第1のターボ過給機23のタービン軸23aの過回転を抑制するために第1排気バイパス弁36の全閉状態を解除する場合、第1排気バイパス弁36の駆動に先立って補助駆動モーター25に対する通電を停止するため、無駄な電力消費電力を抑制できる。
【0047】
なお、先の電動式の吸気バイパス弁31に代えて機械式の差圧開閉弁を組み込むことも可能である。このような差圧開閉弁は、その上流側と下流側との間の第2吸気バイパス通路30の圧力差、つまり差圧に応じて第2吸気バイパス通路30を開閉するようになっている。この場合、差圧開閉弁の上流側および下流側の第2吸気バイパス通路30の圧力を検出してその検出情報をECU15に出力する一対の圧力センサー43,44を第2吸気バイパス管29に組み込み、この検出情報に基づいて先の第2排気バイパス弁40を駆動する。つまり、ECU15は、圧力センサー43,44によって検出される差圧ΔPが所定値PR以下になった場合に差圧開閉弁が全開状態であると判断し、第2排気バイパス弁駆動モーター41を作動させることができる。本実施形態の場合、吸気バイパス弁駆動モーター32が不要になる。
【0048】
このような本発明による他の実施形態の制御手順を図5に示すが、先の実施形態と同一ステップにはこれと同じステップ番号を記すに止め、重複する説明は省略するものとする。すなわち、S1のステップにてアクセル開度の変化率αnが所定値αRよりも大きいか否かを判定し、ここでアクセル開度の変化率αnが所定値αRよりも大きいと判断した場合には、S2のステップに移行する。S2のステップにてエンジン回転速度Neが所定値NRよりも小さいと判断した場合には、S3のステップに移行して第1排気バイパス弁駆動モーター37を駆動し、第1排気バイパス弁36を強制的に全閉状態に移行させる。次いで、S4のステップにて補助駆動モーター25に通電し、第1のターボ過給機23のタービン軸23aの迅速な回転上昇を図る。
【0049】
次に、S15のステップにて圧力センサー43,44によって検出される圧力の差圧ΔPが所定値PR未満であるか否かを判定し、差圧ΔPが所定値PR以下となるまでこの処理を継続する。そして、差圧ΔPが所定値PR以下である、すなわち吸気バイパス弁31が全開状態に移行したと判断した場合には、S6のステップに移行して第2排気バイパス弁駆動モーター41を作動して第2排気バイパス弁40を全開状態に移行させる。これにより、エンジン10からの排気を第2排気バイパス通路39から第1のターボ過給機23の排気タービン23eへと導く。
【0050】
次に、S7のステップにてアクセル開度の変化率αnが所定値αR以下であるか否かを判定する。ここで、アクセル開度の変化率αnが所定値αR以下になった、すなわちエンジン10に関する駆動トルクの増大要求が終了したと判断した場合には、S8のステップに移行して補助駆動モーター25に対する通電を停止する。この後は、再びS1のステップに戻ってアクセル開度の変化率αnが所定値αRよりも大きいか否かを判定するが、第1排気バイパス弁36の開度を車両の運転状態に応じて制御する先のS9のステップを実行することも当然可能である。
【0051】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【符号の説明】
【0052】
10 エンジン
11 燃料噴射弁
12 燃焼室
13 クランク角センサー
14 アクセルペダル
15 ECU
16 アクセル開度センサー
17 吸気マニホールド
18 吸気管
19 吸気通路
20 排気マニホールド
21 排気管
22 排気通路
23 第1のターボ過給機
23a タービン軸
23i 吸気タービン
23e 排気タービン
24 第2のターボ過給機
24i 吸気タービン
24e 排気タービン
25 補助駆動モーター
26 第1吸気バイパス管
26d 分岐部
26c 合流部
27 第1吸気バイパス通路
28 逆止め弁
29 第2吸気バイパス管
29d 分岐部
29c 合流部
30 第2吸気バイパス通路
31 吸気バイパス弁
32 吸気バイパス弁駆動モーター
33 インタークーラー
34 第1排気バイパス管
34d 分岐部
34c 合流部
35 第1排気バイパス通路
36 第1排気バイパス弁
37 第1排気バイパス弁駆動モーター
38 第2排気バイパス管
38d 分岐部
38c 合流部
39 第2排気バイパス通路
40 第2排気バイパス弁
41 第2排気バイパス弁駆動モーター
42 排気浄化装置
43,44 圧力センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のターボ過給機と、
この第1のターボ過給機よりも排気通路の上流側にこれと直列に配されて内燃機関の低回転領域にて主として用いられる第2のターボ過給機と、
前記第1のターボ過給機の排気タービンを迂回する第1のバイパス通路を開閉するための第1の開閉弁と、
前記第2のターボ過給機の排気タービンを迂回する第2のバイパス通路を開閉するための第2の開閉弁と、
前記第2のターボ過給機の吸気タービンを迂回する第3のバイパス通路を開閉するための第3の開閉弁と
を具えた内燃機関の運転制御方法であって、
内燃機関に関する駆動トルクの増大要求の有無を判定するステップと、
内燃機関に関する駆動トルクの増大要求があった場合、前記第1の開閉弁を閉じて前記第1のバイパス通路を塞ぐステップと、
前記第1の開閉弁を閉じて前記第1のバイパス通路を塞いだ後、前記第3の開閉弁を開いて前記第3のバイパス通路を開放するステップと
を具えたことを特徴とする内燃機関の運転制御方法。
【請求項2】
前記第3の開閉弁を開いて前記第3のバイパス通路を開放した後、前記第2の開閉弁を開いて前記第2のバイパス通路を開放するステップをさらに具えたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の運転制御方法。
【請求項3】
前記第3の開閉弁の上流側および下流側の前記第3のバイパス通路の圧力を検出するステップをさらに具え、前記第3の開閉弁の上流側および下流側の前記第3のバイパス通路の圧力差が所定値以下の場合、前記第2の開閉弁を開いて前記第2のバイパス通路を開放するステップが実行されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の運転制御方法。
【請求項4】
前記第1のターボ過給機に連結されてこれを駆動し得る補助駆動モーターをさらに具え、
前記第1の開閉弁を閉じて前記第1のバイパス通路を塞いだ後、前記補助駆動モーターを駆動して前記第1のターボ過給機の回転上昇を補助するステップをさらに具えたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の内燃機関の運転制御方法。
【請求項5】
前記第1の開閉弁を開いて前記第1のバイパス通路に排気を導くことによって前記第1のターボ過給機の過回転を抑制するステップと、
この第1のターボ過給機の過回転を抑制するステップに先立って、前記補助駆動モーターに対する通電を停止するステップと
をさらに具えたことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−108475(P2013−108475A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256046(P2011−256046)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】