説明

内燃機関

【課題】ロッカシャフトを用いる内燃機関において、シリンダヘッドとヘッドカバーとの間の限られたスペース内でのロッカシャフトの配置を容易にする。
【解決手段】ヘッドカバー2によってカムシャフト12及びロッカシャフト14を支持する。具体的には、カムシャフト12はヘッドカバー2の内側に形成された複数のジャーナル部4とそれらジャーナル部4のそれぞれに取り付けられたカムキャップ6とで構成される軸受けによって支持し、ロッカシャフト14はカムキャップ6に形成された貫通穴10によって支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関し、詳しくは、各気筒のロッカアームをロッカシャフトによって支持する構造の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の内燃機関におけるカムシャフト周辺の構造の一例が開示されている。特許文献1に開示された構造では、シリンダヘッドの上部にカムキャリア(カムホルダ)が取り付けられ、カムシャフトはこのカムキャリアによって支持されている。シリンダヘッドの上部にはシリンダヘッドをシリンダブロックに組み付けるためのヘッドボルトが突き出ているため、カムキャリアはヘッドボルトとの干渉を回避するように取り付けられている。
【0003】
一方、特許文献2には、カムシャフトの軸受けの上側部分をヘッドカバーと一体に形成した構造が開示されている。この構造では、カムシャフトはヘッドカバーとヘッドカバーに取り付けられる軸受け下側部分とによって支持される。この構造によれば、シリンダヘッド上にカムキャリアを取り付ける構造に比較して、ヘッドボルトとの干渉を回避するために必要となる設計上の制約は少なくてすむ。
【0004】
また、カムシャフトの回転をバルブに伝達する動弁機構としては、カムによってバルブリフタを直接駆動する直動式のものと、ロッカアームを介してバルブを駆動するロッカアーム式のものとが知られている。さらに、ロッカアーム式の動弁機構には、大別して二つの形式が存在する。1つの形式は、特許文献1に開示されているように、複数のロッカアームのそれぞれをラッシュアジャスタによって個別に支持する構造のものである。そして、もう1つの形式は、特許文献3に開示されているように、複数のロッカアームを一本のロッカシャフトによって支持する構造のものである。特許文献3に開示された構造では、ロッカシャフトはシリンダヘッド上に組みつけられている。
【特許文献1】特開2003−155904号公報
【特許文献2】特開平7−166956号公報
【特許文献3】特開2005−155332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、シリンダヘッド上にはヘッドボルトが突き出ている。このため、ロッカシャフトをシリンダヘッド上に組み付ける場合、ロッカシャフトやロッカシャフトを支持するための支持部材がヘッドボルトと干渉しないように設計することが求められる。しかしながら、シリンダヘッド上のスペースは限られており、その限られたスペースの中でロッカシャフトや支持部材がヘッドボルトと干渉しないように設計することは容易ではなかった。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ロッカシャフトを用いる内燃機関において、シリンダヘッドとヘッドカバーとの間の限られたスペース内でのロッカシャフトの配置を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、シリンダヘッドとヘッドカバーとの間にカムシャフト及びロッカシャフトが収容される内燃機関において、
前記ヘッドカバーに前記カムシャフト及び前記ロッカシャフトが取り付けられていることを特徴としている。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、
前記カムシャフトは前記ヘッドカバーの内側に形成された複数のジャーナル部と前記複数のジャーナル部のそれぞれに取り付けられたカムキャップとで構成される軸受けによって支持され、
前記ロッカシャフトは前記カムキャップに形成された貫通穴によって支持されていることを特徴としている。
【0009】
第3の発明は、第1の発明において、
前記カムシャフトは前記ヘッドカバーの内側に形成された複数のジャーナル部と前記複数のジャーナル部のそれぞれに取り付けられたカムキャップとで構成される軸受けによって支持され、
前記ロッカシャフトは前記ジャーナル部に形成された貫通穴によって支持されていることを特徴としている。
【0010】
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、
前記ヘッドカバーは、マグネシウム合金で形成されていることを特徴としている。
【0011】
第5の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、
前記ヘッドカバーは、樹脂複合材で形成されていることを特徴としている。
【0012】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明において、
前記ロッカシャフトには複数のロッカアームが回転自在に支持され、前記複数のロッカアームのそれぞれに貫通穴が形成されていることを特徴としている。
【0013】
第7の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明において、
前記ロッカシャフトには複数のロッカアームが回転自在に支持され、前記ヘッドカバーの側面には前記複数のロッカアームを下から支える棒状部材を通すための穴が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、ロッカシャフトをカムシャフトとともにヘッドカバーに取り付けることで、シリンダヘッド上にはロッカシャフトやカムシャフトを支持するための支持部材を取り付ける必要がなく、ヘッドボルトとの干渉を回避するために必要となる設計上の制約は少なくてすむ。
【0015】
第2の発明によれば、複数のカムキャップがロッカシャフトによって串刺しにされるので、ヘッドカバーにカムキャップを組み付ける際、複数のカムキャップがばらけることなくそれらを一体的に取り扱うことが可能になる。
【0016】
第3の発明によれば、ロッカシャフトが貫通する貫通穴をヘッドカバーに形成されたジャーナル部に設けることで、ロッカシャフトを支持する部位の剛性を確保することができる。
【0017】
第4の発明によれば、ヘッドカバーをマグネシウム合金とすることで、内燃機関の軽量化とともにロッカシャフトから発生する振動を低減することもできる。
【0018】
第5の発明によれば、ヘッドカバーを樹脂複合材とすることで、内燃機関の軽量化とともにロッカシャフトから発生する振動を低減することもできる。
【0019】
第6の発明によれば、ヘッドカバーをシリンダヘッドに取り付ける際、複数のロッカアームのそれぞれに形成れた貫通穴に一本の棒状部材を通すことで、複数のロッカアームが自重で個々に回転してしまうことを防止してヘッドカバーのシリンダヘッドへの取付けを容易にすることができる。
【0020】
第7の発明によれば、ヘッドカバーをシリンダヘッドに取り付ける際、ヘッドカバーの側面に形成された穴に棒状部材を通し、この棒状部材で複数のロッカアームを下から支えることで、複数のロッカアームが自重で個々に回転してしまうことを防止してヘッドカバーのシリンダヘッドへの取付けを容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図を用いて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態としての内燃機関のカムシャフト及びロッカシャフトの支持構造を示す図である。図1にはヘッドカバー2の一部の断面を示している。ヘッドカバー2は図示しないシリンダヘッドの上部に取り付けられ、その内部にカムシャフト12及びロッカシャフト14を収容する。ヘッドカバー2の材料にはマグネシウム合金が用いられている。
【0022】
ヘッドカバー2の内側にはジャーナル部4が形成されている。このジャーナル部4とジャーナル部4に取り付けられるカムキャップ6とにより、カムシャフト12を支持する軸受けが構成されている。カムキャップ6の材料にもマグネシウム合金が用いられている。カムキャップ6のジャーナル部4への取り付けには、カムキャップボルト8が用いられている。なお、ジャーナル部4はカムシャフト12の軸方向に複数形成されている。そして、そのそれぞれにカムキャップ6が取り付けられている。各カムキャップ6には同位置に貫通穴10が形成されている。ロッカシャフト14はこの貫通穴10を通り、この貫通穴10によって支持されている。ロッカシャフト14には複数のロッカアーム16が回転自在に支持されている。
【0023】
図1に示す構造では、ロッカシャフト14はカムシャフト12とともにヘッドカバー2に取り付けられている。この構造によれば、ロッカシャフト14やカムシャフト12を支持するための支持部材をシリンダヘッド上に取り付ける必要がない。したがって、この構造には、ヘッドボルトとの干渉を回避するために必要となる設計上の制約は少なくてすむという利点がある。また、カムキャップ6はロッカシャフト14によって串刺しにされるので、ヘッドカバー2にカムキャップ6を組み付ける際、複数あるカムキャップ6がばらけることがなく、それらを一体的に取り扱うことができるという利点もある。
【0024】
各ロッカアーム16には、ロッカアーム16をロッカシャフト14の軸方向と同方向に貫通する穴18が設けられている。この穴18の使用方法は、図2及び図3を用いて説明することができる。図2に示すように、ロッカアーム16に形成した穴18は、一本の棒状部材であるサーベル20を通すために用いられる。また、図3に示すように、ヘッドカバー2の側面にもサーベル20を通すための穴22が形成されている。ヘッドカバー2の穴22の位置は、ロッカアーム16の穴18の位置に対応している。
【0025】
サーベル20をヘッドカバー2の穴22に通し、さらに各ロッカアーム16の穴18に順に通していくことで、各ロッカアーム16のロッカシャフト14を軸とする回転を拘束することができる。これによれば、ヘッドカバー2をシリンダヘッドに取り付ける際、複数のロッカアーム16が自重で個々に回転してしまうことを防止することができ、ヘッドカバー2の取り付け作業を容易にすることができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、次のように変形して実施してもよい。
【0027】
上記実施の形態では、ロッカアーム16に形成した穴18にサーベル20を通しているが、図4に示すようにサーベル20によってロッカアーム16を下から支えるだけでもよい。ただし、図3に示すようにヘッドカバー2には穴22を設けておき、サーベル20はこの穴22に通して固定する。サーベル20でロッカアーム16を下から支えることで、ヘッドカバー2をシリンダヘッドに取り付ける際、ロッカアーム16が自重で個々に回転してしまうことを防止することができる。
【0028】
図5に示すように、ジャーナル部4にロッカシャフト14を支持するための貫通穴24を設けてもよい。ジャーナル部4はヘッドカバー2と一体であるので、図5に示す構造によれば、ロッカシャフト14を支持する部位の剛性を高めることができる。
【0029】
また、ヘッドカバー2及びカムキャップ6の材料としては樹脂複合材やアルミニウム合金を用いてもよい。これら部品の材料としてマグネシウム合金や樹脂複合材或いはアルミニウム合を用いることで、内燃機関の軽量化とともにロッカシャフトから発生する振動を低減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態としてのカムシャフト及びロッカシャフトの支持構造を示す図である。
【図2】ロッカアームにサーベルを差し込んだ状態を示す図である。
【図3】ヘッドカバーにサーベルを差し込んだ状態を示す図である。
【図4】ロッカアームをサーベルで下から支えた状態を示す図である。
【図5】カムシャフト及びロッカシャフトの支持構造の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
2 ヘッドカバー
4 ジャーナル部
6 カムキャップ
8 キャップボルト
10 貫通穴
12 カムシャフト
14 ロッカシャフト
16 ロッカアーム
18 サーベル通し穴
20 サーベル
22 サーベル通し穴
24 貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドとヘッドカバーとの間にカムシャフト及びロッカシャフトが収容される内燃機関において、
前記ヘッドカバーに前記カムシャフト及び前記ロッカシャフトが取り付けられていることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記カムシャフトは前記ヘッドカバーの内側に形成された複数のジャーナル部と前記複数のジャーナル部のそれぞれに取り付けられたカムキャップとで構成される軸受けによって支持され、
前記ロッカシャフトは前記カムキャップに形成された貫通穴によって支持されていることを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項3】
前記カムシャフトは前記ヘッドカバーの内側に形成された複数のジャーナル部と前記複数のジャーナル部のそれぞれに取り付けられたカムキャップとで構成される軸受けによって支持され、
前記ロッカシャフトは前記ジャーナル部に形成された貫通穴によって支持されていることを特徴とする請求項1記載の内燃機関。
【請求項4】
前記ヘッドカバーはマグネシウム合金で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記ヘッドカバーは樹脂複合材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記ロッカシャフトには複数のロッカアームが回転自在に支持され、前記複数のロッカアームのそれぞれに貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記ロッカシャフトには複数のロッカアームが回転自在に支持され、前記ヘッドカバーの側面には前記複数のロッカアームを下から支える棒状部材を通すための穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−190427(P2008−190427A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25903(P2007−25903)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】