説明

内皮細胞の発現プロファイルを用いた組織炎症応答の評価方法

本発明は、組織炎症応答を評価する方法であって、サンプル中の、表1に示される少なくとも5種の転写産物、またはそれによりコードされるタンパク質のレベルの定量的測定を行うステップ;および、かように測定された該転写産物またはタンパク質の量を、対照サンプルより得られた該転写産物のレベルと比較するステップ、を含む方法を提供する。組織炎症応答に関連する症状の診断のための方法、同様に、これらの方法での使用に好適な遺伝子チップアレイおよびタンパク質に基づくアッセイも提供される。組織炎症応答またはそれに関連する症状のモジュレーターを決定するためのアッセイ方法もまた、本発明の一部をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内皮細胞の遺伝子発現プロファイル、ならびに疾患症状の評価および治療法におけるこれらのプロファイルの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
組織内への白血球の遊走は免疫系、粘膜表面、子宮内膜、乳腺および卵巣の正常機能の重要部分である。一方、血管内腔から組織内への白血球の遊走は炎症応答によっても刺激されうる。炎症は損傷または感染に対する身体の応答であり、典型的には、内皮壁を通過して組織内へ進入する白血球およびタンパク質の移動を伴う。
【0003】
炎症応答には多数のシグナリング分子が関与する。これらのうちのいくつかは、内皮に作用して、内皮細胞が互いにあまり強固に接着しないよう、および/または通過する白血球に対してそれらの表面を接着性にするようにする。他のシグナルは白血球に対する誘引物質として作用し、または白血球上での接着分子の発現を促進する。さらに他のシグナルが白血球の活性化および生存を調節する。
【0004】
シグナリング分子には、血管透過性の増大に関与する「急速遊離(quick release)」メディエーター、例えばヒスタミンが含まれる。これらは、より後の段階の「プロセス誘発性(process induced)」メディエーターと相乗的に作用する。これらの、より後の段階のメディエーターには、白血球を炎症領域内へ誘引するケモカイン、ならびに後に炎症細胞および活性化内皮細胞から放出されるサイトカインが含まれる。
【0005】
TNF−α、IL−1βおよびIL−8は、炎症部位に高濃度で見出される炎症メディエーターであり、内皮細胞はこれらのメディエーターに対する受容体を有する(1〜3)。
【0006】
TNF−αは、最初はマクロファージから単離された原始型サイトカインであるが、現在では、リンパ球、単球、好中球、T細胞、筋細胞および平滑筋細胞をはじめとする種々の細胞により生成されることが知られている。多種多様な細胞タイプにおいて、TNF−αがTNF受容体1に出会うことによりアポトーシスの開始が引き起こされる。受容体結合は持続性NF−κB活性化をも引き起こし、これは、炎症応答だけでなく細胞生存の増強およびTNF−α誘発性アポトーシスに対する抵抗性の増強にも関与するある範囲の遺伝子の発現に必要である。TNF−αにより内皮細胞においても活性化されるシグナリング経路は、ホスファチジルイノシトール(PI)キナーゼ依存性キナーゼ、ストレス活性化プロテインキナーゼ(SAPK)およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)を含む(3、4)。
【0007】
IL−1βはもう1つの原始型サイトカインである。分泌されるIL−1βの主な供給源は単球であるが、これは、主に活性化マクロファージ、好中球、血小板、T細胞およびB細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、内皮細胞、SMC(平滑筋細胞)ならびに線維芽細胞をはじめとする多種多様な他の細胞タイプによっても生成される。IL−1βは前駆体として合成され、タンパク質分解により切断されると、免疫および炎症における役割を有する多数の細胞タイプを活性化しうる。TNF−αの場合と同様に、IL−1βはNF−κB(核因子κB)生存経路およびMAPKカスケードp42/p44、p38およびJnkを活性化する(5)。
【0008】
IL−8は、血管新生に密接に関連しているケモカインである。IL−8の主な供給源は単球、好中球、T細胞、NK細胞、内皮細胞、線維芽細胞および上皮細胞である。IL−8は組織内への白血球の移行の過程および炎症応答の他の局面に関与する。その産生は構成的ではなく、前炎症性サイトカインによって誘導される。in vitroで、IL−8はヘパリンに結合し、内皮細胞の遊走、増殖および生存を誘導する(6)。IL−8およびその受容体は血管新生ならびに腫瘍の進行に決定的に重要であるらしい(7、8)。
【0009】
TNF−α、IL−1およびIL−8のような炎症の分子メディエーターは、内皮細胞、線維芽細胞および白血球のような炎症組織内の標的細胞に作用する。例えばこれらの3種のような炎症メディエーターの組合せの効果は相乗的である。すなわち、これらの因子の「協同」作用はそれらの個々の効果の総和とは異なる場合が多い。
【0010】
炎症性疾患において典型的に見られるとおり、組織の炎症応答は、典型的には、組織内への白血球およびタンパク質の異常または過剰な移動を伴う。このことは多数の急性または慢性炎症性障害を引き起こしうる。基本的には炎症性疾患ではないが組織が炎症応答を示している状態においても、白血球およびタンパク質の移動は何らかの役割を果たしうる。例えば、アテローム硬化および子宮内膜症の疾患は病変部への白血球の遊走によって生じうる。卒中または心臓発作において生じる組織壊死の修復も炎症応答を要する。腫瘍成長は、血管から腫瘍内へ遊走する白血球により調節される場合がある。これらの白血球は、腫瘍細胞増殖および腫瘍血管新生を直接的に促進する因子を放出する。また、腫瘍内へ遊走する白血球は、腫瘍細胞特異的抗原に対する免疫応答およびそれに続く抗腫瘍効果を媒介する。したがって、腫瘍成長における炎症の役割は複雑であり、促進性経路と抑制性経路との間の平衡を含む。
【非特許文献1】Schraufstatter, I. U., Chung, J., and Burger, M. (2001) IL-8 activates endothelial cell CXCR1 and CXCR2 through Rho and Rac signaling pathways. American Journal of Physiology 280, L1094-L1103
【非特許文献2】Dinarello, C. A. (1998) Interlukin-1, interleukin-1 receptors and interleukin-1 receptor antagonist. Intern Rev Immunol 16, 457-499
【非特許文献3】Aggarwal, B. B. (2000) Tumour necrosis factor receptors associated signalling molecules and their role in activation of apoptosis, JNK and NF-kB. Annals of Rheumatic Disease 59 (suppl), i6-i16
【非特許文献4】Madge, L. A., and Pober, J. S. (2001) TNF Signalling in Vascular Endothelial Cells. Experimental and Molecular Pathology 70, 317-325
【非特許文献5】O'Neill, L. A. J., and Dinarello, C. A. (2000) The IL-1 receptor/toll-like receptor superfamily: crucial receptors for inflammation and host defense. Immunology Today 21, 206-209
【非特許文献6】Li, A., Dubey, S., Varney, M. L., and Singh, R. K. (2002) Interleukin-8-induced proliferation, survival, and MMP production in CXCR1 AND CXCR2 expressing human umbilical vein endothelial cells. Microvascular Research 64, 476-481
【非特許文献7】Strieter, R. M., Polverini, P. J., Arenberg, D. A., Walz, A., Opdendakker, G., Van Damme, J., and Kunkel, S. L. (1995) Role of C-X-C chemokines as regulators of angiogenesis in lung cancer. Journal of Leukocyte Biology 57, 752-762
【非特許文献8】Kitadai, Y., Haruma, K., Sumii, K., Yamamoto, S., Ue, T., Yokozaxi, H., Yasui, W., Ohmoto, Y., Kajiyama, G., Fidler, I. J., and Tahara, E. (1998) Expression of interleukin-8 correlates with vascularity in human gastric carcinomas. American Journal of Pathology 152, 93-100
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
多種多様な病態における炎症応答の役割を考慮すると、かかる応答に関連するヒトの病状を評価または治療するための方法の開発が依然として必要とされている。また、炎症応答は、女性生殖能および創傷治癒のような生理的過程の必須の特徴である。これらの過程をモジュレートするために、炎症応答をモジュレートするための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をTNF−α、インターロイキン−1βおよびインターロイキン−8の混合物と接触させた場合に生じる転写産物の量の変化について解析した。これらの因子は、典型的には、炎症応答中の組織内に上昇した濃度で存在し、長期にわたり多種多様な細胞タイプにより分泌される。
【0013】
炎症応答中に複数の個体の内皮細胞において調節される転写産物のコンセンサス(共通)セットを得るために、多数の異なる個体に由来する内皮細胞の初代細胞培養を試験した。修飾されたLoess標準化およびCyberTアルゴリズムを含むバイオインフォマティクスアルゴリズムの新規な組合せを使用して、データを解析した。
【0014】
また、本発明者らは、身体の種々の部分から得た様々な内皮細胞タイプ、すなわち、HUVEC、ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)およびヒト子宮微小血管内皮細胞(UtMVEC)における発現について解析した。HUVECにおいて最も強力に調節される転写産物をはじめとする多数の転写産物が、3種すべての細胞タイプにおいて、一貫して、炎症性シグナルにより調節されることが見出された。
【0015】
したがって、本発明において、本発明者らは新規な方法論を用いて、炎症性シグナルに応答する内皮細胞でのある種の遺伝子の発現の調節における変化のパターンを初めて明らかにし、さらに、多数の個体に由来する内皮細胞で炎症性シグナルに応答してその転写産物が影響を受け、したがって患者の集団に対して広範な適用性を有しうる遺伝子のコンセンサスセットを初めて明らかにした。
【0016】
したがって、本発明は、組織炎症応答またはそれに関連する症状の評価(例えば、診断、予後診断またはモニタリング)のための手段を提供する。かかる応答は、典型的には、多数の症状の1つに関連しており、それは、内皮を通過する白血球の遊走を含む場合もある。したがって、組織炎症応答を測定することにより、その応答が関連しうる症状についても測定することができる。また、それ自体が公知の遺伝子およびESTから公知の遺伝子の両者の多数の転写産物が、これらの応答において、したがって症状において調節されるという知見は、かかる症状に対する新規なアッセイ標的の提供および新規な治療法の開発を可能にする。
【0017】
したがって、第1の態様において、本発明は、組織炎症応答を評価する方法であって、
サンプル中の、表1に示される少なくとも5種の転写産物、またはそれによりコードされるタンパク質のレベルの定量的測定を行うステップと、
かように測定された該転写産物またはタンパク質の量を、細胞の対照サンプルより得られた該転写産物またはタンパク質のレベルと比較するステップ
とを含む方法を提供する。
【0018】
好ましくは、該サンプルは、患者の組織炎症応答に冒されていると考えられる部位より採取した細胞、好適には内皮細胞、または患者血液、血清もしくは尿を含む。
【0019】
別の態様において、本発明は、本発明の前記方法での使用に好適な遺伝子チップアレイであって、表1に示される少なくとも5種の転写産物の検出に好適な、少なくとも5種の核酸と;場合により該転写産物に特異的な対照;および場合により該遺伝子チップのための少なくとも1種の対照とを含んでなるアレイを提供する。
【0020】
また別の態様において、本発明は、本発明の前記方法での使用に好適なタンパク質に基づくアッセイであって、表1に示されるものを含む転写産物によりコードされる少なくとも5種のタンパク質と;場合により該タンパク質に特異的な対照;および場合により該アッセイのための少なくとも1種の対照の評価のためのアッセイを提供する。
【0021】
また別の態様において、本発明は、組織炎症応答またはそれに関連する症状のモジュレーターを決定するためのアッセイ方法であって、
a) 表1からの転写産物によりコードされるタンパク質を用意するステップと、
b) 該タンパク質を、その活性の候補モジュレーターと接触させるステップと、
c) 該候補モジュレーターが該タンパク質の該活性をモジュレートすることが可能かどうかを決定するステップ
とを含むか、あるいは
a) 培養内皮細胞を用意するステップと、
b) 該細胞を該組織炎症応答の候補モジュレーターと接触させるステップと、
c) 該候補モジュレーターが、表1の転写産物から選択される少なくとも1種の転写産物のレベルをモジュレートすることが可能かどうか決定するステップ
とを含むアッセイ方法を提供する。
【0022】
かかる方法により得られたモジュレーターは、例えば後記の症状を治療するために、ヒトまたは動物対象における組織炎症応答をモジュレートする方法において使用することができる。
【0023】
別の態様において、機能未知の遺伝子およびESTの遺伝子の同定が治療的介入のための新規な潜在的標的の開発を可能にしている。したがって、本発明は、表1bからの転写産物をコードする配列を、該配列の転写のためのプロモーターと機能的に連結して含むベクターを提供する。かかるベクターは、治療剤または治療標的でありうるタンパク質の発現において有用である。また、該ベクター自体が、例えば遺伝子治療の適用において、直接的な治療用途も有しうる。
【0024】
表の説明
表1aは、炎症メディエーターであるTNFα、IL−1βおよびIL−8により内皮細胞においてレベルが調節される、既に認められた機能を有する遺伝子の転写産物を列挙している。
【0025】
表1bは、炎症メディエーターであるTNFα、IL−1βおよびIL−8により内皮細胞においてレベルが調節される、既に認められた機能を有していない遺伝子またはESTの転写産物を列挙している。
【0026】
表2aは、表1aに示すプローブのそれぞれの核酸配列を提供する。
【0027】
表2bは、表1bに示すプローブのそれぞれの核酸配列を提供する。
【0028】
発明の詳細な説明
表1および2に対する言及は、それぞれ表1または表2の構成部分aまたはbの一方のみを指すことが文脈から明らかである場合を除き、それぞれ、表1aもしくは1bの両方、または表2aおよび2bの両方を指すものであると解釈されるべきである。
【0029】
組織炎症応答に関連する症状
本発明は、その第1の態様においては、組織炎症応答の評価のための方法に関する。前記のとおり、白血球は組織の炎症応答に関与することが一般に認識されている。炎症応答は、内皮を通過する白血球の移動を伴うことがある。一方、かかる炎症応答に関与するタンパク質が炎症組織への白血球の移動を引き起こす場合もあり、白血球の活性化、内皮細胞の活性化および血管新生に関与しまたはそれらを引き起こす場合があり、あるいは白血球または内皮細胞のアポトーシスを抑制することにより炎症応答に影響を及ぼす場合がある。
【0030】
組織炎症応答は、典型的には、患者の症状または病態に関連している。本明細書中で用いる「症状」は、組織炎症応答に関与する、または該応答を引き起こす、または該応答に関連する任意の病態または身体応答を意味する。
【0031】
組織炎症応答は、例えば後記のような炎症性疾患の場合のように、過剰であったり、もしくは望ましくなかったり、または例えば白血球接着不全症1型および2型(LAD−1およびLAD−2)のような異常接着タンパク質に関連する症状における場合のように、不十分でありうる。
【0032】
組織炎症応答および経内皮白血球移動は、内皮細胞への白血球の接着能を変化させる、または炎症組織への白血球のケモカイン媒介性動員を変化させる、内皮細胞における変化(例えば接着分子の発現における変化)により影響を受けうる。本発明においては、内皮細胞における変化は炎症性シグナルに応答するものであることが好ましい。
【0033】
本発明の方法により評価される症状は、炎症応答の部位または炎症応答に冒されている部位の内皮細胞が、炎症過程を促進するよう、およびその内皮を通過する白血球の移動を可能にするよう変化させられるものでありうる。
【0034】
典型的には、内皮を通過する白血球の移動は炎症性シグナルに対する応答として生じる。したがって、本発明の方法により評価される組織炎症応答は、炎症性シグナルが発せられるものである。かかる症状の典型例としては、炎症性疾患、脈管炎症候群、アテローム硬化および関連疾患、腫瘍成長を伴う症状、ならびに慢性移植拒絶が挙げられる。
【0035】
炎症性疾患としては、炎症性腸障害、乾癬、虚血再灌流、成人呼吸窮迫症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、白血球遊出を伴う疾患、中枢神経系炎症性障害、アルツハイマー病、子宮内膜症、多発性硬化症、多臓器損傷症候群、アルコール性肝炎、細菌性肺炎、抗原−抗体複合体媒介疾患、肺の炎症(胸膜炎、肺胞炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症およびCOPDを含む)、脈管炎、結節性多発性動脈炎、巨細胞性動脈炎、顕微鏡的多発性動脈炎、子癇前症および自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、シェーグレン症候群、および主として腎糸球体内の内皮細胞に対する自己免疫攻撃による複数形態の腎不全)が挙げられる。
【0036】
アテローム硬化および関連疾患、例えば冠動脈性心疾患、末梢血管疾患および脳血管発作においては、内皮層を通過してアテローム硬化プラーク部位の血管壁内へ進入する白血球遊走は、該プラークに伴う白血球および下層内皮細胞からの炎症性シグナルにより駆動される。血栓症および血管狭窄または閉塞を招くプラークの不安定性およびそれに伴う破裂は、該プラークの領域内の内皮細胞に対する炎症作用に関連している場合がある。
【0037】
腫瘍成長は、血管から腫瘍内へ遊走し、腫瘍細胞増殖および腫瘍血管新生を直接的に促進する因子を放出する白血球により調節されうる。したがって、癌および特に充実性腫瘍を伴う癌も、好適な治療適応症でありうる。
【0038】
慢性移植拒絶は、重要なものとして、血管を通過する免疫細胞遊走および内皮細胞に対する免疫攻撃を含み、したがって本発明の方法による評価に好適である。
【0039】
炎症性シグナルの放出に伴うこれらおよび他の症状が本発明の方法の対象となりうる。
【0040】
組織炎症応答の評価
本発明においては、組織炎症応答に冒されていると考えられる「部位より採取した」細胞の測定は、身体からの採取後のサンプルに対して実施されるin vitro法に準拠するものであると理解されるであろう。該サンプルを採取するステップ(例えば、生検によるもの)は本発明自体の一部ではない。
【0041】
組織生検のような技術に加えて、またはその代わりに、体液、例えば血液、血清および尿を集めて、これらの体液内の炎症誘導性変化を明らかにすることが可能である。かかる変化は、例えば、サンプル中の、表1の配列によりコードされる内皮細胞由来タンパク質の量の変化により示すことができる。
【0042】
したがって、本発明は、組織炎症応答に関連する症状の診断のための方法であって、かかる症状に冒されていることが疑われる患者に由来するサンプル中の、表1の転写産物のうち少なくとも5種によりコードされる内皮細胞由来タンパク質の量を測定することを含む方法を提供する。
【0043】
前記のとおり、本発明において得られたデータは、個体間および異なる内皮組織間での変動を考慮したうえで、内皮細胞とTNFα、IL−1βおよびIL−8との接触が、一部の転写産物への特徴的な変化を引き起こすことを示している。これらの変化は応答のパターンの形態をとったり、または個々の転写産物に影響を及ぼしうる。したがって、これらの特徴的変化を前記のような症状の診断のための基準として利用することが可能である。
【0044】
診断に加えて、またはその代わりに、症状の評価とは症状の重症度または厳密な臨床的サブタイプの決定でありうる。それはまた、症状の将来的経過の予後診断の方法でもありうる。さらに、評価は、例えば症状の治療のモニタリングの場合のように、一定期間にわたって行うことができる。
【0045】
本発明は、その第1の態様において、炎症応答を示している患者から採取したサンプル中の転写産物レベルを、対照サンプル中の同一遺伝子の転写産物レベルと比較することによる、組織炎症応答の評価方法を提供する。
【0046】
前記のとおり、サンプルは、炎症応答を示している特定の組織からの細胞(例えば、内皮細胞)のサンプルであるか、あるいはタンパク質含有体液、例えば血液、血清または尿であることが可能である。
【0047】
前記方法のための対照サンプルは、典型的には、罹患していない細胞、すなわち、組織炎症応答を示していない組織に由来する細胞、または該症状に冒されていないと考えられる細胞のサンプルである。試験サンプルおよび対照サンプルは共に、同じ細胞タイプのものであることが好ましく、試験サンプルおよび対照サンプルが内皮細胞のものであることがより好ましい。最も好ましくは、試験サンプルおよび対照サンプルは同じ内皮細胞タイプのもの、すなわち、同じ組織位置からのものである。
【0048】
必要に応じて、被験者集団から対照サンプルを採取することが可能である。被験者集団を用いる場合には、該集団からの細胞のサンプルにおける平均(例えば、平均値または中央値)転写産物レベルとの比較を行うことが可能である。罹患組織も対照として使用することが可能である。典型的には、その罹患組織は、試験サンプルを採取した患者以外の患者からのものである。罹患組織を対照として使用する場合には、そのサンプルを採取する患者は、試験サンプルを採取した患者と同じ症状を有するかまたは有すると考えられることが一般に好ましい。
【0049】
いくつかの実施形態においては、本発明の方法は2以上の対照の使用を含みうる。例えば、試験すべきサンプルを、同一患者からの正常なまたは罹患していないサンプルと、あるいは別の患者からの罹患サンプルの転写産物レベルと比較することが可能である。
【0050】
前記のとおり、本発明の方法は治療の前、その途中または後のいずれかにおける症状のモニタリングを可能にする。試験サンプルが、組織炎症を有するかまたは有すると考えられる患者からのものである場合には、病歴を得るために、より早い時点でサンプルを採取することが一般に好ましい。
【0051】
別の実施形態においては、該方法は特定の治療の有効性の評価を可能にする。同一の患者において2以上の時点での組織炎症の重症度を比較することにより、ある特定の治療処方が正の効果を有するかどうかを決定することが可能である。ある一つの処方の有効性は患者によって、あるいは疾患の経過中で異なる場合がある。
【0052】
好ましい実施形態においては、本発明は、複数の遺伝子転写産物のレベル、またはこれらの転写産物から誘導される複数のタンパク質のレベルを調べることにより実施する。これは、本発明者らが、個々の患者の間で個々の遺伝子の転写産物レベルが変動しうることを見出したためである。したがって、いくつかの遺伝子に関して転写産物レベルを評価することが望ましい。例えば、少なくとも5種、好ましくは少なくとも10種、より好ましくは少なくとも20種の表1の転写産物または表1の転写産物から誘導されるタンパク質に関して、それを評価することが可能である。
【0053】
発現のレベルは、遺伝子またはタンパク質に関して、個々に、または特定の組合せとして測定することが可能であり、あるいは複数の遺伝子の発現のパターンを測定することが可能である。
【0054】
本発明の第1の態様においては、評価する転写産物のレベルを試験サンプルと対照サンプルにおいて比較する。炎症性シグナルに対する応答が転写産物のレベルを増加または減少させることがありうる。したがって、炎症性シグナルに応答した転写産物のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションが存在しうる。アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションのいずれかが存在するかどうかは本発明には重要ではなく、むしろ、対照からの変化が生じることが重要である。
【0055】
試験サンプルと対照サンプルとの間の転写産物またはタンパク質調節における相違を測定するための補助手段として、アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションの比量を測定することが可能である。これは増加または減少の「倍率」として表すことができる。転写産物レベルの増大または減少がどのくらい大きいかは本発明には重要ではなく、むしろ、対照からの有意な変化が生じていることが重要である。本発明においては、転写産物レベルにおける少なくとも2倍の変化(すなわち、増大または減少)が生じていることが一般に好ましい。転写産物またはタンパク質レベルの増大または減少の量に上限はないが、本発明者らは、一部の転写産物のレベルにおける50倍の変化および一部のタンパク質についての見掛け上のde novoアップレギュレーションを示すことができることを見出した。
【0056】
さらに、転写産物またはタンパク質レベルのアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションの評価においては、評価対象のすべての転写産物またはタンパク質が同一量で調節される必要はない。これに関して、より重要なのは、調節のパターンの確立である。
【0057】
本発明の1つの実施形態においては、評価対象の転写産物またはタンパク質は、1以上のタンパク質ファミリーまたはグループのうち1種以上の転写産物を含む。好ましくは、該方法は、かかるタンパク質ファミリーまたはグループの2以上、好ましくは3、4、5またはそれ以上における、より好ましくは、かかるタンパク質ファミリーまたはグループのそれぞれにおける、少なくとも1種の転写産物またはタンパク質のレベルを測定することを含む。
【0058】
典型的なかかるグループまたはファミリーとしては、プロテアーゼ、骨形成タンパク質、細胞シグナリングタンパク質、転写調節に関与するタンパク質、酵素、細胞周期調節タンパク質、細胞間コミュニケーションタンパク質、核タンパク質、補体タンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、プロテオソーム、重金属結合タンパク質、TNF受容体スーパーファミリータンパク質、HLAタンパク質、細胞接着タンパク質、サイトカイン/ケモカイン、サイトカイン/ケモカイン受容体、細胞骨格タンパク質、アポトーシス調節因子、増殖因子および増殖因子受容体が挙げられる。
【0059】
評価対象の転写産物またはタンパク質は、サイトカイン/ケモカイン、サイトカイン/ケモカイン受容体、細胞骨格タンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、アポトーシス調節因子、増殖因子および増殖因子受容体より選択される1以上を含むことが、一般に好ましい。
【0060】
本発明の方法で特に興味が持たれるのは、特定の転写産物またはタンパク質の調節である。これらは、それ自体として、または調節のパターンの一部として評価することができる。したがって、本発明の方法においては、評価対象の転写産物またはタンパク質は、コロニー刺激因子3(顆粒球)、コロニー刺激因子2(顆粒球−マクロファージ)、顆粒球走化性タンパク質2、ジユビキチン、ELAM−1、TNF誘導性タンパク質6、Exodus1、IL−1β、VCAM−1、ICAM−1、IAP1、TNF誘導可能A20、RIPK2、MMP 10、TRAF1、JAK結合タンパク質、二重特異性ホスファターゼ4、IL−6、IL−8、Gro−γ、MCP−1、Gro−β、Gro−α、ENA−78、フラクタルキン、低分子量誘導可能サイトカインサブファミリーA14、低分子量誘導可能サイトカインA5、LI7受容体、toll/インターロイキン1受容体様4、CCAAT、MAD−3、COX−2、Mn SOD、NOシンターゼ、L−キヌレニンヒドロラーゼ、組織因子経路インヒビター2、ラミニンγ2、Toll様受容体2、ナチュラルキラー細胞転写産物4、TNFα誘導性タンパク質2、カチオン性アミノ酸トランスポーター2A、脂肪酸結合タンパク質4、TNF受容体スーパーファミリーメンバー11bおよびTNFスーパーファミリーメンバー9のうちの1種以上を含むことが好ましい。
【0061】
本発明の方法においては、評価する転写産物またはタンパク質はコロニー刺激因子3(顆粒球)、コロニー刺激因子2(顆粒球−マクロファージ)、顆粒球走化性タンパク質2、ジユビキチン、ELAM−1、TNF誘導性タンパク質6、Exodus1およびIL−1βのうちの1以上を含むことが、より好ましい。
【0062】
あるいは、該方法は、転写産物の発現のパターンを決定することを含み、ここで、該転写産物は、本明細書中の表1に示される転写産物のうち少なくともいくつかを含む。
【0063】
遺伝子の転写産物またはタンパク質レベルは、任意の好適な手段により測定することが可能である。多数の異なる遺伝子転写産物を検査する場合には、簡便な方法は遺伝子チップアレイへのサンプルの(直接的な、またはcDNAもしくはcRNAの作製の後の)ハイブリダイゼーションによるものである。
【0064】
遺伝子チップ技術を用いる場合には、遺伝子(本明細書中で用いるこの用語は表1のESTを含む)はすべて、Affymetrixから市販されているチップ中に存在し、これらのチップは、該製造業者からのプロトコールに従い使用することが可能である。一般的には、マイクロアレイの供給のための方法およびそれらの使用は、例えばWO84/01031、WO88/1058、WO89/01157、WO93/8472、WO95/18376/、WO95/18377、WO95/24649およびEP−A−0373203においても見出され、これらの文献および当該技術分野における他の文献も参照することができる。
【0065】
多数の異なるタンパク質を検査する場合には、簡便な方法は抗体チップ、多標的ELISAまたはプロテオミクス解析である。一般的には、タンパク質アッセイの供給のための方法およびそれらの使用は、例えば米国特許第6,329,209号および米国特許第2,656,508号においても見出すことができる。かかる方法は当該技術分野において一般的である。かかる方法に関するさらなる情報は、http://www.marketresearch.com/map/prod/904611.htmlを参照することにより入手可能である。
【0066】
表1は遺伝子の名称を示し、これらを使用して、それらのDNA配列およびコードされるタンパク質配列を、Genbankのようなデータベースから得ることが可能である。また、本発明者らが使用しているAffymetrixチップ上で用いられている個々の配列は、表中に示されているAffymetrix参照番号により識別することができ、これらは公に利用可能でありGenbank登録番号と直接的に関連づけることができる。いくつかの場合ではEST遺伝子配列もGenbank登録番号によって示されている。当業者であれば、本発明の実施にあたって、Affymetrix参照番号またはGenbank登録番号のいずれかを参照することが可能である。
【0067】
表2では、表1にも列挙されているAffymetrixチップ上で用いられているプローブのそれぞれに関するcDNA配列情報を示す。表1は、この表に列挙されている特異的タンパク質/ESTを得るために使用するプローブセットを列挙しており、表2は、表1に記載されている各プローブセットのcDNA配列を提供している。
【0068】
表2aおよび2bにおいて、「n」は、各場合において、該遺伝子チップ上のプローブセット配列によってはプローブされなかった核酸の領域を表す。したがって、該アレイを可能な限り特異的なものにするために、いくつかの介在配列の除外を伴って、完全なcDNAのうちの選択された領域のみが使用されている。除外された配列は、一文字ヌクレオチドコード(a、g、cまたはt)が「n」で置き換えられているものである。
【0069】
それとは別に、またはそれに加えて、定量的PCR法を用いることが可能である。これは、例えばABI TaqManTM技術に基づくものであり、当該技術分野で広く用いられている。それは多数の先行技術刊行物に記載されており、例えばWO00/05409を参照することができる。PCR法は、適当な距離を隔てて(典型的には50〜300塩基)標的遺伝子の向かい合う鎖を標的とするプライマーペアを要する。プライマーのための好適な標的配列は、前記のGenbank配列を参照することにより決定することが可能である。
【0070】
遺伝子チップ
先行技術は、非常に大きなアレイの一部として表1aおよび1bのうちの1以上の遺伝子を含む遺伝子チップを提供しているが、前記の症状の評価において有用な遺伝子の比較的小さなセットの同定は、本発明での使用に好適なものとなるよう特別に設計された小さなチップ(特製遺伝子アレイ)の提供を可能にする。
【0071】
したがって、本発明は、表1に示される少なくとも5種の転写産物の(直接的な、またはcDNAもしくはcRNAの作製後の)検出に好適な、少なくとも5種の核酸と;場合により該転写産物に特異的な対照;および場合により該遺伝子チップのための少なくとも1種の対照とを含んでなる遺伝子チップアレイを提供する。
【0072】
この態様の別の実施形態においては、本発明は、表1に示される少なくとも5種の転写産物の検出のための遺伝子チップアレイであって、少なくとも5種の該転写産物の存在を検出することが可能な、表2より選択される少なくとも5種の核酸と;場合により該転写産物に特異的な対照および場合により該遺伝子チップのための少なくとも1種の対照とを含んでなるアレイを提供する。
【0073】
該遺伝子チップアレイは、少なくとも5種の異なる核酸、好ましくは少なくとも10または20種の異なる核酸を含む。
【0074】
望ましくは、表1の転写産物の検出に好適な核酸の数(または表2の配列の数)がnであり、個々の転写産物に特異的な対照核酸の数がn’(ここで、n’は0〜2nである)であり、かつ該遺伝子チップ上の対照核酸の数(例えば、陰性対照、または「ハウスキーピング」転写産物、豊富な内皮細胞転写産物、内皮細胞において比較的高いレベルの発現を示す転写産物、評価対象の個々の内皮のタイプにおいて比較的高いレベルの発現を示す転写産物などの検出のための対照)がmである場合(ここで、mは0〜100、好ましくは1〜30である)、n+n’+mが該チップ上の核酸の少なくとも50%、好ましくは75%、より好ましくは少なくとも90%となるように、該アレイ内の配列の数を調整する。
【0075】
タンパク質チップ
遺伝子チップに関して前記で説明したとおり、表1の転写産物およびそれによりコードされるタンパク質の供給は、好適な特製タンパク質チップの製造を可能にする。かかるチップは、抗体チップの形態で使用することが可能であり、あるいは多標的ELISAまたはプロテオミクス解析を包含しうる。一般的に、タンパク質アッセイの供給のための方法およびその使用は、例えば米国特許第6,329,209号および米国特許第2,656,508号に見出すことができる。かかる方法は当該技術分野において一般的なものである。
【0076】
したがって、また別の態様において、本発明は、本発明の前記方法での使用に好適なタンパク質に基づくアッセイであって、表1に示されるものを含む転写産物によりコードされる少なくとも5種のタンパク質と;場合により該タンパク質に特異的な対照;および場合により該アッセイのための少なくとも1種の対照の評価のためのアッセイを提供する。
【0077】
好ましい実施形態においては、タンパク質に基づくアッセイは、抗体チップまたはELISA、好ましくは多標的ELISAである。
【0078】
アッセイ方法
本発明のアッセイ方法は、多種多様な形式で、例えばタンパク質または核酸成分に対して、あるいは培養物内の全細胞において実施することが可能である。
【0079】
本発明は、その第2の態様において、組織炎症応答またはそれに関連する症状のモジュレーターのアッセイ方法であって、
a) 表1の転写産物によりコードされるタンパク質を用意するステップと、
b) 該タンパク質を、その活性の候補モジュレーターと接触させるステップ、および
c) 該候補モジュレーターが該タンパク質の該活性をモジュレートすることが可能かどうかを決定するステップ
とを含むアッセイ方法を提供する。
【0080】
炎症性シグナルに対する内皮細胞の応答が転写産物のダウンレギュレーションを伴う場合には、該アッセイは好ましくは、該タンパク質のアクチベーターに関するものであり、該アッセイは好ましくは、該モジュレーターが該タンパク質の活性を増大させることが可能かどうか決定することを含む。この実施形態においては、該アッセイは、該タンパク質が通常は低い活性を示すか活性を全く示さない条件下で行うことが可能である。
【0081】
炎症性シグナルに対する内皮細胞の応答が転写産物のアップレギュレーションを伴う場合には、該アッセイは好ましくは、該タンパク質の活性のインヒビターに関するものであり、該アッセイは好ましくは、該モジュレーターが該タンパク質の活性を低下させることが可能かどうか決定することを含む。この実施形態においては、該アッセイは、該タンパク質が通常は活性である条件下で行うことが可能である。
【0082】
このアッセイ方法においては、活性のモジュレーションの測定は、アッセイ対象のタンパク質の性質に左右される。例えば、酵素機能を有するタンパク質を該酵素の基質の存在下でアッセイして、活性をモジュレートすることが可能なモジュレーターの存在が、より速いかまたはより遅い基質ターンオーバーをもたらすようにすることが可能である。基質は該酵素の天然の基質であるかまたは合成アナログでありうる。いずれの場合においても、該基質を検出可能な標識で標識して、最終産物へのその変換をモニターすることが可能である。
【0083】
リガンド結合機能を有するタンパク質、例えば受容体の場合には、リガンド結合特性のアンタゴニズムまたはアゴニズムをもたらす様式で、リガンド結合機能に関して候補モジュレーターを検査することが可能である。
【0084】
DNA結合活性を有するタンパク質、例えば転写調節因子の場合には、DNA結合活性または転写活性化活性を測定することが可能であり、ここで、モジュレーターは、かかる活性を増大または低下させることができる。例えば、移動度シフトアッセイにおいてDNA結合性を測定することが可能である。あるいは、該タンパク質が結合するDNA領域をレポーター遺伝子(必要に応じてさらに、該DNA領域とレポーター遺伝子との間のプロモーター領域および/または転写開始領域)に機能的に連結させて、該遺伝子の転写を測定し、この転写のモジュレーションを、それが生じた場合に観察しうるようにすることが可能である。好適なレポーター遺伝子としては、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、またはより好ましくは蛍光レポーター遺伝子、例えば緑色蛍光タンパク質が挙げられる。
【0085】
それとは別に、または第3の態様において、本発明は、組織炎症応答またはそれに関連する症状のモジュレーターのアッセイ方法であって、
a) 培養内皮細胞を提供するステップと、
b) 該細胞を該症状の候補モジュレーターと接触させるステップと、
c) 該候補モジュレーターが、表1の転写産物より選択される少なくとも1種の転写産物のレベルをモジュレートすることが可能かどうか決定するステップ
とを含むアッセイ方法を提供する。
【0086】
この方法の第1のステップにおいては、内皮細胞を培養する。該細胞の回収および培養にはいずれの好適な方法でも用いることが可能である。内皮細胞の培養のための技術は当該技術分野において一般的である。
【0087】
候補モジュレーター化合物は、薬物スクリーニング計画において使用される天然または合成化合物でありうる。いくつかの特性決定された成分または特性決定されていない成分を含有する、植物、微生物その他の生物の抽出物を使用することも可能である。コンビナトリアル(組合せ)ライブラリー技術(固相合成および平行合成法を含む)は、相互作用をモジュレートする能力に関して、潜在的に莫大な数の異なる物質を試験するための効率的な方法となる。かかるライブラリーおよびそれらの使用は、とりわけ、天然物、小分子およびペプチドのすべての種類に関して当該技術分野で公知である。多数のかかるライブラリーが市販されており、本発明によりここで予見されるタイプの薬物スクリーニング計画のために販売されている。
【0088】
候補モジュレーターのまた別のクラスは、タンパク質標的に結合する抗体またはその結合性フラグメントを含む。
【0089】
抗原または他の結合パートナーに結合することが可能な抗体フラグメントの例としては、VL、VH、ClおよびCH1ドメインよりなるFabフラグメント;VHおよびCH1ドメインよりなるFdフラグメント;抗体の単一アームのVLおよびVHドメインよりなるFvフラグメント;VHドメインよりなるdAbフラグメント;単離CDR領域およびF(ab’)2フラグメント、二価フラグメント(ヒンジ領域においてジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントを含むもの)が挙げられる。一本鎖Fvフラグメントも含まれる。タンパク質に特異的な抗体は、例えば、表面上に機能的免疫グロブリン結合性ドメインを提示するラムダバクテリオファージまたは繊維状バクテリオファージを使用して、発現された免疫グロブリン可変ドメインの組換え作製ライブラリーから得ることが可能である。例えば、WO92/01047を参照されたい。かかる技術は抗原に対する抗体の迅速な生成を可能にし、ついで、本発明に従いこれらの抗体をスクリーニングすることができる。
【0090】
候補分子の別のクラスは、抑制されるべきタンパク質配列の断片に基づくペプチドである。特に、他のタンパク質またはDNAと相互作用するタンパク質の一部分に対応するタンパク質断片は、タンパク質機能の競合インヒビターとして作用する小さなペプチドの標的となりうる。かかるペプチドは例えば5〜20アミノ酸長である。
【0091】
該ペプチドはまた、ミメティックの設計のための基礎も提供しうる。かかるミメティックは、薬理作用団(ファーマコフォア)を規定するために生物活性に必須かつ重要なアミノ酸残基またはその側鎖の一部を決定するためのペプチドの分析、およびそれに続く、適当な三次元関係において該必須の残基またはその一部を保持するミメティックを設計するための該薬理作用団のモデリングに基づくものであろう。当該技術分野には、かかるミメティックの設計を促進するための種々のコンピューター援用技術が存在する。
【0092】
細胞に基づくアッセイ方法は、転写レベルまたは翻訳レベルのいずれかにおいて遺伝子の発現を測定するように設計することが可能である。転写産物を測定する場合には、前記の本発明の第1の態様の方法を用いて、例えば遺伝子チップ上でまたはマルチプレックスPCRなどにより、これを測定することが可能である。
【0093】
前記のとおり、転写産物が、炎症性シグナルに応答してダウンレギュレーションされるものである場合には、該アッセイは好ましくは、(例えば、転写産物の量を増加させることにより)該遺伝子の発現を増大させる物質に関するものである。かかる物質は該遺伝子自体のコード配列を含みうる(すなわち、それは遺伝子治療用ベクターでありうる)。転写産物が、炎症性シグナルに応答してアップレギュレーションされるものである場合には、該アッセイは好ましくは、該遺伝子の発現を減少させる物質に関するものである。
【0094】
細胞に基づくアッセイ方法は、前記のとおり候補モジュレーターをスクリーニングするために使用することが可能である。それらは、アンチセンスオリゴヌクレオチドをはじめとする他のクラスの候補モジュレーターをスクリーニングするために使用することも可能である。かかるオリゴヌクレオチドは典型的には12〜25、例えば約15〜20ヌクレオチド長であり、該オリゴヌクレオチドの安定化を補助するために、修飾バックボーン構造、例えばメチルホスホネートおよびホスホロチオエートバックボーンを含むか、またはそれらよりなることが可能である。該アンチセンスオリゴヌクレオチドは標的遺伝子のコード領域に由来することが可能であり、あるいは5’または3’非翻訳領域に由来することが可能である。候補分子はさらに、RNAi、すなわち、遺伝子転写産物に特異的な配列である短い二本鎖RNA分子、または細胞によりsiRNAへとプロセシングすることができ、例えばDNA配列として細胞内に供給することが可能な、より長いRNA配列(eliRNAまたは発現される長い干渉性RNA)を含みうる。それらは、転写産物mRNAを特異的に標的化するリボザイム、すなわち、特定の核酸配列の他のRNA分子を切断する触媒性RNA分子をも含みうる。リボザイムの構築のための一般的方法は当該技術分野で公知である。
【0095】
本発明のこれらの態様の好ましい実施形態においては、前記のアッセイ方法を用いて、表1bからの転写産物のレベルまたはタンパク質の活性のモジュレーターを測定する。
【0096】
本発明のこれらの態様にしたがって得られるモジュレーターは、患者における組織炎症応答および/またはそれに関連する症状(例えば、炎症症状)をモジュレートする方法において使用することが可能である。
【0097】
したがって、本発明はまた、組織炎症応答および/またはそれに関連する症状のモジュレーターと、製薬上許容される担体とを含む医薬組成物をも提供する。
【0098】
一般に、該モジュレーターは、投与対象に対する選択された投与経路に好適な1以上の製薬上許容される担体と共に製剤化される。固体組成物の場合、慣用の無毒性固体担体としては、例えば、製薬グレードのマンニトール、ラクトース、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを用いることができる。薬学的に投与可能な液体組成物は、例えば、モジュレーターおよび場合によっては製薬用アジュバントを担体(例えば水、食塩水、水溶性デキストロース、グリセロール、エタノールなど)に溶解、分散等させて溶液または懸濁液を形成させることにより調製することが可能である。所望により、投与する医薬組成物は、少量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化剤など(例えば酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンナトリウムアセテート、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエートなど)も含有しうる。かかる剤形を調製するための実際の方法は公知であるか、当業者に明らかである。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 第15版, 1975を参照されたい。投与する組成物または製剤は、いずれの場合にも、治療対象の症状を軽減するのに有効な量の活性化合物を含有する。
【0099】
投与経路は、治療対象の症状に左右されうるが、内皮細胞は血管の裏打ち構造を形成しているため、血流内への投与(例えば、静脈内注射)が1つの可能な経路である。
【0100】
また、本発明は、治療法において使用するための、組織炎症応答および/またはそれに関連する症状のモジュレーターを提供する。
【0101】
さらに、本発明は、組織炎症応答に関連する症状の治療のための医薬の製造における、組織炎症応答のモジュレーターの使用を提供する。
【0102】
ベクター
炎症性シグナルによる内皮細胞の調節に関連する、以前には機能未知の多数のESTおよび他の遺伝子の同定は、本発明の前記態様および後記のさらなる態様において有用な新規ベクターシステムの基礎を提供する。
【0103】
好ましくは、表1bに列挙されている転写産物をコードする配列は、宿主細胞による該コード配列の発現をもたらすことが可能な制御配列に機能的に連結されている。すなわち、該ベクターは発現ベクターである。
【0104】
「機能的に連結」なる用語は、記載されている成分が、それらの意図される様態でそれらが機能することを可能にする関係で配置されていることを意味する。コード配列に「機能的に連結」された制御配列は、該制御配列に適合しうる条件下で該コード配列の発現が達成されるように連結されている。
【0105】
好適な宿主細胞としては、細菌、真核細胞(例えば哺乳類細胞および酵母細胞)、ならびにバキュロウイルスシステムが挙げられる。異種ポリペプチドの発現のための当該技術分野で利用可能な哺乳類細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、乳児ハムスター腎細胞、COS細胞および他の多数の哺乳類細胞株が挙げられる。
【0106】
該ベクターは、挿入されている核酸を発現させるためのプロモーターもしくはエンハンサー、ポリペプチドが融合体として産生されるようにする核酸配列および/または宿主細胞内で産生されるポリペプチドが該細胞から分泌されるように分泌シグナルをコードする核酸のような他の配列を含むことができる。
【0107】
該ベクターは、1以上の選択マーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合にはアンピシリン耐性遺伝子、または哺乳類ベクターの場合にはネオマイシン耐性遺伝子を含有することができる。
【0108】
ベクターはさらに、適宜、エンハンサー配列、ターミネーター断片、ポリアデニル化配列および他の配列を含むことができる。
【0109】
ベクターは、例えばRNAの産生のためにin vitroで使用することが可能であるか、または宿主細胞をトランスフェクトもしくは形質転換するために使用することが可能である。また、該ベクターは、in vivoで、例えば遺伝子治療の方法において使用されるよう適合化することができる。多種多様な宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のためのシステムが周知である。ベクターとしては、遺伝子治療用ベクター、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス(例えば、HIVもしくはMLV)またはアルファウイルスベクターに基づくベクターが挙げられる。
【0110】
プロモーターおよび他の発現調節シグナルは、発現ベクターが意図する宿主細胞に適合しうるよう選択することができる。例えば、酵母プロモーターとしては、出芽酵母(S. cerevisiae)GAL4およびADHプロモーター、S.ポンベ(S. pombe)nmt1およびadhプロモーターが挙げられる。哺乳類プロモーターとしては、カドミウムのような重金属に応答しうるメタロチオネインプロモーターが挙げられる。ウイルスプロモーター、例えばSV40ラージT抗原プロモーターまたはアデノウイルスプロモーターを使用することも可能である。これらのすべてのプロモーターは当該技術分野において容易に入手可能である。
【0111】
遺伝子治療において使用する、表1bの転写産物によりコードされるポリペプチドの産生のためのベクターには、ミニジーン(mini-gene)配列を含有するベクターが含まれる。
【0112】
ベクターを前記の好適な宿主細胞内に形質転換して、本発明のポリペプチドの発現をもたらすことが可能である。したがって、また別の態様において、本発明は、表1bの転写産物によりコードされるポリペプチドの調製方法であって、前記の発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を、該ポリペプチドをコードするコード配列の該ベクターによる発現をもたらす条件下で培養し、発現されたポリペプチドを回収することを含む、上記調製方法を提供する。ポリペプチドは、例えば網状赤血球溶解液のようなin vitro系を使用することによっても発現させることができる。
【0113】
表1bのESTもしくは遺伝子によりコードされる実質的に単離された形態のポリペプチドまたはその断片は本発明のまた別の態様を構成する。該ポリペプチドの断片は、該ポリペプチドの好ましくは少なくとも20アミノ酸のサイズ、好ましくは25アミノ酸〜完全長のサイズである。
【0114】
本発明のまた別の態様は、該ポリペプチドおよびその断片をコードする核酸配列である。かかる核酸配列は、例えば前記のようなベクター中に含まれていてもよい。
【0115】
さらなる詳細に関しては、例えばMolecular Cloning: a Laboratory Manual: 第2版, Sambrookら, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、シーケンシング、細胞内へのDNAの導入および遺伝子発現のための核酸の操作ならびにタンパク質の分析のための多数の公知の技術およびプロトコールが、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編, John Wiley & Sons, 1992に詳細に記載されている。
【0116】
表1bの遺伝子またはESTがベクター内に存在する場合には、それを該配列の翻訳のための翻訳開始領域とインフレームで連結することが可能であり、あるいはそれはアンチセンスRNAの転写のためにアンチセンス配置であってもよい。
【実施例】
【0117】
TNFα、IL−1βおよびインターロイキン−8は転写産物量を調節する
転写産物量に対するTNFα、IL−1βおよびインターロイキン−8の効果の研究を可能にするために、7つの独立したHUVEC初代培養をTNFα、インターロイキン−1βおよびインターロイキン8の各々15ng/mLの混合物と共に24時間培養した。ついで、これらの培養から抽出したRNAを使用して複合cRNAプローブを調製し、これらをAffymetrix U95A遺伝子チップ(12,600エレメントAffymetrix遺伝子アレイチップ)にハイブリダイズさせた。
【0118】
遺伝子チップデータの解析
転写産物量のデータ(「平均差」)を、各チップ(対照遺伝子は除く)の平均遺伝子発現が1となるように全体的にスケールをそろえた。転写産物発現レベルがアレイ間で比較しうるものであったことを保証するために、「R」統計ソフトウェアシステムの「LOESS」機能を、対照アレイとの比較において各アレイの対数変換平均差値に適用した。選択した対照アレイは、その他の6つの対照に対してユークリッド距離による最も近い類似性を有するものであった。
【0119】
ついで、標準化された転写産物量のデータを、CyberTアルゴリズム(バージョン7.03;スライディングウィンドウ=301、ベイズ推定値=21)を使用して比較した。このアルゴリズムは、データセット内のその他の転写産物の分散に基づくベイズ事前確率の算入により修飾された対応のないt検定である(Longら, 2001, J. Biol Chem 276, 19937-19944)。
【0120】
さらなる統計解析のために、「R」統計ソフトウェアシステムおよびGeneSpring Expression Analysis Software(Silicon Genetics, Redwood City, Ca)を使用した。
【0121】
GOデータベース(www.geneontology.org)、Entrez(www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)またはOMIM(www.ncbi.nlm.nih.gov:80/entrez/Omim)データベースを使用して、個々の転写産物を、それらがコードするタンパク質の機能に従い分類した。
【0122】
表においては、変化倍率が、7回の実験に対する対応のない平均(すなわち、治療された炎症の平均/対照の平均)として表されている。
【0123】
異なる内皮細胞タイプにおける転写産物レベルにおける相違
トランスクリプトームのモジュレーションが、異なる内皮細胞タイプの間で比較しうるものであるかどうかを決定するために、ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)およびヒト子宮微小血管内皮細胞(UtMVEC)のそれぞれ1つを使用して、別の培養物を得た。
【0124】
それらの3つの異なる細胞タイプを前記のとおりに炎症性シグナルで処理し、それらの3つの細胞タイプのそれぞれにおいて転写産物量が調節される度合を評価した。また、それらの3つの細胞タイプにおける調節のパターンを測定した。ほとんどの転写産物が3つすべての細胞タイプにおいて調節され、いくつかはこれらの細胞タイプの2つのみまたは1つのみにおいて調節されることが判明した。
【0125】
3つすべての細胞タイプにおいて調節される転写産物は本発明の種々の方法において特に有用であると考えられる。なぜなら、それらは、異なる器官を冒す種々の炎症症状において有意義であるものと思われる。
【0126】
さらに、3つすべての内皮細胞タイプにおいて炎症性シグナルによりモジュレートされる転写産物はHUVECにおいても炎症性シグナルにより強力にモジュレートされる傾向にあることも判明した。
【0127】
コンセンサスデータ
表1aおよび1bは転写産物のコンセンサスセットを示す。これらは、炎症メディエーターでの処理の前および後のそれらのレベルが、0.001未満のベイズP値で、(いずれかの方向に)2桁以上異なることに基づいて選択した。これらは遺伝子ファミリーに従い分類されている。
【0128】
表1は、HUVEC細胞における、また、HCAECおよびUtMVEC細胞における調節の度合を示す。
【0129】
EST
本発明に関連して同定された、以前には機能未知の多数のESTおよび遺伝子は、本発明の種々の方法において、および治療における使用のための可能な治療剤として特に興味深い。これらを表1bにまとめてある。これらのESTを単離するために使用されるプローブの具体的な配列を表2bに示す。
【0130】
材料および方法:
内皮細胞の調製
7つの異なる個体から単離したHUVECを微小血管内皮細胞増殖培地2(EBM−MV、Biowhittaker)中で培養した。ヒト表皮増殖因子、ヒドロコルチゾン、血管内皮増殖因子、ヒト線維芽細胞増殖因子、ヒト組換えインスリン様増殖因子、アスコルビン酸、ゲンタマイシン、アンホテリシンBおよびFBS(5%)の専売混合物(Microvascular BulletkitTM試薬、Biowhittaker)を培地に添加した。5回目の継代において、各HUVEC単離物を2つの175cm培養フラスコに分け、70%コンフルエンスまで成長させた。各HUVEC単離物について、一方のフラスコ内の増殖培地を、それぞれ15ngのIL−8、IL−1βおよびTNF−αの混合物を含有する新鮮な培地で置換した。対照として、複製培養物中の培地を新鮮な培地のみで置換した。サイトカインで処理されたHUVECおよび対照をさらに24時間培養した。
【0131】
1人のドナーに由来するヒト冠動脈ECおよび子宮筋層微小管ECをBiowhittakerから購入した。HUVECと同じ条件下で、細胞を培養し処理した。
【0132】
RNA抽出
Trizol試薬(Gibco/BRL, UK)を使用して各培養物からRNAを抽出し、ついでRNeasyTMスピンカラム(Qiagen, UK)に通して洗浄し、さらにエタノール沈殿に供した。Aligent 2100バイオアナライザーを使用して、RNAが損なわれていないことについて評価した。
【0133】
RNAの解析
ビオチン化標的cRNAをAffymetrixのプロトコールに従い調製し、AffymetrixヒトU95Av2チップにハイブリダイズさせ、Microarray Suite Version 4.0または5.0ソフトウェアを使用して全体的にスケールをそろえた。
【表1】

【0134】

【0135】

【0136】

【0137】

【0138】

【0139】

【0140】

【0141】

【0142】

【0143】

【0144】

【0145】

【0146】

【0147】

【0148】

【0149】

【0150】

【0151】

【0152】

【0153】

【0154】

【表2】

【0155】

【表3】

【0156】

【0157】

【0158】

【0159】

【0160】

【0161】

【0162】

【0163】

【0164】

【0165】

【0166】

【0167】

【0168】

【0169】

【0170】

【0171】

【0172】

【0173】

【0174】

【0175】

【0176】

【0177】

【0178】

【0179】

【0180】

【0181】

【0182】

【0183】

【0184】

【0185】

【0186】

【0187】

【0188】

【0189】

【0190】

【0191】

【0192】

【0193】

【0194】

【0195】

【0196】

【0197】

【0198】

【0199】

【0200】

【0201】

【0202】

【0203】

【0204】

【0205】

【0206】

【0207】

【0208】

【0209】

【0210】

【0211】

【0212】

【0213】

【0214】

【0215】

【0216】

【0217】

【0218】

【0219】

【0220】

【0221】

【0222】

【0223】

【0224】

【0225】

【0226】

【0227】

【0228】

【表4】

【0229】

【0230】

【0231】

【0232】

【0233】

【0234】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織炎症応答を評価する方法であって、
サンプル中の、表1に示される少なくとも5種の転写産物、またはそれによりコードされるタンパク質のレベルの定量的測定を行うステップと、
かように測定された該転写産物またはタンパク質の量を、対照サンプルより得られた該転写産物のレベルと比較するステップ
とを含む、上記方法。
【請求項2】
前記サンプルが、患者の組織炎症応答に冒されていると考えられる部位より採取した細胞を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が内皮細胞であるか、または前記サンプルが患者血液、血清もしくは尿である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記内皮細胞がヒト臍静脈内皮細胞、ヒト冠動脈内皮細胞またはヒト子宮微小血管内皮細胞である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対照サンプルが、前記患者の組織炎症応答に冒されていない組織に由来する内皮細胞から採取したものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記対照サンプルが、前記患者の炎症応答を示している組織から、より早い時点で採取したものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組織炎症応答が:内皮を通過する白血球の移動、炎症組織への白血球の移動、白血球の活性化、内皮細胞の活性化および血管新生、ならびに/または白血球もしくは内皮細胞のアポトーシスの抑制、のうち1以上を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
組織炎症応答に関連する症状を診断する方法、または組織炎症応答に関連し、かつ既に診断されている症状の進行をモニターする方法、あるいは組織炎症応答に関連する症状の治療の有効性をモニターする方法である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記測定を、前記患者の1クールの治療後に行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
表1に示される少なくとも10種の転写産物またはそれによりコードされるタンパク質の量を測定する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
表1に示される少なくとも20種の転写産物またはそれによりコードされるタンパク質の量を測定する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記量を、遺伝子チップアレイへのハイブリダイゼーションによって測定する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記量を、定量的PCRにより測定する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
組織炎症応答に関連する症状の診断のための方法であって、かかる症状に冒されていることが疑われる患者に由来するサンプル中の、表1の転写産物のうち少なくとも5種によりコードされる内皮細胞由来タンパク質の量を測定することを含む、上記方法。
【請求項15】
組織炎症応答が、炎症性疾患、脈管炎症候群、アテローム硬化もしくは関連疾患、慢性移植拒絶に関連するものであるか、または前記症状が腫瘍成長を伴う、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記炎症性疾患が、炎症性腸障害、乾癬、虚血再灌流、成人呼吸窮迫症候群、喘息、アレルギー性鼻炎、皮膚炎、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、白血球遊出を伴う疾患、中枢神経系炎症性障害、アルツハイマー病、子宮内膜症、多発性硬化症、多臓器損傷症候群、アルコール性肝炎、細菌性肺炎、抗原−抗体複合体媒介疾患、肺の炎症(胸膜炎、肺胞炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症およびCOPDを含む)、脈管炎、結節性多発性動脈炎、巨細胞性動脈炎、顕微鏡的多発性動脈炎、子癇前症および自己免疫疾患を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記比較によって前記サンプルと前記対照サンプルとの間での転写産物レベルまたは転写産物量のパターンにおける変化を測定する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
測定するレベル/量が、以下:
コロニー刺激因子3(顆粒球)、コロニー刺激因子2(顆粒球−マクロファージ)、顆粒球走化性タンパク質2、ジユビキチン、ELAM−1、TNF誘導性タンパク質6、Exodus1、IL−1β、VCAM−1、ICAM−1、IAP1、TNF誘導可能A20、RIPK2、MMP 10、TRAF1、JAK結合タンパク質、二重特異性ホスファターゼ4、IL−6、IL−8、Gro−γ、MCP−1、Gro−β、Gro−α、ENA−78、フラクタルキン、低分子量誘導可能サイトカインサブファミリーA14、低分子量誘導可能サイトカインA5、LI7受容体、toll/インターロイキン1受容体様4、CCAAT、MAD−3、COX−2、Mn SOD、NOシンターゼ、L−キヌレニンヒドロラーゼ、組織因子経路インヒビター2、ラミニンγ2、Toll様受容体2、ナチュラルキラー細胞転写産物4、TNFα誘導性タンパク質2、カチオン性アミノ酸トランスポーター2A、脂肪酸結合タンパク質4、TNF受容体スーパーファミリーメンバー11bおよびTNFスーパーファミリーメンバー9
より選択される、少なくとも1種の転写産物またはそれによりコードされるタンパク質についてのものである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記転写産物またはそれによりコードされるタンパク質が、以下:
コロニー刺激因子3(顆粒球)、コロニー刺激因子2(顆粒球−マクロファージ)、顆粒球走化性タンパク質2、ジユビキチン、ELAM−1、TNF誘導性タンパク質6、Exodus1およびIL−1β
より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法での使用に好適な遺伝子チップアレイであって、表1に示される少なくとも5種の転写産物の検出に好適な、少なくとも5種の核酸と;場合により該転写産物に特異的な対照;および場合により該遺伝子チップのための少なくとも1種の対照とを含んでなる、上記アレイ。
【請求項21】
表1に示される少なくとも5種の転写産物の検出のための遺伝子チップアレイであって、少なくとも5種の該転写産物の存在を検出することが可能な、表2より選択される少なくとも5種の核酸と;場合により該転写産物に特異的な対照および場合により該遺伝子チップのための少なくとも1種の対照とを含んでなる、上記アレイ。
【請求項22】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法での使用に好適なタンパク質に基づくアッセイであって、表1に示されるものを含む転写産物によりコードされる少なくとも5種のタンパク質と、場合により該タンパク質に特異的な対照および場合により該アッセイのための少なくとも1種の対照の評価のための、上記アッセイ。
【請求項23】
ELISAまたは抗体チップである、請求項22に記載のアッセイ。
【請求項24】
組織炎症応答またはそれに関連する症状のモジュレーターを決定するためのアッセイ方法であって、以下のステップ:
a) 表1からの転写産物によりコードされるタンパク質を用意するステップ、
b) 該タンパク質を、その活性の候補モジュレーターと接触させるステップ、
c) 該候補モジュレーターが該タンパク質の該活性をモジュレートすることが可能かどうかを決定するステップ
を含む、上記アッセイ方法。
【請求項25】
前記候補モジュレーターが、前記タンパク質に結合する抗体またはその結合性フラグメントである、請求項24に記載のアッセイ方法。
【請求項26】
前記候補モジュレーターが、前記タンパク質のフラグメントまたはそのミメティックである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
組織炎症応答またはそれに関連する症状のモジュレーターのアッセイ方法であって、以下のステップ:
a) 培養内皮細胞を用意するステップ、
b) 該細胞を該症状の候補モジュレーターと接触させるステップ、
c) 該候補モジュレーターが、表1の少なくとも1種の転写産物のレベルをモジュレートすることが可能かどうか決定するステップ
を含む、上記アッセイ方法。
【請求項28】
前記候補モジュレーターがアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはRNAiである、請求項27に記載のアッセイ方法。
【請求項29】
前記候補モジュレーターがセンスオリゴヌクレオチドである、請求項27に記載のアッセイ方法。
【請求項30】
請求項24〜29のいずれか1項に記載のアッセイ方法にしたがって得られるモジュレーターの、組織炎症応答またはそれに関連する症状の治療のための使用。
【請求項31】
表1bからの転写産物をコードする配列を、該配列の転写のためのプロモーターと機能的に連結して含むベクター。
【請求項32】
前記配列が、該配列の翻訳のための翻訳開始領域とインフレームで連結されている、請求項31に記載のベクター。
【請求項33】
前記配列がアンチセンス配置になっている、請求項31に記載のベクター。

【公表番号】特表2007−522800(P2007−522800A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548388(P2006−548388)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000057
【国際公開番号】WO2005/068655
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(501484851)ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
【Fターム(参考)】