説明

内表面が表面処理された中空成形品の製造方法および製造装置

【課題】射出成形による温度の影響、型締力の影響等を受けることなく、比較的大きな中空成形品であっても熱収縮の影響を受けずに製造することができる、内表面が表面処理された中空成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】固定金型(3)とスライド金型(4)とを使用して1次射出成形により、本体部(H2)と蓋体(F1)とを実質的に同時に成形する。本体部(H2)をハンドリング装置(HM)によりスライド金型(4)から取り出し、別に設けられている成膜装置(MM)に装着して本体部(H2)の内表面に成膜する。成膜された本体部(HU1)をスライド金型(4)に装着して、固定金型(3)に残っている蓋体(F1)と突き合わせて、突合部に溶融樹脂を2次射出して一体化する。前記1次射出成形と2次射出成形とを同じ金型で実質的に同時に実施し、これに平行して成膜工程を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内表面の一部が表面処理された中空成形品の製造方法およびこの製造方法の実施に使用される製造装置に関するもので、さらに具体的には固定金型とスライド金型とにより一対の半成形品を接合部を有するように成形する1次射出成形工程と、この1次射出成形工程で得られる一方の半成形品の表面を表面処理する表面処理工程と、この表面処理工程で処理された一方の半成形品を他方の半成形品に整合させて型締めして接合部において接合する2次射出成形工程とから、内表面が表面処理された中空成形品を得る製造方法およびこの製造方法の実施に使用される製造装置に関するのである。
【背景技術】
【0002】
中空体の内表面の一部に数μmオーダの薄膜を有する中空成形品として、例えば車両に装備されているフロントランプ、テールランプ等を挙げることがきる。このようなランプは、電球が取り付けられる凹状の本体部と、この本体部の開口部に一体的に取り付けられているレンズ部とからなっている。本体部は、例えば射出成形により成形され、そして外表面等の不要箇所をマスキングして成膜専用の真空タンク中に専用のハンガーを使用して吊り下げ、次いで後述するような成膜方法により薄膜が形成されている。そして、薄膜が形成された本体部と別途成形されたレンズ部を、それぞれの金型にセットし、本体部の開口部とレンズ部の縁とを整合・突き合わせ、突き合わされた接合部に溶融樹脂を射出して一体化して、内表面の一部に薄膜を有する中空成形品が成形されている。
【0003】
このような本体部の内表面あるいは基板の表面に薄膜を形成する成膜方法は従来周知で、例えば成膜しようとする基板とターゲットを対向させておき、数Pa〜数10Pa程度のアルゴンガス雰囲気中でターゲットに数kVの負の電圧を印加し、そして放電させて薄膜を形成するスパッタリング方法、真空容器の中に基板と蒸発源とを収納して成膜する真空成膜法、基板に数kVの負の電圧を印加し数Paのアルゴンガスの圧力下で真空成膜をするイオンプレーティング方法等が知られ、また化学成膜法も知られている。
【0004】
【特許文献1】特許第3677033号
【特許文献2】特許第3688289号
【特許文献3】特開2004−338328号
【0005】
特許文献1には、射出成形工程と成膜工程とによって内表面に薄膜を有する中空成形品を成形する方法が示されている。すなわち、固定金型とスライド金型とにより構成されている一対のキヤビティにより一対の半中空成形品をその開口部の周囲に接合部を有するように成形する1次成形を行った後、一方の半中空成形品はスライド金型の方に、他方の半中空成形品は固定金型の方に残るようにして型を開き、前記スライド金型に残された半中空成形品を前記固定金型に設けられた成膜用の凹部に対向密着するように前記スライド金型をスライドさせ、前記成膜用の凹部に設けられた成膜チャンバーにより前記半中空成形品の内表面に薄膜を形成し、その後スライド金型を一対の半中空成形品の接合部が整合する位置へスライドさせ、次いで型締めし、そして接合部に溶融樹脂を射出して接合する2次成形とからなる、内表面に薄膜を有する中空成形品の成形方法が示されている。特許文献2および特許文献3にも、特許文献1に記載されている成形方法と同様な方法による、内表面に薄膜を有する中空成形品の成形方法が示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載されている形成方法は、成膜のために1次成形品を一旦金型から取り出し真空タンク中へ搬入する工程を必要としないので、搬入時に手垢、塵埃等が1次成形品に付着することから生じる成膜面の汚染による成膜不良を防ぐことができる。さらに、一対の半中空成形品を射出成形する射出工程から、薄膜を形成する成膜工程を経て、1対の半中空成形品を2次射出成形により接合し、内表面に薄膜を有する中空成形品を得るまでの各工程を自動化することは可能である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されている金型は、成膜を行うための成膜チャンバーが1次射出成形を行う固定金型内に設けられているので、問題点も多い。例えば、射出成形用の金型と成膜用の成膜チャンバーとが同一の金型内に設けられているので、成膜チャンバーは射出成形による温度の影響を受け歪みを生じる。また、成膜チャンバーは、射出成形のための型締力による応力の影響によっても歪む。その結果、成膜に必要な真空を得るための密閉性が確保し難いという問題がある。このように、成膜に必要な真空度が確保し難いので、射出成形を行いながら、同時に他の成形品について成膜することが難しくなる。また、射出成形を適切に行うための金型の位置の調整と、成膜を適切に行うための成膜チャンバーの位置の調整が、固定金型内に成膜チャンバーが設けられているので、独立して行うことができず、調整の自由度が低いというメンテナンス上の問題もある。さらには、成膜チャンバーが射出成形用の固定金型に組み込まれているので、1次成形用のキャビティを金型の型締力の中央部に配置し難く、射出成形時に行う型締力によって射出成形機にかかる荷重が偏り、射出成形機の寿命にも影響する。また、金型全体が大きくなるという問題もある。金型の大きさについては、2段のパーティング面を設けて、1次成形時の型締位置と成膜工程時の型締位置を変える等の工夫をすれば、金型の大きさを若干抑えることはできるが、型締調整が難しくなるという別の問題が生じて好ましくない。また、成膜チャンバーが射出成形用の固定金型に組み込まれているので、射出成形の技術の専門家と、成膜の技術の専門家が協力して金型を製作する必要があり、金型製作が難しいだけでなく、コスト高にもなる。
【0008】
さらに、特許文献1に示されている成形方法では、内表面に成膜される半成形品が、1次成形されてから成膜され、そして2次成形により接合されるまでの一連の工程の間中、スライド金型の1次成形用の凹部に保持されたままとなっているので、比較的大きな中空品を成形するときに特に問題がある。つまり、樹脂材料は温度低下によって0.2〜0.5%の収縮率で熱収縮するので、成膜工程を含む一連の工程が比較的長時間に及んで半成形品の冷却が進むと、半成形品が大きい場合には収縮量が大きくなり、半成形品を金型に保持し続けることができなくなる。上記のような問題は、金型内で半成形品をカバーで覆って内表面に塗装を施す場合、同様にカバーで覆って内表面の一部を研磨あるいは粗面化するような場合にも生じる。
【0009】
本発明は、上記したような従来の欠点あるいは問題点を解決した、内表面が表面処理された中空成形品の製造方法およびその方法の実施に使用される製造装置を提供しようとするもので、具体的には表面処理装置の構成要素例えば成膜チャンバーが射出成形による温度の影響、型締力の影響等を受けることなく、適切な射出成形と表面処理を行うために必要な温度、型締力等の微調整を独立して行うことができ、そして比較的大きな中空成形品であっても熱収縮の影響を受けずに成形および表面処理が可能で、金型構造が簡単で低コストで製作でき、そして生産の効率も高い、内表面が表面処理された中空成形品の製造方法およびこの製造方法の実施に使用される製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、中空成形品の内表面を処理する表面処理装置は、射出成形用の射出成形機とは分離して近傍に配置され、同様に近傍に半成形品をハンドリングするハンドリング装置が配置されるように構成される。そして、1次成形で射出成形される2つの半成形品のうち一方は、ハンドリング装置によって一旦金型から取り出され、表面処理装置に挿入あるいは装着されて処理され、そして表面処理された半成形品は、再びハンドリング装置によって、1次成形用の凹部とは別に一方の金型に設けられている、所定の深さおよび大きさのインサート用凹部に挿入され、次いでインサート凹部に挿入された半成形品と、他方の金型に残されている別の半成形品とを対向させるよう、スライド金型をスライドして型締し、そして2つの半成形品の接合部の周りに射出する2次成形によって製造するように構成される。
また、他の発明は、1次射出成形と2次射出成形を同じ金型で実質的に同時に実施し、表面処理を前記1、2次射出成形と並行して金型の外部で実施するように構成される。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、スライド金型を固定金型に対して型締めして構成される2個の1次成形用のキャビティを使用して、2つ割り構造の一対の半成形品を突合部を有するように成形する1次射出成形工程と、前記一対の半成形品のいずれかの一方の半成形品を前記固定金型または前記スライド金型のいずれか一方の金型に残して型開し、前記他方の半成形品を、ハンドリング装置により、金型から取り出し、そして金型の外部に設けられている表面処理装置に装着する処理準備工程と、前記表面処理装置によって前記他方の半成形品の内表面を表面処理する表面処理工程と、内表面が処理された前記他方の中空半成形品を、前記ハンドリング装置により、前記表面処理装置から取り出して、前記固定金型または前記スライド金型に設けられているインサート用凹部に、前記突合部をパーティング面側に向けた状態で挿入、装着するインサート工程と、前記スライド金型を前記固定金型に対してスライドさせ、前記インサート用凹部に挿入されている前記他方の半成形品と、前記固定金型またはスライド金型に残されている前記一方の半成形品とを対向させて、前記スライド金型を固定金型に対して型締めして、前記一対の半成形品を前記突合部で互いに当接させて、前記突合部の周囲に溶融樹脂を射出して接合する2次射出成形工程とから構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の製造方法において、前記1次射出成形工程と、前記2次射出成形工程とを同じ金型で実質的に同時に実施し、前記表面処理工程は前記1、2次射出成形工程と平行して金型の外部で実施するように、そして請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の製造方法において、前記表面処理工程で他方の成形品の内表面に成膜装置により薄膜を形成するように構成される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の製造方法の実施に使用される射出成形機であって、該射出成形機は、固定金型と、該固定金型に対して、少なくとも2以上の成形位置へスライドされ、それぞれの成形位置で型締されるようになっているスライド金型とからなり、前記固定金型のパーティング面側には、中空成形品を2つ割りした形状の一方の半成形品を成形するための第1の凹部が少なくとも1つ、そして他方の半成形品を成形するための第2の凹部が少なくとも2つ設けられ、前記スライド金型のパーティング面側には、前記第1の凹部に対応する第1のコアが少なくとも1つ、そして前記第2の凹部に対応する第2のコアが少なくとも1つ以上設けられ、さらに前記スライド金型のパーティング面には、金型外で内表面が処理された前記第1の成形品が挿入、支持される、所定の深さおよび大きさのインサート用凹部が少なくとも1つ設けられ、前記固定金型と前記スライド金型が、前記2以上の成形位置の、どの成形位置で型締されても、前記第1の凹部と前記第1のコアによって前記第1の半成形品を成形するキャビティが少なくとも1つ、前記第2の凹部と前記第2のコアとによって前記第2の半成形品を成形するキャビティが少なくとも1つ、そして前記インサート用凹部と前記第2の凹部とが対向されて形成されるインサート用キャビティが少なくとも1つ、それぞれ構成されるようになっている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の製造方法の実施に使用される射出成形機であって、該射出成形機は、固定金型と、該固定金型に対して、第1、2の成形位置へスライドされ、それぞれの成形位置で型締されるようになっているスライド金型とからなり、前記固定金型のパーティング面側には、中空成形品を2つ割りした形状の一方の半成形品を成形するための、一方の半成形品用の第1、2の凹部と、他方の半成形品を成形するための、他方の成形品用の第1、2の凹部とが設けられ、前記スライド金型のパーティング面側には、一方の半成形品用の前記第1、2の凹部に対応する一方の半成形品用の第1のコアと、他方の半成形品用の前記第1、2の凹部に対応する他方の成形品用の第1、2のコアと、他方の半成形品用の前記第1、2の凹部に対応する、金型外で内表面が表面処理された前記第1の成形品が挿入、支持される所定の深さおよび大きさの第1、2のインサート用凹部が設けられるように構成される。請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の製造装置において、該製造装置は射出成形機と、該射出成形機から分離して設けられている表面処理装置と、同様に前記射出成形機から分離して設けられ前記射出成形機と表面処理装置との間に半成形品を受け渡しするハンドリング装置とからなり、これらの装置が関連して制御されるように構成され、請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれかの項に記載の製造装置において、表面処理装置が成膜装置であり、該成膜装置は成膜要素が設けられている成膜チャンバーと、成膜される半成形品が装着される碗状の受皿とかなら、前記成膜チャンバーと受皿の開口部が突き合わされると、その内部に気密な成膜空間が構成されるようになっている共に、前記成膜チャンバーの所要箇所には所定形状のマスキング板が設けられるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によると、表面処理装置あるいは成膜装置は固定金型およびスライド金型から分離して設けられているので、さまざまな効果が得られる。すなわち、表面処理装置の構成部材が、例えば請求項3あるいは7に記載の発明においては成膜チャンバーが、射出成形による金型の温度の影響を受けず、また型締力による応力を受けて歪む恐れもなく、真空を得るための密閉性を確保できる。したがって、射出成形と並行して表面処理工程を実施することができる。そして、金型内の内部に表面処理装置の構成部材を設ける必要がないので、金型全体を小さくすることができ、1次射出成形のためのキャビティを金型の型締力の略中央部に配置することができる。したがって、型締時に射出成形機にかかる荷重の偏りを小さくすることができ射出成形機の寿命を延ばすこともできる。また、射出成形の専門家と表面処理あるいは成膜の専門家は、それぞれ独立して射出成形用の金型と成膜装置とを設計し、そして製作することができるので、製作コストを低く抑えることが可能となる。さらには、射出成形のための型締調整と表面処理装置の調整は独立して実施できるので、メンテナンス上の自由度は高くなり、クリーニングも容易となる。
【0015】
さらには、固定金型またはスライド金型には、1次射出成形用の凹部とは別に、2次射出成形時に表面処理された半成形品が挿入されて支持される、所定の深さおよび大きさのインサート用凹部が設けられるので、1次射出成形された半成形品の熱収縮による収縮を考慮した寸法でインサート用凹部を設計すれば、寸法が大きくて全体の収縮量が大きい中空成形品であっても、収縮による影響を受けずに容易に製造できる効果も得られる。
【0016】
また、1次射出成形工程と2次射出成形工程とを同じ金型で実質的に同時に実施し、表面処理工程は前記1、2次射出成形工程と平行して金型の外部で実施する発明によると、インサート工程で挿入される表面処理された半成形品は、その直前に処理準備工程で取り出された半成形品ではなく、それより以前の一連の工程における処理準備工程で取り出された半成形品に対して表面処理された半成形品であるので、表面処理工程を待たずに直接処理準備工程からインサート工程に移行することができる。したがって、効率よく成形および表面処理を実施することができ、中空成形品の製造効率が高まる。また、表面処理工程に必要な所要時間と、その他の工程に必要な所要時間とが分かれば、効率よく成形および表面処理を実施できる最適な装置の数を決定できるという効果も得られる。例えば、表面処理工程以外の全ての工程の所要時間に対して、表面処理工程の所要時間がN倍かかることが判明すると、射出成形機1台に対してN台の表面処理装置を設けると、射出成形機も成膜装置も連続して効率よく稼働させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、理解をしやすいように、内表面に反射膜のような薄膜を有する碗状の本体部Hと、この本体部Hの開口部を封鎖する薄いレンズ状の蓋体Fとを1次射出成形により成形し、そして成膜装置で本体部Hの内表面に薄膜を形成し、次いで本体部Hの開口部を蓋体Fで封鎖する2次射出成形とから本体部Hの内表面に薄膜を有する中空成形品を製造する例について説明する。
【0018】
本発明の実施の形態に係る製造装置は、射出成形機SMと、この射出成形機SMの近傍に配置されている成膜装置MMと、前記射出成形機SMと成膜装置MMとに関連して配置されているハンドリング装置HMとから構成されている。射出成形機SMは図1に示され、成膜装置MMは図3に、そしてハンドリング装置HMは図4にそれぞれ分離して示されているが、これらは互いに近傍に配置され、そして連動して動作するように構成されている。
【0019】
本実施の形態に係る射出成形機SMは、概略あるいは基本構造は、従来周知のように構成されている。すなわち、図1に示されているように固定盤1、この固定盤に対して型開閉される可動盤2、固定盤1に取り付けられている固定金型3、可動盤2に上下方向にスライド可能に取り付けられているスライド金型4、固定盤1を横切るようにして設けられている第1、2の射出ユニット6、7等から構成されている。スライド金型4を、図1において上下方向にスライドさせる駆動装置は、本実施の形態では従来周知のピストンシリンダユニット9から構成されている。さらに詳しく説明すると、可動盤2の上部にはブラケット8が取り付けられ、このブラケット8の上端部からパーティング面P’の方へ水平に延びているアームにピストン・シリンダユニット9が設けられている。ピストンシリンダユニット9のロッド10は、下方へ伸びてスライド金型4の頂部に取り付けられている。したがって、ピストンシリンダユニット9に作動流体を給排すると、スライド金型4は可動盤2に対して、換言すると固定金型3に対して上下方向にスライド的に駆動され、第1、2の成形位置へとスライドさせることができる。この2つの第1、2の成形位置は、後述するように固定金型3とスライド金型4に設けられているコアあるいは凹部が同じ間隔で配置されているので、その間隔分だけずらした位置となる。
【0020】
固定盤1には、該固定盤1を横切る形で略中央部に穴1aが明けられ、この穴1aを通して固定盤1の背面側から第1、2の射出ユニット6、7のノズルが挿入されている。これらのノズルは、固定金型3に設けられているスプル孔に当接されている。第1、2の射出ユニット6、7は、従来周知のように構成され、スクリュを回転駆動すると、樹脂材料はシリンダ内で溶融・混練されて計量室に蓄積され、スクリュを軸方向に駆動すると、蓄積された溶融樹脂は、それぞれのノズルおよびスプルを通して後述する金型に形成されているキャビティに射出・充填されるようになっている。
【0021】
図2は、スライド金型4を開いて固定金型3とスライド金型4のパーティング面P、P’の詳細を示す拡大断面図であるが、同図に示されているように、固定金型3のパーティング面Pの側には、その中央部に同じ形状の2個の本体部成形用の第1、2の凹部3a、3a’が設けられ、その上下の両隣に同じ形状の2個の蓋体成形用の第1、2の凹部3b、3b’が設けられている。本体部成形用の第1、2の凹部3a、3a’は、蓋体成形用の第3、4の凹部3b、3b’と幅あるいは直径は実質的に同じであるが、深さは所定量だけ深くなっている。そして、これらの4個の凹部3b、3a、3a’、3bは等間隔に配置されている。本体部成形用の第1、2の凹部3a、3a’により本体部Hが、そして蓋体成形用の第1、2の凹部3b、3b’により蓋体Fが交互に成形されることになる。このように構成されている固定金型3には、詳しくは作用の項で説明するように、スプル、ランナ等が設けられ、それぞれのゲートを介して上記の凹部3b、3a、3a’、3bあるいはパーティング面Pに開口している。
【0022】
スライド金型4のパーティング面P’の側の略中央部には、図2に示されているように、前記本体部成形用の第1、2の凹部3a、3a’に対応して、これらの凹部3a、3a’より所定量だけ小さい本体部成形用のコア4aが設けられている。このコア4aの周囲には所定の間隔をおいて環状の小コア4tが設けられている。この小コア4tにより、本体部Hの開口部に接合用の空間部が成形されることになる。このように構成されている小コア4tの上下の両隣には、固定金型3の蓋体成形用の第1、2の凹部3b、3b’よりも所定量だけ小さい、2個の蓋体成形用の第1、2のコア4b、4b’が設けられ、その両隣には冷却されて収縮した本体部Hが挿入あるいは装着される2個の第1、2のインサート用の凹部4c、4c’が設けられている。これら凹部4c、コア4b、コア4a、コア4b’、凹部4c’は等間隔に配置されている。そして、これらの間隔は固定金型3に配置されている前述した凹部3b、3a、3a’3b’の間隔と等しくなっている。
【0023】
成膜装置あるいは成膜方法は、従来周知で、例えば成膜しようとする表面とターゲットを対向させておき、数Pa〜数10Pa程度のアルゴンガス雰囲気中でターゲットに数kVの負の電圧を印加し、そして放電させて薄膜を形成するスパッタリング方法、真空容器の中に成膜する表面と蒸発源とを収納して成膜する真空成膜法、表面に数kVの負の電圧を印加し数Paのアルゴンガスの圧力下で真空成膜をするイオンプレーティング方法等が知られ、また化学成膜法も知られている。本発明においては上記した従来周知の色々な方法が適用可能であるが、図3には、スパッタリング方法の実施に使用される成膜装置MMが模式的に示されている。
【0024】
この成膜装置MMは、1次成形された本体部Hが装着され、そして支持される碗状の受皿22と、この碗状の受皿22に対向して設けられている成膜チャンバー21とから構成されている。この成膜チャンバー21に成膜要素が設けられている。碗状の受皿22は支持台20に固定され、成膜チャンバー21の方がピストンシリンダユニット23により碗状の受皿22に当接および離間するように上下方向に駆動されるようになっている。ピストンシリンダユニット23は、従来周知のようにシリンダ23’とピストン24とから構成され、シリンダ23’が支持台20に固定されているブラケット25に取り付けられている。このように構成されている成膜チャンバー21の開口部の周囲には、マスキング板21aが取り付けられている。このマスキング板21aにより、本体部Hの開口端部はマスキングされ、必要な部分のみが成膜される。成膜要素である基板電極は、成膜チャンバー21の開口部の近くに、そしてターゲット26とそれを加熱する電極は奥の方にそれぞれ設けられ、それぞれの電極には給電線が取り付けられている。また、成膜チャンバー21内にはアルゴンガスのような不活性ガスを導入するためのガス導入管29’が開口し、さらには真空吸引管28’も開口している。これらの電極に連なった給電線27’、真空吸引管28’、ガス導入管29’等は、直流または高周波電源を供給する電源装置27、成膜に必要な排気ポンプなどからなる真空源28、不活性ガスタンクあるいは炭酸ガスのような不活性ガスを製造する不活性ガス供給源29等にそれぞれ接続されている。
【0025】
上記成膜装置MMは、次のように作用する。すなわち、1次成形された本体部Hを、その内表面を上に向けて碗状の受皿22に挿入あるいは装着する。そして、ピストンシリンダユニット23を駆動して成膜チャンバー21を碗状の受皿22に密着させる。そうすると、成膜チャンバー21内は密封あるいは気密状態になる。このときマスキング板21aは、碗状の受皿22に挿入されている本体部Hの開口部あるいは突合部に当接し、マスキング板21aによってシールされた状態となる。これにより、この後に行われる成膜工程で突合部に薄膜が形成されるようなことはない。次いで、真空源28と不活性ガス供給源29とを駆動して成膜チャンバー21内を数Pa〜数10Pa程度のアルゴンガス雰囲気にする。そして、ターゲット26には負の電圧を、加熱用の電極には電源装置27から直流または高周波電力を供給して放電させる。そうすると、本体部Hの内表面に従来周知のように薄膜が形成される。
【0026】
ハンドリング装置HMにも様々な方式のものが適用可能であるが、図4には、アームの先端に本体部Hを掴むグリッパ45が設けられたハンドリング装置HMが模式的に示されている。このハンドリング装置HMは、支持台41に設けられているロボット本体部42、この本体部42から出ている第1のアーム43、第1のアーム43にユニバーサルジョイント47を介して取り付けられている第2のアーム44、第2のアーム44の先端部に同様なジョイント46を介して取り付けられている本体部Hを掴むグリッパ45等から構成されている。グリッパ45は、第1、2のアーム43、44を介してロボット本体部42に取り付けられているので、伸縮、回転および旋回自在である。このようなハンドリング装置HMは、前述もしたように射出成形機SMと成膜装置MMと関連して、これらの装置の近傍に配置されている。
【0027】
次に、射出成形機SMと、その近傍に配置された成膜装置MMとハンドリング装置HMとから構成されている、本発明の実施の形態に係る製造装置を使用して内表面に薄膜を有する中空成形品を成形する方法を、図5〜8を参照しながら説明する。図5〜8は、成形および成膜の各工程を模式的に表す図で、それぞれの成形工程および成膜工程における、固定金型3とスライド金型4の型開閉状態、成膜装置の一部である碗状の受皿22と成膜チャンバー21の動作状態等を表している。本実施の形態によると、製造サイクルが確立すると、1、2次射出成形は実質的に同時に実施され、これと平行して成膜工程が実施されるが、以下の説明では始めに1番目の本体部H1のみを1次射出成形し、この1番目の本体部H1の内表面に成膜しているときに、2番目の本体部H2と1番目の蓋体F1とを実質的に同時に1次射出成形する例について説明する。
【0028】
最初に、図5の(ア)に示されているように、スライド金型4を上方の第1の成形位置へ駆動して、固定金型3に対して型締する。そうすると、固定金型3の本体部成形用の第1の凹部3aと、スライド金型4の本体成形用のコア4aおよび小コア4tとにより本体部成形用のキャビティChが構成される。また、本体部成形用のキャビティChには第2の射出ユニット7が連通するようになる。
【0029】
第2の射出ユニット7から溶融樹脂を射出する。これにより、1番目の本体部H1が成形される。このような1次成形が終わった状態が図5の(イ)に示されている。冷却固化を待って、スライド金型4を所定量だけ開く。この開いた状態が図5の(ウ)に示されている。このとき、成膜装置MMでは、ピストンシリンダユニット23を駆動して、成膜チャンバー21を碗状の受皿22から離して、図5の(a)に示されているように開いておく。この状態にしておいて、ハンドリング装置HMにより、1番目の本体部H1を固定金型3の本体成形用の第1の凹部3aから取り出して、成膜装置MMの碗状の受皿22に挿入あるいは装着する。1番目の本体部H1が碗状の受皿22に挿入されている状態が、図5の(b)に示されている。一方、スライド金型4は、図5の(エ)に示されているように、型開された状態で、下方の第2の成形位置へスライドさせておく。
【0030】
この第2の成形位置でスライド金型4を固定金型3に対して締めする。型締された状態が図6の(ア)に示されている。型締すると、固定金型3の本体部成形用の第2の凹部3a’と、スライド金型4の本体成形用のコア4aおよび小コア4tとにより本体部成形用のキャビティCh’が構成される。同時に、固定金型3の蓋体成形用の第2の凹部3b’と、スライド金型4の蓋体成形用の第2のコア4b’とにより蓋体成形用のキャビティCf’が構成される。また、本体部成形用のキャビティCh’には第2の射出ユニット7が、そして蓋体成形用のキャビティCf’には第1の射出ユニット6がそれぞれ連通するようになる。
【0031】
成膜装置MMでは、ピストンシリンダユニット23により、成膜チャンバー21を下方へ駆動して碗状の受皿22に密着させる。これにより、1番目の本体部H1と成膜チャンバー21との間に密封空間が形成される。この状態が、図6の(a)に示されている。そして、前述したスパッタリング方法により、1番目の本体部H1の内表面に薄膜U1を形成する。薄膜U1が形成された状態が、図6の(b)に示されている。
【0032】
1番目の本体部H1の内表面に成膜装置MMにより成膜されているときに、射出成形機SMでは並行して第2の射出ユニット7からキャビティCh’に1次射出して、2番目の本体部H2を成形する。略同時に第1の射出ユニット6から透明な樹脂をキャビティCf’に1次射出して1番目の蓋体F1を成形する。このようにして2番目の本体部H2と1番目の蓋体F1とが実質的に同時に成形されている状態が図6の(イ)に示されている。冷却固化を待ってスライド金型4を、図6の(ウ)に示されるように開く。このとき、2番目の本体部H2と1番目の蓋体F1は、固定金型3の本体部成形用の第2の凹部3a’と、蓋体成形用の第2の凹部3b’とにそれぞれ残して開く。並行して成膜装置MMでは、成膜チャンバー21を開き、ハンドリング装置HMにより成膜された1番目の本体部HU1を取り出す。図6の(c)には、成膜された第1の本体部HU1が取り出される直前が、図6の(d)には取り出され後の状態がそれぞれ示されている。成膜された1番目の本体部HU1を、ハンドリング装置HMにより、スライド金型4に設けられている第2のインサート用の凹部4c’に挿入あるいは装着する。この状態が、図6の(エ)に示されている。
【0033】
スライド金型4を上方の第1の成形位置へスライドさせる。そうすると、第2のインサート用の凹部4c’に挿入されている1番目の本体部HU1は、固定金型3の蓋体成形用の第2の凹部3b’に残されている1番目の蓋体F1に対向する。この対向した状態が、図7の(ア)に示されている。このとき成膜装置MMでは、図7の(a)に示されているように、ハンドリング装置HMにより固定金型3から取り出された2番目の本体部H2を碗状の受皿22に挿入する。次に、図7の(イ)に示されているように、第1の成形位置でスライド金型4を型締する。そうすると、成膜された1番目の本体部HU1と1番目の蓋体F1は突合部で突き合わせられる。成膜装置MMでは並行して、図7の(b)に示されているように、成膜チャンバー21は碗状の受皿22に密着し、2番目の本体部H2と成膜チャンバー21の間に密封空間が形成され成膜できる状態になる。
【0034】
次に、第2の射出ユニット7から溶融樹脂を2次射出する。溶融樹脂は、詳しくは図に示されていないが突き合わせることにより構成される接合用の空間部S1に充填される。これにより、成膜された1番目の本体部HU1と1番目の蓋体F1は、突合部で接合され、内表面に薄膜を有する中空成形品HUF1が得られる。また、同時に第2の射出ユニット7から射出される溶融樹脂はキャビテイChに充填される。この1次射出成形により、3番目の本体部H3が成形される。また、第1の射出ユニット6から例えば透明な溶融樹脂をキャビティCfに射出する。これにより、2番目の蓋体F2が略同時に成形される。この状態が、図7の(ウ)に示されている。一方、成膜装置MMでは、図7の(c)に示されているように、2番目の本体部H2の内表面に、前記したようにして薄膜U2が形成される。つまり、第1、2の射出ユニット6、7による1次成形および2次成形と、成膜装置MMによる成膜動作とが並行して実質的に同時に行われる。
【0035】
次いで、2番目の蓋体F2と3番目の本体部H3とが固定金型3の方に残っている状態でスライド金型4を開く。この型開き動作に関連して、図示されないエジェクタピンが突き出て、図7の(エ)に示されているように、内表面に薄膜を有する1番目の中空成形品HUF1が取り出される。成膜装置MMでは、図7の(d)に示されているように、成膜チャンバー21が開かれ、成膜された2番目の本体部HU2が取り出される。取り出された後の成膜装置は図8の(a)に示されている。
【0036】
成膜された2番目の本体部HU2を、成膜装置MMから取り出して、スライド金型4に設けられている第1のインサート用の凹部4cに挿入する。そして、スライド金型4を、成膜された2番目の本体部HU2と2番目の蓋体F2が対向するように、下方の第2の成形位置へスライドさせる。スライドさせた状態が図8の(ア)に示されている。次いで、1次成形された3番目の本体部H3を固定金型3から取り出し、成膜装置MMの碗状の受皿22に挿入する。3番目の本体部H3が取り出され、固定金型3の本体部成形用の第1の凹部3aが空になった状態が図8の(イ)に、3番目の本体部H3が成膜装置MMの碗状の受皿22に装着された状態が、図8の(b)に示されている。
【0037】
射出成形機SMでは、図8の(イ)に示されている状態でスライド金型4を型締する。そうすると、スライド金型4に装着された2番目の成膜された本体部HU2と2番目の蓋体F2は突き合わされる。同時に固定金型3の本体部成形用の第2の凹部3a’とスライド金型4の本体部成形用のコア4aとにより、4番目の本体成形用のキャビティCh’が構成される。また、固定金型3の蓋体成形用の第2の凹部3b’と、スライド金型4の蓋体成形用の第2のコア4b’とにより3番目の蓋体成形用のキャビティCf’が構成される。
【0038】
第2の射出ユニット7から溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は、2番目の成膜された本体部HU2と2番目の蓋体F2の接合用の空間部S2に充填され、本体部HU2と蓋体F2は一体化される。同時にキャビティCh’にも充填され4番目の本体部H4が成形される。また、第1の射出ユニット6からも、例えば透明な溶融樹脂を射出する。これにより、3番目の蓋体成形のキャビティCf’にも充填され、3番目の蓋体F3が成形される。このように、本体部HU2と蓋体F2とが接合され、4番目の本体部H4と3番目の蓋体F3とが成形された状態が、図8の(ウ)に示されている。成膜装置MMでは、図8の(c)に示されているように、平行して3番目の本体部H3の内表面に成膜が施される。
【0039】
4番目の本体部H4と3番目の蓋体F3の冷却固化を待って、4番目の本体部H4と3番目の蓋体F3を固定金型3の方に残してスライド金型4を開く。スライド金型4を開くと、エジェクタピンが突き出て、一体化されて成形品HUF2が取り出される。この状態が図8の(エ)に示されている。成膜装置MMでは、図8の(d)に示されているように、成膜チャンバー21を開いて、成膜された3番目の本体部HU3を取り出す。そして、固定金型3の第2のインサート用の凹部4c’に装着する。装着すると、図6の(エ)に示されている状態になる。以下、図6の(エ)〜図8の(エ)を繰り返して本体部と蓋体とを1次成形し、また本体部と蓋体を2次成形により接合し、同時に図6の(d)〜図8の(d)を繰り返して本体部の内表面に成膜して、本体部の内表面に薄膜を有する中空成形品を製造する。
【0040】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、色々な形で実施できる。例えば、本実施の形態により製造される中空成形品が、内表面に反射膜のような薄膜を有する碗状の本体部と、この本体部の開口部を封鎖する薄いレンズ状の蓋体とからなるフロントランプ、テールランプ等に限定されないことは明らかである。また、本体部と蓋体とを同一樹脂で成形できることも明らかである。さらには、内表面を表面処理装置例えば静電塗装装置により塗装することも、あるいは研磨装置により研磨することもでき、このように実施しても同様な効果が得られる。また、本体部が例えば平板状で、蓋体が碗状であっても同様に実施でき、さらにはマスキング板の配置が図示の実施の形態に限定されることなく、必要箇所をマスキングして表面処理をするように実施できることも明らかである。
【0041】
また、本発明に係る製造装置の金型も他の形で実施できる。例えば、上記実施の形態では、成膜された本体部が装着されるインサート用の凹部は、スライド金型の方に設けられているが、固定金型に設けても同様に実施できる。このように実施するときは、蓋体を成形するキャビティを構成するための凹部は、スライド金型の方に設けられる。また、インサート用の凹部が1個のみ設けられている金型であっても実施できる。図9の(ア)には、そのような金型の例が示されている。本実施の形態によっても固定金型52とスライド金型51とからなっているが、前述した実施の形態ではスライド金型4は可動盤2に上下方向に直線的にスライドするように取り付けられているのに対し、本実施の形態によるとスライド金型51は、可動盤にその面が該可動盤に接して回転可能に取り付けられている。このような固定金型52には、略中央に本体部成形用の凹部52aが設けられ、その両側には、蓋体形成用の同じ形状の2個の凹部52b、52b’が設けられている。スライド金型51には略中央部に、本体部形成用のコア51aとその周囲に小コア51dが設けられ、その隣に、蓋体形成用のコア51bと、インサート用の凹部51cが設けられている。
【0042】
したがって、図9の(ア)に示されている型開の状態から、固定金型52に対してスライド金型51を型締すると、図9の(イ)に示されているように、3個のキャビティティが構成される。すなわち、1次射出成形で本体部を成形するためのキャビティティCxと、同様に蓋体を成形するためのキャビティティCyと、インサート用の凹部51cに挿入される成膜された本体部と凹部52bに残されている蓋体とを2次成形で接合するためのキャビティティCzとが構成される。本実施の形態によると、スライド金型51は型を開いた状態で、パーティング面に垂直な軸Rを中心に、回転可能に設けられているので、スライド金型51を開き、軸Rを中心に180度回転させ、型締すると図9の(ウ)に示されているように3個のキャビティティが形成される。すなわち、1次射出成形で本体部を成形するためのキャビティティCxと、同様に蓋体を成形するためのキャビティティCy’と、2次成形用のキャビティティCz’とが構成される。この固定金型52とスライド金型51と、前述した成膜装置MMと、ハンドリング装置HMとを使用して前述したような本体部の内表面に薄膜を有する中空製品を製造することができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る射出成形機の概略を、一部断面にして示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る射出成形機の金型を開いて拡大して示す側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る成膜装置を模式的に示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るハンドリング装置を模式的に示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る製造装置の作用の各段階を示す図で、その(ア)〜(エ)は射出成形機の金型の作用の各段階を示す断面図、その(a)、(b)は成膜装置の作用の各段階を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る製造装置の作用の他の各段階を示す図で、その(ア)〜(エ)は射出成形機の金型の作用の各段階を示す断面図、その(a)〜(d)は成膜装置の作用の各段階を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る製造装置の作用のさらに他の各段階を示す図で、その(ア)〜(エ)は射出成形機の金型の作用の各段階を示す断面図、その(a)〜(d)は成膜装置の作用の各段階を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る製造装置の作用の他の各段階を示す図で、その(ア)〜(エ)は射出成形機の金型の作用の各段階を示す断面図、その(a)〜(d)は成膜装置の作用の各段階を示す断面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る射出成形機の金型を示す図で、その(ア)はスライド金型を開いた状態で、その(イ)はスライド金型を閉じて1次成形用のキャビティと2次成形用のキャビティとが構成された状態で、その(ウ)はスライド金型を180度回転して閉じて1次成形用のキャビティと2次成形用のキャビティとが構成された状態で、それぞれ示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
3 固定金型 4 可動金型
6 第1の射出ユニット 7 第2の射出ユニット
3a 本体部成形用の第1の凹部 3a’ 本体部成形用の第2の凹部 3b 蓋体成形用の第1の凹部 3b’ 蓋体成形用の第2の凹部
4 本体形成用のコア 4c 第1のインサート用凹部 4c’ 第2のインサート用凹部 21 成膜チャンバー
21a マスキング板 22 受皿
SM 射出成形機 MM 成膜装置
HM ハンドリング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド金型を固定金型に対して型締めして構成される2個の1次成形用のキャビティを使用して、2つ割り構造の一対の半成形品を突合部を有するように成形する1次射出成形工程と、
前記一対の半成形品のいずれかの一方の半成形品を前記固定金型または前記スライド金型のいずれか一方の金型に残して型開し、前記他方の半成形品を、ハンドリング装置により、金型から取り出し、そして金型の外部に設けられている表面処理装置に装着する処理準備工程と、
前記表面処理装置によって前記他方の半成形品の内表面を表面処理する表面処理工程と、
内表面が処理された前記他方の中空半成形品を、前記ハンドリング装置により、前記表面処理装置から取り出して、前記固定金型または前記スライド金型に設けられているインサート用凹部に、前記突合部をパーティング面側に向けた状態で挿入、装着するインサート工程と、
前記スライド金型を前記固定金型に対してスライドさせ、前記インサート用凹部に挿入されている前記他方の半成形品と、前記固定金型またはスライド金型に残されている前記一方の半成形品とを対向させて、前記スライド金型を固定金型に対して型締めして、前記一対の半成形品を前記突合部で互いに当接させて、前記突合部の周囲に溶融樹脂を射出して接合する2次射出成形工程と、からなる内表面が表面処理された中空成形品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法において、前記1次射出成形工程と、前記2次射出成形工程とを同じ金型で実質的に同時に実施し、前記表面処理工程は前記1、2次射出成形工程と平行して金型の外部で実施する、内表面が表面処理された中空成形品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法において、前記表面処理工程で他方の成形品の内表面に成膜装置により薄膜を形成する、内表面が表面処理された中空成形品の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の製造方法の実施に使用される射出成形機であって、該射出成形機は、固定金型と、該固定金型に対して、少なくとも2以上の成形位置へスライドされ、それぞれの成形位置で型締されるようになっているスライド金型とからなり、
前記固定金型のパーティング面側には、中空成形品を2つ割りした形状の一方の半成形品を成形するための第1の凹部が少なくとも1つ、そして他方の半成形品を成形するための第2の凹部が少なくとも2つ設けられ、
前記スライド金型のパーティング面側には、前記第1の凹部に対応する第1のコアが少なくとも1つ、そして前記第2の凹部に対応する第2のコアが少なくとも1つ以上設けられ、さらに前記スライド金型のパーティング面には、金型外で内表面が処理された前記第1の成形品が挿入、支持される、所定の深さおよび大きさのインサート用凹部が少なくとも1つ設けられ、
前記固定金型と前記スライド金型が、前記2以上の成形位置の、どの成形位置で型締されても、前記第1の凹部と前記第1のコアによって前記第1の半成形品を成形するキャビティが少なくとも1つ、前記第2の凹部と前記第2のコアとによって前記第2の半成形品を成形するキャビティが少なくとも1つ、そして前記インサート用凹部と前記第2の凹部とが対向されて形成されるインサート用キャビティが少なくとも1つ、それぞれ構成されることを特徴とする、内表面が表面処理された中空成形品の製造装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の製造方法の実施に使用される射出成形機であって、該射出成形機は、固定金型と、該固定金型に対して、第1、2の成形位置へスライドされ、それぞれの成形位置で型締されるようになっているスライド金型とからなり、
前記固定金型のパーティング面側には、中空成形品を2つ割りした形状の一方の半成形品を成形するための、一方の半成形品用の第1、2の凹部と、他方の半成形品を成形するための、他方の成形品用の第1、2の凹部とが設けられ、
前記スライド金型のパーティング面側には、一方の半成形品用の前記第1、2の凹部に対応する一方の半成形品用の第1のコアと、他方の半成形品用の前記第1、2の凹部に対応する他方の成形品用の第1、2のコアと、他方の半成形品用の前記第1、2の凹部に対応する、金型外で内表面が表面処理された前記第1の成形品が挿入、支持される所定の深さおよび大きさの第1、2のインサート用凹部が設けられていることを特徴とする、内表面に薄膜を有する中空成形品の製造装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の製造装置において、該製造装置は射出成形機と、該射出成形機から分離して設けられている表面処理装置と、同様に前記射出成形機から分離して設けられ前記射出成形機と表面処理装置との間に半成形品を受け渡しするハンドリング装置とからなり、これらの装置が関連して制御されることを特徴とする、内表面が表面処理された成形品の製造装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかの項に記載の製造装置において、表面処理装置が成膜装置であり、該成膜装置は成膜要素が設けられている成膜チャンバーと、成膜される半成形品が装着される碗状の受皿とかなら、前記成膜チャンバーと受皿の開口部が突き合わされると、その内部に気密な成膜空間が構成されるようになっている共に、前記成膜チャンバーの所要箇所には所定形状のマスキング板が設けられていることを特徴とする、内表面に薄膜を有する中空成形品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−221575(P2008−221575A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62128(P2007−62128)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】