説明

内視鏡装置

【課題】半導体発光素子を用いて広いダイナミックレンジと高い光量分解能を確保し、高精度に光量制御が可能な内視鏡装置を提供する。
【解決手段】内視鏡装置は、照明光を生成する半導体光源と、電子シャッタにより露光期間を調整する撮像手段と、入力される目標光量に応じて半導体光源をパルス点灯駆動する光源制御手段とを備える。光源制御手段は、目標光量の高い順に、電子シャッタによる1フレーム内の露光期間に対し、所定の点灯期間になるまで駆動パルスのパルス数を減少させて半導体光源の点灯期間を短縮する第1のパルス変調(PNM)制御と、所定の点灯期間に対し、所定間隔で駆動パルスを間引くことで点灯期間内のパルス密度を減少させる第2のパルス変調(PDM)制御と、第2の制御範囲において最小パルス数とされた各駆動パルスに対し、パルス幅を減少させる第3のパルス変調(PWM)制御とを行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
体腔内の組織を観察する内視鏡装置が広く知られている。一般的な内視鏡装置は、キセノンランプ等の白色光源から出射された白色光を、ライトガイドを通じて体腔内の被観察領域に照明光として供給し、その白色光の照射によって被観察領域からの反射光に基づく像を撮像素子により撮像して観察画像を生成する構成となっている。また近年になって、生体組織に特定波長の狭帯域光を照射して、組織表層の毛細血管や微細構造を観察する狭帯域光観察、或いは自家蛍光、薬剤蛍光による蛍光観察等の特殊光を用いた観察モードを有する内視鏡装置も利用されつつある。
特殊光を照射する内視鏡装置の光源としては、キセノンランプ等の白色光源からの光を、フィルタを通すことで所望の波長帯域の光を取り出す構成の他、レーザ光源や発光ダイオード等の半導体発光素子からの発光波長をそのまま利用する構成がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−319115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡装置の光源としてキセノンランプ等の白色光源を用いる場合には、出射光光路の途中にスリットを配置し、このスリットによる遮光によって光量制御を行っている。この構成によれば、2400:1程度の光量制御のダイナミックレンジが実現されている。しかし、半導体光源を用いて光量制御する場合、一般的には駆動電流の増減やパルス幅変調により光量制御することが多いが、このような光量制御だけでは広いダイナミックレンジの確保と高い光量分解能の実現には限度があり、所望の発光光量に高精度に制御することは難しい。そこで、狭パルス発生器や高分解能型のPWM制御器を用いて高精度に光量制御することもできるが、いずれもの機器も高価であり、内視鏡装置への搭載は現実的ではない。また、半導体光源には発光強度の温度依存性があり、使用状態によって光量が変動する特性を有している。そのため、半導体光源をキセノンランプ等の白色光源と同等以上に光量制御することは依然として課題が多いのが実情であった。
【0005】
本発明は、半導体光源による照明光を用いる場合でも広いダイナミックレンジと高い光量分解能を確保し、高精度に光量制御が可能な内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記構成からなる。
内視鏡挿入部の先端から所望の光量の照明光を出射する内視鏡装置であって、
前記照明光を生成する半導体光源と、
電子シャッタにより露光期間を調整する撮像手段と、
入力される目標光量に応じて前記半導体光源をパルス点灯駆動する光源制御手段と、を備え、
前記光源制御手段が、前記目標光量の高い順に、
前記電子シャッタによる1フレーム内の露光期間に対し、所定の点灯期間になるまで前記駆動パルスのパルス数を減少させて前記半導体光源の点灯期間を短縮する第1のパルス変調制御と、
前記第1のパルス変調領域における所定の点灯期間に対し、所定間隔で前記駆動パルスを間引くことで前記点灯期間内のパルス密度を減少させる第2のパルス変調制御と、
前記第2の制御範囲において最小パルス数とされた各駆動パルスに対し、パルス幅を減少させる第3のパルス変調制御と、
を行う内視鏡装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の内視鏡装置によれば、半導体光源による照明光を用いる場合であっても、広いダイナミックレンジで、しかも高い光量分解能を確保することができる。これにより、通常観察や特殊光観察における照明光を、強度を任意の強度に正確に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡及び内視鏡が接続される各装置を表す内視鏡装置の構成図である。
【図2】内視鏡装置の具体的な構成例を示す外観図である。
【図3】撮像信号処理部による制御のブロック図である。
【図4】駆動パルスの制御例のタイミングチャートである。
【図5】最大光量から最小光量までの各光量に対するパルス制御の内容を示すグラフである。
【図6】光源装置の要部構成と、光照射窓へ導光する光路を模式的に表したブロック構成図である。
【図7】光源装置からの出射光により生成される照明光のスペクトルを示すグラフである。
【図8】1灯方式と2灯方式を組み合わせた光量制御パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡及び内視鏡が接続される各装置を表す内視鏡装置の構成図、図2は内視鏡装置の具体的な構成例を示す外観図である。
内視鏡装置100は、図1に示すように、内視鏡11と、光源装置13と、撮像画像の信号処理を行うプロセッサ15と、モニタ17とを有して構成される。内視鏡11は、本体操作部19と、この本体操作部19に連設され被検体(体腔)内に挿入される挿入部21とを備える。本体操作部19には、ユニバーサルケーブル23が接続され、このユニバーサルケーブル23の先端は、ライトガイド(LG)コネクタ25Aを介して光源装置13に接続される。また、撮像信号は、ビデオコネクタ25Bを介してプロセッサ15に入力される。
【0010】
図2に示すように、内視鏡11の本体操作部19には、挿入部21の先端側で吸引、送気、送水を実施するためのボタンや、撮像時のシャッターボタン等の各種操作ボタン27が併設されるとともに、一対のアングルノブ29が設けられている。
挿入部21は、本体操作部19側から順に軟性部33、湾曲部35、及び先端部(内視鏡先端部)37で構成され、湾曲部35は、本体操作部19のアングルノブ29を回動することによって遠隔的に湾曲操作される。これにより、先端部37を所望の方向に向けることができる。
【0011】
また、図1に示すように、内視鏡11の先端部37には、撮像光学系の観察窓41と、照明光学系の光照射窓43が配置され、光照射窓43から照射される照明光による被検体からの反射光を、観察窓41を通じて撮像するようになっている。撮像された観察画像は、プロセッサ15に接続されたモニタ17に表示される。
【0012】
ここで、撮像光学系は、CCD(charge coupled device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子45と、結像レンズ47等の光学部材とを有する。撮像光学系で取り込まれる観察像は、撮像素子45の受光面に結像して電気信号に変換され、その電気信号が信号ケーブル49を通じてプロセッサ15の撮像信号処理部51に入力され、ここで映像信号に変換される。
【0013】
一方、照明光学系は、半導体光源55を有する光源装置13と、これに接続される光ファイバ53と、光ファイバ53の光出射側に配置された波長変換部57とを有する。光ファイバ53は、内視鏡先端部37へレーザ光を導き、先端部37の波長変換部57からの発光とレーザ光とが合成された白色照明光を発生させる。波長変換部57は、レーザ光により励起発光する蛍光体を備える。半導体光源55は、制御部61からの指令に基づく光源駆動回路59からの駆動信号を受けて、所望強度の光を発する。
【0014】
制御部61は、撮像信号や各種情報を保存する記憶手段としてのメモリ63と接続され、撮像信号処理部51から出力される画像データをモニタ17に映出する。また、図示しないLAN等のネットワークに接続されて画像データを含む情報を配信する等、内視鏡装置100全体を制御する。
【0015】
半導体光源55は、中心波長445nmの青色発光の半導体レーザを備える(以降、半導体光源をレーザ光源とも称する)。半導体光源55は、出射光量を制御されつつ青色レーザ光を出射し、この出射光が光ファイバ53を通じて内視鏡挿入部21の波長変換部57に照射される。この半導体光源55としては、例えばブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが使用できる。
【0016】
波長変換部57は、半導体光源55からのレーザ光の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl10O37)等を含む蛍光体等)を含んで構成される。これにより、半導体光源55からのレーザ光と、このレーザ光から変換された緑色〜黄色の励起光とが合波されて、白色光が生成される。
【0017】
次に、上記構成の内視鏡装置100が半導体光源55の発光強度を増減制御する手順を説明する。
図1に示すプロセッサ15に設けた撮像信号処理部51は、プロセッサ15に接続された内視鏡11の撮像素子45が出力するRAWデータを受け取り、このRAWデータに応じた最適な照明光量となるように、光源駆動回路59に半導体光源55を制御する制御信号を出力する。
【0018】
図3に撮像信号処理部51による制御のブロック図を示した。撮像素子45から出力されるRAWデータ(生画像の情報)は、撮像信号処理部51に入力され、ヒストグラム作成部65は、このRAWデータに対応する光量のヒストグラムを作成し、測光値算出部67に出力する。測光値算出部67は、入力されたヒストグラムと、各種の測光モード(ピーク値、平均値等)により求めた明るさ検出値とに基づいて測光値を算出する。そして、目標光量算出部69は、算出された測光値に応じて次フレームの目標光量を求める。ここで、目標光量は、従前のキセノンランプ等の白色光源の絞り値に相当する値である。この目標光量は例えば12bit階調(0〜4096)で表現される。
【0019】
次に、目標光量を半導体光源55の発光量の信号に変換する。図1に示す制御部61は、半導体光源の発光量を駆動パルスによってパルス点灯制御する。駆動パルスは、光源駆動回路59で生成されて半導体光源55に入力される。駆動パルスの制御は、パルス数制御(PNM:Pulse Number Modulation)及びパルス密度制御(PDM:Pulse Density Modulation)と、パルス幅制御(PWM:Pulse Width Modulation)との3種類、又は電流値制御を加えた4種類の制御を用いる。以下の説明では、上記4種類の制御を用いる例を示す。
【0020】
図4に駆動パルスの制御例のタイミングチャートを示した。垂直同期信号VDにより規定される画像の1フレームの期間内において、電子シャッタの露光期間Wの全てを点灯させる駆動パルス[1]を最大光量としている。ここで、1フレーム期間は33ms、シャッタ速度は1/60sとする。また、駆動パルス[1]の周波数は120kHzであり、電子シャッタの露光期間内に2000個のパルスが含まれているものする。
【0021】
駆動パルス[1]の最大光量時から光量を減少させる場合、光量の大きい順に、第1のパルス変調領域でPNM制御、第2のパルス変調領域でPDM制御、第3のパルス変調領域でPWM制御、第4のパルス変調領域で電流値制御を行い、光量を徐々に減少させる。
【0022】
まず、PNM制御においては、電子シャッタの露光期間Wの全てから、時間軸における後ろ詰めでパルス数を減少させ、点灯期間を短縮する。つまり、電子シャッタによる1フレーム内の露光期間に対し、駆動パルス[2]に示すように、所定の最小割合になるまで駆動パルスのパルス数を駆動開始タイミングが遅れるように減少させ、半導体光源55の点灯期間を短縮する。なお、最大光量は、電子シャッタの露光期間Wの全てでなく、1フレーム全期間の点灯であってもよく、連続点灯状態としてもよい。
【0023】
次に、駆動パルス[3]に示すように、半導体光源55の点灯期間をPNM制御により所定の点灯期間Wminまで短縮した後、PDM制御により駆動パルスを間引く処理を行う。このPDM制御においては、所定の点灯期間Wminまで短縮された点灯期間に対し、所定間隔で駆動パルスを間引くことで点灯期間内のパルス密度を減少させる。
【0024】
そして、駆動パルス[4]に示すように、駆動パルスのパルス間隔が間引き限界に達するまで、即ち、駆動パルスが所定の最小パルス密度となるまでPDM制御を行う。
【0025】
次に、駆動パルス[5]に示すように、駆動パルスが所定の最小パルス数となった後は、PWM制御により駆動パルスのパルス幅を減少させる。そして、駆動パルス[6]に示すように、駆動パルスのパルス幅がPWM制御限界に達するまで、即ち、所定の最小パルス幅になるまでPWM制御を行う。
【0026】
次に、駆動パルス[7]に示すように、駆動パルスが所定の最小パルス幅となった後は、駆動電流を小さくする。即ち、最小パルス幅とされた各駆動パルスに対し、パルス振幅を一律に減少させる。
【0027】
上記の最大光量から最小光量までの各光量に対する制御パラメータ情報の内容を図5及び表1に纏めて示した。図5及び表1に示す制御パラメータの情報は、図1に示すメモリ63に記憶され、制御部61から随時参照されて所望の駆動パルスが生成される。
【0028】
【表1】

【0029】
このように、光量を減少制御する際、最大光量から最初にPNM制御を行うことで、半導体光源55の点灯期間を短縮して、ブレによる撮像画像の画像ボケ発生を抑制できる。また、半導体光源55の非点灯時間が長くなるので、連続点灯する場合と比較して、光源自体や光路上の各光学部材の発熱を低減する効果も得られる。
【0030】
また、所定の点灯期間まで短縮された時点でPNM制御からPDM制御に切り替えることにより、適度の点灯期間(上記例では144パルス)を維持されて、動画観察時のフリッカを抑制することができる。
【0031】
PDM制御の下限であるパルス数(上記例では16パルス)は、PDM制御による調光分解能が粗くなることを防止することができる。
【0032】
駆動パルスの間引き限界までPDM制御し、更に目標光量を減少させる際にPDM制御からPWM制御に切り替える。PWM制御では、各駆動パルスそれぞれのデューティ比を変更することで、間引き限界より低光量域における光量をより細かに調整でき、調光分解能が向上する。
【0033】
ところで、半導体光源55をパルス点灯制御する際、半導体光源55はスペックルノイズによる照明ムラが生じるが、このスペックルノイズは高周波変調駆動により低減できる。本制御例では常時120kHzのパルス駆動をしており、十分なスペックルノイズ低減効果を得るために、PWM制御におけるデューティ比は95%を上限としている。
【0034】
デューティ比の下限値については、次の通りである。即ち、実際のレーザ光は駆動の立ち上がり信号に忠実に追随することができず、ある程度の遅れ成分を有して立ち上がる。また、立下り時も同様に遅れ成分を有する。そのため、駆動パルスが極端に狭い狭幅パルスであると目標値に到達する前に立ち下がることが予想されるので、PWM制御が正確に行えるデューティ比の下限値として、7.8%を設定している。
【0035】
そして、光量制御の最小光量側となる最小パルス範囲で駆動パルスの電流値制御を行うことにより、高精度な光量制御が可能となる。即ち、設定する光量制御値に1.0〜0.2の係数値を乗じて出射光量を減少させる。レーザ光源は、発光素子自身の発熱状態によって発光開始電流値が微妙にずれて発光量制御の精度に影響するため、発光量、発熱量の大きい最多パルス範囲で電流値を変更することは好ましくない。しかし、発光量の小さい最少パルス範囲では、駆動パルスの電流値が小さくて済み、発光素子自身の発熱も安定している。このため、電流値制御を微小発光領域でのみ使用することで、高精度な光量制御が可能となる。
【0036】
上記のPNM/PDM制御、PWM制御、電流値制御は、目標光量に応じて切り替えられ、いずれか1つの制御が他の制御と排他的に使用される。制御可能な光量のダイナミックレンジは、PNM制御においては最大値2000〜最小値144の範囲で13.9:1、PDM制御においては最大値144〜最小値16の範囲で5.14:1、PWM制御においては最大値95%〜最小値7.8%の範囲で12.2:1、電流値制御においては、最大値1〜最小値0.2の範囲で5:1となる。よって、各制御を組み合わせることで、制御可能なダイナミックレンジは4358:1となる。
【0037】
上記と同等のダイナミックレンジと調光分解能をPNM制御だけで実現する場合、パルス周波数は約4MHz(60Hz×4358×16)となり、レーザ光源の高速な駆動回路が必要となる。また、同様にPWM制御だけで実現する場合は、約0.12ns(1/(120k×4358×16)のパルス幅制御分解能となり、8GHzで動作する制御回路が必要となる。このように、PNM単独、PWM単独で光量制御する方法に対し、各調光領域に応じてPNM制御、PDM制御、電流値制御を選択して制御することで、レーザ光源の駆動装置を大幅に簡略化することができる。
【0038】
次に、内視鏡装置の他の構成例を説明する。
図1に示す光源装置の要部構成と、光照射窓へ導光する光路を模式的に表したブロック構成図を図6に示した。
本構成例の光源装置13Aは、中心波長445nmのレーザ光源LD1−1と、同じく中心波長445nmの白色光用光源であるレーザ光源LD1−2と、中心波長405nmの狭帯域光用光源であるレーザ光源LD2とを有している。また、各レーザ光源LD1−1,LD1−2,LD2は、それぞれを個別に制御する光源駆動回路71a,71b,71cに接続されている。そして、各レーザ光源LD1−1,LD1−2,LD2からの出射光は、コンバイナ73で合波された後、カプラ75で光ファイバ53,53に分波され、内視鏡先端部に配置された波長変換部57に出射される。
【0039】
この光源装置13Aからの出射光により生成される照明光のスペクトルを図7に示した。レーザ光源LD1−1,LD1−2は、中心波長445nmの同じスペクトルのレーザ光を出射し、波長変換部57の蛍光体を励起発光させて緑色〜黄色の蛍光を発生させる。この中心波長445nmの青色光と蛍光体からの蛍光は、互いに混合されることで白色光となり、白色照明光として供される。
【0040】
また、レーザ光源LD2は、中心波長405nmのレーザ光を出射する。波長変換部57からは僅かに蛍光が発生するが、出射光の殆どが波長変換部57を透過する。これにより、紫色の狭帯域光が生成されて照明光として供される。
【0041】
これらレーザ光源LD1−1,LD1−2,LD2からの光は、内視鏡先端部の複数箇所に配置された光照射窓から、それぞれ等しい光量で出射される。以下に、上記構成の光源装置13Aを用いてパルス点灯制御する場合を説明する。
【0042】
制御部61(図1参照)は、前述の図3に示す構成例と同様に、撮像素子からのRAWデータと各種測光モードによる明るさを検出して、次フレームの目標光量を算出する。なお、算出した目標光量は、個々のレーザ光源の発光制御値を求める際に、以下の点を考慮して発光量を設定することが好ましい。
(1)全体光量制限
レーザ光源を検温し、その結果が規定温度を超える場合には、目標とする光量制御値から所定値を減じる補正制御を行う。逆に正常温度範囲であった場合は、減少制御された光量制御値に所定値を加えて、補正前の目標光量制御値に戻す。この補正制御は、内視鏡先端部の発熱を制限するために行う。
【0043】
(2)光学部品の個体差補正
光学部品の機種差の補正を目的とし、装置全体の光量制御後における各レーザ光源の光量制御値に、そのレーザ光源に対応した係数をそれぞれ乗算する。ただし、全体光量は一定に維持するため、各係数の総和が一定値となるように係数を設定する。本構成ではコンバイナ73を用いているため、この補正は不要であるが、複数のレーザ光源から個別に光照射する場合には光量制御値を補正する。
【0044】
(3)レーザ光源発光比率
内視鏡の観察モードに対応して各レーザ光源の発光比率を設定するため、表2に示す係数を光量制御値に乗算する。なお、観察モードは、例えば図1に示す本体操作部19の操作ボタン27の一つである観察モード変更ボタン81の押下により、制御部61が切り替える。
【0045】
【表2】

【0046】
同じスペクトルの光を出射するLD1−1,LD1−2のみ点灯させ、波長変換部57と協働して白色光を生成する白色発光モードは、白色光の照射により患部を観察する通常観察を行うモードである。
【0047】
血管強調モードは、白色光と中心波長405nmの狭帯域光とを照射して、白色光の照射により得られる明るい通常画像と、中心波長405nmの狭帯域光照明により得られる血管像とを合成して、血管像を選択的に強調した診断画像を提供するモードである。このモードでは、遠景観察でも血管が見やすい画像を生成できる。
【0048】
微細血管モードは、中心波長405nmの狭帯域光照明によって組織表層の毛細血管や微細構造が強調された画像を提供するモードである。
【0049】
上記の各モードにおいては、光源毎に目標光量の補正を行い、その後、各レーザ光源を駆動する際、目標光量の大きい順に、前述したPNM制御、PDM制御、PWM制御、電流値制御を行って駆動パルスを生成し、各レーザ光源をパルス点灯制御する。
【0050】
白色発光モードにおいては、白色照明光生成用のレーザ光源LD1−1、LD1−2を同じ比率で光量制御し、双方の光源からの合計光量が目標光量になるようにする(2灯方式の制御)。
【0051】
目標光量が低い場合には、2つのレーザ光源のうち一方のレーザ光源のみを点灯させ、他方は消灯させる1灯方式の制御を行うことで、光量制御幅を拡大することができる。図8に1灯方式と2灯方式を組み合わせた光量制御パターンを示した。2灯の光源を同時に点灯させて光量制御する場合、制御値P2maxのときに最大光量、P2minのときに最小光量となる。1灯の光源だけで光量制御する場合、制御値P1maxのときに最大光量、P1minのときに最小光量となる。
【0052】
そこで、目標光量が高いときには2灯方式で光量制御して最大光量を稼ぎ、目標光量が低いときには1灯方式で光量制御して最小光量を2灯方式より更に低くすることで、光量制御幅を拡大することができる。また、目標光量が低いときに2灯方式から1灯方式に切り替えることで、1灯分の点灯期間が増加して、フリッカの発生を抑制する効果が得られる。
【0053】
血管強調モードにおいては、3つのレーザ光源LD1−1,LD1−2,LD2を同じ比率で光量制御し、各光源からの合計光量が目標光量になるようにする。
【0054】
微細血管モードにおいては、異なるスペクトルのレーザ光源を所定の出射光量比で点灯するが、この出射光量比の設定は駆動電流を増減制御することで調整する。そして、この設定された出射光量比を保持したまま、前述のPNM制御、PDM制御、PWM制御、電流値制御を行う。これにより、一旦設定された出射光量比が駆動パルスの光量制御によって乱れることなく、つまり、出射光の波長を一定に保持しつつ光量のみを増減制御することができる。また、電子シャッタ制御と各観察モードとの連動が容易となる利点もあり、スムーズな露光制御が可能となる。
【0055】
以上説明したように、本構成の内視鏡装置によれば、半導体光源を用いて従前のキセノンランプ等の白色光源を用いた場合よりも広いダイナミックレンジを確保でき、より高画質な画像取得を可能にしている。また、キセノンランプ等の既存構成と同等の光源制御を実現しているので、既存のプロセッサをそのまま使用でき、汎用性を高めた構成にできる。更に、半導体光源は光源寿命がキセノンランプ等より格段に長いため、機器のメンテナンスを軽減できる。
【0056】
また、狭帯域光照明用の半導体光源としては、中心波長が360〜530nmのレーザ光源、発光ダイオードが利用可能で、省電力で高輝度な照明光が得られる。
【0057】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。例えば、半導体光源としてレーザ光源を用いた例を説明したが、発光ダイオードを用いた構成としてもよい。また、光量制御は、撮像手段の電子シャッタによる露光制御と、光源の光量制御とを組み合わせて制御することもできる。
【0058】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 内視鏡挿入部の先端から所望の光量の照明光を出射する内視鏡装置であって、
前記照明光を生成する半導体光源と、
電子シャッタにより露光期間を調整する撮像手段と、
入力される目標光量に応じて前記半導体光源をパルス点灯駆動する光源制御手段と、を備え、
前記光源制御手段が、前記目標光量の高い順に、
前記電子シャッタによる1フレーム内の露光期間に対し、所定の点灯期間になるまで前記駆動パルスのパルス数を減少させて前記半導体光源の点灯期間を短縮する第1のパルス変調制御と、
前記第1のパルス変調領域における所定の点灯期間に対し、所定間隔で前記駆動パルスを間引くことで前記点灯期間内のパルス密度を減少させる第2のパルス変調制御と、
前記第2の制御範囲において最小パルス数とされた各駆動パルスに対し、パルス幅を減少させる第3のパルス変調制御と、
を行う内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、制御パラメータに、目標光量が高い順に、パルス数を減少させて点灯期間を短縮する第1のパルス変調領域、パルスを間引いてパルス密度を減少させる第2のパルス変調領域、パルス幅を減少させる第3のパルス変調領域が設定されることで、目標光量が高い場合には光源の点灯時間を短縮する制御が優先されて、撮像画像の画像ボケが抑制され、発熱が低減される。また、低い目標光量には所定の点灯期間内にパルスが複数存在するため、フリッカの発生を抑制できる。そして、異なる種類の制御を組み合わせることで、広いダイナミックレンジと、高い調光分解能を確保することができる。
【0059】
(2) (1)の内視鏡装置であって、
前記光源制御手段が、前記第3のパルス変調制御より更に前記目標光量が低い場合に、前記第3のパルス変調領域で最小パルス幅とされた各駆動パルスに対し、パルス振幅を減少させる第4のパルス変調制御を行う内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、パルス振幅を制御することで、最小光量に対する光量制御幅を拡大することができる。
【0060】
(3) (1)又は(2)の内視鏡装置であって、
任意の目標光量に対する前記半導体光源の駆動パルスを規定した制御パラメータ情報を記憶する記憶手段を備え、
前記光源制御手段が、前記制御パラメータを参照して、前記入力される目標光量に応じた駆動パルスを求め、該求めた駆動パルスで前記半導体光源をパルス点灯駆動する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、記憶手段に記憶された制御パラメータを参照することで、目標光量に応じた駆動パルスを迅速に設定することができ、応答性を高めることができる。
【0061】
(4) (1)〜(3)のいずれか1つの内視鏡装置であって、
前記半導体光源が、同じスペクトルの光を出射する複数の発光素子を有し、
前記光源制御手段が、前記複数の発光素子を個別にパルス点灯制御する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、複数の発光素子をそれぞれ個別に制御することで、光量調整幅を拡大することができる。
【0062】
(5) (1)〜(3)のいずれか1つの内視鏡装置であって、
前記半導体光源が、互いに異なるスペクトルの光を出射する複数の発光素子を有し、
前記光源制御手段が、前記複数の発光素子をそれぞれ個別にパルス点灯制御する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、異なるスペクトルの複数の発光素子を個別に制御することで、各スペクトルの光を所望に比率にして出射することができ、この場合にもダイナミックレンジを拡大して光量分解能を高めることができる。
【0063】
(6) (5)の内視鏡装置であって、
前記半導体光源が、白色光を生成するための白色光用光源と、所定の波長域からなる狭帯域光を生成する狭帯域光用光源と有し、
前記光源制御手段が、前記白色光用光源と前記狭帯域光用光源との出射光量比を変更する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、通常観察用の白色光用光源と、特殊光観察用の狭帯域光用光源との出射光量比を変更することで、通常観察画像と特殊光観察画像とを所望の割合で合成して、所望の内視鏡診断画像を得ることができる。
【0064】
(7) (6)の内視鏡装置であって、
前記狭帯域光用光源が、中心波長360〜530nmの狭帯域光を出射する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、中心波長360〜530nmの可視短波長域の狭帯域光を用いることで、生体組織表層の毛細血管や微細構造の強調画像を得ることができる。
【0065】
(8) (6)又は(7)の内視鏡装置であって、
前記白色光用光源が、レーザ光源と、該レーザ光源からの出射光により発光する蛍光体とを備え、前記レーザ光源からの出射光と前記蛍光体からの発光光を混合して所望のスペクトルの照明光を生成する内視鏡装置。
この内視鏡装置によれば、光源寿命の長いレーザ光源により高い光量制御性で、白色光等の所望のスペクトルの照明光を安定して得ることができる。
【符号の説明】
【0066】
11 内視鏡
13 光源装置
15 プロセッサ
21 挿入部
37 先端部
41 観察窓
43 光照射窓
45 撮像素子
51 撮像信号処理部
53 光ファイバ
55 半導体光源(レーザ光源)
57 波長変換部
59 光源駆動回路
61 制御部
63 メモリ
65 ヒストグラム作成部
67 測光値算出部
69 目標光量算出部
71a,71b,71c 光源駆動回路
100 内視鏡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡挿入部の先端から所望の光量の照明光を出射する内視鏡装置であって、
前記照明光を生成する半導体光源と、
電子シャッタにより露光期間を調整する撮像手段と、
入力される目標光量に応じて前記半導体光源をパルス点灯駆動する光源制御手段と、を備え、
前記光源制御手段が、前記目標光量の高い順に、
前記電子シャッタによる1フレーム内の露光期間に対し、所定の点灯期間になるまで前記駆動パルスのパルス数を減少させて前記半導体光源の点灯期間を短縮する第1のパルス変調制御と、
前記第1のパルス変調領域における所定の点灯期間に対し、所定間隔で前記駆動パルスを間引くことで前記点灯期間内のパルス密度を減少させる第2のパルス変調制御と、
前記第2の制御範囲において最小パルス数とされた各駆動パルスに対し、パルス幅を減少させる第3のパルス変調制御と、
を行う内視鏡装置。
【請求項2】
請求項1記載の内視鏡装置であって、
前記光源制御手段が、前記第3のパルス変調制御より更に前記目標光量が低い場合に、前記第3のパルス変調領域で最小パルス幅とされた各駆動パルスに対し、パルス振幅を減少させる第4のパルス変調制御を行う内視鏡装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の内視鏡装置であって、
任意の目標光量に対する前記半導体光源の駆動パルスを規定した制御パラメータ情報を記憶する記憶手段を備え、
前記光源制御手段が、前記制御パラメータを参照して、前記入力される目標光量に応じた駆動パルスを求め、該求めた駆動パルスで前記半導体光源をパルス点灯駆動する内視鏡装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の内視鏡装置であって、
前記半導体光源が、同じスペクトルの光を出射する複数の発光素子を有し、
前記光源制御手段が、前記複数の発光素子を個別にパルス点灯制御する内視鏡装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の内視鏡装置であって、
前記半導体光源が、互いに異なるスペクトルの光を出射する複数の発光素子を有し、
前記光源制御手段が、前記複数の発光素子をそれぞれ個別にパルス点灯制御する内視鏡装置。
【請求項6】
請求項5記載の内視鏡装置であって、
前記半導体光源が、白色光を生成するための白色光用光源と、所定の波長域からなる狭帯域光を生成する狭帯域光用光源と有し、
前記光源制御手段が、前記白色光用光源と前記狭帯域光用光源との出射光量比を変更する内視鏡装置。
【請求項7】
請求項6記載の内視鏡装置であって、
前記狭帯域光用光源が、中心波長360〜530nmの狭帯域光を出射する内視鏡装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の内視鏡装置であって、
前記白色光用光源が、レーザ光源と、該レーザ光源からの出射光により発光する蛍光体とを備え、前記レーザ光源からの出射光と前記蛍光体からの発光光を混合して所望のスペクトルの照明光を生成する内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−100834(P2012−100834A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251301(P2010−251301)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】