説明

内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法

【課題】本願発明は、上記問題点を解決するために、凍結・融解が繰り返し起きる環境や、常時、温水が充満している状態においても、ポリオレフィン管の剥離が起こりにくく、且つ、耐水密着性に優れた内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】内面及び外面に溶融亜鉛めっきを施した溶融亜鉛めっき鋼管の、内面のめっき層を鋼製ワイヤーブラシで研削し、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出させた後に、ポリオレフィン管を被覆する内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法において、前記ワイヤーブラシが、円柱状で、且つ鋼線を該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置したものであり、該ワイヤーブラシの該中心軸を軸として回転させながら前記溶融亜鉛めっき鋼管に挿入することにより該鋼管内面めっき層を研削することを特徴とする内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、内面と外面に亜鉛めっきを施した鋼管の内面にポリオレフィン管を被覆した内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
給水や排水に用いられる鋼管には、鋼管内面にポリオレフィン等の合成樹脂管を被覆して防食した内面樹脂被覆鋼管が用いられる。該内面樹脂被覆鋼管は長期に渡って供用されるので、鋼管の内面と合成樹脂管の間には十分な密着性が必要である。特に、気温や水温の変動が大きく、管路に凍結融解が起こるような場合には、内面被覆した合成樹脂管と鋼管の間の密着性が不十分であると、合成樹脂管の膨張又は収縮による引き剥がし力で合成樹脂管が鋼管から剥離し、剥離が大きく進展すると管路の閉塞に到ることがある。そのため、特に内面に亜鉛めっきを有する鋼管の内面にポリオレフィン等の合成樹脂管を被覆する際、亜鉛と合成樹脂の間に十分な密着性を得るために、予め鋼管内面の亜鉛表面を前処理する方法が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、研磨して白さびや不純物、油脂分の除去、清掃する方法が示されている。
【0004】
また、特許文献2では、亜鉛めっき鋼管の前処理として、当該鋼管の内面をワイヤーブラシで研掃して、純亜鉛層を除去して鉄含有6%以上の鉄―亜鉛合金層を露出させ、ポリオレフィン管を被覆すれば、凍結融解試験でポリオレフィン管が剥離し難くなることが公開されている。
【特許文献1】特開昭58−87045号公報
【特許文献2】PCT/JP2007/061256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明では、具体的な研磨方法やどの程度、研磨すれば、凍結融解試験などで内面の合成樹脂管が剥離し難くなるか等は一切公開されていない。また、引用文献2の発明では、具体的なワイヤーブラシの形状、寸法、研掃の適切な条件や研掃後の検査方法については一切公開されていない。
【0006】
本願発明は、上記問題点を解決するために、凍結・融解が繰り返し起きる環境や、常時、温水が充満している状態においても、ポリオレフィン管の剥離が起こりにくく、且つ、耐水密着性に優れた内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、鋼管母材である地鉄表面と亜鉛めっき層の間にFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を有する溶融亜鉛めっき鋼管の内面に、接着剤を介して、ポリオレフィンを被覆する内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造において、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出させてポリオリフィンの密着性を高めるため、当該溶融亜鉛めっき鋼管の内面のめっき層を鋼製ワイヤーブラシで研削する具体的な条件に関する知見を得た。本発明は、前記知見に基づいて成されたものであり、その要旨は、以下のとおりである。
【0008】
(1)内面及び外面に溶融亜鉛めっきを施した溶融亜鉛めっき鋼管の、内面のめっき層を鋼製ワイヤーブラシで研削し、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出させた後に、ポリオレフィン管を被覆する内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法において、前記鋼製ワイヤーブラシが、円柱状であり、且つ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置したものであり、当該鋼製ワイヤーブラシを前記中心軸を回転軸として回転させながら前記溶融亜鉛めっき鋼管に挿入することにより前記鋼管内面めっき層を研削することを特徴とする内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【0009】
(2)前記鋼線のビッカース硬さが500以上であることを特徴とする(1)に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【0010】
(3)前記鋼線の化学成分がC:0.6〜1.2質量%、Mn:0.2〜1.2質量%、Si:0.1〜1.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.04質量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする(1)または(2)に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【0011】
(4)前記鋼線の表面にブラスメッキを施したことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【0012】
(5)(1)〜(4)のいずれか一項に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法において、下記の式1〜式5の条件を満足することを特徴とする内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【数1】

F(1) : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線1本あたりの引っ掻き力
h(1) : 鋼製ワイヤーブラシがそのブラシ長さ(Lb)分を進む際、
該ワイヤーブラシの1本の鋼線が鋼管内面を研削する長さ(mm)
φ : 鋼線がN本の鋼製ワイヤーブラシで溶融亜鉛めっき鋼管内面を
m回通過した際、単位面積あたりの該ワイヤーブラシで
研削する総延長長さと鋼線の引っ掻き力の積
K : 比例係数
Dpi : 溶融亜鉛めっき鋼管の内径(mm)
Db : 鋼製ワイヤーブラシの外径(mm)
Lb : 鋼製ワイヤーブラシの長手方向の長さ(mm)
Dw : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線の外径(mm)
Lw : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線の長さ(mm)
N : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線の本数(本)
n : 鋼製ワイヤーブラシの回転数(rpm)
V : 鋼製ワイヤーブラシの送り速度(mm/分)
m : 鋼製ワイヤーブラシの通過回数(回)
S : 鋼製ワイヤーブラシがそのブラシ長さ(Lb)分を進む際、
該ワイヤーブラシが溶融亜鉛めっき鋼管内面を研削する面積(mm
【0013】
(6)前記研削した後、前記鋼管内表面をビッカース硬度が60〜100の金属針で引っ掻くことにより研削状態の良否を判定することを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一項に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【0014】
(7)前記金属針が銅製であることを特徴とする(6)に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶融亜鉛めっき鋼管の内面を鋼製ワイヤーブラシで研削して、純亜鉛層を除去し、Fe6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を確実に露出させることができるので、当該研削面とポリオレフィン管の密着性が安定して強化され、凍結融解が起こる管路でも内面ポリオレフィン管が剥離し難い内面ポリオレフィン被覆鋼管の工業生産が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明者らは、溶融亜鉛めっき鋼管の内面に、接着剤を介して、ポリオレフィン管を被覆する内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造において、当該溶融亜鉛めっき鋼管の内面のめっき層を鋼製ワイヤーブラシで研削し、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出させる具体的な条件を見出した。
【0017】
溶融亜鉛めっき鋼管の内面にFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出させるためには、溶融亜鉛めっき鋼管の内面の微視的な凹凸に追従し、均一かつ確実に研削しなければならない。そのためには、図1に示すように、円柱状の鋼製ワイヤーブラシで、かつ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置し、当該鋼製ワイヤーブラシを前記中心軸として回転させながら前記溶融亜鉛めっき鋼管に挿入することにより前記溶融亜鉛めっき鋼管の内面研削することにより達成できる。それは当該鋼製ワイヤーブラシの鋼線が溶融亜鉛めっき鋼管の内面の微視的な凹凸に追従し、均一かつ確実に研削するからである。
【0018】
前記鋼線のビッカース硬さは500以上であれば研削効率が良い。それは当該鋼線のビッカース硬さと亜鉛のそれと差が大きいと亜鉛の研削効率が良いからである。
【0019】
前記鋼線の化学成分はC:0.6〜1.2質量%、Mn:0.2〜1.2質量%、Si:0.1〜1.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.04質量%、残部がFeおよび不可避的不純物から成るものが良い。C、Si,Mnの下限値は、それ未満だと必要な高硬度を得られないし、上限値は、それを超えると靭性が低下するからである。また、P、Sの上限値は、それを超えると偏析により脆化などを引き起こすためである。要は鋼線には高硬度と耐破断性の両立が必要であり、その範囲で例えばその他の元素が微量含有されても本願発明を損なうものではない。
【0020】
前記鋼線の錆防止として当該鋼線にブラスメッキを施すのが良い。それは(溶融亜鉛めっき鋼管の内面に鉄錆持込を防止するためである。
【0021】
さらに、本発明者らは上記鋼製ワイヤーブラシを用いた際、以下の式1〜式5を満足する条件で溶融亜鉛めっき鋼管の内面を研削するとFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出させることができることを見出した。
【0022】
【数2】

【0023】
上記式中の記号の定義は以下の通りであり、また一部の記号を図1及び図2にもしめしている。
F(1) : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線1本あたりの引っ掻き力
h(1) : 鋼製ワイヤーブラシがそのブラシ長さ(Lb)分を進む際、
該ワイヤーブラシの1本の鋼線が鋼管内面を研削する長さ(mm)
φ : 鋼線がN本の鋼製ワイヤーブラシで溶融亜鉛めっき鋼管内面を
m回通過した際、単位面積あたりの該ワイヤーブラシで
研削する総延長長さと鋼線の引っ掻き力の積
K : 比例係数
Dpi : 溶融亜鉛めっき鋼管の内径(mm)
Db : 鋼製ワイヤーブラシの外径(mm)
Lb : 鋼製ワイヤーブラシの長手方向の長さ(mm)
Dw : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線の外径(mm)
Lw : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線の長さ(mm)
N : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線の本数(本)
n : 鋼製ワイヤーブラシの回転数(rpm)
V : 鋼製ワイヤーブラシの送り速度(mm/分)
m : 鋼製ワイヤーブラシの通過回数(回)
S : 鋼製ワイヤーブラシがそのブラシ長さ(Lb)分を進む際、
該ワイヤーブラシが溶融亜鉛めっき鋼管内面を研削する面積(mm
【0024】
鋼製ワイヤーブラシの鋼線1本が、溶融亜鉛めっき鋼管の内面を引っ掻く力F(1)は式1のように表せる。
【0025】
鋼製ワイヤーブラシがそのブラシ長さLbだけ進む際、該ワイヤーブラシの1本の鋼線が溶融亜鉛めっき鋼管内面を研削する長さh(1)は式2のように表せる。
【0026】
鋼製ワイヤーブラシがそのブラシ長さLbだけ進む際、該ワイヤーブラシが溶融亜鉛めっき鋼管内面を研削する面積Sは式3のように表せる。
【0027】
鋼線がN本の鋼製ワイヤーブラシで溶融亜鉛めっき鋼管内面をm回通過した際、単位面積あたりの当該鋼製ワイヤーブラシの鋼線が研削する総延長長さと鋼線の引っ掻き力の積φは式4のように表せる。
【0028】
実施例1から実施例7に示すように、式4のφの値が2.6以上85.4以下であれば、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が露出し、当該研削面とポリオレフィン管の安定した密着性が確保されることが確認された。言葉を変えると、2.6未満となる研削条件の場合、溶融亜鉛めっき鋼管の内面を鋼製ワイヤーブラシで研削しても、純亜鉛層が残り、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出が不十分になる。式4のφの値が85.4を超える研削条件の場合、鋼製ワイヤーブラシが亜鉛めっき鋼管の内面との摩擦発熱で高温になり、研削効率が著しく低下し、純亜鉛層が残り、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出が不十分になる。
【0029】
また、本発明者らは溶融亜鉛めっきの表層の純亜鉛層と鉄―亜鉛合金層ではビッカース硬さが異なることに着目し、鋼製ワイヤーブラシによる溶融亜鉛めっき鋼管の内面にFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出したことを判断する検査に利用した。
【0030】
すなわち、純亜鉛層のビッカース硬さは60未満、一方、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層のビッカース硬さは100を超えることから、その間のビッカース硬さ60〜100を有する金属針にて、鋼製ワイヤーブラシで研削した溶融亜鉛めっき鋼管の内面を引っ掻いて検査する。研削が不十分な場合、当該金属針よりもビッカース硬さが柔らかい純亜鉛層が残っているので、当該検査針で表面を引っ掻くと亜鉛めっき鋼管の内面の表面に溝ができる。一方、研削が十分な場合、当該金属針よりもビッカース硬さが硬いFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が露出しているので、当該金属針で表面を引っ掻くと該金属針の先端が削られて、削れた金属粉末がFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層の表面に付着する。
【0031】
ビッカース硬さが60から100の金属は、アルミ、銅、真鍮が知られている。アルミは亜鉛めっきと色調が同じ銀色のため、目視観察ではアルミと亜鉛の判断が困難であり検査用の金属針の材質として不適当である。銅、真鍮は亜鉛めっきと色調が異なり、検査用の金属針の材質としては適切である。しかし、真鍮は入手先により銅と亜鉛のブレンド比が異なることがありビッカース硬さにバラツキが出易いので、入手先によらず一定のビッカース硬さを持つ銅が最も適切な検査用の金属針の材質である。
【実施例】
【0032】
本発明の実施例について説明する。実施例の条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件に限定されるものではない。本発明は、本発明の主旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0033】
(実施例1)
鋼管(SGP100AX6000mm長さ)の内面及び外面を溶融亜鉛めっきして、亜鉛めっき鋼管を得た。この時、亜鉛めっきに含まれるアルミニウムの含有量を0.01質量%とした。
【0034】
この亜鉛めっき鋼管の内面を亜鉛めっき鋼管の内径よりも大きい外径を持ち、形状が円柱状であり、且つ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置した鋼製ワイヤーブラシを回転させながら、亜鉛めっき鋼管に挿入することで内面の亜鉛めっきを研削した。
実験に用いた鋼製ワイヤーブラシの鋼線のビッカース硬さは500であり、その鋼線の化学成分はC:0.81質量%、Mn:0.47質量%、Si:0.20質量%、P:0.05質量%、S:0.04質量%であった。
研削条件は表1に示すように鋼製ワイヤーブラシの送り速度を変化させ、1水準あたり溶融亜鉛めっき鋼管を10本づつ内面研削し、合計5水準実施した。
連続して内面研削した1本目と10本目の直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定して摩擦発熱の状況を調査した。
銅製の金属針を用いて内面研削した亜鉛めっき鋼管の内面を引っ掻いて、研削状態の良否を検査した。
【0035】
次に、この亜鉛めっき鋼管の内径よりも僅かに小さく、外面に厚さ100μmの無水マレイン酸変性ポリエチレンを積層した高密度ポリエチレン管を用意した。高密度ポリエチレンの厚みは2.0mm、融点は125℃である。
高密度ポリエチレン管を内面研削した亜鉛めっき鋼管の内部に挿入し、その両端に蓋をし、高密度ポリエチレン管の内部に空気を圧入して封印し、次いで、加熱炉160℃に加熱し、高密度ポリエチレン管を溶融し、亜鉛めっき鋼管の内面に圧着させた。
その後、亜鉛めっき管を加熱炉から取り出して冷却し、温度が70℃になった時点で、封入空気を抜いて、内面に高密度ポリエチレン管を被覆した亜鉛めっき鋼管(本発明鋼管a)を得た。
【0036】
本発明鋼管aを切断した後、断面を研磨して光学顕微鏡で観察し、凍結融解試験および温水浸漬試験を行った。
光学顕微鏡による観察では、試験片として20mm幅の円周方向断面を採取し、樹脂で埋め込みして固定してから断面を研磨後、3%硝酸―エタノール溶液で亜鉛めっき層をエッチングし、亜鉛めっき層の光学顕微鏡で観察して、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出しているか調査した。
凍結融解試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に、長さの約1/3が水に漬かる状態にして立て、容器ごとー10℃の低温槽に入れて23時間凍結させ、次に、60℃の高温槽に1時間入れて解氷する凍結融解作業を1サイクルとして、100サイクル繰り返した。
温水浸漬試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に浸漬し、容器ごと、40℃の恒温槽に入れて、3ケ月間放置した。
凍結融解試験と温水浸漬試験の後、試験片について、高密度ポリエチレン管の剥離の有無を調査した。
【0037】
表1から式4のφの値が前記式5の範囲内に入る場合だけ、銅製の金属針による検査で、研削した亜鉛めっき鋼管の表面に銅付着が認められ、亜鉛めっき層の断面の顕微鏡による観察でFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出していることが確認された。更には、凍結融解試験、温水浸漬試験の結果もポリエチレン管の剥離の無いことが判った。
鋼製ワイヤーブラシの摩擦発熱は全5水準とも、連続研削1本目と10本目の研削直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定した結果はともに150℃未満であり、研削効率は良好であった。
【0038】
(実施例2)
鋼管(SGP100AX6000mm長さ)の内面及び外面を溶融亜鉛めっきして、亜鉛めっき鋼管を得た。この時、亜鉛めっきに含まれるアルミニウムの含有量を0.01質量%とした。
【0039】
この亜鉛めっき鋼管の内面を亜鉛めっき鋼管の内径よりも大きい外径を持ち、形状が円柱状であり、且つ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置した鋼製ワイヤーブラシを回転させながら、亜鉛めっき鋼管に挿入することで内面の亜鉛めっきを研削した。
実験に用いた鋼製ワイヤーブラシの鋼線のビッカース硬さは500であり、その鋼線の化学成分はC:0.81質量%、Mn:0.47質量%、Si:0.20質量%、P:0.05質量%、S:0.04質量%であった。
研削条件は表2に示すように鋼製ワイヤーブラシの通過回数を変化させ、1水準あたり溶融亜鉛めっき鋼管を10本づつ内面研削し、合計5水準実施した。
連続して内面研削した1本目と10本目の直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定して摩擦発熱の状況を調査した。
銅製の金属針を用いて内面研削した亜鉛めっき鋼管の内面を引っ掻いて、研削状態の良否を検査した。
【0040】
次に、この亜鉛めっき鋼管の内径よりも僅かに小さく、外面に厚さ100μmの無水マレイン酸変性ポリエチレンを積層した高密度ポリエチレン管を用意した。高密度ポリエチレンの厚みは2.0mm、融点は125℃である。
高密度ポリエチレン管を内面研削した亜鉛めっき鋼管の内部に挿入し、その両端に蓋をし、高密度ポリエチレン管の内部に空気を圧入して封印し、次いで、加熱炉160℃に加熱し、高密度ポリエチレン管を溶融し、亜鉛めっき鋼管の内面に圧着させた。
その後、亜鉛めっき管を加熱炉から取り出して冷却し、温度が70℃になった時点で、封入空気を抜いて、内面に高密度ポリエチレン管を被覆した亜鉛めっき鋼管(本発明鋼管b)を得た。
【0041】
本発明鋼管bを切断した後、断面を研磨して光学顕微鏡で観察し、凍結融解試験および温水浸漬試験を行った。
光学顕微鏡による観察では、試験片として20mm幅の円周方向断面を採取し、樹脂で埋め込みして固定してから断面を研磨後、3%硝酸―エタノール溶液で亜鉛めっき層をエッチングし、亜鉛めっき層の光学顕微鏡で観察して、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出しているか調査した。
凍結融解試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に、長さの約1/3が水に漬かる状態にして立て、容器ごとー10℃の低温槽に入れて23時間凍結させ、次に、60℃の高温槽に1時間入れて解氷する凍結融解作業を1サイクルとして、100サイクル繰り返した。
温水浸漬試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に浸漬し、容器ごと、40℃の恒温槽に入れて、3ケ月間放置した。
凍結融解試験と温水浸漬試験の後、試験片について、高密度ポリエチレン管の剥離の有無を調査した。
【0042】
表2から式4のφの値が2.4を超える場合だけ、銅製の金属針による検査結果は、研削した亜鉛めっき鋼管の表面に銅付着が認られ、亜鉛めっき層の断面の顕微鏡による観察結果は、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出していた。更には、凍結融解試験、温水浸漬試験の結果もポリエチレン管の剥離無いことが判った。
鋼製ワイヤーブラシの摩擦発熱は全5水準とも、連続研削1本目と10本目の研削直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定した結果はともに150℃未満であり、研削効率は良好であった。
【0043】
式4のφの値が前記式5の範囲内に入るように鋼製ワイヤーブラシの通過回数を設定することが好ましいことが判った。
【0044】
(実施例3)
鋼管(SGP100AX6000mm長さ)の内面及び外面を溶融亜鉛めっきして、亜鉛めっき鋼管を得た。この時、亜鉛めっきに含まれるアルミニウムの含有量を0.01質量%とした。
【0045】
この亜鉛めっき鋼管の内面を亜鉛めっき鋼管の内径よりも大きい外径を持ち、形状が円柱状であり、且つ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置した鋼製ワイヤーブラシを回転させながら、亜鉛めっき鋼管に挿入することで内面の亜鉛めっきを研削した。
実験に用いた鋼製ワイヤーブラシの鋼線のビッカース硬さは500であり、その鋼線の化学成分はC:0.81質量%、Mn:0.47質量%、Si:0.20質量%、P:0.05質量%、S:0.04質量%であった。
研削条件は表3に示すように鋼製ワイヤーブラシの回転数を変化させ、1水準あたり溶融亜鉛めっき鋼管を10本づつ内面研削し、合計5水準実施した。
連続して内面研削した1本目と10本目の直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定して摩擦発熱の状況を調査した。
銅製の金属針を用いて内面研削した亜鉛めっき鋼管の内面を引っ掻いて、研削状態の良否を検査した。
【0046】
次に、この亜鉛めっき鋼管の内径よりも僅かに小さく、外面に厚さ100μmの無水マレイン酸変性ポリエチレンを積層した高密度ポリエチレン管を用意した。高密度ポリエチレンの厚みは2.0mm、融点は125℃である。
高密度ポリエチレン管を内面研削した亜鉛めっき鋼管の内部に挿入し、その両端に蓋をし、高密度ポリエチレン管の内部に空気を圧入して封印し、次いで、加熱炉160℃に加熱し、高密度ポリエチレン管を溶融し、亜鉛めっき鋼管の内面に圧着させた。
その後、亜鉛めっき管を加熱炉から取り出して冷却し、温度が70℃になった時点で、封入空気を抜いて、内面に高密度ポリエチレン管を被覆した亜鉛めっき鋼管(本発明鋼管c)を得た。
【0047】
本発明鋼管cを切断した後、断面を研磨して光学顕微鏡で観察し、凍結融解試験および温水浸漬試験を行った。
光学顕微鏡による観察では、試験片として20mm幅の円周方向断面を採取し、樹脂で埋め込みして固定してから断面を研磨後、3%硝酸―エタノール溶液で亜鉛めっき層をエッチングし、亜鉛めっき層の光学顕微鏡で観察して、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出しているか調査した。
凍結融解試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に、長さの約1/3が水に漬かる状態にして立て、容器ごとー10℃の低温槽に入れて23時間凍結させ、次に、60℃の高温槽に1時間入れて解氷する凍結融解作業を1サイクルとして、100サイクル繰り返した。
温水浸漬試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に浸漬し、容器ごと、40℃の恒温槽に入れて、3ケ月間放置した。
凍結融解試験と温水浸漬試験の後、試験片について、高密度ポリエチレン管の剥離の有無を調査した。
【0048】
表3から式4のφの値が前記式5の範囲内に入る場合だけ、銅製の金属針による検査で研削した亜鉛めっき鋼管の表面に銅付着が認められ、亜鉛めっき層の断面の顕微鏡による観察でFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出していることが確認された。更には、凍結融解試験、温水浸漬試験の結果もポリエチレン管の剥離無いことが判った。
鋼製ワイヤーブラシの摩擦発熱は全5水準とも、連続研削1本目と10本目の研削直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定した結果はともに150℃未満であり、研削効率は良好であった。
【0049】
(実施例4)
鋼管(SGP100AX6000mm長さ)の内面及び外面を溶融亜鉛めっきして、亜鉛めっき鋼管を得た。この時、亜鉛めっきに含まれるアルミニウムの含有量を0.01質量%とした。
【0050】
この亜鉛めっき鋼管の内面を亜鉛めっき鋼管の内径よりも大きい外径を持ち、形状が円柱状であり、且つ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置した鋼製ワイヤーブラシを回転させながら、亜鉛めっき鋼管に挿入することで内面の亜鉛めっきを研削した。
実験に用いた鋼製ワイヤーブラシの鋼線のビッカース硬さは500であり、その鋼線の化学成分はC:0.81質量%、Mn:0.47質量%、Si:0.20質量%、P:0.05質量%、S:0.04質量%であった。
研削条件は表4に示すように鋼製ワイヤーブラシの鋼線の長さを変化させ、1水準あたり溶融亜鉛めっき鋼管を10本づつ内面研削し、合計5水準実施した。
連続して内面研削した1本目と10本目の直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定して摩擦発熱の状況を調査した。
銅製の金属針を用いて内面研削した亜鉛めっき鋼管の内面を引っ掻いて、研削状態の良否を検査した。
【0051】
次に、この亜鉛めっき鋼管の内径よりも僅かに小さく、外面に厚さ100μmの無水マレイン酸変性ポリエチレンを積層した高密度ポリエチレン管を用意した。高密度ポリエチレンの厚みは2.0mm、融点は125℃である。
高密度ポリエチレン管を内面研削した亜鉛めっき鋼管の内部に挿入し、その両端に蓋をし、高密度ポリエチレン管の内部に空気を圧入して封印し、次いで、加熱炉160℃に加熱し、高密度ポリエチレン管を溶融し、亜鉛めっき鋼管の内面に圧着させた。
その後、亜鉛めっき管を加熱炉から取り出して冷却し、温度が70℃になった時点で、封入空気を抜いて、内面に高密度ポリエチレン管を被覆した亜鉛めっき鋼管(本発明鋼管d)を得た。
【0052】
本発明鋼管dを切断した後、断面を研磨して光学顕微鏡で観察し、凍結融解試験および温水浸漬試験を行った。
光学顕微鏡による観察では、試験片として20mm幅の円周方向断面を採取し、樹脂で埋め込みして固定してから断面を研磨後、3%硝酸―エタノール溶液で亜鉛めっき層をエッチングし、亜鉛めっき層の光学顕微鏡で観察して、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出しているか調査した。
凍結融解試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に、長さの約1/3が水に漬かる状態にして立て、容器ごとー10℃の低温槽に入れて23時間凍結させ、次に、60℃の高温槽に1時間入れて解氷する凍結融解作業を1サイクルとして、100サイクル繰り返した。
温水浸漬試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に浸漬し、容器ごと、40℃の恒温槽に入れて、3ケ月間放置した。
凍結融解試験と温水浸漬試験の後、試験片について、高密度ポリエチレン管の剥離の有無を調査した。
【0053】
表4から式4のφの値が前記式5の範囲内に入る場合だけ、銅製の金属針による検査で研削した亜鉛めっき鋼管の表面に銅付着が認められ、亜鉛めっき層の断面の顕微鏡による観察でFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出していることが確認された。更には、凍結融解試験、温水浸漬試験の結果もポリエチレン管の剥離無いことが判った。
鋼製ワイヤーブラシの摩擦発熱は全5水準とも連続研削1本目と10本目の研削直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定した結果はともに150℃未満であり、研削効率は良好であった。
【0054】
(実施例5)
鋼管(SGP100AX6000mm長さ)の内面及び外面を溶融亜鉛めっきして、亜鉛めっき鋼管を得た。この時、亜鉛めっきに含まれるアルミニウムの含有量を0.01質量%とした。
【0055】
この亜鉛めっき鋼管の内面を亜鉛めっき鋼管の内径よりも大きい外径を持ち、形状が円柱状であり、且つ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置した鋼製ワイヤーブラシを回転させながら、亜鉛めっき鋼管に挿入することで内面の亜鉛めっきを研削した。
実験に用いた鋼製ワイヤーブラシの鋼線のビッカース硬さは500であり、その鋼線の化学成分はC:0.81質量%、Mn:0.47質量%、Si:0.20質量%、P:0.05質量%、S:0.04質量%であった。
研削条件は表5に示すように鋼製ワイヤーブラシの鋼線の外径を変化させ、1水準あたり溶融亜鉛めっき鋼管を10本づつ内面研削し、合計5水準実施した。
連続して内面研削した1本目と10本目の直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定して摩擦発熱の状況を調査した。
銅製の金属針を用いて内面研削した亜鉛めっき鋼管の内面を引っ掻いて、研削状態の良否を検査した。
【0056】
次に、この亜鉛めっき鋼管の内径よりも僅かに小さく、外面に厚さ100μmの無水マレイン酸変性ポリエチレンを積層した高密度ポリエチレン管を用意した。高密度ポリエチレンの厚みは2.0mm、融点は125℃である。
高密度ポリエチレン管を内面研削した亜鉛めっき鋼管の内部に挿入し、その両端に蓋をし、高密度ポリエチレン管の内部に空気を圧入して封印し、次いで、加熱炉160℃に加熱し、高密度ポリエチレン管を溶融し、亜鉛めっき鋼管の内面に圧着させた。
その後、亜鉛めっき管を加熱炉から取り出して冷却し、温度が70℃になった時点で、封入空気を抜いて、内面に高密度ポリエチレン管を被覆した亜鉛めっき鋼管(本発明鋼管e)を得た。
本発明鋼管eを切断した後、断面を研磨して光学顕微鏡で観察し、凍結融解試験および温水浸漬試験を行った。
光学顕微鏡による観察では、試験片として20mm幅の円周方向断面を採取し、樹脂で埋め込みして固定してから断面を研磨後、3%硝酸―エタノール溶液で亜鉛めっき層をエッチングし、亜鉛めっき層の光学顕微鏡で観察して、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出しているか調査した。
凍結融解試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に、長さの約1/3が水に漬かる状態にして立て、容器ごとー10℃の低温槽に入れて23時間凍結させ、次に、60℃の高温槽に1時間入れて解氷する凍結融解作業を1サイクルとして、100サイクル繰り返した。
温水浸漬試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に浸漬し、容器ごと、40℃の恒温槽に入れて、3ケ月間放置した。
凍結融解試験と温水浸漬試験の後、試験片について、高密度ポリエチレン管の剥離の有無を調査した。
【0057】
表5から式4のφの値が前記式5の範囲内に入る場合だけ、銅製の金属針による検査で研削した亜鉛めっき鋼管の表面に銅付着が認められ、亜鉛めっき層の断面の顕微鏡による観察でFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出していることが確認された。更には、凍結融解試験、温水浸漬試験の結果もポリエチレン管の剥離無いことが判った。
鋼製ワイヤーブラシの摩擦発熱は全5水準とも、連続研削1本目と10本目の研削直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定した結果はともに150℃未満であり、研削効率は良好であった。
【0058】
(実施例6)
鋼管(SGP100AX6000mm長さ)の内面及び外面を溶融亜鉛めっきして、亜鉛めっき鋼管を得た。この時、亜鉛めっきに含まれるアルミニウムの含有量を0.01質量%とした。
【0059】
この亜鉛めっき鋼管の内面を亜鉛めっき鋼管の内径よりも大きい外径を持ち、形状が円柱状であり、且つ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置した鋼製ワイヤーブラシを回転させながら、亜鉛めっき鋼管に挿入することで内面の亜鉛めっきを研削した。
実験に用いた鋼製ワイヤーブラシの鋼線のビッカース硬さは500であり、その鋼線の化学成分はC:0.81質量%、Mn:0.47質量%、Si:0.20質量%、P:0.05質量%、S:0.04質量%であった。
研削条件は表6に示すように鋼製ワイヤーブラシの外径を変化させ、1水準あたり溶融亜鉛めっき鋼管を10本づつ内面研削し、合計5水準実施した。
連続して内面研削した1本目と10本目の直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定して摩擦発熱の状況を調査した。
銅製の金属針を用いて内面研削した亜鉛めっき鋼管の内面を引っ掻いて、研削状態の良否を検査した。
【0060】
次に、この亜鉛めっき鋼管の内径よりも僅かに小さく、外面に厚さ100μmの無水マレイン酸変性ポリエチレンを積層した高密度ポリエチレン管を用意した。高密度ポリエチレンの厚みは2.0mm、融点は125℃である。
高密度ポリエチレン管を内面研削した亜鉛めっき鋼管の内部に挿入し、その両端に蓋をし、高密度ポリエチレン管の内部に空気を圧入して封印し、次いで、加熱炉160℃に加熱し、高密度ポリエチレン管を溶融し、亜鉛めっき鋼管の内面に圧着させた。
その後、亜鉛めっき管を加熱炉から取り出して冷却し、温度が70℃になった時点で、封入空気を抜いて、内面に高密度ポリエチレン管を被覆した亜鉛めっき鋼管(本発明鋼管f)を得た。
本発明鋼管fを切断した後、断面を研磨して光学顕微鏡で観察し、凍結融解試験および温水浸漬試験を行った。
光学顕微鏡による観察では、試験片として20mm幅の円周方向断面を採取し、樹脂で埋め込みして固定してから断面を研磨後、3%硝酸―エタノール溶液で亜鉛めっき層をエッチングし、亜鉛めっき層の光学顕微鏡で観察して、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出しているか調査した。
凍結融解試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に、長さの約1/3が水に漬かる状態にして立て、容器ごとー10℃の低温槽に入れて23時間凍結させ、次に、60℃の高温槽に1時間入れて解氷する凍結融解作業を1サイクルとして、100サイクル繰り返した。
温水浸漬試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に浸漬し、容器ごと、40℃の恒温槽に入れて、3ケ月間放置した。
凍結融解試験と温水浸漬試験の後、試験片について、高密度ポリエチレン管の剥離の有無を調査した。
【0061】
表6から式4のφの値が前記式5の範囲内に入る場合だけ、銅製の金属針による検査で研削した亜鉛めっき鋼管の表面に銅付着が認められ、亜鉛めっき層の断面の顕微鏡による観察でFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出していることが確認された。更には、凍結融解試験、温水浸漬試験の結果もポリエチレン管の剥離無いことが判った。
鋼製ワイヤーブラシの摩擦発熱は全5水準とも、連続研削1本目と10本目の研削直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定した結果はともに150℃未満であり、研削効率は良好であった。
【0062】
(実施例7)
鋼管(SGP100AX6000mm長さ)の内面及び外面を溶融亜鉛めっきして、亜鉛めっき鋼管を得た。この時、亜鉛めっきに含まれるアルミニウムの含有量を0.01質量%とした。
【0063】
この亜鉛めっき鋼管の内面を亜鉛めっき鋼管の内径よりも大きい外径を持ち、形状が円柱状であり、且つ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置した鋼製ワイヤーブラシを回転させながら、亜鉛めっき鋼管に挿入することで内面の亜鉛めっきを研削した。
実験に用いた鋼製ワイヤーブラシの鋼線のビッカース硬さは500であり、その鋼線の化学成分はC:0.81質量%、Mn:0.47質量%、Si:0.20質量%、P:0.05質量%、S:0.04質量%であった。
研削条件は表7に示すように鋼製ワイヤーブラシの送り速度を変化させ、1水準あたり溶融亜鉛めっき鋼管を10本づつ内面研削し、合計5水準実施した。
連続して内面研削した1本目と10本目の直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定して摩擦発熱の状況を調査した。
銅製の金属針を用いて内面研削した亜鉛めっき鋼管の内面を引っ掻いて、研削状態の良否を検査した。
【0064】
次に、この亜鉛めっき鋼管の内径よりも僅かに小さく、外面に厚さ100μmの無水マレイン酸変性ポリエチレンを積層した高密度ポリエチレン管を用意した。高密度ポリエチレンの厚みは2.0mm、融点は125℃である。
高密度ポリエチレン管を内面研削した亜鉛めっき鋼管の内部に挿入し、その両端に蓋をし、高密度ポリエチレン管の内部に空気を圧入して封印し、次いで、加熱炉160℃に加熱し、高密度ポリエチレン管を溶融し、亜鉛めっき鋼管の内面に圧着させた。
その後、亜鉛めっき管を加熱炉から取り出して冷却し、温度が70℃になった時点で、封入空気を抜いて、内面に高密度ポリエチレン管を被覆した亜鉛めっき鋼管(本発明鋼管g)を得た。
本発明鋼管gを切断した後、断面を研磨して光学顕微鏡で観察し、凍結融解試験および温水浸漬試験を行った。
光学顕微鏡による観察では、試験片として20mm幅の円周方向断面を採取し、樹脂で埋め込みして固定してから断面を研磨後、3%硝酸―エタノール溶液で亜鉛めっき層をエッチングし、亜鉛めっき層の光学顕微鏡で観察して、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出しているか調査した。
凍結融解試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に、長さの約1/3が水に漬かる状態にして立て、容器ごとー10℃の低温槽に入れて23時間凍結させ、次に、60℃の高温槽に1時間入れて解氷する凍結融解作業を1サイクルとして、100サイクル繰り返した。
温水浸漬試験は、150mmの長さに切断して得た試験片を、水道水を入れた容器の中に浸漬し、容器ごと、40℃の恒温槽に入れて、3ケ月間放置した。
凍結融解試験と温水浸漬試験の後、試験片について、高密度ポリエチレン管の剥離の有無を調査した。
【0065】
表7から式4のφの値が前記式5の範囲内に入る場合だけ、銅製の金属針による検査で研削した亜鉛めっき鋼管の表面に銅付着が認められ、亜鉛めっき層の断面の顕微鏡による観察でFeを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層が最表層に露出していることが確認された。更には、凍結融解試験、温水浸漬試験の結果もポリエチレン管の剥離無いことが判った。
【0066】
鋼製ワイヤーブラシの摩擦発熱は全5水準とも、連続研削1本目と10本目の研削直後に鋼製ワイヤーブラシ軸の表面温度を測定した結果はともに150℃未満であり、研削効率は良好であった。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】は、融亜鉛めっき鋼管の断面図と鋼製ワイヤーブラシの断面図及び側面図である。
【図2】は、鋼製ワイヤーブラシがそのブラシ長さLb分を進む際、1本の鋼線が溶融亜鉛めっき鋼管内面を研削する長さh(1)とブラシ長さLbの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1 溶融亜鉛めっき鋼管
2 鋼製ワイヤーブラシ
2’ 鋼製ワイヤーブラシ(そのブラシ長さ(Lb)分を進んだ際の該ワイヤーブラシの模式的位置を示す)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面及び外面に溶融亜鉛めっきを施した溶融亜鉛めっき鋼管の、内面のめっき層を鋼製ワイヤーブラシで研削し、Feを6質量%以上含有する鉄―亜鉛合金層を露出させた後に、ポリオレフィン管を被覆する内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法において、前記鋼製ワイヤーブラシが、円柱状であり、且つ、鋼線を当該円柱の中心軸から半径方向に放射状に配置したものであり、当該鋼製ワイヤーブラシを前記中心軸を回転軸として回転させながら前記溶融亜鉛めっき鋼管に挿入することにより前記鋼管内面めっき層を研削することを特徴とする内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【請求項2】
前記鋼線のビッカース硬さが500以上であることを特徴とする請求項1記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【請求項3】
前記鋼線の化学成分がC:0.6〜1.2質量%、Mn:0.2〜1.2質量%、Si:0.1〜1.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.04質量%以下、残部がFeおよび不可避的不純物であることを特徴とする請求項1または2に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【請求項4】
前記鋼線の表面にブラスメッキを施したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法において、下記の式1〜式5の条件を満足することを特徴とする内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【数1】

F(1) : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線1本あたりの引っ掻き力
h(1) : 鋼製ワイヤーブラシがそのブラシ長さ(Lb)分を進む際、
該ワイヤーブラシの1本の鋼線が鋼管内面を研削する長さ(mm)
φ : 鋼線がN本の鋼製ワイヤーブラシで溶融亜鉛めっき鋼管内面を
m回通過した際、単位面積あたりの該ワイヤーブラシで
研削する総延長長さと鋼線の引っ掻き力の積
K : 比例係数
Dpi : 溶融亜鉛めっき鋼管の内径(mm)
Db : 鋼製ワイヤーブラシの外径(mm)
Lb : 鋼製ワイヤーブラシの長手方向の長さ(mm)
Dw : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線の外径(mm)
Lw : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線の長さ(mm)
N : 鋼製ワイヤーブラシの鋼線の本数(本)
n : 鋼製ワイヤーブラシの回転数(rpm)
V : 鋼製ワイヤーブラシの送り速度(mm/分)
m : 鋼製ワイヤーブラシの通過回数(回)
S : 鋼製ワイヤーブラシがそのブラシ長さ(Lb)分を進む際、
該ワイヤーブラシが溶融亜鉛めっき鋼管内面を研削する面積(mm
【請求項6】
前記研削した後、前記鋼管内表面をビッカース硬度が60〜100の金属針で引っ掻くことにより研削状態の良否を判定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。
【請求項7】
前記金属針が銅製であることを特徴とする請求項6に記載の内面ポリオレフィン被覆鋼管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−23142(P2010−23142A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184988(P2008−184988)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】