円偏光発光性ナノ微粒子
【課題】円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子を提供する。
【解決手段】籠状タンパク質であるフェリチンのコア内で調整したCdSが高い円偏光発光(CPL)を示す。また、この円偏光発光(CPL)の波長は、レーザ照射により調整することができ、これによりバイオナノテクノロジー分野における化合物半導体のナノ微粒子の利用として、WORM(Write-Once Read-Many times)メモリの創成など利用可能となる。なお、籠状タンパク質は、空洞が形成されたタンパク質であり、アポフェリチンなどのフェリチンタンパク質ファミリーやその組み換え体を用いることができる。
【解決手段】籠状タンパク質であるフェリチンのコア内で調整したCdSが高い円偏光発光(CPL)を示す。また、この円偏光発光(CPL)の波長は、レーザ照射により調整することができ、これによりバイオナノテクノロジー分野における化合物半導体のナノ微粒子の利用として、WORM(Write-Once Read-Many times)メモリの創成など利用可能となる。なお、籠状タンパク質は、空洞が形成されたタンパク質であり、アポフェリチンなどのフェリチンタンパク質ファミリーやその組み換え体を用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光発光性を示す微粒子に関するもので、特に、フェリチン(アポフェリチン)内に内包された化合物半導体ナノ微粒子から成る円偏光発光性ナノ微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオテクノロジー分野の発展はめざましく他の領域への応用も模索されており、半導体微細加工技術への応用(バイオナノテクノロジー)も研究が進められている。バイオテクノロジーでは「DNA」という設計図をもとに分子レベルでの生成物(アミノ酸残基)の制御が可能であり、そのさまざまなアミノ酸残基からなる全てのタンパク質は、自己集合能によってサイズ分散のない「ナノブロック」を形成することができる。このようにバイオテクノロジーを用いれば、ナノスケールでの生成物の形成を制御することができ、当該生成物として半導体の構成要素を作り込めば、バイオテクノロジーの半導体微細加工技術への応用が見えてくる。
【0003】
ここに、バイオテクノロジーを半導体微細加工に応用した技術として、フェリチンという生体内に存在する籠状タンパク質を用いて量子ドットを形成する技術が開示されている(特許文献1、特許文献2を参照)。
フェリチンは、図1に示すように、単量体24個のタンパク質で構成された直径12nmの球状のタンパク質外殻部分2Aと、当該外殻部分の中心部分であって生体内のFeイオンを吸収して酸化物の形で保持せしめた直径6nm程度のコア部分1Aとを有する構造を持っている。タンパク質の外殻部分とコア部分を持つため籠状タンパク質と呼ばれている。フェリチンは吸収したFeイオンを酸化させる活性部位を持ち、Feイオンは5Fe2O3・9H2Oの酸化物となって蓄えられる。
【0004】
また、かかるフェリチンから金属酸化物のコアが抜けたものは、アポフェリチンと呼ばれており、アポフェリチンは上記したFeの他、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)など種々の金属からなる微粒子をコアに蓄えることもできる。図2に、アポフェリチン中に作製された種々の金属ナノ微粒子のTEMイメージを示す。
【0005】
上記のようにフェリチンはコア部分に金属酸化物を持つとともに、外殻は単量体のタンパク質が24個組み合わさった構造をしている。このフェリチンは自己集合能を持つために均一な膜として形成しやすく、かつ、外殻のタンパク質はUVオゾン熱処理などで分解・除去しやすいという特徴を有する。
ここに、フェリチンの自己集合能を活かしてフェリチンの半導体基板上での吸着位置を制御し、フェリチンの外殻タンパク質を選択的に除去すれば、図2に示したように、コアである金属酸化物を二次元マトリックス状に配列させた構造物を製作することができるのである。
【0006】
また、フェリチンはコア部分に、2種類以上の元素からなる化合物半導体のナノ微粒子を作製できることも知られている(特許文献3を参照)。
化合物半導体のナノ微粒子は、量子閉じ込め効果によりバルク状態とは大きく異なる物性を発現する。中でも、高い輝度、高い耐光性、広い励起スペクトル、狭い蛍光スペクトルといった理想的な蛍光特性を備えていることから、次世代のオプトエレクトロニクス材料として注目を集めている。一方、親水性被覆分子を用いた水溶性の化合物半導体のナノ微粒子が開発されて以来、バイオイメージングやイムノアッセイなど、化合物半導体のナノ微粒子のバイオテクノロジーへの応用も盛んに研究されている。
特許文献3に開示された技術により、半導体からなる微粒子の量子サイズ効果を利用したり、励起された場合に蛍光を発する化合物半導体の微粒子の場合は生体物質の標識方法などへの利用が可能となっている。図3に、アポフェリチン中に作製された種々の化合物半導体のナノ微粒子のTEMイメージを示す。
【0007】
上述したように、化合物半導体のナノ微粒子は次世代のオプトエレクトロニクス材料として注目を集めている。しかし、現在のところ、バイオテクノロジー分野における化合物半導体のナノ微粒子の利用は、発光性有機分子の代替にとどまっているのが現状である。
これまで発明人らは、高輝度な円偏光性発光分子の創成を目指し、光学活性かつ発光性のらせん高分子、芳香族低分子、化合物半導体ナノ粒子を創成し、その円偏光発光(CPL:Circularly Polarized Luminescence)特性について検討してきた。
円偏光発光(CPL)とは、光学活性分子から発せられる右円偏光と左円偏光の発光強度の差分を指すものである(図4参照)。かかる円偏光発光(CPL)は、従来から励起状態における有機分子の立体構造の評価に利用されてきたが、近年では高輝度液晶ディスプレイ用の偏光光源をはじめとして、3次元ディスプレイ、記憶材料、光通信など高度な光情報プロセッシングへの利用が期待されている。
【0008】
この円偏光発光(CPL)を示す物質としては、生物発光、発光性希土類や光学活性共役高分子などが知られている。また化合物半導体では、GaAsなどが円偏光レーザーで励起すると円偏光発光を示す報告がある。しかしながら、化合物半導体ナノ微粒子ではこれまで達成されたという報告はない(例えば、非特許文献1を参照)。化合物半導体が円偏光発光(CPL)を示すか否かの試みとして、光学活性チオール化合物によって合成された円二色性(CD)活性なCdSに関して示されているが、この報告の中では、化合物半導体ナノ微粒子はCPL不活性であると報告されている(非特許文献2を参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平11−45990号公報
【特許文献2】特開2003−086715号公報
【特許文献3】国際公開WO2007/032241号公報
【非特許文献1】J. Am. Chem.Soc., 128, 9030 (2006).
【非特許文献2】Chem.Commun.,M.P.Moloney,et al.,2007,page 3900
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、化合物半導体のナノ微粒子は次世代のオプトエレクトロニクス材料として注目を集めている。しかし、現在のところ、バイオテクノロジー分野における化合物半導体のナノ微粒子の利用は、発光性有機分子の代替にとどまっているのが現状である。また従来技術では、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子を作製することができていない。
本発明は、上記に鑑み、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究の結果、タンパク質内で化合物半導体を合成することで、円偏光発光を示す化合物半導体微粒子の合成が可能であることの知見を得て、本発明を完成したものである。
具体的には、籠状タンパク質であるフェリチンのコア内で調整したCdSが高い円偏光発光(CPL)を示すという知見を得た。これは、化合物半導体のナノ微粒子からの円偏光発光(CPL)の初の例である。また、後述するように、この円偏光発光(CPL)の波長は、レーザ照射により調整することができ、これによりバイオテクノロジー分野における化合物半導体のナノ微粒子の利用として、WORM(Write-Once Read-Many times)メモリの創成など利用可能となる。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点からは、籠状タンパク質内に内包された化合物半導体ナノ微粒子から成る円偏光発光性ナノ微粒子が提供される。
籠状タンパク質は、空洞が形成されたタンパク質であり、アポフェリチンなどのフェリチンタンパク質ファミリーやその組み換え体を用いることができる。
ここで、好適には上記のタンパク質ナノ微粒子は、アポフェリチンを選択する。アポフェリチンは、自己整合能をもつために高い密度で配置できる点、またフェリチンのタンパクは形状や大きさのばらつきが非常に少ない点、さらに作製プロセスも簡便なため製造コストが安価にできる点などの利点が有する。また、アポフェリチンを用いた場合、その内部空間の直径は約7nm以下であり、ナノメータオーダーの大きさの化合物半導体ナノ微粒子を効率的に作製することができる。
また、好適には上記の化合物半導体は、II−VI型の化合物半導体を選択する。特に好ましくは、CdS又はZnSを選択する。
【0013】
次に、本発明の第2の観点からは、タンパク質によって表面修飾された化合物半導体ナノ微粒子から成る円偏光発光性ナノ微粒子が提供される。
上述の本発明の第1の観点の円偏光発光性ナノ微粒子では、単に光学活性な保護剤を用いるのではなく、籠状タンパク質を微粒子形成の反応場としても用いて作製している。仮説としては、フェリチン内部の不斉場の効果により円偏光発光を示すものと考える。
これに対して、本発明の第2の観点の円偏光発光性ナノ微粒子では、タンパク質によって表面修飾された化合物半導体ナノ微粒子から形成される。
これは、化合物半導体ナノ微粒子の表面にタンパク質を化学修飾させた場合にも、フェリチン内に内包された化合物半導体ナノ微粒子と同じように、化合物半導体ナノ微粒子は不斉場の効果により円偏光発光を示すものである。
ここで、好適には上記の化合物半導体は、II−VI型の化合物半導体またはIII−V型の化合物半導体である。本発明の第1の観点の円偏光発光性ナノ微粒子と比べて、使用可能な化合物半導体の範囲が拡大でき、利用可能性が向上する。
【0014】
次に、本発明の第3の観点からは、上述した円偏光発光性ナノ微粒子に対して、レーザ照射することにより、円偏光発光波長を制御し得ることを特徴とする円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法が提供される。すなわち、本発明の波長制御方法は、上述の円偏光発光性ナノ微粒子にレーザ照射などの外部刺激を加えることにより、円偏光発光波長を調節可能とするものである。
現在の仮説として、円偏光発光波長の調節は、化合物半導体ナノ微粒子を内包したフェリチン微粒子(円偏光発光性ナノ微粒子)にレーザ照射することで、フェリチン内部の化合物半導体ナノ微粒子が光酸化反応を起こした結果として長波長シフトを起こすと推察する。すなわち、この長波長シフトが生じる要因は、直接遷移(結晶性)部が優先的に光酸化されることから、界面のトラップ準位(長波長)からの発光が顕著に観察されたのである。この円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法を用いることで、円偏光発光性ナノ微粒子の円偏光発光波長を長波長シフトさせることができる。
なお、円偏光発光性ナノ微粒子に対して、レーザ照射することにより、蛍光波長を短波長シフトさせることも可能である。これは、レーザ照射することにより、ナノ微粒子の直径サイズが減少し、それに伴い、トラップ準位の発光波長が短波長にシフトしたのである。この場合、直接遷移からの蛍光発光は殆ど観測されていない。
【0015】
また、円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法を用いることで、円偏光発光性ナノ微粒子から成る単一量子ドットメモリを形成することが可能となる。
具体的には、化合物半導体CdSを内包したフェリチン微粒子は、通常の蛍光光度計で測定した場合、蛍光スペクトルは図5に示されるとおり、トラップ準位由来と思われる700nm付近の発光ピークを示しているが、円偏光発光(CPL)測定では、円偏光発光スペクトルは図6に示されるとおり、500nm付近に円偏光発光ピークを示している。ところが、化合物半導体CdSを内包したフェリチン微粒子に対してレーザ照射を行った後は、蛍光光度計による蛍光測定ではレーザ照射前後で発光波長が僅かながら短波長側へ波長シフトし、円偏光発光(CPL)測定では700nm付近に約200nm長波長シフトしている。通常の蛍光測定ではレーザ照射前後で発光スペクトルに僅かな差異しかないにもかかわらず、円偏光発光(CPL)測定を行うことではじめて円偏光スペクトルの違いを検出することができたのである。
【0016】
すなわち、レーザ照射による書き込みを行うことによって生じる円偏光発光(CPL)ピーク波長シフトを0/1と解釈することで、円偏光発光性ナノ微粒子を単一量子ドットメモリとして用いることが可能となる。上述したように、フェリチンには、自己整合能をもつために高い密度で配置できる点、またフェリチンは形状や大きさのばらつきが非常に少ない点、さらに作製プロセスも簡便なため製造コストが安価にできる点などの利点があるため、これらの利点を活かして、実用化に向けた単一量子ドットメモリを形成可能とするのである。また、本メモリは、円偏光発光(CPL)を用いる光メモリであり、新規なデバイスを創成できる。
【0017】
また、上記の単一量子ドットメモリは、WORM(Write-Once
Read-Many times) 型単一量子ドットメモリを形成する。すなわち、本発明の円偏光発光性ナノ微粒子は、レーザ照射により内部の化合物半導体微粒子が光酸化反応を起こすことから(上述の仮説)、円偏光発光波長が長波長シフトし、これは不可逆反応なため、レーザ照射後はその発光状態を保持することとなる。
【0018】
また、円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法を用いることで、円偏光発光性ナノ微粒子を含むセキュリティ用ペイント材を形成することが可能となる。
すなわち、本発明の円偏光発光性ナノ微粒子を含むペイント材は、外部からレーザ照射することで、円偏光発光波長がシフトすることから、セキュリティ用ペイント材を形成できることとなる。
円偏光発光は、所定波長の励起光下で発光するが、右巻き・左巻き円偏光の割合は目視もしくは通常の蛍光光度計では検出できないため、円偏光発光性を有するペイント材はセキュリティ用途に適している。本発明の円偏光発光性ナノ微粒子は上記のとおり、レーザ照射によって円偏光発光波長を制御(シフト)することができる。従って、本発明の円偏光発光性ナノ微粒子を含むペイント材を用いるとペイントした箇所の内、所望の部分の円偏光発光波長を変更することなどができ、セキュリティ強度をより強化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子を得ることができ、また化合物半導体ナノ微粒子のサイズを均一に調整・配置できるといった効果がある。
また、化合物半導体ナノ微粒子にレーザ照射などの外部刺激を加えることによって、円偏光発光波長を調節(シフト)することを可能でき、これによりWORM型単一量子ドットメモリへの適用が可能となるといった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更が可能である。
【実施例1】
【0021】
(円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子の作製例)
先ず、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子の作製方法の一実施例として、酢酸カドミウム(CdS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる方法を説明する。
先ず、図13に示すように、酢酸アンモニウム溶液と酢酸カドミウムとを混合する(ステップS1)。具体的には、300mLの純水に、1Mの酢酸アンモニウム、1Mのアンモニア水、100mMの酢酸カドミウム溶液を混合する。酢酸アンモニウムの最終濃度が40mM、アンモニアの最終濃度がそれぞれ7.5mM,37.5mM,75mM、酢酸カドミウムの最終濃度が1mMとなるように各試薬を混合する。その後、反応液にアポフェリチン溶液を加える。具体的には、適当な濃度のアポフェリチン溶液を最終濃度が、例えば0.3mg/mLになるよう加える。なお、本実施例1の方法で用いられる各試薬の濃度は、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。
【0022】
次に、ステップS1によって調整された反応液を室温で10分間放置する(ステップS2)。これによりカドミウムのアンモニウム錯体が形成されることとなる。
次に、反応液にチオ酢酸(C2H4OS)を添加する(ステップS3)。具体的には、チオ酢酸を最終濃度が1mMとなるように反応液に加える。なお、本実施例において、アポフェリチンは、ウマ牌臓由来のアポフェリチンを用いている。また、このアポフェリチンは、LサブユニットとHサブユニットの2種類のモノマーサブユニットで構成されている。
【0023】
その後、反応液を室温で12時間以上放置して、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させる(ステップS4)。この際のpHは、4.0以上9.0以下程度とする。なお、本ステップS4の反応時間は24時間程度であってもかまわない。
【0024】
ここで、各試薬の濃度範囲の例を下表1に示す(各試薬のpHは4.0〜9.0)。但し、各試薬の最終濃度は下表1の値に限るものではない。また、反応液中のアポフェリチンの最終濃度が0.3mg/mL以上1mg/mL以下の範囲外であっても、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることは可能である。また、酢酸アンモニウムの濃度も40mMに限られるものではない。
【0025】
【表1】
【0026】
図14(a)は、イオウ源としてチオ尿素を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示す透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、図14(b)は、イオウ源としてチオ酢酸を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示すTEM写真である。
図14(b)から、本実施例1の方法によれば、アポフェリチン中にCdSを含むカドミウム硫化物からなるコアを形成できることが分かる(図中の黒い丸)。これに対し、チオ酢酸に代えてイオウ源としてチオ尿素を用いた場合には、アポフェリチン中にはほとんどカドミウム硫化物からなるコアが形成されなかった。
図15に示す結果から、反応液中のアンモニア濃度を7.5〜75mMに変化させると微粒子の粒径が異なる硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものができたことがわかる。
【0027】
図16は、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの蛍光スペクトルを示す図である。ここでは、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを含む反応液中で、波長350nmの光でCdSナノ微粒子を励起した際の蛍光スペクトルを示している。ここで測定は、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの濃度を0.5mg/mLとした反応液中で行っている。
特に、アンモニア濃度が、37.5mMと75mMの場合に、波長560nm,610nm,640nm付近に、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子によるものと考えられる蛍光が見られた。なお、励起光を浴びた反応液を目視した場合、アポフェリチンのみを含む反応液では青色になり、アンモニア濃度が増加するに従って反応液は赤に近い色に変わった。
【0028】
本実施例1の方法により作製された硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものは、図17に示すように、多数(24個)のモノマーサブユニット3により構成され、内部に空洞が形成された外殻2と、外殻2の空洞内に形成されたコア微粒子1であるCdSとを備えている。コア微粒子1であるCdSは、励起された場合に蛍光を発する。
なお、本実施例1の形態の硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものは、CdSからなる微粒子を用いた半導体記憶装置や蛍光を発する特性を用いたマーカーとしての利用など、種々の分野に用いることが可能である。
【0029】
なお、図13に示すステップS2やステップS4では、反応液を室温で放置したが、室温以外の温度であってもアンモニウム錯体や硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを形成させることが可能である。
【0030】
また、イオウ源としてはチオ酢酸が最も好ましいが、硫化アンモニウム((NH4)2S)やチオ硫酸塩(K2S2O3、Na2S2O3)等をチオ酢酸の代わりに用いても、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを形成させることは可能である。
また、上述の説明においては、ウマ牌臓由来のアポフェリチンを用いたが、他の臓器(心臓や肝臓など)由来のアポフェリチンを用いてもよい。また、他の生物のアポフェリチンを用いても、本実施例1と同様の条件で硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることが可能である。
また、酢酸アンモニウムの代わりにアンモニア水を加えた酢酸緩衝液などのアンモニウムイオンと酢酸イオンとを含む溶液を用いても、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることが可能である。
【0031】
(作製した化合物半導体ナノ微粒子の特性について)
図5は、上記作製した化合物半導体ナノ微粒子の蛍光スペクトルを示している。なお、比較としてアポフェリチンの蛍光スペクトルも示している。
図5に示されるように、アポフェリチンの蛍光スペクトルと、化合物半導体ナノ微粒子の蛍光スペクトルには大きな差異が確認できる。また、作製した化合物半導体ナノ微粒子に対して、レーザ照射することにより(書き込み後)、蛍光発光波長ピークの位置が760nm付近から700nm付近へと、短波長シフトしていることが確認できる。なお、図中で書き込み前とあるのがレーザ照射前のもので、書き込み後とあるのがレーザ照射後のものである。
ここで、照射したレーザの波長は400nm、照射時間は1時間である。レーザ波長を調整することによって、照射時間を制御することができる。
【0032】
次に、図6を参照しながら、作製した化合物半導体ナノ微粒子の円偏光発光特性について説明する。図6は、上記作製した化合物半導体ナノ微粒子の円偏光発光微粒子の円偏光発光スペクトルを示している。
図6に示されるように、アポフェリチンの円偏光発光スペクトルと、化合物半導体ナノ微粒子の円偏光発光スペクトルには大きな差異が確認できる。また、作製した化合物半導体ナノ微粒子に対して、レーザ照射することにより(書き込み後)、レーザ照射前(書き込み前)と比較すると、円偏光発光波長ピークの位置が520nm付近から700nm付近へと、長波長シフトしていることが確認できる。なお、図中で書き込み前とあるのがレーザ照射前のもので、書き込み後とあるのがレーザ照射後のものである。
【0033】
ここで、図7を用いて、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させた化合物半導体ナノ微粒子が、円偏光発光の長波長シフトを生じる原理について説明する。
図7の左側に、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させた化合物半導体ナノ微粒子を示している。この化合物半導体ナノ微粒子は、図6で示したように、元々の状態(レーザ照射前:書き込み前)の円偏光発光波長ピークは、520nm付近にあり、直線偏光励起(紫外光350nm)した場合に、青色の円偏光発光特性を有するものである。この化合物半導体ナノ微粒子にレーザ照射(400nm)することで、CdSの光酸化が生じ、円偏光発光波長ピークが700nm付近に長波長シストし、図7の右側に示すような赤色の円偏光発光特性を有するようになるのである。
【0034】
次に、図8と図9を参照して、レーザ照射の前後におけるアポフェリチン中のCdSナノ粒子の粒径分布について説明する。
図8は、レーザ照射前におけるアポフェリチン中のCdSナノ粒子の粒径分布とTEM像を示している。また図9は、レーザ照射後におけるアポフェリチン中のCdSナノ粒子の直径分散(粒径分布)とTEM像を示している。
図8および図9から、レーザ照射前の粒径分布は、直径7.1nm(分散0.7nm)であるのに対して、レーザ照射後の粒径分布は、直径6.2nm(分散0.6nm)となり、ナノ微粒子の直径サイズが減少していることがわかる。
このナノ微粒子の直径サイズの減少が要因となって、化合物半導体ナノ微粒子に対して、レーザ照射した場合に(書き込み後)、蛍光発光波長ピークの位置が短波長シフトすると推定している。
【0035】
上述した円偏光発光特性および円偏光発光波長シフト特性を有するナノ微粒子を用いて作製するWORM型単一量子ドットメモリの概念図を図10に示す。
図10のように、作製したナノ微粒子を基板上に2次元配列させ、特定位置のナノ微粒子にレーザ照射(レーザ書き込み)を行うことで、当該ナノ微粒子の円偏光発光が長波長シフトし、青色から赤色の円偏光発光をするようになる。例えば、青色の円偏光発光特性状態を情報ビット“1”として、赤色の円偏光発光特性状態を情報ビット“0”とすることで、ディジタル情報の記憶素子として活用できることとなる。電気制御ではなく、光制御で情報の書き込みができるのである。ナノ微粒子は、レーザ書き込みにより、その青色の円偏光発光状態が赤色の円偏光発光状態に一旦遷移すると、元の青色の円偏光発光状態に戻すことはできない。従って、WORM(Write-Once Read-Many times)メモリの創成が可能である。
【0036】
かかるWORM型単一量子ドットメモリの光読み出しについて図11を参照して以下に説明する。図11に示すように、ノーマルOn型を青色発光状態とし、ノーマルOff型を赤色発光状態とする。個々のナノ微粒子で形成される単一量子ドットを、レーザ照射により波長シフトさせ、単一量子ドットのメモリ情報を書き換える。2次元配列されたアレイ状のナノ微粒子の円偏光発光を光測定することで、情報を読み出せることとなる。
これにより、本発明のメモリは、(1)青色発光のオン/オフによるメモリ、(2)赤色発光のオフ/オンによるメモリ、(3)波長シフトによるメモリの3種のメモリとして用いることができる。3種の方式のいずれもレーザ照射によって容易に書き込みをすることができるので、メモリを適用するデバイスに応じてこれらのメモリ方式を適宜選択することができる。
【0037】
この他、円偏光発光特性および円偏光発光波長シフト特性を有するナノ微粒子の応用として、図12に示すようなセキュリティ用ペイントとしての利用がある。
これは、円偏光発光特性を持つナノ微粒子を含有したペイント材に、レーザ照射前後での円偏光発光特性が変わることを利用し、セキュリティ用ペイントとして活用するものである。上述したように情報の変化は、電気制御ではなく光制御で行うため、過酷な環境や屋外での活用が期待できる。
【実施例2】
【0038】
(円偏光発光特性を示す他の化合物半導体ナノ微粒子の作製例)
実施例1では、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子の作製方法の一実施例として、硫化カドミウム(CdS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる方法、および形成されたナノ微粒子の特性、その応用について説明した。
実施例2では、II−VI型の化合物半導体で、実施例1とは異なる他の化合物半導体である硫化亜鉛(ZnS)について説明する。
【0039】
先ず、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子の作製方法の一実施例として、硫化亜鉛(ZnS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる方法を説明する。
先ず、図18に示すように、酢酸アンモニウム溶液と酢酸亜鉛溶液とを混合する(ステップS11)。具体的には、300mLの純水に、1Mの酢酸アンモニウム、1Mのアンモニア水、100mMの酢酸亜鉛溶液を混合する。酢酸アンモニウムの最終濃度が40mM、アンモニアの最終濃度がそれぞれ7.5mM〜75mM、酢酸亜鉛の最終濃度が1mMとなるように各試薬を混合する。その後、反応液にアポフェリチン溶液を加える。具体的には、適当な濃度のアポフェリチン溶液を最終濃度が、例えば0.3mg/mLになるよう加える。なお、本実施例2の方法で用いられる各試薬の濃度は、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。
【0040】
次に、ステップS11によって調整された反応液を室温で10分間放置する(ステップS12)。これにより亜鉛のアンモニウム錯体が形成されることとなる。
次に、反応液にチオ酢酸を添加する(ステップS13)。具体的には、チオ酢酸を最終濃度が10mMとなるように反応液に加える。なお、本実施例において、アポフェリチンは、ウマ牌臓由来のアポフェリチンを用いている。
【0041】
その後、反応液を室温で12時間以上放置して、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させる(ステップS14)。この際のpHは、4.0以上9.0以下程度とする。ここで、アポフェリチン内に形成されるZnSは、条件によっては一部がZnSなどZnS以外の亜鉛2硫化物になっている場合がある。なお、本ステップS14の反応時間は24時間程度であってもかまわない。
【0042】
ここで、各試薬の濃度範囲の例を下表2に示す(各試薬のpHは4.0〜9.0)。但し、各試薬の最終濃度は下表2の値に限るものではない。また、反応液中のアポフェリチンの最終濃度が0.3mg/mL以上1mg/mL以下の範囲外であっても、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることは可能である。また、酢酸アンモニウムの濃度も40mMに限られるものではない。
【0043】
【表2】
【0044】
図19(a)は、イオウ源としてチオ尿素を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示す透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、図19(b)は、イオウ源としてチオ酢酸を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示すTEM写真である。
図19(b)から、本実施例2の方法によれば、アポフェリチン中にZnSを含む亜鉛硫化物からなるコアを形成できることが分かる。これに対し、チオ酢酸に代えてイオウ源としてチオ尿素を用いた場合には、アポフェリチン中にはほとんど亜鉛硫化物からなるコアが形成されなかった。
なお、図示しないが、反応溶液中のアンモニア濃度を、0.1〜100mMに変化させても硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成できている。
【0045】
図20は、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの蛍光スペクトルを示す図である。ここでは、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたナノ微粒子を含む反応液中で、波長325nmの光でZnSナノ微粒子を励起した際の蛍光スペクトルを示している。
図20において、波長400nm以下の領域にあるピークは、150mMのNaCl溶液であるブランク試料との比較から、ZnS粒子には依存しない蛍光であると考えられる。そして、反応液中のアンモニア濃度が、7.5〜100mMの範囲で波長400〜500nmの領域に、ZnSナノ微粒子によるものと考えられる蛍光が見られた。
特に、反応液中のアンモニア濃度が15mM以上100mMの範囲であれば、より強い蛍光が見られた。なお、ZnSナノ微粒子による蛍光は目視では青色に見え、長期保存(1年)後の消光もほとんど見られなかった。また、反応液中のアンモニア濃度の上昇に伴ってZnSナノ微粒子の粒径は変化した。
【0046】
本実施例2の方法により作製された硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものは、図21に示すように、多数(24個)のモノマーサブユニット13により構成され、内部に空洞が形成された外殻12と、外殻12の空洞内に形成されたZnSからなり、励起された場合に蛍光を発するコア(微粒子)11とを備えている。
なお、本実施例2の形態の硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものは、ZnSからなる微粒子を用いた半導体記憶装置や蛍光を発する特性を用いたマーカーとしての利用など、種々の分野に用いることが可能である。
【0047】
なお、図18に示すステップS12やステップS14では、反応液を室温で放置したが、室温以外の温度であってもアンモニウム錯体や硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを形成させることは可能である。
【0048】
また、イオウ源としてはチオ酢酸が最も好ましいが、硫化アンモニウム((NH4)2S)やチオ硫酸塩(K2S2O3、Na2S2O3)等をチオ酢酸の代わりに用いても、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを形成させることは可能である。
また、上述の説明においては、ウマ牌臓由来のアポフェリチンを用いたが、他の臓器(心臓や肝臓など)由来のアポフェリチンを用いてもよい。また、他の生物のアポフェリチンを用いても、本実施例2と同様の条件で硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることが可能である。
また、酢酸アンモニウムの代わりにアンモニア水を加えた酢酸緩衝液などのアンモニウムイオンと酢酸イオンとを含む溶液を用いても、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の円偏光発光微粒子は、WORMメモリ、セキュリティ用ペイント、またこれらを構成要素とした認証システムに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】フェリチンの説明図
【図2】アポフェリチン中に作製された金属ナノ粒子
【図3】アポフェリチン中に作製された化合物半導体ナノ粒子
【図4】円偏光発光の説明図
【図5】実施例1の円偏光発光微粒子の蛍光スペクトル図
【図6】実施例1の円偏光発光微粒子の円偏光発光スペクトル図
【図7】円偏光発光微粒子の円偏光発光波長シフトの説明図
【図8】アポフェリチン中のCdSナノ粒子の粒径分布について(レーザ照射前)
【図9】アポフェリチン中のCdSナノ粒子の粒径分布について(レーザ照射後)
【図10】WORM型単一量子ドットメモリの概念図
【図11】WORM型単一量子ドットメモリの光読み出しの説明図
【図12】セキュリティ用ペイントとしての利用の説明図
【図13】硫化カドミウム(CdS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる処理フロー図
【図14】(a)は、イオウ源としてチオ尿素を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示す透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、(b)は、イオウ源としてチオ酢酸を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示すTEM写真である。
【図15】反応液中のアンモニア濃度を7.5〜75mMに変化させた場合の硫化カドミウム (CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものTEM写真。
【図16】硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの蛍光スペクトルを示す図
【図17】硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの構造模式図
【図18】硫化亜鉛(ZnS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる処理フロー図
【図19】(a)は、イオウ源としてチオ尿素を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示す透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、(b)は、イオウ源としてチオ酢酸を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示すTEM写真である。
【図20】硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの蛍光スペクトルを示す図
【図21】硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの構造模式図
【符号の説明】
【0051】
1A コア部分
2A タンパク質外殻部分
1,11 コア
2,12 外殻
3,13 モノマーサブユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光発光性を示す微粒子に関するもので、特に、フェリチン(アポフェリチン)内に内包された化合物半導体ナノ微粒子から成る円偏光発光性ナノ微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオテクノロジー分野の発展はめざましく他の領域への応用も模索されており、半導体微細加工技術への応用(バイオナノテクノロジー)も研究が進められている。バイオテクノロジーでは「DNA」という設計図をもとに分子レベルでの生成物(アミノ酸残基)の制御が可能であり、そのさまざまなアミノ酸残基からなる全てのタンパク質は、自己集合能によってサイズ分散のない「ナノブロック」を形成することができる。このようにバイオテクノロジーを用いれば、ナノスケールでの生成物の形成を制御することができ、当該生成物として半導体の構成要素を作り込めば、バイオテクノロジーの半導体微細加工技術への応用が見えてくる。
【0003】
ここに、バイオテクノロジーを半導体微細加工に応用した技術として、フェリチンという生体内に存在する籠状タンパク質を用いて量子ドットを形成する技術が開示されている(特許文献1、特許文献2を参照)。
フェリチンは、図1に示すように、単量体24個のタンパク質で構成された直径12nmの球状のタンパク質外殻部分2Aと、当該外殻部分の中心部分であって生体内のFeイオンを吸収して酸化物の形で保持せしめた直径6nm程度のコア部分1Aとを有する構造を持っている。タンパク質の外殻部分とコア部分を持つため籠状タンパク質と呼ばれている。フェリチンは吸収したFeイオンを酸化させる活性部位を持ち、Feイオンは5Fe2O3・9H2Oの酸化物となって蓄えられる。
【0004】
また、かかるフェリチンから金属酸化物のコアが抜けたものは、アポフェリチンと呼ばれており、アポフェリチンは上記したFeの他、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)など種々の金属からなる微粒子をコアに蓄えることもできる。図2に、アポフェリチン中に作製された種々の金属ナノ微粒子のTEMイメージを示す。
【0005】
上記のようにフェリチンはコア部分に金属酸化物を持つとともに、外殻は単量体のタンパク質が24個組み合わさった構造をしている。このフェリチンは自己集合能を持つために均一な膜として形成しやすく、かつ、外殻のタンパク質はUVオゾン熱処理などで分解・除去しやすいという特徴を有する。
ここに、フェリチンの自己集合能を活かしてフェリチンの半導体基板上での吸着位置を制御し、フェリチンの外殻タンパク質を選択的に除去すれば、図2に示したように、コアである金属酸化物を二次元マトリックス状に配列させた構造物を製作することができるのである。
【0006】
また、フェリチンはコア部分に、2種類以上の元素からなる化合物半導体のナノ微粒子を作製できることも知られている(特許文献3を参照)。
化合物半導体のナノ微粒子は、量子閉じ込め効果によりバルク状態とは大きく異なる物性を発現する。中でも、高い輝度、高い耐光性、広い励起スペクトル、狭い蛍光スペクトルといった理想的な蛍光特性を備えていることから、次世代のオプトエレクトロニクス材料として注目を集めている。一方、親水性被覆分子を用いた水溶性の化合物半導体のナノ微粒子が開発されて以来、バイオイメージングやイムノアッセイなど、化合物半導体のナノ微粒子のバイオテクノロジーへの応用も盛んに研究されている。
特許文献3に開示された技術により、半導体からなる微粒子の量子サイズ効果を利用したり、励起された場合に蛍光を発する化合物半導体の微粒子の場合は生体物質の標識方法などへの利用が可能となっている。図3に、アポフェリチン中に作製された種々の化合物半導体のナノ微粒子のTEMイメージを示す。
【0007】
上述したように、化合物半導体のナノ微粒子は次世代のオプトエレクトロニクス材料として注目を集めている。しかし、現在のところ、バイオテクノロジー分野における化合物半導体のナノ微粒子の利用は、発光性有機分子の代替にとどまっているのが現状である。
これまで発明人らは、高輝度な円偏光性発光分子の創成を目指し、光学活性かつ発光性のらせん高分子、芳香族低分子、化合物半導体ナノ粒子を創成し、その円偏光発光(CPL:Circularly Polarized Luminescence)特性について検討してきた。
円偏光発光(CPL)とは、光学活性分子から発せられる右円偏光と左円偏光の発光強度の差分を指すものである(図4参照)。かかる円偏光発光(CPL)は、従来から励起状態における有機分子の立体構造の評価に利用されてきたが、近年では高輝度液晶ディスプレイ用の偏光光源をはじめとして、3次元ディスプレイ、記憶材料、光通信など高度な光情報プロセッシングへの利用が期待されている。
【0008】
この円偏光発光(CPL)を示す物質としては、生物発光、発光性希土類や光学活性共役高分子などが知られている。また化合物半導体では、GaAsなどが円偏光レーザーで励起すると円偏光発光を示す報告がある。しかしながら、化合物半導体ナノ微粒子ではこれまで達成されたという報告はない(例えば、非特許文献1を参照)。化合物半導体が円偏光発光(CPL)を示すか否かの試みとして、光学活性チオール化合物によって合成された円二色性(CD)活性なCdSに関して示されているが、この報告の中では、化合物半導体ナノ微粒子はCPL不活性であると報告されている(非特許文献2を参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平11−45990号公報
【特許文献2】特開2003−086715号公報
【特許文献3】国際公開WO2007/032241号公報
【非特許文献1】J. Am. Chem.Soc., 128, 9030 (2006).
【非特許文献2】Chem.Commun.,M.P.Moloney,et al.,2007,page 3900
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、化合物半導体のナノ微粒子は次世代のオプトエレクトロニクス材料として注目を集めている。しかし、現在のところ、バイオテクノロジー分野における化合物半導体のナノ微粒子の利用は、発光性有機分子の代替にとどまっているのが現状である。また従来技術では、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子を作製することができていない。
本発明は、上記に鑑み、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究の結果、タンパク質内で化合物半導体を合成することで、円偏光発光を示す化合物半導体微粒子の合成が可能であることの知見を得て、本発明を完成したものである。
具体的には、籠状タンパク質であるフェリチンのコア内で調整したCdSが高い円偏光発光(CPL)を示すという知見を得た。これは、化合物半導体のナノ微粒子からの円偏光発光(CPL)の初の例である。また、後述するように、この円偏光発光(CPL)の波長は、レーザ照射により調整することができ、これによりバイオテクノロジー分野における化合物半導体のナノ微粒子の利用として、WORM(Write-Once Read-Many times)メモリの創成など利用可能となる。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点からは、籠状タンパク質内に内包された化合物半導体ナノ微粒子から成る円偏光発光性ナノ微粒子が提供される。
籠状タンパク質は、空洞が形成されたタンパク質であり、アポフェリチンなどのフェリチンタンパク質ファミリーやその組み換え体を用いることができる。
ここで、好適には上記のタンパク質ナノ微粒子は、アポフェリチンを選択する。アポフェリチンは、自己整合能をもつために高い密度で配置できる点、またフェリチンのタンパクは形状や大きさのばらつきが非常に少ない点、さらに作製プロセスも簡便なため製造コストが安価にできる点などの利点が有する。また、アポフェリチンを用いた場合、その内部空間の直径は約7nm以下であり、ナノメータオーダーの大きさの化合物半導体ナノ微粒子を効率的に作製することができる。
また、好適には上記の化合物半導体は、II−VI型の化合物半導体を選択する。特に好ましくは、CdS又はZnSを選択する。
【0013】
次に、本発明の第2の観点からは、タンパク質によって表面修飾された化合物半導体ナノ微粒子から成る円偏光発光性ナノ微粒子が提供される。
上述の本発明の第1の観点の円偏光発光性ナノ微粒子では、単に光学活性な保護剤を用いるのではなく、籠状タンパク質を微粒子形成の反応場としても用いて作製している。仮説としては、フェリチン内部の不斉場の効果により円偏光発光を示すものと考える。
これに対して、本発明の第2の観点の円偏光発光性ナノ微粒子では、タンパク質によって表面修飾された化合物半導体ナノ微粒子から形成される。
これは、化合物半導体ナノ微粒子の表面にタンパク質を化学修飾させた場合にも、フェリチン内に内包された化合物半導体ナノ微粒子と同じように、化合物半導体ナノ微粒子は不斉場の効果により円偏光発光を示すものである。
ここで、好適には上記の化合物半導体は、II−VI型の化合物半導体またはIII−V型の化合物半導体である。本発明の第1の観点の円偏光発光性ナノ微粒子と比べて、使用可能な化合物半導体の範囲が拡大でき、利用可能性が向上する。
【0014】
次に、本発明の第3の観点からは、上述した円偏光発光性ナノ微粒子に対して、レーザ照射することにより、円偏光発光波長を制御し得ることを特徴とする円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法が提供される。すなわち、本発明の波長制御方法は、上述の円偏光発光性ナノ微粒子にレーザ照射などの外部刺激を加えることにより、円偏光発光波長を調節可能とするものである。
現在の仮説として、円偏光発光波長の調節は、化合物半導体ナノ微粒子を内包したフェリチン微粒子(円偏光発光性ナノ微粒子)にレーザ照射することで、フェリチン内部の化合物半導体ナノ微粒子が光酸化反応を起こした結果として長波長シフトを起こすと推察する。すなわち、この長波長シフトが生じる要因は、直接遷移(結晶性)部が優先的に光酸化されることから、界面のトラップ準位(長波長)からの発光が顕著に観察されたのである。この円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法を用いることで、円偏光発光性ナノ微粒子の円偏光発光波長を長波長シフトさせることができる。
なお、円偏光発光性ナノ微粒子に対して、レーザ照射することにより、蛍光波長を短波長シフトさせることも可能である。これは、レーザ照射することにより、ナノ微粒子の直径サイズが減少し、それに伴い、トラップ準位の発光波長が短波長にシフトしたのである。この場合、直接遷移からの蛍光発光は殆ど観測されていない。
【0015】
また、円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法を用いることで、円偏光発光性ナノ微粒子から成る単一量子ドットメモリを形成することが可能となる。
具体的には、化合物半導体CdSを内包したフェリチン微粒子は、通常の蛍光光度計で測定した場合、蛍光スペクトルは図5に示されるとおり、トラップ準位由来と思われる700nm付近の発光ピークを示しているが、円偏光発光(CPL)測定では、円偏光発光スペクトルは図6に示されるとおり、500nm付近に円偏光発光ピークを示している。ところが、化合物半導体CdSを内包したフェリチン微粒子に対してレーザ照射を行った後は、蛍光光度計による蛍光測定ではレーザ照射前後で発光波長が僅かながら短波長側へ波長シフトし、円偏光発光(CPL)測定では700nm付近に約200nm長波長シフトしている。通常の蛍光測定ではレーザ照射前後で発光スペクトルに僅かな差異しかないにもかかわらず、円偏光発光(CPL)測定を行うことではじめて円偏光スペクトルの違いを検出することができたのである。
【0016】
すなわち、レーザ照射による書き込みを行うことによって生じる円偏光発光(CPL)ピーク波長シフトを0/1と解釈することで、円偏光発光性ナノ微粒子を単一量子ドットメモリとして用いることが可能となる。上述したように、フェリチンには、自己整合能をもつために高い密度で配置できる点、またフェリチンは形状や大きさのばらつきが非常に少ない点、さらに作製プロセスも簡便なため製造コストが安価にできる点などの利点があるため、これらの利点を活かして、実用化に向けた単一量子ドットメモリを形成可能とするのである。また、本メモリは、円偏光発光(CPL)を用いる光メモリであり、新規なデバイスを創成できる。
【0017】
また、上記の単一量子ドットメモリは、WORM(Write-Once
Read-Many times) 型単一量子ドットメモリを形成する。すなわち、本発明の円偏光発光性ナノ微粒子は、レーザ照射により内部の化合物半導体微粒子が光酸化反応を起こすことから(上述の仮説)、円偏光発光波長が長波長シフトし、これは不可逆反応なため、レーザ照射後はその発光状態を保持することとなる。
【0018】
また、円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法を用いることで、円偏光発光性ナノ微粒子を含むセキュリティ用ペイント材を形成することが可能となる。
すなわち、本発明の円偏光発光性ナノ微粒子を含むペイント材は、外部からレーザ照射することで、円偏光発光波長がシフトすることから、セキュリティ用ペイント材を形成できることとなる。
円偏光発光は、所定波長の励起光下で発光するが、右巻き・左巻き円偏光の割合は目視もしくは通常の蛍光光度計では検出できないため、円偏光発光性を有するペイント材はセキュリティ用途に適している。本発明の円偏光発光性ナノ微粒子は上記のとおり、レーザ照射によって円偏光発光波長を制御(シフト)することができる。従って、本発明の円偏光発光性ナノ微粒子を含むペイント材を用いるとペイントした箇所の内、所望の部分の円偏光発光波長を変更することなどができ、セキュリティ強度をより強化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子を得ることができ、また化合物半導体ナノ微粒子のサイズを均一に調整・配置できるといった効果がある。
また、化合物半導体ナノ微粒子にレーザ照射などの外部刺激を加えることによって、円偏光発光波長を調節(シフト)することを可能でき、これによりWORM型単一量子ドットメモリへの適用が可能となるといった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更が可能である。
【実施例1】
【0021】
(円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子の作製例)
先ず、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子の作製方法の一実施例として、酢酸カドミウム(CdS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる方法を説明する。
先ず、図13に示すように、酢酸アンモニウム溶液と酢酸カドミウムとを混合する(ステップS1)。具体的には、300mLの純水に、1Mの酢酸アンモニウム、1Mのアンモニア水、100mMの酢酸カドミウム溶液を混合する。酢酸アンモニウムの最終濃度が40mM、アンモニアの最終濃度がそれぞれ7.5mM,37.5mM,75mM、酢酸カドミウムの最終濃度が1mMとなるように各試薬を混合する。その後、反応液にアポフェリチン溶液を加える。具体的には、適当な濃度のアポフェリチン溶液を最終濃度が、例えば0.3mg/mLになるよう加える。なお、本実施例1の方法で用いられる各試薬の濃度は、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。
【0022】
次に、ステップS1によって調整された反応液を室温で10分間放置する(ステップS2)。これによりカドミウムのアンモニウム錯体が形成されることとなる。
次に、反応液にチオ酢酸(C2H4OS)を添加する(ステップS3)。具体的には、チオ酢酸を最終濃度が1mMとなるように反応液に加える。なお、本実施例において、アポフェリチンは、ウマ牌臓由来のアポフェリチンを用いている。また、このアポフェリチンは、LサブユニットとHサブユニットの2種類のモノマーサブユニットで構成されている。
【0023】
その後、反応液を室温で12時間以上放置して、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させる(ステップS4)。この際のpHは、4.0以上9.0以下程度とする。なお、本ステップS4の反応時間は24時間程度であってもかまわない。
【0024】
ここで、各試薬の濃度範囲の例を下表1に示す(各試薬のpHは4.0〜9.0)。但し、各試薬の最終濃度は下表1の値に限るものではない。また、反応液中のアポフェリチンの最終濃度が0.3mg/mL以上1mg/mL以下の範囲外であっても、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることは可能である。また、酢酸アンモニウムの濃度も40mMに限られるものではない。
【0025】
【表1】
【0026】
図14(a)は、イオウ源としてチオ尿素を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示す透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、図14(b)は、イオウ源としてチオ酢酸を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示すTEM写真である。
図14(b)から、本実施例1の方法によれば、アポフェリチン中にCdSを含むカドミウム硫化物からなるコアを形成できることが分かる(図中の黒い丸)。これに対し、チオ酢酸に代えてイオウ源としてチオ尿素を用いた場合には、アポフェリチン中にはほとんどカドミウム硫化物からなるコアが形成されなかった。
図15に示す結果から、反応液中のアンモニア濃度を7.5〜75mMに変化させると微粒子の粒径が異なる硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものができたことがわかる。
【0027】
図16は、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの蛍光スペクトルを示す図である。ここでは、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを含む反応液中で、波長350nmの光でCdSナノ微粒子を励起した際の蛍光スペクトルを示している。ここで測定は、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの濃度を0.5mg/mLとした反応液中で行っている。
特に、アンモニア濃度が、37.5mMと75mMの場合に、波長560nm,610nm,640nm付近に、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子によるものと考えられる蛍光が見られた。なお、励起光を浴びた反応液を目視した場合、アポフェリチンのみを含む反応液では青色になり、アンモニア濃度が増加するに従って反応液は赤に近い色に変わった。
【0028】
本実施例1の方法により作製された硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものは、図17に示すように、多数(24個)のモノマーサブユニット3により構成され、内部に空洞が形成された外殻2と、外殻2の空洞内に形成されたコア微粒子1であるCdSとを備えている。コア微粒子1であるCdSは、励起された場合に蛍光を発する。
なお、本実施例1の形態の硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものは、CdSからなる微粒子を用いた半導体記憶装置や蛍光を発する特性を用いたマーカーとしての利用など、種々の分野に用いることが可能である。
【0029】
なお、図13に示すステップS2やステップS4では、反応液を室温で放置したが、室温以外の温度であってもアンモニウム錯体や硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを形成させることが可能である。
【0030】
また、イオウ源としてはチオ酢酸が最も好ましいが、硫化アンモニウム((NH4)2S)やチオ硫酸塩(K2S2O3、Na2S2O3)等をチオ酢酸の代わりに用いても、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを形成させることは可能である。
また、上述の説明においては、ウマ牌臓由来のアポフェリチンを用いたが、他の臓器(心臓や肝臓など)由来のアポフェリチンを用いてもよい。また、他の生物のアポフェリチンを用いても、本実施例1と同様の条件で硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることが可能である。
また、酢酸アンモニウムの代わりにアンモニア水を加えた酢酸緩衝液などのアンモニウムイオンと酢酸イオンとを含む溶液を用いても、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることが可能である。
【0031】
(作製した化合物半導体ナノ微粒子の特性について)
図5は、上記作製した化合物半導体ナノ微粒子の蛍光スペクトルを示している。なお、比較としてアポフェリチンの蛍光スペクトルも示している。
図5に示されるように、アポフェリチンの蛍光スペクトルと、化合物半導体ナノ微粒子の蛍光スペクトルには大きな差異が確認できる。また、作製した化合物半導体ナノ微粒子に対して、レーザ照射することにより(書き込み後)、蛍光発光波長ピークの位置が760nm付近から700nm付近へと、短波長シフトしていることが確認できる。なお、図中で書き込み前とあるのがレーザ照射前のもので、書き込み後とあるのがレーザ照射後のものである。
ここで、照射したレーザの波長は400nm、照射時間は1時間である。レーザ波長を調整することによって、照射時間を制御することができる。
【0032】
次に、図6を参照しながら、作製した化合物半導体ナノ微粒子の円偏光発光特性について説明する。図6は、上記作製した化合物半導体ナノ微粒子の円偏光発光微粒子の円偏光発光スペクトルを示している。
図6に示されるように、アポフェリチンの円偏光発光スペクトルと、化合物半導体ナノ微粒子の円偏光発光スペクトルには大きな差異が確認できる。また、作製した化合物半導体ナノ微粒子に対して、レーザ照射することにより(書き込み後)、レーザ照射前(書き込み前)と比較すると、円偏光発光波長ピークの位置が520nm付近から700nm付近へと、長波長シフトしていることが確認できる。なお、図中で書き込み前とあるのがレーザ照射前のもので、書き込み後とあるのがレーザ照射後のものである。
【0033】
ここで、図7を用いて、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させた化合物半導体ナノ微粒子が、円偏光発光の長波長シフトを生じる原理について説明する。
図7の左側に、硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させた化合物半導体ナノ微粒子を示している。この化合物半導体ナノ微粒子は、図6で示したように、元々の状態(レーザ照射前:書き込み前)の円偏光発光波長ピークは、520nm付近にあり、直線偏光励起(紫外光350nm)した場合に、青色の円偏光発光特性を有するものである。この化合物半導体ナノ微粒子にレーザ照射(400nm)することで、CdSの光酸化が生じ、円偏光発光波長ピークが700nm付近に長波長シストし、図7の右側に示すような赤色の円偏光発光特性を有するようになるのである。
【0034】
次に、図8と図9を参照して、レーザ照射の前後におけるアポフェリチン中のCdSナノ粒子の粒径分布について説明する。
図8は、レーザ照射前におけるアポフェリチン中のCdSナノ粒子の粒径分布とTEM像を示している。また図9は、レーザ照射後におけるアポフェリチン中のCdSナノ粒子の直径分散(粒径分布)とTEM像を示している。
図8および図9から、レーザ照射前の粒径分布は、直径7.1nm(分散0.7nm)であるのに対して、レーザ照射後の粒径分布は、直径6.2nm(分散0.6nm)となり、ナノ微粒子の直径サイズが減少していることがわかる。
このナノ微粒子の直径サイズの減少が要因となって、化合物半導体ナノ微粒子に対して、レーザ照射した場合に(書き込み後)、蛍光発光波長ピークの位置が短波長シフトすると推定している。
【0035】
上述した円偏光発光特性および円偏光発光波長シフト特性を有するナノ微粒子を用いて作製するWORM型単一量子ドットメモリの概念図を図10に示す。
図10のように、作製したナノ微粒子を基板上に2次元配列させ、特定位置のナノ微粒子にレーザ照射(レーザ書き込み)を行うことで、当該ナノ微粒子の円偏光発光が長波長シフトし、青色から赤色の円偏光発光をするようになる。例えば、青色の円偏光発光特性状態を情報ビット“1”として、赤色の円偏光発光特性状態を情報ビット“0”とすることで、ディジタル情報の記憶素子として活用できることとなる。電気制御ではなく、光制御で情報の書き込みができるのである。ナノ微粒子は、レーザ書き込みにより、その青色の円偏光発光状態が赤色の円偏光発光状態に一旦遷移すると、元の青色の円偏光発光状態に戻すことはできない。従って、WORM(Write-Once Read-Many times)メモリの創成が可能である。
【0036】
かかるWORM型単一量子ドットメモリの光読み出しについて図11を参照して以下に説明する。図11に示すように、ノーマルOn型を青色発光状態とし、ノーマルOff型を赤色発光状態とする。個々のナノ微粒子で形成される単一量子ドットを、レーザ照射により波長シフトさせ、単一量子ドットのメモリ情報を書き換える。2次元配列されたアレイ状のナノ微粒子の円偏光発光を光測定することで、情報を読み出せることとなる。
これにより、本発明のメモリは、(1)青色発光のオン/オフによるメモリ、(2)赤色発光のオフ/オンによるメモリ、(3)波長シフトによるメモリの3種のメモリとして用いることができる。3種の方式のいずれもレーザ照射によって容易に書き込みをすることができるので、メモリを適用するデバイスに応じてこれらのメモリ方式を適宜選択することができる。
【0037】
この他、円偏光発光特性および円偏光発光波長シフト特性を有するナノ微粒子の応用として、図12に示すようなセキュリティ用ペイントとしての利用がある。
これは、円偏光発光特性を持つナノ微粒子を含有したペイント材に、レーザ照射前後での円偏光発光特性が変わることを利用し、セキュリティ用ペイントとして活用するものである。上述したように情報の変化は、電気制御ではなく光制御で行うため、過酷な環境や屋外での活用が期待できる。
【実施例2】
【0038】
(円偏光発光特性を示す他の化合物半導体ナノ微粒子の作製例)
実施例1では、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子の作製方法の一実施例として、硫化カドミウム(CdS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる方法、および形成されたナノ微粒子の特性、その応用について説明した。
実施例2では、II−VI型の化合物半導体で、実施例1とは異なる他の化合物半導体である硫化亜鉛(ZnS)について説明する。
【0039】
先ず、円偏光発光特性を示す化合物半導体ナノ微粒子の作製方法の一実施例として、硫化亜鉛(ZnS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる方法を説明する。
先ず、図18に示すように、酢酸アンモニウム溶液と酢酸亜鉛溶液とを混合する(ステップS11)。具体的には、300mLの純水に、1Mの酢酸アンモニウム、1Mのアンモニア水、100mMの酢酸亜鉛溶液を混合する。酢酸アンモニウムの最終濃度が40mM、アンモニアの最終濃度がそれぞれ7.5mM〜75mM、酢酸亜鉛の最終濃度が1mMとなるように各試薬を混合する。その後、反応液にアポフェリチン溶液を加える。具体的には、適当な濃度のアポフェリチン溶液を最終濃度が、例えば0.3mg/mLになるよう加える。なお、本実施例2の方法で用いられる各試薬の濃度は、あくまで例示であり、これに限定されるものではない。
【0040】
次に、ステップS11によって調整された反応液を室温で10分間放置する(ステップS12)。これにより亜鉛のアンモニウム錯体が形成されることとなる。
次に、反応液にチオ酢酸を添加する(ステップS13)。具体的には、チオ酢酸を最終濃度が10mMとなるように反応液に加える。なお、本実施例において、アポフェリチンは、ウマ牌臓由来のアポフェリチンを用いている。
【0041】
その後、反応液を室温で12時間以上放置して、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させる(ステップS14)。この際のpHは、4.0以上9.0以下程度とする。ここで、アポフェリチン内に形成されるZnSは、条件によっては一部がZnSなどZnS以外の亜鉛2硫化物になっている場合がある。なお、本ステップS14の反応時間は24時間程度であってもかまわない。
【0042】
ここで、各試薬の濃度範囲の例を下表2に示す(各試薬のpHは4.0〜9.0)。但し、各試薬の最終濃度は下表2の値に限るものではない。また、反応液中のアポフェリチンの最終濃度が0.3mg/mL以上1mg/mL以下の範囲外であっても、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることは可能である。また、酢酸アンモニウムの濃度も40mMに限られるものではない。
【0043】
【表2】
【0044】
図19(a)は、イオウ源としてチオ尿素を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示す透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、図19(b)は、イオウ源としてチオ酢酸を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示すTEM写真である。
図19(b)から、本実施例2の方法によれば、アポフェリチン中にZnSを含む亜鉛硫化物からなるコアを形成できることが分かる。これに対し、チオ酢酸に代えてイオウ源としてチオ尿素を用いた場合には、アポフェリチン中にはほとんど亜鉛硫化物からなるコアが形成されなかった。
なお、図示しないが、反応溶液中のアンモニア濃度を、0.1〜100mMに変化させても硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成できている。
【0045】
図20は、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの蛍光スペクトルを示す図である。ここでは、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたナノ微粒子を含む反応液中で、波長325nmの光でZnSナノ微粒子を励起した際の蛍光スペクトルを示している。
図20において、波長400nm以下の領域にあるピークは、150mMのNaCl溶液であるブランク試料との比較から、ZnS粒子には依存しない蛍光であると考えられる。そして、反応液中のアンモニア濃度が、7.5〜100mMの範囲で波長400〜500nmの領域に、ZnSナノ微粒子によるものと考えられる蛍光が見られた。
特に、反応液中のアンモニア濃度が15mM以上100mMの範囲であれば、より強い蛍光が見られた。なお、ZnSナノ微粒子による蛍光は目視では青色に見え、長期保存(1年)後の消光もほとんど見られなかった。また、反応液中のアンモニア濃度の上昇に伴ってZnSナノ微粒子の粒径は変化した。
【0046】
本実施例2の方法により作製された硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものは、図21に示すように、多数(24個)のモノマーサブユニット13により構成され、内部に空洞が形成された外殻12と、外殻12の空洞内に形成されたZnSからなり、励起された場合に蛍光を発するコア(微粒子)11とを備えている。
なお、本実施例2の形態の硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものは、ZnSからなる微粒子を用いた半導体記憶装置や蛍光を発する特性を用いたマーカーとしての利用など、種々の分野に用いることが可能である。
【0047】
なお、図18に示すステップS12やステップS14では、反応液を室温で放置したが、室温以外の温度であってもアンモニウム錯体や硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを形成させることは可能である。
【0048】
また、イオウ源としてはチオ酢酸が最も好ましいが、硫化アンモニウム((NH4)2S)やチオ硫酸塩(K2S2O3、Na2S2O3)等をチオ酢酸の代わりに用いても、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものを形成させることは可能である。
また、上述の説明においては、ウマ牌臓由来のアポフェリチンを用いたが、他の臓器(心臓や肝臓など)由来のアポフェリチンを用いてもよい。また、他の生物のアポフェリチンを用いても、本実施例2と同様の条件で硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることが可能である。
また、酢酸アンモニウムの代わりにアンモニア水を加えた酢酸緩衝液などのアンモニウムイオンと酢酸イオンとを含む溶液を用いても、硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させることは可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の円偏光発光微粒子は、WORMメモリ、セキュリティ用ペイント、またこれらを構成要素とした認証システムに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】フェリチンの説明図
【図2】アポフェリチン中に作製された金属ナノ粒子
【図3】アポフェリチン中に作製された化合物半導体ナノ粒子
【図4】円偏光発光の説明図
【図5】実施例1の円偏光発光微粒子の蛍光スペクトル図
【図6】実施例1の円偏光発光微粒子の円偏光発光スペクトル図
【図7】円偏光発光微粒子の円偏光発光波長シフトの説明図
【図8】アポフェリチン中のCdSナノ粒子の粒径分布について(レーザ照射前)
【図9】アポフェリチン中のCdSナノ粒子の粒径分布について(レーザ照射後)
【図10】WORM型単一量子ドットメモリの概念図
【図11】WORM型単一量子ドットメモリの光読み出しの説明図
【図12】セキュリティ用ペイントとしての利用の説明図
【図13】硫化カドミウム(CdS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる処理フロー図
【図14】(a)は、イオウ源としてチオ尿素を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示す透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、(b)は、イオウ源としてチオ酢酸を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示すTEM写真である。
【図15】反応液中のアンモニア濃度を7.5〜75mMに変化させた場合の硫化カドミウム (CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものTEM写真。
【図16】硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの蛍光スペクトルを示す図
【図17】硫化カドミウム(CdS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの構造模式図
【図18】硫化亜鉛(ZnS)からなる微粒子をアポフェリチン内に形成させる処理フロー図
【図19】(a)は、イオウ源としてチオ尿素を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示す透過電子顕微鏡(TEM)写真であり、(b)は、イオウ源としてチオ酢酸を用いた場合の反応液中のアポフェリチンを示すTEM写真である。
【図20】硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの蛍光スペクトルを示す図
【図21】硫化亜鉛(ZnS)のナノ微粒子をアポフェリチン内に形成させたものの構造模式図
【符号の説明】
【0051】
1A コア部分
2A タンパク質外殻部分
1,11 コア
2,12 外殻
3,13 モノマーサブユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
籠状タンパク質内に内包された化合物半導体ナノ微粒子、
から成る円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項2】
前記籠状タンパク質は、
アポフェリチンである、
ことを特徴とする請求項1に記載の円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項3】
前記化合物半導体は、
II−VI型の化合物半導体である、
ことであることを特徴とする請求項1又は2に記載の円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項4】
前記II−VI型の化合物半導体は、
CdS又はZnSである、
ことを特徴とする請求項3に記載の円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項5】
タンパク質によって表面修飾された化合物半導体ナノ微粒子、
から成る円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項6】
前記化合物半導体は、
II−VI型の化合物半導体またはIII−V型の化合物半導体である、
ことを特徴とする請求項5に記載の円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの円偏光発光性ナノ微粒子に、
レーザ照射することにより、
円偏光発光波長を制御し得る、
ことを特徴とする円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法。
【請求項8】
前記レーザ照射により、
円偏光発光波長が長波長シフトする、
ことを特徴とする請求項7に記載の円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法。
【請求項9】
前記レーザ照射により、
発光波長が短波長シフトする、
ことを特徴とする請求項7に記載の円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法。
【請求項10】
請求項1乃至6の何れかの円偏光発光性ナノ微粒子が、
二次元的に絶縁膜層内部に配置されている、
ことを特徴とする量子ドットメモリ。
【請求項11】
請求項1乃至6の何れかの円偏光発光性ナノ微粒子、
から成るWORM型単一量子ドットメモリ。
【請求項12】
請求項1乃至6の何れかの円偏光発光性ナノ微粒子、
を含むセキュリティ用ペイント材。
【請求項1】
籠状タンパク質内に内包された化合物半導体ナノ微粒子、
から成る円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項2】
前記籠状タンパク質は、
アポフェリチンである、
ことを特徴とする請求項1に記載の円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項3】
前記化合物半導体は、
II−VI型の化合物半導体である、
ことであることを特徴とする請求項1又は2に記載の円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項4】
前記II−VI型の化合物半導体は、
CdS又はZnSである、
ことを特徴とする請求項3に記載の円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項5】
タンパク質によって表面修飾された化合物半導体ナノ微粒子、
から成る円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項6】
前記化合物半導体は、
II−VI型の化合物半導体またはIII−V型の化合物半導体である、
ことを特徴とする請求項5に記載の円偏光発光性ナノ微粒子。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの円偏光発光性ナノ微粒子に、
レーザ照射することにより、
円偏光発光波長を制御し得る、
ことを特徴とする円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法。
【請求項8】
前記レーザ照射により、
円偏光発光波長が長波長シフトする、
ことを特徴とする請求項7に記載の円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法。
【請求項9】
前記レーザ照射により、
発光波長が短波長シフトする、
ことを特徴とする請求項7に記載の円偏光発光性ナノ微粒子の波長制御方法。
【請求項10】
請求項1乃至6の何れかの円偏光発光性ナノ微粒子が、
二次元的に絶縁膜層内部に配置されている、
ことを特徴とする量子ドットメモリ。
【請求項11】
請求項1乃至6の何れかの円偏光発光性ナノ微粒子、
から成るWORM型単一量子ドットメモリ。
【請求項12】
請求項1乃至6の何れかの円偏光発光性ナノ微粒子、
を含むセキュリティ用ペイント材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−242501(P2009−242501A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88945(P2008−88945)
【出願日】平成20年3月29日(2008.3.29)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月29日(2008.3.29)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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