説明

円盤状スケール、エンコーダ装置、搬送装置、記録装置及び円盤状スケールの製造方法

【課題】回転軸への取付精度の向上及び組立性の向上を図ることができる円盤状スケール等、及び円盤状スケールの製造方法を提案する。
【解決手段】回転軸に取り付けられて回転軸の回転位置を検出するために用いられる円盤状スケール120であって、回転軸に回転力を伝達する歯車130と、回転位置検出用パターンを有するスケール部122とからなり、歯車130とスケール部122とが一体化される。歯車130を成形後に、スケール部122を成形(二色成形)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状スケール、エンコーダ装置、搬送装置、記録装置及び円盤状スケールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の記録装置では、印刷用紙等の被記録材の搬送制御(紙送り制御)をフィードバック制御により行っている。印刷用紙等の搬送量は、エンコーダにより計測され、このエンコーダからの信号により、制御装置は印刷用紙等の搬送量,搬送速度等を求めて、搬送制御が行われる。
【0003】
このようなエンコーダは、一般に、円盤状スケールと光センサとから構成される。
円盤状スケールは,光透過部と光遮断部とが交互に円周方向に印刷された回転検出用パターン(環状スリット)を有し,駆動モータの駆動軸または紙送りローラ軸に取り付けられて、これらの回転に伴い回転する。
光センサは,円盤状スケールの回転に伴って回転する回転検出用パターンの回転を検出し,これを電気信号に変換して,制御装置に送信する。
【特許文献1】特開2006−255995号公報(0026段落、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、円盤状スケールは、駆動モータの駆動軸または紙送りローラ軸等の回転軸の一端に圧入嵌合された歯車に対して両面テープ等を介して貼付されつつ、回転軸に軽圧入されている。
このため、円盤状スケールを回転軸に取り付ける際に、取付方向(裏表)を間違えて、再組立が必要となる場合がある。また、円盤状スケールが歯車に対して両面テープ等を介して貼付されているので、回転時方向に面が振れ(面ブレ)やすく、誤検出の虞がある。更に、円盤状スケールは、回転軸及び歯車に対して高精度に取り付ける必要があるので、円盤状スケールの平面度や回転軸及び歯車の軸精度等の要求精度が高く(厳しく)、これらの製造や組立(組込)に労力を要し、また高コストとなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、回転軸への取付精度の向上及び組立性の向上を図ることができる円盤状スケール、エンコーダ装置、搬送装置、記録装置及び円盤状スケールの製造方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る円盤状スケール、エンコーダ装置、搬送装置、記録装置及び円盤状スケールの製造方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
第1の発明は、回転軸に取り付けられて該回転軸の回転位置を検出するために用いられる円盤状スケールであって、前記回転軸に回転力を伝達する歯車と、回転位置検出用パターンを有するスケール部と、からなり、前記歯車と前記スケール部とが一体化されることを特徴とする。
【0008】
これにより、歯車とスケール部の間に両面テープなどを介在させる必要がないので、コスト低減を図ることができると共に、スケール部の面振れを回避することができる。
【0009】
また、前記歯車と前記スケール部が一体成形されることを特徴とする。
また、前記歯車と前記スケール部は、同一樹脂又は同一のベースレジンを含む共重合体から成形されていることを特徴とする。
【0010】
これにより、歯車とスケール部との組込み作業が不要となる。また、スケール部の誤組立がなくなるので、製造の効率化を図ることができる。
【0011】
また、前記歯車と前記スケール部の密着面には、前記密着面の略垂直方向に凹凸で円環状の接合部が形成されることを特徴とする。
また、前記接合部は、アンダーカット形状であることを特徴とする。
【0012】
これにより、歯車とスケール部の密着度が向上する。また、誤って分解してしまうことも防止できる。
【0013】
また、前記歯車は、外周面に、歯部及び該歯部と前記円盤状スケールとを離間させるスペーサが形成されることを特徴とする。
【0014】
これにより、歯車に対してスケール部を二色成形する際に、スケール部用樹脂が歯部上にはみ出して不完全な歯が形成されてしまうことを防止できる。
【0015】
また、前記スケール部は透明樹脂からなり、前記歯車と前記スケール部がレーザ溶着されることを特徴とする。
また、前記歯車と前記スケール部は、前記歯車の中心穴に対して所定の同軸度で形成された嵌合部を有することを特徴とする。
【0016】
これにより、歯車とスケール部を別個に成形した後に、組み立てる場合であって、歯車とスケール部との良好に密着させることができる。また、歯車とスケール部とを高精度に組み合わせることができる。
【0017】
第2の発明は、回転軸に取り付けられた円盤状スケールと、前記円盤状スケールに設けられた回転位置検出用パターンを検出する光センサとを有し、前記回転軸の回転位置を検出するエンコーダ装置において、前記円盤状スケールとして、第1の発明に係る円盤状スケールを用いることを特徴とする。
【0018】
これにより、回転軸の回転位置を高精度に検出することができる。
【0019】
第3の発明は、エンコーダ部からの情報に基づいて搬送量を制御する搬送装置において、前記エンコーダ部として、第2の発明に係るエンコーダ装置を用いることを特徴とする。
【0020】
これにより、被搬送物を高精度に搬送することができる。
【0021】
第4の発明は、被記録材を搬送部により搬送しつつ、記録部により前記被記録材に記録処理を施す記録装置において、前記搬送部として、第3の発明に係る搬送装置を用いることを特徴とする。
【0022】
これにより、被記録材の搬送が高精度化され、高精細な記録処理を実現することができる。
【0023】
第5の発明は、回転軸に取り付けられて該回転軸の回転位置を検出するために用いられる円盤状スケールの製造方法であって、前記回転軸に回転力を伝達する歯車を樹脂成形する第一工程と、前記歯車に対して、歯車成形樹脂よりも成形収縮率の低い樹脂により回転位置検出用パターンが形成されるスケール部を二色成形する第二工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
これにより、歯車とスケール部の間に両面テープなどを介在させる必要がないので、コスト低減を図ることができると共に、スケール部の面振れを回避することができる。
また、収縮率の高い歯車を先に形成し、その後にスケール部を二色成形するので、スケール部が歯車の収縮により悪影響(歪みの発生等)を受けることを回避できる。したがって、高精度な回転位置の検出が可能となる。
【0025】
また、第二工程において、前記回転位置検出用パターンが同時に形成されることを特徴とする。
【0026】
これにより、スケール部に対して回転位置検出用パターンを印刷等する工程が不要となり、製造効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る円盤状スケール、エンコーダ装置、搬送装置、記録装置及び円盤状スケールの製造方法の実施形態について図を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ装置の外観斜視図であり、
図2は同正面図、図3は同側断面図である。
【0028】
インクジェットプリンタIJ(以下「プリンタ」と略称する)は、印刷用紙Pを給送する給紙ユニット10、インクジェット記録ヘッド24及びキャリッジ22を備えるキャリッジユニット20、印刷用紙Pを搬送する搬送ユニット60、インクジェット記録ヘッド24のメンテナンスを行うインクシステムユニット80を備えている。
そして、搬送ユニット60の上側にキャリッジユニット20が、側方にインクシステムユニット80がそれぞれ連結し、キャリッジユニット20の背面側に給紙ユニット10が連結し、4つのユニットが合体するように構成されている。
【0029】
給紙ユニット10は、給紙ユニットフレーム12、給紙ローラ13、可動ガイド14,固定ガイド15及びホッパ16等を備える。そして、給紙ユニットフレーム12に対して、給紙ローラ13の回動軸13a、ホッパ16等が取り付けられる。
【0030】
キャリッジユニット20は、キャリッジガイド軸25、キャリッジモータ27、従動プーリ29及び用紙検出器36等を備える。また、キャリッジユニット20には、排紙フレーム30が取り付けられる。
キャリッジモータ27には、駆動プーリ28が取り付けられ、駆動プーリ28と従動プーリ29との間にキャリッジベルト26が掛架される。そして、キャリッジベルト26には、キャリッジ22に固定され、キャリッジモータ27の回動によって、キャリッジガイド軸25に沿って主走査方向に往復動するようになっている。
【0031】
搬送ユニット60は、搬送ユニットフレーム61、搬送駆動ローラ62、搬送従動ローラホルダ64、排紙駆動ローラ軸65a及び紙案内67等を備える。そして、搬送ユニットフレーム61に対して、搬送駆動ローラ62、搬送従動ローラホルダ64、排紙駆動ローラ軸65a及び紙案内67等が取り付けられる。また、搬送ユニットフレーム61には、プラテン66が形成される。
【0032】
また、搬送ユニット60は駆動モータ69を備え、この駆動モータ69により、給紙ローラ13、搬送駆動ローラ62、排紙駆動ローラ65及びインクシステムユニット80が駆動源されるようになっている。
駆動モータ69から給紙ローラ13、搬送駆動ローラ62及び排紙駆動ローラ65への動力伝達は、搬送ユニット60の側方に設けられる歯車装置90によって行われる。
一方、インクシステムユニット80への動力伝達は、排紙駆動ローラ軸65a及び不図示の歯車装置を介して行われる。
なお、歯車装置90には、搬送駆動ローラ62及び排紙駆動ローラ65の回転位置(回転角度)や回転速度を検出するエンコーダ装置100が付設され、このエンコーダ装置100の検出結果に基づいて駆動モータ69の回転量等が制御される。なお、エンコーダ装置100の詳細については、後述する。
【0033】
インクシステムユニット80は、キャップ装置、ポンプ装置及びブレードユニット(いずれも不図示)備えており、搬送ユニットフレーム61の側方に連結される。
キャップ装置は、キャリッジ22がホームポジションに移動した際に、インクジェット記録ヘッド24をキャップしてノズル面を保護する。ポンプ装置は、キャップ状態のキャップ装置に負圧を供給し、インクジェット記録ヘッド24のノズル開口からのインク吸引を行う。ブレードユニットは、キャリッジ22の往復動領域を横切る位置と往復動領域から退避する位置とを移動可能に構成され、例えば、キャリッジ22が印字領域からホームポジションに移動する際に、インクジェット記録ヘッド24のノズル面を払拭することでクリーニングを行う。
【0034】
プリンタIJの上流側(プリンタIJの後方側)に配置されるホッパ16上には、例えばA4サイズ等の印刷用紙Pが傾斜姿勢で堆積・収納される。ホッパ16は、上部に位置する回動支点(不図示)を中心に回動可能に構成されており、回動することによりその下部が給紙ローラ13に対して圧接したり、離間したりする様になっている。
また、ホッパ16上の印刷用紙Pは、ホッパ16の幅方向にスライド可能な可動ガイド14と固定ガイド15により、その側端がガイドされる。
そして、印刷用紙Pのうちの最上位のものは、ホッパ16が給紙ローラ13に対して圧接した際に、給紙ローラ13の回動動作に伴って、下流側(プリンタIJの前方側)に繰り出されるようになっている。
【0035】
給紙ローラ13は、側面視略D形の形状を有しており、回動軸13aが回動駆動されることによって回動する。そして、この給紙ローラ13は、印刷動作時にはその平坦部が印刷用紙Pに対向する状態に制御され、これによって印刷用紙Pの搬送負荷の発生を防止するようになっている。
【0036】
紙案内67は、給紙ローラ13よりも下流側下方に、略水平に配置されており、給紙ローラ13によって繰り出された印刷用紙Pの先端が紙案内67に斜めに当接し、滑らかに下流側に案内されるようになっている。
更に下流側には、回動駆動する搬送駆動ローラ62と、この搬送駆動ローラ62に圧接する搬送従動ローラ63とが設けられており、印刷用紙Pが搬送駆動ローラ62と搬送従動ローラ63とにニップされて、一定ピッチで下流側に搬送される。
なお、搬送従動ローラ63は、搬送従動ローラホルダ(不図示)によって、常に搬送駆動ローラ62に対して圧接するように付勢される。
【0037】
搬送駆動ローラ62の下流には、プラテン66及びインクジェット記録ヘッド24が上下方向に対向して配設されており、印刷用紙Pが搬送駆動ローラ62の回動によってインクジェット記録ヘッド24の下へ搬送され、更にプラテン66によって下から支持されるようになっている。
インクジェット記録ヘッド24は、インク・カートリッジ23を搭載するキャリッジ22の底部に設けられている。そして、キャリッジ22が主走査方向に延びるキャリッジガイド軸25にガイドされながら主走査方向に往復動する際に、インクジェット記録ヘッド24は、印刷用紙Pに向けてブラック、イエロー、シアン、マゼンダ等のインクを吐出する。
なお、インク・カートリッジ23は、例えば、4つのカートリッジ(すなわち、4色のインク(ブラック、イエロー、シアン、マゼンダ)がそれぞれ別個独立に充填された容器)からなり、それぞれが別個独立に交換可能となっている。
【0038】
インクジェット記録ヘッド24よりも下流には、排紙駆動ローラ65と、排紙従動ローラ31と、排紙補助ローラ32とが配設される。排紙駆動ローラ65は、主走査方向に延びる排紙駆動ローラ軸65aに対して複数個取り付けられる。排紙従動ローラ31は、排紙駆動ローラ65に軽く圧接することによって従動回動するように設けられている。
したがって、インクジェット記録ヘッド24によって印刷処理された印刷用紙Pは、排紙駆動ローラ65と排紙従動ローラ31とによってニップされた状態で排紙駆動ローラ65が回動することにより、下流側に排出される。
排紙補助ローラ32は、排紙従動ローラ31のやや上流側に設けられ、印刷用紙Pをやや下方に押しつけて、印刷用紙Pのプラテン66からの浮き上がりを防止する。これにより、印刷用紙Pとインクジェット記録ヘッド24との距離を規制している。
【0039】
図4は、本発明の実施形態に係るエンコーダ装置の平面図、図5は同側面図である。図6は、スケール部の回転検出用パターンを示す図である。
歯車装置90は、搬送ユニットフレーム61に設けられている。搬送ユニットフレーム61には搬送駆動ローラ62が軸支され、この搬送駆動ローラ62の軸端に搬送駆動ローラ歯車130が設けられている。
搬送駆動ローラ62の後方下側には、駆動モータ69が、その回動軸を搬送駆動ローラ62の軸方向と平行にした状態で搬送ユニットフレーム61に固定されている。
【0040】
駆動モータ69の回動軸には、ピニオン歯車92が取り付けられ、このピニオン歯車92と搬送駆動ローラ歯車130とが噛み合っている。なお、ピニオン歯車92は、例えば、真鍮(黄銅)により形成される。
また、排紙駆動ローラ軸65aの軸端には、排紙駆動ローラ歯車94が設けられている。そして、排紙駆動ローラ歯車94と搬送駆動ローラ歯車130の間には、これら2つの歯車94,130にそれぞれ噛み合う伝達歯車96が設けられている。
これにより、駆動モータ69が回動すると、搬送駆動ローラ62が回動すると同時に、排紙駆動ローラ軸65aが回動するようになっている。
搬送駆動ローラ歯車130、排紙駆動ローラ歯車94、伝達歯車96は、樹脂成形される。
【0041】
エンコーダ装置100は、搬送ユニットフレーム61に取り付けられたセンサ部110と、円盤状スケール120等から構成されている。
センサ部110は、センサホルダ111、フォトインタラプタ112、基板118等を備えている。基板118には、外部への電気信号の送信用端子及び外部からの電力供給用端子を有するコネクタ119が設けられていて、このコネクタ119を介して不図示の制御部と接続される。
【0042】
フォトインタラプタ112は、図5に示すように、光を放射する発光部112a及び発光部112aの放射光を受光する受光部112bとから構成される。そして、両者は間隔を設けて対向配置され、この間隔に円盤状スケール120(スケール部122)の外周部が挟入するようになっている。
そして、発光部112aから受光部112bに向けて放射される光の光軸は、円盤状スケール120(スケール部122)の外周部を垂直に貫く様に設定される。
【0043】
円盤状スケール120は、円板形のスケール部122と、上述した搬送駆動ローラ歯車130とが、一体成形されたものである。
スケール部122は、図6に示すように、外周部に光透過部126aと光遮断部126bとが円周方向に一定ピッチで交互に繰り返し形成されてなる回転検出用パターン(スリットパターン)123を有している。そして、スケール部122は、図5に示す様に、フォトインタラプタ112の発光部112aと受光部112bとに接触しないように、フォトインタラプタ112に挟入され、更に、回転検出用パターン126がフォトインタラプタ112の光軸上に位置するように取り付け位置が調整されている。
【0044】
これにより、円盤状スケール120(スケール部122)が搬送駆動ローラ62(搬送駆動ローラ歯車130)の回動に伴って回転すると、回転検出用パターン126は、発光部112aから受光部112bに向かう光の透過と遮断とを繰り返す。これにより、フォトインタラプタ112から、ONとOFFとを交互に繰り返す矩形波の信号が、制御部に向けて出力される。
そして、制御部は、この矩形波の個数から搬送駆動ローラ62の回動量を求めると同時に、矩形波の繰り返し周期から搬送駆動ローラ62の回動速度を求め、必要な印刷制御(印刷用紙Pの搬送制御)を行うようになっている。
【0045】
図7は円盤状スケール120の構成を示す斜視図、図8は同断面図である。
円盤状スケール120は、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130とからなり、これらが一体成形されている。
【0046】
搬送駆動ローラ歯車130は、自己潤滑性の高い樹脂材料、例えば、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド等により成形される。
搬送駆動ローラ歯車130には、中心穴131aを有する円管形の中心軸部131と、外周面に形成された歯部132とが形成される。そして、搬送駆動ローラ歯車130は、高い剛性を維持しつつ軽量化を図るため、中心軸部131と歯部132との間は、円形平板部133,134により連結される。
【0047】
そして、円形平板部133,134の間には、円管形の嵌合部135が形成される。この円管形の嵌合部135の外周面135aは、中心穴131aに対して高い同軸度を有するように形成されており、スケール部122の中心穴124が嵌合できるようになっている。
また、円形平板部134と歯部132との間には、スケール部122との密着度を高めるために設けられたアンカー凹部136が形成される。アンカー凹部136は、円形平板部133,134に対して略垂直な方向に掘り込まれた円環状の溝であって、その断面形状はアンダーカット形状となっている。すなわち、アンカー凹部136の開口側は底面側に比べて狭く形成されている。そして、このアンカー凹部136には、スケール部122のアンカー凸部125が隙間なく嵌め込まれることで、搬送駆動ローラ歯車130とスケール部122とが分解不可能な状態に連結される。
【0048】
搬送駆動ローラ歯車130の外周面には、歯部132の他に、スケール部122に密着するスペーサ137が形成される。スペーサ137は、歯部132とスケール部122とを離間するために設けられる部位である。したがって、例えば、溝形状(歯部132よりも小径な部位)であってもよい。
このスペーサ137が形成されることで、搬送駆動ローラ歯車130に対してスケール部122を二色成形法により一体成形した場合に、スケール部122の形成材料が歯部132に乗り上げる(回り込み)ことを防止できる。
【0049】
スケール部122は、光透過率が高い樹脂材料、例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン等から成形される。好ましくは、搬送駆動ローラ歯車130と同一の樹脂又は同一のベースレジンを含む共重合体により成形される。
スケール部122は、中心穴124を有する円板形の本体123と、本体123に対して略垂直な方向に突出する円環状のアンカー凸部125とからなる。
そして、中心穴124が搬送駆動ローラ歯車130の嵌合部135に嵌合し、本体123が円形平板部134に密着し、更にアンカー凸部125がアンカー凹部136に嵌め込まれるように成形される。
【0050】
スケール部122の本体123の外周部は、搬送駆動ローラ歯車130よりも外側(外周側)に突出するよう(大径)に形成される。そして、本体123の外周側の側面には、回転検出用パターン126(光透過部126a、光遮断部126b)が形成される。回転検出用パターン126(光透過部126a、光遮断部126b)は、スケール部122の成形時に同時に成形される。
【0051】
搬送駆動ローラ歯車130とスケール部122は、二色成形法(ダブルモールド法)により一体成形される。まず、搬送駆動ローラ歯車130が成形される。
二色成形法(ダブルモールド法)は、異材質(材料)同士を組み合わせて一体に成形する方法であって、一次側となる部分(搬送駆動ローラ歯車130)を成形した後に、同一金型内で二次側となる部分(スケール部122)を、一次側と一体で成形させるものである。
【0052】
搬送駆動ローラ歯車130を先に成形するのは、搬送駆動ローラ歯車130の成形収縮率がスケール部122よりも大きいからである。すなわち、搬送駆動ローラ歯車130の成形材料の成形収縮率は、例えば、約2%程度であり、スケール部122の成形材料の成形収縮率は、例えば、約0.5%である。このため、スケール部122を成形した後に、成形収縮率の大きい搬送駆動ローラ歯車130を成形すると、スケール部122が搬送駆動ローラ歯車130の収縮によって歪んでしまう。したがって、上述したように、成形収縮率の大きい搬送駆動ローラ歯車130を先に成形し、その後に成形収縮率の小さいスケール部122を成形することで、スケール部122に発生する歪を最小限に抑えることができる。
したがって、センサ部110による回転検出用パターン126の検出の安定化(誤検出の低減)が図られる。
【0053】
このように、円盤状スケール120(スケール部122、搬送駆動ローラ歯車130)を一体成形(一体化)することで、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130とを接着する両面テープ等が廃止できる。また、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130の誤組もなくなるので、製造効率の向上を図ることができる。
更に、スケール部122が搬送駆動ローラ歯車130に対して密着しているので、スケール部122を回転させた際の面振れが抑えられる。したがって、センサ部110による回転検出用パターン126の検出の安定化が図られる。
【0054】
特に、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130とを、凹凸で円環状の接合部、すなわち、アンカー凸部125とアンカー凹部136とにより接合することで、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130の密着度を高めている。しかも、アンカー凸部125とアンカー凹部136は、その断面形状がアンダーカット形状となっているので、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130とが分解不可能な状態に強固に接合される。
なお、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130とを、異なる収縮度の材料により成形することで、収縮による締め付け効果によりスケール部122と搬送駆動ローラ歯車130の密着度を高めることができる。
【0055】
アンカー凸部125及びアンカー凹部136は、できるだけ中心穴131a,中心穴124に近い(内径側)に配置されることが望ましい。回転検出用パターン126に対する歪の影響を少なくするためである。つまり、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130の密着度の高い部分を、歪量の小さい内径側に配置することで、外周側に配置された回転検出用パターン126への影響度を小さくすることが望ましい。
【0056】
なお、上記実施形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明はこれに限定されるものではない。特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0057】
例えば、上述した実施形態では、円盤状スケール120(スケール部122、搬送駆動ローラ歯車130)を一体成形する場合について説明したが、これに限らない。スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130とを、別々に成型した後に組み立てることで、一体化してもよい。
この場合には、まず、搬送駆動ローラ歯車130の嵌合部135(外周面135a)に対してスケール部122の中心穴124を嵌め合わせる。次いで、スケール部122の本体123を搬送駆動ローラ歯車130の円形平板部134に密着させた状態で、本体123側からレーザ光を照射して、本体123と円形平板部134とを溶着する。このようにして、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130とを一体化して円盤状スケール120を構成することができる。また、搬送駆動ローラ歯車130の嵌合部135とスケール部122の中心穴124を嵌め合わせているので、スケール部122と搬送駆動ローラ歯車130の組み立ても高精度に行うことができる。
なお、アンカー凸部125及びアンカー凹部136の形状は、オーバーカット形状とする。
【0058】
また、上述した実施形態では、スケール部122の本体123の外周側側面に形成される回転検出用パターン126が、スケール部122の成形時に同時成形される場合について説明したが、これに限らない。
回転検出用パターン126(光遮断部126b)を印刷法により形成する場合には、スケール部122の成形後に、回転検出用パターン126を形成してもよい。
【0059】
また、円盤状スケール120(スケール部122)は、光透過型の場合に限らず、光反射型の場合であってもよい。
また、スケール部122が搬送駆動ローラ歯車130よりも大径の場合に限らず、搬送駆動ローラ歯車130よりも小径の場合であってもよい。
【0060】
上述した実施形態では、エンコーダ装置100は、インクジェットプリンタIJにおいて印刷用紙Pを搬送する搬送ユニット60に用いられる場合について説明したが、これに限らない。各種搬送装置等において、回転軸の回転位置や回転速度を検出するエンコーダ装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ装置の外観斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタ装置本体の正面図である。
【図3】インクジェットプリンタ装置本体の側断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るエンコーダ装置の平面図である。
【図5】エンコーダ装置の側面図である。
【図6】スケール部の回転検出用パターン(スリットパターン)を示す図である。
【図7】円盤状スケールの斜視図である。
【図8】円盤状スケールの断面図である。
【符号の説明】
【0062】
IJ…インクジェットプリンタ(記録装置)、 60…搬送ユニット(搬送装置、搬送部)、 62…搬送駆動ローラ(回転軸)、 100…エンコーダ装置(エンコーダ部)、 110…センサ部(光センサ)、 120…円盤状スケール、 122…スケール部、 123…本体(密着面)、 124…中心穴(嵌合部)、 125…アンカー凸部(接合部)、 126…回転検出用パターン、 130…搬送駆動ローラ歯車、 131a…中心穴、 132…歯部、 134…円形平板部(密着面)、 135…嵌合部、 135a…外周面、 136…アンカー凹部(接合部)、 137…スペーサ、 P…印刷用紙(被記録材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けられて該回転軸の回転位置を検出するために用いられる円盤状スケールであって、
前記回転軸に回転力を伝達する歯車と、回転位置検出用パターンを有するスケール部と、からなり、前記歯車と前記スケール部とが一体化されることを特徴とする円盤状スケール。
【請求項2】
前記歯車と前記スケール部が一体成形されることを特徴とする請求項1に記載の円盤状スケール。
【請求項3】
前記歯車と前記スケール部は、同一樹脂又は同一のベースレジンを含む共重合体から成形されていることを特徴とする請求項2に記載の円盤状スケール。
【請求項4】
前記歯車と前記スケール部の密着面には、前記密着面の略垂直方向に凹凸で円環状の接合部が形成されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の円盤状スケール。
【請求項5】
前記接合部は、アンダーカット形状であることを特徴とする請求項4に記載の円盤状スケール。
【請求項6】
前記歯車は、外周面に、歯部及び該歯部と前記円盤状スケールとを離間させるスペーサが形成されることを特徴とする請求項2から請求項5のうちいずれか一項に記載の円盤状スケール。
【請求項7】
前記スケール部は透明樹脂からなり、
前記歯車と前記スケール部がレーザ溶着されることを特徴とする請求項1に記載の円盤状スケール。
【請求項8】
前記歯車と前記スケール部は、前記歯車の中心穴に対して所定の同軸度で形成された嵌合部を有することを特徴とする請求項7に記載の円盤状スケール。
【請求項9】
回転軸に取り付けられた円盤状スケールと、前記円盤状スケールに設けられた回転位置検出用パターンを検出する光センサとを有し、前記回転軸の回転位置を検出するエンコーダ装置において、
前記円盤状スケールとして、請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の円盤状スケールを用いることを特徴とするエンコーダ装置。
【請求項10】
エンコーダ部からの情報に基づいて搬送量を制御する搬送装置において、
前記エンコーダ部として、請求項9に記載のエンコーダ装置を用いることを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
被記録材を搬送部により搬送しつつ、記録部により前記被記録材に記録処理を施す記録装置において、
前記搬送部として、請求項10に記載の搬送装置を用いることを特徴とする記録装置。
【請求項12】
回転軸に取り付けられて該回転軸の回転位置を検出するために用いられる円盤状スケールの製造方法であって、
前記回転軸に回転力を伝達する歯車を樹脂成形する第一工程と、
前記歯車に対して、歯車成形樹脂よりも成形収縮率の低い樹脂により回転位置検出用パターンが形成されるスケール部を二色成形する第二工程と、
を有することを特徴とする円盤状スケールの製造方法。
【請求項13】
第二工程において、前記回転位置検出用パターンが同時に形成されることを特徴とする請求項12に記載の円盤状スケールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−224348(P2008−224348A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61446(P2007−61446)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】