説明

再利用可能プラスチック生産方法及び再利用可能プラスチック生産装置

【課題】 予め乾式選別手段によりフィルム状物、銅線、水に濡れると見掛け比重が変化する素材を除去しておき、比重を利用した湿式選別手段を用いて純度の高い再利用可能プラスチックを生産できる再利用可能プラスチック生産方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 この発明に係る再利用可能プラスチック生産方法は、フィルム状物、銅線、水に濡れると見掛け比重が変化する材料を含むプラスチック系残さ物から、少なくともフィルム状物、銅線、水に濡れると見掛け比重が変化する材料を乾式選別手段によって予め除去した後に、湿式選別手段によりプラスチックの比重差による材種選別を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、家電機器、OA機器、自動車などの混合破砕物から、鉄、銅、アルミなどの大半の金属を回収した後のプラスチック系残さ物(いわゆるシュレッダーダスト)から、再利用可能なプラスチックを生産する再利用可能プラスチック生産方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の再利用可能プラスチック生産方法においては、比重差を利用した湿式選別手段のみによって構成されていた(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【特許文献1】特開2002−192138号公報
【特許文献2】特開2001−321691号公報
【特許文献3】特開2000−246735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラスチック系残さ物には、2種類以上の再生利用可能なプラスチックに加えて、コンデンサーのアルミ箔や型式表示に使われるプラスチックシールや金属シールなどのフィルム状物、被覆線や巻線などの銅線、紙片、木片、断熱材やクッション材に使われるウレタンフォームなど水に濡れると見掛け比重が変化する素材などの異物が含まれている。
【0004】
複数の再利用可能なプラスチックの混合物を、その比重差を利用した湿式選別手段を用いて種類毎に分離回収する場合に、フィルム状物は重量に対し表面積が大きく湿式選別時に水流の影響を強く受けるため比重による除去が難しい。
銅線は細長くて軽いためプラスチックに絡みついて比重による除去が難しい。
吸水性物質は水を含むと見掛け比重が変化するため湿式選別手段による除去が難しいため、再利用可能なプラスチックの中に異物として混入してしまう。
これらの異物は、プラスチックの機械強度などの物性を低下させたり、熱で溶けない物は再生ペレットに加工する際に押出機のメッシュを詰らせ生産性を著しく低下させたりするなどして再利用の障害になっていた。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、予め乾式選別手段によりフィルム状物、銅線、水に濡れると見掛け比重が変化する素材を除去しておき、比重を利用した湿式選別手段を用いて純度の高い再利用可能プラスチックを生産できる再利用可能プラスチック生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る再利用可能プラスチック生産方法は、フィルム状物、銅線、水に濡れると見掛け比重が変化する材料を含むプラスチック系残さ物から、少なくともフィルム状物、銅線、水に濡れると見掛け比重が変化する材料を乾式選別手段によって予め除去した後に、湿式選別手段によりプラスチックの比重差による材種選別を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る再利用可能プラスチック生産方法は、上記構成により、比重で除去が難しいフィルム状物、銅線、吸水性物質を乾式選別手段により精度良く除去できるため、比重を利用した湿式選別手段を用いて純度の高い再利用可能プラスチックを生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜9は実施の形態1を示す図で、図1は家電機器やOA機器起源のプラスチック系残さ物から再利用可能なプラスチックを回収する回収方法を示す図、図2は粉砕機5の構成を示す図、図3は風力選別機6の構成を示す図、図4は高磁力磁選機の構成を示す図、図5は篩い機4の構成を示す図、図6は風力選別機2の構成を示す図、図7は風力選別機2を用いた実験結果の一例を示す図、図8はエアテーブル3の構成を示す図、図9は風力選別とエアテーブルを併用した場合の実験結果の一例を示す図である。
【0009】
図1において、プラスチック系残さ物の粒径は、通常5〜300mmと大きい。エアテーブルに最適な粒度範囲が概ね15mm以内であることから、粉砕機5により粒度を15mm以下に調節する。
【0010】
粉砕機5は、例えば図2に示すように、回転刃5a、固定刃5bを有し、投入された原料をこの回転刃5a、固定刃5bにより粉砕し、粒度調整用の排出スクリーン5cの穴5dから粉砕物を排出するもので、排出スクリーン5cの穴径によって粒度が調節可能である。
【0011】
しかしながら、家電製品やOA機器をリサイクルするプロセスでは金属を純度良く回収するように調整されているため、プラスチック系残さ物には回収されなかった金属が含まれている。
【0012】
一般的にプラスチックを粉砕するための粉砕機は高速回転で鋭利な刃を持つため、ボルト、ナット、シャフトなどの2mmを超えるような厚みを持つ金属や家電製品やOA機器をリサイクルするプロセスで使われている通常の磁力選別機では回収の難しい弱磁性のステンレス板のような硬い金属を粉砕すると、刃や粒度調節用のスクリーンを破損したり著しく消耗したりするため、粉砕機の前に金属除去手段を備える。
【0013】
ほとんどの金属はプラスチックの比重が1前後であるのに比べ、アルミで2.7、鉄で7.8、銅で8.9とかなり大きいため、図3に示す風力選別機6により除去が可能である。風力選別機6は、風速が約20m/sのフード6aへ、プラスチック残さを投入口6bから投入して軽量物(プラスチック)と重量物(金属)に選別する。
【0014】
しかし、ステンレス板のように重さの割に表面積が大きいと風の流れに対して抵抗を受けやすく、プラスチックと共に風の流れの方向に飛ばされるため除去できない場合がある。このため風力選別機6とステンレスのような弱磁性金属でも分別が可能なように磁束密度6000ガウス以上の磁石を備えた図4に示すような高磁力選別機7を併用することで粉砕に適さない金属をさらに高精度に除去できるように構成する。
【0015】
高磁力選別機7は、ベルトコンベア7aをマグネットプーリー7b(磁力が6000Gauss)で駆動して、ベルトコンベア7a上のプラスチック残さをマグネットプーリー7bにて、先にベルトコンベア7aから落下する非磁性物(プラスチック)と、次にベルトコンベア7aから落下する磁性物(鉄、ステンレス)とに選別して、これらを仕切板7cで仕切る。ベルトコンベア7aに残る磁性物(鉄、ステンレス)はスクレーパ7dにより除去される。
【0016】
金属の中でも特に銅線は、家電製品やOA機器から主として金属を回収するリサイクルプロセスで一般的に使われている磁力選別や渦電流選別機などでは分別ができない。また銅線は細長く大きさの割に軽くまたプラスチックにからみつきやすいため風力選別機6ではプラスチックと共に風の流れの方向に飛ばされるため除去できない。
【0017】
よって粉砕機5により粉砕されたプラスチック系残さ物には、粉砕により短く切断された銅線が多く含まれることになる。しかし、家電製品やOA機器に使われている銅線は大部分が低圧の弱電線であり線径は3mm以内であることから、粉砕の後、図5に示すようなスクリーンの穴径が3〜4mmの篩い機4を通して大部分の銅線をふるい落とすことができる。
【0018】
図5に示すように、篩い機4では、穴径4mmのスクリーンに振動を与えながら原料を投入して篩い、細粒(4mm以下、銅線等)と粗粒(4mm以上)に分ける。
【0019】
次に、プラスチック系残さから比重を利用した湿式選別手段1を用いて再生利用可能なプラスチックを回収する際に湿式選別手段1では分別除去の困難なコンデンサーのアルミ箔や型式表示に使われるプラスチックシールや金属シールなどのフィルム状物、被覆線や巻線などの銅線、紙片、木片、断熱材やクッション材に使われるウレタンフォームなど水に濡れると見掛け比重が変化する素材を、あらかじめ乾式手段によって除去する。
【0020】
初めに軽くて表面積が大きいフィルム状物や紙片およびクッション材やウレタンフォームの中でも見掛け比重が極めて小さいものを図6に示すような風力選別機2により除去する。
【0021】
風力選別機2は図6に示すように、送風機によりフードに風を送り、フードにフィーダから投入された原料の中、重量物はフード内で下方に落下し、軽質物は風により上方に向かいやがて風速の低い領域にて下方に落下して選別される。
【0022】
図7に風力選別機2を用いた実験結果の一例を示すが、篩い機4でφ4スクリーンをオーバーした風力選別前の材料に含まれる比重が0.8以下の軽質物の量は重量比で0.43%であったが、風力選別機2を通した後の材料に含まれる軽質物は0.21%であった。軽質物除去率は、約50%である。
【0023】
これは木片や、硬めのクッション材やウレタンフォームなど見掛け比重が0.1〜0.8程度と比較的大きい軽質物が風力選別では精度良く除去できないためである。このような物を除去するために図8に示すようなエアテーブル3を併用する。
【0024】
図8に示すように、エアテーブル3では比重が0.1以下の極めて軽い物はテーブル上で風に吹かれて舞い上がり挙動が安定しないが、比重が0.1以上であれば比重差により精度良く軽質物を分離することができる。
【0025】
従って、風力選別機2の後にエアテーブル3を配置することにより比重が0.8以下の軽質物を精度良く除去できる。図9に風力選別とエアテーブルを併用した場合の実験結果の一例を示す。風力選別後の材料に含まれる比重0.8以下の軽質物の含有量を100とした場合のエアテーブル3後の軽質物含有量は1.34で、除去率は、98.6%と極めて高い。風力選別とエアテーブルを組み合わせることにより除去率99.3%とほぼ完全に軽質物を除去できる。
【0026】
さらにエアテーブル3が図8に示すような構造の場合、重比重物として残存する銅線を同時に除去することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態1を示す図で、家電機器やOA機器起源のプラスチック系残さ物から再利用可能なプラスチックを回収する回収方法を示す図である。
【図2】実施の形態1を示す図で、粉砕機5の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1を示す図で、風力選別機6の構成を示す図である。
【図4】実施の形態1を示す図で、高磁力磁選機の構成を示す図である。
【図5】実施の形態1を示す図で、篩い機4の構成を示す図である。
【図6】実施の形態1を示す図で、風力選別機2の構成を示す図である。
【図7】実施の形態1を示す図で、風力選別機2を用いた実験結果の一例を示す図である。
【図8】実施の形態1を示す図で、エアテーブル3の構成を示す図である。
【図9】実施の形態1を示す図で、風力選別とエアテーブルを併用した場合の実験結果の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 湿式選別手段、2 風力選別機、3 エアテーブル、4 篩い機、5 粉砕機、5a 回転刃、5b 固定刃、5c 排出スクリーン、5d 穴、6 風力選別機、6a フード、6b 投入口、7 高磁力選別機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状物、銅線、水に濡れると見掛け比重が変化する材料を含むプラスチック系残さ物から、少なくとも前記フィルム状物、前記銅線、前記水に濡れると見掛け比重が変化する材料を乾式選別手段によって予め除去した後に、湿式選別手段によりプラスチックの比重差による材種選別を行うことを特徴とする再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項2】
前記乾式選別手段として、風力選別とエアテーブルを併用することを特徴とする請求項1記載の再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項3】
前記乾式選別手段として、前記風力選別の後に前記エアテーブルを配置することを特徴とする請求項2記載の再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項4】
前記乾式選別手段として、前記風力選別および前記エアテーブルの前に篩いを行うことを特徴とする請求項2記載の再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項5】
前記乾式選別の前に、粉砕機による粉砕を行うことを特徴とする請求項1記載の再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項6】
前記粉砕の前に粉砕に適さない金属を除去することを特徴とする請求項5記載の再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項7】
前記金属除去に風力選別と高磁力選別を併用することを特徴とする請求項6記載の再利用可能プラスチック生産方法。
【請求項8】
フィルム状物、銅線、水に濡れると見掛け比重が変化する材料を含むプラスチック系残さ物から、少なくとも前記フィルム状物、前記銅線、前記水に濡れると見掛け比重が変化する材料を予め除去する乾式選別手段と、
この乾式選別手段によって選別されたプラスチックを比重差による材種選別を行う湿式選別手段とを備えたことを特徴とする再利用可能プラスチック生産装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−159052(P2006−159052A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352167(P2004−352167)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】