説明

冷却システムおよびそれを備えたハイブリッド車両

【課題】内燃機関および電気システムを効率的に冷却可能な冷却システムを提供する。
【解決手段】ラジエータ52は、エンジン系冷却系統および電気系冷却系統に流される冷媒を冷却する。可動仕切り弁54は、ラジエータ52を領域56と領域58とに仕切る。可動仕切り弁54は、ECU30からの制御信号CNTL1に応じて作動し、領域56と領域58との比率を変えることができる。すなわち、ECU30からの制御信号CNTL1に応じて可動仕切り弁54の仕切り位置が移動することによって、エンジン系冷却系統の冷媒量と電気系冷却系統の冷媒量との比率が変化する。その結果、エンジン系冷却系統の冷却能力と電気系冷却系統の冷却能力とのバランスが変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関および電動機を動力源として搭載するハイブリッド車両の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年ますます高まりつつある省エネ・環境問題を背景に、ハイブリッド車両(Hybrid Vehicle)が大きく注目されている。ハイブリッド車両は、従来のエンジンに加え、直流電源とインバータとインバータによって駆動されるモータとを動力源とする車両である。すなわち、エンジンを駆動することにより動力源を得るとともに、直流電源からの電圧をインバータによって交流電圧に変換し、その変換された交流電圧によりモータを回転させることによってさらに動力源を得るものである。
【0003】
このようなハイブリッド車両においては、エンジンのほか、インバータやモータなどの電気システムについても、その動作および性能を維持するために冷却する必要がある。
【0004】
特開2002−227644号公報(特許文献1)は、このようなハイブリッド車両における冷媒システムを開示する。この冷媒システムにおいては、ラジエータを通過した冷媒は、途中で分岐されてエンジンとモータとに供給され、または、モータに供給された後エンジンに供給される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−227644号公報
【特許文献2】特開2002−276364号公報
【特許文献3】特開平11−107748号公報
【特許文献4】特開2004−218600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド車両においては、直流電源の充電状態(State of Charge:SOC)や車両の走行状態に応じてエンジンおよびモータの負荷バランスが変化する。すなわち、直流電源のSOCが高いときは、エンジンを停止させてモータのみで走行し、SOCが低下したときや車両要求パワーが大きいときは、エンジンを駆動して直流電源を充電し、あるいは車両要求パワーを確保する。
【0006】
したがって、ハイブリッド車両においては、直流電源のSOCや車両の走行状態に応じて、エンジンとモータおよびインバータから成る電気システムとにそれぞれ要求される冷却性も変化する。
【0007】
特に、車両外部の電源を用いて直流電源を充電可能なハイブリッド車両においては、外部充電機能を有していないハイブリッド車両に比べて容量の大きい直流電源が搭載され、エンジンを停止させてモータのみで走行する割合が高い。したがって、モータおよびインバータから成る電気システムに高い冷却性が要求される一方、エンジンの停止期間は長くなり、その結果、エンジンおよび電気システムに要求される冷却性のバランスが大きく変化し得る。
【0008】
しかしながら、特開2002−227644号公報に開示された冷媒システムの構成では、エンジンおよび電気システムに要求される冷却性の変化に応じてエンジンおよび電気システムの冷却能力のバランスを変化させることはできない。したがって、上記の冷媒システムでは、エンジンおよび電気システムのいずれか一方が過冷却となり、必ずしも効率的な冷却が実現されているとはいえない。
【0009】
そこで、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、内燃機関および電気システムを効率的に冷却可能な冷却システムを提供することである。
【0010】
また、この発明の別の目的は、内燃機関および電気システムを効率的に冷却可能な冷却システムを備えたハイブリッド車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、冷却システムは、内燃機関および電動機を動力源として搭載するハイブリッド車両の冷却システムである。そして、冷却システムは、内燃機関を冷却するための第1の冷却系統と、電動機と電動機を駆動する駆動装置とを含む電気システムを冷却するための第2の冷却系統と、第1の冷却系統に流される冷媒と第2の冷却系統に流される冷媒とを仕切り、かつ、その仕切位置が移動することによって第1の冷却系統の冷媒量と第2の冷却系統の冷媒量との比率を変更可能なように構成された可動仕切装置と、内燃機関および電気システムの各々に要求される冷却性に応じて可動仕切装置の仕切位置を制御する制御装置とを備える。
【0012】
好ましくは、制御装置は、内燃機関の動作状態に基づいて仕切位置を制御する。
また、好ましくは、制御装置は、内燃機関を停止して電動機のみを使用する第1の走行モード(EV走行モード)で走行しているか、それとも内燃機関および電動機を使用する第2の走行モード(HV走行モード)で走行しているかに基づいて仕切位置を制御する。
【0013】
好ましくは、冷却システムは、第1の冷却系統に流される冷媒の温度を検出する第1の温度検出装置と、第2の冷却系統に流される冷媒の温度を検出する第2の温度検出装置とをさらに備える。制御装置は、第1および第2の温度検出装置によって検出された冷媒温度に基づいて仕切位置をさらに制御する。
【0014】
好ましくは、冷却システムは、電動機に供給される電力を蓄える蓄電装置をさらに備える。制御装置は、蓄電装置の充電状態とハイブリッド車両の要求パワーとに基づいて仕切位置をさらに制御する。
【0015】
好ましくは、冷却システムは、第1および第2の冷却系統に接続され、第1および第2の冷却系統に流される冷媒を冷却する冷却器をさらに備える。可動仕切装置は、冷却器内に設けられ、冷却器内において第1の冷却系統に流される冷媒と第2の冷却系統に流される冷媒とを仕切り、制御装置からの指令に従ってその仕切位置が移動することにより比率を変更する。
【0016】
好ましくは、冷却システムは、制御装置からの指令に応じた流量の冷媒を第1の冷却系統に循環させる第1のポンプと、制御装置からの指令に応じた流量の冷媒を第2の冷却系統に循環させる第2のポンプとをさらに備える。制御装置は、内燃機関および電気システムの各々に要求される冷却性に応じて可動仕切装置の仕切位置ならびに第1および第2のポンプの各駆動力の少なくとも1つを制御する。
【0017】
また、この発明によれば、ハイブリッド車両は、車両の駆動力を発生する内燃機関および電動機と、電動機を駆動する駆動装置と、上述したいずれかの冷却システムとを備える。
【0018】
好ましくは、ハイブリッド車両は、電動機に電力を供給する蓄電装置を車両外部の電源を用いて充電可能な充電手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0019】
この発明においては、可動仕切装置は、内燃機関を冷却するための第1の冷却系統に流される冷媒と電気システムを冷却するための第2の冷却系統に流される冷媒とを仕切る。また、可動仕切装置は、仕切位置が移動することによって第1の冷却系統の冷媒量と第2の冷却系統の冷媒量との比率を変更することができる。そして、制御装置は、内燃機関および電気システムの各々に要求される冷却性に応じて可動仕切装置の仕切位置を制御するので、内燃機関および電気システムに要求される冷却性の変化に応じて第1の冷却系統の冷媒量と第2の冷却系統の冷媒量との比率が制御され、その結果、内燃機関および電気システムの冷却能力のバランスが変化する。
【0020】
したがって、この発明によれば、内燃機関および電気システムを効率的に冷却することができる。その結果、冷却システムを小型化することができる。
【0021】
また、この発明においては、内燃機関が不使用状態から使用状態に切替わるとき、第1の冷却系統の冷媒量の比率を高めることによって、第2の冷却系統において暖められた冷媒の一部を第1の冷却系統に用いることができる。したがって、この発明によれば、内燃機関を早期に暖機することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1によるハイブリッド車両のパワートレーンを示すブロック図である。図1を参照して、ハイブリッド車両10は、蓄電装置Bと、インバータ12,14と、モータジェネレータMG1,MG2と、ECU30と、エンジンENGと、動力分割機構16と、リダクションギヤ18と、ドライブシャフト20と、駆動輪FR,FLとを備える。また、ハイブリッド車両10は、AC/DCコンバータ22と、コネクタ24とをさらに備える。
【0024】
動力分割機構16は、エンジンENGとモータジェネレータMG1,MG2とに結合されてこれらの間で動力を分配する。たとえば、動力分割機構16としては、サンギヤ、プラネタリキャリヤおよびリングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を用いることができる。そして、この3つの回転軸がエンジンENGおよびモータジェネレータMG1,MG2の各回転軸にそれぞれ接続され、モータジェネレータMG2の回転軸がリダクションギヤ18によってドライブシャフト20に結合される。
【0025】
そして、モータジェネレータMG1は、エンジンENGによって駆動される発電機として動作し、かつ、エンジンENGの始動を行ない得る電動機として動作するものとしてハイブリッド車両10に組込まれ、モータジェネレータMG2は、駆動輪FR,FLを駆動する電動機としてハイブリッド車両10に組込まれる。
【0026】
蓄電装置Bは、充放電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池から成る。蓄電装置Bは、インバータ12,14へ直流電力を供給する。また、車両が走行モードのとき、蓄電装置Bは、エンジンENGの出力を用いてモータジェネレータMG1により発電された電力および回生制動時にモータジェネレータMG2により発電された電力によって充電される。さらに、車両が停止モードのとき、蓄電装置Bは、車両外部の商用電源26から供給される電力によって充電される。
【0027】
なお、「走行モード」は、図示されないイグニッションキー(または車両システムを起動/停止するためのパワースイッチ、以下同じ。)がオン状態であって車両が走行可能なときの車両状態を示す。また、「停止モード」は、イグニッションキーがオフ状態であって車両が走行可能でないときの車両状態を示す。
【0028】
なお、蓄電装置Bとして、大容量のキャパシタを用いてもよい。
インバータ12は、エンジンENGの出力を用いてモータジェネレータMG1が発電した3相交流電圧をECU30からの信号PWM1に基づいて直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を蓄電装置Bへ出力する。また、インバータ12は、エンジンENGの始動時、ECU30からの信号PWM1に基づいて、蓄電装置Bから受ける直流電圧を3相交流電圧に変換し、その変換した3相交流電圧をモータジェネレータMG1へ出力する。
【0029】
インバータ14は、ECU30からの信号PWM2に基づいて、蓄電装置Bから受ける直流電圧を3相交流電圧に変換し、その変換した3相交流電圧をモータジェネレータMG2へ出力する。また、インバータ14は、車両の回生制動時、モータジェネレータMG2が発電した3相交流電圧をECU30からの信号PWM2に基づいて直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を蓄電装置Bへ出力する。
【0030】
モータジェネレータMG1,MG2は、3相交流電動機であり、たとえば3相交流同期電動機から成る。モータジェネレータMG1は、エンジンENGの出力を用いて3相交流電圧を発生し、その発生した3相交流電圧をインバータ12へ出力する。また、モータジェネレータMG1は、インバータ12から受ける3相交流電圧によって駆動力を発生し、エンジンENGの始動を行なう。モータジェネレータMG2は、インバータ14から受ける3相交流電圧によって車両の駆動トルクを発生する。また、モータジェネレータMG2は、車両の回生制動時、駆動輪FR,FLの回転力を用いて3相交流電圧を発生し、その発生した3相交流電圧をインバータ14へ出力する。
【0031】
AC/DCコンバータ22は、ECU30からの信号ENに応じて動作し、コネクタ24に与えられる商用電源26からの電力を蓄電装置Bの電圧レベルに変換して蓄電装置Bへ出力する。
【0032】
コネクタ24は、車両の停止モード時に商用電源26を用いて蓄電装置Bを充電する際に、商用電源26からの電力を入力するための端子である。商用電源26から蓄電装置Bの充電が行なわれるとき、商用電源26側のコネクタ28がコネクタ24に接続され、コネクタ24に商用電源28の商用電圧が印加される。
【0033】
ECU30は、イグニッションキーからの信号に基づいて、車両が走行モードであるか停止モードであるかを判定する。そして、ECU30は、走行モード時、インバータ12,14をそれぞれ駆動するための信号PWM1,PWM2を生成し、その生成した信号PWM1,PWM2をそれぞれインバータ12,14へ出力する。
【0034】
また、ECU30は、停止モード時に商用電源26を用いて蓄電装置Bの充電が行なわれるとき、AC/DCコンバータ22の駆動を許可するための信号ENを生成し、その生成した信号ENをAC/DCコンバータ22へ出力する。なお、商用電源26を用いた蓄電装置Bの充電は、たとえば、商用電源26を用いた蓄電装置Bの充電を指示する充電ボタン(図示せず)が利用者によって操作されたり、コネクタ24にコネクタ28が接続され、かつ、蓄電装置BのSOCが低下しているときに実行され得る。
【0035】
また、ECU30は、走行モード時、エンジンENGならびにモータジェネレータMG1,MG2およびインバータ12,14(以下、モータジェネレータMG1,MG2およびインバータ12,14を総括して「電気システム」とも称する。)を冷却する後述の冷却システムに対して、後述する方法により、エンジンENGおよび電気システムの各々に要求される冷却性に応じてエンジンENGおよび電気システムの冷却能力のバランスを変化させる。
【0036】
図2は、この発明の実施の形態1によるハイブリッド車両の冷却システムを示すブロック図である。図2を参照して、この冷却システム100は、エンジンENGと、モータジェネレータMG1,MG2と、インバータ12,14と、ラジエータ52と、可動仕切り弁54と、電動ウォーターポンプ60,62と、リザーバタンク64と、冷媒路66〜82と、温度センサ84,86と、ECU30とを含む。
【0037】
冷媒路66の一端は、ラジエータ52において可動仕切り弁54によって仕切られた領域56側においてラジエータ52に接続され、その他端は、電動ウォーターポンプ60に接続される。冷媒路68の一端は、電動ウォーターポンプ60に接続され、その他端は、エンジンENGに接続される。冷媒路70の一端は、エンジンENGに接続され、その他端は、ラジエータ52の領域56側においてラジエータ52に接続される。
【0038】
冷媒路72の一端は、ラジエータ52において可動仕切り弁54によって仕切られた領域58側においてラジエータ52に接続され、その他端は、インバータ12,14に接続される。冷媒路74の一端は、インバータ12,14に接続され、その他端は、リザーバタンク64に接続される。冷媒路76の一端は、リザーバタンク64に接続され、その他端は、電動ウォーターポンプ62に接続される。冷媒路78の一端は、電動ウォーターポンプ62に接続され、その他端は、モータジェネレータMG1に接続される。冷媒路80の一端は、モータジェネレータMG1に接続され、その他端は、モータジェネレータMG2に接続される。そして、冷媒路82の一端は、モータジェネレータMG2に接続され、その他端は、ラジエータ52の領域58側においてラジエータ52に接続される。
【0039】
なお、以下では、エンジンENG、電動ウォーターポンプ60、冷媒路66,68,70およびラジエータ52の領域56から成る冷却系統を「エンジン系冷却系統」とも称し、モータジェネレータMG1,MG2、インバータ12,14、電動ウォーターポンプ62、リザーバタンク64、冷媒路72,74,76,78,80,82およびラジエータ52の領域58から成る冷却系統を「電気系冷却系統」とも称する。
【0040】
ラジエータ52は、エンジン系冷却系統および電気系冷却系統に流される冷媒を冷却する。可動仕切り弁54は、ラジエータ52を領域56と領域58とに仕切る。可動仕切り弁54は、ECU30からの制御信号CNTL1に応じて作動し、領域56と領域58との比率を変えることができる。すなわち、ECU30からの制御信号CNTL1に応じて可動仕切り弁54の仕切り位置が移動することによって、エンジン系冷却系統の冷媒量と電気系冷却系統の冷媒量との比率が変化する。その結果、エンジン系冷却系統の冷却能力と電気系冷却系統の冷却能力とのバランスが変化する。
【0041】
電動ウォーターポンプ60は、エンジン系冷却系統における冷媒を循環させる。電動ウォーターポンプ62は、電気系冷却系統における冷媒を循環させる。なお、電動ウォーターポンプ62は、ラジエータ52を基準としてインバータ12,14がモータジェネレータMG1,MG2よりも上流になるように冷媒を循環させる。
【0042】
温度センサ84は、エンジン系冷却系統に流される冷媒の温度T1を検出し、その検出した温度T1をECU30へ出力する。温度センサ86は、電気系冷却系統に流される冷媒の温度T2を検出し、その検出した温度T2をECU30へ出力する。
【0043】
ECU30は、アクセル開度信号AP、車両速度SV、ならびに蓄電装置Bの電圧VB、電流IBおよび温度TBを受ける。なお、これらの信号等は、図示されない各センサによって検出される。そして、ECU30は、走行モード時、これらの信号および温度センサ84,86からの温度T1,T2に基づいて、後述の方法により、エンジンENGおよび電気システムの各々に要求される冷却性に応じてエンジン系冷却系統の冷却能力と電気系冷却系統の冷却能力とのバランスを変化させるための指令を生成する。
【0044】
そして、ECU30は、その生成した指令に基づいて、可動仕切り弁54の仕切り位置を移動させるための制御信号CNTL1を生成し、その生成した制御信号CNTL1を可動仕切り弁54へ出力する。
【0045】
この冷却システム100においては、エンジン系冷却系統の冷媒量と電気系冷却系統の冷媒量との総和は一定であるが、可動仕切り弁54の仕切り位置が移動することによって、エンジン系冷却系統の冷媒量と電気系冷却系統の冷媒量との比率が変化する。そして、冷媒量の比率が増加した側の冷却系統の冷却能力は、冷媒の体積が増加することによって増大し、冷媒量の比率が低下した側の冷却系統の冷却能力は、冷媒の体積が減少することによって低下する。したがって、可動仕切り弁54の仕切り位置を移動させることにより、エンジン系冷却系統の冷却能力と電気系冷却系統の冷却能力とのバランスを変化させることができる。
【0046】
図3は、図2に示したラジエータ52の側面図である。図3を参照して、ラジエータ52は、熱交換部102と、サイドタンク104,105と、ウォーターパイプ106〜109と、冷媒注入パイプ110と、可動仕切り弁54とを含む。
【0047】
熱交換部102は、x方向に内部が細かく仕切られており、サイドタンク104からサイドタンク105に向けて流される冷媒と外気との間で熱交換を行なう。サイドタンク104,105は、熱交換部102の両側に配設される。ウォーターパイプ106は、サイドタンク104に設けられ、図2に示した冷媒路70に接続される。ウォーターパイプ107は、サイドタンク105に設けられ、図2に示した冷媒路66に接続される。ウォーターパイプ108は、サイドタンク104に設けられ、図2に示した冷媒路82に接続される。ウォーターパイプ109は、サイドタンク105に設けられ、図2に示した冷媒路72に接続される。
【0048】
なお、ウォーターパイプ106,108は、サイドタンク104の両端近傍にそれぞれ配置され、ウォーターパイプ107,109は、サイドタンク105の両端近傍にそれぞれ配置される。そして、熱交換部102を挟んでウォーターパイプ106,107が対向し、ウォーターパイプ108,109が対向するように、ウォーターパイプ106〜109が配置される。
【0049】
可動仕切り弁54は、サイドタンク104,105の各々の内部に設けられ、サイドタンク104,105内をx方向に仕切る。サイドタンク105内の可動仕切り弁54は、サイドタンク104内の可動仕切り弁54と熱交換部102を挟んで対向する。ここで、上述のように、熱交換部102内は、x方向に細かく仕切られている。したがって、熱交換部102の領域56には、サイドタンク104からサイドタンク105に向かってエンジン系冷却系統の冷媒が流され、熱交換部102の領域58には、サイドタンク104からサイドタンク105に向かって電気系冷却系統の冷媒が流される。
【0050】
また、可動仕切り弁54は、ECU30からの制御信号CNTL1に応じて、後述する方法によりサイドタンク104,105内をx方向に動作することができる。ここで、サイドタンク104,105内の可動仕切り弁54は、熱交換部102を挟んで対向するように互いに同期して動作する。これにより、サイドタンク104,105および熱交換部102内におけるエンジン系冷却系統の冷媒量と電気系冷却系統の冷媒量との比率を変化させることができる。
【0051】
図4は、図3に示した可動仕切り弁54の構成を説明するための図である。なお、この図4では、サイドタンク104内の可動仕切り弁54について代表的に説明するが、サイドタンク105内の可動仕切り弁54の構成も同様である。
【0052】
図4を参照して、可動仕切り弁54は、x方向に垂直な軸55を中心として回動可能であり、かつ、x方向に移動可能な仕切り板から成る。可動仕切り弁54は、仕切り面の法線がx方向を向いているときにサイドタンク104に内接するように構成される。この状態で、可動仕切り弁54は、熱交換部102およびサイドタンク104,105内を上下2つの領域に仕切ることができる。
【0053】
そして、可動仕切り弁54は、ECU30からの制御信号CNTL1に応じて、図示されないアクチュエータによって軸55を中心に回動し、サイドタンク104内をx方向に移動することができる。
【0054】
図5は、図4に示した可動仕切り弁54がサイドタンク104内を移動するときの様子を説明するための図である。図5を参照して、可動仕切り弁54がサイドタンク104内をx方向に移動するとき、可動仕切り弁54は、図示されないアクチュエータによって、仕切り面の法線がx方向に略垂直な方向を向くように回動する。この状態で、可動仕切り弁54は、ECU30からの制御信号CNTL1に応じてx方向に移動する。
【0055】
そして、可動仕切り弁54は、制御信号CNTL1により指示された仕切り位置まで移動すると、仕切り面の法線がx方向を向くように回動する。これにより、可動仕切り弁54は、移動後の仕切り位置において、熱交換部102およびサイドタンク104,105内を再び上下2つの領域に仕切ることができる。
【0056】
図6は、図2に示したECU30によるエンジン系冷却系統および電気系冷却系統の冷却能力の制御に関するフローチャートである。なお、このフローチャートによる処理は、一定時間毎または所定の条件が成立するごとにメインルーチンから呼び出されて実行される。
【0057】
図6を参照して、ECU30は、エンジンENGが動作中であるか否かを判定する(ステップS10)。ECU30は、エンジンENGが停止中であると判定すると(ステップS10においてNO)、温度センサ86からの温度T2に基づいて、電気系冷却系統の冷媒温度が予め設定された許容温度よりも低いか否かを判定する(ステップS20)。
【0058】
ECU30は、電気系冷却系統の冷媒温度が許容温度以上であると判定すると(ステップS20においてNO)、電気システムを直ちに冷却する必要があるため、電気系冷却系統の冷却能力を増大させる指令を生成する(ステップS30)。具体的には、ECU30は、予め設定された所定量だけ電気系冷却系統の冷媒量を増加させる指令を生成する(対応してエンジン系冷却系統の冷媒量は減少する)。そして、ECU30は、その生成された指令に基づいて、可動仕切り弁54の仕切り位置を移動させるための制御信号CNTL1を生成し、その生成した制御信号CNTL1を可動仕切り弁54へ出力する。
【0059】
ステップS20において電気系冷却系統の冷媒温度が許容温度よりも低いと判定されると(ステップS20においてYES)、ECU30は、温度センサ84,86からの温度T1,T2に基づいて、エンジン系冷却系統の冷媒温度が電気系冷却系統の冷媒温度よりも低いか否かを判定する(ステップS40)。
【0060】
ECU30は、エンジン系冷却系統の冷媒温度が電気系冷却系統の冷媒温度よりも低いと判定すると(ステップS40においてYES)、電気システムをより効果的に冷却するため、電気系冷却系統の冷却能力を増大させる指令を生成する(ステップS50)。具体的には、ステップS30と同様に、ECU30は、予め設定された所定量だけ電気系冷却系統の冷媒量を増加させる指令を生成する。
【0061】
ステップS50に続いて、ECU30は、蓄電装置BのSOCおよび車両要求パワーを算出し、その算出した蓄電装置BのSOCおよび車両要求パワーに基づいて、ステップS50において生成した指令に対する反映率を決定する(ステップS60)。より具体的には、ECU30は、蓄電装置Bの電圧VB、電流IBおよび温度TBを用いて蓄電装置BのSOCを算出する。なお、蓄電装置BのSOCの算出には、種々の公知の手法を用いることができる。また、ECU30は、アクセル開度信号APおよび車両速度SVに基づいて車両要求パワーPVを算出する。そして、ECU30は、予め設定されたマップなどを用いて、ステップS50において生成した指令に対する反映率を決定する。ここで、反映率は、電気系冷却系統の冷媒量を予め設定された所定量増加させる場合を100%として、電気系冷却系統の冷媒量をその所定量の何%増加させるかを決定するためのパラメータである
図7は、図6に示したステップS60において指令に対する反映率を決定するためのマップを示した図である。図7を参照して、横軸は蓄電装置BのSOCを示し、縦軸は車両要求パワーを示す。図に示されるように、SOCが高く車両要求パワーが小さいほど反映率は高く、SOCが低く車両要求パワーが大きいほど反映率は低い。これは、SOCが高く車両要求パワーが小さいときは、今後の走行においてモータジェネレータMG2のみを用いて走行(EV走行モード)する可能性が高く、電気システムの負荷が高くなるものと予測できるので、電気系冷却系統の冷媒量を増加させる指令に対する反映率を高くするようにしたものである。
【0062】
一方、SOCが低く車両要求パワーが大きいときは、今後の走行においてエンジンENGを用いて走行(HV走行モード)する可能性が高く、電気システムの負荷は低くなるものと予測できるので、電気系冷却系統の冷媒量を増加させる指令に対する反映率を低くするようにしたものである。
【0063】
再び図6を参照して、ステップS60において電気系冷却系統の冷媒量を増加させる指令に対する反映率が決定されると、ECU30は、予め設定された所定量に反映率を乗算した量だけ電気系冷却系統の冷媒量が増加するように制御信号CNTL1を生成し、その生成した制御信号CNTL1を可動仕切り弁54へ出力する。
【0064】
一方、ステップS40においてエンジン系冷却系統の冷媒温度が電気系冷却系統の冷媒温度以上であると判定されると(ステップS40においてNO)、ECU30は、電気系冷却系統の冷却能力を現状に維持する(ステップS70)。これは、電気系冷却系統の冷却能力を増大させる指令が生成されると、電気系冷却系統の冷媒よりも温度が高いエンジン系冷却系統の冷媒の一部が電気系冷却系統に供給されるため、電気系冷却系統の冷却能力を低下させてしまうことになるからである。したがって、この場合は、電気系冷却系統の冷却能力を現状に維持するようにしたものである。
【0065】
次に、ステップS10においてエンジンENGが動作中であると判定されると(ステップS10においてYES)、ECU30は、温度センサ84からの温度T1に基づいて、エンジン系冷却系統の冷媒温度が予め設定された許容温度よりも低いか否かを判定する(ステップS80)。
【0066】
ECU30は、エンジン系冷却系統の冷媒温度が許容温度以上であると判定すると(ステップS80においてNO)、エンジンENGを直ちに冷却する必要があるため、エンジン系冷却系統の冷却能力を増大させる指令を生成する(ステップS90)。具体的には、ECU30は、予め設定された所定量だけエンジン系冷却系統の冷媒量を増加させる指令を生成する(対応して電気系冷却系統の冷媒量は減少する)。そして、ECU30は、その生成された指令に応じて、可動仕切り弁54の仕切り位置を移動させるための制御信号CNTL1を生成し、その生成した制御信号CNTL1を可動仕切り弁54へ出力する。
【0067】
ステップS80においてエンジン系冷却系統の冷媒温度が許容温度よりも低いと判定されると(ステップS80においてYES)、ECU30は、温度センサ84,86からの温度T1,T2に基づいて、エンジン系冷却系統の冷媒温度が電気系冷却系統の冷媒温度よりも低いか否かを判定する(ステップS100)。
【0068】
ECU30は、エンジン系冷却系統の冷媒温度が電気系冷却系統の冷媒温度よりも低いと判定すると(ステップS100においてYES)、相対的に温度の高い電気系冷却系統の冷媒を用いた方がエンジンENGを早期に暖機できるため、エンジン系冷却系統の冷却能力を増大させる指令を生成する(ステップS110)。具体的には、ステップS90と同様に、ECU30は、予め設定された所定量だけエンジン系冷却系統の冷媒量を増加させる指令を生成する。
【0069】
ステップS110に続いて、ECU30は、蓄電装置BのSOCおよび車両要求パワーを算出し、その算出した蓄電装置BのSOCおよび車両要求パワーに基づいて、ステップS110において生成した指令に対する反映率を決定する(ステップS120)。より具体的には、ECU30は、予め設定されたマップなどを用いて、ステップS110において生成した指令に対する反映率を決定する。この反映率は、エンジン系冷却系統の冷媒量を予め設定された所定量増加させる場合を100%として、エンジン系冷却系統の冷媒量をその所定量の何%増加させるかを決定するためのパラメータである。
【0070】
図8は、図6に示したステップS120において指令に対する反映率を決定するためのマップを示した図である。図8を参照して、横軸は蓄電装置BのSOCを示し、縦軸は車両要求パワーを示す。図に示されるように、SOCが低く車両要求パワーが大きいほど反映率は高く、SOCが高く車両要求パワーが小さいほど反映率は低い。これは、SOCが低く車両要求パワーが大きいときは、今後の走行においてエンジンENGを用いたHV走行モードで走行する可能性が高く、エンジンENGの動作頻度は高くなるものと予測できるので、エンジン系冷却系統の冷媒量を増加させる指令に対する反映率を高くするようにしたものである。
【0071】
一方、SOCが高く車両要求パワーが小さいときは、今後の走行においてモータジェネレータMG2のみを用いたEV走行モードで走行する可能性が高く、エンジンENGの動作頻度は低くなるものと予測できるので、エンジン系冷却系統の冷媒量を増加させる指令に対する反映率を低くするようにしたものである。
【0072】
再び図6を参照して、ステップS120においてエンジン系冷却系統の冷媒量を増加させる指令に対する反映率が決定されると、ECU30は、予め設定された所定量に反映率を乗算した量だけエンジン系冷却系統の冷媒量が増加するように制御信号CNTL1を生成し、その生成した制御信号CNTL1を可動仕切り弁54へ出力する。
【0073】
一方、ステップS100においてエンジン系冷却系統の冷媒温度が電気系冷却系統の冷媒温度以上であると判定されると(ステップS100においてNO)、ECU30は、エンジン系冷却系統の冷却能力を現状に維持する(ステップS130)。これは、エンジン系冷却系統の冷却能力を増大させる指令が生成されると、エンジン系冷却系統の冷媒の温度よりも低い電気系冷却系統の冷媒の一部がエンジン系冷却系統に供給されるため、エンジンENGの暖機を阻害することになるからである。したがって、この場合は、エンジン系冷却系統の冷却能力を現状に維持するようにしたものである。
【0074】
なお、上記においては、ステップS10において、エンジンENGが停止中のときはステップS20へ処理を進め、エンジンENGが動作中のときはステップS80へ処理を進めるものとしたが、走行モードがEV走行モードのときはステップS20へ処理を進め、走行モードがHV走行モードのときはステップS80へ処理を進めるようにしてもよい。
【0075】
図9は、走行モードを説明するための図である。図9を参照して、縦軸は蓄電装置BのSOCを表わし、横軸は経過時間を表わす。また、Soは蓄電装置BのSOCの制御目標を示す。
【0076】
時刻t0以前に商用電源26を用いて蓄電装置Bが充電され、時刻t0において蓄電装置Bが満充電の状態からハイブリッド車両10の走行が開始されたとする。時刻t1において蓄電装置BのSOCが制御目標Soに至るまでは、エンジンENGおよびモータジェネレータMG1は停止され、蓄電装置Bに蓄えられている電力を用いてモータジェネレータMG2を駆動して走行するEV走行モードで走行が行なわれる。
【0077】
時刻t1を経過し、蓄電装置BのSOCが制御目標Soを下回ると、エンジンENGが始動し、エンジンENGの出力を用いて車両の駆動力を得るとともにモータジェネレータMG1により発電が行なわれ、蓄電装置BのSOCが制御目標Soに制御される。すなわち、時刻t1を経過すると、蓄電装置BおよびモータジェネレータMG2とエンジンENGとを動力源として走行するHV走行モードで走行が行なわれる。
【0078】
再び図6を参照して、上述のようにEV走行モードのときはエンジンENGは停止しているので、ECU30は、走行モードがEV走行モードのとき電気系冷却系統の冷却能力を増大させ得るステップS20側へ処理を進め、上述のようにHV走行モードのときはエンジンENGを動作させる頻度が多くなるので、ECU30は、走行モードがHV走行モードのときエンジン系冷却系統の冷却能力を増大させ得るステップS80側へ処理を進めるようにしてもよい。
【0079】
以上のように、この実施の形態1においては、エンジンENGおよび電気システムの各々に要求される冷却性に応じてエンジンENGおよび電気システムの冷却能力のバランスを変化させることができる。したがって、この実施の形態1によれば、エンジンENGおよび電気システムを効率的に冷却することができる。その結果、冷却システム100を小型化することができる。
【0080】
また、この実施の形態1においては、エンジンENGが動作状態、または走行モードがHV走行モードのとき、電気系冷却系統において暖められた冷媒の一部がエンジン系冷却系統に供給され得る。したがって、この実施の形態1によれば、エンジンENGを早期に暖機することができ、その結果、燃費が向上する。
【0081】
また、この実施の形態1においては、温度センサ84,86からの温度T1,T2に基づいて可動仕切り弁54の仕切り位置が制御される。したがって、この実施の形態1によれば、電気系冷却系統の冷媒量の比率を高める際に、電気系冷却系統の冷媒よりも温度の高いエンジン系冷却系統の冷媒が電気系冷却系統に供給されたり、エンジン系冷却系統の冷媒量の比率を高める際に、エンジン系冷却系統の冷媒よりも温度の低い電気系冷却系統の冷媒がエンジン系冷却系統に供給されたりすることを防止することができる。
【0082】
また、この実施の形態1においては、蓄電装置BのSOCと車両要求パワーとに基づいて反映率が決定され、その反映率に基づいて可動仕切り弁54の仕切り位置が制御される。すなわち、蓄電装置BのSOCと車両要求パワーとに基づいて今後の走行における電気システムの負荷やエンジンENGの動作頻度が予測できるところ、その予測結果が可動仕切り弁54の仕切り位置に反映される。したがって、この実施の形態1によれば、今後の走行状態を予測してエンジン系冷却系統の冷却能力と電気系冷却系統の冷却能力とのバランスを変化させることができる。
【0083】
[実施の形態2]
図10は、この発明の実施の形態2によるハイブリッド車両の冷却システムを示すブロック図である。図10を参照して、この冷却システム100Aは、図2に示した冷却システム100の構成において、電動ウォーターポンプ60,62に代えてそれぞれ電動ウォーターポンプ60A,62Aを含み、ECU30に代えてECU30Aを含む。
【0084】
電動ウォーターポンプ60Aは、エンジン系冷却系統における冷媒を循環させる。ここで、電動ウォーターポンプ60Aは、ECU30Aからの制御信号CNTL2に基づいてその駆動力を変化させ、エンジン系冷却系統に流される冷媒の流量を増減させることができる。電動ウォーターポンプ62Aは、電気系冷却系統における冷媒を循環させる。ここで、電動ウォーターポンプ62Aは、ECU30Aからの制御信号CNTL3に基づいてその駆動力を変化させ、電気系冷却系統に流される冷媒の流量を増減させることができる。
【0085】
ECU30Aは、エンジンENGおよび電気システムの各々に要求される冷却性に応じてエンジン系冷却系統の冷却能力と電気系冷却系統の冷却能力とのバランスを変化させるための指令を生成する。そして、ECU30Aは、その生成した指令に基づいて、可動仕切り弁54の仕切り位置を移動させるための制御信号CNTL1を生成して可動仕切り弁54へ出力し、電動ウォーターポンプ60Aの駆動力を変更するための制御信号CNTL2を生成して電動ウォーターポンプ60Aへ出力し、電動ウォーターポンプ62Aの駆動力を変更するための制御信号CNTL3を生成して電動ウォーターポンプ62Aへ出力する。
【0086】
なお、ECU30Aのその他の機能は、実施の形態1におけるECU30と同じである。また、この実施の形態2によるハイブリッド車両のパワートレーンの構成は、図1に示した実施の形態1によるハイブリッド車両10と同じである。
【0087】
この冷却システム100Aにおいては、エンジン系冷却系統の冷却能力と電気系冷却系統の冷却能力とのバランスを変化させるに際し、可動仕切り弁54の仕切り位置を変えることによってエンジン系冷却系統の冷媒量と電気系冷却系統の冷媒量との比率を変化させることに加え、電動ウォーターポンプ60A,62Aの駆動力を変化させることによってエンジン系冷却系統の冷媒流量と電気系冷却系統の冷媒流量とをさらに変化させる。
【0088】
より具体的には、図6に示したステップS60において電気系冷却系統における反映率が決定されると、ECU30Aは、予め設定された増加率に反映率を乗算した量だけ電気系冷却系統の冷媒流量が増加するように制御信号CNTL3を生成し、その生成した制御信号CNTL3を電動ウォーターポンプ62Aへ出力する。
【0089】
また、図6に示したステップS120においてエンジン系冷却系統における反映率が決定されると、ECU30Aは、予め設定された増加率に反映率を乗算した量だけエンジン系冷却系統の冷媒流量が増加するように制御信号CNTL2を生成し、その生成した制御信号CNTL2を電動ウォーターポンプ60Aへ出力する。
【0090】
なお、上記においては、エンジンENGおよび電気システムの各々に要求される冷却性に応じて可動仕切り弁54および電動ウォーターポンプ60A,62Aをいずれも制御するものとしたが、可動仕切り弁54および電動ウォーターポンプ60A,62Aの少なくとも1つを制御することによってエンジン系冷却系統の冷却能力と電気系冷却系統の冷却能力とのバランスを変化させることができる。
【0091】
以上のように、この実施の形態2においては、可動仕切り弁54の仕切り位置を変えることによってエンジン系冷却系統の冷媒量と電気系冷却系統の冷媒量との比率を変化させることに加え、電動ウォーターポンプ60A,62Aの駆動力を変化させることによってエンジン系冷却系統の冷媒流量と電気系冷却系統の冷媒流量とをさらに変化させることができる。したがって、この実施の形態2によれば、エンジンENGおよび電気システムの各々に要求される冷却性に応じて、エンジン系冷却系統の冷却能力と電気系冷却系統の冷却能力とのバランスをより広範囲かつ多段階に変化させることができる。
【0092】
なお、上記の各実施の形態においては、ハイブリッド車両10は、動力分割機構16によりエンジンENGの動力を車軸とモータジェネレータMG1とに分割して伝達可能なシリーズ/パラレル型であるが、この発明は、モータジェネレータMG1を駆動するためにのみエンジンENGを用い、モータジェネレータMG1により発電された電力を使うモータジェネレータMG2でのみ車軸の駆動力を発生するシリーズ型のハイブリッド車両にも適用することができる。
【0093】
なお、上記において、エンジンENGは、この発明における「内燃機関」に対応し、モータジェネレータMG2は、この発明における「電動機」に対応する。また、エンジン系冷却系統は、この発明における「第1の冷却系統」に対応し、電気系冷却系統は、この発明における「第2の冷却系統」に対応する。さらに、可動仕切り弁54は、この発明における「可動仕切装置」に対応し、ECU30は、この発明における「制御装置」に対応する。
【0094】
また、さらに、温度センサ84は、この発明における「第1の温度検出装置」に対応し、温度センサ86は、この発明における「第2の温度検出装置」に対応する。また、さらに、蓄電装置Bは、この発明における「蓄電装置」に対応し、ラジエータ52は、この発明における「冷却器」に対応する。また、さらに、電動ウォーターポンプ60Aは、この発明における「第1のポンプ」に対応し、電動ウォーターポンプ62Aは、この発明における「第2のポンプ」に対応する。
【0095】
また、さらに、インバータ14は、この発明における「駆動装置」に対応し、AC/DCコンバータ22およびコネクタ24は、この発明における「充電手段」を形成する。
【0096】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の実施の形態1によるハイブリッド車両のパワートレーンを示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるハイブリッド車両の冷却システムを示すブロック図である。
【図3】図2に示すラジエータの側面図である。
【図4】図3に示す可動仕切り弁の構成を説明するための図である。
【図5】図4に示す可動仕切り弁がサイドタンク内を移動するときの様子を説明するための図である。
【図6】図2に示すECUによるエンジン系冷却系統および電気系冷却系統の冷却能力の制御に関するフローチャートである。
【図7】図6に示すステップS60において指令に対する反映率を決定するためのマップを示した図である。
【図8】図6に示すステップS120において指令に対する反映率を決定するためのマップを示した図である。
【図9】走行モードを説明するための図である。
【図10】この発明の実施の形態2によるハイブリッド車両の冷却システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0098】
10 ハイブリッド車両、12,14 インバータ、16 動力分割機構、18 リダクションギヤ、20 ドライブシャフト、22 AC/DCコンバータ、24,28 コネクタ、26 商用電源、30,30A ECU、52 ラジエータ、54 可動仕切り弁、60,62,60A,62A 電動ウォーターポンプ、66〜82 冷媒路、84,86 温度センサ、100,100A 冷却システム、102 熱交換部、104,105 サイドタンク、106〜109 ウォーターパイプ、110 冷媒注入パイプ、B 蓄電装置、MG1,MG2 モータジェネレータ、ENG エンジン、FR,FL 駆動輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関および電動機を動力源として搭載するハイブリッド車両の冷却システムであって、
前記内燃機関を冷却するための第1の冷却系統と、
前記電動機と前記電動機を駆動する駆動装置とを含む電気システムを冷却するための第2の冷却系統と、
前記第1の冷却系統に流される冷媒と前記第2の冷却系統に流される冷媒とを仕切り、かつ、その仕切位置が移動することによって前記第1の冷却系統の冷媒量と前記第2の冷却系統の冷媒量との比率を変更可能なように構成された可動仕切装置と、
前記内燃機関および前記電気システムの各々に要求される冷却性に応じて前記可動仕切装置の仕切位置を制御する制御装置とを備える冷却システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記内燃機関の動作状態に基づいて前記仕切位置を制御する、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記内燃機関を停止して前記電動機のみを使用する第1の走行モードで走行しているか、それとも前記内燃機関および前記電動機を使用する第2の走行モードで走行しているかに基づいて前記仕切位置を制御する、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記第1の冷却系統に流される冷媒の温度を検出する第1の温度検出装置と、
前記第2の冷却系統に流される冷媒の温度を検出する第2の温度検出装置とをさらに備え、
前記制御装置は、前記第1および第2の温度検出装置によって検出された冷媒温度に基づいて前記仕切位置をさらに制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記電動機に供給される電力を蓄える蓄電装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記蓄電装置の充電状態と前記ハイブリッド車両の要求パワーとに基づいて前記仕切位置をさらに制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記第1および第2の冷却系統に接続され、前記第1および第2の冷却系統に流される冷媒を冷却する冷却器をさらに備え、
前記可動仕切装置は、前記冷却器内に設けられ、前記冷却器内において前記第1の冷却系統に流される冷媒と前記第2の冷却系統に流される冷媒とを仕切り、前記制御装置からの指令に従ってその仕切位置が移動することにより前記比率を変更する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記制御装置からの指令に応じた流量の冷媒を前記第1の冷却系統に循環させる第1のポンプと、
前記制御装置からの指令に応じた流量の冷媒を前記第2の冷却系統に循環させる第2のポンプとをさらに備え、
前記制御装置は、前記内燃機関および前記電気システムの各々に要求される冷却性に応じて前記可動仕切装置の仕切位置ならびに前記第1および第2のポンプの各駆動力の少なくとも1つを制御する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項8】
車両の駆動力を発生する内燃機関および電動機と、
前記電動機を駆動する駆動装置と、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の冷却システムとを備えるハイブリッド車両。
【請求項9】
前記電動機に電力を供給する蓄電装置を車両外部の電源を用いて充電可能な充電手段をさらに備える、請求項8に記載のハイブリッド車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−216791(P2007−216791A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−38315(P2006−38315)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】