説明

冷却装置および冷却方法

【課題】樹脂組成物を効率よく冷却することができる冷却装置および冷却方法を提供すること。
【解決手段】冷却装置1は、シート状に成形された樹脂組成物であるシート材Q2を、その面方向に沿って搬送する搬送手段2と、搬送手段2により搬送されているシート材Q2を冷却する冷却手段3とを備えている。シート材Q2は、冷却手段3で冷却される直前の温度が40〜60℃のものである。そして、冷却手段3は、シート材Q2の冷却速度が0.2〜5℃/秒となるように冷却する冷却能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置および冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の封止材により半導体チップ(半導体素子)を被覆(封止)してなる半導体パッケージが知られている。半導体パッケージの封止材は、樹脂組成物を、例えば、トランスファー成形等により成形したものである。この樹脂組成物を製造する過程では、当該樹脂組成物を一対のローラ間で加圧してシート状にして、次いで冷却装置で冷却することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の冷却装置は、シート状の樹脂組成物を搬送するベルトコンベアと、ベルトコンベア上の樹脂組成物に冷風を吹き付ける複数の吹出口を有するダクトとを備えている。各吹出口からそれぞれ噴出される冷風は、その温度が0〜15℃となるように設定されている。しかしながら、このような温度の冷風では、冷却される直前の樹脂組成物自体の温度の高さによっては(例えば温度が40〜50℃の場合)、当該樹脂組成物を過不足なく冷却するのに時間が掛かってしまう、すなわち、冷却効率が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−297701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、樹脂組成物を効率よく冷却することができる冷却装置および冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(16)の本発明により達成される。
(1) シート状に成形された樹脂組成物を、その面方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されている前記樹脂組成物を冷却する冷却手段とを備え、
前記樹脂組成物は、前記冷却手段で冷却される直前の温度が40〜60℃のものであり、
前記冷却手段は、前記樹脂組成物の冷却速度が0.2〜5℃/秒となるように冷却する冷却能を有することを特徴とする冷却装置。
【0007】
(2) 前記冷却手段は、前記樹脂組成物に向けて−40〜0℃の冷気を排出する、少なくとも1つの排気口を有する送風部を備える上記(1)に記載の冷却装置。
【0008】
(3) 前記冷気は、その湿度が10%以下のものである上記(2)に記載の冷却装置。
【0009】
(4) 前記排気口から前記冷気が排出される際、その圧力は、0.2MPa以上である上記(2)または(3)に記載の冷却装置。
【0010】
(5) 前記排気口は、前記樹脂組成物の搬送方向に沿って複数配置されている上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の冷却装置。
【0011】
(6) 前記排気口は、前記冷気を上方から排出する上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の冷却装置。
【0012】
(7) 前記排気口は、前記冷気を前記樹脂組成物の搬送方向と反対側から排出する上記(2)ないし(5)のいずれかに記載の冷却装置。
【0013】
(8) 前記冷却手段は、前記樹脂組成物に対しその両面側からそれぞれ前記冷気を吹き付けるよう構成されている上記(2)ないし(7)のいずれかに記載の冷却装置。
【0014】
(9) 前記冷却手段は、前記冷気の温度を段階的に下げていくよう構成されている上記(2)ないし(8)のいずれかに記載の冷却装置。
【0015】
(10) 前記搬送手段は、互いに離間して配置された一対のプーリと、該一対のプーリ間に掛け回され、該各プーリが回転することにより、前記樹脂組成物を載置して搬送するベルトとを有し、
前記ベルトは、その少なくとも表面が非金属で構成されている上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の冷却装置。
【0016】
(11) 前記ベルトは、積層体で構成され、その最も外側に位置する外層が前記非金属で構成されている上記(10)に記載の冷却装置。
【0017】
(12) 前記樹脂組成物が前記ベルトで搬送されている間、前記樹脂組成物を前記ベルトごと格納し、前記冷却手段による冷却雰囲気を維持するチャンバをさらに備える上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の冷却装置。
【0018】
(13) 前記樹脂組成物は、混練装置で混練され、その混練物が一対のローラ間で加圧されてシート状に成形されたものであり、
当該冷却装置は、前記一対のローラから前記樹脂組成物が排出される下流側に設置されている上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の冷却装置。
【0019】
(14) 前記樹脂組成物は、その厚さが5mm以下である上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の冷却装置。
【0020】
(15) 前記樹脂組成物は、ICパッケージの外装部を構成するモールド部となるものである上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の冷却装置。
【0021】
(16) シート状に成形された樹脂組成物を、その面方向に沿って搬送しつつ、冷却する冷却方法であって、
前記樹脂組成物は、当該冷却方法で冷却される直前の温度が40〜60℃のものであり、
前記樹脂組成物の冷却速度が0.2〜5℃/秒となるように冷却することを特徴とする冷却方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、温度が40〜50℃の樹脂組成物を効率よく冷却することができる。これにより、例えば、温度が40〜50℃の樹脂組成物が軟質のものであり、この樹脂組成物を粉砕したい場合には、粉砕するまでの間に、軟質の樹脂組成物を冷却して、硬質のものへと迅速かつ確実に変化させることができる。そして、硬質の樹脂組成物を容易かつ確実に粉砕することができる。
【0023】
また、搬送手段が樹脂組成物を載置して搬送するベルトを有し、そのベルトの少なくとも表面が非金属で構成されている場合には、樹脂組成物を搬送する過程で、樹脂組成物とベルトの表面との間で摩擦が生じ、表面が摩耗して一部が削れたとしても、その削れたものは、当然に非金属である。これに対し、例えばベルト自体がスチール製である場合には、樹脂組成物を搬送する過程で、前述したような摩耗により、当該表面から金属粉末が生じ、その金属粉末が、未だ十分に冷却されていない軟質の状態の樹脂組成物に混入してしまうおそれがある。しかしながら、本発明では、このような金属粉末が樹脂組成物に混入するのを確実に防止することができ、また、前記削れた非金属が樹脂組成物に混入しても、その樹脂組成物は、使用するのに十分耐え得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】樹脂組成物の製造工程を示す図である。
【図2】本発明の冷却装置およびその周辺の装置の部分断面側面図である。
【図3】図2に示す冷却装置のベルトの拡大縦断面図である。
【図4】本発明の冷却装置の第2実施形態を示す部分断面側面図である。
【図5】本発明の冷却装置の第3実施形態を示す部分断面側面図である。
【図6】本発明の冷却装置の第4実施形態を示す部分断面側面図である。
【図7】樹脂組成物を用いたICパッケージの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の冷却装置および冷却方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、樹脂組成物の製造工程を示す図、図2は、本発明の冷却装置およびその周辺の装置の部分断面側面図、図3は、図2に示す冷却装置のベルトの拡大縦断面図、図7は、樹脂組成物を用いたICパッケージの部分断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図2、図3、図7中(図4〜図6についても同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0027】
図2に示す本発明の冷却装置1は、最終的に成形体となる樹脂組成物を製造する際の冷却工程で使用される装置である。この冷却装置1の説明に先立って、まずは、原材料から樹脂組成物を製造するまでの製造工程の全体を説明する。
【0028】
まず、樹脂組成物の原材料である各材料を用意する。
原材料は、樹脂と、硬化剤と、充填材(微粒子)とを有し、さらに必要に応じて、硬化促進剤と、カップリング剤等を有している。樹脂としては、エポキシ樹脂が好ましい。
【0029】
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型、ビフェニール型、ジシクロペンタジエン型、トリフェノールメタン型、多芳香族環型等が挙げられる。
【0030】
硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック型、フェノールアラルキル型、トリフェノールメタン型、多芳香族環型等が挙げられる。
【0031】
充填材としては、例えば、溶融シリカ(破砕状、球状)、結晶シリカ、アルミナ等が挙げられる。
【0032】
硬化促進剤としては、例えば、リン化合物、アミン化合物等が挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、シラン化合物等が挙げられる。
【0033】
なお、原材料は、前記材料のうち所定の材料が省略されていてもよく、また、前記以外の材料を含んでいてもよい。他の材料としては、例えば、着色剤、離型剤、低応力剤、難燃剤等が挙げられる。
【0034】
(微粉砕)
図1に示すように、原材料のうちの所定の材料については、まず、粉砕装置により、所定の粒度分布となるように粉砕(微粉砕)する。この粉砕する原材料としては、例えば、樹脂、硬化剤、促進剤等の充填材以外の原材料であるが、充填材の一部を加えることもできる。また、粉砕装置としては、例えば、連続式回転ボールミル等を用いることができる。
【0035】
(表面処理)
原材料のうちの所定の材料、例えば、充填材の全部または一部(残部)については、表面処理を施すことができる。この表面処理としては、例えば、充填材の表面にカップリング剤等を付着させる。なお、前記微粉砕と表面処理とは、同時に行ってもよく、また、いずれか一方を先に行ってもよい。
【0036】
(混合)
次に、混合装置により、前記各材料を完全に混合する。この混合装置としては、例えば、回転羽根を有する高速混合機等を用いることができる。
【0037】
(混練)
次に、混練装置100により、前記混合された材料を混練する。この混練装置100としては、例えば、1軸型混練押出機、2軸型混練押出機等の押出混練機やミキシングロール等のロール式混練機を用いることができる。
【0038】
(脱気)
次に、前記混練された材料である混練物(樹脂組成物)に対し脱気を行う。この脱気は、例えば混練装置100の前記混練された材料を排出する排出口101に接続された真空ポンプ(図示せず)によって行うことができる。
【0039】
(シート化)
次に、前記脱気された塊状の混練物(以下「混練物Q1」と言う)を、成形装置200でシート状に成形し、シート状の材料(以下「シート材Q2」と言う)を得る。この成形装置200としては、例えば、図2に示すように、混練装置100の排出口101の下方(下流側)に配置されたローラ201、202を有する装置を用いることができる。図2に示す構成では、ローラ201とローラ202との間で、混練装置100より排出された混練物Q1を加圧してシート状に成形することができる。
【0040】
(冷却)
次に、冷却装置1により、シート材Q2を冷却する。これにより、次工程でシート材Q2の粉砕を容易かつ確実に行うことができる。なお、冷却装置1については、後に詳述する。
【0041】
(粉砕)
次に、粉砕装置により、シート状の材料を所定の粒度分布となるように粉砕し、粉末状の材料を得る。この粉砕装置としては、例えば、ハンマーミル、石臼式磨砕機、ロールクラッシャー等を用いることができる。
【0042】
(タブレット化)
次に、成形体製造装置(打錠装置)により、前記粉末状の材料を圧縮成形し、成形体である樹脂組成物を得ることができる。
【0043】
図7に示すように、この樹脂組成物は、例えば、半導体チップ(ICチップ)901の被覆(封止)に用いられ、半導体パッケージ(ICパッケージ)900の外装部を構成するモールド部902となるものである。このモールド部902により、半導体チップ901を保護することができる。なお、樹脂組成物で半導体チップ901を被覆するには、樹脂組成物を、例えばトランスファー成形等により成形し、封止材として半導体チップ901を被覆する方法が挙げられる。図7に示す構成の半導体パッケージ900は、複数のリードフレーム903がモールド部902から突出しており、各リードフレーム903がそれぞれ、例えば金等のような導電性を有する金属材料で構成されたワイヤ904を介して、半導体チップ901と電気的に接続されたものとなっている。
【0044】
なお、前記タブレット化の工程を省略し、粉末状の材料を樹脂組成物としてもよい。この場合は、例えば、圧縮成形、射出成形等により、封止材を成形することができる。
【0045】
次に、冷却装置1について説明する。
図2に示す冷却装置1は、本発明の冷却方法を実行するための装置である。この冷却装置1は、ローラ201、202の下方、すなわち、ローラ201、202からシート材Q2が排出される下流側に設置されている。これにより、ローラ201、202から押し出されたシート材Q2が冷却装置1に迅速に移行する。そして、冷却装置1は、シート材Q2を次工程へ向けて搬送しつつ、冷却することができる。なお、シート材Q2を冷却する目的としては、次のような目的が挙げられる。
【0046】
ローラ201、202から押し出されたシート材Q2は、熱を帯びており、冷却装置1で冷却される直前の温度が例えば40〜60℃程度のものとなっている。このため、当該シート材Q2は、軟質のものとなっている。また、冷却工程の次の工程である粉砕工程でシート材Q2を粉砕するので、その粉砕を確実に行なうために、軟質のシート材Q2を冷却して硬質のものとする必要がある。これが冷却装置1でシート材Q2を冷却する目的である。
【0047】
図2に示すように、冷却装置1は、シート材Q2を搬送する搬送手段2と、シート材Q2を冷却する冷却手段3と、冷却手段3による冷却雰囲気を維持するチャンバ4とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0048】
搬送手段2は、シート材Q2をその面方向に沿って搬送し、次工程へ送り出すベルトコンベアである。搬送手段2は、主動プーリ(キャリーローラ)21と、従動プーリ(リターンローラ)22と、主動プーリ21と従動プーリ22との間に掛け回されたベルト23と、主動プーリ21と従動プーリ22との間に配置された複数のアイドルプーリ(ベルトコンベアローラ)24とを有している。
【0049】
主動プーリ21と従動プーリ22とは、チャンバ4を介して互いに離間して配置されている。主動プーリ21には、モータ(図示せず)が連結されており、当該モータが駆動すると回転することができる。また、従動プーリ22は、主動プーリ21が回転した際に、その回転力がベルト23を介して伝達されて、主動プーリ21とともに回転することができる。
【0050】
ベルト23は、可撓性を有し、主動プーリ21および従動プーリ22がそれぞれ回転することにより、シート材Q2を載置して搬送するものである。このベルト23は、例えば図3に示す構成では、下地層231と外層232とを有する積層体で構成されている。
【0051】
下地層231は、例えばスチール製で、ベルト23の芯材となる部分である。
外層232は、下地層231上に形成され、ベルト23の最も外側に位置して、シート材Q2が載置される層である。この外層232は、非金属で構成されていることが好ましい。これにより、シート材Q2を搬送する過程で、シート材Q2と外層232の外周面(表面)233との間で摩擦が生じ、外周面233が摩耗して一部が削れたとしても、その削れたものは、当然に非金属である。これに対し、例えばベルト23自体がスチール製である場合には、シート材Q2を搬送する過程で、前述したような摩耗により、当該上面から金属粉末が生じ、その金属粉末が、未だ十分に冷却されていない軟質の状態のシート材Q2に混入してしまうおそれがある。しかしながら、冷却装置1では、このような金属粉末がシート材Q2に混入するのを確実に防止することができ、また、前記削れた非金属がシート材Q2に混入しても、そのシート材Q2は、半導体パッケージ900のモールド部902に使用するのに十分耐え得るものである。
【0052】
前記非金属材料としては、特に限定されないが、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、のような各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、等の各種熱可塑性エラストマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0053】
また、このような弾性材料で構成された外層232に代えて、下地層231をセラミックコーティングしてもよい。この場合、セラミックスとして、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、イットリア、リン酸カルシウム等の酸化物セラミックス、窒化珪素、窒化アルミ、窒化チタン、窒化ボロン等の窒化物セラミックス、タングステンカーバイト等の炭化物系セラミックス、あるいは、これらのうちの2以上を任意に組合せた複合セラミックスが挙げられる。
【0054】
また、冷却装置1の上流側に配置された成形装置200のローラ201の外層203、ローラ202の外層203もセラミックスで構成されているのが好ましい。これにより、シート材Q2への金属粉末の混入をより確実に防止することができる。
【0055】
各ベルトコンベアローラ24は、それぞれ、等間隔に配置され、ベルト23の上側の部分を支持している。これにより、ベルト23の駆動が円滑に行なわれ、また、ベルト23の撓み(ベルトのだれ)も防止することができる。
【0056】
冷却手段3は、搬送手段2により搬送されているシート材Q2を冷却するものである。この冷却手段3は、シート材Q2の冷却速度が0.2〜5℃/秒、好ましくは、0.5〜1.5℃/秒となるように冷却する冷却能を有している。冷却手段3では、この冷却能を得る(発揮する)ために、以下の各部の構成および各部の冷却条件が設定されている。
【0057】
図2に示すように、冷却手段3は、シート材Q2に向けて冷気G1を送風するための送風部31を備えている。冷却手段3(送風部31)は、冷気G1を生成する冷気生成部32と、冷気生成部32で生成された冷気G1を排出する複数のノズル33と、冷気生成部32と各ノズル33とを連結する連結管34とを有している。
【0058】
冷気生成部32は、チャンバ4の外側に配置されている。この冷気生成部32は、高圧ガスG0が送り込まれ、この高圧ガスG0を冷却して当該高圧ガスG0から冷気G1を生成する装置である。高圧ガスG0を冷却する構成としては、特に限定されず、例えば、液体窒素等のような冷媒で高圧ガスG0を冷却する構成とすることができる。また、その他、ヒートポンプ式冷凍機等の構成とすることもできる。ヒートポンプ式冷凍機としては、特に限定されないが、例えば、蒸気圧縮、吸収式、吸着式、スターリング式、化学反応式、半導体等が挙げられる。
【0059】
また、高圧ガスG0としては、特に限定されず、例えば、空気や二酸化炭素、または、窒素のような不活性ガス等が挙げられる。安全上の観点では、空気が好ましい。
【0060】
各ノズル33は、それぞれ、チャンバ4の内側に、主に、シート材Q2の搬送方向Aに沿って配置されている。なお、ノズル33には、シート材Q2の幅方向(図2の紙面奥側)に向かって配置されたものがあってもよい。各ノズル33の構成は、互いにほぼ同じであるため、以下1つのノズル33について代表的に説明する。
【0061】
ノズル33は、管体で構成され、その一端の開口部が下方、すなわち、ベルト23側を向くように配置されている。そして、この下方を向いた開口部が冷気G1を排出する排気口331として機能する。これにより、ノズル33の下方をシート材Q2が通過するときに、当該シート材Q2に、その上方から冷気G1(冷風)を吹き付けることができる。また、前述した複数のノズル33がシート材Q2の搬送方向Aに沿って配置されていることに相まって、シート材Q2は、搬送されている間冷気G1に触れることとなり、よって、過不足なく確実に、迅速に冷却される。
【0062】
また、ノズル33から排出される冷気G1の温度は、特に限定されないが、例えば、−40〜0℃に設定されているのが好ましく、−20〜−30℃に設定されているのがより好ましい。このような温度設定方法としては、例えば、高圧ガスG0が前記冷媒を通過する際の単位時間当たりの流量等を調整する方法、冷凍機の設定温度の調整等が挙げられる。
【0063】
また、ノズル33から排出される冷気G1の湿度は、特に限定されないが、10%以下に設定されているのが好ましく、0〜5%に設定されているのがより好ましい。これにより、露点より低い条件下でシート材Q2を冷却することができ、よって、シート材Q2に結露が生じるのを防止することができる。このような湿度設定方法としては、例えば、冷気生成部32に除湿剤を設け、この除湿剤に高圧ガスG0を通過させる方法、ドライヤ等の除湿装置を併設する方法等が挙げられる。
【0064】
また、ノズル33から冷気G1が排出される際の圧力は、特に限定されないが、例えば、0.2MPa以上に設定されているのが好ましく、0.3〜0.5MPaに設定されているのがより好ましい。このような圧力設定方法としては、例えば、冷気生成部32に弁を設け、その弁の開状態を調節して、当該弁を通過する高圧ガスG0の圧力(流量)を調節する方法等が挙げられる。
【0065】
以上のような装置構成および冷却条件により、シート材Q2が前記冷却速度で確実に冷却されることとなる。これにより、温度が40〜50℃で入ってきたシート材Q2を効率よく冷却することができ、よって、粉砕工程に移行する前に、当該シート材Q2が軟質のものから硬質のものへと迅速かつ確実に変化することができる。そして、硬質のシート材Q2を粉砕工程で容易かつ確実に粉砕することができる。
【0066】
また、シート材Q2を効率よく、すなわち、短時間で冷却することができるため、シート材Q2を冷気G1に触れさせるのに、ベルト23が過剰に長いものとなるのを防止することができる。これにより、冷却装置1を小型の装置とすることができる。
【0067】
また、シート材Q2は、その厚さが5mm以下のものであるのが好ましく、0.5〜3mmであるのがより好ましい。これにより、冷却装置1でより効率よく冷却することができる。
【0068】
また、成形装置200がシート材Q2を冷却する機能を有しているのが好ましい。これにより、シート材Q2が冷却装置1に入る前に予備冷却されることとなり、冷却装置1でさらに効率よく冷却することができる。
【0069】
図2に示すように、チャンバ4は、シート材Q2がベルト23で搬送されている間、シート材Q2をベルト23ごと格納することができる。また、チャンバ4には、シート材Q2が入る入口41と、シート材Q2が出る出口42とが設けられている。ベルト23で搬送されるシート材Q2は、入口41からチャンバ4内に入り、当該チャンバ4内で冷却手段3により冷却されて、出口42から出る。
【0070】
このチャンバ4により、冷却手段3による冷却雰囲気が維持され、よって、シート材Q2をさらに効率よく冷却することができる。また、シート材Q2への異物の混入も防止することもできる。
【0071】
なお、チャンバ4を構成する壁部43は、断熱材で覆われているかまたは断熱材が埋設されているのが好ましい。
【0072】
<第2実施形態>
図4は、本発明の冷却装置の第2実施形態を示す部分断面側面図である。
【0073】
以下、この図を参照して本発明の冷却装置および冷却方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0074】
本実施形態は、冷却手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図4に示す冷却手段3Aでは、各ノズル33がそれぞれ搬送方向Aの下流側に向かって傾斜して設置されている。これにより、各ノズル33からは、それぞれ、冷気G1が搬送方向Aと反対側から排出される。すなわち、冷気G1は、その流れがカウンタフローのものとなる。
【0075】
本実施形態は、前記第1実施形態のように冷気G1が鉛直上方から吹きつけられる場合に比べ、冷却装置1が前記第1実施形態と同等の冷却効率かまたはそれ以上の冷却効率のものとなる。
【0076】
<第3実施形態>
図5は、本発明の冷却装置の第3実施形態を示す部分断面側面図である。
【0077】
以下、この図を参照して本発明の冷却装置および冷却方法の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0078】
本実施形態は、冷却手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図5に示す冷却手段3Bは、シート材Q2に対しその両面側からそれぞれ冷気G1を吹き付けるよう構成されている。以下、これについて説明する。
【0079】
冷却手段3Bでは、ノズル33の他に、ベルト23を介してノズル33と反対側に、冷気生成部32に連通し、当該冷気生成部32からの冷気G1を一旦貯留する貯留部35が配置されている。
【0080】
貯留部35は、箱状をなし、その上部が例えば弾性材料のパッキン351で構成されている。パッキン351は、板状をなし、その厚さ方向に貫通する多数の貫通孔352が形成されている。また、パッキン351は、ベルト23の内周面234に当接している。
【0081】
一方、ベルト23は、その厚さ方向に貫通する多数の貫通孔235が形成されている。各貫通孔235の大きさは、貯留部35の各貫通孔352の大きさよりも大きい。
【0082】
そして、ベルト23が駆動して、所定の貫通孔235が貯留部35のいずれかの貫通孔352と連通したときに、当該貫通孔235から冷気G1が排出される。この冷気G1は、シート材Q2をその下面側から冷却することができる。また、前述したように、各ノズル33からの冷気G1は、シート材Q2をその上面側から冷却することができる。
【0083】
このように、本実施形態では、シート材Q2と冷気G1との接触面積を大きくすることで冷却効果を大きくすることができる。また、シート材Q2をその両面側から冷却することができ、よって、冷却中にシート材Q2に反りが生じ、冷却中にノズル33とシート材Q2とが接触して詰まりが生じるのを防止することができる。
【0084】
<第4実施形態>
図6は、本発明の冷却装置の第4実施形態を示す部分断面側面図である。
【0085】
以下、この図を参照して本発明の冷却装置および冷却方法の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0086】
本実施形態は、冷却手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図6に示す冷却手段3Cでは、互いに温度が異なる冷気G2およびG3をそれぞれ排出するノズル33aおよび33bを有している。例えば、ノズル33aから排出される冷気G2は、ノズル33bから排出される冷気G3よりも温度が高い。この場合、例えば、冷気G2の温度を−20〜0℃、冷気G3の温度を−40〜−20℃とすることができる。また、冷気G2による雰囲気と冷気G3による雰囲気とで別のチャンバ4を備えていてもよい。
【0087】
このような構成により、シート材Q2は、搬送されていく過程で段階的に冷却される。これにより、シート材Q2が過剰な低温で急激に冷却されるのを防止することができ、よって、シート材Q2の不本意な変質を防止することができる。また、冷却中にシート材Q2に反りが生じ、ノズル33aおよび33bとシート材Q2とが接触して詰まりが生じるのを防止することができる。冷却効果は、被冷却体と冷媒との温度差に影響されるため、このような構成により適切な低温状況で冷却できるためエネルギー効率上無駄がない。
【0088】
以上、本発明の冷却装置および冷却方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、冷却装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0089】
また、本発明の冷却装置および冷却方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0090】
また、本発明の冷却装置のベルトは、各実施形態では、積層体で構成され、その最外層が弾性材料等のような非金属で構成されたものとなっているが、これに限定されず、例えば、単層で構成され、その全体が非金属で構成されたものであってもよい。
【0091】
また、本発明の冷却装置の冷却手段は、各実施形態では、複数のノズルが配置されたものであるが、これに限定されず、例えば、1つのノズルが配置されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 冷却装置
2 搬送手段
21 主動プーリ(キャリーローラ)
22 従動プーリ(リターンローラ)
23 ベルト
231 下地層
232 外層
233 外周面(表面)
234 内周面
235 貫通孔
24 アイドルプーリ(ベルトコンベアローラ)
3、3A、3B、3C 冷却手段
31 送風部
32 冷気生成部
33、33a、33b ノズル
331 排気口
34 連結管
35 貯留部
351 パッキン
352 貫通孔
4 チャンバ
41 入口
42 出口
43 壁部
100 混練装置
101 排出口
200 成形装置
201、202 ローラ
203 外層
900 半導体パッケージ(ICパッケージ)
901 半導体チップ(ICチップ)
902 モールド部
903 リードフレーム
904 ワイヤ
A 搬送方向
G0 高圧ガス
G1、G2、G3 冷気
Q1 混練物
Q2 シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に成形された樹脂組成物を、その面方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送されている前記樹脂組成物を冷却する冷却手段とを備え、
前記樹脂組成物は、前記冷却手段で冷却される直前の温度が40〜60℃のものであり、
前記冷却手段は、前記樹脂組成物の冷却速度が0.2〜5℃/秒となるように冷却する冷却能を有することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記樹脂組成物に向けて−40〜0℃の冷気を排出する、少なくとも1つの排気口を有する送風部を備える請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷気は、その湿度が10%以下のものである請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記排気口から前記冷気が排出される際、その圧力は、0.2MPa以上である請求項2または3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記排気口は、前記樹脂組成物の搬送方向に沿って複数配置されている請求項2ないし4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記排気口は、前記冷気を上方から排出する請求項2ないし5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記排気口は、前記冷気を前記樹脂組成物の搬送方向と反対側から排出する請求項2ないし5のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項8】
前記冷却手段は、前記樹脂組成物に対しその両面側からそれぞれ前記冷気を吹き付けるよう構成されている請求項2ないし7のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項9】
前記冷却手段は、前記冷気の温度を段階的に下げていくよう構成されている請求項2ないし8のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項10】
前記搬送手段は、互いに離間して配置された一対のプーリと、該一対のプーリ間に掛け回され、該各プーリが回転することにより、前記樹脂組成物を載置して搬送するベルトとを有し、
前記ベルトは、その少なくとも表面が非金属で構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項11】
前記ベルトは、積層体で構成され、その最も外側に位置する外層が前記非金属で構成されている請求項10に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記樹脂組成物が前記ベルトで搬送されている間、前記樹脂組成物を前記ベルトごと格納し、前記冷却手段による冷却雰囲気を維持するチャンバをさらに備える請求項1ないし11のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項13】
前記樹脂組成物は、混練装置で混練され、その混練物が一対のローラ間で加圧されてシート状に成形されたものであり、
当該冷却装置は、前記一対のローラから前記樹脂組成物が排出される下流側に設置されている請求項1ないし12のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項14】
前記樹脂組成物は、その厚さが5mm以下である請求項1ないし13のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項15】
前記樹脂組成物は、ICパッケージの外装部を構成するモールド部となるものである請求項1ないし14のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項16】
シート状に成形された樹脂組成物を、その面方向に沿って搬送しつつ、冷却する冷却方法であって、
前記樹脂組成物は、当該冷却方法で冷却される直前の温度が40〜60℃のものであり、
前記樹脂組成物の冷却速度が0.2〜5℃/秒となるように冷却することを特徴とする冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183618(P2011−183618A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49762(P2010−49762)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】