説明

冷却装置

【課題】 処理槽内を減圧中、処理槽内へ温水を供給して、その蒸気を巻き込むことで、処理槽内の一層の減圧を図る真空冷却後、冷風冷却を行う冷却装置を、繰り返し運転する場合に、前回の運転により処理槽内に氷が生じていても、それによる不都合を回避する。
【解決手段】 処理槽2内は、被冷却物1が収容される第一領域12と、この第一領域12と連通する第二領域13とに、隔壁11を介して上下に区画されている。下側の第二領域13には、処理槽2内を冷却する冷却器7と、この冷却器7を介して冷風を第一領域12へ供給するファン6とが設けられている。処理槽2内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段3として、水封式の真空ポンプ43を備える。この真空ポンプ43への封水は、処理槽2の底壁の中空部46内を介して供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱後の食品または食材(以下、単に食品という)に代表される各種の被冷却物の冷却を図るための冷却装置に関するものである。特に、被冷却物を収容した処理槽内を減圧することで被冷却物の真空冷却を図った後、同じ処理槽内で被冷却物へ冷風を吹き付けて冷風冷却を図ることができる複合型の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理後の食品の冷却装置として、冷風冷却装置と真空冷却装置とが存在する。冷風冷却装置は、ブラストチラーとして知られ、食品へ冷風を吹き付けて冷却を図る装置である。一方、真空冷却装置は、食品が収容された処理槽内を減圧することで、食品からの水分蒸発を促し、その気化熱を利用して食品の冷却を図る装置である。
【0003】
冷風冷却装置は、通常、チルド域(0℃前後)まで冷却できるが、食品表面へ冷風を当てて冷却する構成のため、食品の中心部が冷えにくく、冷却に時間を要すると共に、温度ムラを生じ易かった。特に、カレーやグラタンなどの食品の場合、食品内部で対流が生じにくいため、冷却に長時間を要し、温度ムラも生じ易かった。さらに、冷風冷却装置は、冷却に時間を要するため、食品が雑菌繁殖温度域に晒される時間が比較的長く、また装置の洗浄も困難であり、衛生面でも改善の余地があった。
【0004】
一方、真空冷却装置は、食品の内部まで均一に冷却でき、しかも冷却速度も速いが、チルド域までの冷却を可能とするには、処理槽内の空気を外部へ吸引排出する減圧手段の構成が大掛かりとなり、コスト高を招くものであった。
【0005】
そこで、本件特許出願人は、冷風冷却装置と真空冷却装置との両装置の短所を互いに補い長所を生かした装置として、同じ処理槽内で冷風冷却と真空冷却とを実行可能に構成した複合型の冷却装置を提案し、先に特許出願を済ませている(特願2006−10880)。この冷却装置によれば、食品の真空冷却を図った後、冷風冷却を図ることで、短時間でムラなく低温まで冷却することができる。しかも、食品が雑菌繁殖温度域に晒される時間が少ないので、衛生的な冷却を図ることができる。
【0006】
この冷却装置は、真空冷却工程後に冷風冷却工程が実行されるが、真空冷却工程は、さらに第一真空冷却工程と第二真空冷却工程とに分けることができる。第一真空冷却工程では、真空ポンプにより処理槽内からの空気排除が図られるが、その後半には、処理槽内へ蒸気および/または温水が供給されて、それによる蒸気を巻き込むことで、処理槽内からの一層の空気排除を図ることができる。その後の第二真空冷却工程では、処理槽内を密閉した状態で冷却器を機能させて、処理槽内の蒸気を凝縮させることで、処理槽内の一層の減圧を図ることができる。そして、処理槽内を大気圧まで復圧後、ファンおよび冷却器を機能させて、冷風冷却工程が実行される。
【0007】
なお、下記特許文献1には、複合型の冷却装置が開示されているが、先に冷風冷却した後に、真空冷却する構成である。このような構成の場合、高温域で冷風冷却するため、冷却に長時間を要すると共に、温度ムラも大きくなり易い。しかも、その後に真空冷却を行う構成では、低温までの冷却には減圧手段の構成が大掛かりなものとなる。
【特許文献1】特開2002−318051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
食品を真空冷却後に冷風冷却する冷却装置においては、最終的に冷風冷却工程により、典型的にはチルド域または冷凍域まで冷却される。そのため、前段の真空冷却工程により生じた蒸気が凝縮した水は、後段の冷風冷却工程により、処理槽内の底部において凍結する場合がある。そのような状態で次の運転を行うと、第一真空冷却工程の後半に、処理槽内へ供給される温水や蒸気は、空気排除のために使われず、処理槽内の底部に残った氷を溶かすのに使用されるおそれがあった。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、真空冷却と冷風冷却とを実行可能な冷却装置において、処理槽内の底部に氷が生じても、次の運転時にそれによる不都合を回避して効率的な減圧を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、処理槽内に収容される被冷却物の真空冷却と冷風冷却とを実行可能に構成された冷却装置であって、前記真空冷却のために、前記処理槽内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段として、水封式の真空ポンプを備え、前記処理槽を構成する壁体内、または前記処理槽内を介して、前記真空ポンプへ封水が供給可能とされたことを特徴とする冷却装置である。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、処理槽内に氷が生じていても、処理槽を構成する壁体内、または処理槽内を介して、真空ポンプへ封水を供給することで、その氷を溶かすことができる。しかも、封水が冷却されるので、効果的に真空冷却を行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記処理槽内は、被冷却物が収容される第一領域と、この第一領域と連通する第二領域とに、隔壁を介して上下に区画されており、前記隔壁より上側に配置される前記第一領域と、前記隔壁より下側に配置される前記第二領域とは、前記隔壁の左右に配置される開口部を介して互いに連通されており、前記第二領域には、前記処理槽内を冷却する冷却器と、この冷却器を介して冷風を前記第一領域へ供給するファンとが設けられており、前記真空ポンプへの封水の一部または全部は、前記処理槽の底壁内を介して前記真空ポンプへ供給されることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第一領域と第二領域とに上下に区画することで、処理槽内に氷が生じる場合でも、その氷は主として処理槽内の底部に生じる。そして、処理槽の底壁内を介して真空ポンプへ封水を供給することで、その氷を溶かすことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記処理槽内は、被冷却物が収容される第一領域と、この第一領域と連通する第二領域とに、隔壁を介して上下に区画されており、前記隔壁より上側に配置される前記第一領域と、前記隔壁より下側に配置される前記第二領域とは、前記隔壁の左右に配置される開口部を介して互いに連通されており、前記第二領域には、前記処理槽内を冷却する冷却器と、この冷却器を介して冷風を前記第一領域へ供給するファンとが設けられており、前記処理槽の底部には、排気管路を介して前記真空ポンプが接続されており、前記真空ポンプへの封水の一部または全部は、前記処理槽内および前記排気管路を介して前記真空ポンプへ供給されることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、第一領域と第二領域とに上下に区画することで、処理槽内に氷が生じる場合でも、その氷は主として処理槽内の底部に生じる。そして、処理槽内を介して真空ポンプへ封水を供給することで、その氷を溶かすことができる。
【0016】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記真空ポンプにより前記処理槽内からの空気排除を図った後、前記処理槽内へ蒸気および/または温水を供給して、それによる蒸気と共に前記処理槽内からの一層の空気排除を図る第一真空冷却工程と、前記処理槽内を密閉した状態で前記冷却器を機能させて、前記処理槽内の蒸気を凝縮させることで、前記処理槽内の一層の減圧を図る第二真空冷却工程と、前記処理槽内を大気圧まで復圧後、前記ファンおよび前記冷却器を機能させる冷風冷却工程と、を順次に繰り返し実行する冷却装置であって、前記第一真空冷却工程において、前記処理槽を構成する壁体内、または前記処理槽内を介して、前記真空ポンプへ封水が供給されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の冷却装置である。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、処理槽内の気体を外部へ吸引排出する第一真空冷却工程の後半には、処理槽内に蒸気を生じさせて、その蒸気を巻き込むことで、更なる減圧が図られる。そして、処理槽内を密閉した状態で、処理槽内の蒸気を凝縮させて一層の減圧を図った後、冷風冷却が図られる。この冷風冷却により、処理槽内に氷が生じても、次の運転時には、第一真空冷却工程において、処理槽を構成する壁体内、または処理槽内を介して、真空ポンプへ封水を供給することで、その氷を溶かすので、その後半に行われる蒸気を巻き込んだ空気排除を有効に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の冷却装置によれば、加熱後の食品などの被冷却物を、真空冷却後に冷風冷却することで、短時間でムラなく衛生的に低温まで冷却することができる。しかも、処理槽内の底部に氷が生じても、次の運転時にそれによる不都合を回避して効率的な減圧を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。
本発明の冷却装置は、被冷却物を収容した処理槽内を減圧することで、被冷却物の真空冷却を図ることができ、且つ、同じ処理槽内で被冷却物へ冷風を吹き付けて、被冷却物の冷風冷却を図ることができる複合型の冷却装置である。この冷却装置にて冷却を図られる被冷却物は、その種類を特に問わないが、典型的には加熱調理後の食品とされる。
【0020】
本実施形態の冷却装置は、被冷却物が収容される処理槽、この処理槽内を減圧する減圧手段、減圧された処理槽内を復圧する復圧手段、処理槽内で風を起こすファン、処理槽内の気体を冷却し特にファンによる風を冷却する冷却器の他、制御手段を備える。また、冷却装置には、処理槽内の圧力を検出する圧力センサ、処理槽内の温度を検出する温度センサ、処理槽内の被冷却物の温度を検出する品温センサの内、いずれか一以上のセンサが備えられる。
【0021】
処理槽は、被冷却物を収容可能に中空構造に形成され、典型的には略矩形のボックス状に形成された金属製の缶体である。処理槽は、被冷却物が収容される第一領域と、この第一領域と連通する第二領域とを有する。本実施形態では、第一領域と第二領域とは、隔壁を介して上下に区画されると共に、その隔壁の左右に配置した開口部を介して互いに連通される。この開口部は、隔壁自体に形成してもよいし、隔壁の端縁と処理槽の壁面との隙間により形成してもよい。
【0022】
本実施形態では、隔壁は略矩形の板状とされ、処理槽内の上下方向中央部において水平に配置される。そして、隔壁より上部を第一領域とし、隔壁より下部を第二領域とするのがよい。但し、第一領域と第二領域とは、水平な隔壁を介して上下に配置するだけでなく、垂直な隔壁を介して、前後または左右に配置してもよい。
【0023】
処理槽内の第一領域は、被冷却物の収容空間とされる。第一領域への被冷却物の出し入れを行うために、処理槽の正面には、第一領域と対応した位置に、扉が開閉可能に設けられる。この扉は、パッキンを介して処理槽に対し気密状態に閉じられる。ところで、被冷却物は、処理槽内の第一領域に、直接にまたは適宜の容器に入れられて収容される。第一領域内には、被冷却物を収容する棚を設けておくのがよい。本実施形態では、被冷却物が収容された容器を保持する棚枠が、処理槽内の第一領域に対し着脱可能に設けられる。
【0024】
処理槽内の第二領域には、ファンと冷却器とが設けられる。ファンによる風は、冷却器にて冷却されて、開口部を介して第二領域から第一領域へ送られる。本実施形態では、第一領域と第二領域とは、隔壁を介して区画され、その隔壁の左右に開口部を配置している。そして、ファンからの冷風は、一方の開口部を介して第二領域から第一領域へ送られ、第一領域内の被冷却物の冷却を図った後、他方の開口部を介して第一領域から第二領域へ戻される。このように、本実施形態によれば、処理槽内の空気は、第一領域と第二領域との間で循環を図られる。
【0025】
冷却器は、被冷却物を冷風冷却によりチルド域まで冷却可能な低温(たとえば−10℃以下)とすることができる熱交換器である。本実施形態では、冷凍機のコンデンシングユニットから供給される液化冷媒を蒸発させて、処理槽内の気体を冷却する蒸発器から構成される。
【0026】
減圧手段は、処理槽内の空気や蒸気を外部へ吸引排出することで、処理槽内を減圧する手段である。この減圧手段として、少なくとも水封式真空ポンプが備えられる。水封式真空ポンプは、周知のとおり、封水と呼ばれる水が供給されて作動する。
【0027】
より具体的には、本実施形態では、放射状に配置された羽根をもつインペラは、封水が供給されるケーシング内に、そのケーシングと偏心して設置されている。従って、インペラを高速回転させると、ケーシング内に水環ができ、しかもインペラとケーシングとを偏心させているので、一回転するたびに内部の気体が膨張と圧縮とを繰り返すことになる。そこで、ケーシングの適切な位置に吸気口と排気口とを設けておくことで、外部の気体を吸排気することができる。通常、ケーシングには、吸気口と排気口との他に給水口が設けられており、その給水口からケーシング内へ封水が供給される。
【0028】
このような構成の真空ポンプは、その吸気口が排気管路を介して処理槽に接続される。排気管路の中途には、真空弁が設けられており、この真空弁を閉じることで、処理槽内を密閉できる。排気管路の中途には、蒸気を凝縮させるための熱交換器を備えてもよい。
【0029】
真空ポンプを機能させるために必要な封水は、その一部または全部が、処理槽を構成する壁体内、または処理槽内を介して、真空ポンプへ供給可能とされる。具体的には、処理槽の補強材などを利用して、処理槽の底壁内を介して真空ポンプの給水口へ封水が供給される。あるいは、処理槽内へ直接に封水を供給して、排気管路を介して真空ポンプの吸気口へ封水を供給してもよい。この場合、真空ポンプの給水口へも、給水管路を介して別途、封水を直接に供給してもよい。いずれの場合も、排気管路は、処理槽の底部に接続しておくのが好ましい。
【0030】
復圧手段は、減圧手段により減圧された処理槽内へ外気を導入して、処理槽内を復圧する手段である。具体的には、減圧された処理槽内へ外気を導入して、処理槽内を大気圧まで復圧することができる。処理槽内への外気の導入は、衛生面を考慮して、フィルターを介して行うのが望ましい。フィルターを介した清浄空気は、給気管路を介して処理槽内へ供給される。給気管路の中途に設けた真空解除弁を開閉することで、処理槽内への外気導入の有無が切り替えられる。
【0031】
制御手段は、減圧手段、復圧手段、ファンおよびコンデンシングユニットなどを制御する制御器である。逆にいうと、これら各構成は、制御手段により制御され、予め設定されたプログラムに従い、所定の工程が順次に実行される。その際、圧力センサにより検出される処理槽内圧力、温度センサにより検出される処理槽内温度、品温センサにより検出される被冷却物温度や、経過時間を用いて制御される。
【0032】
冷却装置の運転方法は、特に限定されるものではないが、少なくとも、真空冷却工程後に冷風冷却工程を実行可能に構成される。この場合、前段の真空冷却工程では、被冷却物の内部まで均一に冷却できるので、温度ムラが生じることがなく、しかも迅速な冷却を図ることができる。そして、後段の冷風冷却工程では、さらに低温(典型的にはチルド域または冷凍域)まで冷却することができる。真空冷却により予め温度ムラなく冷却した後にさらに冷風冷却を図ることで、冷風冷却により仮に温度ムラが生じても、その温度差を微小範囲に抑えることができる。しかも、真空冷却のみでは、大掛かりな減圧手段が必要になる低温までの冷却を図ることができる。
【0033】
真空冷却工程は、好ましくは第一真空冷却工程と第二真空冷却工程とに分けられる。第一真空冷却工程は、減圧手段により処理槽内を減圧することで、被冷却物の真空冷却を図る工程である。この第一真空冷却工程の後半には、処理槽内へ蒸気および/または温水を供給して、その蒸気と共に処理槽内の空気を減圧手段により排出するのがよい。これにより、減圧能力をさらに高めることができる。
【0034】
その後の第二真空冷却工程では、処理槽内を密閉した状態で冷却器を機能させる。これにより、処理槽内の蒸気を凝縮して処理槽内をさらに減圧でき、被冷却物の真空冷却をさらに図ることができる。このような第二真空冷却工程の終了後には、処理槽内を大気圧まで復圧後、ファンおよび冷却器を機能させて、被冷却物の冷風冷却を図る冷風冷却工程がなされる。
【0035】
以上のとおり、典型的な冷却運転では、真空冷却工程後に冷風冷却工程が実行されるが、そのような一連の冷却運転を繰り返し実行したい場合ある。すなわち、真空冷却工程後に冷風冷却工程を実行して、冷却運転を終了すると、処理槽内の被冷却物を入れ替えて、引き続き次の冷却運転を同様に行いたい場合がある。
【0036】
ここで、前の冷却運転により、処理槽内の底部には、氷が生じている場合がある。なぜなら、真空冷却工程では、蒸気の凝縮水が生じる反面、その後の冷風冷却工程では、チルド域または冷凍域まで冷却を図るので、前記凝縮水が凍結するおそれがあるからである。従って、そのような状態のまま次の冷却運転を実行すると、第一真空冷却工程の後半に処理槽内へ供給される温水や蒸気は、空気排除のために使われず、処理槽内の底部に残った氷を溶かすのに使用され、空気排除が有効になされないおそれがある。
【0037】
ところが、本発明の冷却装置によれば、第一真空冷却工程のために真空ポンプを作動させる際、その作動のために必要な封水の少なくとも一部は、処理槽を構成する壁体内、または処理槽内を介して真空ポンプへ供給される。これにより、第一真空冷却工程の後半において、処理槽内へ温水や蒸気を供給するまでには、処理槽内の氷を溶かしておくことができる。従って、第一真空冷却工程において、処理槽内からの空気排除を効果的になすことができ、減圧能力を向上することができる。そのために、処理槽内またはその壁体内を介した真空ポンプへの封水の供給は、第一真空冷却工程の初期に行うのがよい。ところで、このような封水の供給制御は、封水温度を下げることになるので、真空ポンプによる減圧能力を一層高めることができる。
【0038】
本実施形態の冷却装置は、真空冷却後に冷風冷却可能な構成であるが、場合により、冷風冷却後に真空冷却したり、真空冷却のみを実行したり、冷風冷却のみを実行したりしてもよい。すなわち、複合型冷却装置として以外に、真空冷却装置として、あるいは冷風冷却装置としても利用可能に構成することができる。このように構成することで、様々な被冷却物の冷却に対応することができる。
【実施例1】
【0039】
以下、この発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の冷却装置の実施例1を示す概略構成図である。また、図2および図3は、本実施例の冷却装置の処理槽を示す縦断面図と分解斜視図である。本実施例の冷却装置は、加熱調理後の食品などの被冷却物1を、真空冷却すると共にその後、冷風冷却することができる複合型の冷却装置である。
【0040】
冷却装置は、被冷却物1が収容される処理槽2、この処理槽2内を減圧する減圧手段3、減圧された処理槽2内を復圧する復圧手段4、処理槽2内へ蒸気および/または温水を供給する給蒸手段5、処理槽2内に風を起こすファン6、処理槽2内の気体を冷却し特にファン6による風を冷却する冷却器7の他、制御手段8を備える。
【0041】
処理槽2は、略矩形の中空ボックス状に形成された金属製の缶体である。処理槽2は、処理槽本体9に扉10が開閉可能に設けられて構成される。処理槽本体9は、上下方向中央部に隔壁11が設けられて、内部空間が上下に仕切られる。この隔壁11は、薄いステンレス板から構成され、処理槽本体9に対し着脱可能で水平に保持される。これにより、処理槽本体9内には、隔壁11より上部に第一領域12が形成され、隔壁11より下部に第二領域13が形成される。
【0042】
処理槽本体9の第一領域12は、正面へ開口しており、この略矩形の開口14は、扉10により開閉可能とされる。この開口14の周囲は、扉10が閉じられる際の扉10への戸当り面15とされる。この戸当り面15には、開口14を取り囲むように、パッキン16が設けられている。このパッキン16を介して扉10が閉じられることで、処理槽本体9の開口14を気密状態に閉じることができる。
【0043】
略矩形板状の隔壁11は、前後方向寸法が処理槽本体9の前後方向内寸に対応しており、左右方向寸法が処理槽本体9の左右方向内寸よりも小さい。このような隔壁11は、処理槽本体9の上下方向中央部で且つ左右方向中央部に設けられる。これにより、処理槽本体9に隔壁11を設置した状態では、隔壁11の左右にそれぞれ前後に細長い略矩形状の開口部17,18が形成される。この左側開口部17と右側開口部18とを介して、第一領域12と第二領域13とは互いに連通される。
【0044】
左右の各開口部17,18には、それぞれダクト壁19,20が設けられる。各ダクト壁19,20は、前後に細長い中空の略直方体状であり、下方へ開口して形成されている。各ダクト壁19,20は、熱容量を小さく形成するのが好ましく、たとえば厚さ1〜2mm程度の薄いステンレス板により形成される。各ダクト壁19,20の下端部には、左右方向外側へ延出して、取付片21が形成されている。この取付片21が処理槽本体9の保持部22に載せられて、処理槽本体9に各ダクト壁19,20が着脱可能に設置される。この際、各ダクト壁19,20は、取付片21が隔壁11と同じ高さに設置される。各ダクト壁19,20は、下端部の大きさが、左右の各開口部17,18の大きさにそれぞれ対応している。
【0045】
このようにして、第一領域12内の左右両端部には、それぞれダクト壁19,20が設けられる。この際、各ダクト壁19,20は、処理槽本体9の左右の壁面との間に隙間を空けて設置される。すなわち、左側ダクト壁19の左側面23は、処理槽本体9の左壁面と離隔して配置され、右側ダクト壁20の右側面24は、処理槽本体9の右壁面と離隔して配置される。また、各ダクト壁19,20は、前後および上部においても、処理槽2との間にそれぞれ隙間を空けられる。
【0046】
左右のダクト壁19,20は、同一高さ寸法としてもよいが、図示例のように、左側ダクト壁19は右側ダクト壁20よりも低く形成してもよい。また、左側ダクト壁19には、右側面25および上面26にのみ、多数の連通穴27,27,…をパンチングメタル状に形成している。一方、右側ダクト壁20には、左側面28にのみ多数の連通穴27,27,…をパンチングメタル状に形成している。左側ダクト壁19の右側面25だけでなく上面26にも多数の連通穴27,27,…を形成するのは、左側ダクト壁19は右側ダクト壁20よりも低く形成しているため、冷風冷却時に冷風の流通を良好に保つためである。従って、左右のダクト壁19,20を同一の高さまたは左側ダクト壁19を右側ダクト壁20よりも高く形成した場合には、左側ダクト壁19の上面に多数の連通穴27,27,…を形成しなくてもよい。
【0047】
本実施例では、左側ダクト壁19の内部は中空であるが、右側ダクト壁20の内部には適宜のベーン29,29,…が設けられる。このベーン29は、冷風冷却時に、冷風の流れ方向を調整する羽根である。ベーン29の構成および取付位置や取付個数は、左右のダクト壁19,20間に収容される被冷却物1の配置などに応じて適宜に設定される。本実施例では、左右のダクト壁19,20間には、棚枠30を用いて上下に五つのホテルパン31,31,…が配置されるので、その各ホテルパン31の上面へ冷風が吹き込むように、四つのベーン29が上下に離隔して設けられる。これにより、右側ダクト壁20の下部開口から供給された冷風は、各ベーン29により方向付けされて、左側面28の連通穴27から排出される。
【0048】
各ベーン29の形状は、適宜に変更可能であり、図示例では略矩形板状としているが、略半円筒状などに形成してもよい。また、各ベーン29は、図示例のように角度調整可能に設けるのがよい。その際、各々のベーン29ごとに位置調整可能としてもよいし、複数のベーン29を連動させて位置調整可能としてもよい。さらに、本実施例では、冷風の吹出し側となる右側ダクト壁20にのみベーン29を設けたが、場合により左側ダクト壁19にもベーン29を設けてもよい。さらに、ベーン29は、ダクト壁20(19)内に収容する以外に、ダクト壁20(19)の側面に露出させて設けてもよい。
【0049】
処理槽2には、左右のダクト壁19,20間に、被冷却物1が収容される。本実施例では、隔壁11の上面に棚枠30が載せられて設置され、被冷却物1を収容したホテルパン31が棚枠30に対し出し入れされる。本実施例の棚枠30は、ステンレス製であり、枠材が略直方体状に組み立てられて構成される。すなわち、棚枠30は、棒材などを組み合わせて構成され、前後、左右および上下に開口した略直方体状とされる。そして、左右両側面部には、それぞれ前後方向へ延出して、略L字形状材32,32,…が上下に複数設けられる。図示例では、左右それぞれに五本ずつ、上下に等間隔でしかも左右で対応した位置に、略L字形状材32が設けられる。各略L字形状材32は、棚枠の左右の縦材に垂直片33が固定され、この垂直片33の上端部に左右方向内側へ延出して水平片34が配置されて設けられる。
【0050】
ホテルパン31は、周知のとおり、上方へのみ開口した略矩形状のステンレス製容器であり、上端部には外周に沿ってツバ部35が形成されている。従って、ホテルパン31は、対向する二辺のツバ部35が、左右の略L字形状材32,32の水平片34,34に載せられて、棚枠30に水平に保持される。本実施例では、棚枠30には、前後に二つずつ、且つ上下に五つずつ、合計十個のホテルパン31が収容可能とされる。棚枠30に対するホテルパン31の出し入れは、棚枠30の前方から行うことができる。
【0051】
棚枠30の上部には、天板36が設けられる。本実施例の天板36は、前記ダクト壁19,20と同様に、熱容量を小さく形成するのが好ましく、たとえば厚さ1〜2mm程度の薄いステンレス板により形成される。本実施例の天板36は、左側へ行くに従って下方へ傾斜するように、棚枠30の左右上端部において前後方向へ延びる枠材37,37に、着脱可能に載せられて設けられる。天板36は、凝縮水が左端辺からのみ落下するように、前後両端辺には、上方への延出部38,38が折り曲げ形成されている。天板36は、棚枠30の上部を覆う大きさであり、右側端部が右側ダクト壁20の上部にかかるように配置され、左側端部が左側ダクト壁19にまで達することなく終了するよう配置される。
【0052】
処理槽2には、処理槽2内の圧力を計測する圧力センサ39と、処理槽2内の温度を計測する温度センサ40とが備えられる。さらに、処理槽2内に収容される被冷却物1の温度を計測する品温センサ41も備えられる。本実施例の品温センサ41は、被冷却物1へ検温部を差し込んで、被冷却物1の温度を計測する構成である。
【0053】
処理槽2には、処理槽2内の空気や蒸気を外部へ吸引排出して、処理槽2内を減圧する減圧手段3が接続される。本実施例では、排気管路42を介して処理槽2には、水封式真空ポンプ43が接続される。排気管路42は、処理槽2の底部に接続されている。排気管路42の中途には、処理槽2の側から順に、真空弁44と逆止弁45とが設けられる。真空弁44は、排気管路42を開閉するものであり、本実施例ではモータバルブから構成される。
【0054】
水封式真空ポンプ43は、周知のとおり、封水と呼ばれる水が供給されて作動される。より具体的には、本実施例では、放射状に配置された羽根をもつインペラ(図示省略)は、封水が供給される円筒状ケーシング(図示省略)内に、ケーシングと偏心して設置されている。従って、インペラを高速回転させると、ケーシング内に水環ができ、しかもインペラとケーシングとを偏心させているので、一回転するたびに内部の気体が膨張と圧縮とを繰り返すことになる。そこで、ケーシングの適切な位置に吸気口と排気口とを設けておくことで、外部の気体を吸排気することができる。ケーシングには、さらに給水口が設けられており、その給水口からケーシング内へ封水が供給される。
【0055】
本実施例では、封水は、処理槽2を構成する壁体内を介して、真空ポンプ43へ供給される。より具体的には、処理槽2の補強材などを利用して、処理槽2の底壁の一部または全部に、中空部46を設けておき、この中空部46を介して封水が真空ポンプ43へ供給される。図示例では、処理槽2の底面左半分に中空部46が設けられ、真空ポンプ43への封水の供給時には、中空部46は封水で満たされる。
【0056】
前記中空部46には、真空ポンプ43に連動して開かれる封水弁47を介して水が供給され、その水は真空ポンプ43の給水口へ供給される。これにより、真空ポンプ43を機能させることができる。そして、真空ポンプ43の吸気口には、処理槽2からの排気管路42が接続され、真空ポンプ43の排気口には、排気セパレータ48が接続される。従って、処理槽2内から吸引した気体は、排気セパレータ48にて気水分離された後、排気および排水される。
【0057】
処理槽2には、減圧手段3にて減圧された後、復圧するための復圧手段4が接続されている。本実施例の復圧手段4は、処理槽2に接続された給気管路49が、除菌フィルター50を介して外気と連通可能に設けられている。この給気管路49の中途には、真空解除弁51が設けられている。この真空解除弁51は、給気管路49を開閉するものであり、本実施例ではモータバルブから構成される。真空解除弁51の開放により、処理槽2内は大気圧に開放可能とされる。
【0058】
処理槽2には、処理槽2内へ蒸気および/または温水を供給する給蒸手段5が接続されている。この給蒸手段5は、ボイラから構成してもよいが、本実施例では、温水タンク52により構成される。この温水タンク52には、給水弁53を介して水が供給され、ヒータ54により所定温度に温められて温水として貯留される。本実施例では、温水タンク52は、処理槽2の下部に給蒸管路55を介して接続されており、その中途には給蒸弁56が設けられている。この給蒸弁56は、給蒸管路55を開閉するものであり、本実施例ではモータバルブから構成される。
【0059】
処理槽2内の減圧状態で給蒸弁56を開くことで、差圧により、温水タンク52内の蒸気は温水を伴って処理槽2内へ自然に供給される。温水をも処理槽2内へ供給することで、温水タンク52内における水の濃縮を防止することができる。処理槽2内に供給された温水は、減圧下で一層蒸発を促されて、処理槽2内に蒸気を充満させる。その一方で、余分な温水や、蒸気の凝縮水は、減圧手段3により外部へ直ちに排出される。ところで、処理槽2内へ蒸気および/または温水を供給することで、後述する冷却器7の除霜を図ることもできる。
【0060】
処理槽2の底部には、さらに排水手段57が備えられる。この排水手段57は、排水管路58とその中途部に設けられる排水弁59および逆止弁60から構成される。排水管路58は、処理槽2側の一部が排気管路42と共通化されている。処理槽2内を洗浄した際、その洗浄水は、排水管路58を介して排水口へ排水される。
【0061】
処理槽2内の第二領域13には、ファン6および冷却器7が設けられている。本実施例では、第二領域13には、左側にファン6が設置され、その右側に冷却器7が設置される。ファン6は、複数枚の羽根61が、処理槽2外に配置したモータ62により駆動軸63を介して回転駆動される構成である。処理槽2内の第二領域13には、第二領域13を左右に仕切るように垂直板64が設けられており、その垂直板64の中央に貫通して設けられた円筒材65の内側に、ファン6の羽根61が回転可能に設けられる。
【0062】
冷却器7は、周知の構成の冷凍機66の蒸発器67から構成される。具体的には、冷却器7は、冷媒管路68を介してコンデンシングユニット69と接続されている。コンデンシングユニット69は、アキュムレータ70、圧縮機71および凝縮機72を備える。コンデンシングユニット69からの液化冷媒は、液電磁弁73および膨張弁74を介して蒸発器67へ供給され、この蒸発器67にて液化冷媒を蒸発させることで、蒸発器67は冷却器7として機能する。
【0063】
従って、ファン6からの風は、冷却器7にて冷却された後、右側開口部18から右側ダクト壁20を介して第一領域12内へ供給され、左側ダクト壁19を介して第二領域13へ戻される。このようにして、処理槽2内には、冷風の循環流を形成することができる。この際、垂直板64および冷却器7は、第二領域13の縦断面全域をそれぞれ塞ぐ位置に設けられるので、循環流のショートパスを防止して、ファン6および冷却器7を介した風のみを第一領域12へ供給可能とされる。ところで、上述したように、冷却器7の除霜を図りたい場合には、給蒸手段5により処理槽2内へ蒸気および/または温水を供給すればよい。
【0064】
減圧手段3、復圧手段4、給蒸手段5、排水手段57、ファン6および冷凍機66は、制御手段8により制御される。この制御手段8は、それが把握する経過時間や前記各センサ39,40,41からの検出信号などに基づいて、前記各構成3,4,5,6,57,66を制御する制御器75である。具体的には、真空弁44、真空ポンプ43、封水弁47、真空解除弁51、給水弁53、給蒸弁56、排水弁59、ファン6のモータ62、冷凍機66のコンデンシングユニット69および液電磁弁73の他、圧力センサ39、温度センサ40および品温センサ41は、制御器75に接続される。そして、制御器75は、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽2内の被冷却物1の冷却処理を行う。
【0065】
図4は、本実施例の冷却装置による冷却処理の典型例を示すフローチャートである。基本的には、被冷却物1の真空冷却を図った後、冷風冷却を図る構成である。しかしながら、被冷却物1の温度が比較的高温の場合には、まず粗熱取り工程S1を行うのが好ましい。この粗熱取り工程S1は、被冷却物1を冷風冷却または送風冷却する工程である。
【0066】
冷風冷却のためには、処理槽2内を密閉した状態で、冷凍機66およびファン6を作動させて、被冷却物1に冷風を吹き付けて冷却を図ればよい。一方、送風冷却のためには、真空解除弁51および真空弁44を開いた状態で、真空ポンプ43を作動させればよい。これにより、処理槽2内へ外気を導入しつつ排出することで、被冷却物1の冷却が図られる。送風冷却時には、冷凍機66およびファン6は停止すると共に、給蒸弁56および排水弁59は閉じた状態とされる。
【0067】
このようにして、被冷却物1の温度がたとえば90℃から70℃になると、次工程の真空冷却工程へ移行する。本実施例では、真空冷却工程は第一真空冷却工程S2と第二真空冷却工程S3とに分けて実行され、第一真空冷却工程S2では冷凍機66およびファン6は作動させない。
【0068】
第一真空冷却工程S2では、処理槽2を密閉した状態で、真空弁44および封水弁47を開いて真空ポンプ43を作動させ、処理槽2内の空気を外部へ吸引排出して、処理槽2内を減圧する。第一真空冷却工程S2の後半には、減圧手段3を作動させた状態のまま、給蒸弁56を一時的に開いて処理槽2内へ温水を伴って蒸気を供給する。これにより、処理槽2内に蒸気を充満させ、その蒸気を巻き込むことで、処理槽2内の空気排除を一層確実に行うことができる。この際、減圧手段3を作動させているので、余分な温水は、処理槽2内から直ちに排出される。このようにして、真空ポンプ43の能力限界程度にまで処理槽2内を減圧する。この第一真空冷却工程S2により、被冷却物1の温度は、たとえば40℃程度にまで速やかに冷却される。
【0069】
その後の第二真空冷却工程S3では、真空弁44および封水弁47を閉じて真空ポンプ43を停止させる。そして、処理槽2内を密閉した状態で、冷凍機66を作動させて冷却器7により処理槽2内の蒸気を凝縮させて、処理槽2内をさらに減圧して被冷却物1を真空冷却する。この際、ファン6は作動する必要はない。このようにして、被冷却物1の温度は、たとえば10℃にまで冷却される。第二真空冷却工程S3が終了すると、冷凍機66の運転を停止する。その後の復圧工程S4では、真空解除弁51を開いて、処理槽2内を大気圧まで復圧する。
【0070】
その後の冷風冷却工程S5では、再び処理槽2内を密閉した状態で、冷凍機66およびファン6を作動させる。各真空冷却工程S2,S3において被冷却物1から生じた蒸気は、主として処理槽2の壁面に凝縮して、処理槽2の壁面温度を上昇させているが、冷風冷却工程S5では、冷風はダクト壁19,20を介して被冷却物1へ供給されるので、処理槽2の壁面が高温であってもその影響を最小限に抑えて、冷風冷却を効率的に行うことができる。仮にダクト壁19,20自体の温度が上昇していても、ダクト壁19,20は処理槽壁に対し熱容量が小さいので、ダクト壁19,20自体は速やかに冷却され、その後は冷風の温度上昇を抑えて、冷風冷却が図られる。この冷風冷却工程S5により、被冷却物1は、たとえば3℃まで冷却される。但し、場合により冷凍する領域まで冷却してもよい。
【0071】
以上のとおり、典型的な冷却運転では、真空冷却工程後に冷風冷却工程が実行されるが、そのような一連の冷却運転を繰り返し実行したい場合ある。すなわち、真空冷却工程後に冷風冷却工程を実行して、冷却運転を終了すると、処理槽2内の被冷却物1を入れ替えて、引き続き次の冷却運転を同様に行いたい場合がある。
【0072】
ところが、真空冷却工程では、蒸気の凝縮水が生じる反面、その後の冷風冷却工程では、チルド域または冷凍域まで冷却を図るので、処理槽2の底部に氷を生じている可能性がある。従って、そのような状態のまま次の冷却運転を実行すると、第一真空冷却工程S2の後半に処理槽2内へ供給される温水や蒸気は、空気排除のために使われず、処理槽2内の底部に残った氷を溶かすのに使用され、空気排除が有効になされないおそれがある。
【0073】
しかしながら、本実施例の冷却装置によれば、第一真空冷却工程S2のために真空ポンプ43を作動させる際、その作動のために必要な封水は、処理槽2の底部の中空部46内を介して真空ポンプ43へ供給される。これにより、処理槽2内の底部に氷が生じている場合でも、処理槽2内へ温水や蒸気を供給するまでには、処理槽2内の氷を溶かしておくことができる。従って、第一真空冷却工程S2において、処理槽2内からの空気排除を効果的に行うことができ、減圧能力を向上することができる。しかも、このようにして真空ポンプ43へ封水を供給することで、封水の温度を下げることができ、真空ポンプ43による減圧能力を一層高めることができる。
【0074】
ところで、本実施例の冷却装置は、真空冷却後に冷風冷却する構成に加えて、運転プログラムの変更により、真空冷却または冷風冷却のいずれかのみ機能させて運転するよう構成することもできる。さらに、真空冷却後に冷風冷却する構成に加えて、冷風冷却後に真空冷却するよう構成こともできる。これらの場合における真空冷却工程や冷風冷却工程は、上述した各工程と同様の工程である。但し、真空冷却工程は、第一真空冷却工程S2および第二真空冷却工程S3の一方または双方の工程をいう。
【0075】
本実施例の冷却装置は、扉10を空けて処理槽本体9の開口から、棚枠30や天板36の他、左右のダクト壁19,20を取り外すと共に、隔壁11を取り外すことができる。これにより、処理槽2内の洗浄が容易に行えると共に、処理槽2内から取り外した前記各部品11,19,20,30,36の洗浄も容易に行える。そして、洗浄後に仮に洗浄液が冷却器7に残っていても、冷却器7は処理槽2の下部に設置しているので、被冷却物1への混入は防止される。
【実施例2】
【0076】
図5は、本発明の冷却装置の実施例2を示す概略構成図である。本実施例2の冷却装置も、基本的には前記実施例1の冷却装置と同様の構成であり、冷却運転の制御フローも同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、両者で同一の点については説明を省略する。また、前記実施例1と対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0077】
前記実施例1では、処理槽2の底壁の中空部46内を介して真空ポンプ43の給水口へ封水を供給したが、本実施例2では、処理槽2内へ直接に封水を流し込んで、その封水は排気管路42を介して真空ポンプ43の吸気口へ供給される。これにより、真空ポンプ43を機能させることが可能となる。但し、このような構成に加えて、図示例のように、真空ポンプ43の給水口へも別途、給水管路76から封水を直接に供給可能としてもよい。図示例では、処理槽2内への給水と、真空ポンプ43の給水口への給水は、一つの封水弁47で同時に開閉される構成とされている。但し、処理槽2内への給水管路76と、真空ポンプ43の給水口への給水管路76との双方に、封水弁47を設けておけば、いずれのルートを介して真空ポンプ43へ封水を供給するかの選択が可能となる。
【0078】
本発明の冷却装置は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例1では、処理槽2の底壁の一部に中空部46を設けて、そこに封水を流したが、処理槽2内における氷が生じ易い場所に応じて、封水を流す経路は適宜に変更される。そのため、前記実施例2においても、処理槽2のいずれの箇所から封水を流し込むかは、適宜に変更可能である。また、前記各実施例において、場合により第二真空冷却工程S3を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の冷却装置の実施例1を示す概略構成図である。
【図2】図1の冷却装置の処理槽を示す縦断面図であり、冷風冷却時の風の流れを示している。
【図3】図1の冷却装置の処理槽内の部品の分解斜視図である。
【図4】図1の冷却装置による冷却処理の典型例を示すフローチャートである。
【図5】本発明の冷却装置の実施例2を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0080】
1 被冷却物
2 処理槽
3 減圧手段
4 復圧手段
6 ファン
7 冷却器
11 隔壁
12 第一領域
13 第二領域
17 左側開口部
18 右側開口部
42 排気管路
43 真空ポンプ
46 中空部(底壁内)
S2 第一真空冷却工程
S3 第二真空冷却工程
S5 冷風冷却工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に収容される被冷却物の真空冷却と冷風冷却とを実行可能に構成された冷却装置であって、
前記真空冷却のために、前記処理槽内の気体を外部へ吸引排出する減圧手段として、水封式の真空ポンプを備え、
前記処理槽を構成する壁体内、または前記処理槽内を介して、前記真空ポンプへ封水が供給可能とされた
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記処理槽内は、被冷却物が収容される第一領域と、この第一領域と連通する第二領域とに、隔壁を介して上下に区画されており、
前記隔壁より上側に配置される前記第一領域と、前記隔壁より下側に配置される前記第二領域とは、前記隔壁の左右に配置される開口部を介して互いに連通されており、
前記第二領域には、前記処理槽内を冷却する冷却器と、この冷却器を介して冷風を前記第一領域へ供給するファンとが設けられており、
前記真空ポンプへの封水の一部または全部は、前記処理槽の底壁内を介して前記真空ポンプへ供給される
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記処理槽内は、被冷却物が収容される第一領域と、この第一領域と連通する第二領域とに、隔壁を介して上下に区画されており、
前記隔壁より上側に配置される前記第一領域と、前記隔壁より下側に配置される前記第二領域とは、前記隔壁の左右に配置される開口部を介して互いに連通されており、
前記第二領域には、前記処理槽内を冷却する冷却器と、この冷却器を介して冷風を前記第一領域へ供給するファンとが設けられており、
前記処理槽の底部には、排気管路を介して前記真空ポンプが接続されており、
前記真空ポンプへの封水の一部または全部は、前記処理槽内および前記排気管路を介して前記真空ポンプへ供給される
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記真空ポンプにより前記処理槽内からの空気排除を図った後、前記処理槽内へ蒸気および/または温水を供給して、それによる蒸気と共に前記処理槽内からの一層の空気排除を図る第一真空冷却工程と、
前記処理槽内を密閉した状態で前記冷却器を機能させて、前記処理槽内の蒸気を凝縮させることで、前記処理槽内の一層の減圧を図る第二真空冷却工程と、
前記処理槽内を大気圧まで復圧後、前記ファンおよび前記冷却器を機能させる冷風冷却工程と、を順次に繰り返し実行する冷却装置であって、
前記第一真空冷却工程において、前記処理槽を構成する壁体内、または前記処理槽内を介して、前記真空ポンプへ封水が供給される
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−107018(P2008−107018A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290863(P2006−290863)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】