説明

処理チャンバおよび処理装置

【課題】 処理チャンバ内部の寸法を小さくせずに、外形寸法の拡大を抑え、かつ重量の軽減を図る。
【解決手段】 真空チャンバ10の本体10aの長手方向の側壁61a,61bの壁厚Lは、側壁62a,62bの壁厚Lに比べて小さく形成され、蓋体10bの上部側壁63a,63bの壁厚は、上部側壁64a,64bの壁厚に比べて小さく形成されている。使用時には、側壁61a,61bおよび上部側壁64a,64bの強度を補うため、補強板90a〜90dが着脱可能に外付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理チャンバおよび処理装置に関し、詳細には、フラットパネルディスプレイ(FPD)等の製造過程において、基板処理に使用される大型の処理チャンバおよび処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FPDの製造過程においては、一辺の長さが2mを超える矩形の大型ガラス基板を処理チャンバ内に収容して各種の処理が行なわれる。近年では、ガラス基板の大型化に伴い処理チャンバ自体も大型化し、その重量も増加している。特に大型ガラス基板に対し真空状態で処理を行なう真空チャンバにおいては、アルミニウムなどの金属製の処理チャンバの内部を真空にした状態で大気圧に耐え得る充分な強度を確保する必要があるため、チャンバ壁の壁厚を充分に厚くしなければならない。従って、内部寸法に比較して外形寸法がさらに大きくなり、それだけ重量も大きくなる。
【0003】
処理チャンバが大型化し、重量も増加するに伴い、充分な設置スペースを確保しなければならないことに加え、移送時の運行制限や移送費用増加への対策も必要になる。例えば、日本国の法令では、トラックによる移送で梱包を含めた搬送体の幅(矩形の処理チャンバでは、短辺の長さと梱包厚みとの合計)が3mを超えると、高速道路を通行できず、特殊車両による夜間の運送が義務づけられ、先後導車の同行、トンネルや橋梁通過時の交通整理などが必要になる。このように、処理チャンバが一定の大きさを超えて大型化すると、設置や運搬に要する経費が増大するという問題があった。
【0004】
FPD製造装置に関しては、チャンバの大型化に伴う対策として、ロードロックチャンバと搬送チャンバを一つに纏める提案もなされている(例えば、特許文献1)。しかし、この特許文献1は、個々の処理チャンバ自体の寸法の縮小や重量の軽減を図るものではないため、根本的な解決策とは言えない。
【特許文献1】特開2004−182475号公報(要約など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、処理チャンバ内部の寸法を小さくせずに、外形寸法の拡大を抑え、かつ重量の軽減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点によれば、被処理体を収容し、内部で所定の処理を行なう平面視略矩形をした処理チャンバであって、
前記処理チャンバを構成する側壁のうち、対向する二つの側壁の厚みを他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された前記対向する二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えたことを特徴とする、処理チャンバが提供される。
【0007】
また、本発明の第2の観点によれば、基部と蓋部とからなる組み合わせ構造の平面視略矩形をした処理チャンバであって、
前記基部と前記蓋部とを組み合わせた状態で、前記処理チャンバを構成する側壁のうち、対向する二つの側壁の厚みを、他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された前記対向する二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えたことを特徴とする、処理チャンバが提供される。
【0008】
第1および第2の観点によれば、前記処理チャンバを構成する側壁のうち、対向する二つの側壁の厚みを、他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された前記対向する二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えた構成とした。処理チャンバの設置・使用時には前記補強部材を装着し、処理に必要な強度を確保できるとともに、側壁を薄くした分だけ内寸を広げつつ外寸の拡大を抑制できることにより、大型の被処理体にも対応可能であり、かつフットプリントの拡大も抑制できる。
また、処理チャンバの運搬、輸送などの移送時には、前記補強部材を取外すことにより、側壁を薄くした分だけ荷物の外寸の拡大を抑え、重量も少なくできることから、移送にかかる費用負担を軽減でき、法令による規制の遵守も容易になる。
【0009】
上記第1の観点および第2の観点において、薄く形成された前記対向する二つの側壁は、長手方向の側壁であってもよい。また、薄く形成された前記対向する二つの側壁は、内部を真空にした状態で大気圧に耐え得る強度を有しない厚さとしてもよい。この場合、処理チャンバは、真空状態で被処理体を処理する真空チャンバであってもよい。
【0010】
また、前記補強部材は、前記処理チャンバに外付けされていてもよい。この場合、前記補強部材は、薄く形成された前記対向する二つの側壁に、それぞれの外側から固定される板状部材であってもよい。そして、前記補強部材は、前記対向する二つの側壁から外側へ向けて突出して延在し、ステップとして機能するものであってもよい。
また、被処理体はガラス基板であってもよい。
【0011】
本発明の第3の観点によれば、被処理体を収容し、内部で所定の処理を行なう処理チャンバであって、
平面視略矩形で上面が開口し、その中に被処理体を載置する載置部を備えた基部と、
前記基部と組み合わされて処理チャンバを形成する蓋部と、
を備え、
前記基部は、底板と四つの側壁から構成され、該四つの側壁のうち、対向する二つの側壁の厚みを他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された前記対向する二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えたことを特徴とする、処理チャンバが提供される。
【0012】
上記第3の観点において、前記蓋部は天板と四つの側壁により構成され、該四つの側壁のうち、前記基部を構成する前記薄く形成された二つの側壁と当接する二つの側壁の厚みを、前記蓋部の他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された前記蓋部の二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えていてもよい。また、前記補強部材は、前記基部と前記蓋部のそれぞれに外付けされていてもよい。
【0013】
本発明の第4の観点によれば、上記第1の観点〜第3の観点のいずれかの処理チャンバを備えた処理装置が提供される。この第4の観点において、処理装置は、フラットパネルディスプレイの製造に用いられものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、処理チャンバを構成する側壁のうち、対向する二つの側壁の厚みを、他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された対向する二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えたので、被処理体の大型化に対応し、かつフットプリントの拡大も抑制できる。また、処理チャンバの運搬、輸送などの移送時には、移送にかかる費用負担を軽減でき、法令による規制の遵守も容易になるとの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい形態について説明する。
ここでは、FPD用のガラス基板に対してエッチング処理を行なうためのマルチチャンバータイプの真空処理システムとして本発明の処理装置を用いた場合について説明する。
【0016】
図1はこの真空処理システムの概観を示す斜視図、図2はその内部を示す水平断面図である。なお、図1および図2では細部は図示を省略している。
この真空処理システム1は、その中央部に搬送室20とロードロック室30とが連設されている。搬送室20の周囲には、3つの真空チャンバ10が配設されている。各真空チャンバ10は、支持台11に載置されている。また、搬送室20とロードロック室30との間、搬送室20と各真空チャンバ10との間、およびロードロック室30と外側の大気雰囲気とを連通する開口部には、これらの間を気密にシールし、かつ開閉可能に構成されたゲートバルプ22がそれぞれ介挿されている。
【0017】
ロードロック室30の外側には、2つのカセットインデクサ41が設けられており、その上にそれぞれFPD用ガラス基板を収容するカセット40が載置されている。これらカセット40の一方には未処理基板が収容され、他方には処理済み基板が収容される。これらカセット40は、昇降機構42により昇降可能となっている。
【0018】
これら2つのカセット40の間には、支持台44上に基板搬送手段43が設けられており、この搬送手段43は上下2段に設けられたアーム45,46、ならびにこれらを一体的に進出退避および回転可能に支持するベース47を具備している。
【0019】
アーム45,46上には基板を支持する4つの突起48が形成されている。突起48は摩擦係数の高い合成ゴム製の弾性体からなり、基板支持中に基板がずれたり、落下したりすることが防止される。
【0020】
前記真空チャンバ10は、その内部空間が所定の減圧雰囲気に保持されることが可能であり、その内部で例えばエッチング処理が行なわれる。真空チャンバ10の詳細については後述する。
【0021】
搬送室20は、真空処理室と同様に所定の減圧雰囲気に保持されることが可能であり、その中には、図2に示すように、搬送機構50が配設されている。そして、この搬送機構50により、ロードロック室30および3つの真空チャンバ10の間で基板が搬送される。
【0022】
搬送機構50は、ベース51の一端に設けられ、ベース51に回動可能に設けられた第1アーム52と、第1アーム52の先端部に回動可能に設けられた第2アーム53と、第2アーム53に回動可能に設けられ、基板を支持するフォーク状の基板支持プレート54とを有しており、ベース51に内蔵された駆動機構により第1アーム52、第2アーム53および基板支持プレート54を駆動させることにより、基板Sを搬送することが可能となっている。また、ベース51は上下動が可能であるとともに回転可能となっている。
【0023】
ロードロック室30も各真空チャンバ10および搬送室20と同様所定の減圧雰囲気に保持されることが可能であり、その中にはFPD用ガラス基板を支持するための一対のスタンド32を具備するバッファラック31が配設されている。
【0024】
次に、図3〜図5を参照して、真空チャンバ10について説明する。図3は真空チャンバ10の外観を示す斜視図、図4は真空チャンバ10を途中まで展開した状態の斜視図である。この真空チャンバ10は、例えば外寸が2160mm×2400mmのFPD用のガラス基板を処理できるように構成された大型のチャンバであり、その外寸は、例えば2990mm×3500mmである。なお、図4では、説明の便宜上、長手方向の長さを強調して描いている(図6、図8において同様である)。
【0025】
真空チャンバ10は、チャンバ本体10aと、このチャンバ本体10aの上に着脱自在に設けられた蓋体10bと、この蓋体10bをチャンバ本体10aに対して着脱する着脱機構(不図示)とを有している。なお、本体10aおよび蓋体10bは共にアルミニウム等の金属で構成される。
【0026】
真空チャンバ10を開放した状態、つまり蓋体10bを開けた状態において、本体10aは、図4に示すように平面視略矩形で上面が開口した筐体として形成されている。一方、蓋体10bは、本体10aに対応した平面視略矩形で下面が開口した筐体として形成されている。なお、図4では、説明の便宜上、例えば被処理体を載置する載置部や排気部などのチャンバ内部品は図示を省略している(図6、図8において同様である)。
【0027】
本体10aには、底部65から立設された側壁61aと側壁61b、および側壁62aと側壁62bがそれぞれ対向して設けられ、側壁61a,61bは、側壁62a,62bに比べ横方向に長尺に形成されている。そして、長手方向の側壁61a,61bの壁厚Lは、側壁62a,62bの壁厚Lに比べて小さく形成されている。
【0028】
同様に蓋体10bは、天板66を囲むように上部側壁63aと上部側壁63b、および上部側壁64aと上部側壁64bがそれぞれ対向して設けられ、上部側壁63aと上部側壁63bの壁厚(本体10aの側壁61a,61bの壁厚Lと同じ)は、上部側壁64a,64bの壁厚(本体10aの側壁62a,62bの壁厚Lと同じ)に比べて小さく形成されている。
【0029】
側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bの壁厚Lは、通常の真空チャンバとして必要な強度(耐圧容器としての強度)を得るための壁厚よりも薄肉に形成されている。つまり、真空チャンバ10内を1×10−3Pa以下の高真空状態にした場合に、大気圧によって内側へ湾曲してたわみが生じる程度の強度に設定される。具体的には、例えば、前記したように真空チャンバ10の本体10aの外寸として、側壁61a,61bの長さが3500mm、側壁62a,62bの長さが2990mm、高さが600mmで、側壁62a,62bの壁厚Lを110mmとすると、側壁61a,61bの壁厚Lは、各60mm程度まで薄く形成することができる。同サイズの内寸を持つ従来の真空チャンバでは長辺の壁厚として各120mmを必要としていたのに比べると、大幅に薄くなっている。
【0030】
このように側壁61a,61bの壁厚Lを薄く形成することによって、真空チャンバ10の重量を大幅に軽減することが可能になるとともに、側壁61a,61bの壁厚Lを薄くした分、つまり、(L−L)×2倍程度の外寸を縮小できることになる。また、同じ外寸であれば、側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bの壁厚Lを薄く形成することにより、それだけ真空チャンバ10の内寸を大きくとることができる。従って、大型化しつつあるFPD用ガラス基板などへの対応の自由度を高めることができる。
【0031】
本実施形態では、薄く形成された側壁61a,61bの強度を補うため、長手方向の側壁61a,61bの外壁面に、補強板90a,90bを配設している。同様に、薄く形成された上部側壁63a,63bの強度を補うため、長手方向の上部側壁63a,63bの外壁面に、補強板90c,90dを配設している。
これらの補強板90a,90b,90c,90dは、例えば鉄などの金属により構成され、側壁61a,61bに直接ネジ等の固定手段で着脱可能に外付けされている。
【0032】
補強板90a〜90dは、例えばトラックなどの移送手段の荷台に真空チャンバ10を載せて移送する際には、取外される。そして、真空チャンバ10を例えばFPD製造ラインに設置した後に、簡単に取付けることができるものである。
【0033】
このように、側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bの壁厚Lを薄く形成することにより、移送時の重量および大きさを小さくして、移送時の運行制限への抵触や移送費用削減への対応を図ることができる。例えば、日本国の法令では、梱包を含めた搬送体の幅(矩形の処理チャンバでは、短辺の長さと梱包厚みとの合計)が3mを超えると、高速道路を通行できず、特殊車両による夜間の運送が義務づけられ、先後導車の同行、トンネルや橋梁通過時の交通整理が必要になるが、側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bの壁厚Lを薄く形成し、搬送体の幅を縮小して梱包を含めた幅を3mm以下に抑えることができれば、移送に要する法令遵守の為の手続と費用を大幅に節減できる。例えば、図4の例では、(L−L)×2倍の外寸を縮小することができる。トラック等の移送手段による移送時には、法令上、多くの場合貨物の幅が問題となるので、薄く形成する側壁は長手方向の側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bとすることが好ましい。
【0034】
本実施形態では、側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bに、それぞれ略水平に一枚ずつ補強板90a〜90dを配備したが、各壁面に二枚以上を配備してもよい。補強板90a〜90dを水平方向に装着することによって、後述するように、大型の真空チャンバ10を開放してメンテナンスなどの作業を行なう際に、作業者のステップとして利用することができる。
なお、補強板90a〜90dは、例えば側壁の対向する二つの角を結ぶように斜めに装着することも可能であり、本体10aと蓋体10bの両方にかけ渡すように装着することもできる。
【0035】
図5は真空チャンバ10の断面図である。真空チャンバ10は、本体の側壁61a,61b,62a,62bの上端と、上部側壁63a,63b,64a,64bの下端とが当接されることにより、本体10aに、蓋体10bが組み合わされる。チャンバ本体10aと蓋体10bとの当接部には、例えばOリングなどのシール部材(不図示)が設けられており、真空チャンバ10内で処理を行う際に、その中を気密空間にして真空引き可能に構成されている。
【0036】
真空チャンバ10の内部空間の下方には、絶縁部材71を介してサセプタ72が配置されており、サセプタ72の上にはFPD用ガラス基板Sが載置されるようになっている。
【0037】
チャンバ本体10aの側壁下部には排気管81が接続されており、この排気管81には排気装置82が接続されている。排気装置82はターボ分子ポンプなどの真空ポンプを備えており、これにより真空チャンバ10の内部空間を真空引きして所定の減圧雰囲気を形成可能に構成されている。
【0038】
前記サセプタ72の上方には、このサセプタ72と平行に対向して上部電極として機能するシャワーヘッド74が設けられている。このシャワーヘッド74は、その周囲に配置された絶縁部材75にネジ止め(図示せず)されており、絶縁部材75は、蓋体10bの内部に突出する凸部により支持され、ネジ止め(図示せず)されている。シャワーヘッド74には配管76を介して処理ガスをシャワーヘッド74に供給する処理ガス供給系77が接続されており、シャワーヘッド74の下面に設けられた多数のガス吐出孔74aから基板Sに向けて処理ガスが吐出されるようになっている。一方、シャワーヘッド74の上面の中央には給電棒78が接続されており、給電棒78の上端には整合器79が接続され、さらに整合器79には高周波電源80が接続されている。したがって、排気装置82により真空チャンバ10の内部空間を所定の減圧状態まで真空引きした後、高周波電源80から整合器79および給電棒78を介してシャワーヘッド74に高周波電力を印加することにより、基板Sの上方の空間には処理ガスのプラズマが形成され、これにより基板Sに対するエッチング処理が進行する。
【0039】
次に、以上のように構成された真空処理システムの処理動作について説明する。まず、搬送手段43の2枚のアーム45,46を進退駆動させて、未処理基板を収容した一方のカセット40(図1の左側のカセット)から2枚の基板Sを一度にロードロック室30に搬入する。
【0040】
ロードロック室30内においては、バッファラック31により基板Sを保持し、アーム45、46が退避した後、ロードロック室30の大気側のゲートバルプを閉じる。その後、ロードロック室30内を排気して、内部を所定の真空度まで減圧する。真空引き終了後、図示しないポジショナーにより基板Sの位置合わせを行なう。
【0041】
基板Sが位置合わせされた後、搬送室20およびロードロック室30間のゲートバルブ22を開き搬送機構50により基板Sが搬送室20内に搬入される。搬送室20内に搬入された基板Sを搬送機構50の基板支持プレート54上に受け取り、所定の真空チャンバ10に搬入する。その後、基板支持アーム54は、真空チャンバ10から退避し、ゲートバルブ22を閉じる。この際に、真空チャンバ10内は、チャンバ本体10aと蓋体10bとがシール部材(不図示)によりシールされることにより真空引き可能となっている。
【0042】
真空チャンバ10においては、基板Sがサセプタ72上に載置された状態で、真空チャンバ10の内部空間を所定の圧力まで減圧した後、処理ガス供給系77から供給されたエッチング処理用の処理ガスを、シャワーヘッド74を介して基板Sに向けて吐出するとともに、高周波電源80から整合器79および給電棒78を介してシャワーヘッド74に高周波電力を供給し、基板Sの上の空間にプラズマを形成し、基板Sに対するエッチング処理を進行させる。
【0043】
このエッチング処理が終了後、ゲートバルブ22を開いて搬送機構50の基板支持プレート54により処理済みの基板Sを受け取り、ロードロック室30に搬送する。ロードロック室30に搬送された基板Sは、搬送手段43のアーム45,46により、処理済み基板用のカセット40(図1の右側のカセット)に入れられる。これにより一枚の基板における一連の処理動作が終了するが、この処理動作を未処理基板用のカセット40に搭載された基板の数だけ繰り返す。
【0044】
このような処理を例えば所定回数繰り返した際には、真空チャンバ10のメンテナンスを行う必要がある。この場合には、上述の着脱機構(不図示)により真空チャンバ10の蓋体10bをチャンバ本体10aの直上から外れた位置まで移動させ、真空チャンバ10を開け、内部のメンテナンス等を実施する。この際、例えば図6に示すように、大型の真空チャンバ10において、補強板90a,90bはメンテナンス等を行なう作業者のステップとして利用することができる。補強板90a,90bをステップとすることにより、大型の真空チャンバ10に、メンテナンス等を行なう際に、作業者の安全を確保するとともに作業効率を上げることが可能になる。なお、図6では、本体10aのみを図示しているが、蓋体10bを完全に展開した状態において、装着した補強板90c,90dについても同様にステップとして利用することができる。
【0045】
前記したように、側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bの壁厚Lは、真空チャンバ10内を1×10−3Pa以下の高真空状態にした場合に、大気圧によって内側へ湾曲して歪みが生じる程度の強度に設定される。例えば、真空チャンバ10全体の外寸が3500mm×2990mm×1200mmで、側壁62a,62bおよび上部側壁64a,64bの壁厚Lを110mm、側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bの壁厚Lを60mmとすると、補強板90a〜90dを装着しなければ、内側へ湾曲するたわみ量は、側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bの中央部で最大2.7mmとなる。
【0046】
真空チャンバ10を出荷などの目的で移送する場合には、移送中のチャンバ内汚染や水分吸着を防止し、また真空チャンバ10に装着される伸縮部品であるベローズを保護するため、内部を真空引きしている。前記したように、真空チャンバ10を設置した状態では、補強板90a〜90dを装着することによって大気圧によるたわみを防止できるが、移送時には、搬送サイズを抑える目的で補強板90a〜90dが取外されるため、真空引きした状態では大気圧に耐えることができず、たわみが生じる可能性がある。このため、移送時には、真空チャンバ10の側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bの強度を補完する手段が必要になる。
【0047】
図7は、真空チャンバ10の移送時の断面の状態を示す図面である。移送時には、補強板90a〜90dは装着されておらず、替わりに内部補強手段として伸縮ロッド92を装着している。
【0048】
図7に示すように、伸縮ロッド92は、真空チャンバ10における本体10aの対向する側壁61aおよび61bの内側および蓋部10bの対向する上部側壁63aおよび63bの内側に、それぞれ配備される。この伸縮ロッド92は、内面にねじ溝が刻設された円筒状のパイプ93の内部にねじ山が刻設された可動棒94が螺入された構造である。そして、可動棒94を回動させることにより全体の長さを調節できるとともに、任意の長さで位置決めし、固定できるように構成されている。伸縮ロッド92の両端(すなわち、パイプ93と可動棒94の端)には、弾性部材95が嵌着されているため、真空チャンバ10の内面に当接する際に滑りを防止し、密着できる。
【0049】
このようにして、移送時には専用の伸縮ロッド92を真空チャンバ10内に装着し、壁厚の薄い側壁61a,61bおよび上部側壁63a,63bを内側から補強することにより大気圧に抗し、たわみを防止することが可能になる。伸縮ロッド92は、装着および取り外しが簡単であるため、移送時のみの補強手段として有用である。
【0050】
伸縮ロッド92は、図8に示すように、最もたわみの生じやすい側壁61a,61bの中央付近(上部側壁63a,63bにおいて同様である)に装着することが好ましい。図8では本体10aに2本の伸縮ロッド92を装着した状態を示しているが、装着本数は任意である。なお、内部補強手段としては、伸縮ロッド92に限らず、例えば板状の補強部材を用いることもできる。
【0051】
本発明は上記実施の形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では本発明をプラズマエッチング装置に用いた場合について示したが、アッシングやCVD等、他の真空処理であってもよい。また、真空処理は必ずしもプラズマ処理に限定されるものではなく他のガス処理であってもよく、さらには、ガス処理以外の真空処理であってもよい。
【0052】
また、本発明の技術思想は、真空チャンバだけに限らず、常圧で処理を行なう処理チャンバに適用することも可能であり、その場合でも装置の軽量化と小型化が可能になる。
【0053】
さらに、前記実施形態では、本体10aと蓋体10bとが互いに側壁を有する構造を例に挙げたが、本体のみが側壁を有しており、平板状の蓋体と組み合わせて処理チャンバを形成する構造であっても同様に本発明思想を適用できる。
【0054】
さらにまた、上記実施形態では、被処理体としてFPD用の大型ガラス基板を処理する大型真空チャンバを例に挙げたが、これに限らず、本発明の技術思想は、半導体ウエハ等の他の被処理体に対し処理を行なう処理チャンバにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る真空チャンバを備えた真空処理システムの概要を示す斜視図。
【図2】図1の真空処理システムの水平断面図である。
【図3】真空チャンバの外観斜視図である。
【図4】真空チャンバを途中まで展開した状態の斜視図である。
【図5】真空チャンバの断面図である。
【図6】真空チャンバのメンテナンス時の模様を説明するための図面である。
【図7】真空チャンバの移送時の状態を説明するための断面図である。
【図8】真空チャンバの移送時の状態を説明するための本体の斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
10;真空チャンバ
10a;本体
10b;蓋体
61a,61b;側壁(長手方向)
62a,62b;側壁
63a,63b;上部側壁(長手方向)
64a,64b;上部側壁
65;底板
66;天板
90a,90b,90c,90d;補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体を収容し、内部で所定の処理を行なう平面視略矩形をした処理チャンバであって、
前記処理チャンバを構成する側壁のうち、対向する二つの側壁の厚みを他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された前記対向する二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えたことを特徴とする、処理チャンバ。
【請求項2】
基部と蓋部とからなる組み合わせ構造の平面視略矩形をした処理チャンバであって、
前記基部と前記蓋部とを組み合わせた状態で、前記処理チャンバを構成する側壁のうち、対向する二つの側壁の厚みを、他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された前記対向する二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えたことを特徴とする、処理チャンバ。
【請求項3】
薄く形成された前記対向する二つの側壁は、長手方向の側壁であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の処理チャンバ。
【請求項4】
薄く形成された前記対向する二つの側壁は、内部を真空にした状態で大気圧に耐え得る強度を有しない厚さであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理チャンバ。
【請求項5】
真空状態で被処理体を処理する真空チャンバである、請求項4に記載の処理チャンバ。
【請求項6】
前記補強部材は、前記処理チャンバに外付けされることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の処理チャンバ。
【請求項7】
前記補強部材は、薄く形成された前記対向する二つの側壁に、それぞれの外側から固定される板状部材であることを特徴とする、請求項6に記載の処理チャンバ。
【請求項8】
前記補強部材は、前記対向する二つの側壁から外側へ向けて突出して延在し、ステップとして機能することを特徴とする、請求項7に記載の処理チャンバ。
【請求項9】
被処理体がガラス基板である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の処理チャンバ。
【請求項10】
被処理体を収容し、内部で所定の処理を行なう処理チャンバであって、
平面視略矩形で上面が開口し、その中に被処理体を載置する載置部を備えた基部と、
前記基部と組み合わされて処理チャンバを形成する蓋部と、
を備え、
前記基部は、底板と四つの側壁から構成され、該四つの側壁のうち、対向する二つの側壁の厚みを他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された前記対向する二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えたことを特徴とする、処理チャンバ。
【請求項11】
前記蓋部は天板と四つの側壁により構成され、該四つの側壁のうち、前記基部を構成する前記薄く形成された二つの側壁と当接する二つの側壁の厚みを、前記蓋部の他の二つの側壁の厚みに比べ薄く形成するとともに、薄く形成された前記蓋部の二つの側壁を補強する補強部材を着脱自在に備えたことを特徴とする、請求項10に記載の処理チャンバ。
【請求項12】
前記補強部材は、前記基部と前記蓋部のそれぞれに外付けされることを特徴とする、請求項11に記載の処理チャンバ。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の処理チャンバを備えた処理装置。
【請求項14】
フラットパネルディスプレイの製造に用いられることを特徴とする、請求項13に記載の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−283096(P2006−283096A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103654(P2005−103654)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】