説明

処理装置および表面処理治具

【課題】被処理面以外の面に対する処理液の飛散を抑制しつつ、被処理面に処理液による処理を施すことができる処理装置および表面処理治具を提供する。
【解決手段】本発明の処理装置100は、被処理体18が載置される載置台10と、処理液にて被処理体18の被処理面18aを処理する表面処理治具20と、表面処理治具20に処理液を供給する供給手段30と、表面処理治具20に供給された処理液を回収する回収手段40と、表面処理治具20を被処理面18aと離間した状態を維持する離間維持手段50と、を含んでいる。表面処理治具20は、被処理面18aに対向する対向面22aを有し、対向面22aと被処理面18aとの間に供給手段30から供給された処理液を保持して被処理面18aを処理する処理部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理体の表面に対して処理液を用いた処理を行なう処理装置および該処理に好適に用いられる表面処理治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードや携帯電話の薄型化、小型化、軽量化が要求されており、この要求を満たすためには組み込まれる半導体チップについても薄型の半導体チップとしなければならない。このため半導体チップの基になる半導体ウェハの厚さ(膜厚)は現状では125μm〜150μmであるが、次世代のチップ用には25μm〜50μmにしなければならないと言われている。
【0003】
上記膜厚の半導体ウェハを得る方法の一つとして、以下の薄化方法を挙げることができる。この方法では、まず、半導体ウェハとサポートプレートなどの板材とを、両面に粘着層を有するテープまたは接着剤を介して貼り付ける。このサポートプレートは、薄化された半導体ウェハを保護する役割を果たす。ついで、サポートプレートにより保護されている状態で、グラインダーなどにより半導体ウェハの研磨を行なうことにより薄化された半導体ウェハが形成される。最後に、この薄化された半導体ウェハからサポートプレートを剥がす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記薄化方法のうち、サポートプレートと半導体ウェハとを接着剤を介して貼り付けている方法を採用する場合、半導体ウェハからサポートプレートを分離した後に接着剤が半導体ウェハに残存してしまうことがある。そのため、接着剤を除去して半導体ウェハの上面を清浄な面にしなくてはならない。ここで、上記薄化された半導体ウェハは、一般的にダイシングフレームに固定されたダイシングテープに貼り付けられた状態にてダイシングされ、個々のチップに分割される。上記薄化された半導体ウェハは、サポートプレートと貼り合わされた状態でダイシングテープに貼り付けられた後、サポートプレートの剥離、そして半導体ウェハ上の接着剤の除去が行われることがある。このダイシングテープを用いる場合、通常、その表面積は半導体ウェハと比して大きいため、半導体ウェハの外周には、ダイシングテープの露出面が位置することとなる。このような被処理体に対して、被処理体を回転させつつ処理液(溶剤)を滴下する方法や、半導体ウェハを浸漬させるという通常の洗浄処理を施すと、ダイシングテープの露出面をもこの処理液で処理してしまうことになる。つまり、処理をしたい面は半導体ウェハの表面のみであるにも関わらず、半導体ウェハの外周に設けられているダイシングテープの露出面にまで処理が行なわれてしまうのである。このときの処理液の種類によっては、ダイシングテープの劣化が懸念され、それゆえ、ダイシングテープの保護を図りつつ半導体ウェハ上の接着剤を除去する処理方法の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被処理面のみに処理液を用いた処理を施すことができる処理装置および表面処理治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明にかかる処理装置は、被処理体が載置される載置台と、
処理液にて前記被処理体の被処理面を処理する表面処理治具と、
前記表面処理治具に処理液を供給する供給手段と、
前記表面処理治具に供給された処理液を回収する回収手段と、
前記表面処理治具を前記被処理面と離間した状態を維持する離間維持手段と、を含み、 前記表面処理治具は、上記被処理面に対向する対向面を有し、該対向面と被処理面との間に前記供給手段から供給された処理液を保持して被処理面を処理する処理部を備えることを特徴としている。
【0007】
本発明にかかる処理装置は、被処理面と離間された状態を維持しつつ、表面処理治具に処理液の供給と回収を行なうことができる表面処理治具を含む。そのため、被処理面と、被処理面と対向する対向面との間のみに処理液を保持することができ、被処理面以外に処理液が飛散することがない。その結果、本発明にかかる処理装置によれば、被処理面のうち処理を施したい領域にのみに処理を施すことができる。さらに、表面処理治具が被処理体に接触することがないため、被処理体に損傷を与える可能性を低減することができる。
【0008】
(2)本発明にかかる処理装置において、前記処理部は、前記対向面から前記被処理体に向かって突出する突出部を備え、該突出部と前記被処理面との間における処理液の表面張力により、供給された処理液を前記対向面と前記被処理面との間に保持することが好ましい。この態様によれば、突出部が設けられていることで、被処理面と対向面との間に処理液の保持を確実に行なうことができる。
【0009】
(3)本発明にかかる処理装置において、前記突出部の、被処理面と対向する面は平面であり、前記離間維持手段により前記突出部と被処理面との距離が、3mm以下に維持されることが好ましい。この態様によれば、処理液の表面張力を利用して、被処理面と、表面処理治具の対向面との間に、より確実に処理液を保持することができる。そのため、処理液が被処理面以外に飛散することを抑制することができる。
【0010】
(4)本発明にかかる処理装置において、処理後の被処理面を乾燥させる乾燥手段を備えることが好ましい。この態様によれば、処理液の回収を完全に行なうことができない場合であっても、被処理面の乾燥を行なうことができる。
【0011】
(5)本発明にかかる処理装置において、前記乾燥手段は、前記被処理面に向かって不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段であることが好ましい。この態様によれば、不活性ガスを吹き付けることで、処理液を飛散させ、乾燥させることができる。
【0012】
(6)本発明にかかる処理装置において、前記乾燥手段は、前記被処理面に残った処理液を吸引する吸引手段であることが好ましい。
【0013】
(7)本発明にかかる処理装置において、前記吸引手段は、前記表面処理治具を用いて行われ、該表面処理治具における供給手段からの処理液の供給が停止した状態で、処理液を回収手段により被処理面に残った処理液を吸引することにより行われることが好ましい。この態様によれば、表面処理治具を処理と乾燥との双方に対して使用することができる (8)本発明に係る処理装置において、前記対向面の面積は、前記被処理面の面積と比して小さいことが好ましい。
【0014】
(9)本発明にかかる処理装置において、前記離間維持手段は、表面処理治具を被処理体に対して移動させることができる。この態様によれば、対向面の面積が、被処理面の面積と比して小さい場合であっても、被処理面の全域に対して処理を行なうことができる。
【0015】
(10)本発明にかかる処理装置において、前記離間維持手段は、表面処理治具を被処理体の略中心から外縁に向かって移動させることができる。なお、本態様において、「略中心」とは、中心と中心の周囲を含む意味である。この態様によれば、特に被処理体を回転させながら、表面処理治具を中心から外周に向かって移動させることにより被処理体全体を処理することができる。
【0016】
(11)本発明にかかる処理装置において、前記載置台は、載置された被処理体を回転させることができる。この態様によれば、被処理面の面積が対向面と比して大きい場合に、処理の効率化を図ることができる。
【0017】
(12)本発明にかかる表面処理治具は、
被処理体の被処理面を処理液で処理するのに用いられる表面処理治具であって、
被処理面に対して離間して維持された際に、前記被処理面に対向する対向面を有し、該対向面と該被処理面との間に供給された処理液を保持して被処理面を処理する処理部を備えることを特徴としている。
【0018】
本発明にかかる表面処理治具は、被処理面と対向面との間に処理液を保持することができる。そのため、本発明にかかる表面処理治具を用いて処理を行なうことで、所望の領域のみに処理液による処理を施すことができる。その結果、被処理面と同一のレベルに処理を施したくない面が設けられている場合でも、該面に処理液が飛散することが抑制された処理を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る処理装置は、被処理体と離間して維持された表面処理治具と、処理液の供給手段と回収手段とを備えていることにより、被処理面と対向面との間に処理液を保持することができ、被処理面以外に対する処理液の飛散が抑制された処理を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0021】
(処理装置)
本実施形態にかかる処理装置100について、図1ないし図3を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態にかかる処理装置100の要部を示す断面図である。図2は、図1のA部をより詳細に示す断面図である。図3は、本実施形態にかかる処理装置に備えられている表面処理治具の一部を示す平面図である。なお、図3は、表面処理治具の対向面(被処理面と対向する面)を示す平面図である。
【0022】
図1に示すように、処理装置100は、被処理体18が載置される載置台10と、処理液にて被処理体18の被処理面18aを処理する表面処理治具20と、表面処理治具20に処理液を供給する供給手段30と、表面処理治具20に供給された処理液を回収する回収手段40と、表面処理治具20を被処理面18aと離間した状態を維持する離間維持手段50と、を含む。さらに、処理装置100には、被処理体18を囲むように設けられた洗浄カップ16が設けられている。
【0023】
載置台10は、被処理体18をたとえば吸引することで保持することができる。また、載置台10は、略中心を軸として回転可能な回転軸12の上に設けられ、回転軸12には、これを回転させるモーター14が取り付けられている。この構成により、被処理体18を、被処理面18aの略中心を通る垂線を軸として回転させることができる。
【0024】
表面処理治具20は、被処理面18aに対向する対向面22aを有し、対向面22aと被処理面18aとの間に、供給手段30から供給された処理液を保持する役割を果たす。本実施形態にかかる処理装置では、表面処理治具20は、上記役割を果たすことができれば、その構造は特に制限されない。
【0025】
以下に、表面処理治具20の構造の一例について、図2および図3を参照しつつ説明する。図2に示すように、表面処理治具20は、供給された処理液を保持し、被処理面18aを処理するための処理部22を有している。この処理部22は、表面処理治具20が被処理面18aに対して離間して維持された際に、被処理面18aに対向する対向面22aを有する。つまり、本実施形態に係る表面処理治具20によれば、処理部22と対向面22aとの間に、処理液を保持することができる。
【0026】
処理部22には、第1貫通孔26および第2貫通孔28が設けられている。第1貫通孔26は、処理液を処理部22に供給するための孔であり、第2貫通孔28は、処理部22の処理液を回収するための孔である。図2において、各破線の矢印は、処理液の流れる方向を示している。なお、図2および図3には、第1貫通孔26が一つと、第2貫通孔28が4つ設けられている場合を示したが、これに限定されることはなく、例えば第2貫通孔を6つ、8つ設けてもよい。また、第1貫通孔26と第2貫通孔28の配置についても、図示の配置に限定されることはない。第1貫通孔26および第2貫通孔28の平面形状は、円形、楕円形または矩形であることができ、処理液の流れを妨げない限り特に制限されることはない。このことは、第1貫通孔26および第2貫通孔28の開口径についても同様である。
【0027】
さらに、前記処理部22は、対向面22aから被処理体18に向かって突出する突出部24を備えることが好ましい。突出部24は、図2および図3に示すように、対向面22aの周縁に設けられていることが好ましい。このように、処理部22は、突出部24を備えることにより、供給された処理液を被処理面18aとの間により確実に保持することができる。処理液の保持は、処理液の表面張力を利用して行われる。
【0028】
また、突出部24の底面(被処理面18aと対向する面)が、平面である場合、後述する離間維持手段50により突出部24と被処理面18aとの距離が、0.5mm以上、3mm以下に維持されることが好ましく、0.5〜1.5mmの範囲であることがより好ましい。なお、突出部24と被処理面18aとの距離は接触しない範囲で限りなく0mmに近づいてもよい。これにより、処理液をより確実に保持することができる。
【0029】
本実施形態にかかる表面処理治具20は、被処理面18aの面積がその対向面22aの面積(処理部22の処理面積)と比して大きい被処理体18に対する処理に用いることが好ましい。被処理面18aの面積が対向面22aの面積と比して大きい場合、被処理面18aと処理部22との距離を、離間維持手段50により調整することで、その表面張力を利用して、処理液を保持することが可能となる。具体的には、対向面22aおよび被処理面18a(処理部22の処理面積)が円形状である場合には、対向面22aの直径は被処理面18aの半径と比して小さいことが好ましい。
【0030】
供給手段30は、表面処理治具20の処理部22に処理液を供給する役割を果たす。この供給手段30は、たとえば、処理液を貯留する処理液タンク34や、処理液タンク34に接続された供給配管32や、表面処理治具22に処理液を供給するためのポンプ(図示せず)などを含む。また、前記供給配管32は、第1貫通孔26に接続されている。そして、処理液タンク34、供給配管32および第1貫通孔26を介して、前記処理部22に処理液が供給されるようになっている。
【0031】
吸引手段40は、表面処理治具20の処理部22から、処理液を回収する役割を果たす。この吸引手段40は、たとえば、処理液の回収配管42と、処理済の処理液を回収するための回収タンク44、処理液を吸引するためのポンプまたはイジェクターなどを含む。なお、前記ポンプまたはイジェクターは回収タンクの後方に設ければよい。また、前記回収配管42は、第2貫通孔28に接続されている。そして、処理部22に供給された処理液は、第2貫通孔28、回収配管42を介して回収タンク44に回収されるようになっている。また、上記では回収タンクに処理液を回収する構成を記載したが、単にポンプ、イジェクター等により表面処理治具20から処理液を排出できる構成であってもよい。
【0032】
離間維持手段50は、表面処理治具20を被処理面18aに対して、離間して維持するものである。そして、表面処理治具20と被処理面18aとの距離を所定の距離に維持することにより、前記処理部22に、処理液を保持することができるようになっている。また、離間維持手段50は、表面処理治具20を、被処理面18aと平行な方向および被処理面18aに対して上下の方向に移動させることを可能とする機構を備えていてもよい。離間維持手段50は、具体的には、たとえば、表面処理治具20を保持するアーム52などにより実現することができる。
【0033】
さらに、本実施形態にかかる処理装置100は、処理後の被処理面18aを乾燥させる乾燥手段を備える。乾燥手段としては、たとえば、不活性ガスを被処理面18aに向かって供給する不活性ガス供給手段60と、被処理面18aに残存する処理液を吸引する吸引手段(図示せず)とを例示することができる。不活性ガス供給手段60は、たとえば、不活性ガスタンク62と、不活性ガス供給配管64と、不活性ガス供給配管64の先端に設けられたノズル66とからなることができる。不活性ガスとしては、公知の不活性ガス、たとえば、アルゴン、窒素などを用いることができる。また、不活性ガスの供給時には、被処理面18aに吹き付けるように供給することが好ましい。また、吸引手段としては、たとえば、吸引するためのポンプと、処理液を回収するための回収タンクと処理液の回収配管とからなることができる。不活性ガス供給手段60および吸引手段は、後述の表面処理治具20と一体で構成されていてもよいし、別々に構成されていてもよい。また、この被処理体18の乾燥は、表面処理治具20を用いて行なうこともできる。表面処理治具20を用いて被処理面18aの乾燥を行なう場合の処理方法については後述する。
【0034】
(処理方法)
次に、上述の処理装置を用いた被処理体の処理方法について説明する。本処理方法では、まず、被処理体18を載置台10に保持する。載置台10には、吸引機構が設けられており、被処理体18を保持することができる。ついで、離間維持手段50により、表面処理治具20を被処理体18の上方に配置する。このとき、被処理体18の被処理面18aと、表面処理治具20(特に突出部24)との距離が、たとえば、3mm以下であるように維持されていることが好ましい。これにより、処理液を被処理面18aと表面処理治具20の対向面22aとの間に、処理液を保持することが容易となる。
【0035】
次に、処理液の供給手段30から表面処理治具20(処理部22)に処理液を供給する。この処理液の供給は、表面処理治具20の第1貫通孔26を介して、行なわれる。処理液の供給と共に、供給された処理液の回収が回収手段40により行われる(以下、「供給・回収処理」と称する)。この処理液の回収は、表面処理治具20の第2貫通孔28を介して回収配管44側に処理液を吸引することで行われる。そして、被処理面18aと、表面処理治具20との間で生じる処理液の表面張力を利用して、処理液を保持することができる。なお、上記供給・回収処理における処理液の供給量および回収量は、上記表面張力を保ち、表面処理治具20から処理液が拡散しなければよく、例えばほぼ同じ量等に調整すればよい。
【0036】
この処理液の供給・回収処理は、表面処理治具20を被処理体18に対して移動させながら行なうことができる。このときは、表面処理治具20を被処理体18の略中心から外縁に向かって移動させることが好ましい。このように、表面処理治具20を移動させることで、表面処理治具20の処理部22の処理面が、被処理面18aと比して小さい場合であっても、被処理面18aの全域に処理を施すことができる。なお、本態様において、「略中心」とは、中心と中心の周囲を含む意味である。
【0037】
さらに、被処理体18を、その表面の略中心を通る垂線を軸として回転させつつ、供給・回収処理を行なってもよい。この場合、回転速度は、10rpm以上、100rpm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、処理液を処理部22と被処理面18aとの間に保持することができ、他の領域に処理液が飛散することを抑制することができるためである。また、このように被処理体18を回転させることで処理の効率化を図ることもできる。
【0038】
次に、供給・回収処理を終えた後に、被処理面18aを乾燥させる(以下、「乾燥処理」と称する)。乾燥処理は、上述の不活性ガス供給手段60または吸引手段を用いて行なうことができる。また、表面処理治具20を用いて、この乾燥工程を行なうことができる。表面処理治具20を用いる場合には、供給手段30からの処理液の供給が停止した状態で、回収手段40を用いることにより被処理面18aに残った処理液を吸引する。この場合、表面処理治具20が、処理液による処理と乾燥とを実現することができ、処理装置を有効に活用することができる。
【0039】
以上により、本実施形態にかかる処理装置を用いて、被処理面18aに対して処理液による処理を行なうことができる。
【0040】
本実施形態にかかる処理装置100によれば、離間維持手段50により、被処理面18aと表面処理治具20とが離間した状態を維持しつつ、表面処理治具20に対する処理液の供給と、供給された処理液の回収を行なうことができる。このように、処理液の供給と供給された処理液の回収とを同時に行なうことで、表面処理治具20と被処理面18aとの間に処理液を保持できることとなる。そのため、処理液が飛散することが望まれない領域に対する処理液の飛散を抑制することができる。その結果、処理を施したい面(被処理面)にのみ、処理を施すことができる処理装置を提供することができる。
【0041】
さらに、本実施形態にかかる処理装置100では、離間維持手段50により、表面処理治具20と被処理面18aとの間の距離を調整することで、処理液の表面張力を利用して、より確実に処理液を保持することができる。そのため、処理液の飛散を防ぐことができると共に、処理が施される領域には、所定量の処理液を保持できることとなる。また、突出部24を設けた場合には、突出部24の長さに応じて処理部22に窪みが生じることとなる。その結果、この窪みを処理液の保持領域として機能させることができる。このように、表面処理治具20を用いることで、所望量の処理液の保持が可能となり処理を良好に行なうことができる。
【0042】
また、本実施形態にかかる処理装置によれば、処理液を飛散させないようにしているため、処理液の利用効率を上げることができる。
【0043】
次に、本実施形態にかかる処理装置により特に良好に処理される被処理体の例について説明する。なお、被処理体18は、以下に例示する被処理体に限定されないことは言うまでもない。
【0044】
本実施形態にかかる処理装置により良好に処理される被処理体18は、支持体であるダイシングテープの上に設けられ、薄化された半導体ウェハである。このように薄化された半導体ウェハは、その薄化プロセスにおいて、半導体ウェハの表面に接着剤が残存することがある。このような半導体ウェハの接着剤の除去処理において、本実施形態にかかる処理装置を用いることができるのである。
【0045】
以下の説明では、まず、半導体ウェハの薄化プロセスについて図面を参照しつつ説明した後、本実施形態にかかる処理装置を用いる利点について説明する。図4(a)〜図4(d)は、半導体ウェハの薄化プロセスを説明する断面図である。ここでは、孔有りサポートプレート70を用いた例について説明する。
【0046】
まず、図4(a)に示すように、接着剤72を介して、サポートプレート70と、半導体ウェハ74aとを貼り付ける。この半導体ウェハ74aは、薄化する前のものである。ついで、図4(b)に示すように、半導体ウェハ74aを研磨し、薄化された半導体ウェハ74を形成する。半導体ウェハ74aの研磨は、各種公知の技術により行なうことができる。ついで、図4(c)に示すように、半導体ウェハ74における接着剤72と接していない面を、ダイシングテープ(支持体)76と貼り合わせる。このとき、ダイシングテープ76は、剥離された後における半導体ウェハ74の強度を補填し、取り扱いを容易にする役割を果たす。なお、ダイシングテープ76の周囲には、ダイシングフレーム(固定具)78が設けられている。このダイシングフレーム78は、ダイシングテープ76の弛みを防止する。その後、サポートプレート70の孔から接着剤72を溶かす溶剤を供給し、接着剤72を溶かした後に、サポートプレート70を除去する。このとき、接着剤72は、完全に除去されず半導体ウェハ74上に残存することとなる。残存した接着剤72を残存接着剤73として示す。このように、残存接着剤73を有する半導体ウェハ74が被処理体18に相当することとなる。
【0047】
この被処理体18は、上述の工程を経ることで、その外周にダイシングテープ76が配置されている。ダイシングテープ76は、残存接着剤73の除去に用いられる溶剤(処理液)が付着することで、劣化してしまうことがある。ダイシングテープ76の劣化は、弛みを引き起こし、この弛みは、薄化され強度が低下している半導体ウェハ74の割れを引き起こすことがある。そのため、ダイシングテープ76を劣化させることなく、半導体ウェハ74上の残存接着剤73を除去する必要がある。つまり、半導体ウェハ74の表面にのみ溶剤による除去を施すことが要求されることとなる。
【0048】
本実施形態にかかる処理装置100を、半導体ウェハ74上の残存接着剤73の除去に用いた場合、上述したように、半導体ウェハ74(被処理体18)以外に溶剤が飛散することを抑制した処理を行なうことができる。そのため、ダイシングテープ76を劣化させることなく、良好に残存接着剤73の除去を行なうことができる。このように、本実施形態にかかる処理装置によれば、処理を施こしたくない面に対しては、処理液の飛散を抑制しつつ、処理を施したい面に対しては良好に処理を行なうことができる処理装置を提供することができる。
【0049】
なお、本実施の形態では、被処理体18が、ダイシングテープ76の上に設けられた半導体ウェハ74である場合について説明したが、これに限定されることはない。処理液による処理を施すことが望まれる被処理体であれば、いずれの被処理体についても、本実施形態にかかる処理装置を用いることができる。
【0050】
なお、上記処理装置100では、表面処理治具20の平面形状が円形である場合を図示したが、表面処理治具20の形状がこれに限定されることはない。以下に、上記表面処理治具20の変形例にかかる表面処理治具70について図5を参照しつつ説明する。図5は、被処理面18aの上方に表面処理治具70が位置している場合の平面図である。その他の構成は、表面処理治具20と同様である。
【0051】
図5に示すように、表面処理治具70は、長方形状であって、その角が丸まっている平面形状を有する。表面処理治具70には、処理液を被処理面18aに供給する第1貫通孔76と、第2貫通孔78とが設けられている。第1貫通孔76を通じて、処理部への処理液の供給が行われ、第2貫通孔78を通じて供給された処理液の回収が行なわれる。第1貫通孔76および第2貫通孔78の開口形状、個数、配置は、いずれも図5に示したものに限定されない。被処理面18aが円形である場合には、表面処理治具70の長手方向の長さが、被処理面18aの半径と略同一であることが好ましい。この場合には、たとえば、矢印が示す方向に被処理体を回転させつつ処理を行なうことで、被処理面の全域に処理を施すことができる。また、表面処理治具70においても、表面処理治具20と同様に、被処理面18aとの対向面に突出部が設けられていてもよいことはいうまでもない。なお、表面処理治具70ではその平面形状が長方形状である場合を示したが、被処理面18aに対する処理液の供給と供給された処理液の回収を行い、表面処理治具70と被処理面18aとの間に処理液を保持できる限りこの形状に限定されることはない。
【0052】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明にかかる処理装置は、処理液による洗浄や塗布などの各種処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態にかかる処理装置の構成を示す要部の断面図である。
【図2】図1のA部をより詳細に示す断面図である。
【図3】本実施形態に係る処理装置が有する表面処理治具を示す平面図である。
【図4】本実施形態にかかる処理装置で処理される被処理体の一例を示す断面図である。
【図5】他の態様にかかる表面処理治具を示す平面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 載置台
12 回転軸
14 モーター
16 洗浄槽
18 被処理体
18a 被処理面
20 表面処理治具
22 処理部
22a 対向面
24 突出部
26 第1貫通孔
28 第2貫通孔
30 供給手段
32 供給配管
34 処理液タンク
40 回収手段
42 回収配管
44 吸引ポンプ
50 離間維持手段
52 アーム
60 不活性ガス供給手段
62 不活性ガスタンク
64 不活性ガス供給配管
66 ノズル
100 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体が載置される載置台と、
処理液にて前記被処理体の被処理面を処理する表面処理治具と、
前記表面処理治具に処理液を供給する供給手段と、
前記表面処理治具に供給された処理液を回収する回収手段と、
前記表面処理治具を前記被処理面と離間した状態に維持する離間維持手段と、を含み、 前記表面処理治具は、前記被処理面に対向する対向面を有し、該対向面と該被処理面との間に前記供給手段から供給された処理液を保持して被処理面を処理する処理部を備えることを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記対向面から前記被処理体に向かって突出する突出部を備え、該突出部と前記被処理面との間における処理液の表面張力により、供給された処理液を前記対向面と前記被処理面との間に保持することを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記突出部の、前記被処理面と対向する面は平面であり、前記離間維持手段により該突出部と該被処理面との距離が、3mm以下に維持されることを特徴とする請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
処理後の被処理面を乾燥させる乾燥手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記乾燥手段は、前記被処理面に向かって不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段であることを特徴とする請求項4に記載の処理装置。
【請求項6】
前記乾燥手段は、前記被処理面に残った処理液を吸引する吸引手段であることを特徴とする請求項4に記載の処理装置。
【請求項7】
前記吸引手段は、前記表面処理治具を用いて行なわれ、前記供給手段からの処理液の供給が停止した状態で、前記回収手段により前記被処理面に残った処理液を吸引することにより行われることを特徴とする請求項6に記載の処理装置。
【請求項8】
前記対向面の面積は、前記被処理面の面積と比して小さいことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項9】
前記離間維持手段は、表面処理治具を被処理体に対して移動させることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項10】
前記離間維持手段は、表面処理治具を被処理体の略中心から外縁に向かって移動させることを特徴とする請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記載置台は、載置された被処理体を回転させることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項12】
被処理体の被処理面を処理液にて処理するのに用いられる表面処理治具であって、
被処理面に対して離間して維持された際に、上記被処理面に対向する対向面を有し、該対向面と前記被処理面との間に供給された処理液を保持して被処理面を処理する処理部を備えることを特徴とする表面処理治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−140909(P2008−140909A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324438(P2006−324438)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】