説明

分散制御装置及び画像形成装置

【課題】複数の負荷を制御する各制御部のシステムクロック周波数に差異があっても、それぞれの負荷を同期して制御できる分散制御装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】第一負荷77を制御する第一制御部13と、第一負荷と異なる負荷12を制御する第二制御部16のうち、システムクロックの分解能が高い制御部をマスタ制御部に、分解能が低い制御部をスレーブ制御部に設定するシステム設定部を備え、スレーブ制御部に、基準時間をカウントするスレーブ側カウンタと、割込み信号を出力する割込み処理部を備える一方、マスタ制御部に、割込み信号に同期してカウントを開始、終了するマスタ側カウンタのカウント値と基準時間との比較結果に基づいてマスタ制御部の負荷に対する制御周期の補正値を算出する補正処理部を備えて分散制御装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用したプリンタ、複写機、複合機等の画像形成装置に関し、特に、画像形成部、転写部及び用紙搬送部等の動作を制御する複数の制御部により制御される負荷を同期制御する分散制御装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、画像形成部、転写部及び用紙搬送部等の各負荷を制御するために、マイクロコンピュータからなる制御部を備えている。この制御部は、画像形成部の感光体ドラム、転写部の転写ベルト、用紙搬送部の搬送ローラが所定のプロセス速度で同期して動作するように制御している。
例えば、タンデム方式を採用した最近のカラープリンタは、複数の感光体ユニットを備えているので、各感光体ドラムのモータ、転写ベルトのモータ及び搬送ローラのモータといった回転体を同期して駆動させる必要がある。
【0003】
ところが、このように負荷が増加すると1つの制御部で制御する際、制御負荷が高くなるので、高機能のマイクロコンピュータを採用しなければならず、製作コスト高となっていた。
そこで、安価なマイクロコンピュータを複数用いて、これらの負荷を分散制御することが考えられている。この分散制御を行う場合は、前記各感光体ドラムのモータ、転写ベルトのモータ及び搬送ローラのモータを含む回転体の線速度を同期して駆動させる必要がある。
このため、従来はマイクロコンピュータのCPUを起動させるシステムクロックが同一となるように、水晶発振子を選択していた。
【0004】
ところで、このような分散制御において、例えば、特許文献1に示すように各ユニット間の同期制御を高精度に行うことを目的とした分散制御装置が知られている。
【0005】
この分散制御装置は、コントローラ、プリンタエンジン制御部、プラットフォーム制御部、画像形成制御部、作像ユニット、定着ユニット、給紙ユニット、搬送ユニットのそれぞれにCPUユニットを搭載している。
また、各CPUユニットは、時間を管理するためのタイマを有するとともに、各タイマは、同じ周期でカウントアップするカウンタを備えており、カウントアップ毎にカウンタのデータ値を書き換えることでそれぞれのユニットの時間を管理している。
【0006】
これにより、各ユニット間の同期制御を行うための共通時間を各ユニットそれぞれが管理する場合に、別の通信ラインを要することなくデータ通信線によって、各ユニットの管理時間を合わせることができ、束線を増やすことなくユニット間の同期制御が可能となる。
【特許文献1】特開2006−215869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に開示された分散制御装置は、各ユニット間の同期制御を行うための共通時間を合わせるが、各CPUユニットから出力されるクロック周波数間の差異を補正するものではなく、各ユニットの同期制御には一定の限界があった。
このように、クロック周波数信号が高精度に同期されない場合、前記各回転体の周速度に差異が生じて、印刷紙に色ブレや滲み等が惹起される問題が残されていた。
【0008】
また、上記タンデム方式のカラープリンタをはじめ、各回転体をマイクロコンピュータで制御する従来の画像形成装置は、水晶振動子の発振周波数に対するシステムクロックの逓倍率や使用温度条件といったCPUの分解能が許容の範囲内で使用されている。さらに、前述のように安価なマイクロコンピュータを用いる場合、前記分解能が許容の範囲内で使用せざるを得なかった。
この際、画質が劣化しない程度の印刷は可能であるが、高精細な画像品質を確保することはできなかった。
【0009】
本発明の目的は、複数の負荷を制御する各制御部のシステムクロック周波数に差異があっても、それぞれの負荷を同期して制御できる分散制御装置及び画像形成装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するため、本発明による分散制御装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載したとおり、第一周波数のシステムクロックで動作し、第一負荷を制御する第一制御部と、第一周波数と異なる第二周波数のシステムクロックで動作し、第一負荷とは異なる負荷を制御する第二制御部とが、各負荷を同期して制御する分散制御装置であって、何れか一方の制御部に、他方の制御部に要求して取得した他方のシステムクロック情報と自らのシステムクロック情報を比較し、システムクロックの分解能が高い制御部をマスタ制御部に、システムクロックの分解能が低い制御部をスレーブ制御部に設定するとともに、他方の制御部に設定結果を通知するシステム設定部を備え、前記システム設定部により設定されたスレーブ制御部に、基準時間をカウントするスレーブ側カウンタと、前記スレーブ側カウンタによるカウントの開始時及び終了時に前記マスタ制御部に割込み信号を出力する割込み処理部を備えるとともに、前記マスタ制御部に、前記割込み処理部から出力されたカウント開始時の割込み信号に同期してカウントを開始し、カウント終了時の割込み信号に同期してカウントを終了するマスタ側カウンタと、前記マスタ側カウンタのカウント値と前記基準時間との比較結果に基づいて前記マスタ制御部の負荷に対する制御周期の補正値を算出する補正処理部を備えている点にある。
【0011】
システムクロックの分解能が高いマスタ制御部及び分解能が低いスレーブ制御部が設定された後、マスタ制御部のマスタ側カウンタがスレーブ制御部からの割込み信号に同期してカウントを終了したとき、マスタ制御部の補正処理部が、前記マスタ側カウンタのカウント値と前記スレーブ側カウンタの基準時間との比較結果に基づいて前記マスタ制御部の負荷に対する制御周期の補正値を算出するので、この補正値に基づいて前記第一制御部及び第二制御部の制御周期を一致させることができる。
【0012】
従って、前記第一制御部の負荷と第二制御部の負荷を制御する各制御部のシステムクロック周波数に差異があっても、それぞれの負荷を高精度に同期制御できる。
【0013】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、前述の第一の特徴構成に加えて、前記マスタ制御部は、前記スレーブ制御部により所定周波数で駆動されるスレーブ側負荷と同期するように、前記補正処理部で補正された補正値に基づく補正周波数でマスタ側負荷を制御する点にある。
【0014】
マスタ制御部が、補正処理部の補正値に基づく補正周波数でマスタ側負荷を制御するので、スレーブ側負荷に対してマスタ側負荷の制御周期を一致させることができる。従って、第一制御部の負荷と第二制御部の負荷を高精度に同期制御できる。
【0015】
本発明による画像形成装置の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、前述の第一または第二の特徴構成を備えた分散制御装置により制御される画像形成装置であって、感光体ドラムを露光するプリントヘッドに備えた回転多面鏡を回転駆動するDCモータと、前記感光体ドラムを回転駆動するDCモータと、前記感光体ドラムに形成されたトナー像が転写される転写ベルトを回転駆動するブラシレスDCモータを備え、少なくとも何れか一つのDCモータが前記マスタ側負荷として前記マスタ制御部により駆動され、他の一つのDCモータが前記スレーブ側負荷として前記スレーブ制御部により駆動される点にある。
【0016】
前記回転多面鏡を回転駆動するDCモータ、感光体ドラムを回転駆動するDCモータ及び転写ベルトを回転駆動するブラシレスDCモータのうち、少なくとも何れか一つのDCモータが前記スレーブ制御部により駆動され、他の一つのDCモータが前記マスタ制御部により駆動されるので、前記スレーブ制御部及びマスタ制御部により全てのDCモータの制御周期が一致し高精度の同期制御が可能になる。従って、印刷時には高精細な画像品質を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した通り、本発明によれば、複数の負荷を制御する各制御部のシステムクロック周波数に差異があっても、それぞれの負荷を同期して制御できる分散制御装置及び画像形成装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の分散制御装置が組み込まれて構成された画像形成装置の一例であるカラープリンタについて説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明の画像形成装置を採用したカラープリンタ1は、マンマシンインターフェースであり、液晶画面やプリント条件等を入力する操作キー等が配置された操作部5と、ネットワークを介してパーソナルコンピュータ等から入力された画像データに基づいてトナー像を形成する画像形成部6と、用紙収容部8から搬送された用紙に画像形成部6が形成したトナー像を転写する転写部7と、転写部7により転写されたトナー像を用紙に溶融定着する定着部2等の機能ブロックと、これら機能ブロックを制御する制御部4と、制御部4等に必要な電力を供給する電源部3を備えている。
【0020】
本実施例の分散制御装置は、第一制御部としてのマイクロコンピュータと第二制御部としてのマイクロコンピュータで構成され、第一制御部及び第二制御部の何れか一方がメインコントローラとして、他方がサブコントローラとしてカラープリンタ1の各機能ブロックを制御する制御部4が構成されている。
【0021】
画像形成部6は、マゼンダ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のトナー色毎に感光体ユニット10を備えている。各感光体ユニット10は、感光体とこの感光体表面を一様に帯電する帯電装置や現像装置等を備えている。各感光体ユニット10の近傍に、入力された画像データに基づきレーザビームを走査し感光体表面を露光して静電潜像を形成する露光装置が配置され、露光装置により感光体表面に形成された静電潜像が、現像装置によりトナー像として顕像化される。
【0022】
転写部7は、各感光体ユニット10で形成された複数色のトナー像を重畳して担持する中間転写ベルト72と、中間転写ベルト72を回転支持する支持ローラ71と、中間転写ベルト72に担持されたトナー像を用紙収容部8から搬送された用紙に転写する転写ローラ75と、中間転写ベルト72の残留トナーを除去するブレード74等を備えている。
【0023】
定着部2は、内挿したヒータ21の熱により被加熱媒体である用紙を加熱する定着ローラ20と、定着ローラ20に圧接されて定着ローラ20と共に用紙を挟持搬送する加圧ローラ22を備えている。
【0024】
図2に示すように、各感光体ユニット10は、中間転写ベルト72に沿ってマゼンダ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)の順に直列に配置されている。各感光体ユニット10の感光体ドラムは、各別に設けたステッピングモータ12により回転駆動され、各ステッピングモータ12はサブコントローラ13によりモータドライバ11を介して出力される所定周波数のクロック信号に基づいて回転制御される。
【0025】
転写ローラ73も、ステッピングモータまたはブラシレスDCモータでなる転写モータ76により回転駆動され、転写モータ77はメインコントローラ16によりモータドライバ76を介して出力される所定周波数のクロック信号に基づいて回転制御される。
【0026】
なお、図示省略しているが、露光装置に備えられた回転多面鏡であるポリゴンミラーは、ブラシレスDCモータでなるポリゴンモータで回転駆動され、ポリゴンモータはメインコントローラ16を介してモータドライバから出力される所定周波数のクロック信号に基づいて回転制御される。
【0027】
感光体ドラムに形成されたトナー像が、適正に中間転写ベルト72に転写されるために、感光体ドラムと中間転写ベルト72の周速度が一致するように、メインコントローラ16及びサブコントローラ13により駆動されるモータ12,77の回転速度が調整されている。
【0028】
つまり、各コントローラ13,16から出力されるそれぞれのモータ駆動用のクロック信号の周波数は、感光体ドラムと中間転写ベルト72の周速度が一致するように調整されている。
【0029】
図3に示すように、サブコントローラ13及びメインコントローラ16は、それぞれCPU133,163と、各CPUにより実行される制御プログラムが格納されたROM134,164と、各CPUによりワーキング領域として使用されるRAM135,165と、第一及び第二の発振回路132,162と、周辺回路であるA/Dポート136,166、I/Oポート137,167、割込み制御回路138,168、タイマ回路141,171等の回路ブロックを備えて構成され、各回路ブロックが内部バス131,161を介してCPU133,163に接続されている。
【0030】
さらに、図3には示されていないが、サブコントローラ13及びメインコントローラ16は、シリアル通信線で接続され、必要な制御情報をやり取り可能に構成されている。
【0031】
サブコントローラ13には第一の水晶振動子15が接続され、水晶振動子15の発振周波数が発振回路132で逓倍された第一周波数(本実施形態では50MHz)のシステムクロックに基づいてCPU133が駆動される。
【0032】
メインコントローラ16には第二の水晶振動子18が接続され、水晶振動子18の発振周波数が発振回路162で逓倍された第二周波数(本実施形態では100MHz)のシステムクロックに基づいてCPU163が駆動される。
【0033】
つまり、本発明による分散制御装置は、第一周波数のシステムクロックで動作し、第一負荷としてのステッピングモータ12等を制御する第一制御部13と、第一周波数と異なる第二周波数のシステムクロックで動作し、第一負荷とは異なる第二負荷としての転写モータ77等を制御する第二制御部16とが、各負荷を同期して制御するように構成されている。
【0034】
そして、分散制御装置は、何れか一方の制御部に、他方の制御部に要求して取得した他方のシステムクロック情報と自らのシステムクロック情報を比較し、システムクロックの分解能が高い制御部をマスタ制御部に、システムクロックの分解能が低い制御部をスレーブ制御部に設定するとともに、他方の制御部に設定結果を通知するシステム設定部を備えている。
【0035】
本実施形態では、サブコントローラ13にシステム設定部が設けられ、サブコントローラ13が、メインコントローラ16からメインコントローラ16のシステムクロック周波数を取得し、サブコントローラ13のシステムクロック周波数とメインコントローラ16のシステムクロック周波数を比較し、システムクロックの分解能が高いコントローラをマスタに、システムクロックの分解能が低いコントローラをスレーブに設定するように構成されている。
【0036】
従って、サブコントローラ13は、メインコントローラ16をマスタ制御部に設定し、自身をスレーブ制御部に設定する。なお、システム設定部をメインコントローラ16に設けてもよいことは言うまでもない。
【0037】
以下、サブコントローラ13に備えたシステム設定部の動作を、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
ユーザーによりプリンタ1の電源スイッチが投入されると、メインコントローラ16及びサブコントローラ13がそれぞれ起動してROM164,134に記憶されたプログラムが実行される(SA1)(SB1)。
【0039】
メインコントローラ16は、RAM165や周辺回路の初期化処理を行なった後に、システム設定部として機能するプログラムを実行する。つまり、メインコントローラ16は、サブコントローラ13に対してシステムクロック情報を要求する旨のデータを、シリアル通信線を介して送信する(SA2)。
【0040】
サブコントローラ13は、RAM135や周辺回路の初期化処理を行なった後に、メインコントローラ16からシリアル通信線を介してデータを受信すると(SB2)、データを解析してシステムクロック情報の要求であると判断すると(SB3)、自身のシステムクロック情報をROM134から読み出して(SB4)、メインコントローラ16に返信する(SB5)。
【0041】
なお、システムクロック情報は、予めROM134に記憶されており、水晶発振子132の周波数またはシステムクロックの周波数等、互いのシステムクロックの周波数を比較できる情報である。
【0042】
メインコントローラ16は、サブコントローラ13から返信データを受信すると(SA3)、サブコントローラ13のシステムクロック情報をRAM165に格納し(SA4)、自身のROM164に記憶されたシステムクロック情報を読み出し(SA5)、RAM165に記憶したサブコントローラ13のシステムクロック情報と自身のシステムクロック情報を比較する(SA6)。
【0043】
メインコントローラ16は、自身の分解能が高いと判断すると自身をマスタ制御部に設定するとともに、サブコントローラ13をスレーブ制御部に設定し(SA7)、自身の分解能が低いと判断すると自身をスレーブ制御部に設定するとともに、サブコントローラ13をマスタ制御部に設定し(SA8)、サブコントローラ13に設定情報を送信する(SA9)。つまり、ステップSA2からステップSA9の処理がシステム設定部としての機能となる。
【0044】
サブコントローラ13は、メインコントローラ16から設定情報を受信すると(SB6)、その内容を解析して(SB7)、自身がスレーブ制御部であるかマスタ制御部であるかを認識する(SB8)。
【0045】
本実施形態では、サブコントローラ13のシステムクロック周波数が50MHzであり、メインコントローラ16がその2倍にあたる100MHzであるので、メインコントローラ16がマスタ制御部に設定され、サブコントローラ13がスレーブ制御部に設定されるのである。
【0046】
システム設定部で設定された情報は、サブコントローラ13とメインコントローラ16のRAM135,165にそれぞれ格納される。
【0047】
尚、RAM135,165が電池バックアップされていれば、カラープリンタ1に初回に電源が投入されたときにのみシステム設定部が作動すればよい。電池バックアップされたRAM135,165に替えて、EEPROMのような不揮発性メモリを備えて、当該不揮発性メモリにシステム設定部で設定された情報を格納するように構成してもよい。
【0048】
電池バックアップされたRAMや不揮発性メモリをサブコントローラ13とメインコントローラ16の何れか一方にのみ備えてもよく、その場合には、電源投入時に当該RAMまたは不揮発性メモリを備えたコントローラが、他のコントローラにシステム設定部で設定された情報を送信すればよい。
【0049】
RAM135,165が電池バックアップされていなければ、電源が投入される度にシステム設定部が作動するようにプログラムを構成すればよい。
【0050】
さらに、スレーブ制御部であるサブコントローラ13に、基準時間をカウントするスレーブ側カウンタと、スレーブ側カウンタによるカウントの開始時及び終了時にマスタ制御部であるメインコントローラ16に割込み信号を出力する割込み処理部を備えるとともに、マスタ制御部であるメインコントローラ16に、割込み処理部から出力されたカウント開始時の割込み信号に同期してカウントを開始し、カウント終了時の割込み信号に同期してカウントを終了するマスタ側カウンタと、マスタ側カウンタのカウント値と基準時間との比較結果に基づいてマスタ制御部の負荷に対する制御周期の補正値を算出する補正処理部を備えている。
【0051】
以下、スレーブ制御部であるサブコントローラ13の割込み処理部と、マスタ制御部であるメインコントローラ16の補正処理部の動作を、図5に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、ここでは、RAM135,165が電池バックアップされ、既にシステム設定部で設定された情報が格納された状態を前提に説明する。
【0052】
ユーザーによりプリンタ1の電源スイッチが投入されると、メインコントローラ16及びサブコントローラ13がそれぞれ起動してROM164,134に記憶されたプログラムが実行される(SA21)(SB21)。
【0053】
サブコントローラ13では、割込み処理部が起動して、タイマ回路141に備えたコンペアレジスタに基準時間をセットする(SB22)。本実施形態では、基準時間として1μsec.の値50がセットされている。
【0054】
各タイマ回路141,171には、自身のシステムクロックに同期してカウントするタイマカウンタやコンペアレジスタ等が設けられ、コンペアレジスタに任意の値がセットされた後に、タイマカウンタが起動され、タイマカウンタの値がコンペアレジスタの値と一致すると、割込み制御回路138,168を介してCPUに割込みを発生させる機能を備えている。なお、このような機能を実現するための具体的構成は、マイクロコンピュータにより様々であり、本実施形態の例に限るものではなく、後述のアウトプットコンペアを用いてもよい。
【0055】
サブコントローラ13は、タイマカウンタによるカウント動作を起動するとともに、I/Oポート137からメインコントローラ16のI/Oポート167にハイレベルの割込み信号を出力する(SB23)。タイマ回路141のタイマカウンタは、サブコントローラ13の50MHzのシステムクロックに同期してカウントされる。
【0056】
メインコントローラ16では、I/Oポート167に入力されたハイレベルの割込み信号を検知すると(SA22)、自身のタイマ回路171のタイマカウンタによるカウント動作を起動する(SA23)。タイマ回路171のタイマカウンタは、メインコントローラ16の100MHzのシステムクロックに同期してカウントされる。
【0057】
サブコントローラ13のタイマカウンタの値がコンペアレジスタの値と一致すると(SB24)、CPU133に割込みが掛かり、I/Oポート137からメインコントローラ16のI/Oポート167に、ローレベルの割込み信号を出力する(SB25)。つまり、ステップSB22からステップSB25の処理が割込み処理部により実行される。
【0058】
メインコントローラ16は、I/Oポート167に入力されたローレベルの割込み信号を検知すると(SA24)、自身のタイマ回路171のタイマカウンタによるカウント値を読み出して、CPU163の内部レジスタAに格納し(SA25)、タイマカウンタを停止させ(SA26)、レジスタAから100を減算した値をCPU163の内部レジスタBに格納する(SA27)。
【0059】
メインコントローラ16のシステムクロックの周波数は100MHzに設定されているため、1μsec.に対応するカウント値が100に相当する。サブコントローラ13のシステムクロックが正確に50MHzに設定され、メインコントローラ16のシステムクロックが正確に100MHzに設定されていれば、サブコントローラ13から出力されるハイレベルの割込み信号とローレベルの割込み信号の間隔が1μsec.となり、メインコントローラ16のタイマカウンタの値は100になる。
【0060】
従って、内部レジスタBの値が零であれば、メインコントローラ16のシステムクロックによる計時と、サブコントローラ13のシステムクロックによる計時が一致しており、時間差が生じないと判断する。
【0061】
内部レジスタBの値が正であれば、メインコントローラ16のシステムクロックによる計時が、サブコントローラ13のシステムクロックによる計時よりも相対的に早くなっていると判断する。
【0062】
内部レジスタBの値が負であれば、メインコントローラ16のシステムクロックによる計時が、サブコントローラ13のシステムクロックによる計時よりも相対的に遅くなっていると判断する。
【0063】
ステップSA28では、メインコントローラ16により、内部レジスタBの値に基づいて、転写モータ77を駆動するためのクロック信号の周期を補正するための補正値が算出され、ステップSA29では、補正値がRAM164に格納される。
【0064】
内部レジスタBの値が零であれば補正値は設定されず、内部レジスタBの値が正であれば、クロック信号の周期を理論値より長くする補正値が算出され、内部レジスタBの値が負であれば、クロック信号の周期を理論値より短くする補正値が算出される。
【0065】
例えば、レジスタBの値が5になれば、メインコントローラ16側が5%早くカウントしていると判断して、補正値を5%に設定し、レジスタBの値が−5になれば、メインコントローラ16側が5%遅くカウントしていると判断して、補正値を−5%に設定する。つまり、ステップSA28とステップSA29の処理が、補正処理部により実行される。
【0066】
メインコントローラ16及びサブコントローラ13が協働してカラープリンタ1による画像形成制御を実行する際に、メインコントローラ16が、補正処理部によって算出された補正値に基づいて、転写モータ77を駆動するクロック信号の周期を調整することにより、転写モータ77とサブコントローラ13によって駆動されるステッピングモータ12が同期して駆動される。
【0067】
例えば、メインコントローラ16で制御される転写モータ77により駆動される中間転写ベルトと、サブコントローラ13で制御されるステッピングモータ12により駆動される感光体の周速が250mm/sec.に設定され、各モータに出力するクロック信号の周波数に対応して、メインコントローラ16側で10000、サブコントローラ13側で5000の値をアウトプットコンペアのコンペアレジスタにセットする必要がある場合、メインコントローラ16側のコンペアレジスタにセットする値を10500(=10000×1.05)に補正されるのである。
【0068】
尚、アウトプットコンペアは、I/Oポートの一つの機能であり、システムクロックでカントされた値とコンペアレジスタにセットされた値が一致すると、出力論理を反転させるポートであり、各モータへ出力されるクロック信号が当該アウトプットコンペアを用いて出力される。
【0069】
次に、メインコントローラ16により実行される画像形成制御のうち、本発明に関する要部を、図6に示すフローチャートを用いて説明する。
【0070】
ユーザーによりプリンタ1の電源スイッチが投入されると、メインコントローラ16が起動してROM164に記憶されたプログラムが実行される(SA41)。初期化の設定処理が行われた後(SA42)、上述の補正処理部が起動され(SA43)、補正値がRAM165に記憶される。
【0071】
次に、プリントスイッチが操作されたか否かを判別し(SA44)、操作されると、転写モータ77に対するクロック信号の周期が補正値に基づいて補正され、アウトプットコンペアのコンペアレジスタにセットされる(SA45)。
【0072】
続いて、アウトプットコンペアから転写モータ77に対するクロック信号が出力されて転写モータ77が起動され(SA46)、プリント動作が開始される(SA47)。プリントが終了したか否かを判別し(SA48)、終了時点で一連のプリント動作を終了する。
【0073】
以上のように、このプリント動作においては、サブコントローラ13により制御される各感光体ドラムのモータ12と、メインコントローラ16により制御される転写モータ77とが同期制御されるので、感光体ドラム及び中間転写ベルト72の周速度が一致し、色ブレや滲みが発生しない高精細な画像が形成されるようになる。
【0074】
つまり、システムクロックの周波数が高いコントローラが、システムクロックの周波数が低い方のシステムクロックに応じて、負荷を補正制御することにより、それぞれの負荷を高精度に同期制御できるように構成されている。
【0075】
なお、ブラシレスDCモータは、モータから出力されるFGパルス信号に基づいてモータの回転数を検知し、メインコントローラ16から入力されたクロック信号の所定周波数に対応した回転速度となるようにモータの各相への通電タイミングを制御するフィードバック制御回路を備えている。
【0076】
上述の実施形態では、制御負荷が感光体ドラムや転写ベルトを駆動するモータである場合を例に説明したが、制御負荷はこれらに限定されるものではなく、複数の制御部で分散制御される負荷であって、互いに同期して制御される必要がある負荷であれば任意である。
【0077】
また、上述の実施形態では、本願発明がカラープリンタに適用される場合を説明したが、画像形成装置であればプリンタ1に限らず、複写機やファクシミリ、さらには複合機であってもよい。また、画像形成装置以外の分散制御装置にも適用可能であることはいうまでもない。
【0078】
なお、上述した実施形態は何れも本発明の一実施例に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】プリンタの機能を示すブロック図
【図2】画像形成部の概要構成を示す説明図
【図3】分散制御装置を示すブロック図
【図4】分散制御装置の設定動作を説明するフローチャート
【図5】分散制御装置の同期処理動作を説明するフローチャート
【図6】画像形成装置のプリント動作を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0080】
13:第一制御部
16:第二制御部
12,77:負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一周波数のシステムクロックで動作し、第一負荷を制御する第一制御部と、第一周波数と異なる第二周波数のシステムクロックで動作し、第一負荷とは異なる負荷を制御する第二制御部とが、各負荷を同期して制御する分散制御装置であって、
何れか一方の制御部に、他方の制御部に要求して取得した他方のシステムクロック情報と自らのシステムクロック情報を比較し、システムクロックの分解能が高い制御部をマスタ制御部に、システムクロックの分解能が低い制御部をスレーブ制御部に設定するとともに、他方の制御部に設定結果を通知するシステム設定部を備え、
前記システム設定部により設定されたスレーブ制御部に、基準時間をカウントするスレーブ側カウンタと、前記スレーブ側カウンタによるカウントの開始時及び終了時に前記マスタ制御部に割込み信号を出力する割込み処理部を備えるとともに、
前記マスタ制御部に、前記割込み処理部から出力されたカウント開始時の割込み信号に同期してカウントを開始し、カウント終了時の割込み信号に同期してカウントを終了するマスタ側カウンタと、前記マスタ側カウンタのカウント値と前記基準時間との比較結果に基づいて前記マスタ制御部の負荷に対する制御周期の補正値を算出する補正処理部を備えている分散制御装置。
【請求項2】
前記マスタ制御部は、前記スレーブ制御部により所定周波数で駆動されるスレーブ側負荷と同期するように、前記補正処理部で補正された補正値に基づく補正周波数でマスタ側負荷を制御する請求項1記載の分散制御装置。
【請求項3】
感光体ドラムを露光するプリントヘッドに備えた回転多面鏡を回転駆動するDCモータと、前記感光体ドラムを回転駆動するDCモータと、前記感光体ドラムに形成されたトナー像が転写される転写ベルトを回転駆動するブラシレスDCモータを備え、請求項1または2記載の分散制御装置により制御される画像形成装置であって、
少なくとも何れか一つのDCモータが前記マスタ側負荷として前記マスタ制御部により駆動され、他の一つのDCモータが前記スレーブ側負荷として前記スレーブ制御部により駆動される画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−128207(P2010−128207A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303018(P2008−303018)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】