説明

分注装置

【課題】複数箇所の容器に検体や試薬を分注する場合であっても、効率良く検体や試薬を混合した液体を攪拌できる分注装置を提供する。
【解決手段】円筒形状の枠体103と、複数の超音波振動子105と、超音波伝達媒体が供給、排出可能に構成された略円筒形状のバッグ107とを有する超音波照射装置101を分注装置の作業領域に設け、マイクロプレートに所定量の液体を分注する前に、所望の液体を吸引したノズルチップ19内の液体に向けて超音波を照射して液体を攪拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を分注する分注装置に関し、ノズルチップに吸引した液体に超音波を照射してノズルチップ内で液体を攪拌して、液体の破砕、その他の反応を促進する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査の分野や基礎研究の分野において、血清等の血液成分や尿等の検体の仕分け、および検体と試薬の混合を行う分注装置が広く用いられている。このような分注装置は、検体や試薬等の液体を吸引、吐出するノズルチップと、ノズルチップに液体を吸引、吐出するためにノズルチップの内圧を増減させる分注ポンプ等を有している。分注装置において、検体と試薬を混合した後にその液体を攪拌して反応を促進させることも一般的に行われている。
【0003】
特許文献1には、液体を吸引、吐出するノズルチップによりウェル等の容器内に分注された液体を攪拌する攪拌ノズル装置が開示されている。この装置は、ノズルチップで液体を吸引、吐出することにより所望の液体を容器に分注した後に、ノズルチップの先端を容器内の液体に進入させ、ノズルチップが連結された(一体化している)ノズル本体に設けられた圧電素子を駆動してノズルチップを振動させて、その振動を液体に伝達することにより液体の攪拌を行うものである。
【0004】
また、特許文献2には、ノズル本体に装着されたノズルチップに検体や試薬等の液体を吸引し、吸引した液体をノズルチップ内で攪拌する分注装置が開示されている。この装置は、ノズル本体に装着されたノズルチップの先端部にフィルタ部材を有する管状部材を設け、ノズルチップに吸引した検体と試薬との混合液をフィルタ部材に向けて吐出することにより目的物である粒子を捕捉するに際して、ノズルチップに吸引した混合液を一旦容器に吐出し、その混合液を再度ノズルチップに吸引することによりノズルチップ内で混合液を攪拌するものである。
【0005】
【特許文献1】特開平8−113300号公報
【特許文献2】特開2003−254875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
臨床検査の分野や基礎研究の分野では、複数種類の検体や試薬が取り扱われるようになってきている。そのため、分注先であるマイクロプレート等に複数の凹部(ウェル)が設けられ、それら複数のウェルに対して臨床検査や基礎研究に必要な分量の検体や試薬が必要量だけ分注される。
【0007】
特許文献1に開示の装置は、複数のウェルに検体や試薬を分注した後、各ウェルにおいてノズルチップを振動させることにより検体や試薬を混合した液体の攪拌を行うものであり、複数のウェルに検体や試薬を分注する前に検体や試薬を混合した液体を攪拌することについては示唆されていない。
【0008】
また、複数種類の検体や試薬を取り扱う場合、異物の混入等のコンタミネーションを避けるため、取り扱う検体や試薬を変えるごとにノズルチップを交換するのが一般的である。
【0009】
特許文献1に開示の装置では、ノズルチップ自体を振動させるため、ノズル本体に圧電素子が設けられている。また、ノズル本体は吸引チューブに固定されており、ノズルチップを交換することは考慮されていない。従って容器に液体を分注し液体の攪拌を行った後に別の検体や試薬を混合した液体を取り扱うことは想定していない。
【0010】
特許文献2に開示の装置は、ノズルチップに吸引した液体を一旦容器に吐出した後に再度ノズルチップに液体を吸引することによりノズルチップ内で液体を攪拌するものであり、分注ポンプの駆動およびノズルチップ自体の動作を伴うことなく、ノズルチップに吸引した液体に超音波を照射する等の外的作用を与えて、直接的にノズルチップ内で液体を攪拌することについては示唆されていない。
【0011】
本発明の目的は、複数箇所の容器に検体や試薬を分注する場合であっても、効率良く検体や試薬を混合した液体を攪拌できる分注装置を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、ノズルチップに吸引した液体に超音波を照射して、分注ポンプの駆動およびノズルチップ自体の動作を伴うことなく、ノズルチップ内の液体を攪拌することができる分注装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的は、下記(1)〜(5)の本発明により達成される。
(1) 液体を分注する分注装置において、
X、Y、Z軸方向の3軸方向に移動可能に設けられた分注ヘッドと、
前記分注ヘッドに着脱可能に装着され、前記液体を吸引、吐出するノズルチップと、
前記分注ヘッドに接続され、前記ノズルチップに前記液体を吸引して吐出するための分注ポンプと、
前記分注装置の作業領域に載置された円筒形状の枠体と、
前記枠体の内周部に設けられ、超音波を発生する複数の超音波振動子と、
前記枠体の中空部における超音波発生領域に設けられ、超音波伝達媒体を供給、排出可能に構成された略円筒形状のバッグと、
超音波伝達媒体を貯留するタンクと、
前記タンクから前記バッグに超音波伝達媒体を供給し、前記バッグから超音波伝達媒体を排出するためのポンプと、
を具備し、
前記液体を吸引したノズルチップを前記バッグの中空部に挿入し、前記タンクから前記バッグに超音波伝達媒体を供給して前記バッグを前記ノズルチップと前記超音波振動子とに密着させ、前記ノズルチップ内の液体に向けて超音波を照射して当該液体を攪拌するよう構成されていることを特徴とする分注装置。
【0014】
(2) 前記タンク内の超音波伝達媒体の温度を検出する第1温度センサと、前記第1温度センサの検出結果に基づいて前記タンク内の超音波伝達媒体の温度が予め設定された温度になるよう制御する温度制御手段とをさらに具備し、前記タンク内の超音波伝達媒体の温度を恒温に保つよう構成された上記(1)に記載の分注装置。
【0015】
(3) 前記タンクと前記バッグとの間の供給管路および排出管路を開閉する制御弁と、前記バッグ内の超音波伝達媒体の温度を検出する第2温度センサとをさらに具備し、前記第2温度センサの検出結果に基づいて前記ポンプおよび前記制御弁を制御して、前記バッグから超音波伝達媒体を排出して前記バッグに前記タンク内の超音波伝達媒体を供給するよう構成された上記(1)または(2)に記載の分注装置。
【0016】
(4) 前記ノズルチップに液体を吸引したときの前記ノズルチップ内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて前記ノズルチップ内の圧力が予め設定された圧力になるよう制御する圧力制御手段とをさらに具備し、前記ノズルチップから液だれが生じないよう構成された上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の分注装置。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、検体や試薬等の液体をウェル等の容器に分注する前に、ノズルチップ内に吸引した検体や試薬等の液体に向けて超音波を照射し、ノズルチップ内で液体を攪拌するようにしたので、各ウェルにおける攪拌が不要となり攪拌工程が少なくて済み、効率良く検体や試薬等の液体の反応を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の分注装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の分注装置の全体斜視図、図2は、本発明の分注装置の第1実施形態における主要部の構成ブロック図、図3は、図2におけるA−A断面図であり、ノズルチップに超音波を照射前の超音波照射装置の要部断面図、図4は、図2におけるA−A断面図であり、ノズルチップに超音波を照射中の超音波照射装置の要部断面図、図5は、本発明の分注装置における一連の分注動作を行う工程を示した説明図、図6は、本発明の分注装置の第2実施形態における主要部の構成ブロック図である。
【0019】
まず、図1〜図5に基づいて、本発明の第1実施形態の分注装置を説明する。図1に示すように、本発明の分注装置1は、基台となるベッド3と、ベッド3後部に立設されたコラム5と、コラム5前面の両端部に一端が取り付けられ、他端の下方がベッド3上面から立ち上がった支持部材7で支持された一対のアーム部材9と、一対のアーム部材9に取り付けられた案内レール9aに沿ってY軸方向へ移動可能に設けられたY軸アーム11と、Y軸アーム11に取り付けられた案内レール11aに沿ってX軸方向へ移動可能に設けられたクイル13と、クイル13に設けられた案内レール13aに沿ってZ軸方向へ移動可能に設けられた分注ヘッド15とを有して構成されている。クイル13、Y軸アーム11、分注ヘッド15のX、Y、Z軸方向の移動は、図2に示すようにX軸モータMx、Y軸モータMy、Z軸モータMzとボールねじ機構やベルトプーリ機構等(図示せず)からなる各軸方向移動手段により行われ、CPUやプログラムメモリ等を備えた制御部500からの移動指令に基づいて行われる。
【0020】
分注ヘッド15は、その下方にノズル17を有しており、所望の液体を吸引、吐出するノズルチップ19がノズル17先端部に着脱可能に装着される。ノズルチップ19は、合成樹脂材料等で形成され、その先端部が先細り形状になっている。また、コラム5前面には、ピストン型ポンプやシリンジ型ポンプ等でなる分注ポンプ21(図2におけるP1)が設けられている。分注ポンプ21と分注ヘッド15のノズル17は配管23で接続され、分注ポンプ21の駆動によりノズル17およびノズルチップ19内の圧力を増減させ、ノズルチップ19に所望の液体を吸引して吐出できるよう構成されている。配管23は可撓性材料で形成されており、その長さはノズルチップ19が分注動作全範囲内で移動しても分注ポンプ21と分注ヘッド15のノズル17との接続関係を維持できる長さとなっている。分注ポンプ21の駆動は、制御部500からの駆動指令に基づいて行われる。
【0021】
ベッド3前部の上面にはテーブル25が載置されている。テーブル25上面の左方には、検体や試薬が収容された複数の試験管27を立設状態で保持して収納可能な試験管ラック29が取り付けられ、テーブル25中央部には試験管27に収容された検体や試薬とは別の検体や試薬が収容された複数の試験管31を立設状態で保持して収納可能な試験管ラック33が取り付けられ、テーブル25上面の右方には分注先である複数のウェル35aが設けられたマイクロプレート35が取り付けられている。また、ベッド3上面におけるテーブル25左部の後方には、分注ヘッド15に装着されるノズルチップ19を立設状態で保持して複数個収納可能なノズルチップラック37が取り付けられ、ベッド3上面におけるテーブル25右部の後方には、ノズルチップ取外装置(図示せず)により分注ヘッド15から取り外された使用済みのノズルチップ19を収容、廃棄するノズルチップボックス39が取り付けられている。
【0022】
また、本発明の分注装置1は、所望の試験管27および31に収容された検体や試薬等の液体をノズルチップ19に吸引した状態で、ノズルチップ19に向けて超音波を照射してノズルチップ19内で液体を攪拌して反応を促進させた後に、マイクロプレート35の所望のウェル35aに検体や試薬等の液体を吐出して分注することを特徴としている。
【0023】
ノズルチップ19に吸引された液体に超音波を照射してノズルチップ19内で液体を攪拌する構成について、図1〜図5に基づいて説明する。本発明の分注装置1は、テーブル25上面に取り付けられたマイクロプレート35の後方に超音波照射装置101が設けられている(図1参照)。超音波照射装置101は、テーブル25上面に載置された円筒形状の枠体103と、枠体103の内周部に設けられ、超音波を発生する4つの超音波振動子105と(図2参照)、軟質樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)等の柔軟な材料で形成され、枠体103の中空部における超音波発生領域に設けられ、水等の流動性を有する超音波伝達媒体(以下、「媒体」と言う)が供給、排出可能に構成された略円筒形状のバッグ107と、ベッド3右側部に設けられ媒体を収容(貯留)するタンク109とを有している。枠体103の概略寸法は、例えば、直径20mm、高さ50mm、タンク109の概略寸法は、例えば、100mm×100mm×100mmである。
【0024】
超音波振動子105の駆動は、超音波送信回路201からの送信信号203により行われ、超音波振動子105の駆動タイミング、駆動電圧、駆動時間等は、制御部500からの指令に基づいて制御される。4つの超音波振動子105を必要に応じて個別的に制御してもよい。
【0025】
図2〜図4に示すように、枠体103外周面の上方およびこれと対向する側の下方には孔103a、103bがそれぞれ設けられ、枠体103の内周部にバッグ107を配置したときに、バッグ107に接続された継手107aおよび107bが枠体103外周面より外側に突出するようになっている。超音波振動子105は、バッグ107に接続された継手107aおよび107bに接触しないよう枠体103の内周部に設けられている。ここで、継手107aの内径は、継手107bの内径より大きいことが望ましい。
【0026】
バッグ107に接続された継手107aとタンク109との間は、ポンプP2を介して配管111で接続されている。また、バッグ107に接続された継手107bとタンク109との間は、配管115で接続されている。ポンプP2は、タンク109からバッグ107に媒体を供給し、バッグ107から媒体を排出するためのものであり、そのポンプP2の駆動は、制御部500からの指令に基づいて行われる。
【0027】
また、本発明の分注装置1には、タンク109に収容された媒体の温度を制御する温度制御装置301が設けられている。タンク109と温度制御装置301との間を媒体が循環できるようポンプP3を介して配管303が設けられている。温度制御装置301は、インバータ冷凍器等の冷却器およびヒータ等の加熱器を備えており、冷却器内に張り巡らされ冷媒が循環する配管の近傍に所望の媒体を通過させて熱交換を行うことにより、その媒体の温度を下げ、または加熱器の近傍に所望の媒体を通過させて熱交換を行うことにより、その媒体の温度を上げる構成となっている。タンク109内には、タンク109に収容された媒体の温度を検出する温度センサ(第1温度センサ)307が設けられている。よって、温度センサ307の検出結果に基づいて、すなわち制御部500で、温度センサ307によるタンク109内の媒体の検出温度と記憶部309に記憶された設定温度を比較してその結果が異なる場合、ポンプP3を駆動することによりタンク109に収容された媒体をタンク109と温度制御装置301との間で循環させ、タンク109内の媒体の温度が記憶部309に記憶された設定温度になるよう(恒温を保つよう)制御することができる。ポンプP3および温度制御装置301の駆動は、制御部500からの指令に基づき行われる。タンク109内の媒体は、例えば、4〜80℃の間で温度制御可能となっている。
【0028】
分注ポンプP1から分注ヘッド15のノズル17に装着されたノズルチップ19に流体を供給するための配管401の途中に圧力センサ(圧力検出手段)403が設けられている。圧力センサ403は、分注ポンプP1とノズルチップ19との間の流体供給管路内(ノズルチップ19内)の圧力を検出する。制御部500は、ノズルチップ19に検体や試薬等の液体を吸引したときの圧力センサ403の検出圧力に基づいて分注ポンプP1を駆動させ、ノズルチップ19に吸引した検体や試薬等の液体に向けて超音波を照射し、その際の熱膨張による液だれを防止するよう分注ポンプP1の駆動を制御する。
【0029】
次に、図1に基づいて、本発明の第1実施形態の分注装置における一連の分注動作を行う工程を説明する。まず、分注ヘッド15をノズルチップラック37に収納された所望のノズルチップ19の上方に移動させ、分注ヘッド15をZ軸方向へ下降させることによりノズル17に所望のノズルチップ19を装着する。
【0030】
次に、図5(a)に示すように、ノズルチップ19を試験管ラック29に収納された所望の試験管27の上方に移動させる。そして、ノズルチップ19をZ軸方向へ下降させながら、分注ポンプ21を駆動して試験管27に収容された検体や試薬等の液体Aを所定量吸引する。
【0031】
次に、図5(b)に示すように、液体Aを吸引したノズルチップ19を試験管ラック33に収納され、検体や試薬等の液体Bが収容された所望の試験管31の上方に移動させる。そして、ノズルチップ19をZ軸方向へ下降させながら、分注ポンプ21を駆動して試験管31に収容された検体や試薬等の液体Bを所定量吸引する。
【0032】
次に、液体Aおよび液体Bを吸引したノズルチップ19をテーブル25の後方に設けられた超音波照射装置101のバッグ107の中空部の上方に移動させ、ノズルチップ19をZ軸方向へ下降させて、ノズルチップ19をその長手方向中央部付近までバッグ107の中空部に挿入する(図5(c)参照)。
【0033】
そして、ポンプP2を駆動させてタック109からバッグ107に媒体を供給してタンク109−バッグ107間で媒体を循環させ、バッグ107をノズルチップ19と超音波振動子105とに密着させる。
【0034】
次に、所望のタイミングで超音波送信回路201を制御して超音波振動子105を駆動させ、ノズルチップ19内の液体Aおよび液体Bに向けて超音波を照射することにより、当該液体A、Bを攪拌する。ノズルチップ19内の液体に向けて照射される超音波の周波数、エネルギー、照射時間等の照射条件は、液体の種類、性質等に応じて適宜設定される。超音波の周波数としては、1000kHz〜10MHz程度であるのが好ましい。
【0035】
ノズルチップ19内の液体Aおよび液体Bに向けて、所望の条件で超音波を照射した後、ポンプP2を停止させてタンク109−バッグ107間の媒体の循環を停止して、バッグ107とノズルチップ19および超音波振動子105との密着を開放する。
【0036】
次に、図5(d)に示すように、超音波により攪拌された液体Cを吸引したノズルチップ19をマイクロプレート35の所望のウェル35a上方に移動させる。そして、分注ポンプ21を駆動して各ウェル35aに検体や試薬等の液体Cをそれぞれ所定量吐出して分注する。
【0037】
各ウェル35aへの分注作業が終了したら、使用済みのノズルチップ19をテーブル25後方のノズルチップボックス39上方に移動させ、ノズルチップ取外装置(図示せず)により使用済みのノズルチップ19を取り外してノズルチップボックス39に廃棄する。
【0038】
以上説明したように、この分注装置1によれば、検体や試薬等の液体を各ウェル35aに分注する前に、ノズルチップ19内に吸引した検体や試薬等の液体に向けて超音波を照射し、ノズルチップ19内で液体を攪拌するようにしたので、各ウェル35aにおける攪拌が不要となり攪拌工程が少なくて済み、効率良く検体や試薬等の液体の反応を促進することができる。
【0039】
また、ノズルチップ19がノズル17に着脱可能に装着されるようになっているので、複数箇所のウェル35aに検体や試薬等の液体を分注する場合、異物の混入等のコンタミネーションを防止することができ、効率良く検体や試薬等の液体を混合した液体を攪拌することができる。
【0040】
次に、図6に基づいて本発明の第2実施形態の分注装置を説明する。この場合、第1実施形態と同じ構成については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成についてのみ説明する。
【0041】
図6に示すように、バッグ107に接続された継手107aとタンク109との間は、ポンプP2および電磁制御弁(制御弁)113を介して配管111で接続されている。この配管111は、バッグ107への媒体の供給用の管路を構成する。バッグ107に接続された継手107bとタンク109との間は、ポンプP4および電磁制御弁(制御弁)117を介して配管115で接続されている。この配管115は、バッグからの媒体の排出用の管路を構成する。配管111内の流路は、電磁制御弁113の駆動(開閉)により開閉され、配管115内の流路は、電磁制御弁117の駆動(開閉)により開閉される。ポンプP2、P4の駆動および電磁制御弁113、117の開閉制御は、制御部500からの指令に基づいて行われる。
【0042】
また、バッグ107に接続された継手107bの内部には、バッグ107内に供給された媒体の温度を検出する温度センサ(第2温度センサ)305が設けられている。温度センサ305の検出結果に基づいて、すなわち制御部500で、温度センサ305によるバッグ107内の媒体の検出温度と記憶部309に記憶された設定温度とを比較してその結果が異なる場合、電磁制御弁117を開放した後にポンプP4を駆動することにより、バッグ107から媒体をタンク109に排出し、そのタイミングと同時に電磁制御弁113を開放した後にポンプP2を駆動することにより、タンク109からバッグ107に媒体を供給する。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態の分注装置における一連の分注動作を行う工程を説明する。第1実施形態を同じ分注動作については説明を省略し、第1実施形態と異なる分注動作についてのみ説明する。
【0044】
まず、図5(a)、(b)に示すように、ノズルチップ19に液体Aおよび液体Bを所定量吸引する。その後、液体Aおよび液体Bを吸引したノズルチップ19を長手方向中央部付近までバッグ107の中空部に挿入する(図5(c)参照)。そして、電磁制御弁113を開放するとともに電磁制御弁117を閉じ、ポンプP2を駆動させてタンク109からバッグ107に媒体を供給して、バッグ107をノズルチップ19と超音波振動子105とに密着させ、電磁制御弁113を閉じる。所望の条件で超音波を照射した後、電磁制御弁117を開放し、ポンプP4を駆動させてバッグ107から媒体を排出して、バッグ107とノズルチップ19および超音波振動子105との密着を開放する。このようにすれば、第1実施形態と比較して、バッグ107とノズルチップ19および超音波振動子105との密着度を高めることができる。
【0045】
また、図5(a)〜(d)の工程を繰り返すうちに、超音波の照射エネルギーにより、バッグ107内の媒体の温度が上昇してしまい、ノズルチップ19内の液体が意図しない反応をしてしまうことが考えられる。このような場合は、ノズルチップ19がバッグ107の中空部に挿入されていない状態で、電磁制御弁113を開放するとともに電磁制御弁117を開放し、ポンプP2を駆動させてバッグ107にタンク109から媒体を供給するとともにポンプP4を駆動させてバッグ107から媒体を排出するようにして、タンク109−配管111−バッグ107−配管115間で媒体を循環させる。そして、温度センサ305により予め設定された温度が検出されたら、電磁制御弁113を閉じるとともに電磁制御弁117を閉じ、バッグ107に媒体を充満させてバッグ107をノズルチップ19と超音波振動子105とに密着させる。このようにすれば、温度制御装置301により常時恒温に保たれたタンク109内の媒体を所定タイミングでバッグ107に供給してバッグ107内の媒体も常時恒温状態に保つことができ、バッグ107内の媒体の温度変化によるノズルチップ19内の液体の意図しない反応を防止することができる。
【0046】
また、第2実施形態の分注装置1によれば、前述した第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0047】
以上、本発明の分注装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や、工程が付加されていてもよい。
【0048】
また、本発明を液体Aおよび液体Bの2種類の液体を攪拌する際に適用した場合について説明したが、本発明は、3種類以上の液体を攪拌する際にも適用可能である。例えば、細胞が含まれた試薬としての液体A、マイクロバブル(微小な気泡)が含まれた液体B、遺伝子が含まれた試薬としての液体Cを用意しておき、ノズルチップに液体A、液体B、液体Cを吸引した後に超音波を照射することにより、液体が攪拌され、ノズルチップ内でマイクロバブルが破砕され、細胞に遺伝子を効率良く導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の分注装置の実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の分注装置の第1実施形態における主要部の構成ブロック図である。
【図3】図2におけるA−A断面図であり、ノズルチップに超音波を照射前の超音波照射装置の要部断面図である。
【図4】図2におけるA−A断面図であり、ノズルチップに超音波を照射中の超音波照射装置の要部断面図である。
【図5】本発明の分注装置における一連の分注動作を行う工程を示した説明図である。
【図6】本発明の分注装置の第2実施形態における主要部の構成ブロック図である。
【符号の説明】
【0050】
1 分注装置
15 分注ヘッド
17 ノズル
19 ノズルチップ
21 分注ポンプ
27、31 試験管
35 マイクロプレート
35a ウェル
101 超音波照射装置
103 枠体
105 超音波振動子
107 バッグ
107a、107b 継手
109 タンク
111、115 配管
113、117 電磁制御弁
201 超音波送信回路
301 温度制御装置
303 配管
305、307 温度センサ
309 記憶部
403 圧力センサ
500 制御部
P1、P2、P3、P4 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を分注する分注装置において、
X、Y、Z軸方向の3軸方向に移動可能に設けられた分注ヘッドと、
前記分注ヘッドに着脱可能に装着され、前記液体を吸引、吐出するノズルチップと、
前記分注ヘッドに接続され、前記ノズルチップに前記液体を吸引して吐出するための分注ポンプと、
前記分注装置の作業領域に載置された円筒形状の枠体と、
前記枠体の内周部に設けられ、超音波を発生する複数の超音波振動子と、
前記枠体の中空部における超音波発生領域に設けられ、超音波伝達媒体を供給、排出可能に構成された略円筒形状のバッグと、
超音波伝達媒体を貯留するタンクと、
前記タンクから前記バッグに超音波伝達媒体を供給し、前記バッグから超音波伝達媒体を排出するためのポンプと、
を具備し、
前記液体を吸引したノズルチップを前記バッグの中空部に挿入し、前記タンクから前記バッグに超音波伝達媒体を供給して前記バッグを前記ノズルチップと前記超音波振動子とに密着させ、前記ノズルチップ内の液体に向けて超音波を照射して当該液体を攪拌するよう構成されていることを特徴とする分注装置。
【請求項2】
前記タンク内の超音波伝達媒体の温度を検出する第1温度センサと、前記第1温度センサの検出結果に基づいて前記タンク内の超音波伝達媒体の温度が予め設定された温度になるよう制御する温度制御手段とをさらに具備し、前記タンク内の超音波伝達媒体の温度を恒温に保つよう構成された請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記タンクと前記バッグとの間の供給管路および排出管路を開閉する制御弁と、前記バッグ内の超音波伝達媒体の温度を検出する第2温度センサとをさらに具備し、前記第2温度センサの検出結果に基づいて前記ポンプおよび前記制御弁を制御して、前記バッグから超音波伝達媒体を排出して前記バッグに前記タンク内の超音波伝達媒体を供給するよう構成された請求項1または2に記載の分注装置。
【請求項4】
前記ノズルチップに液体を吸引したときの前記ノズルチップ内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段の検出結果に基づいて前記ノズルチップ内の圧力が予め設定された圧力になるよう制御する圧力制御手段とをさらに具備し、前記ノズルチップから液だれが生じないよう構成された請求項1ないし3のいずれかに記載の分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−242806(P2006−242806A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60256(P2005−60256)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】