説明

制動制御装置

【課題】 車輪の上下動があってもABS制御装置を適切に作動させ、制動距離を短縮可能な制動制御装置を提供すること。
【解決手段】 各車輪の制動力を制御する制動制御装置において、各車輪に対応する位置の車高を検出する車高検出手段と、各車輪のアブソーバの伸縮量を検出するアブソーバ伸縮量検出手段と、車高検出手段により検出された車高とアブソーバ伸縮量検出手段により検出されたアブソーバの伸縮量に基づき、車輪にかかる荷重を推定する軸荷重推定手段と、軸加重推定手段により推定された軸荷重に基づき、制動時の車輪ロックを防止するABS制御装置の制御特性を変更する制動制御特性変更手段と、を有することを特徴とする制動制御装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置に関し、特に各車輪毎に制動力の制御が可能な制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の各輪毎に制動力を制御して、車両に最大の制動力が生じるような制動力制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載の制動力制御装置は、ブレーキ操作量に対する目標減速度を設定し、目標減速度に車両重量を乗算することで必要な車両制動力を求める。そして、初期の車輪荷重に車両の前後加速度と横加速度による荷重移動分を加えて各車輪の動的荷重を求め、これらに応じた配分率で各車輪に車両制動力を配分する。当該制動力制御装置によれば、必要な車両制動力が変化しても制動力が各車輪の動的荷重に応じて配分されるので、制動距離の変動を低減できる。
【特許文献1】特開平8−108834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の制動力制御装置では、車両に発生した前後加速度から軸荷重を求めるため、道路の段差や凹凸等により、車両が上下動することで軸荷重が変動しても軸荷重に応じて制動力を制御してしまう。
【0004】
ところで、アンチスキッドブレーキシステム(以下、ABSという)では、車両の車輪の回転から車両の速度を見積もり、それが実際の車速と所定以上異なる場合に車輪が道路表面上でスリップしていると判定し、スリップしている車輪の制動圧力を低下させる。
【0005】
したがって、特許文献1記載の制動力制御装置でABS制御を行うと、例えば前輪の一輪のみが道路の段差等を乗り越えた場合、当該車輪の車輪速の変動(車輪速の低下)によってスリップ状態となりABS制動を開始してしまう。すなわち、ABS制動が作動することにより、トータルの減速度が減少し制動距離が増大しうるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、車輪の上下動があってもABS制御装置を適切に作動させ、制動距離を短縮可能な制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、各車輪の制動力を制御する制動制御装置において、各車輪に対応する位置の車高を検出する車高検出手段と、各車輪のアブソーバの伸縮量を検出するアブソーバ伸縮量検出手段と、車高検出手段により検出された車高とアブソーバ伸縮量検出手段により検出されたアブソーバの伸縮量に基づき、車輪にかかる荷重を推定する軸荷重推定手段と、軸加重推定手段により推定された軸荷重に基づき、制動時の車輪ロックを防止するABS制御装置の制御特性を変更する制動制御特性変更手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、車輪の上下動があってもABS制御装置を適切に作動させ、制動距離を短縮可能な制動制御装置を提供することができる。ABS制御にあっては、通常、車輪速が、車体の走行速度に基づいて設定した減圧閾値を下回るとホイルシリンダ圧を減圧する制御を行う。本発明では、軸荷重が所定値よりも軽い場合には重い場合に比べて減圧閾値を高めて、減圧のタイミングを早めることで車輪のロックを防止し、軸荷重が所定値よりも重い場合には軽い場合に比べて減圧閾値を低めて、減圧のタイミングを遅らせることで制動力が早期に減少することを防止することが可能となる。
【0009】
また、本発明は、緊急制動操作が行われた場合に、各車輪の制動力を制御する制動制御装置において、各車輪に対応する位置の車高を検出する車高検出手段と、各車輪のアブソーバの伸縮量を検出するアブソーバ伸縮量検出手段と、車高検出手段により検出された車高とアブソーバ伸縮量検出手段により検出されたアブソーバの伸縮量に基づき、車輪にかかる荷重を推定する軸荷重推定手段と、軸荷重推定手段により推定される前輪の軸荷重がより大きくなるように、各車輪の制動力を制御する制動力制御手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前輪の軸荷重が大きくなるように、すなわち前輪が沈み込むように制動力を制御することで、最大の減速度を発生させうる。
【0011】
また、本発明の制動制御装置の一形態において、制動力制御手段は、車輪がロックされる場合に当該車輪の制動力を減少させることを特徴とする。本発明によれば、緊急制動操作により車輪がロックする場合には、当該車輪の制動力(ホイルシリンダ圧)を減少させることで車輪のロックを防止できる。
【0012】
また、本発明は、緊急制動操作が行われた場合に、制動力を制御する制動制御装置において、各車輪に対応する位置の車高を検出する車高検出手段と、各車輪のアブソーバの伸縮量を検出するアブソーバ伸縮量検出手段と、車高検出手段により検出された車高と前記アブソーバ伸縮量検出手段により検出されたアブソーバの伸縮量に基づき、車輪にかかる荷重を推定する軸荷重推定手段と、各車輪に対応する位置の車高を制御する車高制御手段と、を有し、車高制御手段は、軸加重推定手段により推定される前輪の軸荷重がより大きくなるように、各車輪に対応する位置の車高を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、前輪の軸荷重が大きくなるように、すなわち前輪が沈み込むように車高を制御することで、最大の減速度を発生させうる。
【0014】
また、本発明の制動制御装置の一形態において、車輪がロックされる場合には、当該車輪の制動力を減少させることを特徴とする。本発明によれば、緊急制動操作により車輪がロックする場合には、当該車輪の制動力(ホイルシリンダ圧)を減少させることで車輪のロックを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
車輪の上下動があってもABS制御装置を適切に作動させ、制動距離を短縮可能な制動制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。図1は、制動制御装置として構成された本発明による車両用制御装置の概略構成図を示す。
【0017】
図1において、10FL及び10FRはそれぞれ車輌の左右の前輪を示し、10RL及び10RRはそれぞれ車輌の駆動輪である左右の後輪を示している。従動輪であり操舵輪でもある左右の前輪10FL及び10FRは、運転者によるステアリングホイル12の転舵に応答して操舵される。ラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置11は、運転者による転舵をタイロッド18L及び18Rを介して車輪10FL及び10FRに伝達する。運転者の転舵量を示す信号は、電子制御ユニット(以下、ECUと称す)5に入力される。
【0018】
各車輪の制動力は、運転者によるブレーキペダルの操作により、油圧回路20によりホイルシリンダ15FR、15FL、15RR、15RLの制動圧が制御されることによって制御されるようになっている。油圧回路20は、オイルリザーバ、オイルポンプ、ホイルシリンダ内の圧力を増減するための増減圧制御弁の如き種々の弁装置等を含む。ABS制動が作動していない場合は、各ホイルシリンダの制動圧は、ブレーキペダルの操作量に応じてECU5により、増減圧制御弁が制御されることによって制御される。また、各車輪の制動圧は必要に応じてECU5により個別に制御される。
【0019】
車輪10FR〜10RLには、それぞれ車輪の車輪速度を検出する車輪速度センサ17FR〜17RLが設けられている。車輪速度センサ17FR〜17RLは、車輪の車輪速度を検出し、車輪速度を示す信号をECU5へ出力する。
【0020】
またECU5には、車両の車高を検出する車高センサ13FR〜13RLより、各車輪10FR〜10RLに対応する位置の車高を示す信号が入力される。車高センサは、例えば、超音波を路面に向けて発信し、反射波が検出されるまでの検出時間に基づき車高を検出する。
【0021】
また、ECU5には、ショックアブソーバの伸縮率を検出するアブソーバ伸縮率センサ19FR〜19RLより、各車輪10FR〜10RLに接続されたショックアブソーバの伸縮率を示す信号が、入力される。アブソーバ伸縮率センサ19FR〜RLは、車両静止状態のアブソーバ長に対する走行時のアブソーバ長の比率を検出するセンサである。なお、ECU5が、車両静止状態のアブソーバ長と走行時のアブソーバ長に基づき伸縮率を算出してもよい。
【0022】
また、ECU5には、Gセンサ4により車輌の前後加速度又は上下加速度を示す信号が、ヨーレートセンサにより車両の回転速度を示す信号が、入力される。
【0023】
ABS制御装置3は、各車輪の車輪速度に基づき当技術分野において周知の方法で、車輪速及び各車輪の制動スリップ率を演算し、何れかの車輪の制動スリップ率が、ABS制御開始の基準値よりも大きくなると(ABS制御の開始条件が成立すると)、ABS制御の終了条件が成立するまで、当該車輪について制動スリップ率が所定の範囲内になるよう、油圧回路20によるホイルシリンダ内の圧力を増減するアンチスキッド制御を行う。
【実施例1】
【0024】
図1の制動制御装置により制動制御を行う場合について説明する。実施例1では、ABS制御の開始条件を、各車輪が路面から受ける力(以下、軸荷重という)に基づき修正可能な制動制御装置について説明する。図2は、軸荷重に基づきABS制御の開始条件を修正して制動を行う場合の制御ブロック図を示す。
【0025】
まず、車輪速度センサ17FR〜17RLから成る車輪速度検出センサ33は、各車輪の車輪速度を検出し、スリップ率演算手段35に車輪速度を入力する。スリップ率演算手段35は、車両の走行速度と車輪速度に基づき、各車輪のスリップ率を演算し、ABS制御装置3から成るABS制御手段36に各車輪のスリップ率を入力する。
【0026】
車高センサ13FR〜13RLからなる車高検出手段31は、各車輪に対応する位置の車高を検出する。また、アブソーバ伸縮率センサ19FR〜19RLからなるアブソーバ伸縮率検出手段32は、各車輪のショックアブソーバの伸縮率を検出する。なお、車高やアブソーバの伸縮率が検出されたら、車高を表す信号やアブソーバの伸縮率を表す信号を、時間に対して微分処理することで、車高の変化速度(上下方向G)やアブソーバ伸縮率の変化速度が得られる。
【0027】
軸荷重推定手段34は、車高検出手段31とアブソーバ伸縮率検出手段32から入力された信号に基づき、軸荷重を推定する。
【0028】
例えば、制動時に、車両の前輪部の車高が低く、前輪のアブソーバの伸縮率が大きくなった(前輪がバウンドした)場合、前輪には軸荷重が大きく加わる。また、段差により車両が上下動するような場合に、車高が高くなりかつアブソーバの伸縮率が大きくなった場合には、車両の移動方向とアブソーバの伸縮方向が同じなので、軸荷重が小さくなる。このように軸荷重推定手段34は、車高・車両の上下方の移動速度・上下方向の加速度、アブソーバの伸縮率・伸縮率の変化速度・変化速度の変化の早さ、に基づき、当該車輪の軸荷重を推定し、ABS制御手段36に入力する。
【0029】
ABS制御手段36は、各車輪のスリップ率に基づき、油圧回路20等のブレーキアクチュエータ37を制御する、いわゆるABS制御を行う。また、ABS制御手段36が有する制動制御特性変更手段は、車高センサ13FR〜13RLやアブソーバ伸縮率センサ19FR〜19RLにより推定された軸荷重の大きさに応じて、ABS制御作動開始の基準値に補正を加える。軸荷重の大きさを推定することで各輪の接地状態を推定できるので、車輪の接地状態に基づき、ABS制御の作動を開始する各輪のスリップ率を補正することができる。
【0030】
例えば、通常のABS制御開始の基準値がスリップ率A%である場合、スリップ率がA%を超えるとABS制御を開始する。本実施例においては、制動制御特性変更手段は、軸荷重推定手段34から入力された軸荷重に基づき、各車輪のABS制御を開始するスリップ率を増減する(以下、本実施例におけるABS制御開始のスリップ率を基準スリップ率という)。
【0031】
すなわち、軸荷重が大きい場合には、軸荷重に応じて基準スリップ率を増大させ、演算されたスリップ率がA+αとなった場合にABS制御を開始するように制御する。また、軸荷重が小さい場合には、軸荷重に応じて基準スリップ率を減少させ、演算されたスリップ率がA−α%であっても、ABS制御を開始するように制御する。これにより、車輪の接地状態に応じて、ABS制御開始を開始するスリップ率を補正できるので、より適切にABS制御を行うことができる。また、想定されないABS制御の作動を抑制して、制動距離を短くすることができる。
【0032】
なお、ABS制御手段36は、ハンドルの転舵角やヨーレート、減速度に基づき、ABS制御開始の基準値を補正してもよい。例えば、ハンドル転舵角やヨーレートの大きい場合など、車輪のロックが生じやすい状況では基準スリップ率を小さくすることで、無用な車輪のロックを抑制できる。
【0033】
図3は、ABS制御の開始条件を軸荷重に基づき補正する制動制御装置の処理を示すフローチャート図である。図3に示す処理ルーチンは、車両が走行を開始することでスタートする。走行開始後、ECU5は、制動が開始されたか否かを、ブレーキペダルの踏み込み操作に基づき監視する(ステップS11)。
【0034】
制動が開始された場合には(ステップS1のY)、スリップ率演算手段35は、車輪速と車両の走行速度に基づきスリップ率を演算する(ステップS12)。また、軸荷重推定手段34は、車高検出手段31やアブソーバ伸縮率検出手段32からの信号に基づき、各車輪の軸荷重を推定する(ステップS13)。
【0035】
次いで、ABS制御手段36は、推定された軸荷重に基づき、ABS制御を開始する基準スリップ率を各車輪毎に設定する(ステップS14)。
【0036】
ABS制御手段36は、基準スリップ率と演算されたスリップ率を比較し(ステップS15)、演算されたスリップ率が基準スリップ率よりも大きい場合(ステップS15のY)、ABS制御手段36によりABS制御が開始される(ステップS16)。演算されたスリップ率が基準スリップ率よりも大きくない場合(ステップS15のN)、図3の処理が繰り返される(ステップS15のN)。
【0037】
本実施例によれば、軸荷重に応じてABS作動開始のスリップ率を補正できるので、効率よく制動制御を行える。特に、車輪が段差を超え車輪速度が変動したような場合に、無用なABS制御を抑制して、制動距離を短くできる。また、本実施例の制動制御装置は、軸荷重を検出する圧力センサを要せず、安価な手段によりABS制御の品質を向上できるという効果を有する。
【実施例2】
【0038】
実施例2では、緊急制動時に、前輪の軸荷重が最大になるように制動力を制御する制動制御装置について説明する。図4は、本実施例の制動制御装置により制動を行う場合の制御ブロック図を示す。なお、図4において図2と同一構成部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図4の制御ブロックでは、制動力制御手段40が、油圧回路20によるホイルシリンダ内の圧力を増減することで、各車輪の制動力を制御する。
【0039】
また、実施例2の制動制御装置は、図4に示すように、車高を制御する車高アクチュエータ39を有していてもよい。車高アクチュエータ39は、例えば、ポンプで発生させた油圧を制御バルブで制御し、車体を持ち上げたり、逆に車体を下げることができる。気圧で車高を制御してもよい。
【0040】
図4の制御ブロックでは、制動力制御手段40が、前輪の軸荷重が最大になるように各車輪の制動力を制御する。制動時には、減速Gにより車両の前方の車高が低くなり、車両の後方の車高が高くなる傾向が生じるが、制動力制御手段40は、軸荷重推定手段34が推定する前輪の軸荷重が最大となるような車高及び/又はアブソーバの伸縮率となるように、各車輪の制動力を制御する。緊急制動時に、前輪の軸荷重がより大きくなるように制動力を制御することで車両の前方の車高が低くなる傾向が得られ、最大の減速Gを生じうる。したがって、緊急制動操作が行われている間、前輪の軸荷重をより大きくする制御を続けるので、理想的には前輪の軸荷重が最大となるように、各車輪の制動力が制御される。
【0041】
前輪の軸荷重が最大となるように制動力を制御したが、車輪がロックした場合(所定のスリップ率を超えた場合)、制動力制御手段40は、当該車輪の制動力を減少させる。これにより当該車輪のロックを防止できる。
【0042】
また、制動力制御手段40は、ハンドルの転舵角やヨーレート、減速度に基づき、制動力を減少させてもよい。これにより、車輪のロックが生じやすい状況では当該車輪の制動力を減少できる。
【0043】
車高アクチュエータ39を有する場合には、前輪の軸荷重が最大となるように制動力を制御して車高やアブソーバ伸縮率を調整するのではなく(又は、制動力を制御して車高やアブソーバ伸縮率を調整すると共に)、車高アクチュエータ39により各車輪に対応する位置の車高を直接制御してもよい。制動力制御手段40は、前輪の軸荷重が最大となるような車高に制御する信号を、車高アクチュエータ39に出力する。車高アクチュエータ39は、車高に係る信号を受け、各車輪毎に車高を制御することができる。
【0044】
図5は、緊急制動時に、軸荷重が最大となるように制動力及び/又は車高を制御する制動制御装置の処理を示すフローチャート図である。図5に示す処理ルーチンは、車両が走行を開始することでスタートする。走行開始後、ECU5は、緊急制動操作が行われたか否かを、ブレーキペダルの踏み込み操作に基づき監視する(ステップS21)。例えば、ブレーキペダルの踏み込み速度が所定値よりも速い場合に緊急制動操作が行われたと判断する。
【0045】
緊急制動操作が検出されると(ステップS21のY)、車高検出手段31により車高を示す信号が、アブソーバ伸縮率検出手段32によりアブソーバの伸縮率を示す信号が、軸荷重推定手段34に入力される(ステップS22)。軸荷重推定手段34は、車高検出手段31やアブソーバ伸縮率検出手段32からの信号に基づき、各車輪の軸荷重を推定する(ステップS23)。
【0046】
軸荷重が推定されると制動力制御手段40は、前輪の軸荷重が増大するように角車輪の制動力を制御する(ステップS24)。車高アクチュエータ39を有する場合、制動力制御手段40は、前輪の軸荷重が増大するような信号を車高アクチュエータ39に出力し、直接車高を制御してもよい。前輪の軸荷重が増大するように制御することで、前輪が路面と強く接地することとなり制動力が増大する。
【0047】
制動操作が行われている間、車輪がロックしたか否か判断される(ステップS25)。スリップ率演算手段35は、車輪速検出手段33が検出した車輪速度と車両の走行速度に基づき、スリップ率を演算する。演算の結果、車輪がロックされていなければ(ステップS25のN)、ステップS21〜S24の処理が繰り返される。これにより、緊急制動が行われている間、前輪の軸荷重が最大になるように各車輪の制動力が制御される。
【0048】
また、車輪がロックする場合には(ステップS25のY)、制動力制御手段40が、当該車輪のホイルシリンダ圧を減少させ(ステップS26)、車輪のロックを防止する。
【0049】
本実施例によれば、緊急制動操作が行われた場合に、前輪の軸荷重が最大になるよう制御すると共に、車輪がロックした場合には当該車輪の制動力を減少できるので、最大の減速度を生じさせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】制動制御装置として構成された車両用制御装置の概略構成図である。
【図2】制動制御装置により制動を行う場合の制御ブロック図である。
【図3】ABS制御の開始条件を軸荷重に基づき補正する制動制御装置の処理を示すフローチャート図である。
【図4】実施例2における制動制御装置により制動を行う場合の制御ブロック図である。
【図5】軸荷重が最大となるように制動力又は車高を制御する制動制御装置の処理を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0051】
3 ABS制御装置
4 Gセンサ
5 電子制御ユニット(ECU)
6 ヨーレートセンサ
10 車輪
11 パワーステアリング装置
13 車高センサ
15 ホイルシリンダ
17 車輪速度センサ
19 アブソーバ伸縮率センサ
20 油圧回路
34 軸荷重推定手段
39 車高アクチュエータ
40 制動力制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
各車輪の制動力を制御する制動制御装置において、
各車輪に対応する位置の車高を検出する車高検出手段と、
各車輪のアブソーバの伸縮量を検出するアブソーバ伸縮量検出手段と、
前記車高検出手段により検出された車高と前記アブソーバ伸縮量検出手段により検出されたアブソーバの伸縮量に基づき、車輪にかかる荷重を推定する軸荷重推定手段と、
前記軸加重推定手段により推定された軸荷重に基づき、制動時の車輪ロックを防止するABS制御装置の制御特性を変更する制動制御特性変更手段と、
を有することを特徴とする制動制御装置。
【請求項2】
緊急制動操作が行われた場合に、各車輪の制動力を制御する制動制御装置において、
各車輪に対応する位置の車高を検出する車高検出手段と、
各車輪のアブソーバの伸縮量を検出するアブソーバ伸縮量検出手段と、
前記車高検出手段により検出された車高と前記アブソーバ伸縮量検出手段により検出されたアブソーバの伸縮量に基づき、車輪にかかる荷重を推定する軸荷重推定手段と、
前記軸荷重推定手段により推定される前輪の軸荷重がより大きくなるように、各車輪の制動力を制御する制動力制御手段と、
を有することを特徴とする制動制御装置。
【請求項3】
前記制動力制御手段は、車輪がロックされる場合に当該車輪の制動力を減少させる、ことを特徴とする請求項2記載の制動制御装置。
【請求項4】
緊急制動操作が行われた場合に、制動力を制御する制動制御装置において、
各車輪に対応する位置の車高を検出する車高検出手段と、
各車輪のアブソーバの伸縮量を検出するアブソーバ伸縮量検出手段と、
前記車高検出手段により検出された車高と前記アブソーバ伸縮量検出手段により検出されたアブソーバの伸縮量に基づき、車輪にかかる荷重を推定する軸荷重推定手段と、
各車輪に対応する位置の車高を制御する車高制御手段と、を有し、
前記車高制御手段は、前記軸加重推定手段により推定される前輪の軸荷重がより大きくなるように、各車輪に対応する位置の車高を制御する、
ことを特徴とする制動制御装置。
【請求項5】
車輪がロックされる場合には、当該車輪の制動力を減少させることを特徴とする請求項4記載の制動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−44357(P2006−44357A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225512(P2004−225512)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】