制振ばね部材およびそれを用いた免振装置
【課題】 従来の制振部材を必要とする各所において使用することが可能で、複雑な構成でなく、確実に振動を緩和することを可能にする。
【解決手段】 互いに重ね合わせた湾曲状を呈するばね板25a,26aの間に粘弾性材25cを積層するとともにそれらの両端を固定部25dとし、且つ、前記両端に互いに重ね合わせたばね板25a,26b同士が湾曲方向にずれ動き可能な結合部25f,26fを有しており、前記結合部25f,26fが前記互いに重ね合わせた一方のばね板25b(26b)に形成された円形の透孔25hともう一方のばね板26b(25b)に形成された前記透孔25hに連通して湾曲方向に延びる長孔25gと、前記透孔25hと長孔25gとに連通して前記互いに重ね合わせたばね板25b,26b同士を連結する連結軸25iとから構成する。
【解決手段】 互いに重ね合わせた湾曲状を呈するばね板25a,26aの間に粘弾性材25cを積層するとともにそれらの両端を固定部25dとし、且つ、前記両端に互いに重ね合わせたばね板25a,26b同士が湾曲方向にずれ動き可能な結合部25f,26fを有しており、前記結合部25f,26fが前記互いに重ね合わせた一方のばね板25b(26b)に形成された円形の透孔25hともう一方のばね板26b(25b)に形成された前記透孔25hに連通して湾曲方向に延びる長孔25gと、前記透孔25hと長孔25gとに連通して前記互いに重ね合わせたばね板25b,26b同士を連結する連結軸25iとから構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振ばね部材およびそれを用いた免振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の軸受、原動機のような振動機械の設置箇所、免震構造などのように波動を受ける箇所にはこれを緩和するためにな制振部材が用いられていることは周知である。
【0003】
そして、ばねの1つとして例えば、剛性を有する板材を用いて振動を緩和する板ばねが知られている。
【0004】
ところが、従来の板ばねは、加わる曲げ振動を板材の反発力で吸収するものであり、充分な制振効果を得ることが困難であり、微細な振動に対しては対処できなかったり、車両のような重量を支持しなければならない箇所に使用する場合には複数枚を重ねて使用しているが荷重に対処できず、例えば油圧や空圧のシリンダ式のダンパーなどを併用する必要があるなどの問題点があった。
【0005】
また、建物をボールベアリングなどの球体に乗せて地震時の水平動の伝達を低減させることは古くから提案されている。例えば特開昭64−17945号公報、特開平1−275821号公報には、球体を使用して建築物の免振を図ることが記載され、また、例えば特開平5−164168号公報、特開平10―38022号公報には球体を使用して建築物に限らずその内部に設置された機器などの部分免振を図ることが記載されている。これらのうち、後者二つの公報に記載のものは、前者二つの公報に記載されているものに比べて大きな振幅の振動に対処することができるものである。
【0006】
即ち、この後者二つの免振装置は図24(A)の縦断面図に示すように、建築物の床または基礎に直接または防振部材を介して設置され、上面を凹状の湾曲面52とした固定底体51(振動部)と、免振目的物である精密機器などの設置物(または建築物)を載置する受台53を上部に有し下面を凸状の湾曲面55とした荷重支持体54(免振部)と、数個の球体57を円周上に配置して保持枠58に保持させてなる移動支持体56(可動部)とを具えたものであって、球体57を上下の向かい合った湾曲面52,55に接触させて移動支持体56を固定底体51と荷重支持体54との間に挿入したものである。
【0007】
この免振装置は水平に設置されるものであって、地震時に固定底体51が横方向へずれ動いて往復動を繰り返す振動を行うとき、移動支持体56が固定底体51よりも小さいずれ動きの往復動を行い、荷重支持体54が移動支持体56よりも小さいずれ動きの往復動を行うことによって免振の目的を達成することができるものである。尚、特開平10−38022号公報に記載の免振装置は、図24(B)の平面図に示すように、移動支持体56に設置されてこれらを中心位置に保持させるように働く弾性部材60を、等間隔で放射状に配置されるとともに円弧状に湾曲させたばね板60A,60A,60Aとして、これらを作用させることでより大きな振幅の地震にも対応するとともに360°全方向の揺れに対応できるようにしたものである。
【0008】
しかし、上述のようにベアリングとばね部材とで振動部から免振部への揺れの伝達を吸収させる免振装置においても、免振部に直接振動応力が働くと容易に免振部が動いて載置された免振目的物は不安定となる。また、ベアリングの球体が転がる際に、免振部側に転がり摩擦抵抗による復元力が伝達され共振現象が生じることがある。斯かる共振現象は、近年高性能化の一途をたどるコンピュータサーバのハードディスク内部機構の保護および情報処理精度の確保、或いはナノテクノロジーに代表されるような極めて微細な技術を実現する精密計測装置・精密加工装置などの精度の確保のために、克服すべき重要な問題となっている。
【0009】
この共振現象を含む振動の問題に対応するため、特開平11−315886号公報に免振機構としてのベアリングと復元要素としてのばねとの組み合わせに、油圧ダンバ或いは粘弾性ダンパなどの振動減衰要素を更に加えて、共振周波数を低減させるようにした免振装置が提案されている。この免振装置は地震などによる比較的大きな振動に加えてこれよりも高周波の振動を減衰可能として共振現象を回避できるようにしたものであるが、多方向の振動に対応するには振動減衰要素を多数配置することが必要となって装置が複雑化・大型化してしまい、コンパクトさが要求される部分免振装置には適用しにくいという問題がある。
【0010】
更に、近年建築物の免振構造において高減衰ゴムを使った粘弾性ダンパが多用されるようになっている。これは図13(B)の(1)に示すように、鋼板100に粘弾性材料110Bを貼り付けた二層構造としたものであり、図23(B)の(2)に示すように鋼板100の曲げ変形に対して粘弾性材料110Bは伸縮運動をしてダンパとしての効果を発揮するものであるが、この場合粘弾性材料110Bを極端に厚くする必要があった。
【0011】
これに対し、図23(A)の(1)に示すように二枚の鋼板100,100の間に粘弾性材料110Aを挟んで三層構造としたものを、建築物内部の柱やブレースなどに取付け、地震入力エネルギを吸収させて骨組みの損傷を抑制しようとするものがある。これは、粘弾性材料110Aが二枚の鋼板100,100で拘束されているため、加わる曲げ振動に対して中間層の粘弾性材料110Aがせん断変形を繰り返して振動エネルギーを吸収することで制振効果を発揮するものであり(図23(A)の(2)参照)、振動減衰効果に優れているとともに粘弾性材料の層を図23(B)に示すものよりも薄くすることができる。しかしながら、これらは比較的大規模な建築物・構造物の骨組みに専ら利用され、地震などの大規模な振動を想定したものであり、精密機器において近傍または内部の振動発生源による比較的小規模な振動にも対応が必要とされる部分免振装置には適用されていないのが現状である。
【0012】
一方、特開平11−82583号公報には、粘弾性材料の両面に金属板をそれぞれ積層一体化させて三層構造の積層体とし、且つ正方形とした板ばねを、精密機器内での精密部品と取付けブロックとの間に水平に架設して精密部品を支持するものとした精密部品支持用板ばねが提示されている。この板ばねは薄くコンパクトな構成で優れた制振効果が期待できるものであるが、装置内部のモータなどにより発生した微細な振動への対応のみを想定したものであって地震のような大規模な振動およびこれによる共振現象への対応を想定したものではない。
【特許文献1】特開昭64−17945号公報
【特許文献2】特開平1−275821号公報
【特許文献3】特開平5−164168号公報
【特許文献4】特開平10―38022号公報
【特許文献5】特開平11−315886号公報
【特許文献6】特開平11−82583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、例えば車両の軸受、原動機のような振動機械の設置箇所、免震構造などは勿論のこと、橋梁、鉄道や高速同などの高架脚の制振や落下防止など、更には建物内部に設置される精密機器などの部分免振に使用する等、従来の制振部材を必要とする各所において使用することが可能で、複雑な構成でなく、確実に振動を緩和することが可能な制振部材を提供すること、更に、それを用いた免振装置について、簡易かつコンパクトな構成としながらばね弾性による振動吸収効果に加えて優れた振動減衰効果を発揮させ、より広範囲な水平振動に対応できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明は、制振ばね部材について、互いに重ね合わせた湾曲状を呈するばね板の間に粘弾性材を積層するとともにそれらの両端を固定部とし、且つ、前記両端に互いに重ね合わせたばね板同士が湾曲方向にずれ動き可能な結合部を有しており、前記結合部が前記互いに重ね合わせた一方のばね板に形成された円形の透孔ともう一方のばね板に形成された前記透孔に連通して湾曲方向に延びる長孔と、前記透孔と長孔とに連通して前記互いに重ね合わせたばね板同士を連結する連結軸とから構成することにした。
【0015】
このように互いに重ね合わせた湾曲状を呈するばね板の間に粘弾性材を積層するとともにそれらの両端を固定部とし粘弾性材料を二枚のばね板の間に挟んだ三層構造の帯状ばね部材を円弧状に湾曲させて配置することで、曲げ振動が加わったときにばね板のばね弾性により振動を吸収するとともに、互いに重ね合わせたばね板の間に長手方向のずれが生じることで粘弾性材料がせん断変形を繰り返すものとなるが、湾曲させてあることによってせん断変形が効果的に与えられ、これにより振動エネルギを効果的に吸収して優れた振動減衰効果を発揮するものであり、免振部側の免振目的物に共振現象を初めとする不都合な振動が発生することを効果的に回避することができる。そして、このような構成としたことで中間層の粘弾性材料を薄くしても振動減衰効果を充分に発揮できる。従って、制振ばね部材を薄くコンパクトにするとともにこれを具えた免振装置もコンパクトなものとすることができる。
【0016】
特に、結合部を、前記互いに重ね合わせた一方のばね板に形成された円形の透孔ともう一方のばね板に形成された前記透孔に連通して湾曲方向に延びる長孔と、前記透孔と長孔とに連通して前記互いに重ね合わせたばね板同士を連結する連結軸とから構成したことにより、両端部の固定部の少なくともいずれかを長手方向のずれ動きが拘束されないものとすることで、互いに重ねたばね板間に曲げ振動による充分なずれの発生が可能となり、粘弾性材料に適度なせん断変形を発生させて良好な振動減衰効果を発揮させることができる。
【0017】
また、ばね板を構成するばね板がばね鋼材により形成されているとともに、前記粘弾性材がブチルゴム系、ジエンゴム系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ビニル系から選んだ高分子材料を主成分とするものとすれば、接着力に優れて製造容易であるとともに振動減衰効果を最大限に発揮することができる。
【0018】
更に、両端の固定部の少なくととも一方が結合部を兼ね、前記結合部を構成する連結軸が取付ボルトである場合には、構成が更にシンプルで製造も容易で安価に提供することができる。
【0019】
更にまた、上述した制振ばね部材を、振動部と免振部との間に免振部の中心位置保持手段として放射状に複数設けた免振装置とすれば、簡易かつコンパクトな構成で比較的大きな周期の振動から比較的小さな周期の広範囲且つあらゆる方向の水平振動にも対応して免振目的物を免振装置の中心位置に保持しながら確実な部分免振を発揮できるものとなる。
【0020】
加えて、上述した免振装置を、振動部側である上面を凹状の湾曲面とした固定底体と、免振部側である下面に凸状の傾斜面を有し免振目的物を載置する荷重支持体と、複数個の球体を円周上に配置して保持枠に保持させてなり球体を上下の向かい合った傾斜面に接触させて固定底体と荷重支持体との間に装入された移動支持体とを具え、そして固定底体と荷重支持体および移動支持体とのうちで少なくとも固定底体と荷重支持体側との間に中心位置保持手段としての制振ばね部材を設けたものとすることにより、上述した免振効果を効率的に実現する免振装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、簡易且つコンパクトな構成の制振ばね部材および制振装置としながら、ばね弾性による振動吸収効果に加えて優れた振動減衰効果を発揮してより広範囲の水平振動に対応できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明すると、図1は本発明の制振ばね部材25についての実施の形態を示すものであり、例えば、互いに重ね合わせた湾曲状を呈する2枚の帯状を呈するばね鋼材により形成されているばね板25a,26aの間に、例えばブチルゴム系、ジエンゴム系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ビニル系などの高分子材料を主成分とする粘弾性材25bが積層されている。尚、本発明は、ばね板25a,26aの間に粘弾性材25bが積層してものを取付時に湾曲状としてもよく、また、ばね板25a,26aの間に粘弾性材25bを積層したものを予め湾曲させたものでもよく、更には、予め湾曲させたばね板25a,26aの間に取付時に粘弾性材25bを積層したものであってもよく、使用するばね板25a,26aの厚さや用途に応じて適宜選択すればよい。
【0023】
そして、前記制振ばね部材25は、それらの両端を固定部25d,25dとし、固定部25d,25dには、例えばばね部材25bに固定するための取付ねじ孔25e,25eが形成されているとともに、ばね板25a,25b同士を互いに結合するための結合部25f,25fが設けられている。
【0024】
特に、結合部25f,25fは、内側に位置するばね板25aに形成された湾曲方向に延びる長孔25g,25gとこれらにそれぞれ連通してもう一方のばね板26aに形成された円形の透孔25h,25hと、前記長孔25g,25gと透孔25h,25hとに連通して前記互いに重ね合わせたばね板25a,26a同士を連結する連結軸(または固定ねじでも可能)25i,25iとからなり、ばね板25a,26aのいずれかの長手方向のずれ動きが拘束されないものとすることで、互いに重ねたばね板25a,26a間に曲げ振動による充分なずれの発生が可能となり、粘弾性材料25bに適度なせん断変形を発生させて良好な振動減衰効果を発揮させることができるものである。
【0025】
尚、本実施の形態では、結合部25f,25fは、内側に位置するばね板25aに湾曲方向に延びる長孔25g,25gを、外側に位置するばね板26aに円形の透孔25h,25hを形成したが、内側に位置するばね板25aに円形の透孔25h,25hを外側に位置するばね板26aに湾曲方向に延びる長孔25g,25gを設け、或いは、内側に位置するばね板25aと外側に位置するばね板26aとに長孔25g,25gと透孔25h,25hとをそれぞれ組み合わせて設けてもよく(図示せず)、互いに重ねたばね板25a,26a間に曲げ振動による充分なずれの発生が可能となればよい。
【0026】
そして、図2は前記図1に示した本発明の実施の形態についての具体的な使用例の一部を示すものであり、図2(a)示したものは、例えば手押車のような軽車両から自動車などの底部27に使用した場合、図2(b)示したものは、基台28の上に振動する機械29などを設置する場合の使用例を示すものであり、本発明はこれらに限らず各種の制振箇所において使用することができるものである。
【0027】
更に、図3乃至図5は本発明である制振ばね部材の異なる実施の形態を示すものであり、図3に示すものは、前記図1に示したものと異なり外側に位置するばね板26aに長孔25g,25gを形成したもの、図4に示すものは、内側に位置するばね板25aと外側に位置するばね板26aとにそれぞれ長孔25gと透孔25hとを湾曲方向に対向して設けたもの,図5は固定部25d,25dが結合部25f,25fを兼ねたものである。本発明では、内側に位置するばね板25aに結合部を構成する長孔25gを設けたもの、外側に位置するばね板26aに長孔25gを形成したもの、或いは内側に位置するばね板25aおよびに外側に位置するばね板26aに交互に設けてもよく、何れの場合も互いに重ねたばね板25a,26a間に曲げ振動による湾曲方向に充分なずれの発生が可能であればよい。
【実施例1】
【0028】
次に、本発明である制振ばね部材の実施例について説明する。
【0029】
図6は図1に示した構成の本発明である制振ばね部材の損失係数を比較例とともに示したものであり、Aは厚さ0.5mmと0.3mmの2ばね板の間に厚さ0.5mmフィルム状粘弾性材(ポリエステル系)を積層させた本発明であり、B、C,Dは比較例であって、Bは厚さ0.4mmのばね板を2枚合わせたもの、Cは厚さ0.5mmと0.3mmのばね板とを合わせたもの、Dは厚さ0.8mmのばね板単体である。
【0030】
図6に示した損失係数の値によれば、本発明の実施例が比較例に比べて損 失係数が大きく免震効果のあることが判明し、Aの厚さ0.5mmと0.3mmの2枚のばね板の間に厚さ0.5mmフィルム状粘弾性材(ポリエステル系)を積層させたものに大きな効果が確認された。
【0031】
更に、図7乃至図10は、本発明に用いられる補強具構造モデルと比較例とについての振動レベルと周波数との関係(周波数応答)示すものであり、図7は厚さ0.5mmと0.3mmの2枚のばね板の間に厚さ0.5mmフィルム状粘弾性材(ポリエステル系)を積層させた本発明、図8は厚さ0.4mmのばね板を2枚合わせたもの、図9は厚さ厚さ0.5mmと0.3mmのばね板とを合わせたもの、図10は厚さ0.8mmのばね板単体である比較例であり、図7に示した本発明の周波数応答が優れていることが確認された。
【0032】
また、図11(A)は本発明である免振装置についての実施の形態の縦断面図を示し、図11(B)はそのX−X線に沿う断面図を示すものであり、主として建物内部に設置されるコンピュータ或いは精密測定装置、精密加工装置などの精密機器を載置してこれらの免振対策を講じるために用いられるものである。
【0033】
図11(A),(B)を参照して、平面円形であって底板1aと周側板1bとからなる下カバー体1に同じく平面円形であって蓋板2aと周側板2bとからなる上カバー体2が周側板1b,2bを重ねて嵌め込まれており、蓋板2aは中心に窓孔4が設けられている。底板1aには、下カバー体1の内径よりもわずかに小さい外径の薄円盤状であって中心部分が最も低くそれより外側周縁に向かって次第に高くなる上向きに凹状に湾曲した傾斜面8を上面に形成した固定底体7が重ねられている。そして、これら下カバー体1、上カバー体2、固定底体7は外部からの水平振動と同調して振動するものであり振動部を構成している。
【0034】
また、平面円形の平板からなる受台11と、薄円盤状であって中心部分が最も高くそれより外側周縁に向かって次第に低くなる下向き凸状に湾曲した傾斜面13を下面に形成した滑動台12と、これらを上下に少し離間させて分離可能に結合した脚柱14とからなる荷重支持体10が固定底体7の上方に配備されており、これらは免振部を構成している。脚柱14は本実施の形態では装置の中心位置に一脚設けられており、蓋板2aの窓孔4を貫通し受台11を上カバー体2の上方、滑動台12を下カバー体1の内部に位置させている。
【0035】
尚、荷重支持体10がその中心を固定底体7の中心と一致させたとき、即ち図11(A)に示す固定底体7の中心を通る鉛直中心線N上に中心を置いたとき、互いに向かい合った二つの傾斜面8,13の間隔は中心部から外側周縁部に至るまでほぼ同一であるように作られている。また、二つの傾斜面8,13は球面状に湾曲したものに限らず、円錐面状としたものであってもよい。
【0036】
さらに、数個、一般には3乃至6個の球体17をそれらの上下両端部分を突出させて円環状の保持枠18に自転自在に保持した移動支持体16が可動部として固定底体7と荷重支持体10との間に装入されている。図11(B)に示すように、球体17は一平面上において円周等間隔に配置され、上下の互いに向かい合った傾斜面8,13に接触している。また、この移動支持体16がその中心を鉛直線N上に置いたとき、荷重支持体10も傾斜面8,13がほぼ一定間隔であることによってその中心を鉛直中心線N上に置くように位置調整される。この状態において、固定底体7が水平面上に設置されていれば、移動支持体16、荷重支持体10もそれぞれ水平面上に置かれ、この中心位置において、荷重支持体10は免振目的物を傾けることなく載置しておくことができる。
【0037】
以上述べた構成は、図24に示す従来の従来の免振装置にほぼ共通するものであるが、本実施の形態は中心位置保持手段として配置された制振ばね部材25,26の構成に特徴があるものである。即ち、本実施の形態においては振幅の極めて大きな横方向振動を伴う地震に対しても免振部としての荷重支持体10、可動部としての移動支持体16の水平方向の動きを抑制することができるように、これらの外側周縁と固定部としての下カバー体1の周側板1bおよび上カバー体2の周側板2bとに両端を結合させて複数の制振ばね部材25,26を放射状且つ互いに反対方向へ円弧状に湾曲させて配設している。
【0038】
そして、この制振ばね部材25,26は弾性金属板、好ましくはばね鋼板で作られた帯状の薄板からなる二枚のばね板25a、25aおよび26a,26aを高減衰ゴムなどの粘弾性材料25bおよび26bでそれぞれ接着して三層構造の一枚の積層板とし、それらの両端部に振動部と免震部とに固定する固定部である固定孔、および二枚のばね板25a,25aと26a,26aとが湾曲方向にずれ動くことを可能としている。
【0039】
そして、一方の制振ばね部材25は荷重支持体10の脚柱14の周側面および上カバー体2の周側板2bの内周面に固定ねじ21でその両端部が固定されており、制振ばね部材25よりも僅かに長いもう一方の制振ばね部材26は移動支持体16の周側面および下カバー体1の周側板1bの内周面に固定ねじ21でその両端部が固定されている。各制振ばね部材25,26は三つずつが円周方向等間隔で放射状且つ互いに反対方向へ円弧状に湾曲させて配置され、これらによって構成される中心位置保持手段が免振部側および可動部側の上下二段となっている点を特徴としている。
【0040】
次に、本実施の形態の動作について図13を参照して説明する。先ず、地震の発生などにより地盤の横揺れに伴って建築物の主として床に固定した下カバー体1とこれに固定した固定底体7とが床と一体の横方向振動を行う。固定底体7が中心を鉛直中心線N上に置いた図11(A)および図13(A)に示す中立位置から横方向、例えば図の右方向へずれ動くと、その上に乗っている移動支持体16はその球体17が傾斜面8の右方向移動に伴って図示反時計方向へ回転させられることにより左方向へ移動し、その結果移動支持体16は固定底体7の右方向移動距離と固定底体7に対する左方向移動距離との差に相当する距離だけ右方向へ移動し、且つ右下がりに傾斜する。
【0041】
一方、荷重支持体10は移動支持体16に乗って右下がりに傾斜し右方向へ滑り動こうとするが、反時計方向へ回転している球体17によって左方向へ移動させられる力を受け、これらの力の差に相当する距離だけ右方向へ移動する。このため、図12(B)に示したように、固定底体7が鉛直中心線NからNR1までずれ動いたとき、移動支持体16はこれよりも小さいストロークのNR2までずれ動き、荷重支持体10は更にこれよりも小さいストロークのNR3までずれ動く。
【0042】
また、固定底体7がNR1から左方向へ図13(C)に示すNL1まで左方向にずれ動いたとき、前記と同じ理由によって移動支持体16はこれよりも小さいストロークのNL2までずれ動き、荷重支持体10は更にこれよりも小さいストロークのNL3までずれ動く。
【0043】
即ち、固定底体7の振幅NR1―NL1に比べて荷重支持体10の振幅NR3−NL3は大幅に小さく、外部からの振動による水平動の伝達を低減するという免振の目的が達成されることとなる。尚、本発明の免振装置は少なくとも三台を同一平面上に設置して免振目的物を分担支持させることが好ましく、それらの受台11にまたがらせて免振目的物を直接載置するかまたは図示しない載置台を準備してこれを各受け台11にまたがらせて載せ、この載置台に免振目的物を載置することが推奨される。
【0044】
ここで、荷重支持体10は図13(B)、(C)に見られるように、水平振動が加わったときに右下がりの傾斜と左下がりの傾斜とを繰り返すが、傾斜面8,13の勾配と球体17の径および配置円周の径とを適宜に設定することによって傾きを僅かなものとすることができ、免振目的物は水平振動と同時に上下動および傾きが加えられても倒れることがない。
【0045】
そして、本実施の形態では中心位置保持手段として免振部と振動部との間に制振ばね部材25,26を配置したことにより、振幅の極めて大きい水平振動を伴う地震の場合でも免振部側の荷重支持体10および可動部の移動支持体16の横方向の動きを抑制することができるとともに、振動が終息したとき荷重支持体10や移動支持体16が慣性で動き続けることを抑制し速やかに中心位置に保持させることができるものである点は、従来の免振装置と同様である。
【0046】
しかし、図24に示した従来の免振装置では免振部に直接振動応力が働くと免振目的物が容易に動いて不安定となったり共振現象が発生したりすることを防止することができない。これに対し、本実施の形態においては中心位置保持手段としてのばね部材を二枚のばね板25a,25aおよび26a,26aを粘弾性材料25bおよび26bでそれぞれ接着してなる三層構造の積層板とした制振ばね部材25,26として、これを円弧状に湾曲させて免振部と振動部、さらに免振部と振動部の間に装入された可動部と振動部との間に設け、曲げ振動が加わることで重ねられた二枚のばね板25a,25aおよび26a,26aが互いに長手方向にずれ動き、これによってその間の粘弾性材料25b,26bにせん断変形を繰り返させるものとしている。
【0047】
そして、このせん断変形により振動エネルギは熱エネルギに変換され、振動は効果的に減衰されることになることから、共振現象など免振目的物にとって悪影響を及ぼす振動を充分に軽減することができる。尚、制振ばね部材25,26の端部側において少なくとも一方のばね板の固定孔を長孔としたことで、重ねられた上下のばね板が長手方向のずれ動きを拘束されることがなく、その間の粘弾性材料に充分なせん断変形が発生しやすいようになっている。
【0048】
尚、本実施の形態では荷重支持体10側と移動支持体16側の両方に制振ばね部材25,26を設けたが、少なくとも荷重支持体10側に制振ばね部材25を設け、移動支持体16側に通常の板ばねを設けるか或いは何も設けない構成としても、ほぼ同様の効果を期待することができる。尚、荷重支持体10側に中心位置保持手段を設けたことで、通常時において免振目的物に触れることによりこれを不安定に揺動させてしまうことを防止することができるものである。
【0049】
また、図13(d)は図11に示した実施の形態と同様な免震装置についての異なる実施の形態を示すものであり、固定底体7の中心を通る鉛直中心線N上に中心を置いたとき、互いに向かい合った二つの傾斜面8,13の間隔は中心部から外側周縁部に至るまでほぼ同一であるように作られている点は前記図12に示した実施の形態と同様であるが、二つの傾斜面8,13は互いに凹部を対向させてものであり、荷重支持体10が移動したとき固定底体7の湾曲面に沿って、下方に向けて回動するので、荷重支持体10が水平に移動するという利点を有している。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明である免震装置の実施例について説明する。本実施例は図11に示したものを使用した。また、制振ばね部材25,26の構成は図12の(a),(b),(c),(d),(e)に示す5種類(以下、それぞれ「a」,「b」,「c」,「d」,「e」と称する)とし、これらを荷重支持体10側に設ける上ばねと移動支持体16側に設ける下ばねとして、それぞれ3本ずつ様々に組み合わせてその制振効果を試験した。即ち、(イ)上ばね−a,下ばね−a、(ロ)上ばね−b,下ばね−a、(ハ)上ばね−c,下ばね−a、(ニ)上ばね−d,下ばね−d、(ホ)上ばね−c,下ばね−c、(ヘ)上ばね−e、下ばね−a、の組み合わせとした。
【0051】
尚、図12の(a)は、制振ばね部材25,26が弾性金属板、好ましくはばね鋼板で作られた帯状の薄板からなる二枚のばね板を高減衰ゴムなどの粘弾性材料でそれぞれ接着して三層構造の一枚の積層板とし、それらの両端部に振動部と免震部とに固定する固定部である固定孔、および二枚のばね板とをそれぞれ互いに結合する結合部である結合孔を設けたものであり、例えば図12(b),(c),(d),(e)の側面図(1)に示すように、図12(a)に示す一枚板の弾性鋼板からなる制振ばね部材とは構成が異なるものである。また、制振ばね部材は、その両端部において、(2)の平面図に示す一方のばね板または(3)の平面図に示すもう一方のばね板のうち少なくとも一方の固定孔および結合孔を長手方向に長い長孔とし、これを貫通する固定手段および結合手段である固定ねじおよび結合ねじの各軸に対して長手方向にずれ動くことを可能としている。
【0052】
即ち、図12(b)は(2)に示す一方のばね板の両端部の結合孔を長孔とし、(3)に示すもう一方のばね板の両端部の固定孔および結合孔をともに丸孔としたものである。 図12(c)は(2)に示す一方のばね板の両端部の固定孔および結合孔をともに丸孔とし、(3)に示すもう一方のばね板の両端部の結合孔を長孔としたものである。 図12(d)は(2)に示す一方のばね板の両端部の固定孔を丸孔とし、(3)に示すもう一方のばね板の両端部の固定孔を長孔としたものであって、固定孔は結合孔を兼ねている。 図12(e)は(2)に示す一方のばね板の一端部の固定孔を丸孔とするとともに両端部の結合孔の一方を長孔、もう一方を丸孔とし、(3)に示すもう一方のばね板の一端部の固定孔を丸孔とするとともに両端部の結合孔の一方を長孔、もう一方を丸孔としたものである。
【0053】
そして、一方の制振ばね部材25は荷重支持体10の脚柱14の周側面および上カバー体2の周側板2bの内周面に固定ねじ21でその両端部が固定されており、制振ばね部材25よりも僅かに長いもう一方の制振ばね部材26は移動支持体16の周側面および下カバー体1の周側板1bの内周面に固定ねじ21でその両端部が固定されている。各制振ばね部材25,26は三つずつが円周方向等間隔で放射状且つ互いに反対方向へ円弧状に湾曲させて配置され、これらによって構成される中心位置保持手段が免振部側および可動部側の上下二段となっている点を特徴としている。
【0054】
粘弾性材料としてはブチルゴム系、ジエンゴム系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ビニル系から選ばれた高分子材料に瀝青物質、炭酸カルシウムなどの無機物質や鉱物油または高分子系可塑剤を添加して設置環境温度近傍で力学的損失率が最大となるように調製したものが用いられる。 尚、本実施例では接着作用に優れたブチルゴム系を用いた。また、その厚さは、0.04mm未満では二枚のばね板の接着力が不十分となるおそれがあり、また5mmを越えるとせん断変形の変位が大きくなり過ぎてばね変形の際に厚さ方向に変形してはがれやすくなることから1mmとした。更に、ばね板は厚さ0.5mm、幅6mmであって、長さ160mm,190mmのばね鋼板を使用した。
【0055】
本実施例の実験装置の模式図を図14に示す。振動発生装置として電動式の水平方向加振機100aを用い、免振装置はスライドレール100bに乗せて加振の往復運動に抵抗なく追随できるような加振装置100を作成した。そして、マルチチャンネル波動分析装置120で加振装置100の振動のコントロールを行うとともに振動部である可動台100cと免振部である免振装置の受台11の振動加速度を測定し、振動部の振動加速度A1と免振部の振動加速度A2との比A2/A1の周波数応答について荷重を変えて測定して、共振点における振動レベルL=log10(A2/A1)[dB]を算出した。
【0056】
各試験において、荷重は0.5kg,1kg,2kg,3kg,4kg,5kg,6kg,7kg,8kgの9種類で実施した。図15乃至図20にその結果のグラフを例示するが、図15は上ばね−a,下ばね−a(イ)、図16は上ばね−b,下ばね−a(ロ)、図17は上ばね−c,下ばね−a(ハ)、図18は上ばね−d,下ばね−d(ニ)、図19は上ばね−c,下ばね−c(ホ)、図20は上ばね−e、下ばね−a(ヘ)の組み合わせであって、(A)は荷重が1kg,(B)は荷重が4kg,(C)は荷重が8kgの場合の結果を示すグラフであり、縦軸が振動レベル[dB]で横軸が周波数[Hz]であり、グラフのピーク時における周波数が共振点である。
【0057】
本実施例における各試験結果をまとめたグラフを図21,図22に示す。図21は荷重と共振点の周波数との関係を示すグラフであるが、いずれの制振ばね部材においても共振点の周波数(振動数)は荷重を増加するにつれて小さくなることがわかる。この結果から、荷重即ち免振装置の免振部に載せる免振目的物を重くしていけば、周波数が小さくなり見かけ上の免振はどの制振ばね部材でも可能となる。しかしながら、精密機械など軽量化が望まれるものの免振には周波数を下げる見かけの免振では充分な効果を望むことができない。
【0058】
一方、図22の共振点の振動レベルと荷重との関係を表すグラフに示すように、共振点の振動レベルは荷重に殆ど関係せずに殆ど制振ばね部材の種類(構造)で決まるということがわかる。最も効果があったのは(ニ)の上ばね−d、下ばね−dの組み合わせであり、(イ)の上ばね−a,下ばね−aの組み合わせと比べて振動レベルが約10dB下がっており、このことは振動の加速度が1/10に減少したことを示し、きわめて大きな免振効果が得られたと考えられる。また、三層構造の制振ばね部材を用いて最も効果の小さかった(ロ)の上ばね−b,下ばね−aの組み合わせでも(イ)よりも5〜10dB下がっており、有意な効果が認められた。
【0059】
以上述べたように、制振ばね部材を二枚の帯状のばね板の間に粘弾性材料を挟んで三層構造として簡易且つコンパクトな構成とした本実施の形態によると、これを組み込んだ免振装置も同様に簡易且つコンパクトな構成としながら、ばね板のばね弾性による振動吸収効果に加えて粘弾性材料のせん断変形を利用した優れた振動減衰効果を発揮させ、共振現象を初めとするより広範囲の水平振動から免振目的物を確実に保護できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の制振ばね部材の好ましい実施の形態を示すものであり、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は底面図、(4)は両端の拡大部分断面図。
【図2】本発明の制振ばね部材の好ましい使用例を示す説明図。
【図3】本発明の制振ばね部材の異なる実施の形態を示すものであり、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は底面図。
【図4】本発明の制振ばね部材の異なる実施の形態を示すものであり、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は底面図。
【図5】本発明の制振ばね部材の異なる実施の形態を示すものであり、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は底面図。好ましい使用例を示す説明図。
【図6】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図7】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図8】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図9】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図10】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図11】(A)は本発明の免震装置についての好ましい実施の形態を示す縦断面図、(B)はそのX―X線に沿う断面図。
【図12】(a),(b),(c),(d),(e)の(1)は図1の免振装置に配設する制振ばね部材の側面図、(2)はその一方のばね板の平面図、(3)はそのもう一方のばね板の平面図。
【図13】図11の実施の形態の動作説明図。
【図14】本発明の実施例における試験装置を示す概略図。
【図15】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図16】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図17】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図18】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図19】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図20】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図21】本発明の実施例における荷重と共振周波数との関係を示すグラフ。
【図22】本発明の実施例における荷重と共振振動レベルとの関係を示すグラフ。
【図23】(A)は従来例を示す側面図、(B)はその湾曲状態を示す側面図。
【図24】(A)は従来例を示す縦断面図、(B)はそのY−Y線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0061】
7 固定底体、8,13 傾斜面、10 荷重支持体、11 受台、12 滑動台、16 移動支持体、17 球体、18 保持枠、25,26 制振ばね部材、25a,26a ばね板、25b,26b 粘弾性材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振ばね部材およびそれを用いた免振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の軸受、原動機のような振動機械の設置箇所、免震構造などのように波動を受ける箇所にはこれを緩和するためにな制振部材が用いられていることは周知である。
【0003】
そして、ばねの1つとして例えば、剛性を有する板材を用いて振動を緩和する板ばねが知られている。
【0004】
ところが、従来の板ばねは、加わる曲げ振動を板材の反発力で吸収するものであり、充分な制振効果を得ることが困難であり、微細な振動に対しては対処できなかったり、車両のような重量を支持しなければならない箇所に使用する場合には複数枚を重ねて使用しているが荷重に対処できず、例えば油圧や空圧のシリンダ式のダンパーなどを併用する必要があるなどの問題点があった。
【0005】
また、建物をボールベアリングなどの球体に乗せて地震時の水平動の伝達を低減させることは古くから提案されている。例えば特開昭64−17945号公報、特開平1−275821号公報には、球体を使用して建築物の免振を図ることが記載され、また、例えば特開平5−164168号公報、特開平10―38022号公報には球体を使用して建築物に限らずその内部に設置された機器などの部分免振を図ることが記載されている。これらのうち、後者二つの公報に記載のものは、前者二つの公報に記載されているものに比べて大きな振幅の振動に対処することができるものである。
【0006】
即ち、この後者二つの免振装置は図24(A)の縦断面図に示すように、建築物の床または基礎に直接または防振部材を介して設置され、上面を凹状の湾曲面52とした固定底体51(振動部)と、免振目的物である精密機器などの設置物(または建築物)を載置する受台53を上部に有し下面を凸状の湾曲面55とした荷重支持体54(免振部)と、数個の球体57を円周上に配置して保持枠58に保持させてなる移動支持体56(可動部)とを具えたものであって、球体57を上下の向かい合った湾曲面52,55に接触させて移動支持体56を固定底体51と荷重支持体54との間に挿入したものである。
【0007】
この免振装置は水平に設置されるものであって、地震時に固定底体51が横方向へずれ動いて往復動を繰り返す振動を行うとき、移動支持体56が固定底体51よりも小さいずれ動きの往復動を行い、荷重支持体54が移動支持体56よりも小さいずれ動きの往復動を行うことによって免振の目的を達成することができるものである。尚、特開平10−38022号公報に記載の免振装置は、図24(B)の平面図に示すように、移動支持体56に設置されてこれらを中心位置に保持させるように働く弾性部材60を、等間隔で放射状に配置されるとともに円弧状に湾曲させたばね板60A,60A,60Aとして、これらを作用させることでより大きな振幅の地震にも対応するとともに360°全方向の揺れに対応できるようにしたものである。
【0008】
しかし、上述のようにベアリングとばね部材とで振動部から免振部への揺れの伝達を吸収させる免振装置においても、免振部に直接振動応力が働くと容易に免振部が動いて載置された免振目的物は不安定となる。また、ベアリングの球体が転がる際に、免振部側に転がり摩擦抵抗による復元力が伝達され共振現象が生じることがある。斯かる共振現象は、近年高性能化の一途をたどるコンピュータサーバのハードディスク内部機構の保護および情報処理精度の確保、或いはナノテクノロジーに代表されるような極めて微細な技術を実現する精密計測装置・精密加工装置などの精度の確保のために、克服すべき重要な問題となっている。
【0009】
この共振現象を含む振動の問題に対応するため、特開平11−315886号公報に免振機構としてのベアリングと復元要素としてのばねとの組み合わせに、油圧ダンバ或いは粘弾性ダンパなどの振動減衰要素を更に加えて、共振周波数を低減させるようにした免振装置が提案されている。この免振装置は地震などによる比較的大きな振動に加えてこれよりも高周波の振動を減衰可能として共振現象を回避できるようにしたものであるが、多方向の振動に対応するには振動減衰要素を多数配置することが必要となって装置が複雑化・大型化してしまい、コンパクトさが要求される部分免振装置には適用しにくいという問題がある。
【0010】
更に、近年建築物の免振構造において高減衰ゴムを使った粘弾性ダンパが多用されるようになっている。これは図13(B)の(1)に示すように、鋼板100に粘弾性材料110Bを貼り付けた二層構造としたものであり、図23(B)の(2)に示すように鋼板100の曲げ変形に対して粘弾性材料110Bは伸縮運動をしてダンパとしての効果を発揮するものであるが、この場合粘弾性材料110Bを極端に厚くする必要があった。
【0011】
これに対し、図23(A)の(1)に示すように二枚の鋼板100,100の間に粘弾性材料110Aを挟んで三層構造としたものを、建築物内部の柱やブレースなどに取付け、地震入力エネルギを吸収させて骨組みの損傷を抑制しようとするものがある。これは、粘弾性材料110Aが二枚の鋼板100,100で拘束されているため、加わる曲げ振動に対して中間層の粘弾性材料110Aがせん断変形を繰り返して振動エネルギーを吸収することで制振効果を発揮するものであり(図23(A)の(2)参照)、振動減衰効果に優れているとともに粘弾性材料の層を図23(B)に示すものよりも薄くすることができる。しかしながら、これらは比較的大規模な建築物・構造物の骨組みに専ら利用され、地震などの大規模な振動を想定したものであり、精密機器において近傍または内部の振動発生源による比較的小規模な振動にも対応が必要とされる部分免振装置には適用されていないのが現状である。
【0012】
一方、特開平11−82583号公報には、粘弾性材料の両面に金属板をそれぞれ積層一体化させて三層構造の積層体とし、且つ正方形とした板ばねを、精密機器内での精密部品と取付けブロックとの間に水平に架設して精密部品を支持するものとした精密部品支持用板ばねが提示されている。この板ばねは薄くコンパクトな構成で優れた制振効果が期待できるものであるが、装置内部のモータなどにより発生した微細な振動への対応のみを想定したものであって地震のような大規模な振動およびこれによる共振現象への対応を想定したものではない。
【特許文献1】特開昭64−17945号公報
【特許文献2】特開平1−275821号公報
【特許文献3】特開平5−164168号公報
【特許文献4】特開平10―38022号公報
【特許文献5】特開平11−315886号公報
【特許文献6】特開平11−82583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、例えば車両の軸受、原動機のような振動機械の設置箇所、免震構造などは勿論のこと、橋梁、鉄道や高速同などの高架脚の制振や落下防止など、更には建物内部に設置される精密機器などの部分免振に使用する等、従来の制振部材を必要とする各所において使用することが可能で、複雑な構成でなく、確実に振動を緩和することが可能な制振部材を提供すること、更に、それを用いた免振装置について、簡易かつコンパクトな構成としながらばね弾性による振動吸収効果に加えて優れた振動減衰効果を発揮させ、より広範囲な水平振動に対応できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明は、制振ばね部材について、互いに重ね合わせた湾曲状を呈するばね板の間に粘弾性材を積層するとともにそれらの両端を固定部とし、且つ、前記両端に互いに重ね合わせたばね板同士が湾曲方向にずれ動き可能な結合部を有しており、前記結合部が前記互いに重ね合わせた一方のばね板に形成された円形の透孔ともう一方のばね板に形成された前記透孔に連通して湾曲方向に延びる長孔と、前記透孔と長孔とに連通して前記互いに重ね合わせたばね板同士を連結する連結軸とから構成することにした。
【0015】
このように互いに重ね合わせた湾曲状を呈するばね板の間に粘弾性材を積層するとともにそれらの両端を固定部とし粘弾性材料を二枚のばね板の間に挟んだ三層構造の帯状ばね部材を円弧状に湾曲させて配置することで、曲げ振動が加わったときにばね板のばね弾性により振動を吸収するとともに、互いに重ね合わせたばね板の間に長手方向のずれが生じることで粘弾性材料がせん断変形を繰り返すものとなるが、湾曲させてあることによってせん断変形が効果的に与えられ、これにより振動エネルギを効果的に吸収して優れた振動減衰効果を発揮するものであり、免振部側の免振目的物に共振現象を初めとする不都合な振動が発生することを効果的に回避することができる。そして、このような構成としたことで中間層の粘弾性材料を薄くしても振動減衰効果を充分に発揮できる。従って、制振ばね部材を薄くコンパクトにするとともにこれを具えた免振装置もコンパクトなものとすることができる。
【0016】
特に、結合部を、前記互いに重ね合わせた一方のばね板に形成された円形の透孔ともう一方のばね板に形成された前記透孔に連通して湾曲方向に延びる長孔と、前記透孔と長孔とに連通して前記互いに重ね合わせたばね板同士を連結する連結軸とから構成したことにより、両端部の固定部の少なくともいずれかを長手方向のずれ動きが拘束されないものとすることで、互いに重ねたばね板間に曲げ振動による充分なずれの発生が可能となり、粘弾性材料に適度なせん断変形を発生させて良好な振動減衰効果を発揮させることができる。
【0017】
また、ばね板を構成するばね板がばね鋼材により形成されているとともに、前記粘弾性材がブチルゴム系、ジエンゴム系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ビニル系から選んだ高分子材料を主成分とするものとすれば、接着力に優れて製造容易であるとともに振動減衰効果を最大限に発揮することができる。
【0018】
更に、両端の固定部の少なくととも一方が結合部を兼ね、前記結合部を構成する連結軸が取付ボルトである場合には、構成が更にシンプルで製造も容易で安価に提供することができる。
【0019】
更にまた、上述した制振ばね部材を、振動部と免振部との間に免振部の中心位置保持手段として放射状に複数設けた免振装置とすれば、簡易かつコンパクトな構成で比較的大きな周期の振動から比較的小さな周期の広範囲且つあらゆる方向の水平振動にも対応して免振目的物を免振装置の中心位置に保持しながら確実な部分免振を発揮できるものとなる。
【0020】
加えて、上述した免振装置を、振動部側である上面を凹状の湾曲面とした固定底体と、免振部側である下面に凸状の傾斜面を有し免振目的物を載置する荷重支持体と、複数個の球体を円周上に配置して保持枠に保持させてなり球体を上下の向かい合った傾斜面に接触させて固定底体と荷重支持体との間に装入された移動支持体とを具え、そして固定底体と荷重支持体および移動支持体とのうちで少なくとも固定底体と荷重支持体側との間に中心位置保持手段としての制振ばね部材を設けたものとすることにより、上述した免振効果を効率的に実現する免振装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、簡易且つコンパクトな構成の制振ばね部材および制振装置としながら、ばね弾性による振動吸収効果に加えて優れた振動減衰効果を発揮してより広範囲の水平振動に対応できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明すると、図1は本発明の制振ばね部材25についての実施の形態を示すものであり、例えば、互いに重ね合わせた湾曲状を呈する2枚の帯状を呈するばね鋼材により形成されているばね板25a,26aの間に、例えばブチルゴム系、ジエンゴム系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ビニル系などの高分子材料を主成分とする粘弾性材25bが積層されている。尚、本発明は、ばね板25a,26aの間に粘弾性材25bが積層してものを取付時に湾曲状としてもよく、また、ばね板25a,26aの間に粘弾性材25bを積層したものを予め湾曲させたものでもよく、更には、予め湾曲させたばね板25a,26aの間に取付時に粘弾性材25bを積層したものであってもよく、使用するばね板25a,26aの厚さや用途に応じて適宜選択すればよい。
【0023】
そして、前記制振ばね部材25は、それらの両端を固定部25d,25dとし、固定部25d,25dには、例えばばね部材25bに固定するための取付ねじ孔25e,25eが形成されているとともに、ばね板25a,25b同士を互いに結合するための結合部25f,25fが設けられている。
【0024】
特に、結合部25f,25fは、内側に位置するばね板25aに形成された湾曲方向に延びる長孔25g,25gとこれらにそれぞれ連通してもう一方のばね板26aに形成された円形の透孔25h,25hと、前記長孔25g,25gと透孔25h,25hとに連通して前記互いに重ね合わせたばね板25a,26a同士を連結する連結軸(または固定ねじでも可能)25i,25iとからなり、ばね板25a,26aのいずれかの長手方向のずれ動きが拘束されないものとすることで、互いに重ねたばね板25a,26a間に曲げ振動による充分なずれの発生が可能となり、粘弾性材料25bに適度なせん断変形を発生させて良好な振動減衰効果を発揮させることができるものである。
【0025】
尚、本実施の形態では、結合部25f,25fは、内側に位置するばね板25aに湾曲方向に延びる長孔25g,25gを、外側に位置するばね板26aに円形の透孔25h,25hを形成したが、内側に位置するばね板25aに円形の透孔25h,25hを外側に位置するばね板26aに湾曲方向に延びる長孔25g,25gを設け、或いは、内側に位置するばね板25aと外側に位置するばね板26aとに長孔25g,25gと透孔25h,25hとをそれぞれ組み合わせて設けてもよく(図示せず)、互いに重ねたばね板25a,26a間に曲げ振動による充分なずれの発生が可能となればよい。
【0026】
そして、図2は前記図1に示した本発明の実施の形態についての具体的な使用例の一部を示すものであり、図2(a)示したものは、例えば手押車のような軽車両から自動車などの底部27に使用した場合、図2(b)示したものは、基台28の上に振動する機械29などを設置する場合の使用例を示すものであり、本発明はこれらに限らず各種の制振箇所において使用することができるものである。
【0027】
更に、図3乃至図5は本発明である制振ばね部材の異なる実施の形態を示すものであり、図3に示すものは、前記図1に示したものと異なり外側に位置するばね板26aに長孔25g,25gを形成したもの、図4に示すものは、内側に位置するばね板25aと外側に位置するばね板26aとにそれぞれ長孔25gと透孔25hとを湾曲方向に対向して設けたもの,図5は固定部25d,25dが結合部25f,25fを兼ねたものである。本発明では、内側に位置するばね板25aに結合部を構成する長孔25gを設けたもの、外側に位置するばね板26aに長孔25gを形成したもの、或いは内側に位置するばね板25aおよびに外側に位置するばね板26aに交互に設けてもよく、何れの場合も互いに重ねたばね板25a,26a間に曲げ振動による湾曲方向に充分なずれの発生が可能であればよい。
【実施例1】
【0028】
次に、本発明である制振ばね部材の実施例について説明する。
【0029】
図6は図1に示した構成の本発明である制振ばね部材の損失係数を比較例とともに示したものであり、Aは厚さ0.5mmと0.3mmの2ばね板の間に厚さ0.5mmフィルム状粘弾性材(ポリエステル系)を積層させた本発明であり、B、C,Dは比較例であって、Bは厚さ0.4mmのばね板を2枚合わせたもの、Cは厚さ0.5mmと0.3mmのばね板とを合わせたもの、Dは厚さ0.8mmのばね板単体である。
【0030】
図6に示した損失係数の値によれば、本発明の実施例が比較例に比べて損 失係数が大きく免震効果のあることが判明し、Aの厚さ0.5mmと0.3mmの2枚のばね板の間に厚さ0.5mmフィルム状粘弾性材(ポリエステル系)を積層させたものに大きな効果が確認された。
【0031】
更に、図7乃至図10は、本発明に用いられる補強具構造モデルと比較例とについての振動レベルと周波数との関係(周波数応答)示すものであり、図7は厚さ0.5mmと0.3mmの2枚のばね板の間に厚さ0.5mmフィルム状粘弾性材(ポリエステル系)を積層させた本発明、図8は厚さ0.4mmのばね板を2枚合わせたもの、図9は厚さ厚さ0.5mmと0.3mmのばね板とを合わせたもの、図10は厚さ0.8mmのばね板単体である比較例であり、図7に示した本発明の周波数応答が優れていることが確認された。
【0032】
また、図11(A)は本発明である免振装置についての実施の形態の縦断面図を示し、図11(B)はそのX−X線に沿う断面図を示すものであり、主として建物内部に設置されるコンピュータ或いは精密測定装置、精密加工装置などの精密機器を載置してこれらの免振対策を講じるために用いられるものである。
【0033】
図11(A),(B)を参照して、平面円形であって底板1aと周側板1bとからなる下カバー体1に同じく平面円形であって蓋板2aと周側板2bとからなる上カバー体2が周側板1b,2bを重ねて嵌め込まれており、蓋板2aは中心に窓孔4が設けられている。底板1aには、下カバー体1の内径よりもわずかに小さい外径の薄円盤状であって中心部分が最も低くそれより外側周縁に向かって次第に高くなる上向きに凹状に湾曲した傾斜面8を上面に形成した固定底体7が重ねられている。そして、これら下カバー体1、上カバー体2、固定底体7は外部からの水平振動と同調して振動するものであり振動部を構成している。
【0034】
また、平面円形の平板からなる受台11と、薄円盤状であって中心部分が最も高くそれより外側周縁に向かって次第に低くなる下向き凸状に湾曲した傾斜面13を下面に形成した滑動台12と、これらを上下に少し離間させて分離可能に結合した脚柱14とからなる荷重支持体10が固定底体7の上方に配備されており、これらは免振部を構成している。脚柱14は本実施の形態では装置の中心位置に一脚設けられており、蓋板2aの窓孔4を貫通し受台11を上カバー体2の上方、滑動台12を下カバー体1の内部に位置させている。
【0035】
尚、荷重支持体10がその中心を固定底体7の中心と一致させたとき、即ち図11(A)に示す固定底体7の中心を通る鉛直中心線N上に中心を置いたとき、互いに向かい合った二つの傾斜面8,13の間隔は中心部から外側周縁部に至るまでほぼ同一であるように作られている。また、二つの傾斜面8,13は球面状に湾曲したものに限らず、円錐面状としたものであってもよい。
【0036】
さらに、数個、一般には3乃至6個の球体17をそれらの上下両端部分を突出させて円環状の保持枠18に自転自在に保持した移動支持体16が可動部として固定底体7と荷重支持体10との間に装入されている。図11(B)に示すように、球体17は一平面上において円周等間隔に配置され、上下の互いに向かい合った傾斜面8,13に接触している。また、この移動支持体16がその中心を鉛直線N上に置いたとき、荷重支持体10も傾斜面8,13がほぼ一定間隔であることによってその中心を鉛直中心線N上に置くように位置調整される。この状態において、固定底体7が水平面上に設置されていれば、移動支持体16、荷重支持体10もそれぞれ水平面上に置かれ、この中心位置において、荷重支持体10は免振目的物を傾けることなく載置しておくことができる。
【0037】
以上述べた構成は、図24に示す従来の従来の免振装置にほぼ共通するものであるが、本実施の形態は中心位置保持手段として配置された制振ばね部材25,26の構成に特徴があるものである。即ち、本実施の形態においては振幅の極めて大きな横方向振動を伴う地震に対しても免振部としての荷重支持体10、可動部としての移動支持体16の水平方向の動きを抑制することができるように、これらの外側周縁と固定部としての下カバー体1の周側板1bおよび上カバー体2の周側板2bとに両端を結合させて複数の制振ばね部材25,26を放射状且つ互いに反対方向へ円弧状に湾曲させて配設している。
【0038】
そして、この制振ばね部材25,26は弾性金属板、好ましくはばね鋼板で作られた帯状の薄板からなる二枚のばね板25a、25aおよび26a,26aを高減衰ゴムなどの粘弾性材料25bおよび26bでそれぞれ接着して三層構造の一枚の積層板とし、それらの両端部に振動部と免震部とに固定する固定部である固定孔、および二枚のばね板25a,25aと26a,26aとが湾曲方向にずれ動くことを可能としている。
【0039】
そして、一方の制振ばね部材25は荷重支持体10の脚柱14の周側面および上カバー体2の周側板2bの内周面に固定ねじ21でその両端部が固定されており、制振ばね部材25よりも僅かに長いもう一方の制振ばね部材26は移動支持体16の周側面および下カバー体1の周側板1bの内周面に固定ねじ21でその両端部が固定されている。各制振ばね部材25,26は三つずつが円周方向等間隔で放射状且つ互いに反対方向へ円弧状に湾曲させて配置され、これらによって構成される中心位置保持手段が免振部側および可動部側の上下二段となっている点を特徴としている。
【0040】
次に、本実施の形態の動作について図13を参照して説明する。先ず、地震の発生などにより地盤の横揺れに伴って建築物の主として床に固定した下カバー体1とこれに固定した固定底体7とが床と一体の横方向振動を行う。固定底体7が中心を鉛直中心線N上に置いた図11(A)および図13(A)に示す中立位置から横方向、例えば図の右方向へずれ動くと、その上に乗っている移動支持体16はその球体17が傾斜面8の右方向移動に伴って図示反時計方向へ回転させられることにより左方向へ移動し、その結果移動支持体16は固定底体7の右方向移動距離と固定底体7に対する左方向移動距離との差に相当する距離だけ右方向へ移動し、且つ右下がりに傾斜する。
【0041】
一方、荷重支持体10は移動支持体16に乗って右下がりに傾斜し右方向へ滑り動こうとするが、反時計方向へ回転している球体17によって左方向へ移動させられる力を受け、これらの力の差に相当する距離だけ右方向へ移動する。このため、図12(B)に示したように、固定底体7が鉛直中心線NからNR1までずれ動いたとき、移動支持体16はこれよりも小さいストロークのNR2までずれ動き、荷重支持体10は更にこれよりも小さいストロークのNR3までずれ動く。
【0042】
また、固定底体7がNR1から左方向へ図13(C)に示すNL1まで左方向にずれ動いたとき、前記と同じ理由によって移動支持体16はこれよりも小さいストロークのNL2までずれ動き、荷重支持体10は更にこれよりも小さいストロークのNL3までずれ動く。
【0043】
即ち、固定底体7の振幅NR1―NL1に比べて荷重支持体10の振幅NR3−NL3は大幅に小さく、外部からの振動による水平動の伝達を低減するという免振の目的が達成されることとなる。尚、本発明の免振装置は少なくとも三台を同一平面上に設置して免振目的物を分担支持させることが好ましく、それらの受台11にまたがらせて免振目的物を直接載置するかまたは図示しない載置台を準備してこれを各受け台11にまたがらせて載せ、この載置台に免振目的物を載置することが推奨される。
【0044】
ここで、荷重支持体10は図13(B)、(C)に見られるように、水平振動が加わったときに右下がりの傾斜と左下がりの傾斜とを繰り返すが、傾斜面8,13の勾配と球体17の径および配置円周の径とを適宜に設定することによって傾きを僅かなものとすることができ、免振目的物は水平振動と同時に上下動および傾きが加えられても倒れることがない。
【0045】
そして、本実施の形態では中心位置保持手段として免振部と振動部との間に制振ばね部材25,26を配置したことにより、振幅の極めて大きい水平振動を伴う地震の場合でも免振部側の荷重支持体10および可動部の移動支持体16の横方向の動きを抑制することができるとともに、振動が終息したとき荷重支持体10や移動支持体16が慣性で動き続けることを抑制し速やかに中心位置に保持させることができるものである点は、従来の免振装置と同様である。
【0046】
しかし、図24に示した従来の免振装置では免振部に直接振動応力が働くと免振目的物が容易に動いて不安定となったり共振現象が発生したりすることを防止することができない。これに対し、本実施の形態においては中心位置保持手段としてのばね部材を二枚のばね板25a,25aおよび26a,26aを粘弾性材料25bおよび26bでそれぞれ接着してなる三層構造の積層板とした制振ばね部材25,26として、これを円弧状に湾曲させて免振部と振動部、さらに免振部と振動部の間に装入された可動部と振動部との間に設け、曲げ振動が加わることで重ねられた二枚のばね板25a,25aおよび26a,26aが互いに長手方向にずれ動き、これによってその間の粘弾性材料25b,26bにせん断変形を繰り返させるものとしている。
【0047】
そして、このせん断変形により振動エネルギは熱エネルギに変換され、振動は効果的に減衰されることになることから、共振現象など免振目的物にとって悪影響を及ぼす振動を充分に軽減することができる。尚、制振ばね部材25,26の端部側において少なくとも一方のばね板の固定孔を長孔としたことで、重ねられた上下のばね板が長手方向のずれ動きを拘束されることがなく、その間の粘弾性材料に充分なせん断変形が発生しやすいようになっている。
【0048】
尚、本実施の形態では荷重支持体10側と移動支持体16側の両方に制振ばね部材25,26を設けたが、少なくとも荷重支持体10側に制振ばね部材25を設け、移動支持体16側に通常の板ばねを設けるか或いは何も設けない構成としても、ほぼ同様の効果を期待することができる。尚、荷重支持体10側に中心位置保持手段を設けたことで、通常時において免振目的物に触れることによりこれを不安定に揺動させてしまうことを防止することができるものである。
【0049】
また、図13(d)は図11に示した実施の形態と同様な免震装置についての異なる実施の形態を示すものであり、固定底体7の中心を通る鉛直中心線N上に中心を置いたとき、互いに向かい合った二つの傾斜面8,13の間隔は中心部から外側周縁部に至るまでほぼ同一であるように作られている点は前記図12に示した実施の形態と同様であるが、二つの傾斜面8,13は互いに凹部を対向させてものであり、荷重支持体10が移動したとき固定底体7の湾曲面に沿って、下方に向けて回動するので、荷重支持体10が水平に移動するという利点を有している。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明である免震装置の実施例について説明する。本実施例は図11に示したものを使用した。また、制振ばね部材25,26の構成は図12の(a),(b),(c),(d),(e)に示す5種類(以下、それぞれ「a」,「b」,「c」,「d」,「e」と称する)とし、これらを荷重支持体10側に設ける上ばねと移動支持体16側に設ける下ばねとして、それぞれ3本ずつ様々に組み合わせてその制振効果を試験した。即ち、(イ)上ばね−a,下ばね−a、(ロ)上ばね−b,下ばね−a、(ハ)上ばね−c,下ばね−a、(ニ)上ばね−d,下ばね−d、(ホ)上ばね−c,下ばね−c、(ヘ)上ばね−e、下ばね−a、の組み合わせとした。
【0051】
尚、図12の(a)は、制振ばね部材25,26が弾性金属板、好ましくはばね鋼板で作られた帯状の薄板からなる二枚のばね板を高減衰ゴムなどの粘弾性材料でそれぞれ接着して三層構造の一枚の積層板とし、それらの両端部に振動部と免震部とに固定する固定部である固定孔、および二枚のばね板とをそれぞれ互いに結合する結合部である結合孔を設けたものであり、例えば図12(b),(c),(d),(e)の側面図(1)に示すように、図12(a)に示す一枚板の弾性鋼板からなる制振ばね部材とは構成が異なるものである。また、制振ばね部材は、その両端部において、(2)の平面図に示す一方のばね板または(3)の平面図に示すもう一方のばね板のうち少なくとも一方の固定孔および結合孔を長手方向に長い長孔とし、これを貫通する固定手段および結合手段である固定ねじおよび結合ねじの各軸に対して長手方向にずれ動くことを可能としている。
【0052】
即ち、図12(b)は(2)に示す一方のばね板の両端部の結合孔を長孔とし、(3)に示すもう一方のばね板の両端部の固定孔および結合孔をともに丸孔としたものである。 図12(c)は(2)に示す一方のばね板の両端部の固定孔および結合孔をともに丸孔とし、(3)に示すもう一方のばね板の両端部の結合孔を長孔としたものである。 図12(d)は(2)に示す一方のばね板の両端部の固定孔を丸孔とし、(3)に示すもう一方のばね板の両端部の固定孔を長孔としたものであって、固定孔は結合孔を兼ねている。 図12(e)は(2)に示す一方のばね板の一端部の固定孔を丸孔とするとともに両端部の結合孔の一方を長孔、もう一方を丸孔とし、(3)に示すもう一方のばね板の一端部の固定孔を丸孔とするとともに両端部の結合孔の一方を長孔、もう一方を丸孔としたものである。
【0053】
そして、一方の制振ばね部材25は荷重支持体10の脚柱14の周側面および上カバー体2の周側板2bの内周面に固定ねじ21でその両端部が固定されており、制振ばね部材25よりも僅かに長いもう一方の制振ばね部材26は移動支持体16の周側面および下カバー体1の周側板1bの内周面に固定ねじ21でその両端部が固定されている。各制振ばね部材25,26は三つずつが円周方向等間隔で放射状且つ互いに反対方向へ円弧状に湾曲させて配置され、これらによって構成される中心位置保持手段が免振部側および可動部側の上下二段となっている点を特徴としている。
【0054】
粘弾性材料としてはブチルゴム系、ジエンゴム系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ビニル系から選ばれた高分子材料に瀝青物質、炭酸カルシウムなどの無機物質や鉱物油または高分子系可塑剤を添加して設置環境温度近傍で力学的損失率が最大となるように調製したものが用いられる。 尚、本実施例では接着作用に優れたブチルゴム系を用いた。また、その厚さは、0.04mm未満では二枚のばね板の接着力が不十分となるおそれがあり、また5mmを越えるとせん断変形の変位が大きくなり過ぎてばね変形の際に厚さ方向に変形してはがれやすくなることから1mmとした。更に、ばね板は厚さ0.5mm、幅6mmであって、長さ160mm,190mmのばね鋼板を使用した。
【0055】
本実施例の実験装置の模式図を図14に示す。振動発生装置として電動式の水平方向加振機100aを用い、免振装置はスライドレール100bに乗せて加振の往復運動に抵抗なく追随できるような加振装置100を作成した。そして、マルチチャンネル波動分析装置120で加振装置100の振動のコントロールを行うとともに振動部である可動台100cと免振部である免振装置の受台11の振動加速度を測定し、振動部の振動加速度A1と免振部の振動加速度A2との比A2/A1の周波数応答について荷重を変えて測定して、共振点における振動レベルL=log10(A2/A1)[dB]を算出した。
【0056】
各試験において、荷重は0.5kg,1kg,2kg,3kg,4kg,5kg,6kg,7kg,8kgの9種類で実施した。図15乃至図20にその結果のグラフを例示するが、図15は上ばね−a,下ばね−a(イ)、図16は上ばね−b,下ばね−a(ロ)、図17は上ばね−c,下ばね−a(ハ)、図18は上ばね−d,下ばね−d(ニ)、図19は上ばね−c,下ばね−c(ホ)、図20は上ばね−e、下ばね−a(ヘ)の組み合わせであって、(A)は荷重が1kg,(B)は荷重が4kg,(C)は荷重が8kgの場合の結果を示すグラフであり、縦軸が振動レベル[dB]で横軸が周波数[Hz]であり、グラフのピーク時における周波数が共振点である。
【0057】
本実施例における各試験結果をまとめたグラフを図21,図22に示す。図21は荷重と共振点の周波数との関係を示すグラフであるが、いずれの制振ばね部材においても共振点の周波数(振動数)は荷重を増加するにつれて小さくなることがわかる。この結果から、荷重即ち免振装置の免振部に載せる免振目的物を重くしていけば、周波数が小さくなり見かけ上の免振はどの制振ばね部材でも可能となる。しかしながら、精密機械など軽量化が望まれるものの免振には周波数を下げる見かけの免振では充分な効果を望むことができない。
【0058】
一方、図22の共振点の振動レベルと荷重との関係を表すグラフに示すように、共振点の振動レベルは荷重に殆ど関係せずに殆ど制振ばね部材の種類(構造)で決まるということがわかる。最も効果があったのは(ニ)の上ばね−d、下ばね−dの組み合わせであり、(イ)の上ばね−a,下ばね−aの組み合わせと比べて振動レベルが約10dB下がっており、このことは振動の加速度が1/10に減少したことを示し、きわめて大きな免振効果が得られたと考えられる。また、三層構造の制振ばね部材を用いて最も効果の小さかった(ロ)の上ばね−b,下ばね−aの組み合わせでも(イ)よりも5〜10dB下がっており、有意な効果が認められた。
【0059】
以上述べたように、制振ばね部材を二枚の帯状のばね板の間に粘弾性材料を挟んで三層構造として簡易且つコンパクトな構成とした本実施の形態によると、これを組み込んだ免振装置も同様に簡易且つコンパクトな構成としながら、ばね板のばね弾性による振動吸収効果に加えて粘弾性材料のせん断変形を利用した優れた振動減衰効果を発揮させ、共振現象を初めとするより広範囲の水平振動から免振目的物を確実に保護できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の制振ばね部材の好ましい実施の形態を示すものであり、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は底面図、(4)は両端の拡大部分断面図。
【図2】本発明の制振ばね部材の好ましい使用例を示す説明図。
【図3】本発明の制振ばね部材の異なる実施の形態を示すものであり、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は底面図。
【図4】本発明の制振ばね部材の異なる実施の形態を示すものであり、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は底面図。
【図5】本発明の制振ばね部材の異なる実施の形態を示すものであり、(1)は平面図、(2)は側面図、(3)は底面図。好ましい使用例を示す説明図。
【図6】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図7】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図8】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図9】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図10】本発明の制振ばね部材についての実施例における試験結果を示すグラフ。
【図11】(A)は本発明の免震装置についての好ましい実施の形態を示す縦断面図、(B)はそのX―X線に沿う断面図。
【図12】(a),(b),(c),(d),(e)の(1)は図1の免振装置に配設する制振ばね部材の側面図、(2)はその一方のばね板の平面図、(3)はそのもう一方のばね板の平面図。
【図13】図11の実施の形態の動作説明図。
【図14】本発明の実施例における試験装置を示す概略図。
【図15】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図16】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図17】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図18】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図19】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図20】本発明の実施例における試験結果を示すグラフ。
【図21】本発明の実施例における荷重と共振周波数との関係を示すグラフ。
【図22】本発明の実施例における荷重と共振振動レベルとの関係を示すグラフ。
【図23】(A)は従来例を示す側面図、(B)はその湾曲状態を示す側面図。
【図24】(A)は従来例を示す縦断面図、(B)はそのY−Y線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0061】
7 固定底体、8,13 傾斜面、10 荷重支持体、11 受台、12 滑動台、16 移動支持体、17 球体、18 保持枠、25,26 制振ばね部材、25a,26a ばね板、25b,26b 粘弾性材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わせた湾曲状を呈するばね板の間に粘弾性材を積層するとともにそれらの両端を固定部とし、且つ、前記両端に互いに重ね合わせたばね板同士が湾曲方向にずれ動き可能な結合部を有しており、前記結合部が前記互いに重ね合わせた一方のばね板に形成された円形の透孔ともう一方のばね板に形成された前記透孔に連通して湾曲方向に延びる長孔と、前記透孔と長孔とに連通して前記互いに重ね合わせたばね板同士を連結する連結軸とからなることを特徴とする制振ばね部材。
【請求項2】
前記ばね板が、ばね鋼材により形成されているとともに、前記粘弾性材がブチルゴム系、ジエンゴム系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ビニル系などの高分子材料を主成分とする請求項1記載の制振ばね部材。
【請求項3】
前記両端の固定部の少なくととも一方が前記結合部を兼ね、前記結合部を構成する連結軸が取付ボルトである請求項1または2記載の制振ばね部材。
【請求項4】
前記請求項1,2または3に記載した制振ばね部材が、振動部と免振部との間に且つ前記免振部の中心位置保持手段として放射状に複数設けられていることを特徴とする免振装置。
【請求項5】
請求項4に記載した免振装置が前記振動部側である上面を凹状の湾曲面とした固定底体と、前記免振部側である下面に凸状または凹状の傾斜面を有し免振目的物を載置する荷重支持体と、複数個の球体を円周上に配置して保持枠に保持させてなり前記球体を前記上下の向かい合った傾斜面に接触させて前記固定底体と荷重支持体との間に揺動自在に装入された移動支持体とを具え、そして前記固定底体と荷重支持体および移動支持体とのうちで少なくとも前記固定底体と荷重支持体との間に前記中心位置保持手段としての制振ばね部材が設けられていることを特徴とする免振装置。
【請求項1】
互いに重ね合わせた湾曲状を呈するばね板の間に粘弾性材を積層するとともにそれらの両端を固定部とし、且つ、前記両端に互いに重ね合わせたばね板同士が湾曲方向にずれ動き可能な結合部を有しており、前記結合部が前記互いに重ね合わせた一方のばね板に形成された円形の透孔ともう一方のばね板に形成された前記透孔に連通して湾曲方向に延びる長孔と、前記透孔と長孔とに連通して前記互いに重ね合わせたばね板同士を連結する連結軸とからなることを特徴とする制振ばね部材。
【請求項2】
前記ばね板が、ばね鋼材により形成されているとともに、前記粘弾性材がブチルゴム系、ジエンゴム系、ポリイソブチレン系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ビニル系などの高分子材料を主成分とする請求項1記載の制振ばね部材。
【請求項3】
前記両端の固定部の少なくととも一方が前記結合部を兼ね、前記結合部を構成する連結軸が取付ボルトである請求項1または2記載の制振ばね部材。
【請求項4】
前記請求項1,2または3に記載した制振ばね部材が、振動部と免振部との間に且つ前記免振部の中心位置保持手段として放射状に複数設けられていることを特徴とする免振装置。
【請求項5】
請求項4に記載した免振装置が前記振動部側である上面を凹状の湾曲面とした固定底体と、前記免振部側である下面に凸状または凹状の傾斜面を有し免振目的物を載置する荷重支持体と、複数個の球体を円周上に配置して保持枠に保持させてなり前記球体を前記上下の向かい合った傾斜面に接触させて前記固定底体と荷重支持体との間に揺動自在に装入された移動支持体とを具え、そして前記固定底体と荷重支持体および移動支持体とのうちで少なくとも前記固定底体と荷重支持体との間に前記中心位置保持手段としての制振ばね部材が設けられていることを特徴とする免振装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−112613(P2006−112613A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−73010(P2005−73010)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(504320499)
【出願人】(591160408)株式会社道光産業 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(504320499)
【出願人】(591160408)株式会社道光産業 (3)
【Fターム(参考)】
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