説明

制振性能付与型鋼板補強材

【構成】拘束層と熱硬化・発泡粘弾性層とからなる制振性能付与型鋼板補強材において、当該熱硬化・発泡粘弾性層を構成する粘着付与剤について各々成分及び融点の異なる2種以上の粘着付与剤を用いると共に、当該熱硬化・発泡粘弾性層に繊維を添加してなる制振性能付与型鋼板補強材。
【効果】自動車ボディの凹みやペコペコ感の防止やドアの締まり音の低減化などの要請に応えることができる制振機能と鋼板補強機能との両性能が備わった拘束層と熱硬化・発泡粘弾性層との2層構造からなる低価格の制振性能付与型鋼板補強材が得られ、自動車天井等の背面部にも施工可能で、発泡タイプのものであるにも係わらず、当該背面部でも脱落などの不具合を生ぜずに施工が可能で、当該背面部への施工に際して優れた耐熱性や接着力を発揮させることができ、電着塗装後も施工可能で、貯蔵安定性が良好で適宜期間保存後であっても耐衝撃性が低下したりするという問題を生じない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振性能付与型鋼板補強材に関し、特に、発泡タイプであるにも係わらず、車両の天井に施工でき、又、車両の製造工程における電着塗装前後において施工可能な制振性能付与型鋼板補強材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車にあっては、重量の軽減化、鋼板強度の進歩によってその厚さが薄くなっている。その為、自動車ボディの凹みやペコペコ感の防止、ドアの締まり音の低減化などの要請から、当該鋼板に対し鋼板補強材を貼着することが行われている。
鋼板補強材としては、エポキシ樹脂やゴムなどからなる熱硬化・発泡粘弾性層の表皮にアルミニウム箔やガラスクロスなどの拘束層(当該熱硬化・発泡粘弾性層に強靱性を付与等の目的で施用)を重層したもの等がある。当該鋼板補強材としては、価格の面などからは、当該拘束層と熱硬化・発泡粘弾性層との2層構造が望ましい。従来例では、制振性と補強性とを両立させる為に、少なくとも3層構造を必要としている場合が多い(特開平7−68696号公報、特開2005−186303号公報、特開平8−35538号公報)。
当該鋼板補強材は、当該熱硬化・発泡粘弾性層における硬化度を上げる程、補強効果は高まる反面、振動減衰効果が低下して、ドア締まり音や雨音などへの低減効果が損なわれて行く。又、制振材のみの施工では、制振効果は高まる反面、補強効果が極めて低いものになる。車種によっては、ドア一枚に鋼板補強シ−トと制振シ−トとを併用する場合もあるが、これらの制振機能と鋼板補強機能との両方性能が備わっていることが望ましいが、一般的には、なかなか両者を兼備させることは難しい。
自動車にあっては、ドアやクオ−タ−やル−フ(天井)等の垂直部や背面部があり、上記のように、ドアのような垂直部に鋼板補強材を貼着する必要がある一方で、天井のような背面部でも、例えば、洗車時などのべこべこ感の防止や雨音対策やボディへの伝播音対策という補強・制振上の要請から鋼板補強材の施工が行われており、発泡タイプのものが施工されている場合があるが、当該背面部へ施工するには、ドアのような垂直部への施工に比較しても優れた耐熱性や接着力が要求され、当該発泡タイプの鋼板補強材では、脱落などの不具合があり、天井のル−フパネルでは、一般的に、無発泡タイプのものが選択されていることが多かった。
一方、自動車に当該鋼板補強材を貼着させるには、その塗装乾燥ラインによる加熱乾燥炉の熱を利用して発泡、熱融着させるのが効率的である。自動車メ−カの製造ラインは、鋼板面の防錆油の洗浄処理、化成処理、電着塗装という工程を経て各種塗装作業工程になるが、鋼板補強材は外板部の裏側に貼着させる為に、ボディ組立前の段階で貼着させる必要があり、洗浄脱脂の前若しくは後に貼着させるのが適当である。そこで、一般的には、電着塗装前後では、殆んど100%近くの割合で、電着塗装前に行なわれているのが現状であるが、前記のような天井に、鋼板補強材のような部材を施工する場合には、その圧着力の均一化を図るためには、圧着の為の自動機による施工が望まれるが、当該自動機の設置は、自動車のラインにおけるスペ−スなどの関係上、電着塗装前では難しく、電着施工後に設置されることになり、その要請から、電着塗装後も施工可能なタイプの鋼板補強材も一部提案されているが、電着塗装前後では、その施工温度差が30℃前後もあり、電着塗装後も施工可能なタイプの鋼板補強材としては、低温硬化の処方を組まなければならない。しかし、そうした場合、当該低温向けの材料は温度が上昇するとその貯蔵安定性に難点を包蔵することになり、適宜期間保存後に当該材料を鋼板補強材の構成部材として使用すると、耐衝撃性が低下したりするという問題を生じる。
当該鋼板補強材では、マイカなどの高アスペクト比顔料や特殊変性アスファルトを価格や強度等の面から添加することがあるが、当該マイカなどの高アスペクト比顔料や特殊変性アスファルトの添加は、天井などの背面部への初期の焼付性は良くても、耐衝撃性試験結果において、外部より衝撃が加わると、浮き部や剥がれ部が発生して、充分な制振性能及び補強性能を発揮できなかったり、又、適宜期間保存後には耐衝撃性が低下するという問題もある。
【0003】
【特許文献1】特開平7−68696号公報、特開2005−186303号公報、特開平8−35538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する欠点を解消し、又、上記要請に答えることの出来る技術を提供することを目的としたものである。
本発明の他の目的や新規な特徴については本件明細書及び図面の記載からも明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特許請求の範囲は、次の通りである。
(請求項1) 拘束層と熱硬化・発泡粘弾性層とからなる制振性能付与型鋼板補強材において、当該熱硬化・発泡粘弾性層を構成する粘着付与剤について各々成分及び融点の異なる2種以上の粘着付与剤を用いると共に、当該熱硬化・発泡粘弾性層に繊維を添加してなることを特徴とする制振性能付与型鋼板補強材。
(請求項2) 粘着付与剤が、テルペン系樹脂と脂肪族系石油樹脂と芳香族系石油樹脂とからなることを特徴とする、請求項1に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
(請求項3) 繊維が、ポリエステル系繊維であることを特徴とする、請求項1又は2に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
(請求項4) 繊維が、 ポリエステル系繊維及びガラス繊維であることを特徴とする、請求項1又は2に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
(請求項5)熱硬化・発泡粘弾性層が、(a)数平均分子量500〜20000のゴムと(b)熱可塑性エラストマ−と(c)粘着付与剤と(d)発泡剤と(e)無機質充填材と(f)軟化剤と(g)架橋剤とを配合してなることを特徴とする、請求項1、2、3、又は4に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
(請求項6)熱硬化・発泡粘弾性層における(a)数平均分子量500〜20000のゴムの一部を他の液状ゴムで置換してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
(請求項7)制振性能付与型鋼板補強材が、車両の天井に施工できることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
(請求項8)制振性能付与型鋼板補強材が、車両の電着塗装後でも施工できることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自動車ボディの凹みやペコペコ感の防止、ドアの締まり音の低減化などの要請に応えることができる制振機能と鋼板補強機能との両性能が備わった制振性付与型鋼板補強材を提供することができ、特に、拘束層と熱硬化・発泡粘弾性層との2層構造からなる低価格の制振性能付与型鋼板補強材が得られる。
又、本発明によれば、その制振性付与型鋼板補強材は、自動車のドア等の垂直部に限らずに、ル−フ(天井)等の背面部にも施工可能で、而も、発泡タイプのものであるにも係わらず、当該背面部でも脱落などの不具合を生ぜずに施工が可能で、当該背面部への施工に際して優れた耐熱性や接着力を発揮させることができる。その為、天井のル−フパネルにおいて、洗車時などのべこべこ感の防止や雨音対策やボディへの伝播音対策という補強・制振上の両要請を充足することができる制振性能付与型鋼板補強材を得ることができる。
更に、本発明によれば、電着塗装後も施工可能な制振性付与型鋼板補強材を提供することができ、電着塗装後も施工可能なタイプの鋼板補強材として低温硬化の処方を組んでも、その貯蔵安定性は良好で、適宜期間保存後であっても、耐衝撃性が低下したりするという問題を生じない。
更に又、本発明によれば、マイカなどの高アスペクト比顔料や特殊変性アスファルトを添加した場合でも、天井などの背面部への初期の焼付性は良く、又、外部より衝撃が加わっても、浮き部や剥がれ部が発生せず、充分な制振性能及び補強性能を発揮し、又、適宜期間保存後にも耐衝撃性が低下することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、熱硬化・発泡粘弾性層を構成する粘着付与剤について各々成分及び融点の異なる2種以上の粘着付与剤を用いると共に、当該熱硬化・発泡粘弾性層に繊維(繊維状物)を添加することにより、拘束層と熱硬化・発泡粘弾性層との2層構造からなる制振性能付与型鋼板補強材が得られ、制振機能と鋼板補強機能との両性能が備わり、発泡タイプのものであるにも係わらずにル−フ(天井)等の背面部にも施工可能で、又、電着塗装後も施工可能な制振性付与型鋼板補強材を得ることができる。又、マイカなどの高アスペクト比顔料や特殊変性アスファルトを添加した場合でも、天井などの背面部への初期の焼付性は良く、又、外部より衝撃が加わっても、浮き部や剥がれ部が発生せず、充分な制振性能及び補強性能を発揮し、又、適宜期間保存後にも耐衝撃性が低下することを防止できる。
【0008】
本発明における当該拘束層としては、出来るだけ軽量で、薄膜であり、熱硬化・発泡粘弾性層に強靱性を付与出来、しかも、当該熱硬化・発泡粘弾性層と密着一体化しやすい材料が好ましい。具体的には、ガラスクロス、カ−ボンファイバ−、有機系合成樹脂繊維不織布、アルミニウムやスチ−ル、各種金属の合金類等の金属箔等が例示できる。上記の内、コスト、重量、密着性、強度を勘案するとガラスクロス、アルミニウム箔が特に好ましい。当該ガラスクロス等は、少なくとも一種以上が使用される。
【0009】
本発明における当該熱硬化・発泡粘弾性層は、(a)数平均分子量500〜20000のゴムと(b)熱可塑性エラストマ−と(c)粘着付与剤と(d)発泡剤と(e)無機質充填材と(f)軟化剤と(g)架橋剤とを有して構成されるが、以下に記載のように、繊維や当該数平均分子量500〜20000のゴムを一部置換する他の液状ゴム等が適宜配合され、又、軟化剤のように必要に応じて適宜配合されるものもあり、当該構成成分が全体で100重量%となるように配合されるとよい。
【0010】
当該熱硬化・発泡粘弾性層に使用される(a)数平均分子量500〜20000のゴム
としては、ポリブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム、ポイソプレンゴム、クロロプレンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム等の共役ジエン系重合体が挙げられる。特に−OH、−COOH、−NH、−NCO、−CH=CH等の官能基を有するゴムが挙げられる。特にポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソブチレン−イソプレンゴムが推奨される。
その数平均分子量は、500〜20000、好ましくは1000〜10000である。数平均分子量が500未満であると鋼板への粘着強度が低下する虞れがあり、20000を超えると形状追従性が悪くなる虞れがある。
これらのゴム成分の配合量は、5〜30重量%、好ましくは7〜15重量%である。ゴム成分の配合量が5重量%未満であると、粘着性、形状追従性が低下する。30重量%を超えて配合すると架橋前の組成物の粘度が低くなり、鋼板への粘着強度が低下する。
【0011】
本発明では、当該熱硬化・発泡粘弾性層に使用される(a)数平均分子量500〜20000のゴムの一部を他の液状ゴムで置換すると貯蔵安定性が向上し、適宜期間保存後でも、充分な耐衝撃性が得られることが判った。
当該液状ゴムとしては、例えば、分子量45000の液状ブタジエン変性ゴムが例示される。
当該液状ゴムは、数平均分子量500〜20000のゴムの5〜50重量%を置換えることができる。当該液状ゴムの配合量が5重量%未満であると、貯蔵安定性の向上による耐衝撃性効果が充分となり、50重量%を超えて配合すると当該効果が飽和し又経済的ではない。
【0012】
当該熱硬化・発泡粘弾性層に使用される(b)成分の熱可塑性エラストマーとしては、1,2−ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体及びこれらの水添物、アイオノマ−、ポリオレフインのカルボキシ変性体等が挙げられる。上記熱可塑性エラストマ−にエポキシ樹脂、ポリイソシアネ−ト等を併用したものも使用できる。上記のうち1,2−ポリブタジエン、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体、特にそのブロック共重合体及びポリオレフインの酸変性体及びこれらにエポキシ樹脂、ポリイソシアネ−トを配合したものが好ましい。1,2−ポリブタジエンとしては、1,2結合含有量が70%以上、好ましくは85%以上で、結晶化度が5%以上、好ましくは10〜40%のものが推奨される。分子量は混練加工性及び架橋発泡性を得るためには、[η](トルエン30℃)が0.5dl/gr以上であることが好ましい。
当該(b)成分の熱可塑性エラストマーの配合量は、5〜30重量%、好ましくは7〜15重量%である。当該(b)成分の熱可塑性エラストマーの配合量が5重量%未満であると、粘着性、形状追従性が低下する。30重量%を超えて配合すると架橋前の組成物の粘度が低くなり、鋼板への粘着強度が低下する。
【0013】
当該熱硬化・発泡粘弾性層に使用される(c)成分の粘着付与剤としては、テルペン系樹脂、脂肪族及び芳香族系石油樹脂、ロジン樹脂、クマロンインデン樹脂が例示できる。
当該粘着付与剤は、各々成分及び融点の異なる2種以上の粘着付与剤を用いる。
当該粘着付与剤の併用例としては、テルペン系樹脂と脂肪族系石油樹脂と芳香族系石油樹脂との組合せが推奨される。
当該粘着付与剤が、1種の場合、例えば、脂肪族系石油樹脂が単独の場合、天井などの背面部への初期の焼付性は良くても、後述の耐衝撃性試験結果において、外部より衝撃が加わると、浮き部や剥がれ部が発生して、充分な制振性能及び補強性能を発揮できず、又、適宜期間保存後には耐衝撃性が低下する。
当該粘着付与剤の配合量は、10〜25重量%が好ましい。10重量%未満の配合量であると鋼板及び拘束層への粘着性が低下する。一方、25重量%を超えて配合した場合、強度が低下する。
【0014】
上記のように、本発明では、当該熱硬化・発泡粘弾性層を構成する粘着付与剤について各々成分及び融点の異なる2種以上の粘着付与剤を用いると共に、当該熱硬化・発泡粘弾性層に繊維を添加する。
上記のように、当該粘着付与剤が、1種の場合、例えば、脂肪族系石油樹脂が単独の場合、天井などの背面部への初期の焼付性は良くても、後述の耐衝撃性試験結果において、外部より衝撃が加わると、浮き部や剥がれ部が発生して、充分な制振性能及び補強性能を発揮できず、又、適宜期間保存後には耐衝撃性が低下する。又、1種でなく、各々成分及び融点の異なる2種以上の粘着付与剤を併用しても、同様に、天井などの背面部への初期の焼付性は良くても、後述の耐衝撃性試験結果において、外部より衝撃が加わると、浮き部や剥がれ部が発生して、充分な制振性能及び補強性能を発揮できず、又、適宜期間保存後には耐衝撃性が低下するが、ここに、繊維を添加すると、耐衝撃性を向上させることが判った。又、マイカなどの高アスペクト比顔料や特殊変性アスファルトを添加した場合でも、繊維を添加すると、天井などの背面部への初期の焼付性が良く、外部より衝撃が加わっても、浮き部や剥がれ部が発生せず、充分な制振性能及び補強性能を発揮し、又、適宜期間保存後にも耐衝撃性が低下することを防止できることが判った。
当該繊維(繊維状物)の例としては、ポリエステル系繊維、ガラス繊維が例示できる。該ポリエステル系繊維とガラス繊維とを組み合わせると、より一層上記の効果を向上させることができる
当該繊維の配合量は、1〜10重量%が好ましい。1重量%未満の配合量であると耐衝撃性を向上させる効果が不充分となり、一方、10重量%を超えて配合した場合、当該効果が飽和し又経済的ではない。
【0015】
当該熱硬化・発泡粘弾性層に使用される(d)成分の発泡剤としては、公知の無機あるいは有機発泡剤が使用できる。重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ジニトロソテレフタルアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、スルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド等を挙げることができる。尿素、尿素誘導体等の発泡助剤との併用もできる。上記のうち好ましいのはアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミンの各々あるいは併用と、尿素、尿素誘導体等の発泡助剤との組み合わせである。
これら(d)成分の配合量としては、1〜10重量%、好ましくは4〜7重量%である。1重量%未満の配合量の場合所望の発泡効果が得られない。10重量%を超えて配合した場合、発泡剤から発生するガスにより良好な外観が得られない。
当該発泡剤としては、上記のような有機発泡剤と低沸点炭化水素を熱可塑性高分子殻で包み込んだ発泡剤である熱膨張性マイクロカプセルとの併用が推奨される。当該併用により、天井などの断熱性を向上させることができる。
当該有機発泡剤と熱膨張性マイクロカプセルとの併用割合は、有機発泡剤:熱膨張性マイクロカプセル=1:1〜2が好ましく、当該併用割合を逸脱する場合には、当該断熱性向上効果が少なくなる。
【0016】
当該熱硬化・発泡粘弾性層に使用される(e)成分の無機質充填材としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク、クレー、ケイ酸、酸化チタン、カ−ボンブラック等の顔料類、カーボン繊維、コットンフロック等の繊維状充填材等が使用できる。
本発明では、当該熱硬化・発泡粘弾性層において各々成分及び融点の異なる2種以上の粘着付与剤を用いると共に、繊維を添加することにより、マイカやカ−ボンブラック等の顔料類を通常の当該充填材に加えた場合でも、耐衝撃性を向上させることができる。
当該無機質充填材の配合量としては、10〜60重量%、好ましくは10〜40重量%である。10重量%未満の配合量であると混練性に劣り、また全体の価格が上昇するためコスト的に不利である。一方、60重量%を超えて配合した場合、粘弾性性及び強度が低下する。
【0017】
当該熱硬化・発泡粘弾性層に使用される(f)成分の軟化剤としては、一般にプロセスオイル、エクステンダ−オイルと呼ばれる鉱物油系のゴム用軟化剤が挙げられる。上記他成分との相溶性の点からナフテン系及び芳香族系のものが好ましい。その他、アタクチックポリプロピレン、アスファルト等の瀝青質物が例示できる。
当該(f)成分の配合量としては、0〜200重量部、好ましくは10〜150重量部である。200重量部を超えて配合した場合、混練作業性が低下する。
本発明では、変性アスファルトを添加した系でも、背面焼付け後の耐衝撃性を向上させることができる。
【0018】
当該熱硬化・発泡粘弾性層に使用される(g)成分の架橋剤としては、硫黄、又は加熱により硫黄を生成する化合物とか架橋促進剤との組み合わせ、有機過酸化物、イソシアネ−ト化合物、アミン系化合物等が挙げられる。紫外線、電子線、X線等により架橋する方法も使用できる。硫黄としては粉末硫黄、コロイド硫黄等一般的な硫黄が使用でき、加熱により硫黄を発生する化合物としてはテトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフイド等が例示できる。
当該(g)成分の配合量としては、1〜10重量%、好ましくは3〜8重量部である。1重量%未満の配合量の場合、架橋度が不足して補強効果が得られない。10重量%を超えて配合した場合、脆弱となり実用性に劣る。
【0019】
当該熱硬化・発泡粘弾性層を製造するには、上記各配合物をデイゾルバ−、バンバリーミキサ−、オ−プンニ−ダ−、真空ニ−ダ−等の従来公知の混合分散機によって分散混練後、カレンダ−ロール、押出成形機等の加工機械によってシ−ト状に加工することにより製造される。
【0020】
制振性付与型鋼板補強材は、拘束層と熱硬化・発泡粘弾性層とを圧着一体化することにより得ることができる。制振性付与型鋼板補強材は、各種の生産機械、輸送機械、産業用機械分野で使用でき、例えば、自動車分野では、自動車の施工部位に応じてプレス機等の従来公知の加工機により打ち抜き加工され、主として自動車製造工場のボディショップと呼ばれる部署において貼着作業により施工される。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を挙げ本発明のより詳細な理解に供する。当然のことながら本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
【0022】
1)拘束層として厚さ0.2mmのガラスクロス。
2)熱硬化・発泡粘弾性層として、合計が100重量部となるように、
数平均分子量2000のゴム(ポリブタジエン系)12重量部、熱可塑性エラストマー(ポリブタジエン系)14重量部、充填材類(炭酸カルシウム等)23重量部、軟化材(パラフイン又はナフテン系オイル等)3重量部、硬化剤(硫黄)4.5重量部、
加硫促進剤2.5重量部、発泡剤類2重量部、発泡助剤2重量部、カーボンブラック1重量部、高アスペクト比顔料(マイカ等)10重量部、特殊変性アスファルト5重量部、脂肪族系石油樹脂(融点:100℃)10重量部、芳香族系石油樹脂(融点:90℃)5重量部、テルペン樹脂(融点:85℃)、ポリエステル系カット繊維1重量部とを加圧式ニーダーにて混合、混練しカレンダーロールにて厚さ1.8mmに形成されたもの。
これら上記1)の拘束層と2)の熱硬化・発泡粘弾性層とを圧着し、片側には離型紙を貼付けた試料(制振補強シ−ト1)を作成し、当該試料の剥離紙を剥がして、後述の各試験に供した。
実施例2
【0023】
1)拘束層として厚さ0.2mmのガラスクロス。
2)熱硬化・発泡粘弾性層として、合計が100重量部となるように、
数平均分子量2000のゴム(ポリブタジエン系)12重量部、熱可塑性エラストマ−(ポリブタジエン系)14重量部、充填材類(炭酸カルシウム等)23重量部、軟化材(パラフイン又はナフテン系オイル等)3重量部、硬化剤(硫黄)4.5重量部、
加硫促進剤2.5重量部、発泡剤2重量部、発泡助剤2重量部、カ−ボンブラック1重量部、高アスペクト比顔料(マイカ等)10重量部、特殊変性アスファルト5重量部、脂肪族系石油樹脂(融点:100℃)10重量部、芳香族系石油樹脂(融点:90℃)5重量部、テルペン樹脂(融点:85℃)、ポリエステル系カット繊維1重量部、分子量45000の液状ブタジエン変性ゴム5重量部とを加圧式ニーダーにて混合、混練しカレンダーロ−ルにて厚さ1.8mmに形成されたもの。
これら上記1)の拘束層と2)の熱硬化・発泡粘弾性層とを圧着し、片側には離型紙を貼付けた試料(制振補強シ−ト2)を作成し、当該試料の剥離紙を剥がして、後述の各試験に供した。
実施例3
【0024】
1)拘束層として厚さ0.2mmのガラスクロスに代えて厚さ100μのアルミニウム箔。
2)熱硬化・発泡粘弾性層として、合計が100重量部となるように、
数平均分子量2000のゴム(ポリブタジエン系)12重量部、熱可塑性エラストマー(ポリブタジエン系)14重量部、充填材類(炭酸カルシウム等)23重量部、軟化材(パラフイン又はナフテン系オイル等)3重量部、硬化剤(硫黄)4.5重量部、
加硫促進剤2.5重量部、発泡剤2重量部、発泡助剤2重量部、カーボンブラック1重量部、高アスペクト比顔料(マイカ等)10重量部、特殊変性アスファルト5重量部、脂肪族系石油樹脂(融点:100℃)10重量部、芳香族系石油樹脂(融点:90℃)5重量部、テルペン樹脂(融点:85℃)、ポリエステル系カット繊維1重量部、分子量45000のゴム(ポリブタジエン変性)5重量部とを加圧式ニーダーにて混合、混練しカレンダーロールにて厚さ1.8mmに形成されたもの。
これら上記1)の拘束層と2)の熱硬化・発泡粘弾性層とを圧着し、片側には離型紙を貼付けた試料(制振補強シート2)を作成し、当該試料の剥離紙を剥がして、後述の各試験に供した。
比較例1
【0025】
1)拘束層として厚さ0.2mmのガラスクロス。
2)熱硬化・発泡粘弾性層として、合計が100重量部となるように、
数平均分子量2000のゴム(ポリブタジエン系)12重量部、熱可塑性エラストマー(ポリブタジエン系)19重量部、充填材類(炭酸カルシウム等)34重量部、軟化材(パラフイン又はナフテン系オイル等)3重量部、硬化剤(硫黄)4.5重量部、
加硫促進剤2.5重量部、発泡剤2重量部、発泡助剤2重量部、カーボンブラック1重量部、脂肪族系石油樹脂(融点:100℃)20重量部とを加圧式ニーダーにて混合、混練しカレンダーロールにて厚さ1.8mmに形成されたもの。
これら上記1)の拘束層と2)の熱硬化・発泡粘弾性層とを圧着し、片側には離型紙を貼付けた試料(制振補強シート3)を作成し、当該試料の剥離紙を剥がして、後述の各試験に供した。
比較例2
【0026】
1)拘束層として厚さ0.2mmのガラスクロス。
2)熱硬化・発泡粘弾性層として、合計が100重量部となるように、
数平均分子量2000のゴム(ポリブタジエン系)12重量部、熱可塑性エラストマー(ポリブタジエン系)14重量部、充填材類(炭酸カルシウム等)24重量部、軟化材(パラフイン又はナフテン系オイル等)3重量部、硬化剤(硫黄)4.5重量部、
加硫促進剤2.5重量部、発泡剤2重量部、発泡助剤2重量部、カーボンブラック1重量部、高アスペクト比顔料(マイカ等)10重量部、特殊変性アスファルト5重量部、脂肪族系石油樹脂(融点:100℃)20重量部とを加圧式ニーダーにて混合、混練しカレンダーロールにて厚さ1.8mmに形成されたもの。
これら上記1)の拘束層と2)の熱硬化・発泡粘弾性層とを圧着し、片側には離型紙を貼付けた試料(制振補強シート4)を作成し、当該試料の剥離紙を剥がして、後述の各試験に供した。
比較例3
【0027】
1)拘束層として厚さ0.2mmのガラスクロス。
2)熱硬化・発泡粘弾性層として、合計が100重量部となるように、
数平均分子量2000のゴム(ポリブタジエン系)12重量部、熱可塑性エラストマー(ポリブタジエン系)14重量部、充填材類(炭酸カルシウム等)24重量部、軟化材(パラフイン又はナフテン系オイル等)3重量部、硬化剤(硫黄)4.5重量部、
加硫促進剤2.5重量部、発泡剤2重量部、発泡助剤2重量部、カーボンブラック1重量部、高アスペクト比顔料(マイカ等)10重量部、特殊変性アスファルト5重量部、脂肪族系石油樹脂(融点:100℃)10重量部、芳香族系石油樹脂(融点:90℃)5重量部、テルペン樹脂(融点:85℃)5重量部とを加圧式ニーダーにて混合、混練しカレンダーロールにて厚さ1.8mmに形成されたもの。
これら上記1)の拘束層と2)の熱硬化・発泡粘弾性層とを圧着し、片側には離型紙を貼付けた試料(制振補強シート5)を作成し、当該試料の剥離紙を剥がして、後述の各試験に供した。
【0028】
試験方法
(1)補強性
150X25mmの試料を150X25X0.8mm(SPCC−SD鋼板)の試験用鋼板の中心に貼り付け,150±2℃に調整した熱風乾燥器内で、30分間焼付け、常温まで放冷させたものを試験片とする。次に,当該試験片の温度を20±2℃に調整後,図1に示すようにして曲げ試験を行い、試験片が1mm変位した際の荷重(N)を測定する。
尚、クロスヘッドの速度は,1mm/分である。
(2)背面焼付け性
試料を50X100mmに裁断し、試験用鋼板(200X300X0.8mm)の中央に載せ、5.9KPaの圧力が制振補強シート全体に掛かる状態で5秒間圧着する。
次に,鋼板を試料が背面になるように、24時間放置後、そのまま150X30±2分間焼付けて、試料の状態を確認する。
(3)耐衝撃性
上記の(2)にて焼付けを行った試験片を20℃まで放冷し、図2のスラミング試験機に取り付け、70度の角度から衝撃を加える。試料に剥がれ,ズレ、浮きなどを生じなければ、同じ角度で10回まで衝撃を与える。この間に試験片に異常がなければ、角度を10度上げ,同一試料で同じ試験を10回まで繰り返す。剥がれ,ズレ、浮きのいずれかが発生したときの衝撃角度および回数を確認する。
(4)制振性
共振法(日本音響材料協会 出版「騒音対策ハンドブック」438頁参照)により、20℃、40℃、60℃の各温度における損失係数ηを測定した。なお、損失係数ηはその値が大きい程測定材料の制振性が高いとされ、0.05以上の値であれば制振性があると判断される。
【0029】
試験結果を表1に示す。









【0030】
【表1】























【0031】
結果
比較例1〜3の制振補強シート3〜5は、背面部への初期の焼付け性は問題がないが,耐衝撃性試験結果が示すように、外部より衝撃が加わると,浮き部や剥がれ部が発生して、充分な制振性能および補強性能を発揮することができない。特に,35℃X85%湿度下で1ヶ月保存後には、耐衝撃性がさらに低下する結果となった。
実施例1に示すように,ポリエステル系カット繊維を配合すると,耐衝撃性が大きく向上することが判る。
実施例2に示すように,数平均分子量2000の液状ポリブタジエンの一部を分子量45000のゴム(ポリブタジエン変性)で置き換えると,貯蔵安定性が向上し,35℃X85%湿度(RH)下で1ヶ月(30日)保存後でも、充分な耐衝撃性能が得られることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、自動車のほか車両全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例における試験方法(補強性)の説明図である。
【図2】本発明の実施例における試験方法(耐衝撃性)の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 試料
2 試験用鋼板
3 荷重
4 スラミング試験機
5 試験片
6 角度指示板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拘束層と熱硬化・発泡粘弾性層とからなる制振性能付与型鋼板補強材において、当該熱硬化・発泡粘弾性層を構成する粘着付与剤について各々成分及び融点の異なる2種以上の粘着付与剤を用いると共に、当該熱硬化・発泡粘弾性層に繊維を添加してなることを特徴とする制振性能付与型鋼板補強材。
【請求項2】
粘着付与剤が、テルペン系樹脂と脂肪族系石油樹脂と芳香族系石油樹脂とからなることを特徴とする、請求項1に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
【請求項3】
繊維が、ポリエステル系繊維であることを特徴とする、請求項1又は2に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
【請求項4】
繊維が、 ポリエステル系繊維及びガラス繊維であることを特徴とする、請求項1又は2に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
【請求項5】
熱硬化・発泡粘弾性層が、(a)数平均分子量500〜20000のゴムと(b)熱可塑性エラストマ−と(c)粘着付与剤と(d)発泡剤と(e)無機質充填材と(f)軟化剤と(g)架橋剤とを配合してなることを特徴とする、請求項1、2、3、又は4に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
【請求項6】
熱硬化・発泡粘弾性層における(a)数平均分子量500〜20000のゴムの一部を他の液状ゴムで置換してなることを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
【請求項7】
制振性能付与型鋼板補強材が、車両の天井に施工できることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6に記載された制振性能付与型鋼板補強材。
【請求項8】
制振性能付与型鋼板補強材が、車両の電着塗装後でも施工できることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載された制振性能付与型鋼板補強材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−30257(P2008−30257A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204224(P2006−204224)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000232542)日本特殊塗料株式会社 (35)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】