説明

制駆動力制御装置および制駆動力制御方法

【課題】燃費の向上と、操縦安定性および乗り心地性能との両立を図る。
【解決手段】推定した車体のバネ上挙動を構成する成分のうち、ピッチ変動成分の抑制度合いを他の成分の抑制度合いよりも高く設定した燃費向上モードと、車体のバネ上挙動を構成する成分を燃費向上モードと異なる抑制度合いで抑制するように設定した他のモードとに基づいて、車両の走行状況に対応する制駆動力の補正トルクを算出する補正トルク算出手段と、車両の走行状況に基づいて、燃費向上モードと他のモードとの少なくとも一方の重み係数を算出する重み係数算出手段と、燃費向上モードおよび他のモードの各補正トルクを、燃費向上モードと他のモードとの重みに応じて加算し、運転者の制駆動操作により定めた要求制駆動トルクに対する補正トルクの指令値を算出するトルク指令値算出手段とを有する制駆動力制御装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の制駆動力制御装置および制駆動力制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
特許文献1に記載の技術では、車輪のトレッド面に、グリップ力の高い特性を有する部分と、相反する特性である転がり抵抗の小さい特性を有する部分との2種類を設け、キャンバ角を調整して、これら2種類のトレッド面を使い分けている。
これにより、グリップ力の高い特性を利用した走行性能の確保と、転がり抵抗の小さい特性を利用した省燃費化との両立を図ることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−221990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、特殊なタイヤ(異なる特性のトレッドを持つタイヤ)とキャンバー角を調整する機構とを併せ持つ必要がある。また、特許文献1に記載の技術は、走行性能と省燃費化の両立のみを図るものであり、その他の性能について向上を図るものではない。さらに、走行路の状態と選択したトレッド面との関係によっては、乗り心地が低下したり、燃費が低下したりする可能性がある。
即ち、従来の技術においては、燃費の向上と、操縦安定性および乗り心地性能との両立を図ることが困難であった。
本発明の課題は、燃費の向上と、操縦安定性および乗り心地性能との両立を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、推定した車体のバネ上挙動を構成する成分のうち、ピッチ変動成分の抑制度合いを他の成分の抑制度合いよりも高く設定した燃費向上モードと、車体のバネ上挙動を構成する成分を前記燃費向上モードと異なる抑制度合いで抑制するように設定した他のモードとに基づいて、車両の走行状況に対応する制駆動力の補正トルクを算出する。そして、算出した各補正トルクを、車両の走行状況に基づいて定めた重み係数に応じて加算し、運転者の制駆動操作により定めた要求制駆動トルクに対する補正トルクの指令値を算出する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両の走行状況に応じて、燃費向上性能と他の性能との重視度合いを変化させて制駆動力制御を行うことができる。
したがって、燃費の向上と、操縦安定性および乗り心地性能との両立を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態の車両の概略構成を表す概念図である。
【図2】第1実施形態の車両の機能構成を表すブロック図である。
【図3】マイクロプロセッサが実行するプログラムの構成を表すブロック図である。
【図4】駆動力車体制振制御部16の構成を表すブロック図である。
【図5】駆動力車体制振制御部16の動作を表すフローチャートである。
【図6】サスストローク算出部21の構成を表すブロック図である。
【図7】サスストローク算出部21の動作を表すフローチャートである。
【図8】サスペンションのストローク量の算出方法を説明するための図である。
【図9】前輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
【図10】後輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
【図11】車両モデル26を説明するための図である。
【図12】乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を定めたマップを示す図である。
【図13】燃費向上モード(Aモード)と、乗り心地向上モードおよび操安性向上モード(BモードおよびCモード)との重み係数を定めたマップを示す図である。
【図14】燃費向上モードの作用を説明するための車両モデルを示す図である。
【図15】第1実施形態に係る制駆動力制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【図16】応用例における乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を定めたマップを示す図である。
【図17】応用例2における乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を定めたマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本実施形態の制駆動力制御装置は、後輪駆動式の自動車に搭載し、動力源であるエンジンが発生するトルクを制御することで、車体のばね上挙動を制御するものである。具体的には、本実施形態の制駆動力制御装置は、輪荷重変動の抑制、操舵応答性の向上、ロール挙動の抑制、および、燃費の向上を可能とするものである。
【0009】
(構成)
図1は、第1実施形態の車両の概略構成を表す概念図である。
図1に示すように、車両1は、操舵角センサ2、アクセル開度センサ3、ブレーキペダル踏力センサ4、および車輪速センサ5を備える。
操舵角センサ2は、ステアリングコラムに設置したものであり、ステアリングホイール6による操舵角δoを検出する。そして、操舵角センサ2は、ステアリングホイール6による操舵角δoの検出結果を表す検出信号を後述するエレクトロニックコントロールユニット(以下、適宜「ECU」と称する。)12に出力する。
【0010】
アクセル開度センサ3は、アクセルペダルに配設し、アクセル開度を検出する。アクセル開度とは、アクセルペダルの踏み込み量である。そして、アクセル開度センサ3は、アクセル開度の検出結果を表す検出信号をECU12に出力する。
ブレーキペダル踏力センサ4は、ブレーキペダルに設置したものであり、ブレーキペダルの踏力を検出する。そして、ブレーキペダル踏力センサ4は、ブレーキペダルの踏力の検出結果を表す検出信号をECU12に出力する。
【0011】
車輪速センサ5は、車輪5FL〜5RRそれぞれに設置したものであり、車輪5FL〜5RRそれぞれの車輪速VwFL〜VwRRを検出する。そして、車輪速センサ5は、車輪5FL〜5RRの車輪速VwFL〜VwRRを表す検出信号をECU12に出力する。
また、車両1は、ディファレンシャルギア7、エンジン8および変速機9を備える。
ディファレンシャルギア7は、後輪(駆動輪)5RL,5RRのそれぞれに設けたアクスルシャフト11間に設置したものであり、変速機9の出力軸を介して入力したエンジン8の回転を、それぞれの回転差を許容して左右の後輪に伝達する。
【0012】
エンジン8は、ECU12から入力する指令に応じてトルクを発生する。そして、エンジン8は、発生したトルクを出力軸の回転として変速機9に出力する。
変速機9は、エンジン8の出力軸の回転を、運転者がシフト操作によって設定したギア比に応じて変換し、ドライブシャフト10を介して後輪5RL,5RRに出力する。
さらに、車両1はECU12を備える。
【0013】
ECU12は、マイクロプロセッサからなる。マイクロプロセッサは、A/D変換回路、D/A変換回路、中央演算処理装置およびメモリ等から構成した集積回路を備える。そして、ECU12は、メモリが格納するプログラムに従って、センサ類2〜5が出力した検出信号に基づき、エンジン8に出力させるトルクを算出し、算出したトルクをエンジン8に出力させる。また、ECU12は、ブレーキペダル踏力センサ4から入力する検出信号に基づいて、ブレーキ液圧を制御することにより、車輪5FL〜5RRに設置したブレーキアクチュエータ5BFL〜5BRRによって制動力を付与する。
【0014】
図2は、第1実施形態の車両の機能構成を表すブロック図である。
図2に示すように、車両1は、制駆動トルク付与手段100、挙動推定手段101、補正トルク算出手段102、重み係数算出手段103、およびトルク指令値算出手段104を備える。
図2において、制駆動トルク付与手段100は、ブレーキアクチュエータ5BFL〜5BRR、ディファレンシャルギア7、エンジン8および変速機9に対応する。また、挙動推定手段101、補正トルク算出手段102、重み係数算出手段103およびトルク指令値算出手段104は、ECU12に対応する。
【0015】
制駆動トルク付与手段100は、後述するトルク指令値算出手段104が算出した補正トルクの指令値に基づいて、車輪に制動トルクあるいは駆動トルクを付与する。
挙動推定手段101は、車両の走行状況に基づいて、車体のばね上挙動を推定する。そして、挙動推定手段101は、車体のばね上挙動の推定結果を補正トルク算出手段102に出力する。
【0016】
補正トルク算出手段102は、挙動推定手段101が推定した車体のばね上挙動を構成する成分のうち、ピッチ変動成分の抑制度合いを他の成分の抑制度合いよりも高く設定した燃費向上モードと、車体のバネ上挙動を構成する成分を燃費向上モードと異なる抑制度合いで抑制するように設定した他のモード(例えば、後述する乗り心地向上モードおよび操安性向上モード)とに基づいて、車両の走行状況に対応する制駆動力の補正トルクを算出する。
【0017】
重み係数算出手段103は、車両の走行状況(車速やピッチ角速度等)に基づいて、燃費向上モードと他のモードとの重み係数を算出する。
トルク指令値算出手段104は、補正トルク算出手段102が算出した補正トルクに、重み係数算出手段103が算出した重み係数を乗算して加算することにより、最終的な補正トルクの指令値を算出する。そして、トルク指令値算出手段104は、算出した補正トルクの指令値を制駆動トルク付与手段100に出力する。
【0018】
図3は、マイクロプロセッサが実行するプログラムの構成を表すブロック図である。
ECU12は、マイクロプロセッサが実行するプログラムにより、図3の制御ブロックを構成する。この制御ブロックは、ドライバ要求トルク演算部13、加算器14、トルク指令値演算部15および駆動力車体制振制御部16を備える。
ドライバ要求トルク演算部13は、アクセル開度センサ3が出力した検出信号、およびブレーキペダル踏力センサ4が出力した検出信号に基づいてドライバ要求トルクを算出する。ドライバ要求トルクとは、運転者がエンジン8に要求する出力トルクである。ドライバ要求トルクは、エンジン8の回転軸におけるトルク値であるモータ端値で表す。そして、ドライバ要求トルク演算部13は、算出したドライバ要求トルクを加算器14および駆動力車体制振制御部16に出力する。
【0019】
なお、本実施形態では、アクセル開度センサ3が出力した検出信号、およびブレーキペダル踏力センサ4が出力した検出信号に基づいてドライバ要求トルクを算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、アクセル開度センサ3等、各種センサによる検出値そのものをドライバ要求トルクとする構成としてもよい。
【0020】
加算器14は、ドライバ要求トルク演算部13が出力したドライバ要求トルクに、駆動力車体制振制御部16が出力したドライバトルク補正値を加算する。これにより、ドライバ要求トルクを補正する。ドライバトルク補正値とは、ドライバ要求トルク、車輪速VwFL〜VwRR、エンジン回転数および操舵角δoに基づき、後述するように駆動力車体制振制御部16が算出する補正値である。そして、ドライバ要求トルク演算部13は、補正したドライバ要求トルクを補正後要求トルクとしてトルク指令値演算部15に出力する。
トルク指令値演算部15は、加算器14が出力した補正後要求トルク、およびVDC(Vehicle Dynamics Control)やTCS(Traction Control System)等の他のシステムの出力に基づいて、エンジン8に出力させるトルクを算出する。そして、トルク指令値演算部15は、算出したトルクを指令値としてエンジン8に出力する。
【0021】
図4は、駆動力車体制振制御部16の構成を表すブロック図である。
図5は、駆動力車体制振制御部16の動作を表すフローチャートである。
図4に示すように、駆動力車体制振制御部16は、入力変換部17、車体振動推定部18、トルク指令値算出部19およびモード重み係数算出部16Aを備える。
入力変換部17は、操舵角センサ2、アクセル開度センサ3、ブレーキペダル踏力センサ4および車輪速センサ5が出力した検出信号が表す情報を、車体振動推定部18で用いる車両モデル26の入力形式に変換する。具体的には、入力変換部17は、駆動トルク変換部20、サスストローク算出部21、上下力変換部22、車体速度推定部23、旋回挙動推定部24、および旋回抵抗推定部25を備える。
【0022】
駆動トルク変換部20は、ドライバ要求トルク演算部13が出力したドライバ要求トルクを読み込む(図5のステップS101)。続いて、駆動トルク変換部20は、読み込んだドライバ要求トルクに変速機9のギア比を乗算する。これにより、ドライバ要求トルクをモータ端値から駆動軸端値に変換する(図5のステップS102)。ここで、駆動軸端値とは、後輪5RL,5RRにおけるトルク値である。そして、駆動トルク変換部20は、乗算結果を駆動トルクTwとして車体振動推定部18に出力する。ここで、駆動トルクTwとは、ドライバ要求トルクの駆動軸端値である。
【0023】
図6は、サスストローク算出部21の構成を表すブロック図である。
図7は、サスストローク算出部21の動作を表すフローチャートである。
サスストローク算出部21は、車輪速センサ5が出力した検出信号、つまり、車輪速VwFL〜VwRRを表す検出信号に基づいて、前後輪5FL〜5RRのサスペンションのストローク量Zf、Zrおよびストローク速度dZf、dZrを算出する。具体的には、図6に示すように、サスストローク算出部21は、平均前輪速演算部37、平均後輪速演算部38、前輪用バンドパスフィルタ処理部39、後輪用バンドパスフィルタ処理部40、前輪サスストローク算出部41および後輪サスストローク算出部42を備える。
【0024】
平均前輪速演算部37は、前輪5FL、5FRの車輪速センサ5が出力した検出信号を読み込む(図5のステップS103、図7のステップS201)。続いて、平均前輪速演算部37は、読み込んだ検出信号に基づいて平均前輪速VwF=(VwFL+VwFR)/2を算出する(図7のステップS202)。そして、平均前輪速演算部37は、算出した平均前輪速VwFを前輪用バンドパスフィルタ処理部39に出力する。
【0025】
平均後輪速演算部38は、後輪5RL、5RRの車輪速センサ5が出力した検出信号を読み込む(図5のステップS103、図7のステップS201)。続いて、平均後輪速演算部38は、読み込んだ後輪速VwRL、VwRRに基づいて平均後輪速VwR=(VwRL+VwRR)/2を算出する(図7のステップS202)。そして、平均後輪速演算部38は、算出した平均後輪速VwRを後輪用バンドパスフィルタ処理部40に出力する。
【0026】
前輪用バンドパスフィルタ処理部39は、平均前輪速演算部37が出力した平均前輪速VwFから車体共振周波数付近の成分のみを抽出する。そして、前輪用バンドパスフィルタ処理部39は、抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwFを前輪サスストローク算出部41、および後輪サスストローク算出部42に出力する(図7のステップS203)。
【0027】
後輪用バンドパスフィルタ処理部40は、平均後輪速演算部38が出力した平均後輪速VwRから車体共振周波数付近の成分のみを抽出する。そして、後輪用バンドパスフィルタ処理部40は、抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwRを前輪サスストローク算出部41、および後輪サスストローク算出部42に出力する(図7のステップS203)。
このように、本実施形態では、平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから車体共振周波数付近の成分fVwF、fVwRのみを抽出するようにした。それゆえ、車両1全体の加減速による車輪速変動やノイズ成分を平均前輪速VwFおよび平均後輪速VwRから除去でき、車体振動を表す車輪速成分のみを抽出することができる。
【0028】
図8は、サスペンションのストローク量の算出方法を説明するための図である。
図9は、前輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
図10は、後輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフである。
前輪サスストローク算出部41は、前輪用バンドパスフィルタ処理部39が抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwFに基づいて、前輪5FL、5FRの前後方向変位Xtfを算出する。続いて、前輪サスストローク算出部41は、算出した前後方向変位Xtfに時間微分を行って時間微分値dXtfを算出する。続いて、前輪サスストローク算出部41は、算出した前後方向変位Xtfおよび時間微分値dXtfに基づき、下記(1)(2)式に従ってサスペンションのストローク量Zfおよびストローク速度dZfを算出する。そして、前輪サスストローク算出部41は、算出結果を上下力変換部22に出力する。
【0029】
Zf=KgeoF・Xtf (1)
dZf=KgeoF・dXtf (2)
ここで、KgeoFは、図9の前輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフの原点付近における勾配である。図9のグラフは、横軸が前輪5FL、5FRの前後方向変位Xtfを表し、縦軸が前輪5FL、5FRの上方における車体の上下変位Zfを表し、前後方向変位Xtfと車体の上下変位Zfとの関係を表すグラフである。
【0030】
後輪サスストローク算出部42は、後輪用バンドパスフィルタ処理部40が抽出した車体共振周波数近傍振動成分fVwRに基づいて、後輪5RL、5RRの前後方向変位Xtrを算出する。続いて、後輪サスストローク算出部42は、算出した前後方向変位Xtrに時間微分を行って時間微分値dXtrを算出する。続いて、後輪サスストローク算出部42は、算出した前後方向変位Xtrおよび時間微分値dXtrに基づき、下記(3)(4)式に従ってサスペンションのストローク量Zrおよびストローク速度dZrを算出する。そして、前輪サスストローク算出部41は、算出結果を上下力変換部22に出力する。
【0031】
Zr=KgeoR・Xtr (3)
dZr=KgeoR・dXtr (4)
ここで、KgeoRは、図10の後輪サスペンションジオメトリ特性を表すグラフの原点付近における勾配である。図10のグラフは、横軸が後輪5RL、5RRの前後方向変位Xtrを表し、縦軸が後輪5RL、5RRの上方における車体の上下変位Zrを表し、前後方向変位Xtrと車体の上下変位Zrとの関係を表すグラフである。
【0032】
図4に戻り、上下力変換部22は、サスストローク算出部21が出力したストローク量Zfにばね定数Kfを乗算するとともに、サスストローク算出部21が出力したストローク速度dZfに減衰係数Cfを乗算する。ここで、ばね定数Kfとは、前輪5FL、5FRのサスペンションのばね定数である。また、減衰係数Cfとは、前輪5RL、5FRのサスペンション(ショックアブソーバ)の減衰係数である。そして、上下力変換部22は、これらの乗算結果の合計値を前輪5FL、5FRの上下力Fzfとして車体振動推定部18に出力する(図5のステップS105)。ここで、上下力とは、路面から車輪5FL〜5RRに加わる路面外乱によって、車体に加わる外力である。
【0033】
また、上下力変換部22は、サスストローク算出部21が出力したストローク量Zrにばね定数Krを乗算するとともに、サスストローク算出部21が出力したストローク速度dZrに減衰係数Crを乗算する。ここで、ばね定数Krとは、後輪5RL、5RRのサスペンションのばね定数である。また、減衰係数Crとは、後輪5RL、5RRのサスペンション(ショックアブソーバ)の減衰係数である。そして、上下力変換部22は、これらの乗算結果の合計値を後輪5RL、5RRの上下力Fzrとして車体振動推定部18に出力する(図5のステップS105)。
【0034】
なお、本実施形態では、車輪速VWFL〜VWRRに基づいてサスペンションのストローク量およびストローク速度を算出し、算出したストローク量およびストローク速度に基づいて上下力Fzf、Fzrを算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、サスペンションのストローク量を検出するストロークセンサを設け、ストロークセンサによるストローク量の検出値および検出結果の時間微分値に基づいて上下力Fzf、Fzrを算出する構成としてもよい。また、ストロークセンサ等、各種センサによる検出値そのものを上下力Fzf、Fzrとする構成としてもよい。
【0035】
車体速度推定部23は、前輪5FL,5FR(従動輪)の車輪速センサ5が出力した検出信号を読み込む。続いて、平均後輪速演算部38は、読み込んだ検出信号に基づいて車体速度V=(VwRL+VwRR)/2を算出する。そして、車体速度推定部23は、算出した車体速度Vを旋回挙動推定部24に出力する。
旋回挙動推定部24は、車体速度推定部23が出力した検出信号、および操舵角センサ2が出力した検出信号に基づき、下記(5)(6)式に従ってヨー角速度γおよび車体横滑り角βvを算出する。そして、旋回挙動推定部24は、算出したヨー角速度γおよび車体横滑り角βvを旋回抵抗推定部25に出力する。また、旋回挙動推定部24は、これら算出結果とともに、操舵角センサ2の検出信号が表す操舵角δoも出力する
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、Vは車体速度、δは操舵角δoに基づいて算出したタイヤ転舵角、lはホイールベース、lfは車体重心から前車軸までの距離、lrは車体重心から後車軸までの距離、mは車重である。また、Cpfは前輪5FL、5FRのタイヤコーナリングパワー、Cprは後輪5RL、5RRのタイヤコーナリングパワーである。
【0038】
旋回抵抗推定部25は、旋回挙動推定部24が出力したヨー角速度γ、車体横滑り角βv、および操舵角δoに基づき、下記(7)式に従って、前輪5FL、5FRの旋回抵抗Fcfを算出する。ここで、旋回抵抗Fcfとは、操舵によって路面から車輪5FL〜5RRに加わる抵抗であり、スリップ角の発生によって車輪5FL〜5RRに加わる横力の車両前後方向成分である。そして、旋回抵抗推定部25は、算出した旋回抵抗Fcfを車両モデル26に出力する。
【0039】
Fcf=βf・Fyf (7)
βf=βv+Lf・γ/V−δ
Fyf=βf・Cpf
ここで、δは操舵角δoに基づいて算出したタイヤ転舵角、Lfは車体重心から前車軸までの距離である。また、Cpfは前輪5FL、5FRのタイヤコーナリングパワー、βfは前輪5FL、5FRのスリップ角、Fyfは前輪5FL、5FRのコーナリングフォースである。
【0040】
また、旋回抵抗推定部25は、旋回挙動推定部24が出力したヨー角速度γ、車体横滑り角βv、および操舵角δoに基づき、下記(8)式に従って、後輪5RL、5RRの旋回抵抗Fcrを算出する。そして、旋回抵抗推定部25は、算出した旋回抵抗Fcrを車両モデル26に出力する。
Fcr=βr・Fyr (8)
βr=βv−Lr・γ/V
Fyr=βr・Cpr
ここで、δは操舵角δoに基づいて算出したタイヤ転舵角、Lrは車体重心から後車軸までの距離である。また、Cprは後輪5RL、5RRのタイヤコーナリングパワー、βrは後輪5FL、5FRのスリップ角、Fyrは後輪5FL、5FRのコーナリングフォースである。
【0041】
なお、本実施形態では、車体速度Vおよび操舵角δoに基づいて旋回抵抗Fcf、Fcrを算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、操舵角センサ2等、各種センサによる検出値そのものを旋回抵抗Fcf、Fcrとする構成としてもよい。
車体振動推定部18は、入力変換部17が出力した駆動トルクTw、上下力Fzf、Fzrおよび旋回抵抗Fcf、Fcrに基づいて、車体のばね上挙動を構成する成分を算出する。具体的には、車体振動推定部18は、車両モデル26を備える。
【0042】
図11は、車両モデル26を説明するための図である。
車両モデル26は、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分、上下力Fzf、Fzrに起因する成分、および旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分を算出する。すなわち、車体のばね上挙動は種々の物理量で表すことができ、また、これら種々の物理量のそれぞれが種々の成分を含んでなるところ、車両モデル26は、これら種々の成分のうち、上記した3つの成分を個別に算出する。ここで、車体のばね上挙動としては、車体のピッチ軸回りの回転運動、およびバウンス方向の上下運動を採用できる。また、車体のばね上挙動を表す物理量としては、車体のバウンス速度dZv、バウンス量Zv、ピッチ角速度dθp、ピッチ角θpを採用できる。これら物理量dZv、Zv、dθp、θpは、下記(9)(10)式に示すように、前輪荷重Wf、および後輪荷重Wrを定義するうえで必要となるパラメータである。
【0043】
Wf=−2Kf(Zv+Lf・θp)−2Cf(dZv+Lf・dθp/dt) ・・・(9)
Wr=−2Kr(Zv+Lr・θp)−2Cr(dZv−Lr・dθp/dt) ・・・(10)
ここで、Kfは前輪5FL、5FRのサスペンションのばね定数、Cfは前輪5RL、5FRのサスペンション(ショックアブソーバ)の減衰係数である。また、Krは後輪5RL、5RRのサスペンションのばね定数、Crは後輪5RL、5RRのサスペンション(ショックアブソーバ)の減衰係数である。また、Lfは車体重心から前車軸までの距離、Lrは車体重心から後車軸までの距離、θpは車体のピッチ角である。
【0044】
具体的には、車両モデル26は、駆動トルク変換部20が出力した駆動トルクTwに基づき、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、駆動トルクTwに起因する成分(車体のバウンス速度、バウンス量、ピッチ角速度、ピッチ角)を算出する。駆動トルクTwに起因する成分の算出は、Fzf、Fzr、Fcf、Fcrを「0」とし、下記(11)(12)式に従って行う(図5のステップS112)。そして、車両モデル26は、算出した成分をトルク指令値算出部19に出力する。なお、次式においては、微分値をドット付きの符号によって表している。
【0045】
【数2】

【0046】
ここで、図11に示すように、Ipはピッチ軸回りの慣性モーメント、hcgは車体重心の高さ、Rtは車輪重心の高さ、θpはピッチ角である。また、zvは重心位置の上下移動、Ff,Frは前後輪における車両上下方向の力、Rtは車輪重心の高さ、Twは駆動トルク、Mはバネ上質量である。
また、車両モデル26は、上下力変換部22が出力した上下力Fzf、Fzrに基づき、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分(車体のバウンス速度、バウンス量、ピッチ角速度、ピッチ角)を算出する。上下力Fzf、Fzrに起因する成分の算出は、Tw、Fcf、Fcrを「0」とし、上記(11)(12)式に従って行う(図5のステップS112)。そして、車両モデル26は、算出した成分をトルク指令値算出部19に出力する。
【0047】
なお、本実施形態では、車体のばね上挙動を構成する成分のうちから、駆動トルクTwに起因する成分、および上下力Fzf、Fzrに起因する成分を算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、車体のバウンス速度、バウンス量、ピッチ角速度、およびピッチ角の少なくともいずれか、またはこれらの合成値を構成する成分のうちから、駆動トルクTwに起因する成分、および上下力Fzf、Fzrに起因する成分を算出する構成としてもよい。合成値としては、例えば、車体のバウンス速度、バウンス量、ピッチ角速度、およびピッチ角のそれぞれに係数を乗じ、乗算結果を合計した値等を採用できる。
【0048】
また、車両モデル26は、旋回抵抗推定部25が出力した旋回抵抗Fcf、Fcrに基づき、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、上下力Fzf、Fzrに起因する成分(車体のバウンス速度、バウンス量、ピッチ角速度、ピッチ角)を算出する。旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分の算出は、Tw、Fzf、Fzrを「0」とし、上記(11)(12)式に従って行う(図5のステップS112)。続いて、車両モデル26は、算出した成分に基づき、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分dWf、dWr、dSF、SFを算出する。ただし、dWfは前輪荷重の変動速度、dWrは後輪荷重の変動速度、dSFは前後バランスの変動速度、およびSF前後バランスである。旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分dWf、dWr、dSF、SFの算出は、上記(9)(10)式に従って行う(図5のステップS112)。そして、車両モデル26は、算出した成分dWf、dWr、dSF、SFをトルク指令値算出部19に出力する。
【0049】
なお、本実施形態では、車体のばね上挙動を構成する成分のうち、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分を算出する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、前輪荷重、前輪荷重の変動速度、ピッチ角速度、およびピッチ角の少なくともいずれか、またはこれらの合成値を構成する成分のうちから、旋回抵抗Fcf、Fcrに起因する成分、および上下力Fzf、Fzrに起因する成分を算出する構成としてもよい。合成値としては、例えば、前輪荷重、前輪荷重の変動速度、ピッチ角速度、およびピッチ角のそれぞれに係数を乗じ、乗算結果を合計した値等を採用できる。
【0050】
モード重み係数算出部16Aでは、車体速度Vと車両のピッチ角速度に基づいて、燃費向上モード(以下、適宜「Aモード」と称する。)、乗り心地向上モード(以下、適宜「Bモード」と称する。)、操安性向上モード(以下、適宜「Cモード」と称する。)のそれぞれの重み係数を算出する(図5のステップS113)。なお、ここでは、車両のピッチ角速度は、車両モデル26が算出したピッチ角速度の合計値を用いる。車体速度Vは、車体速度推定部23が算出した車体速度Vを用いる。
【0051】
ここで、燃費向上モード(Aモード)は、車体に発生する上下挙動(ピッチ、バウンス、前後軸バランスおよび輪荷重の変動)のうち、ピッチ変動の抑制を優先することにより、燃費を向上させるモードである。乗り心地向上モード(Bモード)は、車体に発生する上下挙動のうち、ピッチ変動およびバウンスの抑制を優先することにより、乗り心地を向上させるモードである。操安性向上モードは、車体に発生する上下挙動のうち、ピッチ、バウンス、前後軸バランスの変動の抑制のいずれも優先することなく、輪荷重の変動を助長することにより、操安性を向上させるモードである。
【0052】
図12は、乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を定めたマップを示す図である。
図12において、車速から、乗り心地向上モードと操安性向上モードの重み係数をそれぞれ算出する。
例えば、図12における点x1では、車速が中速であり、BモードおよびCモードの重みが共に0.5となる。
【0053】
また、図13は、燃費向上モード(Aモード)と、乗り心地向上モードおよび操安性向上モード(BモードおよびCモード)との重み係数を定めたマップを示す図である。
図13において、ピッチ角速度から、図12によって算出した乗り心地向上モードおよび操安性向上モードの重み係数と、燃費向上モードとの重み係数を算出する。
例えば、図13における点x2では、ピッチ角速度が中程度であり、Aモードの重み係数と、BモードおよびCモードの重み係数とが共に0.5となる。したがって、車両1の状態が、図12の点x1、図13の点x2である場合、Aモードの重み係数は0.5、BモードおよびCモードの重み係数はそれぞれ0.25(0.5×0.5)となる。
【0054】
なお、ピッチ角速度を重み係数の算出にそのまま使用すると、車体のピッチ角速度は周期的に変動することから、重み係数も振動周期に合わせて変化することとなる。そのため、ピッチ角速度のピークtoピーク(包絡線)を用いて、ピッチ角速度の振幅を重み係数の算出に使用すると、より適切に重み係数を算出できる。
ここで、燃費向上モードの作用について説明する。
図14は、燃費向上モードの作用を説明するための車両モデルを示す図である。
図14において、車体の速度は、次式に示す通りである。
【0055】
【数3】

【0056】
なお、m1はバネ下質量、Mはバネ上質量、Rtは車輪重心の高さ、Iは車輪の回転の慣性モーメント、Twは制駆動トルクである。また、他の符号は図11と同様である。
これより、車体の速度は入力される制駆動トルクの積分に比例していることが判る。
一方、車体のエネルギEは次式に示すように、入力トルクTと相対角速度(車輪の回転角速度と車体の回転角速度の差分)を乗算することで算出できる。
【0057】
【数4】

【0058】
なお、(14)式において、θTは車輪の回転角、θpは車体のピッチ角である。
即ち、同じ車速とする場合、相対角速度が小さいほど、エネルギが小さくて済むことが判る。
このため、相対角速度が小さい状況でトルクを付与することにより、エネルギ効率を高めることができる。これは、車体のピッチ角速度と逆位相にトルクを付与することに相当する。
【0059】
上記の作用により、ピッチ角速度が大きいところでは燃費向上効果が高くなる。
そこで、本発明においては、ピッチ角速度が大きい状況では燃費を向上させるようにピッチ抑制のゲインをバウンス抑制やフロント荷重ゲインに対して大きくする。また、ピッチ角速度が小さい状況では、車両の乗り心地性能、操安性能を向上させるようにゲインを変化させる。
【0060】
一方、ピッチ角速度が小さく、かつ車速が低い領域では、最大ではないものの燃費向上効果が期待できるため、ピッチ抑制とバウンス抑制のゲインをフロント荷重ゲインに対して大きくし、乗り心地性能を向上させる。
また、一般に車両速度が高い領域ではそもそもエネルギ消費量が大きく、燃費効果が低減する。そのため、ピッチ角速度が小さくかつ車速が高い領域では、最も燃費向上効果が小さいため、全てのゲインを均等に出力することにより操安性能を向上させる。
【0061】
図4に戻り、トルク指令値算出部19は、車体振動推定部18が出力した車体のばね上挙動を構成する成分に基づいて、制御対象とする各状態量に対し、レギュレータ処理を行う。さらに、トルク指令値算出部19は、レギュレータ処理の結果に対し、A〜Cモードそれぞれのゲインセットおよび重み係数を乗算する。そして、トルク指令値算出部19は、これら乗算値の和をギア比に応じたトルクのエンジン端値に変換して出力する。
【0062】
トルク指令値算出部19において制御対象とする状態量は、「駆動トルクによるピッチ速度」、「駆動トルクによるバウンス速度」、「外乱(車輪速からの推定分)によるピッチ速度」、「外乱(車輪速からの推定分)によるバウンス速度」、「外乱(車輪速からの推定分)による前後軸バランス変動」、「外乱(車輪速からの推定分)による前後軸バランス」、「旋回抵抗による前輪荷重変動」、「旋回抵抗による後輪荷重変動」とする。
【0063】
そして、トルク指令値算出部19は、これら8つの状態量について設定したレギュレータゲインF1〜F5と、A〜Cモードに応じたチューニングゲインK1a〜K8a,K1b〜K8b,K1c〜K8c(以下、A〜Cモードそれぞれのチューニングゲインのセットを適宜「ゲインセット」と称する。)を設定する。
具体的には、トルク指令値算出部19は、第1レギュレータ27、第2レギュレータ28、第3レギュレータ29、第1チューニングゲイン設定部30、第2チューニングゲイン設定部31、第3チューニングゲイン設定部32、第1チューニングゲイン乗算部33、第2チューニングゲイン乗算部34、第3チューニングゲイン乗算部35、およびエンジントルク変換部36を備える。
【0064】
第1レギュレータ27は、車両モデル26が出力した駆動トルクによるピッチ速度と、駆動トルクによるバウンス速度とを入力とし、これらに対応するレギュレータゲインF1,F2を入力値と乗算して、レギュレータ処理結果R1,R2を算出する。
第2レギュレータ28は、車両モデル26が出力した外乱(車輪速からの推定分)によるピッチ速度と、外乱(車輪速からの推定分)によるバウンス速度と、外乱(車輪速からの推定分)による前後軸バランス変動と、外乱(車輪速からの推定分)による前後軸バランスとを入力とし、これらに対応するレギュレータゲインF3〜F6を入力値と乗算して、レギュレータ処理結果R3〜R6を算出する。
【0065】
第3レギュレータ29は、車両モデル26が出力した旋回抵抗による前輪荷重変動と、旋回抵抗による後輪荷重変動とを入力とし、これらに対応するレギュレータゲインF7,F8を入力値と乗算して、レギュレータ処理結果R7,R8を算出する。
第1チューニングゲイン設定部30は、第1レギュレータ27が出力したレギュレータ処理結果R1,R2に対するチューニングゲインを設定する。具体的には、第1チューニングゲイン設定部30は、レギュレータ処理結果R1,R2に対するAモードゲイン(1/2,0)、Bモードゲイン(1/4,1/4)、Cモードゲイン(1/8,1/8)を設定する。なお、第1チューニングゲイン設定部30が正値のチューニングゲインを設定すると、ピッチ変動およびバウンスを抑制する制御となる。
【0066】
第2チューニングゲイン設定部31は、第2レギュレータ28が出力したレギュレータ処理結果R3〜R6に対するチューニングゲインを設定する。具体的には、第2チューニングゲイン設定部31は、ギュレータ処理結果R3〜R6に対するAモードゲイン(1/2,0,0,0)、Bモードゲイン(1/4,1/4,0,0)、Cモードゲイン(1/8,1/8,1/8,1/8)を設定する。なお、第2チューニングゲイン設定部30が正値のチューニングゲインを設定すると、ピッチ変動、バウンス、前後軸バランスの変動および前後軸バランスの差(静止時等の基準状態との差)を抑制する制御となる。
【0067】
第3チューニングゲイン設定部32は、第3レギュレータ29が出力したレギュレータ処理結果R7,R8に対するチューニングゲインを設定する。具体的には、第3チューニングゲイン設定部32は、レギュレータ処理結果R7,R8に対するAモードゲイン(0,0)、Bモードゲイン(0,0)、Cモードゲイン(1/8,1/8)を設定する。なお、第3チューニングゲイン設定部32が負値のチューニングゲインを設定すると、輪荷重の変動を助長する制御となる。
【0068】
これら第1チューニングゲイン設定部30〜第3チューニングゲイン設定部32によって設定したチューニングゲインによって、A〜Cモードのゲインセットが決定する。
第1チューニングゲイン乗算部33は、各レギュレータが出力したレギュレータ処理結果R1〜R8にAモードゲインセットの各チューニングゲインを乗算し、乗算結果RA1〜RA8を算出する。また、第1チューニングゲイン乗算部33は、モード重み係数算出部16Aが出力したAモードの重み係数それぞれと、チューニングゲインの乗算結果RA1〜RA8を乗算し、Aモードトルク指令値TA1〜TA8を算出する(図5のステップS114)。
【0069】
第2チューニングゲイン乗算部34は、各レギュレータが出力したレギュレータ処理結果R1〜R8にBモードゲインセットの各チューニングゲインを乗算し、乗算結果RB1〜RB8を算出する。また、第2チューニングゲイン乗算部34は、モード重み係数算出部16Aが出力したBモードの重み係数それぞれと、チューニングゲインの乗算結果RB1〜RB8を乗算し、Bモードトルク指令値TB1〜TB8を算出する(図5のステップS115)。
【0070】
第3チューニングゲイン乗算部35は、各レギュレータが出力したレギュレータ処理結果R1〜R8にCモードゲインセットの各チューニングゲインを乗算し、乗算結果RC1〜RC8を算出する。また、第3チューニングゲイン乗算部35は、モード重み係数算出部16Aが出力したCモードの重み係数それぞれと、チューニングゲインの乗算結果RC1〜RC8を乗算し、Cモードトルク指令値TC1〜TC8を算出する(図5のステップS116)。
【0071】
エンジントルク変換部36は、Aモードトルク指令値TA1〜TA8、Bモードトルク指令値TA1〜TB8およびCモードトルク指令値TC1〜TC8を合計し(図5のステップS117)、その合計値に変速機9のギア比を乗算する(図5のステップS118)。これにより、エンジントルク変換部36は、合計値を駆動軸端値からモータ端値に変換する。そして、エンジントルク変換部36は、乗算結果をトルク補正値として加算器14に出力する。
【0072】
第1〜第3レギュレータにおいて各状態量にレギュレータゲインを積算した値を、車両の駆動トルクから減じると、各状態量は平衡状態(即ち、ここでは振動が止まる方向)に収束する。具体的には、各状態量に負のレギュレータゲインを積算した値を補正トルクとし、これを駆動トルクに加算することで、各状態量は平衡状態となる。
【0073】
ただし、駆動トルクを変動させることから、そのまま駆動トルクの指令値とすると、前後加速度の変動が運転者に違和感を与えたり、また、目的とする操舵応答性の向上やロール挙動抑制のための制御を実現することが困難になったりする。そこで、チューニングゲインK1a〜K6a,K1b〜K6b,K1c〜K6cは、振動を抑制する正方向の値で、かつ前後加速度変動が運転者に違和感を与えないと推定できる範囲の値(例えば実験値等)に設定する。一方、チューニングゲインK7a,K8a,K7b,K8b,K7c,K8cは振動を助長する負方向で、かつ前後加速度変動が運転者に違和感を与えない範囲の値に設定する。
なお、ステップS118の後、駆動力車体制振制御部16は、図5の処理を繰り返す。
【0074】
(動作)
次に、動作を説明する。
図15は、第1実施形態に係る制駆動力制御装置の動作を示すタイムチャートである。
図15においては、車体1Bのピッチ角速度、ピッチ角速度のピークtoピーク値、車輪回転角速度、Aモード重み係数、Bモード重み係数およびCモード重み係数のタイムチャートを示している。
まず、高速道路を走行中、運転者が、車両1を定速で直進走行させるために、アクセル開度を一定とし、ステアリングホイール6を原点位置に保持し、図15の時刻t0に示すように、操舵入力を「0」にしていたとする。すると、図3に示すように、ECU12のドライバ要求トルク演算部13が、アクセル開度センサ3が出力する検出信号、およびブレーキペダル踏力センサ4が出力する検出信号に基づいてドライバ要求トルクを算出する。そして、ドライバ要求トルク演算部13が、算出したドライバ要求トルクを加算器14および入力変換部17に出力する。ドライバ要求トルク演算部13がドライバ要求トルクを出力すると、図4に示すように、入力変換部17の駆動トルク変換部20が、ドライバ要求トルクに変速機9のギア比を乗算し、乗算結果を駆動トルクTwとして車両モデル26に出力する。
【0075】
駆動トルク変換部20が駆動トルクTwを出力すると、エンジン8がトルクを出力し、車体をピッチングさせる力が働く。
本実施形態においては、車速によってBモード(乗り心地向上モード)とCモード(操安性向上モード)との重みづけを決定する。そして、これらBモードとCモードの合計の重みに対し、Aモード(燃費向上モード)との重みづけを行う。
【0076】
例えば、図15において、時刻t0ではピッチング量および車速が共に小さい状態である。このとき、車速は低速であることから、乗り心地向上を重視し、BモードとCモードとの重みづけは1:0となる(図12参照)。また、BモードおよびCモードの重みに対し、Aモードの重みは0となり(図13参照)、その結果、時刻t0では、Bモードの重みが1となる。
【0077】
また、図15において、時刻t1ではピッチング量が中程度まで増加している。このとき、車速は低速であることから、乗り心地向上を重視し、BモードとCモードとの重みづけは1:0となる(図12参照)。また、BモードおよびCモードの重みに対し、Aモードの重みは1/2となり(図13参照)、その結果、時刻t1では、AモードとBモードとの重みが0.5:0.5となる。
【0078】
また、図15において、時刻t2ではピッチング量が大程度まで増加している。このとき、車速は低速であることから、一旦、乗り心地向上を重視し、BモードとCモードとの重みづけは1:0となる(図12参照)。また、BモードおよびCモードの重みに対し、Aモードの重みは1となり(図13参照)、その結果、時刻t2では、Aモードの重みが1となる。
【0079】
また、図15において、時刻t3ではピッチング量が中程度まで減少し、車速が高速まで増加している。このとき、車速は高速であることから、操安性向上を重視し、BモードとCモードとの重みづけは0:1となる(図12参照)。また、BモードおよびCモードの重みに対し、Aモードの重みは1/2となり(図13参照)、その結果、時刻t3では、AモードとCモードとの重みが0.5:0.5となる。
【0080】
また、図15において、時刻t4ではピッチング量が小さい状態まで減少している。このとき、車速は高速であることから、操安性向上を重視し、BモードとCモードとの重みづけは0:1となる(図12参照)。また、BモードおよびCモードの重みに対し、Aモードの重みは0となり(図13)、その結果、時刻t4では、Cモードの重みが1となる。
【0081】
以上のように、本実施形態に係る制駆動力制御装置を備えた車両1は、燃費向上のために制駆動力制御を行うモードと、乗り心地向上のために制駆動力制御を行うモードと、操安性向上のために制駆動力制御を行うモードとを有している。
そして、車両1は、車速に応じて乗り心地向上モードと操安性向上モードとの重みを設定し、車体のピッチング量に応じて燃費向上モードの重みを設定する。
【0082】
そのため、車両の走行状況に応じて、操安性および乗り心地と、燃費向上との重視度合いを変化させて制駆動力制御を行うことができる。
したがって、燃費の向上と、操縦安定性および乗り心地性能との両立を図ることが可能となる。
また、本実施形態に係る車両1では、各モードの重みづけを設定する際に、乗り心地向上モードおよび操安性向上モード2つのモードに対して、燃費向上モードを2倍の加重割合としている。
【0083】
したがって、種々の走行状況において、燃費の向上を優先的に図ることが可能となる。
なお、本実施形態において、ブレーキアクチュエータ5BFL〜5BRR、ディファレンシャルギア7、エンジン8および変速機9が制駆動トルク付与手段に対応し、ECU12(入力変換部17、車体振動推定部18))が挙動推定手段に対応する。また、ECU12(トルク指令値算出部19)が補正トルク算出手段に対応し、ECU12(モード重み係数算出部16A)が重み係数算出手段に対応する。また、ECU12(エンジントルク変換部36)がトルク指令値算出手段に対応する。
【0084】
(第1実施形態の効果)
(1)推定した車体のバネ上挙動を構成する成分のうち、ピッチ変動成分の抑制度合いを他の成分の抑制度合いよりも高く設定した燃費向上モードと、車体のバネ上挙動を構成する成分を前記燃費向上モードと異なる抑制度合いで抑制するように設定した他のモードとに基づいて、車両の走行状況に対応する制駆動力の補正トルクを算出する。そして、算出した各補正トルクを、車両の走行状況に基づいて定めた重み係数に応じて加算し、運転者の制駆動操作により定めた要求制駆動トルクに対する補正トルクの指令値を算出する。
そのため、車両の走行状況に応じて、燃費向上性能と他の性能との重視度合いを変化させて制駆動力制御を行うことができる。
したがって、燃費の向上と、操縦安定性および乗り心地性能との両立を図ることが可能となる。
【0085】
(2)補正トルク算出手段は、他のモードとして、挙動推定手段が推定した車体のバネ上挙動を構成する成分のうち、ピッチ変動成分およびバウンス成分の抑制度合いを他の成分の抑制度合いよりも高く設定した乗り心地向上モードを有する。また、補正トルク算出手段は、挙動推定手段が推定した車体のバネ上挙動を構成する各成分のうち、輪荷重の変動を助長する操安性向上モードを有する。
したがって、燃費向上と、乗り心地および操安性との両立を図ることができる。
【0086】
(3)重み係数算出手段は、車速に基づいて乗り心地向上モードと操安性向上モードとの重み係数を算出し、車体のピッチ角速度に基づいて燃費向上モードと、乗り心地向上モードおよび操安性向上モードとの重み係数を算出する。
したがって、車両の走行状況に合わせて、燃費向上と、乗り心地および操安性とを適切に組み合わせた制駆動力制御を行うことができる。
【0087】
(4)補正トルク算出手段は、燃費向上モードでは、車体のバネ上挙動を構成する成分に、車体のピッチ変動を抑制するゲインを乗算する。
したがって、車体のピッチ変動に費やすエネルギを抑制することができ、燃費の向上を図ることができる。
(5)補正トルク算出手段は、乗り心地向上モードでは、車体のバネ上挙動を構成する成分に、車体のピッチ変動およびバウンスを抑制するゲインを乗算する。
したがって、車体の前傾や後傾および上下動を抑制することができ、乗り心地を向上させることができる。
【0088】
(6)補正トルク算出手段は、操安性向上モードでは、車体のバネ上挙動を構成する成分に、車体のピッチ変動、バウンス、前後軸バランスの変動および前後軸バランスの基準状態との差を抑制するゲインを乗算すると共に、車体のバネ上挙動を構成する成分に、旋回時に発生する輪荷重変動を助長するゲインを乗算する。
したがって、車両の挙動を安定化させつつ、旋回時の輪荷重が増加するため、操舵応答性を向上させることができる。
【0089】
(7)重み係数算出手段は、車体のピッチ角速度が大きいほど、他のモードよりも燃費向上モードの重み係数を大きくする。
したがって、車体のピッチ角速度が大きく、ピッチ変動に費やすエネルギが大きくなる状況において、制駆動力を付与することができるため、燃費向上効果をより高めることができる。
【0090】
(8)重み係数算出手段は、乗り心地向上モードと操安性向上モードとにおいて、車速が高いほど、操安性向上モードの重みを大きくし、車速が低いほど、乗り心地向上モードの重みを大きくする。
したがって、操舵角が小さくなりやすい高速域でも操安性能を高めることができる。また、操舵角が大きくなりやすい低速域で旋回を行った場合でも乗り心地を向上させることができる。
(9)重み係数算出手段は、他のモードに対し、燃費向上モードの加重割合を高くしてある。
したがって、燃費向上モードの優先度を高めることができ、より大きい燃費向上効果を実現することができる。
【0091】
(10)車体のバネ上挙動を推定し、推定した車体のバネ上挙動を構成する成分のうち、ピッチ変動成分の抑制度合いを他の成分の抑制度合いよりも高く設定した燃費向上モードと、車体のバネ上挙動を構成する成分を燃費向上モードと異なる抑制度合いで抑制するように設定した他のモードとに基づいて、車両の走行状況に対応する制駆動力の補正トルクを算出する。そして、燃費向上モードおよび他のモードの補正トルクを車両の走行状況に応じて定めた重みに応じて加算することにより、運転者の制駆動操作により定めた要求制駆動トルクに対する補正トルク指令値とする。
そのため、車両の走行状況に応じて、燃費向上性能と他の性能との重視度合いを変化させて制駆動力制御を行うことができる。
したがって、燃費の向上と、操縦安定性および乗り心地性能との両立を図ることが可能となる。
【0092】
(応用例1)
第1実施形態において、乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を図12に示すマップに従って算出することとした。
これに対し、乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を図16に示すマップとすることができる。
図16は、応用例1における乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を定めたマップを示す図である。
図16に示すマップとした場合、高速域において、乗り心地と操安性とのバランスを高めることができる。
【0093】
(応用例2)
第1実施形態において、乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を図12に示すマップに従って算出することとした。
これに対し、乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を図17に示すマップとすることができる。
図17は、応用例2における乗り心地向上モード(Bモード)と操安性向上モード(Cモード)の重み係数を定めたマップを示す図である。
図17に示すマップとした場合、低速域において、乗り心地と操安性とのバランスを高めることができる。また、高速域において、操安性を高めることができる。
【0094】
なお、上記実施形態では、燃費向上モード(Aモード)、乗り心地向上モード(Bモード)、操安性向上モード(Cモード)の3つのモード全ての重み係数を走行状況を基に算出することとした。これに対し、優先度の高い特定のモードを固定値とし、他のモードのみを走行状況を基に算出して設定することもできる。また、いずれのモードを固定値(非算出値)とするかを選択可能とすることもできる。この場合、当然のことながら重み係数の合計を1とする必要はない。
【符号の説明】
【0095】
1 車両、2 操舵角センサ、3 アクセル開度センサ、4 ブレーキペダル踏力センサ、5 車輪速センサ、5FL〜5RR 車輪、5BFL〜5BRR ブレーキアクチュエータ、6 ステアリングホイール、7 ディファレンシャルギア、8 エンジン、9 変速機、10 ドライブシャフト、11 アクスルシャフト、12 ECU、13 ドライバ要求トルク演算部、14 加算器、15 トルク指令値演算部、16 駆動力車体制振制御部、16A モード重み係数算出部、17 入力変換部、18 車体振動推定部、19 トルク指令値算出部、20 駆動トルク変換部、21 サスストローク算出部、22 上下力変換部、23 車体速度推定部、24 旋回挙動推定部、25 旋回抵抗推定部、26 車両モデル、27 第1レギュレータ、28 第2レギュレータ、29 第3レギュレータ、30 第1チューニングゲイン設定部、31 第2チューニングゲイン設定部、32 第3チューニングゲイン設定部、33 第1チューニングゲイン乗算部、34 第2チューニングゲイン乗算部、35 第3チューニングゲイン乗算部、36 エンジントルク変換部、37 平均前輪速演算部、38 平均後輪速演算部、39 前輪用バンドパスフィルタ処理部、40 後輪用バンドパスフィルタ処理部、41 前輪サスストローク算出部、42 後輪サスストローク算出部、100 制駆動トルク付与手段、101 挙動推定手段、102 補正トルク算出手段、103 重み係数算出手段、104 トルク指令値算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に制駆動トルクを付与する制駆動トルク付与手段と、
車両の走行状況に基づいて、車体のバネ上挙動を推定する挙動推定手段と、
前記挙動推定手段が推定した車体のバネ上挙動を構成する成分のうち、ピッチ変動成分の抑制度合いを他の成分の抑制度合いよりも高く設定した燃費向上モードと、車体のバネ上挙動を構成する成分を前記燃費向上モードと異なる抑制度合いで抑制するように設定した他のモードとに基づいて、車両の走行状況に対応する制駆動力の補正トルクを算出する補正トルク算出手段と、
車両の走行状況に基づいて、前記燃費向上モードと前記他のモードとの少なくとも一方の重み係数を算出する重み係数算出手段と、
前記補正トルク算出手段が算出した前記燃費向上モードの補正トルクおよび前記他のモードの補正トルクを、前記重み係数算出手段が算出した前記燃費向上モードと前記他のモードとの重み係数に応じて加算し、運転者の制駆動操作により定めた要求制駆動トルクに対する補正トルクの指令値を算出するトルク指令値算出手段と、
を有することを特徴とする制駆動力制御装置。
【請求項2】
前記補正トルク算出手段は、前記他のモードとして、前記挙動推定手段が推定した車体のバネ上挙動を構成する成分のうち、ピッチ変動成分およびバウンス成分の抑制度合いを他の成分の抑制度合いよりも高く設定した乗り心地向上モードと、前記挙動推定手段が推定した車体のバネ上挙動を構成する各成分のうち、輪荷重の変動を助長する操安性向上モードとを有することを特徴とする請求項1記載の制駆動力制御装置。
【請求項3】
前記重み係数算出手段は、車速に基づいて前記乗り心地向上モードと前記操安性向上モードとの重み係数を算出し、車体のピッチ角速度に基づいて前記燃費向上モードと、前記乗り心地向上モードおよび前記操安性向上モードとの重み係数を算出することを特徴とする請求項2記載の制駆動力制御装置。
【請求項4】
前記補正トルク算出手段は、前記燃費向上モードでは、車体のバネ上挙動を構成する成分に、車体のピッチ変動を抑制するゲインを乗算することを特徴とする請求項2または3記載の制駆動力制御装置。
【請求項5】
前記補正トルク算出手段は、前記乗り心地向上モードでは、車体のバネ上挙動を構成する成分に、車体のピッチ変動およびバウンスを抑制するゲインを乗算することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の制駆動力制御装置。
【請求項6】
前記補正トルク算出手段は、前記操安性向上モードでは、車体のバネ上挙動を構成する成分に、車体のピッチ変動、バウンス、前後軸バランスの変動および前後軸バランスの基準状態との差を抑制するゲインを乗算すると共に、車体のバネ上挙動を構成する成分に、旋回時に発生する輪荷重変動を助長するゲインを乗算することを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の制駆動力制御装置。
【請求項7】
前記重み係数算出手段は、車体のピッチ角速度が大きいほど、前記他のモードよりも前記燃費向上モードの重み係数を大きくすることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の制駆動力制御装置。
【請求項8】
前記重み係数算出手段は、前記乗り心地向上モードと前記操安性向上モードとにおいて、車速が高いほど、前記操安性向上モードの重みを大きくし、車速が低いほど、前記乗り心地向上モードの重みを大きくすることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載の制駆動力制御装置。
【請求項9】
前記重み係数算出手段は、前記他のモードに対し、前記燃費向上モードの加重割合を高くしてあることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の制駆動力制御装置。
【請求項10】
車体のバネ上挙動を推定し、推定した車体のバネ上挙動を構成する成分のうち、ピッチ変動成分の抑制度合いを他の成分の抑制度合いよりも高く設定した燃費向上モードと、車体のバネ上挙動を構成する成分を前記燃費向上モードと異なる抑制度合いで抑制するように設定した他のモードとに基づいて、車両の走行状況に対応する制駆動力の補正トルクを算出し、前記燃費向上モードおよび前記他のモードの補正トルクを車両の走行状況に応じて定めた重みに応じて加算することにより、運転者の制駆動操作により定めた要求制駆動トルクに対する補正トルク指令値とすることを特徴とする制駆動力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−254732(P2012−254732A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129333(P2011−129333)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】