説明

刻印装置

【課題】刻印試験を短時間で行うこと。
【解決手段】刻印装置1は、鋼片製品を固定する製品固定部2と、刻印試験を行うための鋼片製品と同種の鋼片試料を固定する試料固定部3と、製品固定部2および試料固定部3にそれぞれ固定された鋼片製品および鋼片試料に刻印ピン4bを押圧することによって鋼片製品および鋼片試料の表面に刻印を付与する刻印付与部4と、を備える。このような構成によれば、刻印試験を行う際、製造ラインに製品が搬送されてくるまで待機する必要がなくなるので、刻印試験を短時間で行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品管理用の刻印を鋼片に付与する刻印装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼片製品の管理は、鋼片製品の表面に刻印を付与することによって行われている。このような背景から、従来より、製品表面に刻印を付与する刻印装置が提案されている(特許文献1,2参照)。詳しくは、従来の刻印装置は、リボルバを回転させることによって刻印ピンを選出し、インパクトシリンダを用いて選出した刻印ピンを製品表面に押圧することにより、製品表面に刻印を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−260076号公報
【特許文献2】特開平7−182436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の刻印装置は、製造ライン上を搬送されてきた製品に刻印を付与する機能しか有していない。このため、従来の刻印装置によれば、刻印品質を評価する刻印試験を行う際には、製造ラインに製品が搬送されてくるまで待機しなければならず、刻印試験を短時間で行うことが困難であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、刻印試験を短時間で行うことが可能な刻印装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る刻印装置は、鋼片製品を固定する製品固定部と、刻印試験を行うための前記鋼片製品と同種の鋼片試料を固定する試料固定部と、前記製品固定部および前記試料固定部にそれぞれ固定された鋼片製品および鋼片試料に印体を押圧することによって該鋼片製品および該鋼片試料の表面に刻印を付与する刻印付与部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る刻印装置は、上記発明において、前記刻印付与部によって前記鋼片試料に付与された刻印の品質を測定する刻印評価部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る刻印装置は、上記発明において、前記刻印評価部が、前記刻印にレーザー光を照射することによって前記刻印の深さを測定するレーザー距離計であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る刻印装置は、上記発明において、前記刻印評価部によって測定された刻印の品質に基づいて前記鋼片製品に対する前記印体の押圧圧力を制御する制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る刻印装置によれば、刻印試験を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である刻印装置の構成を示す側面図である。
【図2】図2は、図1に示す試料固定部の構成を示す側面図である。
【図3】図3は、図1に示す刻印ピンの構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1に示す刻印装置の動作を説明するための側面図である。
【図5】図5は、図1に示す刻印装置の動作を説明するための側面図である。
【図6】図6は、図1に示す刻印装置の動作を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である刻印装置の構成およびその動作について説明する。
【0013】
〔刻印装置の構成〕
始めに、図1乃至図3を参照して、本発明の一実施形態である刻印装置の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である刻印装置の構成を示す側面図である。図2は、図1に示す試料固定部の構成を示す側面図である。図3は、図1に示す刻印ピンの構成を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態である刻印装置1は、製品固定部2と、試料固定部3と、刻印付与部4と、刻印評価部5と、制御装置6と、を主な構成要素として備えている。製品固定部2は、鉛直方向である図示Z方向に配置された上側クランプアーム2aと下側クランプアーム2bとを備えている。上側クランプアーム2aは、Z方向に沿って上下動可能に構成されている。上側クランプアーム2aと下側クランプアーム2bとは鋼片製品を固定支持する。
【0015】
試料固定部3は、図2に示すように、Z方向に伸びる一対のフレーム3a,3bと、一対のフレーム3a,3b間に固定された、水平方向である図示Y方向に伸びる一対のアングル3c,3dと、一対のアングル3c,3dに固定された井形形状の支持部3eと、を備えている。試料固定部3は、刻印試験を行うための鋼片製品と同種の鋼片試料Tを支持部3eに固定することによって、鋼片試料Tを固定支持する。
【0016】
刻印付与部4は、Y方向およびZ方向に直交する図示X方向に移動可能な架台によって構成されている。刻印付与部4は、鋼片試料T又は鋼片製品に刻印を付与するヘッド部4aを備えている。ヘッド部4aは、図3に示すような周面に刻印文字が付与された刻印ピン4bを備えている。刻印ピン4bは、本発明に係る印体として機能する。ヘッド部4aは、制御装置6からの制御信号に従って刻印ピン4bを周方向に回転させることによって、刻印ピン4bの周面に付与された刻印文字の中から打刻すべき刻印文字を選択する。ヘッド部4aには、打刻用シリンダー4cが接続されている。打刻用シリンダー4cは、鋼片試料T又は鋼片製品に向けてヘッド部4aをX方向に押し出し、鋼片試料T又は鋼片製品に所定圧にて刻印ピン4bを押圧することによって、鋼片試料T又は鋼片製品の表面に選択した刻印文字を打刻する。
【0017】
刻印評価部5は、鋼片試料T又は鋼片製品にレーザー光を照射することによって鋼片試料T又は鋼片製品の表面に打刻された刻印文字の位置を計測するレーザー距離計5aを備えている。レーザー距離計5aは、鋼片試料T又は鋼片製品のZ方向位置に合わせて上下動可能なように構成されている。制御装置6は、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置によって構成されている。制御装置6は、刻印装置1全体の動作を制御する。
【0018】
〔刻印処理の流れ〕
次に、図4乃至図6を参照して、本発明の一実施形態である刻印装置1を利用した刻印処理の流れについて説明する。なお、この刻印処理は、初期の試運転時や刻印ピン4bなどの刻印機能に関係するハードウェア部品を交換した際に行われる。
【0019】
本発明の一実施形態である刻印処理では、始めに、図4に示すように、作業員が試料固定部3に鋼片試料Tを固定する。そして、制御装置6が、刻印ピン4bを回転させることによって打刻する刻印文字を選択した後、刻印付与部4を矢印A方向に移動し、打刻用シリンダー4cを鋼片試料Tの方向に延伸させることによって、刻印ピン4bを鋼片試料Tに押圧する。打刻する刻印文字が複数ある場合、制御装置6は、この処理を文字数分繰り返し実行する。これにより、鋼片試料Tの表面には刻印文字が刻印される。
【0020】
次に、図5に示すように、制御装置6が、刻印付与部4とレーザー距離計5aとが接触しないように矢印B方向に刻印付与部4を移動させた後、鋼片試料Tに打刻された刻印文字の位置を計測可能なように矢印C方向にレーザー距離計5aを下降させる。そして、制御装置6は、レーザー距離計5aを利用して鋼片試料Tに打刻された刻印文字のX方向位置を計測することによって、鋼片試料Tに打刻された刻印文字の深さD1を計測する。
【0021】
次に、制御装置6は、今回計測された刻印深さD1、今回の押圧圧力P1、目標刻印深さD0、補正係数K、および補正項Cの値を以下に示す数式(1)に代入することによって押圧圧力P2を算出する。そして、制御装置6は、算出された押圧圧力P2で再度鋼片試料Tに刻印を付与し、押圧圧力P2での刻印深さD2が以下の数式(2)に示す条件を満足するか否かを判別する。なお、数式(2)中のΔdは目標刻印深さD0に対する刻印深さD2の誤差の許容量を示す。
【0022】
【数1】

【数2】

【0023】
判別の結果、押圧圧力P2での刻印深さD2が数式(2)に示す条件を満足する場合、制御装置6は、鋼片試料Tと同種の鋼片製品に刻印を付与する際の押圧圧力を押圧圧力P2に設定し、刻印試験を終了する。一方、押圧圧力P2での刻印深さD2が数式(2)に示す条件を満足しない場合には、制御装置6は、刻印深さD2を刻印深さD1、押圧圧力P2を押圧圧力P1として、数式(1)を用いて新たな押圧圧力P2を算出し、刻印深さD2が数式(2)に示す条件を満足するまで鋼片試料Tに刻印を付与する刻印試験を繰り返し実行する。
【0024】
以上のようにして刻印試験が完了すると、次に、制御装置6は、図6に示すように、製品固定部2に鋼片製品Sを固定し、レーザー距離計5aを通常位置まで上昇させる。そして、制御装置6は、刻印ピン4bを回転させることによって打刻する刻印文字を選択した後、刻印付与部4を矢印D方向に移動し、鋼片製品Sの方向に打刻用シリンダー4cを延伸させることによって、押圧圧力P2で刻印ピン4bを鋼片製品Sに押圧させる。これにより、鋼片製品Sの表面には刻印文字が刻印され、一連の刻印処理は終了する。
【0025】
なお、この際、制御装置6は、鋼片製品Sの表面に刻印された刻印文字の品質を評価してもよい。この場合、制御装置6は、レーザー距離計5aを利用して鋼片製品Sに付与された刻印文字の深さD3を計測し、刻印深さD3が以下の数式(3)に示す条件を満足するか否かを判別する。なお、数式(3)中のΔdは目標刻印深さD0に対する刻印深さD3の誤差の許容量を示す。そして、判別の結果、刻印深さD3が数式(3)に示す条件を満足する場合、制御装置6は、刻印文字の品質は問題ないと判断し、次の鋼片製品Sに対する刻印処理を実行する。
【0026】
【数3】

【0027】
一方、刻印深さD3が数式(3)に示す条件を満足しない場合には、制御装置6は、以下に示す数式(4)によって算出される刻印圧力P3により再度刻印処理を実行し、刻印深さD4が以下の数式(5)に示す条件を満足するか否かを判別する。なお、数式(5)中のΔdは目標刻印深さD0に対する刻印深さD4の誤差の許容量を示す。そして、判別の結果、刻印深さD4が数式(5)に示す条件を満足する場合、制御装置6は、刻印文字の品質は問題ないと判断し、次の鋼片製品Sに対する刻印処理を実行する。一方、刻印深さD4が数式(5)に示す条件を満足しない場合には、制御装置6は、数式(4)中の刻印圧力P2を刻印圧力P3の値に置き換えることによって次回の刻印圧力P3を算出し、刻印深さD4が数式(5)に示す条件を満足するまで刻印処理を繰り返し実行する。
【0028】
【数4】

【数5】

【0029】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である刻印装置1は、鋼片製品Sを固定する製品固定部2と、刻印試験を行うための鋼片製品Sと同種の鋼片試料Tを固定する試料固定部3と、製品固定部2および試料固定部3にそれぞれ固定された鋼片製品Sおよび鋼片試料Tに刻印ピン4bを押圧することによって鋼片製品Sおよび鋼片試料Tの表面に刻印を付与する刻印付与部4と、を備える。このような構成によれば、刻印試験を行う際、製造ラインに製品が搬送されてくるまで待機する必要がなくなるので、刻印試験を短時間で行うことができる。
【0030】
また、本発明の一実施形態である刻印装置1は、刻印付与部4によって鋼片試料Tに付与された刻印の品質を測定する刻印評価部5を備える。このような構成によれば、刻印評価部5によって測定された刻印の品質に基づいて鋳片製品Sに刻印を付与する際の押圧圧力を適切な値に制御することができるので、刻印作業の効率を向上させることができる。また、従来の刻印装置では、刻印が付与された鋼片をオペレータがライン外に搬出し、搬出した鋼片に付与されている刻印の品質を目視によって確認していた。これに対して、本発明の一実施形態である刻印装置1は、上述の刻印評価部5を備えるので、刻印の品質の評価に要する労力および時間を削減できる。
【0031】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例、および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1 鋼片刻印装置
2 製品固定部
2a 上側クランプアーム
2b 下側クランプアーム
3 試料固定部
3a,3b フレーム
3c,3d アングル
3e 支持部
4 刻印付与部
4a ヘッド部
4b 刻印ピン
4c 打刻用シリンダー
5 刻印評価部
5a レーザー距離計
6 制御装置
S 鋼片
T 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼片製品を固定する製品固定部と、
刻印試験を行うための前記鋼片製品と同種の鋼片試料を固定する試料固定部と、
前記製品固定部および前記試料固定部にそれぞれ固定された鋼片製品および鋼片試料に印体を押圧することによって該鋼片製品および該鋼片試料の表面に刻印を付与する刻印付与部と、
を備えることを特徴とする刻印装置。
【請求項2】
前記刻印付与部によって前記鋼片試料に付与された刻印の品質を測定する刻印評価部を備えることを特徴とする請求項1に記載の刻印装置。
【請求項3】
前記刻印評価部は、前記刻印にレーザー光を照射することによって前記刻印の深さを測定するレーザー距離計であることを特徴とする請求項2に記載の刻印装置。
【請求項4】
前記刻印評価部によって測定された刻印の品質に基づいて前記鋼片製品に対する前記印体の押圧圧力を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の刻印装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−75298(P2013−75298A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215002(P2011−215002)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】