説明

剥離層用ペースト及び積層型電子部品の製造方法

【課題】 電極層を形成するための電極層用ペーストに対してシートアタックされず、しかも該ペーストの印刷時に削れることのない剥離層を形成可能な、積層型電子部品を製造するために用いる剥離層用ペーストを提供すること。
【解決手段】積層型電子部品を製造するために用いる剥離層用ペーストであって、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテートを含む電極層用ペーストと組み合わせて使用され、セラミック粉末と、有機ビヒクルと、可塑剤と、分散剤とを含み、前記有機ビヒクル中のバインダが、アクリル樹脂を主成分とし、前記アクリル樹脂が、アクリル酸エステル単量体単位とメタクリル酸エステル単量体単位を主成分とし、1〜10mgKOH/gの酸価を持つ共重合体で構成されており、前記セラミック粉末と、前記バインダ及び可塑剤との比(P/B)が、0.67〜5.56(但し、0.67と5.56を除く)に制御されていることを特徴とする剥離層用ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品を製造するために用いる剥離層用ペーストと、該剥離層用ペーストを用いた積層型電子部品の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化により、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の小型化・高性能化が進んでおり、積層型電子部品の層間誘電体層(一対の内部電極間に挟まれる誘電体層)厚みは1μm以下、積層数は800層を越えるようになってきている。このような電子部品の製造工程では、焼成後に誘電体層を形成しうるグリーンシートの厚みが極めて薄くなるために(通常1.5μm以下)、印刷工法による電極層形成時に、電極層用ペーストの溶剤によってグリーシートが溶解する、いわゆるシートアタック現象が問題となってくる。このシートアタック現象はグリーンシートの欠陥、ショート不良に直結するために、薄層化を推進するためには絶対に解決しなければならない課題である。
【0003】
このようなシートアタックを解消するために、特許文献1〜3では、電極層用ペーストを支持体フィルムに所定パターンで形成した後に乾燥させて得られる乾式タイプの電極層を別に準備し、この乾式タイプの電極層を、各グリーンシートの表面、あるいはグリーンシートの積層体の表面に転写する所定パターンの電極層の転写法が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3の技術では、所定パターンの電極層を支持フィルムから剥離することが難しいという課題を有していた。
【0005】
そこで、本発明者らは、支持フィルムと所定パターンの電極層との間に、電極層の剥離性を向上させるための剥離層を形成する技術を提案した(特許文献4参照)。
【0006】
この特許文献4では、剥離層を形成するために用いる剥離層用ペーストとしては、バインダを溶剤に溶解させた有機ビヒクル中に少なくともセラミック粉末と可塑剤を溶解させたものを用い、有機ビヒクル中のバインダとしては、グリーンシートに含まれるバインダと同一、つまりブチラール樹脂が使用されていた。また、所定パターンの電極層を形成するために用いる電極層用ペーストに含まれる有機ビヒクル中の溶剤としては、ターピネオールまたはジヒドロターピネオールなどが使用されてきた。
【0007】
しかしながら、ターピネオールまたはジヒドロターピネオールを溶剤に使用した電極層用ペーストを、ブチラール樹脂をバインダとした剥離層と組み合わせて使用すると、電極層用ペーストの溶剤により剥離層がシートアタックされたり、また電極層用ペーストの印刷時に剥離層が削れてカスが発生することがあった。
【0008】
剥離層のシートアタックは剥離層の表面に形成される電極層や余白パターン層の滲み・ハジキ・ピンホールを生じさせる原因となり、また剥離層の削れは積層時の欠陥(構造欠陥)を生じさせ、ひいては最終物たる積層型電子部品のショート不良を増大させることにも成りかねない。
【0009】
従って、このような剥離層のシートアタックと削れを防止することが強く望まれていた。
【特許文献1】特開昭63−51616号公報
【特許文献2】特開平3−250612号公報
【特許文献3】特開平7−312326号公報
【特許文献4】特開2003−197457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、電極層を形成するための電極層用ペースト(必要に応じてさらに余白パターン層を形成するための余白パターン層用ペースト)に対してシートアタックされず、しかも該ペーストの印刷時に削れることのない剥離層を形成可能な、積層型電子部品を製造するために用いる剥離層用ペーストと、該剥離層用ペーストを用いた積層型電子部品の製造方法とを、提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、
積層型電子部品を製造するために用いる剥離層用ペーストであって、
ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテートを含む電極層用ペーストと組み合わせて使用され、
セラミック粉末と、有機ビヒクルと、可塑剤と、分散剤とを含み、
前記有機ビヒクル中のバインダが、アクリル樹脂を主成分とし、
前記アクリル樹脂が、アクリル酸エステル単量体単位とメタクリル酸エステル単量体単位を主成分とし、1〜10mgKOH/gの酸価を持つ共重合体で構成されており、
前記セラミック粉末と、前記バインダ及び可塑剤との比(P/B)が、0.67〜5.56(但し、0.67と5.56を除く)に制御されていることを特徴とする剥離層用ペーストが提供される。
【0012】
本発明によれば、
積層型電子部品を製造するために用いる剥離層用ペーストであって、
ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテートを含む電極層用ペーストと組み合わせて使用され、
セラミック粉末と、有機ビヒクルと、可塑剤と、分散剤とを含み、
前記有機ビヒクル中のバインダが、アクリル樹脂を主成分とし、
前記アクリル樹脂が、アクリル酸エステル単量体単位とメタクリル酸エステル単量体単位を主成分とし、1〜10mgKOH/gの酸価を持つ共重合体で構成されており、
前記セラミック粉末100重量部に対する前記バインダの含有量が12〜100重量部(但し、12重量部と100重量部を除く)であることを特徴とする剥離層用ペーストが提供される。
【0013】
好ましくは、前記組み合わせて使用する電極層用ペーストは、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、イソボニルアセテート、d−ジヒドロカルベオール、メンチルアセテート、シトロネオール、ペリリルアルコール、及びアセトキシ−メトキシエトキシ−シクロヘキサノールアセテートから選択される1種または2種以上を、さらに含む。
【0014】
好ましくは、前記アクリル樹脂は、その重量平均分子量が23万〜70万である。
【0015】
好ましくは、前記可塑剤が、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)及びフタル酸ブチルベンジル(BBP)から選ばれる一つ以上であり、前記セラミック粉末100重量部に対して5〜100重量部(但し、5重量部と100重量部を除く)含有されている。
【0016】
好ましくは、前記セラミック粉末が、0.2μm以下の平均粒径を持つものである。さらに好ましくは0.1μm以下である。
【0017】
好ましくは、前記分散剤が、ポリカルボン酸塩系分散剤であり、前記セラミック粉末100重量部に対して0.5〜3重量部含有されている。
【0018】
好ましくは、前記有機ビヒクル中の溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸エチル、酢酸ブチル及びトルエンの1種以上であり、不揮発分濃度が5〜20重量%となるように含有されている。
【0019】
本発明によれば、
離型処理が施された第1支持シートの前記離型処理側に剥離層を形成する工程と、
前記剥離層の表面に電極層を所定パターンで形成する工程と、
前記電極層の表面にグリーンシートを形成し、電極層を有するグリーンシートを得る工程と、
前記電極層を有するグリーンシートを積層し、グリーンチップを形成する工程と、
前記グリーンチップを焼成する工程とを、有する積層型電子部品の製造方法であって、
前記剥離層を形成するための剥離層用ペーストとして、上記いずれかの剥離層用ペーストを用いることを特徴とする積層型電子部品の製造方法が提供される。
【0020】
好ましくは、前記第1支持シートに施された離型処理が、シリコーンを主体とする剥離剤を用いたコーティング法により形成され、該第1支持シートの剥離力が7.3〜20.3mN/cm(但し、7.3mN/cmと20.3mN/cmを除く)に制御されている。
【0021】
好ましくは、前記剥離層用ペーストに含まれるセラミック粉末が、前記グリーンシートを形成するためのペーストに含まれるセラミック粉末と同じである。
【0022】
好ましくは、前記剥離層の厚みが、0.05〜0.2μmである。さらに好ましくは0.05〜0.1μmである。
【0023】
本発明の積層型電子部品の製造方法において、前記グリーンシートの形成前に、前記電極層が形成されていない前記剥離層の表面に、前記電極層と同じ厚みで、かつ前記グリーンシートと同じ材質で構成してある余白パターン層を形成してもよい。
【0024】
本発明の積層型電子部品の製造方法において、前記電極層を有するグリーンシートを積層する前に、前記電極層を有するグリーンシートの反電極層側表面に、接着層を形成し、前記接着層を介して、前記電極層を有するグリーンシートを積層してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の剥離層用ペーストは、たとえば、離型処理が施された第1支持シートの前記離型処理側に剥離層を形成する工程と、前記剥離層の表面に電極層を所定パターンで形成する工程と、前記電極層の表面にグリーンシートを形成し、電極層を有するグリーンシートを得る工程と、前記電極層を有するグリーンシートを積層し、グリーンチップを形成する工程と、前記グリーンチップを焼成する工程とを、有する積層型電子部品の製造方法において、前記剥離層を形成するために用いることができる。
【0026】
本発明の剥離層用ペーストは、そのペーストを構成するバインダ中に特定のアクリル樹脂を主成分として含有している。本発明でペースト中に含有させている特定のアクリル樹脂は、電極層や余白パターン層を形成するための電極層用ペーストや余白パターン層用ペースト中に溶剤として含まれるターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテートに対して溶解または膨潤されにくい(難溶)。このため、本発明の剥離層用ペーストを用いて形成された剥離層は、電極層用ペーストや余白パターン層用ペーストに対して、シートアタックされない効果を有する。その結果、本発明の剥離層用ペーストを用いて形成された剥離層に対する、電極層や余白パターン層を形成するための電極層用ペーストや余白パターン層用ペーストの印刷性が安定する。具体的には、剥離層の表面に形成される電極層や余白パターン層の滲み・ハジキ・ピンホールの発生を抑制することができる。電極層や余白パターン層の滲み・ハジキ・ピンホールは、剥離層の溶解により支持シートが出現することにより生じやすいが、本発明の剥離層用ペーストを用いて形成された剥離層は、電極層用ペーストや余白パターン層用ペーストに対して、シートアタックされないので、溶解による電極層や余白パターン層自身がヒビ割れず、さらに印刷が行われた場合でも、カス等の脱落が生じない。剥離層の表面に形成される電極層や余白パターン層の滲み・ハジキ・ピンホールが生じることがない。
【0027】
なお、このことは、電極層や余白パターン層を形成するための電極層用ペーストや余白パターン層用ペースト中に溶剤として、上記ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテートに加えて、さらに、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、イソボニルアセテート、d−ジヒドロカルベオール、メンチルアセテート、シトロネオール、ペリリルアルコール、及びアセトキシ−メトキシエトキシ−シクロヘキサノールアセテートから選択される1種または2種以上を併用した場合にも同様である。
【0028】
また、本発明の剥離層用ペーストを用いて形成された剥離層は、電極層用ペーストや余白パターン層用ペーストの印刷時に削れてカスが発生することがない。このため積層時の欠陥(構造欠陥)の発生が抑制され、最終的に得られる積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品のショート不良を軽減することができる。
【0029】
本発明において、好ましくは第1支持シートの剥離力を7.3〜20.3mN/cm(但し、7.3mN/cmと20.3mN/cmを除く)に制御することで、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテートを溶剤に使用した電極層用ペーストと組み合わせて使用しても、本発明の剥離層用ペーストを用いて形成された剥離層が第1支持シートから脱落することがない。
【0030】
積層型電子部品としては、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、積層圧電素子、積層チップインダクタ、積層チップバリスタ、積層チップサーミスタ、積層チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図、図2(A)〜図2(C)は本発明の一実施形態に係る電極層およびグリーンシートの形成方法を示す要部断面図、図3(A)〜図3(C)は本発明の一実施形態に係る接着層の形成方法を示す要部断面図、図4(A)、図4(B)および図5(A)、図5(B)は本発明の一実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図、図6(A)、図6(B)は本発明の他の実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図、図7(A)〜図7(C)および図8(A)〜図8(C)は本発明の他の実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図、図9(A)は実施例1の剥離層の表面に電極層用ペーストを1回印刷した後の剥離層の状態を示す写真、図9(B)は実施例1の剥離層の表面に電極層用ペーストを3000回印刷した後の剥離層の状態を示す写真、図10(A)は比較例1の剥離層の表面に電極層用ペーストを1回印刷した後の剥離層の状態を示す写真、図10(B)は比較例1の剥離層の表面に電極層用ペーストを3000回印刷した後の剥離層の状態を示す写真である。
【0032】
本実施形態では、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示して説明する。
【0033】
積層セラミックコンデンサ
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、誘電体層10と内部電極層12とが交互に積層された構成のコンデンサ素体4を有する。
【0034】
このコンデンサ素体4の両側端部には、素体4の内部で交互に配置された内部電極層12と各々導通する一対の外部電極6,8が形成してある。内部電極層12は、各側端面がコンデンサ素体4の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極6,8は、コンデンサ素体4の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層12の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0035】
コンデンサ素体4の外形や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は通常、縦(0.4〜5.6mm)×横(0.2〜5.0mm)×高さ(0.2〜1.9mm)程度とすることができる。
【0036】
誘電体層10は、図2(C)などに示されるグリーンシート10aを焼成して形成され、その材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウムおよび/またはチタン酸バリウムなどの誘電体材料で構成される。誘電体層10の厚みは、本実施形態では、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下に薄層化されている。
【0037】
内部電極層12は、図2(B)や図2(C)などに示される電極層用ペーストで構成される所定パターンの電極層12aを焼成して形成される。内部電極層12の厚さは、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下に薄層化されている。
【0038】
外部電極6,8の材質は、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。外部電極6,8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50μm程度である。
【0039】
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
【0040】
剥離層の形成
(1)本実施形態では、まず、図2(A)に示すように、キャリアシート20上に剥離層22を形成する。
【0041】
キャリアシート20としては、たとえばPETフィルムなどが用いられ、剥離性を改善するために、シリコーンなどを主体とする離型剤がコーティングしてあり、後述する剥離層22からのキャリアシート20の剥離力が、好ましくは7.3〜20.3mN/cm(但し、7.3mN/cmと20.3mN/cmを除く)、より好ましくは10〜18mN/cmの範囲に制御されている。剥離力をこの範囲に制御しておくことで、後述するように、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテートを溶剤に使用した電極層用ペーストと組み合わせて使用しても、後述の剥離層22がキャリアシート20から脱落することがない。キャリアシート20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmである。
【0042】
剥離層22の厚みは、好ましくは0.05〜0.2μm、より好ましくは0.05〜0.1μm程度とされる。剥離層22の厚みが薄すぎるとこれを形成した効果が得られなくなる一方で、剥離層22が厚すぎると後述する電極層12a(図2(B)参照)が、キャリアシート20から剥がれ難くなってしまい、剥離時に電極層12aが破損するおそれがある。
【0043】
剥離層22の形成方法は、きわめて薄い層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、剥離層用ペーストを用いた塗布法(たとえばワイヤーバーコーターまたはダイコーターによる)が用いられる。
【0044】
本実施形態で用いる剥離層用ペーストは、セラミック粉末と、有機ビヒクルと、可塑剤とを含有する。さらに、通常は離型剤も含有する。
【0045】
セラミック粉末としては、後述するグリーンシート10aに含まれるセラミック粉末と同じ組成のものが用いられる。こうすることで、焼成中に剥離層22の成分がグリーンシート10aと反応しても組成が変動しない。
【0046】
セラミック粉末の粒径は、ペースト形成・乾燥後の剥離層22の厚みより小さいことが好ましい。具体的には0.2μm以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1μm以下とする。
【0047】
セラミック粉末の平均粒径が大きすぎると剥離層22の薄層化が困難となる一方で、セラミック粉末の粒径があまりにも小さいと分散が非常に難しいので、その下限は、好ましくは0.01μmである。
【0048】
セラミック粉末は、剥離層用ペースト中の不揮発分濃度が5〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%となる範囲で含まれる。セラミック粉末の含有量が少なすぎるとペースト粘度が小さくなり塗布による層の形成が困難になる一方で、セラミック粉末の含有量が多すぎると塗布厚みを薄くすることが困難になる。
【0049】
有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを含有する。バインダとしては、本発明では特定のアクリル樹脂を主成分とする。バインダ中のアクリル樹脂の含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、アクリル樹脂と組み合わせて用いることが可能な樹脂としては、エチルセルロース、ポリビニルアセタール系樹脂などがある。ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアセタール(アセタール基R=CH)、ポリビニルアセトアセタール 、ポリビニルブチラール(アセタール基R=C)、ポリビニルホルマール(アセタール基R=H)、ポリビニルベンザール、ポリビニルフェニルアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルヘキサナール、ポリビニルベンザールなどが例示される。
【0050】
本実施形態で用いるアクリル樹脂は、アクリル酸エステル単量体単位とメタクリル酸エステル単量体単位(以下、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と略すこともある)を主成分とする共重合体で構成される。
【0051】
アクリル酸エステル単量体単位とメタクリル酸エステル単量体単位の共重合比は、たとえば前者にアクリル酸ブチル単量体単位を、後者にメタクリル酸メチル単量体単位を用いた場合、重量%基準で、たとえば10〜30:90〜70程度とすることができる。
【0052】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチルなどが挙げられるが、本実施形態では最終的な樹脂状態でそのガラス転移温度(Tg)が室温以上になる単量体を組み合わせて用いることが好ましい。
【0053】
アクリル樹脂中の、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計含有量は、95重量%以上であることが好ましく、より好ましくは100重量%である。ごく微量ではあるが、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と組み合わせて用いることが可能な第三の単量体単位としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と共重合可能であれば特に限定されないが、たとえば(メタ)アクリル酸単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、ビニルエステル単量体単位、ビニルエーテル単量体単位などがある。芳香族ビニル単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。ビニルエステル単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどが挙げられる。ビニルエーテル単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0054】
本実施形態で用いるアクリル樹脂は、酸価(アクリル樹脂1g中の遊離酸を中和するのに要するKOHのmg数)が1〜10mgKOH/g、好ましくは2〜7mgKOH/gである。アクリル樹脂の酸価はセラミック粉末との分散に関係するが、アクリル樹脂の酸価が上記範囲以外ではセラミック粉末の分散性が極めて悪くなる。実際に1mgKOH/g未満ではセラミック粉末は分散しない。一方で、10mgKOH/gを超えると、凝集効果が発生し、分散性が悪くなる上に剥離力が重くなる傾向にあるので好ましくない。
アクリル樹脂の酸価は、(メタ)アクリル酸単量体単位の配合量で調整することが可能である。たとえばアクリル酸単量体単位やメタクリル酸単量体単位の配合量を増加させると酸価は上昇し、逆に減少させると酸価は下降する傾向にある。アクリル樹脂の酸価は、JIS−K0070に準拠した方法により測定することができる。
【0055】
本実施形態で用いるアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)を用いたポリスチレン換算値で、好ましくは23万〜70万、より好ましくは40万〜70万である。重量平均分子量が小さすぎるとシートアタックがされやすく、逆に高すぎると分散が難しくなる。
【0056】
本実施形態で用いるアクリル樹脂は、ガラス転移温度Tgが高いほうが好ましく、より好ましくはTgが室温以上のアクリル樹脂を用いる。Tgが室温以上のアクリル樹脂を使用することにより、剥離層22の剥離強度をより低くすることができる。
【0057】
バインダは、剥離層用ペースト中に、前記セラミック粉末100重量部に対して12〜100重量部(但し、12重量部と100重量部を除く)、好ましくは24〜50重量部で含まれる。バインダ量が少なすぎると剥離層22の強度が弱くなり、多すぎると電極層12a及び余白パターン層24の剥離が重くなる傾向がある。
【0058】
または、前記セラミック粉末と、前記バインダ及び後述の可塑剤との比(P/B)が、0.67〜5.56(但し、0.67と5.56を除く)、好ましくは1.0〜2.78に制御されるように、バインダ量を調整する。(P/B)が小さすぎると剥離層22の強度が弱くなり、大きすぎると電極層12a及び余白パターン層24の剥離が重くなる傾向がある。
【0059】
溶剤としては、特に限定されず、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ミネラルスピリット、メチルイソブチルケトン(MIBK)、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸ブチルなどが例示されるが、好ましくはアセトン、MEK、MIBK、酢酸エチル、酢酸ブチル及びトルエンの1種以上を用いる。
【0060】
溶剤は、剥離層用ペースト中の不揮発分濃度が5〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%となる範囲で含まれる。溶剤量が少なすぎると薄く塗布する事が難しく、多すぎると粘度が低くなりすぎ、粉体が沈降しやすく分離しやすいなどの不都合がある。
【0061】
可塑剤としては、特に限定されないが、フタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。本実施形態では、好ましくは、アジピン酸ジオクチル(DOA)、フタル酸ブチルブチレングリコール(BPBG)、フタル酸ジドデシル(DDP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、セバシン酸ジブチルなどが用いられる。中でも、DBP、DOP及びBBPから選ばれる一つ以上を用いることが特に好ましい。DBP、DOP及びBBPから選ばれる一つ以上を用いることで剥離強度が低くなるメリットがある。
【0062】
可塑剤は、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは5〜100重量部(但し、5重量部と100重量部を除く)、より好ましくは20〜70重量部で含有される。可塑剤は、有機ビヒクル中のバインダのTgを制御し、添加されることで剥離層の剥離強度は重くなるが、スタック性(積層時の接着性)は改善する。基本的に可塑剤の添加ゼロでも問題ないが、スタック性・転写等を改善するために添加する場合、その上限は、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは100重量部である。これは、可塑剤添加によって、剥離層の粘着性が増加し、スクリーンに粘着したり、走行系に付着するために、連続で印刷が難くなるためである。
【0063】
分散剤としては、特に限定されないが、ポリカルボン酸塩系分散剤、ノニオン系分散剤などが例示される。その他、ブロックポリマー型分散剤やグラフトポリマー型分散剤もある。本実施形態では、好ましくは、ポリカルボン酸塩系分散剤が用いられる。
【0064】
分散剤は、セラミック粉末100重量部に対して、好ましくは0.5〜3重量部、より好ましくは1〜1.5重量部で含有される。分散剤は、顔料(セラミック粉末)の分散性の向上と塗料の安定性(経時変化)を改善する効果を有する。
【0065】
分散剤の含有量が少なすぎるとこれを添加する効果が不十分となり、多すぎるとミセル形成や再凝集による分散性低下の不都合を生じることがある。
【0066】
離型剤としては、特に限定されないが、パラフィン、ワックス、脂肪酸エステル類、シリコーン油などが例示される。ここで用いる剥離剤は、グリーンシート10aに含まれる剥離剤と同じでも良いし、異なっていても良い。
【0067】
離型剤は、有機ビヒクル中のバインダ100重量部に対して、好ましくは5〜20重量部、より好ましくは5〜10重量部で含有される。
【0068】
なお、剥離層用ペーストには、さらに、帯電助剤などの添加剤が含有されても良い。
【0069】
剥離層用ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混合し、スラリー化することにより形成することができる。
【0070】
この剥離層用ペーストは、キャリアシート20上に塗布され、その後、乾燥されて剥離層22が形成される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜100℃であり、乾燥時間は、好ましくは1〜10分である。
【0071】
電極層の形成
(2)次に、図2(B)に示すように、キャリアシート20上に形成された剥離層22の表面に、焼成後に図1に示す内部電極層12となる所定パターンの電極層(内部電極パターン)12aを形成する。
【0072】
電極層12aの厚さは、好ましくは0.1〜2.0μm、より好ましくは0.1〜1.0μm程度である。電極層12aの厚さは、現状の技術では前記範囲の程度であるが、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。電極層12aは、単一の層で構成してあってもよく、あるいは2以上の組成の異なる複数の層で構成してあってもよい。なお、本実施形態では、剥離層22上に電極層12aを形成するため、電極はじきを有効に防止することができ、電極層12aの形成を良好かつ高精度に行うことができる。
【0073】
電極層12aの形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されず、たとえば電極層用ペーストを用いたスクリーン印刷法あるいはグラビア印刷法などの厚膜形成方法、あるいは蒸着、スパッタリングなどの薄膜法が挙げられるが、本実施形態では、電極層用ペーストを用い、厚膜法の1種であるスクリーン印刷法あるいはグラビア印刷法を用いる場合を例示する。
【0074】
本実施形態で用いる電極層用ペーストは、導電性粉末と有機ビヒクルとを含有する。
【0075】
導電性粉末としては、特に限定されないが、Cu、Niおよびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種で構成してあることが好ましく、より好ましくはNiまたはNi合金、さらにはこれらの混合物で構成される。
【0076】
NiまたはNi合金としては、Mn、Cr、CoおよびAlから選択される少なくとも1種の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P、Fe、Mgなどの各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。
【0077】
このような導電性粉末は、球状、リン片状等、その形状に特に制限はなく、また、これらの形状のものが混合したものであってもよい。また、導電性粉末の粒子径は、球状の場合、通常0.1〜2μm、好ましくは0.2〜1μm程度のものを用いる。
【0078】
導電性粉末は、電極層用ペースト中に、好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜50重量%で含まれる。
【0079】
有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを含有する。バインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂、ポリビニルアセタールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、または、これらの共重合体などが例示されるが、本実施形態では特にポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂を用いる。バインダは、電極層用ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは8〜20重量部で含まれる。
【0080】
溶剤としては、特に限定されず、ターピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン、アセトン、イソボニルアセテートなどが例示されるが、本実施形態では特にターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテート(以下、これらの溶剤を、適宜、ターピネオール誘導体という)を用いる。これらの溶剤は、1種または2種以上を混合して用いても良い。溶剤は、電極層用ペースト中に、好ましくは20〜65重量%、より好ましくは30〜50重量%で含まれる。
【0081】
本実施形態においては、溶剤として、上述したターピネオール誘導体に加えて、さらに、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、イソボニルアセテート、d−ジヒドロカルベオール、メンチルアセテート、シトロネオール、ペリリルアルコール、及びアセトキシ−メトキシエトキシ−シクロヘキサノールアセテート(以下、これらの溶剤を、適宜、他の溶剤という)から選択される1種または2種以上を含有していても良い。
【0082】
本実施形態で用いる電極層用ペーストにおいては、上述のターピネオール誘導体を必須として含み、必要に応じて、上述の他の溶剤を添加すれば良いが、ターピネオール誘導体と他の溶剤とを併用する場合には、ターピネオール誘導体と他の溶剤との割合を、ターピネオール誘導体:他の溶剤=100:0〜50:50(重量比)とすることが好ましい。ターピネオール誘導体の含有量が50重量%未満では、電極層用ペーストを作製する際の塗料化が困難となる傾向にある。なお、他の溶剤を使用する場合における、ターピネオール誘導体と他の溶剤との合計の含有量は上述の範囲とする。
【0083】
電極層用ペースト中には、上記剥離層用ペーストと同様に、後述するグリーンシート10aに含まれるセラミック粉末と同じ組成のセラミック粉末が共材として含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。共材として用いるセラミック粉末は、電極層用ペースト中に、導電性粉末100重量部に対して、好ましくは5〜25重量部で含まれる。
【0084】
電極層用ペーストには、グリーンシートとの接着性を改善する目的で、可塑剤または粘着剤が含まれることが好ましい。可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。可塑剤は、有機ビヒクル中のバインダ100重量部に対して、好ましくは10〜300重量部で含有される。可塑剤含有量が少なすぎると添加効果がなく、多すぎると形成される電極層12aの強度が著しく低下し、しかも電極層12aから過剰な可塑剤が滲み出す傾向がある。
【0085】
電極層用ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混合し、スラリー化することにより形成することができる。
【0086】
余白パターン層の形成
(3)本実施形態では、剥離層22の表面に、所定パターンの電極層12aを印刷法で形成した後、またはその前に、図2(B)に示す電極層12aが形成されていない剥離層22の表面隙間(余白パターン部分50)に、電極層12aと同じ厚みの余白パターン層24を形成する。余白パターン層24の厚さを電極層12aと同じ厚みとするのは、実質的に同じでないと段差が生じるからである。
【0087】
余白パターン層24は、後述するグリーンシート10aと同じ材質で構成される。また、余白パターン層24は、電極層12aあるいは、後述するグリーンシート10aと同様な方法(余白パターン層用ペーストを用いる)で形成することができる。
【0088】
この余白パターン層用ペーストは、電極層12a間の余白パターン部分50に塗布される。その後、電極層12aおよび余白パターン層24は、必要に応じて乾燥される。乾燥温度は、特に限定されないが、好ましくは70〜120℃であり、乾燥時間は、好ましくは5〜15分である。
【0089】
グリーンシートの形成
(4)次に、図2(C)に示すように、電極層12a及び余白パターン層24の表面に、焼成後に図1に示す誘電体層10となるグリーンシート10aを形成する。
【0090】
グリーンシート10aの厚さは、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは0.5〜10μm程度である。
【0091】
グリーンシート10aの形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では誘電体ペーストを用い、ドクターブレード法を用いる場合を例示する。
【0092】
本実施形態で用いる誘電体ペーストは、通常、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペーストで構成される。
【0093】
セラミック粉末としては、複合酸化物や酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択され、混合して用いることができる。セラミック粉末は、通常、平均粒子径が0.4μm以下、好ましくは0.1〜3.0μm程度の粉体として用いられる。なお、きわめて薄いセラミックグリーンシートを形成するためには、セラミックグリーンシート厚みよりも細かい粉体を使用することが望ましい。
【0094】
有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを含有する。バインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂などの通常の各種バインダが例示される。溶剤としては、特に限定されず、ターピネオール、アルコール、ブチルカルビトール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、キシレン、酢酸エチル、ステアリン酸ブチル、イソボニルアセテートなどの通常の有機溶剤が例示される。
【0095】
誘電体ペースト中の各成分の含有量は、特に限定されるものではなく、通常の含有量、たとえばバインダは1〜5質量%程度、溶剤(または水)は10〜50質量%程度とすればよい。
【0096】
誘電体ペースト中には、必要に応じて、各種分散剤、可塑剤、誘電体、副成分化合物、ガラスフリット、絶縁体などから選択される添加物が含有されていてもよい。誘電体ペースト中に、これらの添加物を添加する場合には、総含有量を、約10重量%以下にすることが望ましい。
【0097】
可塑剤としては、フタル酸ジオクチルやフタル酸ベンジルブチルなどのフタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
バインダとしてブチラール樹脂を用いる場合の可塑剤は、バインダ樹脂100重量部に対して、25〜100重量部の含有量であることが好ましい。可塑剤が少なすぎるとグリーンシートが脆くなる傾向にあり、多すぎると可塑剤が滲み出し、取り扱いが困難である。
【0098】
以上のような誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法などにより、電極層12a及び余白パターン層24の表面に、グリーンシート10aを形成する。
【0099】
接着層の形成
(5)本実施形態では、次に、上記のキャリアシート20とは別に、図3(A)に示すように、第2支持シートとしてのキャリアシート26の表面に接着層28が形成してある接着層転写用シートを準備してもよい。
【0100】
キャリアシート26は、キャリアシート20と同じ材質のシートで構成することができる。接着層28の厚みは、好ましくは0.3μm以下であり、しかもグリーンシート10aに含まれるセラミック粉末の平均粒径よりも薄いことが好ましい。
【0101】
キャリアシート26表面への接着層28の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されないが、本実施形態では、接着層用ペーストを用い、たとえばバーコータ法、ダイコータ法、リバースコータ法、ディップコーター法、キスコーター法などの方法が用いられる。
【0102】
本実施形態で用いる接着層用ペーストは、有機ビヒクルと可塑剤とを含有する。
【0103】
有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを含有する。バインダとしては、グリーンシート10aに含まれるバインダと同じでも良いし、異なっていても良い。溶剤は、特に限定されず、上述した如き通常の有機溶剤が使用可能である。
【0104】
可塑剤としては、特に限定はないが、フタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが例示される。
【0105】
接着層用ペーストには、グリーンシート10aに含まれるセラミック粉末と同じ組成のセラミック粉末が含まれていても良く、さらにイミダゾリン系帯電除剤などの帯電除剤が含まれていても良い。
【0106】
接着層用ペーストは、上記各成分を、ボールミルなどで混合し、スラリー化することにより形成することができる。
【0107】
この接着層用ペーストは、第2支持シートとしてのキャリアシート26の表面に、上記各種塗布方法により塗布・形成され、その後、接着層28は、必要に応じて乾燥される。
【0108】
積層体ユニットの形成
(6)次に、図2(C)に示す電極層12aおよび余白パターン層24上に形成されたグリーンシート10aの表面に、接着層28を形成し、図3(C)に示す積層体ユニットU1aを得る。
【0109】
本実施形態では、接着層28の形成方法として転写法を採用している。すなわち、図3(A)、図3(B)に示すように、上記のようにして準備された接着層転写用シートの接着層28を、グリーンシート10aの表面に押し付け、加熱加圧して、その後キャリアシート26を剥がすことにより、図3(C)に示すように、接着層28をグリーンシート10aの表面に転写し、積層体ユニットU1aを得る。
【0110】
接着層28を、転写法にて形成することにより、接着層の成分のグリーンシート10a、あるいは電極層12aや余白パターン層24への染み込みを有効に防止することができる。そのため、グリーンシート10a、あるいは電極層12aや余白パターン層24の組成に悪影響を与えるおそれがない。さらに、接着層28を薄く形成した場合でも、接着層の成分が、グリーンシート10a、あるいは電極層12aや余白パターン層24へ染み込むことがないため、接着性を高く保つことができる。
【0111】
転写時の加熱温度は、40〜100℃が好ましく、また、加圧力は、0.2〜15MPaが好ましい。加圧は、プレスによる加圧でも、カレンダロールによる加圧でも良いが、一対のロールにより行うことが好ましい。
【0112】
グリーンチップの形成
(7)次に、得られた積層体ユニットU1aを、複数積層することにより、グリーンチップを形成する。
【0113】
本実施形態では、積層体ユニットU1aの積層は、図4(A)、図4(B)および図5(A)、図5(B)に示すように、接着層28を介して、各積層体ユニット同士を接着することにより行う。以下、積層方法について説明する。
【0114】
まず、図4(A)に示すように、上記にて作製した積層体ユニットU1aと、積層体ユニットU1aと同様の方法により作製した別の積層体ユニットU1bとを準備する。
【0115】
次に、積層体ユニットU1bから、キャリアシート20を剥がし、積層体ユニットU1bを、キャリアシート20が剥離された状態とする。本実施形態では、積層体ユニットU1bは、剥離層22を介してキャリアシート20上に形成されているため、積層体ユニットU1bからのキャリアシート20の剥離を、容易かつ良好に行うことができる。また、剥離時に、電極層12aや余白パターン層24を破損させることもない。なお、剥離層22は、キャリアシート20とともに、積層体ユニットU1bから剥離されることが好ましいが、少量程度なら、積層体ユニットU1b側に残存しても構わない。この場合においても、その残存している剥離層22は、グリーンシート10aや電極層12aに比較して十分薄く、しかも、剥離層22に含有される誘電体は、焼成後にグリーンシート10aと同じように誘電体層10の一部を構成することとなるため、問題となることはない。
【0116】
次に、図4(B)に示すように、キャリアシート20が剥離された積層体ユニットU1bと、積層体ユニットU1aとを、積層体ユニットU1aの接着層28を介して、接着し、積層する。
【0117】
次に、図5(A)、図5(B)に示すように、同様にして、積層体ユニットU1b上に、別の積層体ユニットU1cを、積層体ユニットU1bの接着層28を介して、接着し、積層する。そして、この図5(A)、図5(B)に示す工程を繰り返すことにより、複数の積層体ユニットを積層する。
【0118】
最後に、この積層体の上面および/または下面に、外層用のグリーンシートを積層し、最終加圧を行い、その後、積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを形成する。なお、最終加圧時の圧力は、好ましくは10〜200MPaとし、加熱温度は、好ましくは、40〜100℃とする。
【0119】
グリーンチップの焼成など
(8)得られたグリーンチップは、脱バインダ処理、焼成処理が行われ、さらに必要に応じて誘電体層を再酸化させるための熱処理が行われる。そして、形成された焼結体で構成されるコンデンサ素体4に、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、外部電極6,8を形成して、積層セラミックコンデンサ2が製造される。製造された積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0120】
本実施形態の剥離層用ペーストは、そのペーストを構成するバインダ中に特定のアクリル樹脂を主成分として含有している。本実施形態でペースト中に含有させている特定のアクリル樹脂は、電極層12aや余白パターン層24を形成するための電極層用ペーストや余白パターン層用ペースト中に溶剤として含まれるターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテート(ターピネオール誘導体)に対して溶解または膨潤されにくい(難溶)。このため、本実施形態の剥離層用ペーストを用いて形成された剥離層22は、電極層用ペーストや余白パターン層用ペーストに対して、シートアタックされない効果を有する。その結果、本実施形態の剥離層用ペーストを用いて形成された剥離層22に対する、電極層12aや余白パターン層24を形成するための電極層用ペーストや余白パターン層用ペーストの印刷性が安定する。具体的には、剥離層22の表面に形成される電極層12aや余白パターン層24の滲み・ハジキ・ピンホールの発生を抑制することができる。また、溶解による電極層12aや余白パターン層24自身がヒビ割れず、さらに印刷が行われた場合でも、カス等の脱落が生じない。なお、このことは、電極層12aや余白パターン層24を形成するための電極層用ペーストや余白パターン層用ペースト中に溶剤として、上記ターピネオール誘導体に加えて、さらに、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、イソボニルアセテート、d−ジヒドロカルベオール、メンチルアセテート、シトロネオール、ペリリルアルコール、及びアセトキシ−メトキシエトキシ−シクロヘキサノールアセテートから選択される1種または2種以上を併用した場合にも同様である。
【0121】
また、本実施形態の剥離層用ペーストを用いて形成された剥離層22は、電極層用ペーストや余白パターン層用ペーストの印刷時に削れてカスが発生することがない。このため積層時の欠陥(構造欠陥)の発生が抑制され、最終的に得られる積層セラミックコンデンサ2のショート不良を軽減することができる。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0123】
たとえば、本発明の方法は、積層セラミックコンデンサの製造方法に限らず、その他の積層型電子部品の製造方法としても適用することが可能である。
【0124】
接着層28の形成方法は、転写法に限定されず、接着層用ペーストを第2支持シートとしてのキャリアシート26の表面に塗布することなく、直接、グリーンシート10a上に塗布し、乾燥させて接着層28を形成しても良い。
【0125】
積層体ユニットの積層方法は、図6に示すように、あらかじめ、積層体ユニットU1aからキャリアシート20を剥離して、外層用のグリーンシート30(電極層が形成されていないグリーンシートを複層積層した厚めの積層体)上に、積層体ユニットU1aを形成して、積層しても良い。
【0126】
また、積層体ユニットの積層方法は、たとえば図7、図8に示すように、積層体ユニットを積層した後に、キャリアシート20を剥離する工程を採用することもできる。すなわち、図7(A)、図7(B)に示すように、まず、外層用のグリーンシート30上に、キャリアシート20を剥離していない積層体ユニットU1aを、接着層28を介して、接着し、積層する。次に、図7(C)に示すように、積層体ユニットU1aからキャリアシート20を剥離する。次に、図8(A)〜図8(C)に示すように、同様にして、積層体ユニットU1a上に、別の積層体ユニットU1bを、積層体ユニットU1bの接着層28を介して、接着し、積層する。そして、この図8(A)〜図8(C)に示す工程を繰り返すことにより、複数の積層体ユニットを積層する。次いで、この積層体の上面に、外層用のグリーンシートを積層し、最終加圧を行い、その後、積層体を所定サイズに切断し、グリーンチップを形成することができる。なお、図7、図8に示す工程を採用した場合においては、接着層28の接着力を剥離層22の粘着力よりも強くすることにより、キャリアシート20を、選択的かつ容易に剥離することができるため、特に有効である。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0128】
実施例1
剥離層用ペーストの作製
添加物スラリーの調製
まず、添加物(副成分)原料として、(Ba,Ca)SiO:1.48重量部、Y:1.01重量部、MgCO:0.72重量部、MnO:0.13重量部およびV:0.045重量部を準備した。次に、準備された添加物(副成分)原料を混合し、添加物(副成分)原料混合物を得た。
【0129】
次に、得られた添加物原料混合物:4.38重量部および酢酸エチル:13.9重量部を、ボールミルを使用して混合粉砕し、添加物スラリーを得た。混合粉砕は、250ccポリエチレン製樹脂容器を用い、2mmφのZrOメディア450gを投入し、周速45m/分および20時間の条件で行った。粉砕後の添加物原料の粒径はメジアン径は0.1μmであった。
【0130】
1次スラリーの作製
次に、得られた添加物スラリー:全量、平均粒径0.1μmのBaTiO粉末(BT−01/堺化学工業(株)):100重量部、酢酸エチル:107.9重量部、トルエン:21.4重量部、ポリカルボン酸塩系分散剤:1.5重量部をボールミルを使用して混合粉砕した。混合粉砕は、1リットルのポリエチレン製樹脂容器を用い、2mmφのZrOメディア18gを投入し、周速45m/分および4時間の条件で行った。
【0131】
その後(4時間混合後)、ミネラルスピリット:7.0重量部、アクリル樹脂(粉末):6.5重量部を追加添加し、更に16時間ボールミルで混合を行い、1次スラリーを得た。アクリル樹脂としては、Tg70℃、分子量45万、酸価5mgKOH/gの、アクリル酸ブチル単量体単位とメタクリル酸メチル単量体単位からなる共重合体(重量%基準の共重合比=18:82)を使用した。得られた1次スラリーの不揮発分濃度は32.6%であった。
【0132】
なお、本実施例では、上記(BaTiO粉末+添加物原料混合物)=セラミック粉末(平均粒径0.1μm)とした。
【0133】
1次スラリーの希釈
本実施例では、高分散かつ低濃度のスラリーを1工程で製造することが困難であるため、まず、比較的濃度の高い1次スラリーを作製し、次いで、この1次スラリーを希釈することにより、剥離層用ペーストを製造する。
【0134】
具体的には、得られた1次スラリーを、アクリル樹脂量の総量を50重量部、不揮発分濃度15%になるように、下記調製のバインダーラッカーと1次スラリ全量をボールミルを使用して混合した。混合は、3リットルのポリエチレン製樹脂容器を用い、周速45m/分および4時間の条件で行った。なお、バインダーラッカーは、酢酸エチル:727.5重量部、トルエン:80.8重量部、可塑剤(BBP):26.08重量部及びアクリル樹脂:45.40重量部を準備し、これらを混合し、50℃で加熱溶解して調製した。
【0135】
混合後のスラリーは、不揮発分濃度15%、セラミック粉末100重量部に対するアクリル樹脂量が50重量部、可塑剤の含有量がアクリル樹脂100重量部に対して50重量部(セラミック粉末100重量部対しては25重量部)、セラミック粉末とアクリル樹脂及び可塑剤との比(P/B)は1.33であった(表1の試料3)。
【0136】
高分散処理
得られた混合後のスラリーを湿式ジェットミル((株)スギノマシン製 HJP−25005)を使用して、処理することにより、剥離層用ペーストを作製した。処理条件は、圧力100MPaで、処理回数は、1回とした。
【0137】
剥離層の形成
作製された剥離層用ペーストを、表面にシリコーンを主体とする剥離剤をコーティングにより施した離型処理(剥離力:10.5mN/cm)を持つ厚み38μmのPETフィルム(第1支持シート)の表面に、バーコーター(番定#2)を使用し、塗布速度4/minの条件で塗布した後、炉内温度を60℃とした乾燥炉にて1分乾燥することにより、乾燥膜厚が0.1μmの剥離層を形成した。
【0138】
剥離層の評価
シートアタック
剥離層のシートアタックの評価は、下記の印刷性の評価に用いた電極層用ペーストと余白パターン層用ペーストを、剥離層の表面に印刷し、電極層や余白パターン層を形成した後、剥離層の電極層及び余白パターン層とは反対面(PETフィルムに接する面)より顕微鏡を用いて観察し、変形度合いと色合いにより剥離層の溶解度合いを確認することにより行った。剥離層の溶解を確認できなかった場合を○、確認できた場合を×として判断した。
【0139】
その結果、剥離層の溶解を観察できず、○であった。
【0140】
印刷性
印刷性の評価は、剥離層の表面に、電極層用ペーストと余白パターン層用ペーストを印刷し、剥離層の表面に形成される電極層や余白パターン層の滲み・ハジキ・ピンホールの発生を目視観察することにより行った。
【0141】
具体的には、まず、剥離層の表面に、バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)、溶剤としてターピネオールからなるNi電極ペースト(電極層用ペースト)を、Ni金属付着量0.55mg/cmとなるようにスクリーン印刷機により印刷し、90℃および2分の条件で乾燥し、乾燥膜厚1μmの所定パターンの電極層12aを形成した。次に、剥離層の表面の電極層12aが形成されていない部分に、バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)、溶剤としてターピネオールからなる、BaTiOペースト(余白パターン層用ペースト)を、BaTiO付着量0.43mg/cmとなるようにスクリーン印刷機により印刷し、90℃および2分の条件で乾燥し、余白パターンを形成した。余白パターンの印刷には、上記電極層用ペーストを印刷する際に使用したパターンと、相補的なパターンとなっているスクリーン製版を使用した。余白パターンは、乾燥膜厚が電極層と同じ厚みとなるように形成した。その後、剥離層の表面に形成された電極層や余白パターン層の滲み・ハジキ・ピンホールの発生を目視観察することにより行った。電極層や余白パターン層の滲み・ハジキ・ピンホールの発生をいずれも確認できなかった場合を○、いずれか一つ以上を確認できた場合を×として判断した。
【0142】
その結果、電極層や余白パターン層の滲み・ハジキ・ピンホールの発生をいずれも確認できず、○であった。
【0143】
シートカス
シートカスの評価は、上記印刷性の評価に用いた電極層用ペーストと余白パターン層用ペーストを、剥離層の表面に印刷したときに、剥離層が削れて、カスが発生するか否かを目視観察することにより行った。剥離層のカスを確認できなかった場合を○、確認できた場合を×として判断した。
【0144】
その結果、剥離層のカスを確認できず、○であった。
【0145】
電極層用ペースト付着量の変動(電極印刷状態)
電極層用ペースト付着量の変動の評価は、上記印刷性の評価の際に用いた電極層用ペーストを、剥離層の表面に3000回印刷し、印刷開始・終了後の電極層用ペースト付着量を測定し、その付着量の変動量を算出した。この変動量は、上記電極層のハジキや剥離層のシートアタックにより変動する。本実施例では、その変動量が10%未満であった場合を○、10%以上であった場合を×として判断した。
【0146】
その結果、電極層用ペースト付着量の変動量は2.7%であり、○であった。電極層用ペーストを剥離層の表面に1回印刷した後の剥離層状態と、電極層用ペーストを剥離層の表面に3000回印刷した後の剥離層状態との写真を図9(A)及び図9(B)に示す。図9(A)及び図9(B)に示すように、実施例1の剥離層によれば、電極層用ペーストを3000回印刷しても未だ剥離層の状態が良好であることが確認できる。
【0147】
電極層と余白パターン層の剥離性
剥離層からの電極層と余白パターン層の剥離性の評価は、上記印刷性の評価に用いた電極層用ペーストと余白パターン層用ペーストを、剥離層の表面に印刷し、電極層や余白パターン層を形成した後、剥離層から電極層と余白パターン層を剥がす際の剥離強度を測定することにより行った。
【0148】
具体的には、たとえば図2(B)に示す状態のシートを両面テープ(スコッチST−416)を用いて、PETフィルム(図2(B)におけるキャリアシート20に相当)が上になるように試料台に貼り付け、次にPETフィルムの一端をシートの平面に対して90度の方向に8mm/min.の速度で引き上げ、その時に、PETフィルムキャリアシート20に作用する力(mN/cm)を電極層と余白パターン層の剥離強度として測定した(90゜剥離試験法)。
【0149】
剥離強度を低くすることにより、電極層及び余白パターン層からのPETフィルムの剥離を良好に行うことができる。また、剥離時における電極層及び余白パターン層の破損も有効に防止することができるため、剥離強度は低いほうが好ましい。その一方で、剥離強度が、後述の接着層やグリーンシートの転写時の剥離強度より低いと、接着層やグリーンシートの転写が困難になる。そこで本実施例では10mN/cm以上を良好とした。その反面、剥離強度が高すぎると、積層時に電極層及び余白パターン層からのPETフィルムの剥離が困難になる。そこで本実施例では20mN/cm以下を良好とした。
【0150】
その結果、15.9mN/cmと適正な値を示した。これにより、本実施例の剥離層はPETフィルムに対して必要な保持力を維持できるとともに、剥離作業の効率性が期待できる。
【0151】
表面粗さ
表面粗さの評価は、上記印刷性の評価に用いた電極層用ペーストと余白パターン層用ペーストを、剥離層の表面に印刷し、電極層や余白パターン層を形成した後、電極層および余白パターン表面の表面粗さ(Ra:表面粗さ実効値)を、株式会社小阪研究所製「サーフコーダー(SE−30D)」(商品名)を用いて測定した。表面粗さが大きいとショート不良を生じる。そこで本実施例ではRaが0.1μm以下である場合を良好であると判断した。
【0152】
その結果、Raが0.077μmと適正な値を示した。これにより、ショート不良低減のメリットが期待できる。
【0153】
以上の結果を、後述の表1に示す。
【0154】
実施例2
アクリル樹脂の酸価を表1のように変動させた以外は、実施例1と同様に剥離層用ペーストを作製し、同様の評価を行った(試料1,2,4,5)。結果を表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
表1に示すように、酸価が0mgKOH/gであると表面粗さが増大した。また、酸価が15mgKOH/gであると電極層の剥離強度と表面粗さが増大した。これに対し、酸価が適正範囲(1〜10mgKOH/g)にあるアクリル樹脂を用いた場合、すべての特性を満足することができることが確認できた。
【0157】
実施例3
セラミック粉末100重量部に対するアクリル樹脂及び可塑剤の含有量(重量部)を変化させることで、セラミック粉末100重量部に対するアクリル樹脂の含有量(重量部)と、セラミック粉末とアクリル樹脂及び可塑剤との比(P/B)を、表2のように変動させた以外は、実施例1と同様に剥離層用ペーストを作製し、同様の評価を行った(試料6〜10)。結果を表2に示す。
【0158】
【表2】

【0159】
表2に示すように、P/B値が小さくなると印刷性が悪化し、P/B値が大きくなると印刷性とともにシートアタック、シートカスが発生する傾向が見られる。表2からは、P/B値0.67〜5.56(但し、0.67と5.56を除く)のときに、またセラミック粉末100重量部に対してアクリル樹脂含有量12〜100重量部(但し、12重量部と100重量部を除く)のときに、すべての特性を満足できることが確認できた。
【0160】
実施例4
セラミック粉末100重量部に対する可塑剤の含有量(重量部)を表3のように変動させた以外は、実施例1と同様に剥離層用ペーストを作製し、同様の評価を行った(試料12〜16)。結果を表3に示す。
【0161】
【表3】

【0162】
表3に示すように、可塑剤量が小さくなると電極層及び余白パターン層の剥離強度が大きくなる傾向があり、剥離が重くなる。可塑剤量が大きくなると印刷性や電極印刷状態が悪化する傾向が見られる。表3からは、特にセラミック粉末100重量部に対して可塑剤含有量5〜100重量部(但し、5重量部と100重量部を除く)のときに、すべての特性を満足できることが確認できた。
【0163】
実施例5
PETフィルム(第1支持シート)の離型処理側の剥離力を、表4のように変動させた以外は、実施例1と同様に剥離層用ペーストを作製し、同様の評価を行った(試料17〜23)。結果を表4に示す。
【0164】
【表4】

【0165】
表4に示すように、PETフィルムの離型処理側の剥離力が小さくなると剥離層がその上に形成された電極層及び余白パターン層とともにPETフィルムから脱落する傾向があり、剥離力が大きくなると電極層及び余白パターン層の剥離が重すぎて積層効率が低下する傾向がある。表4からは、特に剥離力が7.3〜20.3mN/cm(但し、7.3mN/cmと20.3mN/cmを除く)のときに、すべての特性を満足できることが確認できた。
【0166】
実施例6
まず、実施例1の試料3と同様にして、剥離層を形成した。そして、電極層用ペーストおよび余白パターン層用ペーストの溶剤を、表5,6に示す各溶剤に変更して、剥離層のシートアタック、印刷性、シートカス、電極層用ペースト付着量の変動(電極印刷状態)、電極層と余白パターン層の剥離性、および表面粗さの各評価を行った(試料24〜40,41〜43)。結果を表5,6に示す。
【0167】
なお、表5,6中の試料24〜40,41〜43においては、各溶剤を重量比で50:50の割合で使用した。すなわち、たとえば、試料24においては、電極層用ペーストおよび余白パターン層用ペーストの溶剤を、ターピネオール:ジヒドロターピネオールアセテート=50:50(重量比)とした。
【0168】
また、表5に示した試料は、ターピネオール:各溶剤=50:50(重量比)とした試料であり、表6に示した試料は、各溶剤:ターピニルメチルエーテル=50:50(重量比)とした試料である。
【0169】
【表5】

【0170】
【表6】

【0171】
表5,6より、電極層用ペーストおよび余白パターン層用ペーストの溶剤を、表5の試料24〜36、表6の試料41〜43のように変更した場合においても、すべての特性を満足できることが確認できた。一方、電極層用ペーストおよび余白パターン層用ペーストの溶剤として、d−ジヒドロカルボン、メントン、ペリリルアセテートおよびブチルカルビトールを含有させた表5の試料37〜40は、シートアタックおよびシートカスが発生してしまい、印刷性および電極印刷状態に劣る結果となった。なお、これらの試料37〜40において、このような結果となった理由としては、d−ジヒドロカルボン、メントン、ペリリルアセテートおよびブチルカルビトールが、剥離層に含まれるアクリル樹脂を溶解したことによると考えられる。
【0172】
比較例1
実施例1のアクリル樹脂をポリビニルブチラール樹脂に変えて剥離層用ペーストを作製した。具体的には以下の通りである。
【0173】
剥離層用ペーストの作製
添加物スラリーの調製
まず、実施例1と同一組成の添加物(副成分)原料混合物を準備した。
【0174】
次に、得られた添加物原料混合物:4.3重量部、エチルアルコール:3.1重量部、n−プロパノール:3.1重量部、キシレン:1.1重量部及びポリエチレングリコール系分散剤:0.04重量部を、ボールミルを使用して混合粉砕し、添加物スラリーを得た。混合粉砕は、250ccポリエチレン製樹脂容器を用い、2mmφのZrOメディア450gを投入し、周速45m/分および20時間の条件で行った。粉砕後の添加物原料の粒径はメジアン径は0.1μmであった。
【0175】
1次スラリーの作製
次に、得られた添加物スラリー:全量、平均粒径0.1μmのBaTiO粉末(BT−01/堺化学工業(株)):100重量部、エチルアルコール:45.88重量部、n−プロパノール:45.88重量部、キシレン:22.4重量部、フタル酸ジオクチル(DOP)可塑剤:3.03重量部、ミネラルスピリット:7.31重量部及びポリエチレングリコール系分散剤:1.0重量部をボールミルを使用して混合粉砕した。混合粉砕は、1リットルのポリエチレン製樹脂容器を用い、2mmφのZrOメディア18gを投入し、周速45m/分および4時間の条件で行った。
【0176】
その後(4時間混合後)、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂(重合度1450、ブチラール化度69%、残留アセチル基量12%)をエチルアルコール:n−プロパノール=1:1で溶解した、樹脂固形分濃度15%ラッカーを41.6重量部(ポリビニルブチラール樹脂の添加量は粉体(チタン酸バリウム+添加剤)に対して6重量%になる様に添加)を追加添加し、更に16時間ボールミルで混合を行い、1次スラリーを得た。得られた1次スラリーの不揮発分濃度は41.3%であった。
【0177】
なお、本比較例でも上記(BaTiO粉末+添加物原料混合物)=セラミック粉末(平均粒径0.1μm)とした。
【0178】
1次スラリーの希釈
本実施例では、高分散かつ低濃度のスラリーを1工程で製造することが困難であるため、まず、比較的濃度の高い1次スラリーを作製し、次いで、この1次スラリーを希釈することにより、剥離層用ペーストを製造する。
【0179】
具体的には、得られた1次スラリーを、ポリビニルブチラール樹脂添加量の総量を9重量部、不揮発分濃度15%になるように、下記調製のバインダーラッカーと1次スラリ全量をボールミルを使用して混合した。混合は、3リットルのポリエチレン製樹脂容器を用い、周速45m/分および4時間の条件で行った。なお、バインダーラッカーは、エチルアルコール:244.81重量部、n−プロパノール:244.81重量部、キシレン:131.83重量部、フタル酸ジオクチル(DOP)可塑剤:22.98重量部及びPVB−15%ラッカー:303.34重量部を準備し、これらを混合し、50℃で加熱溶解して調製した。
【0180】
混合後のスラリーは、不揮発分濃度15%、セラミック粉末100重量部に対するPVB樹脂量が50重量部、可塑剤の含有量がPVB樹脂100重量部に対して50重量部(セラミック粉末100重量部対しては25重量部)であった(表2の試料11)。
【0181】
高分散処理
得られた混合後のスラリーを、実施例1と同様に処理することにより、剥離層用ペーストを作製した。
【0182】
剥離層の形成
作製された剥離層用ペーストを、実施例1で用いたPETフィルム(第1支持シート)の表面に、同様の条件で塗布・乾燥することにより、乾燥膜厚が0.2μmの剥離層を形成し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0183】
表2に示すように、シートアタック、シートカスを生じ、しかも印刷性も悪化することが確認できた。
【0184】
また、電極層用ペースト付着量の変動量(電極印刷状態)は28%であり、×であった。電極層用ペーストを剥離層の表面に1回印刷した後の剥離層の状態と、電極層用ペーストを剥離層の表面に3000回印刷した後の剥離層の状態との写真を図10(A)及び図10(B)に示す。図10(A)及び図10(B)に示すように、比較例1の剥離層によれば、電極層用ペーストを3000回印刷すると、剥離層のシートカスが散乱し、状態が悪化していることが確認できる。
以上より実施例1〜6の有意性が確認できた。
【0185】
実施例7
グリーンシート用ペースト
まず、実施例1(表1の試料3)と同一組成の添加物(副成分)原料混合物を準備した。
【0186】
次に、得られた添加物原料混合物:4.3重量部、エタノール:3.11重量部、プロパノール:3.11重量部、キシレン:1.11重量部および分散剤:0.04重量部を、ボールミルを使用して混合粉砕し、添加物スラリーを得た。混合粉砕は、250ccポリエチレン製樹脂容器を用い、2mmφのZrOメディア450gを投入し、周速45m/分および16時間の条件で行った。なお、粉砕後の添加物原料の粒径はメジアン径は0.1μmであった。
【0187】
次に、得られた添加物スラリー:11.65重量部、BaTiO粉末(BT−02/堺化学工業(株)):100重量部、エタノール:35.32重量部、プロパノール:35.32重量部、キシレン:16.32重量部、フタル酸ジオクチル(可塑剤):2.61重量部、ミネラルスピリット:7.3重量部、分散剤:2.36重量部、帯電助剤:0.42重量部、有機ビヒクル:33.74重量部、MEK:43.81重量部および2−ブトキシエタノール:43.81重量部を、ボールミルを使用して混合し、グリーンシート用ペーストを得た。
なお、ボールミルによる混合は、500ccポリエチレン製樹脂容器を用い、2mmφのZrOメディア900gを投入し、周速45m/分および20時間の条件で行った。また、上記の有機ビヒクルは、重合度1450、ブチラール化度69%のポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)製):15重量部を、エタノール:42.5重量部およびプロパノール:42.5重量部に、50°Cの温度で、撹拌溶解することにより作製した。すなわち、有機ビヒクル中の樹脂含有量(ポリビニルブチラール樹脂の量)は、15重量%とした。
【0188】
接着層用ペースト
ブチラール樹脂(重合度800、ブチラール化度77%):2重量部、MEK:98重量部およびDOP(フタル酸ジオクチル):1重量部を、撹拌溶解することにより接着層用ペーストを作製した。
【0189】
積層セラミックコンデンサ試料の作製
実施例1で作製した剥離層用ペースト、電極層用ぺースト及び余白パターン層用ペーストと、本実施例で作製したグリーンシート用ペースト及び接着層用ペーストを用い、以下のようにして、図1に示す積層セラミックコンデンサ2を製造した。
【0190】
グリーンシートの形成
まず、実施例1と同様に、PETフィルム上に剥離層(乾燥膜厚0.1μm)を形成し、該剥離層表面に電極層及び余白パターン層(いずれも乾燥膜厚1μm)を形成した。
【0191】
次に、電極層および余白パターン上に、上記のグリーンシート用ペーストを、ダイコーターにより塗布し、その後、乾燥することにより、グリーンシートを形成し、電極層12aおよび余白パターン24を有するグリーンシート10aを得た。塗布速度は50m/min.とし、乾燥は、炉内温度を80℃とした乾燥炉を使用して行った。グリーンシートは、乾燥時の膜厚が1μmとなるように形成した。
【0192】
接着層の形成、接着層の転写
まず、別のPETフィルム(第2支持シート)を準備し、このPETフィルム上に、上記の接着層用ペーストを、ダイコーターにより塗布し、次いで、乾燥することにより、接着層を形成した。塗布速度は70m/min.とし、乾燥は、炉内温度を80℃とした乾燥炉を使用して行った。接着層は、乾燥時の膜厚が0.1μmとなるように形成した。なお、上記の第2支持シートは、第1支持シートと異なり、表面にシリコーン系樹脂により剥離処理を施したPETフィルムを使用した。
【0193】
次に、作製した電極層12aおよび余白パターン24を有するグリーンシート10a上に、図3に示す方法により、接着層28を転写し、積層体ユニットU1aを形成した。転写時には、一対のロールを用い、その加圧力は0.1MPa、転写温度は80℃、転写速度は2m/minであり、転写は、良好に行えることが確認できた。
【0194】
グリーンチップの作製
まず、厚み10μmに成形された複数枚の外層用グリーンシートを、積層時の厚みが約50μmとなるように積層し、焼成後に積層コンデンサの蓋部分(カバー層)となる外層を形成した。なお、外層用グリーンシートは、上記にて製造したグリーンシート用塗料を使用し、乾燥後の厚みが10μmとなるように形成したグリーンシートである。
【0195】
次に、その上に、図3、図4に示す方法により、上記にて製造した積層体ユニットを100枚積層した。さらに、その上に、厚み10μmに成形された複数枚の外層用グリーンシートを、積層時の厚みが約50μmとなるように、積層し、焼成後に積層コンデンサの蓋部分(カバー層)となる外層を形成した。そして、得られた積層体を100MPaおよび70°Cの条件でプレス成形を行い、その後、ダイシング加工機によって、切断することにより、焼成前のグリーンチップを得た。
【0196】
焼結体の作製
次に、最終積層体を所定サイズに切断し、脱バインダ処理、焼成およびアニール(熱処理)を行って、チップ形状の焼結体を作製した。
【0197】
脱バインダは、昇温速度:50℃/時間、保持温度:240℃、保持時間:8時間、雰囲気ガス:空気中、で行った。焼成は、昇温速度:300℃/時間、保持温度:1200℃、保持時間:2時間、冷却速度:300℃/時間、雰囲気ガス:露点20℃に制御されたNガスとH(5%)との混合ガス、で行った。アニール(再酸化)は、保持時間:3時間、冷却速度:300℃/時間、雰囲気用ガス:露点20℃に制御されたNガス、で行った。なお、雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用い、水温0〜75℃にて行った。
【0198】
次に、チップ形状の焼結体の端面をサンドブラストにて研磨したのち、In−Ga合金ペースストを端部に塗布し、その後、焼成を行うことにより外部電極を形成し、図1に示す構成の積層セラミックコンデンサのサンプルを得た。
【0199】
ショート不良率の測定
ショート不良率は、50個のコンデンササンプルを準備し、ショート不良が発生した個数を調べて測定した。具体的には、絶縁抵抗計(HEWLETT PACKARD社製E2377Aマルチメーター)を使用して、抵抗値を測定し、抵抗値が100kΩ以下となったサンプルをショート不良サンプルとし、全測定サンプルに対する、ショート不良サンプルの比率をショート不良率とした。本実施例ではショート不良率が10%以下である場合を良好とした。その結果、ショート不良率は6%であり、極めて良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。
【図2】図2(A)〜図2(C)は本発明の一実施形態に係る電極層およびグリーンシートの形成方法を示す要部断面図である。
【図3】図3(A)〜図3(C)は本発明の一実施形態に係る接着層の形成方法を示す要部断面図である。
【図4】図4(A)、図4(B)は本発明の一実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図である。
【図5】図5(A)、図5(B)は図4の続きの工程を示す要部断面図である。
【図6】図6(A)、図6(B)は本発明の他の実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図である。
【図7】図7(A)〜図7(C)は本発明の他の実施形態に係る電極層を有するグリーンシートの積層方法を示す要部断面図である。
【図8】図8(A)〜図8(C)は図7の続きの工程を示す要部断面図である。
【図9】図9(A)は実施例1の剥離層の表面に電極層用ペーストを1回印刷した後の剥離層の状態を示す写真、図9(B)は実施例1の剥離層の表面に電極層用ペーストを3000回印刷した後の剥離層の状態を示す写真である。
【図10】図10(A)は比較例1の剥離層の表面に電極層用ペーストを1回印刷した後の剥離層の状態を示す写真、図10(B)は比較例1の剥離層の表面に電極層用ペーストを3000回印刷した後の剥離層の状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0201】
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
10a… グリーンシート
12… 内部電極層
12a… 電極層
20… キャリアシート(第1支持シート)
22… 剥離層
24… 余白パターン層
50… 余白パターン部分
26… キャリアシート(第2支持シート)
28… 接着層
30… 外層用グリーンシート
U1a〜U1c… 積層体ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層型電子部品を製造するために用いる剥離層用ペーストであって、
ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテートを含む電極層用ペーストと組み合わせて使用され、
セラミック粉末と、有機ビヒクルと、可塑剤と、分散剤とを含み、
前記有機ビヒクル中のバインダが、アクリル樹脂を主成分とし、
前記アクリル樹脂が、アクリル酸エステル単量体単位とメタクリル酸エステル単量体単位を主成分とし、1〜10mgKOH/gの酸価を持つ共重合体で構成されており、
前記セラミック粉末と、前記バインダ及び可塑剤との比(P/B)が、0.67〜5.56(但し、0.67と5.56を除く)に制御されていることを特徴とする剥離層用ペースト。
【請求項2】
積層型電子部品を製造するために用いる剥離層用ペーストであって、
ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ターピネオールアセテートまたはジヒドロターピネオールアセテートを含む電極層用ペーストと組み合わせて使用され、
セラミック粉末と、有機ビヒクルと、可塑剤と、分散剤とを含み、
前記有機ビヒクル中のバインダが、アクリル樹脂を主成分とし、
前記アクリル樹脂が、アクリル酸エステル単量体単位とメタクリル酸エステル単量体単位を主成分とし、1〜10mgKOH/gの酸価を持つ共重合体で構成されており、
前記セラミック粉末100重量部に対する前記バインダの含有量が12〜100重量部(但し、12重量部と100重量部を除く)であることを特徴とする剥離層用ペースト。
【請求項3】
前記組み合わせて使用する電極層用ペーストは、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、イソボニルアセテート、d−ジヒドロカルベオール、メンチルアセテート、シトロネオール、ペリリルアルコール、及びアセトキシ−メトキシエトキシ−シクロヘキサノールアセテートから選択される1種または2種以上を、さらに含む請求項1または2に記載の剥離層用ペースト。
【請求項4】
前記アクリル樹脂は、重量平均分子量が23万〜70万である請求項1〜3のいずれかに記載の剥離層用ペースト。
【請求項5】
前記可塑剤が、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)及びフタル酸ブチルベンジル(BBP)から選ばれる一つ以上であり、前記セラミック粉末100重量部に対して5〜100重量部(但し、5重量部と100重量部を除く)含有されている請求項1〜4のいずれかに記載の剥離層用ペースト。
【請求項6】
前記セラミック粉末が、0.2μm以下の平均粒径を持つものである請求項1〜5のいずれかに記載の剥離層用ペースト。
【請求項7】
前記分散剤が、ポリカルボン酸塩系分散剤であり、前記セラミック粉末100重量部に対して0.5〜3重量部含有されている請求項1〜6のいずれかに記載の剥離層用ペースト。
【請求項8】
前記有機ビヒクル中の溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル及びトルエンの1種以上であり、不揮発分濃度が5〜20重量%となるように含有されている請求項1〜7のいずれかに記載の剥離層用ペースト。
【請求項9】
離型処理が施された第1支持シートの前記離型処理側に剥離層を形成する工程と、
前記剥離層の表面に電極層を所定パターンで形成する工程と、
前記電極層の表面にグリーンシートを形成し、電極層を有するグリーンシートを得る工程と、
前記電極層を有するグリーンシートを積層し、グリーンチップを形成する工程と、
前記グリーンチップを焼成する工程とを、有する積層型電子部品の製造方法であって、
前記剥離層を形成するための剥離層用ペーストとして、請求項1〜8のいずれかに記載の剥離層用ペーストを用いることを特徴とする積層型電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記第1支持シートに施された離型処理が、シリコーンを主体とする剥離剤を用いたコーティング法により形成され、該第1支持シートの剥離力が7.3〜20.3mN/cm(但し、7.3mN/cmと20.3mN/cmを除く)に制御されている請求項9に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記剥離層用ペーストに含まれるセラミック粉末が、前記グリーンシートを形成するためのペーストに含まれるセラミック粉末と同じである請求項9または10に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記剥離層の厚みが、0.05〜0.2μmである請求項9〜11のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記グリーンシートの形成前に、前記電極層が形成されていない前記剥離層の表面に、前記電極層と同じ厚みで、かつ前記グリーンシートと同じ材質で構成してある余白パターン層を形成する請求項9〜12のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記電極層を有するグリーンシートを積層する前に、前記電極層を有するグリーンシートの反電極層側表面に、接着層を形成し、前記接着層を介して、前記電極層を有するグリーンシートを積層する請求項9〜13のいずれかに記載の積層型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−80496(P2006−80496A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228238(P2005−228238)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】