説明

加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置

【課題】本発明は、薄厚の基体に対してリード線を接合する際に加圧式超音波振動接合を利用したとしても、接合力バラツキを抑制し、接合力の低下を防止し、さらに結合までの時間を短時間とすることができる、加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る加圧式超音波振動接合方法では、薄厚の基体11を所定のテーブル10に設置する。次に、基体11上に、導電性のリード線12を配置させる。次に、所定テーブル10側に圧力を加えながらリード線12上に超音波振動を印加することにより、基体11にリード線12を接合する(加圧式超音波振動接合)。ここで、本発明に係る当該加圧式超音波振動接合の際には、リード線12に対する圧力を少なくとも2段階で増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置に関する発明であり、たとえば、薄厚の基体上に導電性を有するリード線を超音波振動接合する場合に適用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、たとえばワイヤーハーネスにおける中間ジョイント接合の方法として、加圧式超音波振動接合が採用されている。当該加圧式超音波振動接合では、所定の部材にワークを配置し、当該ワークに対して押圧しながらの超音波振動を印加する。当該押圧と超音波振動とのエネルギーにより、ワークは所定の部材と強力に接合される。
【0003】
また、半導体の分野においても、電子部品を実装する際に加圧式超音波振動接合技術が採用されることもある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−6570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、たとえば2mm以下の薄厚のガラスのような基体に対して、そのガラス基体にクラックなどの損傷を与えずに、薄膜の導電性を有するリード線を接合する要請が高まってきている。当該接合の方法として、半田やペーストを利用した方法も考えられるが、簡易な接合方法、コスト低減、省エネルギーや常温での接合の観点から、加圧式超音波振動接合が採用されることが期待される。
【0006】
しかしながら、たとえば、基体に対してリード線を配置し、当該リード線に圧力を加えながら超音波振動を印加すると、接合力バラツキが生じたり、接合力の低下が生じたり、接合までの時間に長時間を要するなどの弊害が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、薄厚の基体に対してリード線を接合する際に加圧式超音波振動接合を利用したとしても、接合力バラツキを抑制し、接合力の低下を防止し、さらに結合までの時間を短時間とすることができる、加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の加圧式超音波振動接合方法は、(A)薄厚の基体を所定のテーブルに設置する工程と、(B)前記基体上に、導電性のリード線を配置させる工程と、(C)前記所定テーブル側に圧力を加えながら前記リード線上に超音波振動を印加することにより、前記基体に前記リード線を接合する工程とを、備えており、前記工程(C)は、前記リード線に対する前記圧力を少なくとも2段階で増加させる工程である。
【0009】
また、本発明に係る請求項5に記載の加圧式超音波振動接合装置は、薄厚の基体を設置する所定のテーブルと、前記基体上に導電性を有するリード線を配置した状態で、前記所定テーブル側に所定の圧力を加えながら前記リード線上に超音波振動を印加するボンディングツールと、前記ボンディングツールの駆動を制御する駆動部とを、備えており、前記駆動部は、前記リード線に対する前記圧力を少なくとも2段階で増加させる圧力制御を、前記ボンディングツールに対して実施する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、加圧式超音波振動接合に際して、リード線に対する圧力を少なくとも2段階で増加させる。したがって、2段階目以降の圧力ステップではリード線に対するボンディングツールの見かけ上の圧力低下を抑制できるので、接合に必要な圧力をリード線に印加させることが可能となる。これにより、短時間でリード線を基体に接合されることができ、かつ、リード線に対する基体への接合力低下を防止でき、さらには、接合力のバラツキも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る加圧式超音波振動接合装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に係るボンディングツールの圧力制御方法を説明するための図である。
【図3】本発明に係るボンディングツールの速さ制御方法を説明するための図である。
【図4】本発明に係る加圧式超音波振動接合装置(特にボンディングツール)の動作を説明するための図である。
【図5】本発明に係る加圧式超音波振動接合装置(特にボンディングツール)の動作を説明するための図である。
【図6】本発明に係る加圧式超音波振動接合装置(特にボンディングツール)の動作を説明するための図である。
【図7】本発明に係る加圧式超音波振動接合装置(特にボンディングツール)の動作を説明するための図である。
【図8】本発明に係る加圧式超音波振動接合装置(特にボンディングツール)の動作を説明するための図である。
【図9】本発明に係る加圧式超音波振動接合装置(特にボンディングツール)の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、薄厚の基体上に導電性を有するリード線を超音波振動接合することができる、加圧式超音波振動接合方法および加圧式超音波振動接合装置に関する発明である。本願発明では、基体は、基板または上面に所定の薄膜(クロムや透明性導電膜など)が形成された基板のことである。また、当該基体の厚さは、たとえば2mm以下程度である。以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0013】
<実施の形態>
図1は、本発明に係る加圧式超音波振動接合装置100の構成を示す図である。図1は、加圧式超音波振動接合装置100を横方向から見た図である。
【0014】
図1に示すように、加圧式超音波振動接合装置100は、電動シリンダー1、支柱部(シャフト)2、カップリング3、ロッド4、当接先端部5、振動ホーン部6、ホルダー7、超音波振動子8、圧力計(歪ゲージ)9、および所定のテーブル(たとえばアンビル)10を、各々備えている。
【0015】
なお、ロッド4および当接先端部5から成る構造体を、ボンディングツール4.5と称する。また、図1における図面上下方向がy軸方向であり、図1における図面左右方向がx軸方向である。また、他の図面で使用するx軸、y軸は、図1で示したx軸、y軸と同じ方向である。また、他の図面において、x軸とy軸とに共に直交するz軸を図示する場合もある。
【0016】
電動シリンダー(駆動部と把握できる)1は、ボンディングツール4,5の駆動を制御することができる。具体的に、電動シリンダー1は、ボンディングツール4,5を、y軸方向に移動させることができる。さらに、電動シリンダー1は、当接先端部5を介してリード線12に対して所定の圧力を印加させることができる。なお、支柱部2は、電動シリンダー1に連接されている。したがって、当該電動シリンダー1の駆動力は、支柱部2に伝達される。
【0017】
カップリング3は、支柱部2とロッド4とを接続する部分である。電動シリンダー1からの動力は、支柱部2を介してロッド4へと伝達される。
【0018】
また、ロッド4は、ホルダー7により支持されており、当該ホルダー7内部においてロッド4は上下方向にガイドされている。当該ロッド4における所定のテーブル10側の先端部には、当接先端部5が配設されている。また、ロッド4には、振動ホーン6が接続されており、超音波振動子8で発生した超音波振動は、振動ホーン6を介してロッド4に伝達される。
【0019】
なお、当接先端部5は、超音波振動接合処理の際に、ワーク(リード線12)に当接される部分である。当該当接先端部5におけるリード線12との当接面には、所定のパターンの第一の凹凸形状が形成されており、当該第一の凹凸形状の面には、さらに第一の凹凸形状より小さな複数の第二の凹凸形状が形成されている。
【0020】
所定のテーブル10上には、薄厚の基体11が設置される。また、図示は省略しているが、所定のテーブル10上面には、少なくとも1以上穴が穿設されており、当該穴を介した真空吸着により、基体11は所定のテーブル10に固定される。
【0021】
なお、基体11は、セラミック、シリコン、ガラスやエポキシなどの薄厚(2mm以下)の部材である。または、基体11は、これらの部材上(所定のテーブル10への非載置側上)に所定の薄膜が形成された部材である。また、基体11に加圧式超音波接合されるリード線12は、たとえばアルミニウムや銅などの薄膜(100μm程度)の部材であり、所定の線幅(図1のx方向の幅)を有する線状の形状を有する。
【0022】
基体11上に導電性を有する線状のリード線12が配置された状態で、電動シリンダー1からの駆動力によりボンディングツール4,5は、所定のテーブル10側に向かう所定の圧力をリード線12に加えながら、当該ボンディングツール4,5は、当該リード線12上に超音波振動子8で発生した超音波振動を印加する。
【0023】
加圧式超音波振動接合装置100では、カップリング2内において圧力計9が配設されている。より具体的には、圧力計9は、支柱部2とロッド4との接続部に配設されている。当該圧力9は、ボンディングツール4,5がリード線12を押圧する圧力値を測定することができる。
【0024】
<電動シリンダー1によるボンディングツール4,5の制御>
電動シリンダー1は、ボンディングツール4,5のy軸方向の変位、ボンディングツール4,5のy軸方向の速さ、およびボンディングツール4,5がリード線12を押圧する圧力値の各々を、制御することができる。
【0025】
<圧力制御>
まず、電動シリンダー1による、ボンディングツール4,5に対する圧力制御について説明する。
【0026】
圧力計9から出力される測定結果である圧力値は、随時電動シリンダー1に入力される。これにより、電動シリンダー1は、ボンディングツール4,5がリード線12に印加している圧力値を常にモニターすることができる。電動シリンダー1は、当該モニターしている圧力値を使用して、ボンディングツール4,5がリード線12に印加する圧力の制御である圧力制御を、当該ボンディングツール4,5に対して実施する。
【0027】
本実施の形態では、ボンディングツール4,5がリード線12に対して超音波振動を印加させるとともに、電動シリンダー1は、下記の圧力制御をボンディングツール4,5に対して実施する。具体的に、電動シリンダー1は、当該リード線12に対する圧力を少なくとも2段階で増加させる圧力制御を、当該ボンディングツール4,5に対して実施する。
【0028】
たとえば、電動シリンダー1による2段階で圧力を増加させる圧力制御を、図2を用いて説明する。ここで、図2の縦軸は、ボンディングツール4,5がリード線12を押圧する圧力値であり、図2の横軸は、時間である。
【0029】
当該2段階で圧力を増加させる圧力制御では、まず、ボンディングツール4,5がリード線12に向けて下降し、時間T0でボンディングツール4,5が当該リード線12に当接する。
【0030】
その後、ボンディングツール4,5によるリード線12に対する圧力が、増加していく。圧力が増加することにより、時間T1にボンディングツール4,5によるリード線12に対する圧力が、第一の圧力P1に到達したとする。
【0031】
圧力計9が当該第一の圧力P1の到達を検知すると、当該検知を受けて超音波振動子8が、超音波を発生する。つまり、前記検知のタイミングにおいて、ボンディングツール4,5は、リード線12に対する超音波振動の印加を開始する。これにより、ボンディングツール4,5は、リード線に12に圧力と超音波振動とを印加する。当該記載から分かるように、圧力計9から送信される測定値は、制御部(または制御部を含む電動シリンダー1)だけでなく、超音波振動子8も受信する。
【0032】
さて、圧力が当該第一の圧力値P1に達して、上記超音波振動を印加している状態において、第一の所定の期間(たとえば30ms)、ボンディングツール4,5によるリード線12への圧力増加を停止する(具体的には、電動シリンダー1がボンディングツール4,5の駆動を停止するので、圧力増加動作だけでなく圧力減少動作も行われない)。
【0033】
ここで、当該第一の所定の期間内において、ボンディングツール4,5によるリード線12への圧力増加を停止し、当該圧力を第一の圧力値P1で一定に維持しようとしても、超音波振動によるリード線12の変形により、リード線12に印加されるボンディングルーツ4,5からの圧力は、図2に示すように少し低下する。
【0034】
さて、第一の所定の期間後に(時間T2から)、上記リード線12に対する超音波振動印加状態を維持しながら、ボンディングツール4,5は、リード線12に対する圧力を、第一の圧力値P1より大きい第二の圧力値P2まで上昇する。
【0035】
そして、上記リード線12への超音波振動印加状態を維持しながら、ボンディングツール4,5は、当該リード線12に対する圧力を第二の圧力値P2で第二の所定期間(時間T3まで)保持する。
【0036】
ここで、第一の所定期間内において既にリード線12は、押圧するロッド4の先端に配設された当接先端部5の凹凸形状が転写されるほど大きく変形している。したがって、第二の所定期間内におけるリード線12の変形量は、非常に小さい程度のものとなる。したがって、第二の所定期間内における当該非常に小さい変形量に起因した、リード線における見かけ上の圧力低下は、図2に示すように、非常に緩やかで非常に小さい圧力減少程度のものに留まる。
【0037】
なお、第二の圧力値P2は、基体11にリード線12を加圧式超音波接合するのに必要とされる圧力値であり、第一の圧力値P1は、当該必要とされる圧力値より少し小さい。また、各圧力値P1,P2は、薄厚の基体11の損傷防止の観点を考慮して決定されるべきであり、基体11やリード線12の材質や厚さにも依る。たとえば、2mm以下のガラス基体11に100μm程度のアルミニウムリード線12を接合する場合には、第一の圧力値P1として0.10〜0.15MPa、第二の圧力値P2として0.15〜0.20MPaを採用できる。
【0038】
なお、上記図2と異なり、第二の圧力値P2での圧力をリード線12にある期間印加した後に、当該第二の圧力値P2より大きな第三の圧力値(3段目の圧力増加ステップ)をリード線12にある期間だけ印加するように、電動シリンダー1はボンディングツール4,5の圧力制御を行っても良い。このように、3段以上の圧力増加ステップ(順次段階的に圧力を増加させる)を適用する場合には、最終圧力ステップを、基体11にリード線12を加圧式超音波接合するのに必要とされる圧力値とすることが望ましい。
【0039】
<下降制御>
さて、ボンディングツール4,5がリード線12に当接するまでの間において、電動シリンダー1は、ボンディングツール4,5の下降動作を制御する。当該下降動作の制御を、図3を用いて説明する。ここで、図3の縦軸は、リード線12の当接位置(リード線12の上面)をゼロとしたボンディングツール4,5のy軸方向の変位であり、図2の横軸は、時間である。
【0040】
当該下降動作では、まず、リード線12上面からボンディングツール4,5の先端部までの高さが所定の高さY1となるまで、ボンディングツールを第一の速さV1で、等速で下降させる。ここで、所定の高さY1として、たとえば1mmである。
【0041】
次に(つまり、所定の高さY1に到達した後)、当該所定の高さY1からボンディングツール4,5がリード線12上面に到達するまで(時間tNまで)、ボンディングツール4,5を第二の速さV2で、等速で下降させる。ここで、第二の速さV2は、第一の速さV1より遅い。
【0042】
上述した各ボンディングツール4,5の変位、速さおよびリード線12に対する当接圧力の各制御シーケンスは、所定のプログラムがインストールされた制御部を用いて実現される。つまり、当該制御シーケンスを実現する上記各ステップ(ボンディングツール4,5の段階的圧力増加ステップおよび段階的速さ変更ステップ)を含むプログラムを作成し、当該プログラムを制御部(図示せず)にインストールし、当該制御部が当該プログラムに従って電動シリンダー1を制御することにより実現される。
【0043】
なお、当該制御部は、電動シリンダー1に組み込まれていても良く、別構成であっても良い。ここで、前記別構成である場合には、圧力計9から随時送信される圧力値は、制御部が受信し、制御部は受信した圧力値をモニターし、上記シーケンスを実行する。そして、制御部からの制御信号を受信した電動シリンダー1が、当該制御信号に従って、上記圧力制御および速度制御をボンディングツール4,5に対して実施する。
【0044】
<動作説明>
次に、加圧式超音波振動接合装置100を用いた、加圧式超音波振動接合方法の動作について説明する。なお、以下の動作説明では、ボンディングツール4,5がリード線12に対して印加する圧力を2段階(3段階以上で無く)で増加させる場合について言及する。また、プログラムがインストールされた制御部は、電動シリンダー1内に配設されている場合について言及する。
【0045】
まず、所定のテーブル10上に、薄厚の基体11を設置する。そして、所定のテーブル10に設けられた穴(図示せず)を介した真空吸着により、基体11を所定のテーブル10に固定させる。
【0046】
図示を省略しているリールには、導電性を有する薄膜のリード線12が巻き付けられている。所定のテーブル10に基体11を固定した後、当該リールからリード線12を引き出し、当該引き出したリード線12を基体11上の所定の箇所に配置させる。
【0047】
次に、電動シリンダー1は、制御部においてインストールされた所定のプログラムに従い、下記のようにボンディングツール4,5の動作を制御する。なお、以下のボンディングツール4,5の動作については、図1におけるボンディングツール4,5、基体11およびリード線12の周辺の構成を示す拡大図を用いて説明する。
【0048】
まずはじめに、電動シリンダー1は、リード線12上面から当接先端部5の端部までの高さが所定の高さY1(ここでは1mm)となるまで、ボンディングツール4,5を第一の速さV1(たとえば、V1=250mm/s)で、等速で下降させる(図3および図4参照)。
【0049】
そして、当接先端部5の端部の変位位置が、リード線12上面からの高さ1mmに到達する。するとそれ以降、電動シリンダー1は、当接先端部5の端部がリード線12上面に到達するまで、ボンディングツール4,5を第二の速さV2で、等速で下降させる(図3および図5参照)。ここで、図3を用いて説明したように、第二の速さV2は、第一の速さV1よりも遅い。たとえば、第二の速さV2は、5mm/sである。
【0050】
さて、ボンディングツール4,5がリード線12に当接される(図2のT0参照)と、次に、電動シリンダー1、上記所定のプログラムに従い、図2で示したボンディングツール4,5の圧力制御(2段階圧力増加制御)を開始する。なお、上記の通り、制御部を有する電動シリンダー1は、圧力計9から送信される圧力値(測定値)を随時モニターしており、当該モニター結果参照しながら、圧力制御を実行する。
【0051】
まず、ボンディングツール4,5がリード線12に対して及ぼす圧力が第一の圧力値P1に到達するまで線形的に当該圧力を増加させるように、電動シリンダー1はボンディングツール4,5に対して圧力制御を行う。ここで、図2を用いて説明したように、第一の圧力P1到達のタイミングにおいて(図2の時間T1において)、超音波振動子8は超音波振動の発生を開始する。これにより、振動ホーン6を介して超音波振動はボンディングツール4,5に伝達され、リード線12に対する加圧式超音波振動(振動数:20〜40KHz、振幅:(4〜10μm)が開始される。
【0052】
ここで、図6,7,8,9では、線状のリード線12の延設方向に超音波振動が行われる場合を図示している。しかし、線状のリード線12の線幅方向(図6,7,8,9の図面表裏方向)に超音波振動が行われても良い。
【0053】
ボンディングツール4,5がリード線12を押圧する圧力が第一の圧力値P1に達し、リード線12に対する上記超音波振動の印加を開始したとする。すると、ボンディングツール4,5は、リード線12に超音波振動を印加しながら、時間T1から第一の所定の期間(たとえば30ms)、リード線12に対する圧力の上昇を停止する(図2,7参照)。
【0054】
なお、電動シリンダー1によるボンディングツール4,5の圧力制御を第一の所定期間停止(つまり、圧力上昇制御も圧力下降制御も行わず)したとしても、上記のように、加圧式超音波振動によりリード線12に変形が生じ、見かけ上の圧力が低下する。
【0055】
さて、第一の所定の期間後、リード線12に超音波振動を印加しながら、ボンディングツール4,5によるリード線12に対する圧力増加を再開する。ここで、ボンディングツール4,5は、リード線12に対する圧力が、第一の圧力値P1より大きい第二の圧力値P2に達するまで、圧力上昇を行う(図2,8参照)。
【0056】
圧力値が第二の圧力値P2に達した後、ボンディングツール4,5は、リード線12に対する超音波振動印加を継続しつつ、当該リード線12に対する圧力を当該第二の圧力P2に、時間T2から第二の所定期間(たとえば、500ms程度)保つ(図2,9参照)。
【0057】
このように、所定テーブル10側に圧力を加えながらリード線12上に超音波振動を印加することにより、基体11にリード線12が接合される。
【0058】
なお、リード線12を基体11に対して接合した後は、電動シリンダー1の駆動力によりボンディングツール4,5を上方向に移動させる。また、リード線12の他の場所と基体11とを新たに超音波振動接合させる場合は、ボンディングツール4,5もしくは基体11を移動させた後、上記動作を繰り返し行う。
【0059】
次に、加圧式超音波振動接合装置100および上記加圧式超音波振動接合方法の効果を、問題点を提示しつつ説明する。
【0060】
まず、問題点を説明する。
【0061】
ボンディングツール4,5がリード線12に及ぼす圧力を、所定の圧力値まで上昇し、当該所定の圧力値到達後に、これ以降の圧力増加動作を完全に行わないとする。この場合、上記でも説明したように、リード線12に変形が生じ、圧力制御は停止したとしても、ボンディングツール4,5がリード線12に印加する見かけ上の圧力は低下する。当該見かけ上の圧力が低下した状態で加圧式超音波接合を実施した場合に、次のような問題が生じる。つまり、リード線12が基体11に接合されるまでに長時間の加圧式超音波振動処理が必要となり、また、リード線12に対する基体11への接合力が低下し、また、複数接続の場合に各接合点において接合力がばらつく。
【0062】
そこで、本実施の形態では、基体11にリード線12を接合する際に、リード線12に超音波振動を印加しながら、当該リード線12に対する圧力を少なくとも2段階で増加させるように、ボンディングツール4,5の駆動を制御している。
【0063】
したがって、2段階目以降の圧力ステップではリード線12に対するボンディングツール4,5の見かけ上の圧力低下を抑制できるので、接合に必要な圧力をリード線12に印加させることが可能となる。これにより、短時間でリード線12を基体11に接合されることができ、かつ、リード線12に対する基体11への接合力低下を防止でき、さらには、接合力のバラツキも抑制できる。
【0064】
高速のみボンディングツール4,5を下降させ、リード線12に当接させた場合には、ボンディングツール4,5の衝撃力により薄厚の基体11が損傷することがある。
【0065】
そこで、本実施の形態では、ボンディングツール4,5をリード線12に当接させる際に、図3に示すように、はじめは高速でボンディングツール4,5を下降させ、その後低速に切り替え、当該低速でボンディングツール4,5をリード線12当接させている。
【0066】
したがって、低速状態でボンディングツール4,5がリード線12に当接されるので、当該当接時に薄厚の基体11に損傷が生じることを抑制できる。なお、所定の高さまでは高速でボンディングツール4,5を下降させている。よって、ボンディングツール4,5の下降開始からリード線12当接までの時間が短時間とすることが可能となる。
【0067】
なお、ボンディングツール4,5を駆動する駆動部をエアシリンダーとすることも可能である。しかしながら、エアシリンダーを採用した場合には、ボンディングツール4,5の圧力制御は低精度となる。また、エアシリンダーを採用し、当該圧力制御の低精度を抑制することも可能であるが、この場合には、当該圧力制御に要する時間がかなり長時間となる。つまり、リード線12を基体11に接合するまでに長時間要することとなり、効率的でない。また、エアシリンダーを採用した場合には、ボンディングツール4,5が激しくリード線12と当接することとなり、当該当接の際に基体11が損傷を受ける。さらに、エアシリンダーを採用した場合には、当該駆動部全体が大型化し、結果として加圧式超音波振動装置自身も大型化となる。
【0068】
そこで、本実施の形態では、ボンディングツール4,5を駆動する駆動部として、電動シリンダー1を採用している。
【0069】
したがって、電動によりボンディングツール4,5を駆動できるので、高精度にボンディングツール4,5の圧力制御を行うことができる。さらに、電動シリンダー1はエアシリンダーよりも小サイズである。しがたって、加圧式超音波振動装置の大型化も抑制することができる。
【0070】
また、本実施の形態では、圧力計9を配設し、ボンディングツール4,5がリード線12に付加する圧力を随時モニターし、当該モニター結果に基づいてボンディングツール4,5の圧力制御を行っている。
【0071】
このように、リード線12の印加されている実際の圧力をモニターしながらの圧力制御が可能となるので、ボンディングツール4,5の精密な圧力制御が可能となる。したがって、リード線12と基体11との接合力を安定化させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 電動シリンダー
2 支柱部
3 カップリング
4 ロッド
5 当接先端部
6 振動ホーン部
7 ホルダー
8 超音波振動子
9 圧力計
10 所定のテーブル
11 基体
12 リード線
100 加圧式超音波振動接合装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)薄厚の基体を所定のテーブルに設置する工程と、
(B)前記基体上に、導電性のリード線を配置させる工程と、
(C)前記所定テーブル側に圧力を加えながら前記リード線上に超音波振動を印加することにより、前記基体に前記リード線を接合する工程とを、備えており、
前記工程(C)は、
前記リード線に対する前記圧力を少なくとも2段階で増加させる工程である、
ことを特徴とする加圧式超音波振動接合方法。
【請求項2】
前記工程(C)は、
(C−1)前記リード線に対する前記圧力を第一の圧力値まで増加させる工程と、
(C−2)前記工程(C−1)の後、前記リード線に前記超音波振動を印加し、第一の所定の期間、前記リード線に対する前記圧力の上昇を停止する工程と、
(C−3)前記第一の所定の期間後に、前記リード線に前記超音波振動を印加しながら、前記リード線に対する前記圧力を、前記第一の圧力値より大きい第二の圧力値まで上昇する工程とを、備えている、
ことを特徴とする請求項1に記載の加圧式超音波振動接合方法。
【請求項3】
前記工程(C)は、
(C−4)前記工程(C−3)の後、前記リード線に対する前記圧力を前記第二の圧力値に第二の所定期間保ちながら、前記リード線に前記超音波振動を印加する工程を、さらに備えている、
ことを特徴とする請求項2に記載の加圧式超音波振動接合方法。
【請求項4】
前記超音波振動を印加する部材は、
ボンディングツールであり、
(D)前記工程(C)の前に、前記ボンディングツールを前記リード線に向けて下降させる工程を、さらに備えており、
前記工程(D)は、
(D−1)前記リード線上面からの高さが所定の高さとなるまで、前記ボンディングツールを第一の速さで下降させる工程と、
(D−2)前記工程(D−1)の後、前記リード線上面に到達するまで、前記ボンディングツールを、第一の速さより遅い第二の速さで下降させる工程とを、備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の加圧式超音波振動接合方法。
【請求項5】
薄厚の基体を設置する所定のテーブルと、
前記基体上に導電性を有するリード線を配置した状態で、前記所定テーブル側に所定の圧力を加えながら前記リード線上に超音波振動を印加するボンディングツールと、
前記ボンディングツールの駆動を制御する駆動部とを、備えており、
前記駆動部は、
前記リード線に対する前記圧力を少なくとも2段階で増加させる圧力制御を、前記ボンディングツールに対して実施する、
ことを特徴とする加圧式超音波振動接合装置。
【請求項6】
前記駆動部は、
前記リード線に対する前記圧力を第一の圧力値まで増加させ、前記第一の圧力値に到達した後、第一の所定の期間、前記リード線に対する前記圧力の上昇を停止し、前記第一の所定の期間後に、前記リード線に対する前記圧力を、前記第一の圧力値より大きい第二の圧力値まで上昇する前記圧力制御を、前記ボンディングツールに対して実施する、
ことを特徴とする請求項5に記載の加圧式超音波振動接合装置。
【請求項7】
前記ボンディングツールが前記リード線に対して前記超音波振動を印加している状態において、前記駆動部は、
前記リード線に対する前記圧力を、前記第二の圧力値で、第二の所定期間保持する前記圧力制御を、前記ボンディングツールに対して実施する、
ことを特徴とする請求項6に記載の加圧式超音波振動接合装置。
【請求項8】
前記駆動部は、
電動シリンダーである、
ことを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れかに記載の加圧式超音波振動接合装置。
【請求項9】
前記リード線に対する前記ボンディングツールが印加する前記圧力を測定する圧力計を、さらに備えており、
前記駆動部は、
前記圧力計の測定結果をモニターしている、
ことを特徴とする請求項8に記載の加圧式超音波振動接合装置。
【請求項10】
前記駆動部は、
前記リード線上面からの高さが所定の高さとなるまで、前記ボンディングツールを第一の速さで下降させ、前記所定の高さから前記リード線上面に到達するまで、前記ボンディングツールを、第一の速さより遅い第二の速さで下降させるように、前記ボンディングツールの下降動作も制御する、
ことを特徴とする請求項5乃至請求項9の何れかに記載の加圧式超音波振動接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−9261(P2011−9261A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148417(P2009−148417)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】