説明

加工対象物の耐摩耗性ハードコートおよびその製造方法

本発明は、最適化されたハードコートおよび加工対象物を提供するものであり、特にハードコートでコーティングされた切削工具であり、たとえば高速度鋼、チタン合金、ニッケル合金、オーステナイト鋼のような機械加工の困難な材料、特に硬質工具鋼のような硬度が50HRC以上、好ましくは55HRC以上の硬質材料における切削性能を向上させたものである。これは、少なくとも1つの第1の支持層および1つの第2のナノ結晶層を含む耐摩耗性の多層でコーティングされた加工対象物によって達成され、ここで、前記第1の層は、下記のの組成物(TiaAl1-a)N1-x-yxy(ここで0.4<a<0.6,および0<xおよびy<0.3)、または(AlbCr1-b)N1-x-yxy、(ここで0.5<b<0.7,および0<x、およびy<0.3)からなるコーティング剤を含む。前記第2の層は、下記の組成物(Al1-c-d-eCrcSide)N1-x-yxy(ここでMはクロムを除く周期律の4族、5族、6族の遷移金属の中の少なくとも1つの原子を意味し、および0.2<c<0.35、0<d<0.20、0<e<0.04)からなるコーティング剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
本発明は、硬質工具鋼、ステンレススチールおよびチタン合金のような、機械加工の難しい物質の細工のために設計された、硬質および耐摩耗性のあるコーティングに関する。このように厳しい機械加工条件の適用は、優れた耐摩耗性、高温硬さおよび耐酸化性とともに、高靭性および良好な接着性を有するコーティングを必要とする。
【0002】
本発明は、さらに、このような耐摩耗性コーティングの製造プロセス、たとえば確立したPVDアーク蒸発プロセス、に関する。
【0003】
本発明は、さらに、コーティングされた加工対象物に関し、特に超硬合金、サーメット、立方晶窒化ホウ素(CBN)または高速度鋼からなる本体を有する工具に関する。
【背景技術】
【0004】
関連する技術に関する考察
AlTiNは、硬質鋼の機械加工のための広く用いられているPVDコーティングである。しかしながら、AlTiNは、単層、または異なるTi/Al/N化学量論の複数の副層からなる多層として用いられる場合は、アルミニウム/チタン比に依存した、800℃から850℃より高い温度における、初期の硬度の減少のため、機械加工の適用としては、最大900℃まで用いられることができる。
【0005】
そのため、米国特許出願公開第2005−0003239号明細書は、加工対象物の耐酸化性を高めるために、AlCrNコーティングを適用する。該コーティングは、良好な耐酸化性およびアルミニウム/クロム比に依存して、最大1100℃まで高温硬さを有することが知られている。このようなコーティングは、多くの工具の適用において、研磨性能を向上させることに役立つが、しかしながら、硬質工具鋼、高速度鋼、チタンおよびニッケル合金およびオーステナイト鋼のような、機械加工がより難しい物質の工具性能を有意に向上させない。これに似たものとして、国際公開第2006/005217号、国際公開第2006/084404号および米国特許出願公開第2006−0222893号明細書では、さらに、異なる多層を用いること、および/またはAlCrNマトリックスに他の原子を導入することによって、コーティングの耐酸化性および/または(高温)硬さを最適化することに挑戦している。
【0006】
硬質鋼の切削において進展を得られたと主張する他のコーティングが、欧州特許第1690959号明細書に開示されている。該コーティングは、(TiAlSi)Nであって、異なるAlおよびSi化学量論のものに基づく、2層のシステムを有する。
【0007】
米国特許出願公開第2006−0269789号明細書は、高速で超硬質物質を切削するための硬質多層を開示している。該多層は、TiAlCrNX(X=CまたはO)を主成分とする第1のコーティング層、TiAlCrNXおよびTiAl(SiC)NXの混合物、またはこれらが工具に重なった多層である第2のコーティング層、および基本的にTiAl(SiC)NXからなる第3の最も外側のコーティング層からなる。
【0008】
これらの層システムによって達成された、耐摩耗性および耐酸化性に関する確かな進展にもかかわらず、前記のような機械加工の困難な物質のための、被覆された切削工具の性能のさらなる向上が未だ必要であると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的の1つは、最適化されたハードコートおよび加工対象物を提供することであり、特に、たとえば高速度鋼、チタン合金、ニッケル合金、オーステナイト鋼のような機械加工の困難な物質における工具性能を高めるためのハードコートで被覆された切削工具、および特に硬度が50HRC以上、好ましくは55HRC以上である硬質工具鋼のような硬質物質を提供することである。本発明のさらなる目的は、このようなコーティングを、AlCrNの優れた酸化および高温硬度特性を失うことなく提供することである。これらの目的は、以下および本発明の請求項1および2に記載する最初の2つの観点のうち、いずれか1つによって達成され得る。本発明の3つ目の目的は、請求項12に記載された、たとえば金型やダイスのような機械組立て部品の部品を製造するために使用される改良された切削工具、および刃のような他の切削工具、ならびに請求項16に記載されたような操作を実行するための切削工程を提供することである。1つの活用の焦点は、たとえば、コスト削減、生産過程の最適化および加工対象物の表面粗さの向上と関連して、フライス操作の切削性能を向上することである。
【0010】
本発明の4つ目の目的は、クレーム13に記載された本発明に係るコーティングおよび本発明に係る道具を生産するためのPVDプロセスを提供することである。
【0011】
驚くべきことに、本発明の1つ目および2つ目の目的は、表面の少なくとも一部が、PVDプロセスによって蒸着された耐摩耗性の多層ハードコートによってその表面が被覆され、およびそのハードコートが、少なくとも1つ目の支持層および2つ目のナノ結晶ケイ素含有層であって、前記1つ目の層は加工対象物と2つ目の層の間に配置された、加工対象物によって解決され得るものであり、これは本発明の1つ目の観点である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の層は、下記の組成物からなるコーティング剤を含む。(TiaAl1-a)N1-x-yxy、ここで0.4<a<0.6、および0≦xおよびy<0.3。代替的に、第1の層は、(AlbCr1-b)N1-x-yxy、ここで0.5<b<0.7、および0≦xおよびy<0.3、を含み得る。
【0013】
第2の層は、下記の組成物からなるコーティング剤を含む。(Al1-c-d-eCrcSide)N1-x-yxy、ここでMはクロムを除く周期律の第4族(Ti,Zr,Hf)、第5族(V,Cb[Nb],Ta)、第6族(Cr,Mo,W)の遷移金属の中の少なくとも1つの元素を意味し、および0.2<c<0.35,0<d<0.20,0<e≦0.04である。本発明の好ましい一実施の形態において、第2の層は、下記の組成物からなるコーティング剤を含む。(Al1-c-d-eCrcSidM’e')N1-x-yxy、ここでM’は、W,Mo,Ta or Cb[Nb]を意味し、および0.06<d’≦0.15であり、特に0.10≦d’≦0.11である。(ニオブまたはコロンビウムは周期律の41番元素を意味し、元素記号(international shortcutはNb、時にCBでもある)
本発明のさらなる観点は、第1の層の結晶構造は、好ましくは2つの異なる層からなり、特に面心立方(fcc)および六方最密(hcp)層であることが特徴である。ここで、hcp層のXRDシグナルは、仮に少なくとも700℃または750℃の熱処理または高い作業温度に晒された場合、より平坦になるだろう。hcp層はAl豊富であり、蒸着された六方最密層の割合は、5から40容量%、好ましくは10から30容量%となる。
【0014】
本発明のさらなる観点は、ナノ結晶層内のAl/Cr割合、第1層および第2層の厚さの割合、および全体のコーティングの厚さ、層のテクスチャ、構造および第1層および第2層が交互に重なる多層に向けられている。たとえば、被覆された切削工具の性能は、特に、Al/Cr比であって、指数QAl/Cr=(1−c−d−e)/cで表わされるものが
、以下の範囲内にあるときに特に良好であるようだ:1.5<QAl/Cr≦2.4。
【0015】
さらなる一実施の形態において、第1のコーティングの厚さD1は、第2のコーティングの厚さD2よりも小さく、たとえば、指数QD=D2/D1は、1<QD≦4の範囲であり、ここで、本発明のコーティングの全体の厚さDは、以下の範囲内である:1μm≦D≦10および好ましくは2μm≦D≦6μm。
【0016】
本発明のさらなる観点は、コーティングシステムの定義された層の硬度およびヤング係数に言及している。ナノ結晶層の硬度は、支持層の硬度に比べてより大きいことが有利であることが証明された。たとえば、第1の層は、好ましくは硬度が2400HVから2800HVの範囲を示す。ここで第2の層は、硬度が2800HVから3200HVであり、これはヴィッカース微小押し込みにおいて荷重40mNで測定された。硬度およびヤング率−後者は広範囲までのコーティングシステムの硬度に影響している−は、たとえばあるプロセスパラメータ、特に基板バイアスおよびプロセス圧力または反応ガス圧力、を制御することによって調整され得、当業者に、米国特許第6071560号明細書および米国特許第6274249号明細書および他の文献から公知である。
【0017】
しかしながら、本発明のためには、第1のコーティングの蒸着の間は、第1の低い基板電圧U1を適用するステップ、および第2のコーティングの蒸着の間は、第2のより高い基板電圧U2を適用するステップを有する蒸着プロセスを使用することが有利であることが証明された。ここで、第1の基板電圧は、0V≦U1≦100Vの範囲であり、第2の基板電圧は、80V≦U2≦200Vの範囲であり、ここでU2−U1≧20Vである。さらにまたは代替的に、第1のコーティングの蒸着の間は、第1の層の内在応力、および硬度を減少させるためにより高いプロセス圧力を使用することができる。加工対象物を、550℃以上、特に約600℃以上の温度に加熱し、蒸着プロセスの間、該温度レベルに維持することは、コーティングの接着性および工具の性能に、より有益な影響を与えるものと思われる。
【0018】
前述の層の性質に影響を与えるさらなる可能性のあるものとしては、追加の元素の内容を変えること、または前記のAl/Cr率を変えること、または以下に示す例がある。第2のナノ結晶合金化AlCrN−ベース層の硬度は、ケイ素含有量を、硬度が最大化するように、結晶粒の精製を最適化することによって調節して向上させることができる。さらに、貢献的な液体硬化が前述の遷移金属、特にW,Mo,CbおよびTa、によって得られ、これはさらにたとえばハードコートの粒界相におけるように、拡散障壁として働く。要するに、このようなナノ結晶合金化AlCrNベース層は、高温および酸化に対して極めて耐性があることがわかり、それゆえ支持層および基板が酸化されるのから保護するのに非常に効果的である。切削操作における最もよい性能は、テクスチャ係数がQI=I(200)/I(111)で0.7≦QI≦2の範囲のときに達せられる(QIはI(200)のI(111)に対する回折強度の割合によって定義されており、それぞれ物質のX線回折スペクトルにおいて(200)および(111)面に割当てられている)。これは(200)および(111)面に沿った均衡成長に対応している。測定に関する詳細は図1に示されている。
【0019】
第2の層と対照的に、支持層は、柱状成長構造および、より高いヤング率を通じたより高い弾性を示している。これは、第2の層の非常に高い耐摩耗性および耐高温特性を、加工対象物の基板物質に機械的荷重を移動するのに最もよい組合せであることがわかった。
【0020】
上述のように構成された2つの層の代替として、特別の適用のため、層の性能をさらに向上させるために、他の層のシステムを使用することができる。たとえば、薄い金属接着層を、基板と第1の支持層の最適化された接合部分として用いることができる。下位接着
層は、Ti,Cr,TiAlまたはAlCrを含み、そして当業者に公知なように、第1の層に向けてN、Cおよび/またはOの量が多くなる移行帯を有することができる。
【0021】
他のまたは追加の可能性としては、第1の層を、(TiaAl1-a)N1-x-yxyおよび(Al1-c-d-eCrcSide)N1-x-yxy、が交互に重ねられた多層、または(AlbCr1-b)N1-x-yxy、および(Al1-c-d-eCrcSide)N1-x-yxyが交互に重ねられた多層を含むものとすることがある。この堆積した層は、数百ナノメートルから、層の堆積が必要とする範囲内で変化する最大までの好ましい層の厚さを有し得る。
【0022】
加工対象物の本体または基板材料は、好ましくは、高速度鋼、超硬合金、立方晶窒化ホウ素、サーメットまたはセラミック材の中の少なくとも1つから好ましくは選択される。このようなコーティングされた加工対象物は、多くのタイプの工具に用いることができるが、特に切削工具、たとえばエンドミル、ドリル、切削インサートまたはホブ(hobs)のような歯切り工具に特に有用であり得る。超硬合金、立方晶窒化ホウ素、サーメットまたはセラミック材からなる工具に適用された場合、これらのコーティングは硬質材料−たとえば高速度鋼−であって、ロックウェル硬度がHRC50以上、さらにHRC55以上であり、以下の実施例に詳細が示されるような硬質材料を切削するプロセスにおいて、切削性能を向上させる良好な潜在能力を有する。
【0023】
以下の図面および実施例は、いくつかの特定の実施の形態の手段によって本発明を説明することを意図しており、決してクレームの範囲を制限することを意図していない。参照は添付の図面によってなされている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、TiAlN/AlCrNおよびTiAlN/AlCrSiWNハードコートのXRDスペクトルを示す。
【図2】図2は、TiAlN/AlCrNおよびTiAlN/AlCrSiWNハードコートの最適化XRDスペクトルを示す。
【図3】図3は、TiAlN/AlCrNおよびTiAlN/AlCrSiWNハードコートのSEM断面図である。
【図4】図4は、六方相のTiAlN/AlCrSiWNハードコートのXRDスペクトルを示す。
【図5】図5はピーク強度の図を示す。
【図6】図6は、使用前および使用後の切削工具のTiAlN/AlCrSiWNのXRDスペクトルを示す。
【0025】
図1は、TiAlN/AlCrNおよび3つのTiAlN/AlCrSiWNコーティングでAl/Cr比が異なるもののXRDパターンを示している。該コーティングは、コバルトバインダ層を有する商業的な超硬合金インサート上に蒸着され、実施例1および2のNo1.6、2.4、2.5、および2.6のコーティングに対応する。コーティングパラメータは、第2の層を蒸着するのに用いるターゲット材を除いては、すべてのコーティングにおいて同様であった。ターゲット組成およびコーティング剤の特徴の詳細は、表1および2に記載されている。
【0026】
すべてのXRDスペクトルは、Bruker AXS機器を用いて、CuKα(λ=1.5406nm)ソースで、Bragg-Brentano配列を使用して、支持層および基板からの妨害回折シグナルを最小化するために2°の低角入射において記録された。
【0027】
当該スペクトルから、2つの重要な事実が推定された;
−WおよびSi合金化AlCrターゲットは、コーティングの回折パターンのピーク高
さの減少およびピークシグナルの広がりの原因となっている。これは、元素、特にケイ素の合金化に起因する結晶粒生成効果によるものであり得る。該AlCrSiWN第2の層は、ナノ結晶構造で蒸着されており、これは図3bのSEM層の断面図においても確認できる。
【0028】
合金化されていない第2のAlCrN層で、明らかな(111)配向性を示すものを有するコーティングシステムと比べて、合金化された第2の層を有するシステムは、結晶配向性をほとんど示さないか、ただ弱い配向性の傾向のみを示す。したがってI(200)のI(111)(それぞれ物質のX線回折スペクトルにおいて(200)および(111)面に当てられたもの)に対する回折強度の比として定義される用語QIは1、好ましくは0.7から2の範囲であり、これは仮に上記に示された低角入射で測定された場合である。
【0029】
コーティングの構造に関するより詳細な情報は、仮に図2に示されるようにローレンツ法に従ったピーク調整が適用された場合、XRD−パターンから推定され得る。該調整は、No1.6およびNo1.9のコーティングを表わすスペクトルからの、2Θスケールにおける、44.5°近くの(200)シグナルに適用される。ここで、拡大は半値幅(FWHM)を測定することによって定量化され得る。装置の一定の背後の影響を除外して、AlCrSiWN第2の層の顕著なピークの広がりを示す下記の値が得られた:
TiAlN/AlCrSiWN:FWHM(200)=1.7°
TiAlN/AlCrN:FWHM(200)=1°
合金化AlCrNコーティングで、SiおよびWを有するものは、ピークシフトを、43.8°から、より低い2Θ角度43.4°に移動させるが、作者はこれはタングステン原子のより大きなサイズに由来する、格子面の拡大に起因するものと考える。ここで格子パラメータは、AlCrNのd(200)=2.064nmから、AlCrSiWNのd(200)=2.082nmに変化する。
【0030】
100’000倍に拡大した、2つのコーティングの断面図のSEM像が、図3aおよび3bに見られる。SEM像は、5kVの加速電圧で記録された。写真は2層のコーティングを示しており、それぞれ約1μmの厚さの柱状に成長した(Ti0.5Al0.5)N支持層と、より薄い最上層を有している。ここで図3aは、同等に粗くそして柱状の第1の層よりも、既に精製された層を有するAlCrN最上層を示している。しかしながら、Al.57Cr.31Si.10.02)N第2の層の構造は、図3bで、図3aに比べて有意に精製されたナノ結晶構造を示しており、これは図1および2で観察されたXRDスペクトルのピークの広がりに対応している。
【0031】
図4では、図1のTiAlN/AlCrSiWNハードコートのXRDスペクトルが、高分解能モードで2θの数値で示されており、六方相ピークが現われる場所が矢印で示されている。AlCrSiWNコーティング中のアルミニウムの含有量が増えるに従って、六方相ピークがより顕著になることが明白に認識でき、これはコーティングNo1.6、2.4、2.5の良好な切削性能に繋がる。
【0032】
図5は、SEM−SAED(透過型電子顕微鏡−制限視野電子回折)によって分析されたピーク強度ダイヤグラムであり、TiAlN/(Al0.62Cr0.26Si0.100.02)Nコーティングの四方相および六方相のより詳細な図を示している。化合物の化学量論数は、ターゲット組成を参照している。
【0033】
図6には、TiAlN/(Al0.57Cr0.31Si0.100.02)NコーティングのPVDプロセス後の蒸着時(A)および、高速側フライス削りプロセス(B)に従って使用されたときであり、詳細が実施例8に記載されるように真っ赤に燃えた切屑とともにあるもの
のXRDスペクトルが示されている。ターゲット組成の詳細、厚み比および性能を表8に示す。スペクトル(B)は約40mのフライス削り後に得られたものであるが、驚くべきことに、より高い六方相XRDシグナルを示している。同様の六方相割合の上昇は、少なくとも750°でこのようなコーティングを硬度調節することによって確認できる。このように温度が相転移を誘発するのを観察するためのAlの最小割合は、49から57%であり、これはさらなる原子のマトリックスに依存し、これは本事例の起こる分野の当業者に容易に決定され得る。750°から800℃以上では、六方相は少なくとも1100°まで温度の上昇に従って成長し得る。温度範囲600℃から約1100℃の温度範囲では、それはPVDプロセスによって蒸着さ得、四方相結晶に組込まれた高AlN含有のhcp層からなる析出硬化ネットワークが断面STEM分析で検出され得る。750℃での晶子のサイズは5から200nmの間であった。ほとんどの切削テストで、このようなコーティングは相転移を示さないコーティングに比べて優れており、57%程度の高いAl−ターゲット組成は性能が優れているようだ。さらに驚くべきことに、これまでに、室温から高速度での細工によって達せられるいずれの温度までのすべての温度範囲において、安定化したコランダム相を有するアルミナコーティングは、コーティングの非常に高い熱負荷に達したときに、強力な利点を有すると思われた。一方、(AlCrSiW)Nコーティングにとっては、相転移は、切削プロセスの間に、高温で安定している窒化アルミニウム相の継続的な拡散のために、有利な効果を有すると思われる。図6(B)に示される33.2°ピークのピーク位置は、JCPDS XRDデータコレクションからの六方最密hcp−AlNのhcp100ピークと完全に一致している。さらにAlNピークは、これは明らかに確認できるものであるが、36.1°(002シグナル参照)、49.2°(102)、59.4°(110)および101.6°(211)である。これまでのいずれの事例においても、このような温度が相転移の動きを誘導することについて、推測がなされているのみであった。詳細な研究がまだされるべきである。Alの割合が約70%を超えると、hcp−AlN−相は主要相に変わり、このような相転移は最早観察されない。
【発明を実施するための形態】
【0034】
好ましい実施の形態の詳細な説明
以下に、いくつかの特定の本発明の実施の形態を、本発明に係る工具と従来技術の工具の切削性能を、異なる切削操作および切削パラメータを用いて比較した実施例を用いて開示する。
【0035】
すべての本発明に係るハードコートおよび比較例は、アーク蒸発の形態で、Oerlikon Balzers RCS(C)コーティングシステムを用いて蒸着された。切削工具は、PVD蒸着の間30回転固定具に取付けられた。以下の実施例に示される切削工具上に蒸着されたハードコートは、全体の厚みが切削工具のシャンクにおいて2から6μmであった。新規のコーティングが、従来のOerlikon Balzers標準コーティングプロセスによって得られたTiAlNいわゆるFUTURA NANO、AlTiNいわゆるXCEED、およびAlCrNいわゆるALCRONAと比較された。
【0036】
実施例1
実施例1では、従来のコーティング、たとえばTiAlN,AlTiN,AlCrNおよび(AlCrSiW)Nでコーティングされたエンドミルの切削性能を、TiAlNまたはAlCrN/(Al1-c-d-eCrcSide)N二重層コーティングでコーティングされた本発明に係る一連のエンドミルと比較した。
【0037】
すべてのコーティングは、陰極アーク蒸発で構成された。No1.4からNo1.10のコーティングの蒸着は、窒素雰囲気下で、600℃の温度および3.5Paの全体圧力で蒸着が行なわれた。第1の支持層には、好ましくは−40Vから−100Vの低いバイ
アス電圧がかけられ、一方、第2の層には、−80Vから−200Vの高いバイアス電圧が使用され、ここで第2の層のバイアス電圧は、第1の層のバイアス電圧よりも絶対値で少なくとも20V、好ましくは40V高いものである。No1.1からNo1.3のコーティングの蒸着は、窒素雰囲気下で500℃の温度および3.0から4.0Paの全体圧力で蒸着が行なわれた。
【0038】
それぞれの蒸発物質(ターゲット)の組成に関連したデータとして、コーティングの第2のナノ結晶コーティング層(m.l.)内のAl/Cr比、複数の層の厚み比QD(m.l./s.l.)、および切削長さが90mに達したあとの側面摩耗をマイクロメートルで表現した切削性能、および100μmの摩耗指標に達したときの累積工具寿命をメートルで表わしたものが表1にまとめられている。
【0039】
フライス加工条件:
加工対象物: DIN 1.2379(60HRC)
切削工具: 2つの溝付きボールノーズエンドミル、φ10mm、
超硬グレード超微粒合金
主軸回転: 8000min-1
切削速度: 200mmin-1
一刃当り送り量: 0.1mm/刃
切削の放射方向深さ: 0.5mm
切削の軸方向深さ: 0.3mm
冷却剤: 圧縮乾燥空気
フライス作業: 下向き削り
シングルパス長さ: 30m
寿命限度: vbmax>100um(シングルパス終了時点において)
【0040】
【表1】

【0041】
表1を参照して、比較例1.3から1.6の性能は、二重層構造でコートされた本発明に係る工具と比較して劣っている。実施例1.4から1.5の1層のAlCrSiWNコーティングの顕著な向上にかかわらず、実施例1.3の非合金AlCrNコーティング、
または実施例1.6のTiAlN/AlCrN二重層と比較すると、これらのコーティングは本発明の実施例の1.7から1.8と同等であると見なすことができない。しかしながら、本発明の二重の層の厚み比QDは、薄いシリコン含有層でコーティングされた実施例1.10の低い性能に示されるように、重要な事項であると思われる。
【0042】
実施例2
実施例2においては、実施例1と同様の蒸着パラメータが適用された。
【0043】
試験2.1から2.3ではSiの第2のコーティングにおける含有量は一定のAl/Cr比において変化させ、試験2.4から2.6では、Al/Crの比は、一定のSi含有量において変化させた。小さなタングステンの変化−約最大で2±0.3%−が実施例2のすべての試験において測定され、表2に示されている。
【0044】
フライス加工条件:
加工対象物: DIN 1.2379(60HRC)
切削工具: 2つの溝付きボールノーズエンドミル、φ10mm、
超硬グレード超微粒合金
主軸回転: 8000min-1
切削速度: 200mmin-1
一刃当り送り量: 0.1mm/刃
切削の放射方向深さ: 0.5mm
切削の軸方向深さ: 0.3mm
冷却剤: 縮乾燥空気
フライス作業: 下向き削り
シングルパス長さ: 30m
寿命限度: vbmax>100um(シングルパス終了時点において)
【0045】
【表2】

【0046】
表2では、一定のSi含有量(No.2.4−2.6)において、硬度測定は、第2のコーティングに含有される、Al/Cr比の上昇に従って硬度が減少することを示している。一定のAl/Cr比においては、硬度の最大値および切削性能の最大値は、Si含有量が約10%において見られた。さらに明らかなことであるが、Si含有量は良好な切削
性能を得るためには少なくとも5.3%以上である。
【0047】
上記に示したQI値を定義するためにXRD分析に用いたパラメータおよび構造は、図1に詳細に示されている。ここで指数を定義するための(111)ピークは2−Θで約37.5°の角度に位置し、(200)ピークは約43.7°に位置するものである。優先的には、2°での低角入射で測定されたQ=I(200)/I(111)の値は、1の周辺であり、特に0.7から2の間である。
【0048】
実施例3
下記に示されるパラメータに従った荒削り操作における本発明のコーティングNo3.4のフライス削り能力を、従来技術のコーティングNo3.1−3.3までと比較した。実施例3においては、実施例1で示されたのと同様の蒸着パラメータが適用された。
【0049】
フライス加工条件:
加工対象物: DIN 1.2344(52HRC)
切削工具: 2つの溝付きボールノーズエンドミル、φ10mm、
超硬グレード超微粒合金
主軸回転: 4690min-1
切削速度: 80mmin-1
一刃当り送り量: 0.15mm/刃
切削の放射方向深さ: 4mm
切削の軸方向深さ: 0.8mm
冷却剤: 圧縮乾燥空気
フライス作業: 下向き削り
シングルパス長さ: 15.5m
寿命限度: vbmax>150um(シングルパス終了時点において)
【0050】
【表3】

【0051】
実施例4
No.3.4で使用されたのと同様の新しいコーティングを、No.4.4で用い、合金化された硬度が36HRCの切削工具の仕上げ作業における性能を、従来のコーティングである4.1から4.3までと比較した。
【0052】
フライス加工条件:
加工対象物: DIN 1.2344(36HRC)
切削工具: 3つの溝付きエンドミル、φ8mm、超硬グレード超微粒合金
主軸回転: 4777min-1
切削速度: 120mmin-1
一刃当り送り量: 0.05mm/刃
切削の放射方向深さ: 0.5mm
切削の軸方向深さ: 0.10mm
冷却剤: 圧縮乾燥空気
フライス方向: 下向き削り
シングルパス長さ: 5m
寿命限度: vbmax>100um(シングルパス終了時点において)
【0053】
【表4】

【0054】
従来のコーティングと比べて顕著な性能の向上は、新規のコーティングの軟性スチールの機械工作における潜在能力を証明する。
【0055】
実施例5
実施例5では、切削の適用の前に、ブラッシング機を用いてDE20 2006 000 6541に従ってブラッシング処理をコーティングに行ない、状態を初期の均質な摩耗に調整し、その後切削の適用の間の摩耗の均質な進行を確保する。
【0056】
被覆工具の処理は、DEGM20 2006 000 645.1の図2および5頁最終段落から6頁の第1段落の終わりまでの記載に従った回転式ブラシによって行ない、本発明は引用することによって援用する。ブラシ角度は工具の軸を基準として約30度であり、回転スピードは650回転/分であった。ブラッシング材料SiC含浸ナイロンであり、SiC結晶粒のサイズは400メッシュ、毛の直径は0.45mm、毛の長さは35mmであった。工具の付随体の回転は8回転/分であり、台支持付随体の回転は、0.3回転/分であった。刃先に沿った加工対象物の少量のマイクロメートルの縞模様に対する同様の効果は、Al23含浸ブラシを用いて達成することができた。しかしながら、この場合は、ブラシッシング時間は、仮に上記に示されたものと同じパラメータを使用すると、3倍であった(たとえば支持台の回転を0.1回転/分と設定した)。
【0057】
コーティングは、No1.2およびNo1.8のパラメータに従って蒸着した。
フライス加工条件:
切削工具: 2つの溝付きボールノーズエンドミル、φ5mm、
超硬グレード超微粒合金
加工対象物: 1.2379 62HRC
主軸回転速度: 6000rev/min
切削の軸方向深さ: 0.4mm
切削の放射方向深さ: 0.05mm
一刃当り送り量: 0.10mm/刃
切削速度: 184m/min
送り速度: 600mm/min
冷却剤: 空気
フライス作業: くぼみ(56mm×26mm)に対する下向き削り技術
シングルパス長さ: 1Pocket
寿命限度: vbmax>100um(くぼみ終了時点において)
【0058】
【表5】

【0059】
表5の切削データは、このような切削操作におけるブラッシング処理は、新しい多層コーティング(5.3および5.4)でコーティングされた工具にとって非常に有用であることを示し、一方、AlTiNでコートされた工具にとっては、このような処理が適用されたときは、わずかながら性能の減少が見られることを示す。
【0060】
代替的にまたはさらに追加的に、ブラシ、熱風、研削工程またはそのようなものによる同様のホーニング処理を、コーティングプロセスの前に適用できる。
【0061】
実施例6
タングステンを、単独の合金化元素としたときの影響を試験するために、一連のサンプルが準備された。No1.2およびNo1.8のパラメータに従ってコーティングが蒸着された。
【0062】
フライス加工条件:
切削工具: 2つの溝付きボールノーズエンドミル、φ10mm、
超硬グレード超微粒合金
加工対象物: 1.2379(62HRC)
主軸回転: 8000min-1
切削速度: 200mmin-1
一刃当り送り量: 0.1mm/刃
切削の放射方向深さ: 0.5mm
切削の軸方向深さ: 0.3mm
冷却剤: 圧縮乾燥空気
フライス作業: 下向き削り
シングルパス長さ: 30m
寿命限度: vbmax>100um(シングルパス終了時点において)
【0063】
【表6】

【0064】
No.6.1と比較して、No.6.2はフライス切削性能がわずかに向上した。これは明らかに、第2のAlCrN−ベース層にWを追加したことに起因する。最適化されたコーティング、異なるAl/Cr−比および追加にSiを含むものと比較するとまだ差がある。
【0065】
実施例7
表7を参照して、支持層に対応するTiAlN層および本発明のコーティングの二重層の、硬度およびヤング係数が測定された。測定方法は、ヴィッカース微小硬さ試験を用い、40mN荷重における、約0.3μmの侵入深さとなったときであった。したがって、基板材料および支持層からの重要な影響は測定において検出され得なかった。第2のコーティングと比較して、支持層は低い硬度値および高いヤング係数で特徴付けられる。
【0066】
【表7】

【0067】
表7の実施例から、AlCrSiWNでコートされた本発明に係る工具は、従来技術のAlCrNコーティングと比較して、硬質工具性能において驚くべき性能の向上を示すことが明らかである。
【0068】
実施例8
表8を参照して、従来技術にコーティング8.1および、2つの本発明のコーティング8.2および8.3で図6に詳細に示されているように熱誘導相転移を示すものの性能が示されている。ターゲット組成8.2のコーティングでは、hcp層が蒸着されたことの証明は、観察することが困難であった。40mの切削後のみにおいて、明らかであるが、しかしながら、コーティング8.3の図6(B)よりも確かに小さなシグナルが検出できた。
【0069】
切削工具: 6つの溝付きスクエアエンドミル、
超硬グレード超微粒合金
加工対象物: DIN 1.2379(60HRC)
主軸回転スピード: 7958 1/min
切削の軸方向深さae: 8mm
切削の放射方向深さap: 0.1mm
一刃当り送り量fz: 0.042mm/刃
切削速度vc: 200m/min
冷却剤: 圧縮空気
フライス作業: 側面切削
シングルパス長さ: 10m
寿命限度: vbmax>150um
【0070】
【表8】

【0071】
上記に示された本明細書および実施例の範囲の硬質工具への適用への焦点にもかかわらず、当業者はこのようなコーティングは他の工具および、たとえばスタンピングおよび鍛造、またはダイカストまたは鋳造のようなホットインジェクション操作、同様に高い耐摩耗性および高温時硬さを必要とする部品の工業材料部品を形成するための機械工作の適用へ有利に適用することができることを認識しているであろう。このような工業技術への適用の例としては、燃焼機関の一部、特にカムやタペットのようなパワートレインの一部、注射針および弁座のような燃料噴射システムの一部、ピストンリングおよびピン、高温軸受部およびこれらに類するものがあり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する加工対象物であって、前記表面の少なくとも一部は、PVDプロセスによって蒸着された耐摩耗性多層ハードコートで被覆され、前記ハードコートは、少なくとも1つの第1の支持層および1つの第2のナノ結晶層を含み、前記第1の層は、前記加工対象物および前記第2の層の間に配置され、
前記第1の層は、下記の組成物
(TiaAl1-a)N1-x-yxy
(ここで、0.4<a<0.6、および0≦xおよびy<0.3である)
または
(AlbCr1-b)N1-x-yxy
(ここで、0.5<b<0.7、および0≦xおよびy<0.3である)
からなるコーティング剤を含み、
前記第2の層は、下記の組成物
(Al1-c-d-eCrcSide)N1-x-yxy
(ここで、Mは、クロムを除く、周期律の4族、5族、6族の遷移金属の中の少なくとも1つの元素を示し、および
0.2<c≦0.35,0<d≦0.20,0<e≦0.04である)
からなるコーティング剤を含む、加工対象物。
【請求項2】
前記第1の層は、下記の組成物
(TiaAl1-a)N1-x-yxy
(ここで、0.4<a<0.6、および0≦xおよびy<0.3である)
または
(AlbCr1-b)N1-x-yxy
(ここで、0.5<b<0.7、および0≦xおよびy<0.3である)
からなるコーティング剤を含み、
前記第2の層は、下記の組成物
(Al1-c-d-eCrcSidM’e')N1-x-yxy
(ここで、M’は、W、Mo、TaまたはCb(Nb)を意味し、および
0.2<c≦0.35,0.0≦d’≦0.15,0<e≦0.040である)
からなるコーティング剤を含む、請求項1に記載の加工対象物。
【請求項3】
前記第1の層が2つの異なる結晶相を含む、請求項1または2のいずれかに記載の加工対象物。
【請求項4】
前記異なる結晶相が、面心立方(fcc)および六方最密(hcp)相である、請求項2に記載の加工対象物。
【請求項5】
前記hcp相のX線回折シグナルが、熱処理または高い作業温度に晒された場合に、より平坦になる、請求項4に記載の加工対象物。
【請求項6】
前記hcp相がAlに富んでいる、請求項4または5に記載の加工対象物。
【請求項7】
蒸着されている前記hcp相の割合が、5から40容量%である、請求項4から6のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項8】
指数QAl/Cr=(1−c−d−e)/cが、下記の範囲内
1.7≦QAl/Cr≦2.4
である、請求項1から7のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項9】
コーティングの厚みDが、下記の範囲内
1μm≦D≦10μm、好ましくは2μm≦D≦6μm
である、請求項1から8のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項10】
前記第1の支持層の厚みD1が、前記第2のコーティングの厚みD2より小さい、請求項1から9のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項11】
第1の支持層の硬度HV1が、第2のコーティングの硬度HV2より小さい、請求項1から10のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項12】
前記第2の層が、SEM断面においてナノ結晶成長構造を示す、請求項1から11のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項13】
前記第1の層が、SEM断面において柱状成長構造を示す、請求項1から12のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項14】
前記ナノ結晶の第2の層のテクスチャ係数QI=I(200)/I(111)が0.7≦QI≦2の範囲内である、請求項1から13のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項15】
前記第1の層は、(TiaAl1-a)N1-x-yxyおよび(Al1-c-d-eCrcSide)N1-x-yxyの層が交互に重なった多層、または(AlbCr1-b)N1-x-yxyおよび(Al1-c-d-eCrcSide)N1-x-yxyの層が交互に重なった多層を含む、請求項1から14のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項16】
本体が高速度鋼、超硬合金、立方晶窒化ホウ素、サーメット材またはセラミック材からなる、請求項1から15のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項17】
前記加工対象物が切削工具であり、特にエンドミル、ドリル、切削インサート、または歯切り工具である、請求項1から16のいずれか1つに記載の加工対象物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1つに記載の加工対象物を製造するためのPVDプロセスであって、前記加工対象物を、550℃以上の温度、特に約600℃の温度まで加熱し、および蒸着プロセスの間、該温度を維持する工程を含む、PVDプロセス。
【請求項19】
前記第1のコーティングの蒸着の間に、第1の基板電圧U1を適用し、および前記第2のコーティングの蒸着の間に、第2のより高い基板電圧U2を適用する工程を含む、請求項18に記載のPVDプロセス。
【請求項20】
0V≦U1≦−100Vおよび−80V≦U2≦−200V、ここで|U2−U1|≧20である、請求項19に記載のPVDプロセス。
【請求項21】
請求項17に記載の切削工具を用いて、硬質材料、特にロックウェル硬さがHRC50またはそれ以上を有する材料を切削する切削プロセス。
【請求項22】
前記硬質材料が硬化鋼である、請求項21に記載の切削プロセス。
【請求項23】
請求項21または22のいずれか1つの切削プロセスを適用することを含む、切削硬質材料加工対象物の製造のためのプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−521589(P2010−521589A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553993(P2009−553993)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052572
【国際公開番号】WO2008/116728
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(598051691)エリコン・トレーディング・アクチェンゲゼルシャフト,トリュープバッハ (44)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Trading AG,Truebbach
【Fターム(参考)】