説明

加硫機、及び空気ばねの製造方法

【課題】設置コストが安く、しかも、筒状未加硫ゴム成型体を容易に加硫成形して生産性を高めることのできる加硫機の提供。
【解決手段】下型4と昇降自在な上型5とからなる加硫金型6と、ブラダー7とを備える。ブラダー7を給気状態で中央部が径方向外向きかつ上向きに膨らんだ浮き輪状をなすよう設定する。加硫金型6とブラダー7との間に筒状未加硫ゴム成型体2を配置する。ブラダー装着部材8を介して、ブラダー7の両端部を下型4に固定する。ブラダー7の上端を昇降させる中心機構は省略する。中心機構によるブラダー7の上端の昇降を省略して、簡単な動作で筒状未加硫ゴム成型体2を加硫成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両用空気ばねのダイヤフラムを製造する際に使用する加硫機、及び空気ばねの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両などに装備される空気ばねは、筒状のゴム膜に耐圧補強用の補強コード層を埋設してダイヤフラムを構成し、このダイヤフラムの両端に金具を止着した構造とされる。この空気ばねは、ダイヤフラムの内部に空気を封入することにより、防振装置として機能し、さらに、封入する空気量を調節することにより、車高調整装置として機能する(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図10に、特許文献1に記載の空気ばねを示す。図10に示す空気ばねは、鉄道車両用として採用されることの多い形式の空気ばねであり、ダイヤフラム101の上下端に金具102、103が止着されている。この空気ばねのダイヤフラム101は、下端を上向きに押し込むようにして、中央部を径方向外向きに十分に膨出させた形状とされ、空気ばねの高さを低く設定しつつ大きな変位を許容するようになっている。
【0004】
空気ばねのダイヤフラムを製造するには、まず、補強コード層を埋設しつつ筒状未加硫ゴム成型体を成型し、この筒状未加硫ゴム成型体を加硫金型にセットして、内側にブラダーと称する風船状のゴム膜を配置する。ブラダーは、その下端を加硫金型の下型に取り付けられると共に、上端を加硫金型の中心軸に沿って昇降自在な中心機構のセンターポストに取り付けられている。
【0005】
次いで、ブラダーをその上端を中心機構によって昇降させて伸縮させながら、ブラダーに蒸気などを給入・排気すると共に、加硫金型の上型を下降させて型締めを行うことにより、ブラダー及び筒状未加硫ゴム成型体を所定の形状に膨らませて、筒状未加硫ゴム成型体をシェーピングする。その後、蒸気などをさらに給入して筒状未加硫ゴム成型体を加温・加圧することにより、筒状未加硫ゴム成型体を加硫成形してダイヤフラムを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−89029号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特に、鉄道車両用空気ばねのように端部を中心軸方向に押し込んだ形状のダイヤフラムを加硫成形する場合、ブラダーの上端の昇降量を大きく設定する分、中心機構を大形にする必要があり、しかも、大形の中心機構を設置可能なよう、床掘り込みによって深いピットを施工する必要があり、加硫機の設置コストが高くなりやすい。
【0008】
また、シェーピングする際に、筒状未加硫ゴム成型体を引き伸ばしたり折り畳んだりする量が大きい分、筒状未加硫ゴム成型体とブラダーとの間に生じたわずかな隙間にエアーが蓄積されて、製品に不具合を生じるおそれがある。さらに、加硫金型を型締めする際に、ブラダーの内圧が低いと、ブラダーと筒状未加硫ゴム成型体とが離れたまま個別に変形して、筒状未加硫ゴム成型体に皺を生じさせるおそれがあり、ブラダーの内圧が高いと、筒状未加硫ゴム成型体が膨らみすぎて、上型及び下型間に噛み込まれるおそれがある。
【0009】
このように、端部を押し込んだ形状のダイヤフラムを加硫成形する場合、種々の不具合を生じやすく、これらの不具合を確実に防止するには、ブラダーの上端の昇降、ブラダーへの給入・排気、及び加硫金型の型締めを組み合わせた筒状未加硫ゴム成型体のシェーピング動作が複雑になりやすく、生産性が低下しやすい。
【0010】
本発明は、設置コストが安く、しかも、筒状未加硫ゴム成型体を容易に加硫成形して生産性を高めることのできる加硫機、及び空気ばねの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る加硫機は、下型と該下型に対して昇降自在な上型とからなる加硫金型と、型締め状態で加硫金型の内側に位置すると共に外部から給排気自在なブラダーとを備えたものであり、加硫金型とブラダーとの間に筒状未加硫ゴム成型体を配置可能として、ブラダーを、ブラダー装着部材を介して両端部を下型に固定したものである。
【0012】
すなわち、本発明に係る加硫機は、下型と該下型に対して昇降自在な上型とからなる加硫金型と、型締め状態で加硫金型の内側に位置すると共に外部から給排気自在なブラダーとを備えたものであり、加硫金型とブラダーとの間に筒状未加硫ゴム成型体を配置可能として、ブラダーの両端部を、ブラダーの端部を昇降させる中心機構を介することなく、加硫金型に固定したものである。
【0013】
上記構成によれば、ブラダーの両端部をブラダー装着部材を介して下型に固定するので、ブラダーの上端を取り付ける中心機構を省略することができ、加硫機の設置コストを安くすることができる。しかも、ブラダー及び筒状未加硫ゴム成型体の上端を中心機構によって昇降させることなく、簡単な動作で筒状未加硫ゴム成型体を加硫成形することができ、ゴム製筒体の生産性を高めることができる。
【0014】
また、ブラダーを、その両端部の間隔を自由状態における中心軸方向長さよりも小さく設定し、給気状態で中央部が径方向外向きかつ上向きに膨らんだ浮き輪状をなすよう設定した構成も採用可能である。
【0015】
この構成によれば、ブラダーの両端部の間隔を自由状態の中心軸方向長さよりも小さく設定して、ブラダーを浮き輪状とするので、端部を中心軸方向に押し込んだ形状のゴム製筒体をそのまま加硫成形することができる。
【0016】
加硫成形する際、ブラダーの上端を昇降させながら筒状未加硫ゴム成型体を大きく引き伸ばしたり折り畳んだりしてシェーピングする必要がなく、筒状未加硫ゴム成型体とブラダーとの間へのエアーの蓄積を防止することができる。しかも、ブラダーの上端の昇降との組み合わせがない分、ブラダーへの給排気や加硫金型の型締めのタイミングの設定を簡単にすることができ、筒状未加硫ゴム成型体がブラダーから離れて個別に変形して皺を生じたり、筒状未加硫ゴム成型体が膨らみすぎて上型及び下型間に噛み込まれたりするなどの種々の不具合を防止することができる。
【0017】
また、本発明は、ゴム製筒体の製造方法を提供する。具体的には、筒状未加硫ゴム成型体を成型し、加硫金型の下型にブラダー装着部材を介して両端部を固定されたブラダーから排気して、このブラダーの外側に筒状未加硫ゴム成型体を配置する。次いで、ブラダーに給気して筒状未加硫ゴム成型体を引き伸ばさない程度に膨らませ、加硫金型の上型を下降させて型締めした後、ブラダーにさらに給気して加硫金型との間で筒状未加硫ゴム成型体を加温・加圧して加硫成形する。
【0018】
この構成によれば、下型に両端部を固定したブラダーで筒状未加硫ゴム成型体を引き伸ばさない程度に膨らませただけで、その後、型締め及びブラダーへの給気によって加硫成形するので、ブラダー及び筒状未加硫ゴム成型体の上端を中心機構によって昇降させることなく、簡単な動作で筒状未加硫ゴム成型体を加硫成形することができ、ゴム製筒体の生産性を高めることができる。
【0019】
また、筒状未加硫ゴム成型体を両端部の径が互いに異なる大きさで、かつ小径側の端部が中心軸方向で中央側に押し込まれた形状に成型すると共に、ブラダーの両端部の間隔を自由状態における中心軸方向長さよりも小さく設定して、ブラダーを給気状態で中央部が径方向外向きかつ上向きに膨らんだ浮き輪状に設定し、両端部の径が互いに異なる大きさで、かつ小径側の端部が中心軸方向で中央側に押し込まれた形状のゴム製筒体を製造するようにした構成も採用可能である。
【0020】
この構成によれば、浮き輪状のブラダーで筒状未加硫ゴム成型体を膨らませるので、小径側の端部を中心軸方向で中央側に押し込んだ形状に成型した筒状未加硫ゴム成型体の内部形状にブラダーを沿わせることができる。これにより、筒状未加硫ゴム成型体をそのまま加硫成形して、両端部の径が互いに異なる大きさで、かつ小径側の端部が中心軸方向で中央側に押し込まれた形状のゴム製筒体を製造することができ、上記の加硫機の構成を採用することによる効果と同じ効果を奏することができる。
【0021】
また、本発明は、上記の製造方法で製造したダイヤフラムに金具を止着して空気ばねを製造する空気ばねの製造方法を提供する。この構成によれば、上記の空気ばね用ダイヤフラムの製造方法を採用することによる効果と同じ効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり、本発明によると、ブラダーの両端部を下型に固定して、従来の加硫機が備えているような中心機構を省略するので、中心機構自体のコストや床掘り込みによるピットの施工コストを削減して、加硫機の設置コストを安くすることができる。
【0023】
また、ブラダー及び筒状未加硫ゴム成型体の上端の昇降を組み合わせることなく、筒状未加硫ゴム成型体を加硫成形するので、ブラダーへの給排気や加硫金型の型締めのタイミングの設定を簡単にすることができる。これにより、鉄道車両用空気ばねのように端部を中心軸方向に押し込んだ形状のダイヤフラムを加硫成形する場合であっても、浮き輪状のブラダーを用いて、種々の不具合を防止しつつ容易に加硫成形することができ、その生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る加硫機の型締め後の要部断面図
【図2】ブラダーへの給気前の加硫機の要部断面図
【図3】ブラダーへの給気後の加硫機の要部断面図
【図4】ダイヤフラムの断面図
【図5】本発明に係る加硫機による加硫成形の手順を説明する図
【図6】従来の加硫機の型締め前の要部断面図
【図7】従来の加硫機の型締め後の要部断面図
【図8】従来の加硫機による加硫成形の前半の手順を説明する図
【図9】従来の加硫機による加硫成形の後半の手順を説明する図
【図10】従来の空気ばねの断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る加硫機、及び空気ばねの製造方法を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0026】
図1〜図3に示すように、加硫機1は、筒状未加硫ゴム成型体2を例えば鉄道車両用空気ばねのダイヤフラム3に加硫成形するためのものであり、下型4と昇降自在な上型5とからなる加硫金型6と、型締め状態で加硫金型6の内側に位置すると共に外部から給排気自在なブラダー7と、ブラダー7の両端部を下型4に固定するブラダー装着部材8とを備えている。
【0027】
図4に示すように、ダイヤフラム3は、補強コード層9を有する筒状ゴム膜の両端部に、ビードワイヤやワイヤーロープなどを埋設してビード部10、11を形成してなり、下側のビード径(φd)が上側のビード径(φD)よりも小径で、その下側の小径側ビード部10を上向きに押し込んで中央部を膨出させた形状とされる。このダイヤフラム3に加硫成形される筒状未加硫ゴム成型体2は、ダイヤフラム3とほぼ同じ形状に成型され、その上下を反転して加硫機1にセットされる。
【0028】
ここで、大径側のビード径(φD)と小径側のビード径(φd)との差(φD−φd)は、例えば、大径側のビード径(φD)がφ400mm〜φ700mmの場合に、φD−φd=200mm〜350mm程度に設定したものを例示できる。
【0029】
下型4は、架台12を介して床材13に載置されたベースプレート14と、ベースプレート14の上に順に重ねて載置された下板15及び上板16と、上板16の外周部上方に位置して上板16との間に筒状未加硫ゴム成型体2の大径側ビード部11を挟持する下側ビードクランプ17とからなる。
【0030】
下板15及び上板16は、例えば鋼製で、架台12、床材13及びベースプレート14に形成された貫通穴18よりもわずかに大径の中央穴を有するドーナツ形の厚板とされ、貫通穴18と中心位置を合わせて配置されて、その中央穴の内側にブラダー7の下側端部が配置されている。
【0031】
下側ビードクランプ17は、例えば鋼製で断面略長方形のリング状とされ、その下面側の内周部に、上板16との間に筒状未加硫ゴム成型体2の大径側ビード部11を配置して挟持するための凹部が形成されている。下側ビードクランプ17の上面側には、上型5の外周部の凹凸と噛み合う凹凸が形成され、型締め状態で、これらの凹凸が下型4及び上型5の中心軸を合わせるようになっている。
【0032】
この下側ビードクランプ17は、周方向に例えば2〜6分割して設けられ、その各分割体がリンク機構19によって径方向かつ斜め上下方向に移動自在に支持されて、図示しない駆動部が各分割体を斜め上かつ径方向外向きに移動させることにより、上板16と下側ビードクランプ17との間を開放するようになっている。開放された上板16の上面側に筒状未加硫ゴム成型体2の大径側ビード部11を配置した後、各分割体を斜め下かつ径方向内向きに移動させることにより、上板16と下側ビードクランプ17との間に大径側ビード部11が挟持される。
【0033】
下側ビードクランプ17の内周面は、断面略円弧状に形成され、加硫成形時に、筒状未加硫ゴム成型体2の外面を押し付けられてダイヤフラム3の対応する部位を成形するようになっている。
【0034】
上型5は、例えば鋼製の円盤状とされ、その下面に、断面略半円状の溝20が周方向に連続して形成されて、加硫成形時に、筒状未加硫ゴム成型体2の外面を押し付けられてダイヤフラム3の対応する部位を成形するようになっている。
【0035】
上型5の下面外周部には、下側ビードクランプ17の上面側の凹凸と噛み合う凹凸が形成され、溝20の内周側周縁部には、筒状未加硫ゴム成型体2の小径側ビード部10を挟持するための上側ビードクランプ21が設けられている。上側ビードクランプ21は、下型4の下側ビードクランプ17よりも小径に設定され、加硫機1によって両端部の径の異なるダイヤフラム3を加硫成形するようになっている。
【0036】
この上型5は、図示しない駆動部によって昇降自在とされ、上型5を上昇させることにより、下型4と上型5とが離間され、上型5を下降させることにより、下型4に上型5が接触して加硫金型6が型締め状態とされる。
【0037】
加硫金型6は、型締め状態において、下型4の下側ビードクランプ17の断面略円弧状の内周面と、上型5の断面略半円状の溝20の外周側とが連続するように設定され、筒状未加硫ゴム成型体2の外面を押し付けられて、浮き輪状のダイヤフラム3を加硫成形するようになっている。
【0038】
ブラダー7は、補強された筒状のゴム膜からなる例えばマッシュルーム型や袋型のブラダーとされ、加硫金型6との間に筒状未加硫ゴム成型体2を配置して、ブラダー7の内側の空間に蒸気を給入することにより、筒状未加硫ゴム成型体2を加温加圧して加硫成形するようになっている。ブラダー7の内部に給入される蒸気は、架台12、床材13及びベースプレート14の貫通穴18を貫通して配設された給排気管22を介して給排気部(図示せず)から給排気される。
【0039】
このブラダー7は、両端部の間隔を自由状態における中心軸方向長さよりも小さく設定され、給気状態で中央部が径方向外向きかつ上向きに膨らんだ浮き輪状をなすよう設定されている。
【0040】
ブラダー装着部材8は、下型4に装着された下側ブラダーホルダー23と、支柱24を介して下側ブラダーホルダー23に支持された上側ブラダーホルダー25とからなり、下側ブラダーホルダー23がブラダー7の下端部を保持して、上側ブラダーホルダー25がブラダー7の上端部を保持することにより、ブラダー7の両端部を下型4に固定する。
【0041】
下側ブラダーホルダー23は、例えば鋼製で円板状のホルダー本体26と、ホルダー本体26の外周側に配置される例えば鋼製で断面L字形の挟持リング27とからなり、ホルダー本体26の外周面と挟持リング27の筒部との間にブラダー7の下端部を挟持している。
【0042】
ホルダー本体26は、ベースプレート14の貫通穴18よりも大径、かつ下板15及び上板16の中央穴よりも小径に設定され、挟持リング27との間にブラダー7の下端部を挟持しつつ、ブラダー7の下端部開口を塞いでいる。このホルダー本体26は、上面側に断面略円形の支柱24が立設されて上側ブラダーホルダー25を支持すると共に、下面側に給排気管22が接続されて、ブラダー7に蒸気を給排気するようになっている。
【0043】
挟持リング27は、下板15及び上板16の中央穴に嵌るだけの大きさの外径に設定されて、ベースプレート14の上面側かつ貫通穴18の周縁部に載置され、この挟持リング27のフランジ部分に、ホルダー本体26の外周部が載置されている。
【0044】
上側ブラダーホルダー25は、例えば鋼製で円板状のホルダー本体28と、ホルダー本体28の外周部の上面側に配置される例えば鋼製でドーナツ板状の挟持板29とからなり、ホルダー本体28の外周部と挟持板29の内周部との間にブラダー7の上端部を挟持している。
【0045】
ホルダー本体28は、支柱24によって中央部を支持されて、その外周部と挟持板29の内周部との間にブラダー7の上端部を挟持しつつ、ブラダー7の上端部開口を塞いでいる。
【0046】
挟持板29は、外径をホルダー本体28よりも大きく設定され、型締め状態において、外周部上面と上型5の上側ビードクランプ21との間に、筒状未加硫ゴム成型体2の小径側ビード部10を挟持するようになっている。
【0047】
次に、上記の加硫機を用いて筒状未加硫ゴム成型体をダイヤフラムに加硫成形する空気ばねの製造方法を説明する。
【0048】
まず、図5(a)に示すように、両端部の径が互いに異なる大きさで、かつ小径側の端部が中心軸方向で中央側に押し込まれた形状の筒状未加硫ゴム成型体2を成型する。また、加硫金型6の上型5を上昇させると共に、下側ビードクランプ17の各分割体を斜め上かつ径方向外向きに移動させて、下型4の上板16と下側ビードクランプ17との間を開放し、さらに、ブラダー7から排気してブラダー7を萎ませる。
【0049】
図5(b)に示すように、ブラダー7の外側に筒状未加硫ゴム成型体2を配置し、下側ビードクランプ17の各分割体を斜め下かつ径方向内向きに移動させて、下型4の上板16と下側ビードクランプ17との間に筒状未加硫ゴム成型体2の大径側ビード部11を挟持する。
【0050】
図5(c)に示すように、ブラダー7に圧縮空気を給気して、筒状未加硫ゴム成型体2を引き伸ばさない程度に、ブラダー7を筒状未加硫ゴム成型体2に沿って膨らませ、ブラダー7を中央部が径方向外向きかつ上向きに膨らんだ浮き輪状にする。
【0051】
図5(d)に示すように、上型5を下降させて、上側ブラダーホルダー25の挟持板29と上型5の上側ビードクランプ21との間に、筒状未加硫ゴム成型体2の小径側ビード部10を挟持しつつ、加硫金型6を型締めする。この型締め状態で、ブラダー7に蒸気を給気して所定の内圧に設定し、加硫金型6との間で筒状未加硫ゴム成型体2を加温・加圧してダイヤフラム3に加硫成形する。
【0052】
図5(e)に示すように、ブラダー7から排気してブラダー7を萎ませ、加硫金型6の上型5を上昇させて、両端部の径が互いに異なる大きさで、かつ小径側の端部が中心軸方向で中央側に押し込まれた形状のダイヤフラム3を取り出す。
【0053】
その後、ダイヤフラム3に金具を止着すると共に、大径側ビード部11が上側に位置するように上下方向を反転させて、両端部の径が異なる例えば鉄道車両用とされる空気ばねを得る。
【0054】
上記構成によれば、ブラダー7の両端部を下型4に固定して、給気状態で中央部が径方向外向きかつ上向きに膨らんだ浮き輪状をなすよう設定している。これにより、端部を中央側に押し込んだ形状の鉄道車両用空気ばねを加硫成形する場合であっても、従来の加硫機が備えるような中心機構を不要にし、加硫金型6の型締め及びブラダー7への給排気の工程を簡素化して、生産性を向上させることができる。しかも、ブラダー7の両端部を下型4に固定する分、ブラダー7の交換が容易で、段替えを簡素化することができる。
【0055】
また、中心機構を省略して型締め及び給排気を簡素化する分、ブラダー7の低圧力に起因する筒状未加硫ゴム成型体2の皺や、ブラダー7の高圧力に起因する筒状未加硫ゴム成型体2の型噛みを防止することができる。しかも、中心機構によるブラダー7の端部の昇降を省略するので、型締め中に筒状未加硫ゴム成型体2とブラダー7との間にエアーが蓄積するのを阻止して、エアーの蓄積に起因して製品不良が生じるのを防止することができる。
【0056】
ここで、本発明の加硫機1との比較のため、従来の加硫機の構成、及びこれを用いてダイヤフラムを加硫成形する手順について説明する。
【0057】
図6及び図7に示すように、加硫機201は、本発明の加硫機1とほぼ同じ構成であるが、ブラダー装着部材8に代えて、ブラダー7の上端部を昇降させるための中心機構202を備え、その中心機構202のセンターポスト203の上端部に、ブラダー7の上端部を保持する上側ブラダーホルダー204が取り付けられている。また、ブラダー7の下端部は、加硫金型6の下型4に装着された下側ブラダーホルダー205によって保持されている。
【0058】
中心機構202は、そのセンターポスト203を加硫金型6の中心軸に沿って昇降自在とされ、下側ブラダーホルダー205でブラダー7の下端部を保持したまま、センターポスト203がブラダー7の上端部を昇降させて、ブラダー7を中心軸方向に伸縮させるようになっている。
【0059】
加硫機201を用いてダイヤフラム3を加硫成形するには、まず、図8(a)に示すように、油圧シリンダなどでセンターポスト203を上昇させ、上側ブラダーホルダー204に筒状未加硫ゴム成型体2の小径側ビード部10をセットする。
【0060】
次いで、図8(b)に示すように、ブラダー7から排気してブラダー7を萎ませると共に、センターポスト203を下降させ、下側ブラダーホルダー205で筒状未加硫ゴム成型体2の大径側ビード部11を保持する。
【0061】
図8(c)に示すように、ブラダー7に圧縮空気を給入しつつ、センターポスト203を少し上昇させて、筒状未加硫ゴム成型体2の上端部を引っ張り上げる。
【0062】
図9(d)に示すように、上型5を下降させて、上側ブラダーホルダー204と上型5に装着された上側ビードクランプ21との間に、筒状未加硫ゴム成型体2の小径側ビード部10を挟持する。さらに、ブラダー7に圧縮空気を指定圧力まで給入して膨らませ、ブラダー7の内圧を指定圧力に維持したまま、上側ブラダーホルダー204及び上型5を下降させて型締めを開始する。
【0063】
図9(e)に示すように、型締めが完了した後、ブラダー7にさらに蒸気を給入して指定内圧に設定し、筒状未加硫ゴム成型体2を加温・加圧して加硫成形する。
【0064】
図9(f)に示すように、加硫成形が完了した後、上型5を上昇させ、ブラダー7から排気して萎ませてダイヤフラム3を取り出す。その後、センターポスト203を上昇させ、一連のサイクルを完了させる。
【0065】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、製造する空気ばねは、鉄道車両用に限らず、他の用途のものであってもよい。さらに、加硫機1によって加硫成形するゴム製筒体は、空気ばねのダイヤフラムに限らず、タイヤなどの他のものであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 加硫機
2 筒状未加硫ゴム成型体
3 ダイヤフラム
4 下型
5 上型
6 加硫金型
7 ブラダー
8 ブラダー装着部材
9 補強コード層
10 小径側ビード部
11 大径側ビード部
12 架台
13 床材
14 ベースプレート
15 下板
16 上板
17 下側ビードクランプ
18 貫通穴
19 リンク機構
20 溝
21 上側ビードクランプ
22 給排気管
23 下側ブラダーホルダー
24 支柱
25 上側ブラダーホルダー
26 ホルダー本体
27 挟持リング
28 ホルダー本体
29 挟持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と該下型に対して昇降自在な上型とからなる加硫金型と、型締め状態で加硫金型の内側に位置すると共に外部から給排気自在なブラダーとを備え、前記加硫金型とブラダーとの間に筒状未加硫ゴム成型体を配置可能とされ、前記ブラダーは、ブラダー装着部材を介して両端部を下型に固定されたことを特徴とする加硫機。
【請求項2】
下型と該下型に対して昇降自在な上型とからなる加硫金型と、型締め状態で加硫金型の内側に位置すると共に外部から給排気自在なブラダーとを備え、前記加硫金型とブラダーとの間に筒状未加硫ゴム成型体を配置可能とされ、前記ブラダーの両端部が、ブラダーの端部を昇降させる中心機構を介することなく、前記加硫金型に固定されたことを特徴とする加硫機。
【請求項3】
前記ブラダーは、両端部の間隔を自由状態における中心軸方向長さよりも小さく設定され、給気状態で中央部が径方向外向きかつ上向きに膨らんだ浮き輪状をなすよう設定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の加硫機。
【請求項4】
筒状未加硫ゴム成型体を成型し、加硫金型の下型にブラダー装着部材を介して両端部を固定されたブラダーから排気して、該ブラダーの外側に前記筒状未加硫ゴム成型体を配置し、次いで、前記ブラダーに給気して前記筒状未加硫ゴム成型体を引き伸ばさない程度に膨らませ、加硫金型の上型を下降させて型締めした後、前記ブラダーにさらに給気して加硫金型との間で前記筒状未加硫ゴム成型体を加温・加圧して加硫成形することを特徴とするゴム製筒体の製造方法。
【請求項5】
前記筒状未加硫ゴム成型体を両端部の径が互いに異なる大きさで、かつ小径側の端部が中心軸方向で中央側に押し込まれた形状に成型すると共に、前記ブラダーの両端部の間隔を自由状態における中心軸方向長さよりも小さく設定して、前記ブラダーを給気状態で中央部が径方向外向きかつ上向きに膨らんだ浮き輪状に設定し、両端部の径が互いに異なる大きさで、かつ小径側の端部が中心軸方向で中央側に押し込まれた形状のゴム製筒体を製造することを特徴とする請求項4に記載のゴム製筒体の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のゴム製筒体の製造方法で製造したダイヤフラムに金具を止着して空気ばねを製造することを特徴とする空気ばねの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−61601(P2012−61601A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205002(P2010−205002)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】