説明

加硫機

【課題】流動速度および流動方向に起因した熱量の伝達差を生じさせないように加熱媒体を流動させる。
【解決手段】内側空間Bに収容された加熱媒体を強制的に流動させてその熱量を生タイヤ4の内側全体に付与して加硫を行う。生タイヤの内周側で加熱媒体をタイヤ幅方向の全領域にわたって外周方向に吹き出す吹き出し管63と、生タイヤの内周側で加熱媒体を吸引する吸い込み管64と、吹き出し管と吸い込み管とを連絡するガス流路69と、ガス流路中で吸い込み管から吹き出し管に加熱媒体を流動させるガス循環駆動機67とを有している。吹き出し管の吹き出し口は、生タイヤの径方向に対して交差する第1角度で加熱媒体を外周方向に吹き出すように設定され、吸い込み管は、吹き出し管よりも生タイヤの中心側の吸い込み口が、生タイヤの径方向に対して第1角度とは逆方向となる第2角度で、加熱媒体を吸引する開口方向が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生タイヤを加硫成形する加硫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、生タイヤを加硫成形する場合には、モールドを加熱媒体により加熱すると共に、モールド内に装填された生タイヤの内側空間に高温、高圧の加熱媒体を供給することによって、タイヤ内壁面を加熱しながらモールド方向に押圧する。そして、加熱されたモールドと生タイヤの内側空間の加熱媒体とで生タイヤを外側および内側から加熱することにより加硫を行う。
【0003】
この際、加熱媒体の温度分布が不均一であると、生タイヤに対する加熱にバラツキが生じ、加熱温度の低い部分では加硫が不十分になり、加熱温度の高い部分では加硫が進み過ぎることによって、タイヤ全体の品質を高いものにすることが困難になる。そこで、従来から加熱媒体の温度分布を均一化しながら生タイヤへの加熱を行うことができるように、加熱媒体を強制的に流動させて撹拌する各種の方法や装置が提案されている。
【0004】
例えば特開平7−329066号公報には、図13に示すように、下部リング機構102に対して環状のタービン104を水平方向に回転可能に設け、上部リング機構101と下部リング機構102とでブラダ105を介して生タイヤ103を保持したときに、タービン104を上部リング機構101側に位置させてタービン104の下側に隙間を生じさせるようにした構成が開示されている。この構成によれば、ブラダ105の内側空間Bに加熱媒体を導入した後、タービン104を回転させることによって、加熱媒体をタービン104の下側から吸引して側面から吹き出させることができるため、生タイヤ103の内壁面に沿わせながら幅方向に流動させる流動経路でもって加熱媒体を強制的に流動させることができる。
【0005】
また、このような流動経路を備えた構成は、特開平5−104742号公報や特開平62−290508号公報、特開平7−88848号公報等においても開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、加熱媒体の流路断面積は、加熱媒体の流路断面積が生タイヤ103の断面形状と周方向の広がりにより、生タイヤ103の径方向外側に向かうほど拡大する。この結果、タービン104から加熱媒体を吹き出したときに、タービン104の吹き出し側(特に上側サイドウオール)の加熱媒体には、図示するような渦あるいはそれに伴う淀みが生じ、他方吸引側(下側)の加熱媒体がタイヤ内面に沿い流れの向きを変えつつ高速で流動することによって、加熱媒体の対流熱伝達が生タイヤ103の上側と下側とで異なることになる。
【0007】
これにより、従来の構成では、加熱媒体の強制的な流動により加熱媒体全体の温度分布が均一化されていても、加熱媒体の流動速度および流動方向に起因した熱量の伝達差については考慮されていなかったため、タイヤ全体の品質を十分に高くできるまでには至っていない。
【0008】
そこで、本発明は、流動速度および流動方向に起因した熱量の伝達差を生じさせないように加熱媒体を流動させることによって、タイヤ全体の品質を十分に高くすることができる加硫機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、生タイヤの内側空間に収容された加熱媒体を強制的に流動させながら該加熱媒体の熱量を生タイヤの内側全体に付与して加硫を行う加硫機において、前記生タイヤをタイヤ幅方向に二等分する中心面に対して対称となるように内周側に設けられ、前記加熱媒体を前記中心面に対して平行に外周方向に吹き出す一対のファンを有することを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、加熱媒体は、ファンにより強制的に流動されることによって、加熱媒体全体として温度分布が均一化したものになる。そして、この加熱媒体は、ファンにより中心面に対して平行に内周側から外周方向に吹き出されることによって、中心面に対して対称の流動状態で生タイヤのトレッド部等に吹き当たる。これにより、生タイヤの上半分と下半分とに略同一の熱量が効率良く付与されながら加熱が行われるため、加熱媒体が中心面の一方側のみを流動して生タイヤに吹き当たる場合よりも、生タイヤに対する均一な加熱が可能になり、結果としてタイヤ全体の品質を十分に高くすることができる。
【0011】
本発明は、上記に記載の加硫機であって、前記一対のファン間に設けられたヒータを有することを特徴としている。上記の構成によれば、加熱媒体が引き込まれる一対のファン間にヒータが設けられているため、加熱媒体とヒータとを積極的に接触させることが可能になり、加えてヒータからの輻射熱の多くをファンが受け取り、上下リング機構への輻射による熱損失を低減すると共に、ファンが一種のフィンとして作用し、加熱媒体を高い温度制御応答性でもって効率良く加熱することができる。従って、ヒータにより加熱媒体を所定の温度に確実に維持しながら生タイヤに対する加熱を行うことができるため、生タイヤの加硫を一層高品質に行うことができる。
【0012】
本発明は、上記に記載の加硫機であって、前記ヒータの上面および下面に対応した位置に対向配置され、該ヒータの周囲を取り囲むように設けられた一対の環状整流板を有することを特徴としている。上記の構成によれば、ヒータに流れ込む加熱媒体が一対の環状整流板間を通過する際に整流されることによって、一層効果的にヒータの熱量を加熱媒体に付与することができる。
【0013】
本発明は、上記に記載の加硫機であって、前記生タイヤのビード部近傍に前記中心面に対して対称配置され、前記ファンから吹き出された加熱媒体の流動方向を前記生タイヤの径方向に対して所定角度に規正する一対の整流機構を有することを特徴としている。上記の構成によれば、生タイヤのビード部近傍を通過する加熱媒体の周方向の流速を安定化させ、ビード部に対する対流熱伝達を均一化させることができるため、生タイヤの加硫を一層高品質に行うことができる。
【0014】
請求項1の発明は、生タイヤの内側空間に収容された加熱媒体を強制的に流動させながら該加熱媒体の熱量を生タイヤの内側全体に付与して加硫を行う加硫機において、前記生タイヤの内周側に配置され、加熱媒体をタイヤ幅方向の全領域にわたって外周方向に吹き出す吹き出し管と、前記生タイヤの内周側に配置され、加熱媒体を吸引する吸い込み管と、前記吹き出し管と吸い込み管とを連絡するガス流路と、前記ガス流路中に設けられ、前記吸い込み管から吹き出し管に加熱媒体を流動させるガス循環駆動機とを有し、前記吹き出し管の加熱媒体の吹き出し口は、前記生タイヤの径方向に対して交差する第1角度で加熱媒体を外周方向に吹き出すように、その開口方向が設定されており、前記吸い込み管は、前記吹き出し管よりも前記生タイヤの中心側に配置され、前記吸い込み管の加熱媒体の吸い込み口は、前記生タイヤの径方向に対して前記第1角度とは逆方向となる第2角度で加熱媒体を吸引するように、その開口方向が設定されていることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、加熱媒体は、ガス循環駆動機により強制的に流動されることによって、加熱媒体全体として温度分布が均一化したものになる。そして、この加熱媒体は、内周側に設けられた吹き出し管からタイヤ幅方向の全領域にわたって外周方向に吹き出されることによって、生タイヤをタイヤ幅方向に二等分する中心面に対して略対称の流動状態で生タイヤのトレッド部等に吹き当たる。これにより、生タイヤの上半分と下半分とに略同一の熱量が効率良く付与されながら加熱が行われるため、加熱媒体が中心面の一方側のみを流動して生タイヤに吹き当たる場合よりも、生タイヤに対する均一な加熱が可能になり、結果としてタイヤ全体の品質を十分に高くすることができる。また、加熱媒体をガス流路等を介して循環させる場合における吹き出し管側と吸い込み管側との差圧が小さいため、ガス循環駆動機を圧縮比の小さな使用条件で運転することができることから、ガス循環駆動機を長寿命化することも可能になる。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1に記載の加硫機であって、前記吹き出し管は、前記生タイヤの中心を円心とした同心円状に等間隔に複数配置されており、前記吸い込み管は、前記吹き出し管よりも前記生タイヤの中心側において、前記生タイヤの中心を円心とした同心円状に等間隔に複数配置されており、前記吹き出し管及び前記吸い込み管は、前記生タイヤの中心から見て、隣接する前記吸い込み管の中間点に前記吹き出し管が位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の加硫機。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ガス撹拌機構が加熱媒体を流動させる状態を示す説明図である。
【図2】フィン付きヒータの概略構成を示すものであり、(a)は正面図、(b)は(a)におけるX−X線矢視断面図である。
【図3】ファンの断面図である。
【図4】図3におけるファンのY−Y線矢視断面図である。
【図5】加硫機に対して生タイヤを搬入する状態を示す説明図である。
【図6】ガス撹拌機構が加熱媒体を流動させる状態を示す説明図である。
【図7】整流機構の斜視図である。
【図8】ガス撹拌機構が加熱媒体を流動させる状態を示す説明図である。
【図9】ガス撹拌機構が内側空間において加熱媒体を流動させる状態を示す説明図である。
【図10】ガス撹拌機構が待機室において加熱媒体を流動させる状態を示す説明図である。
【図11】加熱媒体の流動方向を示す説明図である。
【図12】ガス循環駆動機の具体例を示す説明図である。
【図13】従来例を示すものであり、加熱媒体が流動すれる状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態1〕
本発明の第1の実施形態を図1ないし図8に基づいて以下に説明する。本実施の形態に係る加硫機は、図5に示すように、所定の高さ位置に設定されたモールド固定部2と、モールド固定部2に対して昇降するモールド昇降部3とを有している。モールド固定部2は、生タイヤ4の下サイドウオール4bに当接する下サイドモールド5と、下サイドモールド5を所定温度に加熱する下加熱機構9と、下加熱機構9および下サイドモールド5の中心部に貫設された中心機構10と、中心機構10および下加熱機構9を支持するベースフレーム11とを有している。
【0019】
上記の下加熱機構9は、下サイドモールド5を面状に支持しながら加熱する円盤形状の下プラテン6と、下プラテン6を支持するプラテンサポート7と、下プラテン6の熱をプラテンサポート7に伝達させないように下プラテン6およびプラテンサポート7間に介装された断熱板8とを有している。
【0020】
また、下加熱機構9の中心部に貫設された中心機構10は、図1に示すように、下サイドモールド5に固定された下部リング機構12を有している。下部リング機構12は、下ビードリング13と、下ビードリング13の上面に設けられ、下ビードリング13とでブラダ20の下縁部を挟持する下ブラダリング14と、下ブラダリング14の下面に設けられたクランプリングハブ15とを有している。そして、下部リング機構12には、図示しない給排路が形成されており、給排路を介して蒸気や窒素ガス等の加圧加熱媒体をブラダ20の内部に供給可能にしている。
【0021】
また、下部リング機構12の中心部には、筒状部材18が気密状態に立設されていると共に、センターポスト22が筒状部材18に摺動自在に貫挿されている。センターポスト22の上端部には、上部リング機構19が設けられている。上部リング機構19は、上ブラダリング21と上ビードリング23とを有しており、両リング21・23によりブラダ20の上縁部を挟持している。一方、センターポスト22の下端部には、センターポスト22を任意の高さ位置に昇降可能な図示しないポスト昇降機構が連結されている。ポスト昇降機構は、ブラダ20の搬入および搬出時において、ブラダ20の上縁部を持ち上げてブラダ20を生タイヤ4のタイヤ穴よりも小さな径に設定するようにセンターポスト22を上限位置に上昇させる一方、生タイヤ4の加硫成形時において、ブラダ20を生タイヤ4のタイヤ内壁面に当接可能な径に拡大させるようにセンターポスト22を下降させる。
【0022】
また、センターポスト22が貫挿された筒状部材18は、下部リング機構12により回転自在に支持されている。筒状部材18の下端部には、図示しない回転機構が連結されており、回転機構は、加硫成型時に筒状部材18を所定の速度で回転駆動する。一方、筒状部材18の上部は、上部リング機構19と下部リング機構12との間に位置されている。両リング機構19・12間には、加熱媒体を水平方向に流動させるガス撹拌機構40が設けられている。ガス撹拌機構40は、加熱媒体を加熱するフィン付きヒータ41と、フィン付きヒータ41で加熱された加熱媒体を吸引して周方向に吹き出すファン42とを有している。
【0023】
上記のフィン付きヒータ41は、図2(a)・(b)にも示すように、作動電流の供給により発熱するヒータ本体50と、ヒータ本体50の伝熱面積を増大させるフィン53とを有している。ヒータ本体50は、環状に形成されたヒータ部50aと、ヒータ部50aの両端から立ち下げられた一対の端子部50b・50bとからなっている。端子部50b・50bには、作動電流を出力する図示しない電源装置が接続されている。電源装置は、ヒータ部50aに接続された熱電対からなる温度センサ52を備えており、この温度センサ52により検出されたヒータ部50aの発熱温度が所定の温度となるように作動電流の供給を制御する。
【0024】
上記のヒータ部50aは、図1に示すように、生タイヤ4をタイヤ幅方向に二等分する中心面Aに対して一致するように水平(平行)配置されている。また、ヒータ部50aの周囲には、フィン53が設けられており、フィン53は、板面がヒータ部50aに対して垂直方向となるように帯状の薄板を螺旋状に巻回することにより形成されている。
【0025】
上記のヒータ部50aの上側および下側には、ファン42・42が上下対称に配置されている。各ファン42は、図3および図4に示すように、ヒータ41側に配置された第1円板部材43と、第1円板部材43に対向配置された第2円板部材44と、両円板部材43・44の中心部同士を連結し、中心部に上述の筒状部材18が固設された連結部材45と、両円板部材43・44の外周部間において等間隔に設けられた複数の翼部材46とを有している。第1円板部材43には、内周側から外周側にかけて開口された吸気口43aが周方向に等間隔で複数形成されている。また、翼部材46は、径方向に対する取り付け角度が−60°から+60°の範囲に設定されている。そして、このように構成された一対のファン42・42は、図1に示すように、筒状部材18により同速度で回転することによって、フィン付きヒータ41で加熱された加熱媒体を吸気口43aを介して内部に吸引し、翼部材46により同一の流動速度および流動方向に吹き出すことによって、ブラダ20(生タイヤ4)の内側空間Bにおいて加熱媒体を中心面Aに沿って上下対称に流動させる。
【0026】
また、ブラダ20を拡縮させるセンターポスト22の上方には、図5に示すように、モールド昇降部3が設けられている。モールド昇降部3は、生タイヤ4の上サイドウオール4b’に当接する上サイドモールド25と、生タイヤ4のトレッド部4aの外周方向に位置する割りモールド26と、上サイドモールド25および割りモールド26のスライドセグメント26aを昇降させる第1モールド昇降機構27と、上サイドモールド25を所定温度に加熱する上加熱機構28と、上加熱機構28および割りモールド26の固定セグメント26bを昇降させる第2モールド昇降機構29と、これら機構27〜29等を支持する支持部材30とを有している。
【0027】
上記の上加熱機構28は、円盤形状の上プラテン32と、上プラテン32を支持するプラテンサポート33と、上プラテン32の熱をプラテンサポート33に伝達させないように上プラテン32およびプラテンサポート33間に介装された断熱板34とを有している。上加熱機構28の中心部には、第1モールド昇降機構27の棒状部材35が昇降自在に貫挿されている。棒状部材35の下端には、円盤形状のスライドプレート36が設けられている。スライドプレート36の下面中心部には、上述の上サイドモールド25が固設されている。
【0028】
また、スライドプレート36の下面外周部には、アルミニウム等の非磁性材料により形成された複数のスライドセグメント26aが設けられている。各スライドセグメント26aは、生タイヤ4のトレッド部4aに当接するように形成されたトレッドモールド26a’を備えており、上サイドモールド25を中心とした同芯円上に等間隔に配置され、中心方向に移動自在にスライドプレート36に係合されている。これらのスライドセグメント26aの外側方向には、固定リング26bが配置されている。固定リング26bは、上プラテン32の下面周縁部に固設されており、スライドセグメント26aの外側面に係合しながらスライドセグメント26aを半径方向に進退移動させるようになっている。そして、スライドセグメント26aのトレッドモールド26a’は、固定リング26bにより中心方向に移動したときに、生タイヤ4のトレッド部4aに対応した筒形状のモールドを形成する。
【0029】
一方、上述の棒状部材35の上端部は、第1シリンダ部材37に連結されている。第1シリンダ部材37は、プラテンサポート33の上面中心部から立ち上げられた挿通部33aにより支持されている。これにより、第1シリンダ部材37等を有した第1モールド昇降機構27は、棒状部材35を介してスライドプレート36(上サイドモールド25、スライドセグメント26a)を支持部材30および上加熱機構28とは独立して昇降可能になっている。
【0030】
上記の第1シリンダ部材37を支持した挿通部33aは、上述の棒状部材35が移動自在に貫挿されていると共に、支持部材30に移動自在に貫挿されている。また、挿通部33aの両側には、第2モールド昇降機構29が左右一対に配置されている。各第2モールド昇降機構29は、支持部材30の上面に固設された第2シリンダ部材38を有しており、第2シリンダ部材38は、上加熱機構28を昇降させるように、シリンダロッド38aの先端部がプラテンサポート33に連結されている。そして、このように構成された上加熱機構28および割りモールド26の外周方向には、支持部材30の周縁部から立ち下げられた筒形状のシールド部材31が配置されている。
【0031】
上記の構成において、加硫機1の動作を説明する。先ず、モールド昇降部3が上昇されることによって、モールド固定部2の上方にモールド昇降部3が位置される。この後、搬送装置39により生タイヤ4がモールド固定部2とモールド昇降部3との間に搬送され、生タイヤ4のタイヤ穴がセンターポスト22の上方に位置されると、中心機構10のセンターポスト22が上昇されることによって、上部リング19を介してブラダ20の上縁部が持ち上げられ、ブラダ20が生タイヤ4のタイヤ穴よりも小さな径に縮小される。そして、生タイヤ4が下降され、生タイヤ4のタイヤ穴にセンターポスト22およびブラダ20が挿通されながら、生タイヤ4が下サイドモールド5に載置される。
【0032】
次に、第2シリンダ部材38からシリンダロッド38aが進出されると共に、第1シリンダ部材37から棒状部材35が進出されることによって、上加熱機構28およびスライドプレート36がそれぞれ下降および分離され、スライドセグメント26aが外周方向に移動される。この後、上加熱機構28およびスライドプレート36の分離状態が維持されながらモールド昇降部3が下降され、スライドセグメント26aの内周側に生タイヤ4が位置された後、スライドセグメント26aが固定リング26bにより中心方向に移動される。そして、図1に示すように、各スライドセグメント26a同士が当接されて生タイヤ4のトレッド部4aに対応した筒形状のモールドが形成されると共に、このモールドの上部および下部に上サイドモールド25および下サイドモールド5がそれぞれ当接されることによって、モールド25・5・26aが型締される。
【0033】
次に、図5に示すように、下プラテン6、上プラテン32、および割りモールド26の固定リング26bに対して蒸気等の加熱媒体が供給されることによって、モールド25・5・26aを介して生タイヤ4が外面側から加熱される。また、図1に示すように、高圧の蒸気や窒素ガス等の加熱媒体がブラダ20(生タイヤ4)の内側空間Bに供給され、ブラダ20が進展されて生タイヤ4の内壁面に密接されることによって、生タイヤ4がモールド方向に押圧される。そして、加熱媒体の熱量がブラダ20を介して生タイヤ4に伝達されることによって、生タイヤ4が内面側から加熱される。
【0034】
また、上記のようにして内側空間Bに加熱媒体が供給されて加熱が開始されると、フィン付きヒータ41が作動電流の供給により発熱されると共に、ファン42・42が回転される。この際、ファン42・42は、中心面Aに一致するように配置されたフィン付きヒータ41のヒータ部50aに対して上下対称に配置されていると共に、筒状部材18により同一速度で同一方向に回転されている。
【0035】
これにより、両ファン42・42が回転すると、内側空間Bの加熱媒体は、中心面Aに沿って内側方向に流動しながらフィン付きヒータ41で加熱された後、図3のフィン付きヒータ41側に形成された吸気口43aからファン42内に吸引され、ファン42の側周面から同一の流動速度および流動方向に吹き出されることによって、中心面Aに対して上下対称に流動することになる。また、ファン42から吹き出された加熱媒体は、内側方向に逆流する中心面Aの近傍領域を除いてタイヤ幅方向の全領域にわたって中心面Aに沿った方向(水平方向)に進行し、生タイヤ4のトレッド部4aの略全体に均等に吹き当たる。さらに、加熱媒体は、強制的に流動されることによって、加熱媒体全体として温度分布が均一化したものになる。この結果、ブラダ20(生タイヤ4)の上半分と下半分とに略同一の熱量が効率良く付与されながら加熱が行われることになる。
【0036】
また、上記のようにして加熱媒体が流動されている間、フィン付きヒータ41に接続された図示しない電源装置は、図2の温度センサ52によりフィン付きヒータ41の発熱温度を監視しており、作動電流を制御することによって、加熱媒体を所望の温度に維持している。この際、フィン付きヒータ41の上面および下面に対向したファン42・42は、ヒータ41からの輻射熱伝達によりフィンとして機能することによって、ヒータ41の見掛け上の伝熱面積を大幅に増大させている。これにより、フィン付きヒータ41の熱量が加熱媒体に対して効率良く付与されるため、加熱媒体に対する温度制御応答性が良好なものになっていると共に、作動電流の無駄な消費が抑制されている。
【0037】
この後、生タイヤ4に対する加硫成型が完了すると、図5に示すように、上述の動作とは逆の動作によりモールド25・5・26aが型開きされた後、ブラダ20が縮小され、加硫済タイヤが搬出装置により搬出される。この後、新たな生タイヤ4が搬入されて加硫成形が行われることになる。
【0038】
以上のように、本実施形態の加硫機1は、図1に示すように、内側空間Bに収容された加熱媒体を強制的に流動させながら加熱媒体の熱量を生タイヤ4の内側全体に付与して加硫を行うため、生タイヤ4をタイヤ幅方向に二等分する中心面Aに対して対称となるように内周側に設けられ、加熱媒体を中心面Aに対して平行に外周方向に吹き出す一対のファン42・42を有した構成にされている。そして、このように構成されることによって、生タイヤ4の上半分と下半分とに略同一の熱量を効率良く付与しながら加熱を行うことによって、生タイヤ4に対する均一な加熱を可能にしている。
【0039】
尚、本実施形態においては、ブラダ方式の加硫機1に適用した場合について説明しているが、ブラダレス方式の加硫機1に適用することもできる。
【0040】
また、本実施形態の加硫機1は、図6に示すように、加熱媒体の流動方向を径方向に対して所定角度に規正する整流機構54・54をビード部4c・4c’近傍に中心面Aに対して上下対称に備えていることが好ましい。具体的には、図7に示すように、下ブラダリング14と上ブラダリング21とにそれぞれ取り付けられた環状の支持板55と、支持板55・55同士の対向面に径方向に対して所定角度で等間隔に立設された多数の第1整流板56とを有した整流機構54を備えていることが好ましい。この構成によれば、生タイヤ4のビード部4c・4c’近傍を通過する加熱媒体の周方向の流速を安定化させることができるため、ビード部4c・4c’に対する対流熱伝達を均一化することができる。尚、第1整流板56の径方向に対する取り付け角度αは、−60°から+60°の範囲で任意に変更可能であることが望ましい。
【0041】
さらに、本実施形態の加硫機1は、図8に示すように、ガス撹拌機構40の周囲を取り囲むように設けられた環状の第2整流板57・57(環状整流板)がフィン付きヒータ41の上面および下面に対応した位置において対向配置されていることが好ましい。この場合には、フィン付きヒータ41に流れ込む加熱媒体が第2整流板57・57間を通過する際に整流されることによって、より効果的にヒータ41の熱量を加熱媒体に付与することができる。
【0042】
〔実施形態2〕
次に、本発明の第2の実施形態を図9ないし図12に基づいて以下に説明する。尚、第1の実施形態と同一の部材には同一の符号を付記してその説明を省略する。
【0043】
本実施の形態に係る加硫機1は、図9および図10に示すように、中心機構10の上部にガス撹拌機構60を有している。ガス撹拌機構60は、センターポスト22の上端部に固設された上ブラダ保持体61と、センターポスト22が昇降自在に貫挿された下ブラダ保持体62とを有している。上ブラダ保持体61は、円板形状に形成されており、周縁部においてブラダ20の上縁部を保持している。また、上ブラダ保持体61の下面には、後述の吹き出し管63および吸い込み管64の上端部を嵌合させる凹部61aが複数形成されている。
【0044】
一方、下ブラダ保持体62は、上面壁および下面壁を有した筒状に形成されており、上端周縁部においてブラダ20の下縁部を保持している。また、下ブラダ保持体62の上面壁には、上述の凹部61aに対向した位置に貫挿穴62aが形成されている。外周側の貫挿穴62aには、吹き出し管63が昇降自在に挿通されている。また、内周側の貫挿穴62aには、吸い込み管64が昇降自在に貫挿されている。これらの各管63・64には、加熱媒体を流通させる一条のスリット63a・64aが両端にかけて形成されている。
【0045】
上記の吹き出し管63と吸い込み管64とは、図11に示すように、外周側の同心円上と内周側の同心円上とにそれぞれ等間隔で配置されていると共に、中心位置Oから見て隣接する吸い込み管64・64の中間点に吹き出し管63が位置するように配置されている。そして、各吹き出し管63は、径方向に対して所定の交差角度で加熱媒体を外周方向に吹き出すように、スリット63aの向きが設定されている。一方、各吸い込み管64は、径方向に対して上述の吹き出し管63の交差角度とは逆方向の交差角度で加熱媒体を吸い込むように、スリット64aの向きが設定されている。
【0046】
また、図9および図10に示すように、吹き出し管63および吸い込み管64は、分配室65および集合室65’に立設されている。分配室65および集合室65’は、中空状に形成された昇降体66の上面に設けられている。これらの分配室65および集合室65’は、下ブラダ保持体62内に昇降自在に収容されている。また、昇降体66の下端部周縁は、加熱媒体の漏洩を防止するように下ブラダ保持体62の内壁面に気密状態に密接されている。
【0047】
全吹き出し管63に連絡された分配室65全吸い込み管64に連絡された集合室65’の各端部は、昇降体66の内部にそれぞれ開口されている。昇降体66の内部には、流出路および流入路の端部同士を連絡した配管等からなるガス流路69が設けられている。ガス流路69には、加熱媒体を流動させるガス循環駆動機67と、加熱媒体を加熱するヒータ68とが上流側からこの順に設けられており、ヒータ68は、収容室69aに収容されている。尚、ガス循環駆動機67は、図12(a)〜(i)に示すように、各種の容積式の回転ポンプを選択することができると共に、ターボ式ポンプを適用することができる。
【0048】
上記の昇降体66の下面中心部には、環状部材70の上端が連結されている。環状部材70の内部には、センターポスト22が昇降自在に貫挿されている。また、環状部材70は、下ブラダ保持体62の下面に形成された貫通穴62bを介して下方に突設された後、図示しない昇降体駆動機構に接続されており、昇降体駆動機構は、下ブラダ保持体62に対して昇降体66を昇降可能になっている。
【0049】
上記の構成において、加硫機1の動作を説明する。先ず、図10に示すように、センターポスト22が上昇されることによって、上ブラダ保持体61を介してブラダ20の上縁部が持ち上げられ、生タイヤ4のタイヤ穴にブラダ20が挿通された後、上ブラダ保持体61が下降される。
【0050】
また、環状部材70を介して昇降体66が下限位置まで下降されることによって、吹き出し管63および吸い込み管64の上端部が貫挿穴62aに位置される。これにより、下ブラダ保持体62の上面壁および側面壁と昇降体66の上面壁とで囲まれた待機室Cが下ブラダ保持体62の内部に形成され、この待機室Cに吹き出し管63と吸い込み管64とが収容された状態になる。この後、ガス循環駆動機67およびヒータ68が作動されることによって、待機室Cに存在する加熱媒体が吸い込み管64、ガス流路69および吹き出し管63を介して循環されながら所定温度に加熱される。
【0051】
次に、図9に示すように、上ブラダ保持体61が下限位置まで下降され、モ−ルドの型締が完了すると、昇降体66が上昇され、吹き出し管63および吸い込み管64の上端が上ブラダ保持体61の凹部61aに嵌合される。この結果、両管63・64のスリット63a・64aがブラダ20の内部に位置することによって、ブラダ20の内側空間Bに存在する加熱媒体が吸い込み管64、ガス流路69および吹き出し管63を介して循環されながら所定温度に加熱される。
【0052】
内側に配置された吸い込み管64のスリット64aがタイヤ幅方向の両端(上ブラダ保持体61の下面から昇降体66の上面)にかけて存在している。内側空間Bの加熱媒体は、水平方向に渦巻き状に吸引された後、ガス循環駆動機67により下流側に送出され、ヒータ68により加熱される。この際、ヒータ68を収容する収容室69aは、通過する加熱媒体の単位流量当たりの加熱面積が大きくなるように設定されているため、加熱媒体がヒータ表面に接触する機会が増える。従って、加熱媒体に対してヒータ68の熱量が効率良く伝達されるため、ヒータ68を高温化しなくても、加熱媒体を短時間で十分に昇温させることができる。
【0053】
上記のようにして加熱された加熱媒体は、吹き出し管63のスリット63aから吹き出される。この際、吹き出し管63のスリット63aは、タイヤ幅方向の両端にかけて存在しているため、吹き出し管63から吹き出された加熱媒体は、タイヤ幅方向の全領域にわたって水平方向に渦巻き状に進行し、生タイヤ4のトレッド部4aの全体に略均等に吹き当たる。この結果、上述の吸い込み管64による加熱媒体の吸引との相互作用によって、加熱媒体の大部分が周方向に流動するガス循環流となる。これにより、タイヤ幅方向の対流熱伝達が均一化した状態になることから、生タイヤ4の径が異なる場合であっても、ガス循環流の調整により生タイヤ4を効率良く加熱することが可能になる。また、このように加熱媒体を循環させる場合における吹き出し管63側と吸い込み管64側との差圧が小さいため、ガス循環駆動機67を圧縮比の小さな使用条件で運転することができることから、ガス循環駆動機67を長寿命化することも可能になっている。
【0054】
この後、生タイヤ4に対する加硫成型が完了すると、図10に示すように、上述の動作とは逆の動作によりモールドが型開きされた後、ブラダ20が縮小され、加硫済タイヤが外部に搬出される。この後、新たな生タイヤ4が搬入されて加硫成形が行われることになる。また、次の生タイヤ4が搬入されるまでの間、待機室Cに収容された吹き出し管63および吸い込み管64により待機室Cの加熱媒体が循環されながら、この加熱媒体がヒータ68により予熱される。これにより、次の加硫開始時における内側空間Bの温度の立ち上げ時間を短いものにすることができると共に、次の加硫開始までのヒータ68の発熱温度を一定の温度に維持することができるため、ヒータ68の長寿命化が可能になる。
【0055】
以上のように、本実施形態の加硫機1は、図9に示すように、生タイヤ4の内側空間に収容された加熱媒体を強制的に流動させながら加熱媒体の熱量を生タイヤ4の内側全体に付与して加硫を行うため、生タイヤ4の内周側に配置され、加熱媒体をタイヤ幅方向の全領域にわたって外周方向に吹き出す吹き出し管63と、生タイヤ4の内周側に配置され、加熱媒体を吸引する吸い込み管64と、吹き出し管63と吸い込み管64とを連絡するガス流路69と、ガス流路69中に設けられ、吸い込み管64から吹き出し管63に加熱媒体を流動させるガス循環駆動機67とを有した構成にされている。そして、このように構成された加硫機1は、生タイヤ4の上半分と下半分とに略同一の熱量を効率良く付与しながら加熱を行うことによって、生タイヤ4に対する均一な加熱を可能にしていると共に、ガス循環駆動機67を圧縮比の小さな使用条件で運転することを可能している。
【0056】
さらに、本実施形態の加硫機1は、図10に示すように、吸い込み管64および吹き出し管63を収容可能な待機室Cと、吸い込み管64および吹き出し管63を待機室Cと生タイヤ4の内側空間Bとに進退移動可能な環状部材70等の移動機構とを有した構成にされている。これにより、次の加硫開始時における温度の立ち上げ時間を短いものとし、次の加硫開始までのヒータの発熱温度を一定の温度に維持してヒータの長寿命化を実現している。
【0057】
尚、本実施形態においては、吹き出し管63および吸い込み管64にスリット63a・64aを形成することによって、加熱媒体を流動させているが、これに限定されるものではなく、吹き出し管63および吸い込み管64に多数の貫通孔を条設し、これらの貫通孔から加熱媒体を吹き出すように構成されていても良い。また、タイヤ幅方向における加熱媒体の流量分布が最適な加硫条件となるように、スリット63a・64aの幅や貫通孔の径がタイヤ幅方向で変化されていても良い。
【0058】
また、本実施形態においては、吹き出し管63および吸い込み管64が支持台65に固定されているが、これに限定されるものでもなく、加熱媒体の吹き出し方向や吸い込み方向を連続的に変化させるように、吹き出し管63および吸い込み管64の少なくとも一方が管軸を回動中心として正方向および逆方向に回動可能にされていても良い。
【0059】
本発明は、生タイヤの内側空間に収容された加熱媒体を強制的に流動させながら該加熱媒体の熱量を生タイヤの内側全体に付与して加硫を行う加硫機において、前記生タイヤをタイヤ幅方向に二等分する中心面に対して対称となるように内周側に設けられ、前記加熱媒体を前記中心面に対して平行に外周方向に吹き出す一対のファンを有する構成である。
【0060】
上記の構成によれば、加熱媒体は、ファンにより強制的に流動されることによって、加熱媒体全体として温度分布が均一化したものになる。そして、この加熱媒体は、ファンにより中心面に対して平行に内周側から外周方向に吹き出されることによって、中心面に対して対称の流動状態で生タイヤのトレッド部等に吹き当たる。これにより、生タイヤの上半分と下半分とに略同一の熱量が効率良く付与されながら加熱が行われるため、加熱媒体が中心面の一方側のみを流動して生タイヤに吹き当たる場合よりも、生タイヤに対する均一な加熱が可能になり、結果としてタイヤ全体の品質を十分に高くすることができる。
【0061】
本発明は、上記に記載の加硫機であって、前記一対のファン間に設けられたヒータを有する構成である。上記の構成によれば、加熱媒体が引き込まれる一対のファン間にヒータが設けられているため、加熱媒体とヒータとを積極的に接触させることが可能になり、加熱媒体を高い温度制御応答性でもって効率良く加熱することができる。従って、ヒータにより加熱媒体を所定の温度に確実に維持しながら生タイヤに対する加熱を行うことができるため、生タイヤの加硫を一層高品質に行うことができる。
【0062】
本発明は、上記に記載の加硫機であって、前記ヒータの上面および下面に対応した位置に対向配置され、該ヒータの周囲を取り囲むように設けられた一対の環状整流板を有する構成である。上記の構成によれば、ヒータに流れ込む加熱媒体が一対の環状整流板間を通過する際に整流されることによって、一層効果的にヒータの熱量を加熱媒体に付与することができる。
【0063】
本発明は、上記に記載の加硫機であって、前記生タイヤのビード部近傍に前記中心面に対して対称配置され、前記ファンから吹き出された加熱媒体の流動方向を前記生タイヤの径方向に対して所定角度に規正する一対の整流機構を有する構成である。上記の構成によれば、生タイヤのビード部近傍を通過する加熱媒体の周方向の流速を安定化させ、ビード部に対する対流熱伝達を均一化させることができるため、生タイヤの加硫を一層高品質に行うことができる。
【0064】
請求項1の発明は、生タイヤの内側空間に収容された加熱媒体を強制的に流動させながら該加熱媒体の熱量を生タイヤの内側全体に付与して加硫を行う加硫機において、前記生タイヤの内周側に配置され、加熱媒体をタイヤ幅方向の全領域にわたって外周方向に吹き出す吹き出し管と、前記生タイヤの内周側に配置され、加熱媒体を吸引する吸い込み管と、前記吹き出し管と吸い込み管とを連絡するガス流路と、前記ガス流路中に設けられ、前記吸い込み管から吹き出し管に加熱媒体を流動させるガス循環駆動機とを有し、前記吹き出し管の加熱媒体の吹き出し口は、前記生タイヤの径方向に対して交差する第1角度で加熱媒体を外周方向に吹き出すように、その開口方向が設定されており、前記吸い込み管は、前記吹き出し管よりも前記生タイヤの中心側に配置され、前記吸い込み管の加熱媒体の吸い込み口は、前記生タイヤの径方向に対して前記第1角度とは逆方向となる第2角度で加熱媒体を吸引するように、その開口方向が設定されていることを特徴としている。
【0065】
上記の構成によれば、加熱媒体は、ガス循環駆動機により強制的に流動されることによって、加熱媒体全体として温度分布が均一化したものになる。そして、この加熱媒体は、内周側に設けられた吹き出し管からタイヤ幅方向の全領域にわたって外周方向に吹き出されることによって、生タイヤをタイヤ幅方向に二等分する中心面に対して略対称の流動状態で生タイヤのトレッド部等に吹き当たる。これにより、生タイヤの上半分と下半分とに略同一の熱量が効率良く付与されながら加熱が行われるため、加熱媒体が中心面の一方側のみを流動して生タイヤに吹き当たる場合よりも、生タイヤに対する均一な加熱が可能になり、結果としてタイヤ全体の品質を十分に高くすることができる。また、加熱媒体をガス流路等を介して循環させる場合における吹き出し管側と吸い込み管側との差圧が小さいため、ガス循環駆動機を圧縮比の小さな使用条件で運転することができることから、ガス循環駆動機を長寿命化することも可能になる。
【0066】
請求項2の発明は、請求項1に記載の加硫機であって、前記吹き出し管は、前記生タイヤの中心を円心とした同心円状に等間隔に複数配置されており、前記吸い込み管は、前記吹き出し管よりも前記生タイヤの中心側において、前記生タイヤの中心を円心とした同心円状に等間隔に複数配置されており、前記吹き出し管及び前記吸い込み管は、前記生タイヤの中心から見て、隣接する前記吸い込み管の中間点に前記吹き出し管が位置するように配置されていることを特徴とする。
【符号の説明】
【0067】
1 加硫機
4 生タイヤ
10 中心機構
18 筒状部材
20 ブラダ
22 センターポスト
40 ガス撹拌機構
41 フィン付きヒータ
42 ファン
46 翼部材
50 ヒータ本体
51 フィン
52 温度センサ
53 フィン
54 整流機構
56 第1整流板
57 第2整流板
60 ガス撹拌機構
61 上ブラダ保持体
62 下ブラダ保持体
63 吹き出し管
64 吸い込み管
65 支持台
66 昇降体
67 ガス循環駆動機
68 ヒータ
69 ガス流路
70 環状部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開平7−329066号公報
【特許文献2】特開平5−104742号公報
【特許文献3】特開平62−290508号公報
【特許文献4】特開平7−88848号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生タイヤの内側空間に収容された加熱媒体を強制的に流動させながら該加熱媒体の熱量を生タイヤの内側全体に付与して加硫を行う加硫機において、
前記生タイヤの内周側に配置され、加熱媒体をタイヤ幅方向の全領域にわたって外周方向に吹き出す吹き出し管と、
前記生タイヤの内周側に配置され、加熱媒体を吸引する吸い込み管と、
前記吹き出し管と吸い込み管とを連絡するガス流路と、前記ガス流路中に設けられ、前記吸い込み管から吹き出し管に加熱媒体を流動させるガス循環駆動機と
を有し、
前記吹き出し管の加熱媒体の吹き出し口は、前記生タイヤの径方向に対して交差する第1角度で加熱媒体を外周方向に吹き出すように、その開口方向が設定されており、
前記吸い込み管は、前記吹き出し管よりも前記生タイヤの中心側に配置され、
前記吸い込み管の加熱媒体の吸い込み口は、前記生タイヤの径方向に対して前記第1角度とは逆方向となる第2角度で加熱媒体を吸引するように、その開口方向が設定されていることを特徴とする加硫機。
【請求項2】
前記吹き出し管は、前記生タイヤの中心を円心とした同心円状に等間隔に複数配置されており、
前記吸い込み管は、前記吹き出し管よりも前記生タイヤの中心側において、前記生タイヤの中心を円心とした同心円状に等間隔に複数配置されており、
前記吹き出し管及び前記吸い込み管は、前記生タイヤの中心から見て、隣接する前記吸い込み管の中間点に前記吹き出し管が位置するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の加硫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−101553(P2012−101553A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2836(P2012−2836)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【分割の表示】特願2009−262577(P2009−262577)の分割
【原出願日】平成12年5月15日(2000.5.15)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】