説明

動力伝達装置

【課題】動力伝達装置の構造を極力変更することなく、摩擦クラッチ機構の温度と適切な相関関係が得られる温度推定が可能な動力伝達装置を提供する。
【解決手段】入力側回転部材3及び出力側回転部材5と、入力側回転部材3と連結する外周側回転部材7と、出力側回転部材5と連結する内周側回転部材9と、外周側回転部材7と内周側回転部材9との間に配置されると共に、操作部材11により締結制御される摩擦クラッチ機構13と、外周側回転部材7と内周側回転部材9及び前記摩擦クラッチ機構13を収容する静止側のケーシング15とを備えた動力伝達装置1において、静止側のケーシング15に固定されると共に、この静止側のケーシング15の内壁面17から外周側回転部材7に対向して突出し、外周側回転部材7の外壁面19と近接して配置される温度センサ21を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に適用される動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦クラッチ機構を備えた動力伝達装置においては、摩擦クラッチ機構によって伝達される駆動トルクを的確に制御するために、従来から摩擦クラッチ機構部の温度推定が行われていた。
【0003】
一般的な既存技術は、摩擦クラッチ機構に係る温度センサを持たずに、車両CAN通信上の他の部位に設けた温度センサ情報(例えば、エンジンのインテークマニュホールドや、クーラントに備えられた温度センサ情報など)を用いて演算したり、摩擦クラッチ機構への指令制御される駆動トルクと指令時間、および入出力回転速度などの入力情報をもとに、摩擦クラッチ機構の発熱エネルギーを積分演算したりして、温度推定が行われていた。
【0004】
しかしながら、CAN通信上から得られる他の温度センサ情報と摩擦クラッチ機構の周辺温度との間には相関関係に乏しいことがあり、また上記入力情報をもとにした推定演算にのみ頼った場合には、摩擦クラッチ機構の温度推定精度が十分に得られないという問題があった。
【0005】
近年、摩擦クラッチ機構の温度推定を向上させるために、いくつかの改良技術が提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1に開示された技術は、摩擦クラッチ機構に相当する電磁クラッチの温度推定を、摩擦係合装置の外周部に位置する部材に温度センサを設けて行うものである。具体的には、温度センサは、電磁クラッチをクラッチハウジングに支持するベアリング、さらに、考えられる形態として、電磁クラッチの外周部に位置するクラッチハウジングに設けられて、クラッチハウジングの温度を測定することが開示されている。
【0007】
他の例として、特許文献2に開示される技術は、摩擦クラッチ機構に相当する動力伝達装置に対して温度センサを設けるものではなく、既存の入力情報をもとにした推定演算に加えて、電磁石の電磁コイルの温度を推定演算することで、クラッチ機構の機能を保持するオイル温度変化に応じた最適な駆動トルク伝達をすることとしている。
【特許文献1】特開平11−287257号公報
【特許文献2】特開2002−286061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1においては、ベアリングに付設される温度センサは、電磁クラッチの外周部に位置しているが、ベアリングの受熱は入出力回転軸の回転に起因し、その昇温は、回転軸の回転速度の増加や回転軸と支持ハウジングとの間の相対的な軸力の入力、振動の入力に起因するので、電磁クラッチの締結トルクとは適切な相関関係が薄いものであった。さらには、ベアリングにおいては、電磁クラッチとは大きくかけ離れた位置に配置されており、相関関係に乏しいものであった。
【0009】
また、上記特許文献2においては、温度センサを設けないで済むので、部品コストを削減できると共に、特許文献1のような装置の設計変更を行う必要がなく、設計・製造に関するコストを削減できる効果が期待できるものの、クラッチ機構の機能を保持するオイルの温度変化に応じた適切なトルク伝達をするという特許文献1の発明本来の目的からすると、以下の問題があった。
【0010】
それは、温度推定に関して電磁石の電磁コイルの温度を検出することにあり、電磁コイルを用いていないクラッチ機構に対しては適用できない。また、クラッチ機構が作動していない状況では、電磁コイルに電流を印加した場合、電磁コイルは昇温するけれどもクラッチ機構は昇温しないので、クラッチ機構の温度と電磁コイルの温度との間の相関関係が乏しくなることである。
【0011】
そこで、この発明は、動力伝達装置の構造を極力変更することなく、摩擦クラッチ機構の温度と適切な相関関係が得られる温度推定が可能な動力伝達装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、入力側回転部材及び出力側回転部材と、前記入力側回転部材と前記出力側回転部材の一方と連結する外周側回転部材と、前記入力側回転部材と前記出力側回転部材の他方と連結する内周側回転部材と、前記外周側回転部材と前記内周側回転部材との間に配置されると共に、操作部材により締結制御される摩擦クラッチ機構と、前記外周側回転部材と前記内周側回転部材及び前記摩擦クラッチ機構を収容する静止側のケーシングとを備えた動力伝達装置であって、前記静止側のケーシングに固定されると共に、この静止側のケーシングの内壁面から前記外周側回転部材に対向して突出し、前記外周側回転部材の外壁面と近接して配置される温度センサを設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の動力伝達装置であって、前記温度センサは、前記摩擦クラッチ機構の半径方向外側における前記外周側回転部材の外壁面に対向されて配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の動力伝達装置であって、前記温度センサは、前記外周側回転部材の外壁面のうち側部壁面に対向されて配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、前記摩擦クラッチ機構は前記外周側回転部材及び前記内周側回転部材の軸方向に向けて重合する複数のクラッチプレートを備え、前記操作部材は前記摩擦クラッチ機構を押圧する押圧部材を備え、前記温度センサは前記複数のクラッチプレートのうち前記押圧部材側のクラッチプレート寄りの前記外壁面に対向して配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、前記操作部材は、通電により起動する電気的アクチュエータを備え、この電気的アクチュエータは、通電用のリード線がグロメットを介して前記静止側のケーシングを貫通して配置され、前記温度センサは前記グロメットを介して前記静止側のケーシングに固定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、前記外周側回転部材と前記内周側回転部材との間には区画部材が配置されて前記外周側回転部材と前記内周側回転部材との間に空間が区画され、この空間には所定量の潤滑オイルが封入されて前記摩擦クラッチ機構が潤滑され、前記温度センサは、前記外周側回転部材の内壁面の内側空間の径方向外側の外壁面に対向して配置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、前記温度センサは、前記外周側回転部材に対して鉛直方向上方位置で前記静止側のケーシングに対して取り付け固定されていることを特徴とする。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、前記温度センサは、リード線と、このリード線の先端側に連結するサーミスタと、前記リード線の先端側と前記サーミスタとをモールドすると共に前記外周側回転部材の前記外壁面に近接して配置される近接面とを備える樹脂とからなることを特徴とする。
【0020】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の動力伝達装置であって、前記温度センサは、前記サーミスタと連結する熱伝導素子を備え、この熱伝導素子が前記外周側回転部材と近接して配置されることを特徴とする。
【0021】
請求項10記載の発明は、入力側回転部材及び出力側回転部材と、前記入力側回転部材と前記出力側回転部材の一方と連結する外周側回転部材と、前記入力側回転部材と前記出力側回転部材の他方と連結する内周側回転部材と、前記外周側回転部材と前記内周側回転部材との間に配置されると共に、操作部材により締結制御される摩擦クラッチ機構と、前記外周側回転部材と前記内周側回転部材及び前記摩擦クラッチ機構を収容する静止側のケーシングとを備えた動力伝達装置であって、前記静止側のケーシングの内壁面と前記外周側回転部材の外壁面との間に形成される空間部に、少なくとも一面が露出するように、前記静止側のケーシングに支持固定される温度センサを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の動力伝達装置は、ケーシングに固定される温度センサは、ケーシングの内壁面から外周側回転部材の外壁面に対向して突出し、外壁面に温度センサを近接配置させることで、外壁面から放熱された温度を含めたケーシング内の雰囲気温度を感受する。また、摩擦クラッチ機構の温度状況は、摩擦クラッチ機構と係合すると共に、最も放熱側部材となりうる外周側回転部材と相関性が高く適切なので、温度センサによって感受した温度によって、的確に温度推定が可能である。
【0023】
従って、従来のように複雑な演算式を主として用いることなく、温度センサはケーシングに固定するだけでよいので、回転部材の設計変更を伴うことがない。
【0024】
請求項2の動力伝達装置は、摩擦クラッチ機構の半径方向外側に温度センサを配置することで、摩擦クラッチ機構の温度状況の推移をより的確に把握することができる。
【0025】
請求項3の動力伝達装置は、温度センサを側部壁面に対向して配置することにより、温度センサの固定部がケーシングの外径側へ張り出すことを抑制し、コンパクト化することができる。
【0026】
請求項4の動力伝達装置は、押圧部材で押圧される側のクラッチプレートは、押圧部材で押圧されるため複数のクラッチプレートのうち最も昇温しやすい。これらのクラッチプレート寄りに温度センサを配置することで、より的確に摩擦クラッチプレートの温度状況を把握できる。
【0027】
請求項5の動力伝達装置は、他のリード線を貫通配置するグロメットを介して温度センサを固定するので、温度センサの固定構造を共用化できると共に簡素化でき、ケーシングの構造変更を最大限に抑制することができる。また、弾性部材であるグロメットを介して温度センサを固定するので、温度センサに対するケーシングからの振動伝播を抑制することができると共に、経時的に外周側回転部材の外壁面と温度センサとの初期位置関係を保持することができる。
【0028】
請求項6の動力伝達装置は、摩擦クラッチ機構を潤滑するオイルに触れる空間に位置する外周側回転部材の内壁面の半径方向外側の外壁面に対向して温度センサを配置することで、外周側回転部材に摩擦クラッチ機構に触れるオイルの温度状態を伝播させて摩擦クラッチ機構の温度状況の推移を、より的確に把握することができる。
【0029】
請求項7の動力伝達装置は、温度センサを鉛直方向上方位置で取り付け固定することにより、ケーシング内の上方位置に滞留する空間の雰囲気放熱温度をより的確に感受することができる。なお、静止側のケーシング内に所定量の潤滑オイルが封入されている場合には、外周側回転部材によって掻き上げられたオイルが温度センサに飛散して感受温度が変動することを抑制できる。
【0030】
請求項8の動力伝達装置は、樹脂でリード線とサーミスタをモールドすることで、パッケージ化ができ、グロメットを介しても介さなくとも、ケーシングへの固定を安定して行うことができる。また、外壁面との距離及び外壁面と近接面との対向形状を樹脂材をモールド成形することで容易かつ高精度に設定・管理できるので、より的確に温度推定を行うことができる。
【0031】
請求項9の動力伝達装置は、熱伝導素子を経由させることで、感受性を向上させてより的確な温度推定ができる。また、外周側回転部材の外壁面に対して、温度感受部としての熱伝導素子をより近接配置或いは摺動接触させることもできる。
【0032】
請求項10の動力伝達装置は、ケーシングに温度センサの一面を露出するように支持固定することで、空間部の雰囲気温度を的確に感受できる。よって、摩擦クラッチ機構の温度推定を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1〜図12を用いて本発明の実施の形態に係る動力伝達装置について説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図1〜図8を用いて第1実施形態について説明する。
【0035】
本実施の形態に係る動力伝達装置1は、入力側回転部材3及び出力側回転部材5と、入力側回転部材3と連結する外周側回転部材7と、出力側回転部材5と連結する内周側回転部材9と、外周側回転部材7と内周側回転部材9との間に配置されると共に、操作部材11により締結制御される摩擦クラッチ機構13と、外周側回転部材7と内周側回転部材9及び前記摩擦クラッチ機構13を収容する静止側のケーシング15とを備えている。そして、静止側のケーシング15に固定されると共に、この静止側のケーシング15の内壁面17から外周側回転部材7に対向して突出し、外周側回転部材7の外壁面19と近接して配置される温度センサ21を設けた。
【0036】
また、摩擦クラッチ機構13は外周側回転部材7及び内周側回転部材9の軸方向に向けて重合する複数のクラッチプレート23,25を備え、操作部材11は摩擦クラッチ機構13を押圧する押圧部材としてのプレッシャリング27を備え、温度センサ21は外周側回転部材7の外壁面19に対向して配置されており、特に複数のクラッチプレート23,25のうちプレッシャリング27側のクラッチプレート寄りの外壁面20に対向して配置されている。
【0037】
さらに、操作部材11は、通電により起動する電気的アクチュエータ29を備え、この電気的アクチュエータ29は、通電用のリード線31,33がグロメット35を介して静止側のケーシング15を貫通して配置され、温度センサ21はグロメット35を介して静止側のケーシング15に固定されている。
【0038】
また、外周側回転部材7と内周側回転部材9との間には区画部材としてのOリング37、Xリング39、隔壁41が配置されて外周側回転部材7と内周側回転部材9との間に空間が区画され、この空間には所定量の潤滑オイルが封入されて摩擦クラッチ機構13が潤滑され、温度センサ21は、外周側回転部材7の内壁面43の内側空間の径方向外側の外壁面19に対向して配置されている。
【0039】
さらに、温度センサ21は、外周側回転部材7に対して鉛直方向上方位置で静止側のケーシング15に対して取り付け固定されている。
【0040】
また、温度センサ21は、リード線45,47と、このリード線45,47の先端側に連結するサーミスタ49と、リード線45,47の先端側とサーミスタ49とをモールドすると共に外周側回転部材7の外壁面19に近接して配置される近接面51とを備える樹脂53とからなる。
【0041】
図1〜図8に示すように、入力側回転部材3は、エンジンなどの駆動源、トランスミッションなどからの駆動トルクが伝達される回転部材(不図示)と一体回転可能に連結される。出力側回転部材5は、車輪などからのバックドライブトルクが伝達される回転部材(不図示)と一体回転可能に連結される。これらの入力側回転部材3と出力側回転部材5には、それぞれスプライン形状の連結部55,57が形成され、外周側回転部材7と内周側回転部材9とが連結されている。なお、入力側回転部材3を出力側とし、出力側回転部材5を入力側とするなど、回転部材3,5の入出力の関係は適宜選択することができる。
【0042】
外周側回転部材7は、連結軸59とクラッチハウジング61とロータハウジング63とを備え、ベアリング65を介してケーシング15に回転可能に支持されている。連結軸59の外周には、スプライン形状の連結部55が形成され、入力側回転部材3が連結されてボルト67で固定されている。また、入力側回転部材3とケーシング15との間には、ケーシング15の内部と外部とを区画するシール69が設けられている。クラッチハウジング61は、連結軸59と連続する一部材で筒状に形成されている。クラッチハウジング61の軸方向一側の壁部には、外周側回転部材7の内部に封入される潤滑オイルを導入する孔71が形成され、蓋部材73によって閉塞されている。また、クラッチハウジング61の軸方向他側の内周には、ねじ形状の連結部75が形成され、連結部75とナット77によるダブルナット機能によってロータハウジング63が一体回転可能に固定されている。また、クラッチハウジング61とロータハウジング63との間には、外周側回転部材7の内部と外部とを区画する区画部材としてのOリング37が設けられている。ロータハウジング63は、磁性材料からなり、電磁石95の磁力線を透過する。この外周側回転部材7の内周側には、外周側回転部材7と相対回転可能に内周側回転部材9が配置されている。
【0043】
内周側回転部材9は、中空軸状に形成され外周でベアリング79、摺動リング81、Xリング39を介して外周側回転部材7に回転可能に支持されている。なお、Xリング39は、外周側回転部材7の内部と外部とを区画する区画部材となっている。また、内周側回転部材9の内周には、スプライン形状の連結部57が形成され、出力側回転部材5が連結されている。また、内周側回転部材9の軸心側の中央部には、区画部材としての隔壁41が内周側回転部材9と連続する一部材で設けられ、外周側回転部材7の内部と外部とを区画している。この内周側回転部材9は、摩擦クラッチ機構13によって外周側回転部材7と断続される。
【0044】
摩擦クラッチ機構13は、外周側回転部材7と内周側回転部材9との間に配置され、複数のアウタクラッチプレート23と複数のインナクラッチプレート25とからなる。複数のアウタクラッチプレート23は、クラッチハウジング61の内周に軸方向移動可能で外周側回転部材7と一体回転可能に係合されている。複数のインナクラッチプレート25は、複数のアウタクラッチプレート23に対して軸方向に交互に重合して配置され、内周側回転部材9の外周に軸方向移動可能で内周側回転部材9と一体回転可能に係合されている。この摩擦クラッチ機構13は、外周側回転部材7の内部に封入された潤滑オイルで潤滑されると共に、操作部材11によって作動され、外周側回転部材7と内周側回転部材9とを断続する。
【0045】
操作部材11は、プレッシャリング27とカム機構83とパイロットクラッチ85と電気的アクチュエータ29とを備えている。プレッシャリング27は、内周側回転部材9の外周に軸方向移動可能で内周側回転部材9と一体回転可能に係合されている。このプレッシャリング27は、カム機構83で生じるカムスラスト力によって摩擦クラッチ機構13の締結方向に移動され、摩擦クラッチ機構13の複数のクラッチプレート23,25を押圧する。
【0046】
カム機構83は、プレッシャリング27とカムリング87とに周方向に形成されたカム面と、このカム面を対向させてこの間に介在させたカムボール89とを備えている。カムリング87は、内周側回転部材9の外周に軸方向移動可能に配置されている。このカムリング87とロータハウジング63との間には、カム機構83で生じるスラスト反力を受けるスラストベアリング91が配置されている。カムボール89は、プレッシャリング27とカムリング87との間に配置されている。このカムボール89は、パイロットクラッチ85の接続によってプレッシャリング27とカムリング87との間に差回転が生じることにより、パイロットクラッチ85に生じる摩擦トルクに応じた強さでプレッシャリング27を摩擦クラッチ機構13側へ軸方向押圧移動させるカムスラスト力を発生させる。
【0047】
パイロットクラッチ85は、クラッチハウジング61の内周に軸方向移動可能で外周側回転部材7と一体回転可能に係合する複数のアウタクラッチ板と、カムリング87の外周に複数のアウタクラッチ板に対して軸方向に交互に重合して配置され軸方向移動可能でカムリング87と一体回転可能に係合する複数のインナクラッチ板とで構成されている。このパイロットクラッチ85は、電気的アクチュエータ29によって締結される。
【0048】
電気的アクチュエータ29は、アーマチャ93と電磁石95とを備えている。アーマチャ93は、磁性材料からなり、軸方向においてパイロットクラッチ85を挟んでロータハウジング63と対向配置され、クラッチハウジング61の内周に軸方向移動可能に係合されている。このアーマチャ93は、電磁石95への給電により電磁石95側に吸引移動されてパイロットクラッチ85を接続させる。
【0049】
電磁石95は、電磁コイル97とコア99とで構成され、ベアリング101を介してロータハウジング63に支持されている。コア99は、通電用のリード線31,33が接続されている。このリード線31,33がグロメット35を介して静止側のケーシング15を貫通して給電を制御するコントローラ(不図示)に接続されるコネクタ103と接続されており、コントローラの制御によって摩擦クラッチ機構13で必要な摩擦トルクを生じさせるように電磁コイル97に給電される。また、コア99には、回り止め部材105が設けられ、静止側のケーシング15に対して電磁石95が回り止めされている。この電磁石95への給電により、コア99、ロータハウジング63、パイロットクラッチ85、アーマチャ93を介した磁力線が循環されて磁束ループが形成され、アーマチャ93が電磁石95側に吸引移動される。
【0050】
このように構成された動力伝達装置1は、電磁石95への給電によってアーマチャ93が吸引移動され、パイロットクラッチ85を押圧し、パイロットクラッチ85が接続される。パイロットクラッチ85が接続されるとカム機構83でカムスラスト力が発生してプレッシャリング27が摩擦クラッチ機構13側に押圧移動される。このプレッシャリング27の移動により摩擦クラッチ機構13が接続され、外周側回転部材7と内周側回転部材9とが接続される。この外周側回転部材7と内周側回転部材9との接続により、摩擦クラッチ機構13の摩擦トルクに応じて入力側回転部材3から出力側回転部材5へ駆動力が伝達される。
【0051】
これらの外周側回転部材7と内周側回転部材9及び前記摩擦クラッチ機構13などは、静止側のケーシング15に収容されている。静止側のケーシング15は、第1のケーシング107と第2のケーシング109とからなり、ボルト111によって一体的に固定されている。このケーシング15に収容された外周側回転部材7と内周側回転部材9との間は、Oリング37、Xリング39、隔壁41などによって空間が区画され、この空間には摩擦クラッチ機構13などを潤滑する所定量(空間の容積に対して70%〜90%程度)の潤滑オイルが封入されている。また、ケーシング15の内壁面17と外周側回転部材7の外壁面19とで形成される空間は、エア空間となっている。このエア空間には、グロメット35を介して静止側のケーシング15の内壁面17から外周側回転部材7に対向して突出し、外周側回転部材7の外壁面19と近接して配置される温度センサ21が設けられ、摩擦クラッチ機構13の温度推定を行っている。なお、このエア空間に所定量の潤滑オイルを封入させている場合には、封入された潤滑オイルの温度を測定してもよい。
【0052】
グロメット35は、ゴムなどの弾性材料からなり、外周側回転部材7に対して鉛直方向上方位置で外周面が第1のケーシング107と第2のケーシング109との間に狭持固定され、ケーシング15内を封止している。なお、鉛直方向上方位置とは、少なくとも鉛直方向に見て外周側回転部材7の回転軸心を含む水平面よりも高い位置のことを示す。このグロメット35には、第1の孔部113,115と第2の孔部117,119とが形成され、これらの第1の孔部113,115と第2の孔部117,119とは中間肉部121で区画されている。また、第2の孔部117,119には、電磁石95に接続されたリード線31,33が挿通され、リード線31,33がケーシング15の外部に引き出されている。また、グロメット35の内部には凹部123が形成され、温度センサ21が保持されている。
【0053】
温度センサ21は、複数のクラッチプレート23,25のうちプレッシャリング27側のクラッチプレート寄りの外壁面20に対向して配置され、一対のリード線45,47とサーミスタ49と樹脂53とを備えている。一対のリード線45,47は、一端側がグロメット35の第1の孔部113,115に挿通されてケーシング15の外部に引き出されコントローラなどの制御手段に接続されると共に、他端側がサーミスタ49に連結されている。サーミスタ49は、ケーシング15内、すなわち摩擦クラッチ機構13の温度状況を測定する測定手段となっている。これらのリード線45,47の端部とサーミスタ49とは、樹脂53によってモールド成形され、この樹脂53がグロメット35の凹部123に保持されている。
【0054】
樹脂53は、近接面51と固定部125とを備えている。近接面51は、サーミスタ49を内包し、グロメット35から露出して外周側回転部材7の外壁面19に近接して配置されている。ここで、外壁面19に近接してとは、近接面51が静止側のケーシング15の内壁面17より突出することで、ケーシング15の内壁面17よりも近接面51が外周側回転部材7の外壁面19に近い位置に設けられていることを示している。この近接面51により、ケーシング15内の空間の温度において、ケーシング15の内壁面17より外周側回転部材7の外壁面19に近い部分の温度を感受することができる。また、近接面51を外周側回転部材7の外壁面19に近接して配置することにより、近接面51が摩擦クラッチ機構13を潤滑するオイルに触れる空間に位置する外周側回転部材7の内壁面43の半径方向外側の外壁面19に対向することになり、摩擦クラッチ機構13の温度状況を的確に把握することができる。なお、近接面51は、平面だけでなく、曲面、外壁面19からの距離が異なる多数面など感受性の高い面であればどのような形状であってもよい。また、近接面51には、固定部125が近接面51と連続する一部材で設けられている。
【0055】
固定部125は、筒状部127と凸状部129と複数の面131,133とを備えている。筒状部127は、近接面51と凸状部129との間に円筒状に形成され、グロメット35の凹部123に形成された円周面135と当接している。凸状部129は、筒状部127と複数の面131,133と連続する一部材で設けられ、グロメット35の凹部123に形成された段部137と当接している。複数の面131,133は、周方向に長い面131と周方向に短い面133とが周方向に連続して形成され、グロメット35の凹部123に形成された対応面139,141とそれぞれ当接している。また、固定部125のリード線が引き出された側の面は、グロメット35の凹部123の底部に当接している。なお、複数の面131,133は、平面だけでなく、曲面や凹凸面など対応面139,141と同じ形状であればどのような形状であってもよい。
【0056】
この樹脂53をグロメット35の凹部123に保持させることにより、回転方向の移動規制が固定部125の複数の面131,133と凹部123の対応面139,141との当接によってなされ、軸方向の移動規制が固定部125の凸状部129と凹部123の段部137との当接によってなされる。これにより、樹脂53とグロメット35との2部材間だけで固定機能を達成することができる。また、樹脂53がグロメット35に保持された状態でグロメット35をケーシング15に固定することにより、グロメット35によるシール機能が得られると共に、外部からグロメット35が締め付けられ、樹脂53とグロメット35との固定機能がより強固になる。
【0057】
なお、温度センサの樹脂の他の形状としては、例えば、図7に示すような固定部143が円筒形状の温度センサ145、図8に示すような固定部147が角柱形状の温度センサ149などであってもよい。これらの温度センサ145,149の固定は、樹脂53をグロメット151,153の凹部155,157に保持させ、グロメット151,153が、例えば第1のケーシング107と第2のケーシング109などの部材間に狭持されることによって、樹脂53の固定部143,147がグロメット151,153に対して位置決めされる。また、温度センサ145では、円筒形状であるため周方向に方向性がなく、温度検知をし易いと共に、グロメット151との密着性が高くシール性がよい。また、温度センサ149では、角柱形状であるため、グロメット153に対して回り止めがし易い。このように樹脂53の固定部の形状を簡易化し、グロメットのシール機能に加えて、グロメットの締め付けによって温度センサの固定を行ってもよい。
【0058】
このような動力伝達装置1では、ケーシング15に固定される温度センサ21は、ケーシング15の内壁面17から外周側回転部材7の外壁面19に対向して突出し、外壁面19に温度センサ21を近接配置させることで、外壁面19から放熱された温度を含めたケーシング15内の雰囲気温度を感受する。また、摩擦クラッチ機構13の温度状況は、摩擦クラッチ機構13と係合すると共に、最も放熱側部材となりうる外周側回転部材7と相関性が高く適切なので、温度センサ21によって感受した温度によって、的確に温度推定が可能である。
【0059】
従って、従来のように複雑な演算式を主として用いることなく、温度センサ21はケーシング15に固定するだけでよいので、回転部材の設計変更を伴うことがない。
【0060】
また、プレッシャリング27で押圧される側のクラッチプレート23,25は、プレッシャリング27で押圧されるため複数のクラッチプレート23,25のうち最も昇温しやすい。これらのクラッチプレート寄りに温度センサ21を配置することで、より的確に摩擦クラッチプレートの温度状況を把握できる。
【0061】
さらに、他のリード線31,33を貫通配置するグロメット35を介して温度センサ21を固定するので、温度センサ21の固定構造を共用化できると共に簡素化でき、ケーシング15の構造変更を最大限に抑制することができる。また、弾性部材であるグロメット35を介して温度センサ21を固定するので、温度センサ21に対するケーシング15からの振動伝播を抑制することができると共に、経時的に外周側回転部材7の外壁面19と温度センサ21との初期位置関係を保持することができる。
【0062】
また、摩擦クラッチ機構13を潤滑するオイルに触れる空間に位置する外周側回転部材7の内壁面43の半径方向外側の外壁面19に対向して温度センサ21を配置することで、外周側回転部材7に摩擦クラッチ機構13に触れるオイルの温度状態を伝播させて摩擦クラッチ機構13の温度状況の推移を、より的確に把握することができる。
【0063】
さらに、温度センサ21を鉛直方向上方位置で取り付け固定することにより、ケーシング15内の上方位置に滞留する空間の雰囲気放熱温度をより的確に感受することができる。なお、静止側のケーシング15内に所定量の潤滑オイルが封入されている場合には、外周側回転部材7によって掻き上げられたオイルが温度センサ21に飛散して感受温度が変動することを抑制できるので、オイル自体の温度ではなく、外周側回転部材7の外壁面19周囲の雰囲気温度を優先して検知することができる。
【0064】
また、樹脂53でリード線45,47とサーミスタ49をモールドすることで、パッケージ化ができ、グロメットを介しても介さなくとも、ケーシング15への固定を安定して行うことができる。また、外壁面19との距離及び外壁面19と近接面51との対向形状を樹脂材で容易かつ高精度に設定・管理できるので、より的確に温度推定を行うことができる。
【0065】
(第2実施形態)
図9を用いて第2実施形態について説明する。
【0066】
本実施の形態に係る動力伝達装置201は、温度センサ203は、サーミスタ49と連結する熱伝導素子205を備え、この熱伝導素子205が外周側回転部材7と近接して配置される。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、得られる効果は同一である。
【0067】
図9に示すように、温度センサ203は、複数のクラッチプレート23,25のうちプレッシャリング27側のクラッチプレート寄りの外壁面19に対向して配置され、熱伝導素子205を備えている。熱伝導素子205は、外周側回転部材7の軸方向に対して摩擦クラッチ機構13側に延設され、サーミスタ49側の端部がサーミスタ49と連結され、この端部側が樹脂53でモールド成形されている。この熱伝導素子205は、外周側回転部材7の外壁面19に対して近接面51よりも、より近接して配置され、感受性が向上されている。また、熱伝導素子205は、外周側回転部材7の軸方向に対して摩擦クラッチ機構13側に延設されることで、より感受性が向上されている。
【0068】
このような動力伝達装置201では、熱伝導素子205を経由させることで、感受性を向上させてより的確な温度推定ができる。また、外周側回転部材7の外壁面19に対して、温度感受部としての熱伝導素子205をより近接配置或いは摺動接触させることもできる。
【0069】
(第3実施形態)
図10を用いて第3実施形態について説明する。
【0070】
本実施の形態に係る動力伝達装置301は、温度センサ303は、摩擦クラッチ機構13の半径方向外側における外周側回転部材7の外壁面19に対向されて配置されている。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、得られる効果は同一である。
【0071】
図10に示すように、温度センサ303は、グロメット305を介してケーシング15に取付固定されている。グロメット305は、外周側回転部材7に対して鉛直方向上方位置でケーシング15の摩擦クラッチ機構13の半径方向外側における外周側回転部材7の外壁面19に対向する位置に形成された孔部307に配置されている。このグロメット305の凹部309には、温度センサ303が保持され、温度センサ303の近接面51が外周側回転部材7の外壁面19に対向されて配置されている。
【0072】
このような動力伝達装置301では、摩擦クラッチ機構13の半径方向外側に温度センサ303を配置することで、摩擦クラッチ機構13の温度状況の推移をより的確に把握することができる。
【0073】
(第4実施形態)
図11を用いて第4実施形態について説明する。
【0074】
本実施の形態に係る動力伝達装置401は、温度センサ403は、外周側回転部材7の外壁面19のうち側部壁面405に対向されて配置されている。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、得られる効果は同一である。
【0075】
図11に示すように、温度センサ403は、グロメット407を介してケーシング15に取付固定されている。グロメット407は、外周側回転部材7に対して鉛直方向上方位置でケーシング15の摩擦クラッチ機構13の軸方向外側における外周側回転部材7の外壁面19のうち側部壁面405に対向する位置に形成された孔部409に配置されている。このグロメット407の凹部411には、温度センサ403が保持され、温度センサ403の近接面51が外周側回転部材7の側部壁面405に対向されて配置されている。
【0076】
このような動力伝達装置401では、温度センサ403を側部壁面405に対向して配置することにより、温度センサ403の固定部がケーシング15の外径側へ張り出すことを抑制し、コンパクト化することができる。
【0077】
(第5実施形態)
図12を用いて第5実施形態について説明する。
【0078】
本実施の形態に係る動力伝達装置501は、静止側のケーシング15の内壁面17と外周側回転部材7の外壁面19との間に形成される空間部503に、少なくとも一面としての近接面51が露出するように、静止側のケーシング15に支持固定される温度センサ505を設けた。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の記号を記して説明を省略するが、第1実施形態と同一の構成であるので、構成及び機能説明は第1実施形態を参照するものとし省略するが、得られる効果は同一である。
【0079】
図12に示すように、温度センサ505は、グロメット507を介してケーシング15に取付固定されている。温度センサ505の近接面51は、静止側のケーシング15の内壁面17と外周側回転部材7の外壁面19との間に形成される空間部503に露出されている。また、近接面51は、内壁面から外壁面19に対向して突出して配置されているわけではないが、外壁面19に対向しているだけでも、温度センサ505の感受精度は従来に比べて向上している。
【0080】
このような動力伝達装置501では、ケーシング15に温度センサ505の近接面51を露出するように支持固定することで、空間部503の雰囲気温度を的確に感受できる。よって、摩擦クラッチ機構13の温度推定を精度よく行うことができる。
【0081】
なお、本発明の実施の形態に係る動力伝達装置では、操作部材の押圧部材を作動させる電気的アクチュエータとして電磁石を用いてるが、電動モータ、磁性流体、電磁パウダークラッチなどどのような形態のアクチュエータを用いてもよい。
【0082】
また、第3〜第5実施形態に係る動力伝達装置においても、温度センサに熱伝導素子を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置における温度センサの側面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置における温度センサの下面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置における温度センサの斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置における温度センサの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る動力伝達装置における温度センサの一例を示す図である。
【図9】(a)本発明の第2実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。(b)図9(a)の要部拡大図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係る動力伝達装置の断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係る動力伝達装置の概略図である。
【符号の説明】
【0084】
1,201,301,401,501…動力伝達装置
3…入力側回転部材
5…出力側回転部材
7…外周側回転部材
9…内周側回転部材
11…操作部材
13…摩擦クラッチ機構
15…ケーシング
17…内壁面(ケーシング)
19…外壁面
21,145,149,203,303,403,505…温度センサ
23,25…クラッチプレート
27…プレッシャリング(押圧部材)
29…電気的アクチュエータ
31,33…通電用のリード線
35…グロメット
37…Oリング(区画部材)
39…Xリング(区画部材)
41…隔壁(区画部材)
43…内壁面(外周側回転部材)
45,47…リード線
49…サーミスタ
51…近接面
53…樹脂
205…熱伝導素子
405…側部壁面
501…動力伝達装置
503…空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側回転部材及び出力側回転部材と、前記入力側回転部材と前記出力側回転部材の一方と連結する外周側回転部材と、前記入力側回転部材と前記出力側回転部材の他方と連結する内周側回転部材と、前記外周側回転部材と前記内周側回転部材との間に配置されると共に、操作部材により締結制御される摩擦クラッチ機構と、前記外周側回転部材と前記内周側回転部材及び前記摩擦クラッチ機構を収容する静止側のケーシングとを備えた動力伝達装置であって、
前記静止側のケーシングに固定されると共に、この静止側のケーシングの内壁面から前記外周側回転部材に対向して突出し、前記外周側回転部材の外壁面と近接して配置される温度センサを設けたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の動力伝達装置であって、
前記温度センサは、前記摩擦クラッチ機構の半径方向外側における前記外周側回転部材の外壁面に対向されて配置されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の動力伝達装置であって、
前記温度センサは、前記外周側回転部材の外壁面のうち側部壁面に対向されて配置されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記摩擦クラッチ機構は前記外周側回転部材及び前記内周側回転部材の軸方向に向けて重合する複数のクラッチプレートを備え、前記操作部材は前記摩擦クラッチ機構を押圧する押圧部材を備え、前記温度センサは前記複数のクラッチプレートのうち前記押圧部材側のクラッチプレート寄りの前記外壁面に対向して配置されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記操作部材は、通電により起動する電気的アクチュエータを備え、この電気的アクチュエータは、通電用のリード線がグロメットを介して前記静止側のケーシングを貫通して配置され、前記温度センサは前記グロメットを介して前記静止側のケーシングに固定されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記外周側回転部材と前記内周側回転部材との間には区画部材が配置されて前記外周側回転部材と前記内周側回転部材との間に空間が区画され、この空間には所定量の潤滑オイルが封入されて前記摩擦クラッチ機構が潤滑され、前記温度センサは、前記外周側回転部材の内壁面の内側空間の径方向外側の外壁面に対向して配置されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記温度センサは、前記外周側回転部材に対して鉛直方向上方位置で前記静止側のケーシングに対して取り付け固定されていることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記温度センサは、リード線と、このリード線の先端側に連結するサーミスタと、前記リード線の先端側と前記サーミスタとをモールドすると共に前記外周側回転部材の前記外壁面に近接して配置される近接面とを備える樹脂とからなることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項9】
請求項8記載の動力伝達装置であって、
前記温度センサは、前記サーミスタと連結する熱伝導素子を備え、この熱伝導素子が前記外周側回転部材と近接して配置されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項10】
入力側回転部材及び出力側回転部材と、前記入力側回転部材と前記出力側回転部材の一方と連結する外周側回転部材と、前記入力側回転部材と前記出力側回転部材の他方と連結する内周側回転部材と、前記外周側回転部材と前記内周側回転部材との間に配置されると共に、操作部材により締結制御される摩擦クラッチ機構と、前記外周側回転部材と前記内周側回転部材及び前記摩擦クラッチ機構を収容する静止側のケーシングとを備えた動力伝達装置であって、
前記静止側のケーシングの内壁面と前記外周側回転部材の外壁面との間に形成される空間部に、少なくとも一面が露出するように、前記静止側のケーシングに支持固定される温度センサを設けたことを特徴とする動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−48397(P2010−48397A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215462(P2008−215462)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000225050)GKN ドライブライン トルクテクノロジー株式会社 (409)
【Fターム(参考)】