説明

動力伝達装置

【課題】損失を抑制できるとともに、装置の小型化および搭載性の向上を図ることができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】動力伝達装置Tでは、互いに一体の第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3で構成された3連ピニオンギヤ12が、キャリア部材11に回転自在に支持されている。また、第2および第1ピニオンギヤP2、P1が、左右の出力軸SFLおよびSFRにそれぞれ連結されるとともに、第3ピニオンギヤP3およびキャリア部材11が、回転エネルギを回収可能な第1および第2回収装置13、14にそれぞれ連結されている。さらに、第1回収装置13で回転エネルギを回収することにより、キャリア部材11を左出力軸SFLに対して増速させるとともに、第2回収装置14で回転エネルギを回収することにより、キャリア部材11を左出力軸SFLに対して減速させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに差回転が可能な2つの回転軸の間で互いにトルクを伝達するための動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の動力伝達装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この従来の動力伝達装置は、四輪車両に適用されたものであり、内燃機関のトルクを左右の出力軸に分配する差動装置と、左出力軸の周りに回転自在に設けられたキャリア部材と、キャリア部材に回転自在に支持された3連ピニオンギヤと、油圧式の増速用クラッチおよび減速用クラッチを備えている。左右の出力軸は、左右の駆動輪にそれぞれ連結されている。また、3連ピニオンギヤは、互いに異なるピッチ円を有する第1ピニオンギヤ、第2ピニオンギヤおよび第3ピニオンギヤで構成されており、これらの第1〜第3ピニオンギヤは、一体に形成されている。第1ピニオンギヤは、右出力軸と一体の第1サンギヤと噛み合っており、第2ピニオンギヤは左出力軸と一体の第2サンギヤと噛み合っている。また、第3ピニオンギヤは、回転自在に設けられた第3サンギヤと噛み合っている。さらに、増速用クラッチによって、第3サンギヤと不動のケーシングの間が接続・遮断され、減速用クラッチによって、キャリア部材とケーシングの間が接続・遮断される。
【0003】
以上の構成の従来の動力伝達装置では、車両の直進時、増速用クラッチの解放により第3サンギヤとケーシングの間が遮断され、減速用クラッチの解放によりキャリア部材とケーシングの間が遮断されるとともに、内燃機関のトルクが、差動装置を介して左右の出力軸に分配される。それに伴い、キャリア部材、第3サンギヤ、増速用および減速用クラッチは、内燃機関のトルクの一部が伝達されることにより空転する。また、車両の左右の旋回時、増速用および減速用クラッチの締結力を制御することによって、左右の出力軸へのトルクの分配が制御される。具体的には、車両の右旋回時には、増速用クラッチの解放により第3サンギヤとケーシングの間を遮断するとともに、減速用クラッチの締結によりキャリア部材とケーシングの間を接続することによって、キャリア部材を減速させる。これにより、右出力軸のトルクの一部が、第1サンギヤ、第1ピニオンギヤ、第2ピニオンギヤおよび第2サンギヤを介して左出力軸に伝達される結果、左出力軸に分配されるトルクが、右出力軸に対して増大する。この場合、減速用クラッチの締結度合を制御することによって、左出力軸に分配されるトルクが制御される。
【0004】
一方、車両の左旋回時には、減速用クラッチの解放によりキャリア部材とケーシングの間を遮断するとともに、増速用クラッチの締結により第3サンギヤとケーシングの間を接続することによって、キャリア部材を増速させる。これにより、左出力軸のトルクの一部が、第2サンギヤ、第2ピニオンギヤ、第1ピニオンギヤおよび第1サンギヤを介して右出力軸に伝達される結果、右出力軸に分配されるトルクが、左出力軸に対して増大する。この場合、増速用クラッチの締結度合を制御することによって、右出力軸に分配されるトルクが制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3104157号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の動力伝達装置では、左右の出力軸へのトルクの分配制御のために、増速用および減速用クラッチが用いられており、これらの増速用および減速用クラッチは、内燃機関のトルクの伝達によって空転する。このため、増速用および減速用クラッチとして、湿式の摩擦クラッチを用いた場合には、その潤滑油の粘性によるせん断抵抗によって、大きな引きずり損失が発生してしまう。また、左右の出力軸へのトルクの分配制御中には特に、第3サンギヤおよびキャリア部材が増速用および減速用クラッチによりケーシングにそれぞれ接続され、それに伴い、内燃機関のトルク(回転エネルギ)の一部が増速用または減速用クラッチに伝達され、無駄に消費される結果、大きな損失が発生してしまう。
【0007】
さらに、油圧式の増速用および減速用クラッチに油圧を供給するために、内燃機関を動力源とする油圧ポンプを用いた場合には、内燃機関の運転中、左右の出力軸へのトルクの分配制御にかかわらず、常に油圧ポンプが駆動されるため、その分、内燃機関のトルクが無駄に消費されてしまう。さらに、増速用および減速用クラッチを駆動するためのスプール弁や、ソレノイド、ストレーナなどが必要になるため、その分、装置の大型化および搭載性の低下を招いてしまう。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、損失を抑制できるとともに、装置の小型化および搭載性の向上を図ることができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、互いに差回転が可能な2つの回転軸の間で互いにトルクを伝達するための動力伝達装置Tであって、2つの回転軸(実施形態における(以下、本項において同じ)左右の出力軸SFL、SFR)のうちの一方の回転軸の周りに回転自在に設けられたキャリア部材11と、互いに異なるピッチ円直径を有するとともに互いに一体に設けられた第1ピニオンギヤP1、第2ピニオンギヤP2および第3ピニオンギヤP3で構成され、キャリア部材11に回転自在に支持された3連ピニオンギヤ12と、回転エネルギを回収可能な第1回収装置(第1モータ13)と、回転エネルギを回収可能な第2回収装置(第2モータ14)と、を備え、第1ピニオンギヤP1は、2つの回転軸のうちの他方の回転軸に連結され、第2ピニオンギヤP2は一方の回転軸に連結され、第3ピニオンギヤP3は、第1回収装置に連結されるとともに、キャリア部材11は、第2回収装置に連結されており、第1回収装置により回転エネルギを回収することによって、キャリア部材11を一方の回転軸に対して増速させるとともに、第2回収装置により回転エネルギを回収することによって、キャリア部材11を一方の回転軸に対して減速させることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、2つの回転軸のうちの一方の回転軸の周りに回転自在に設けられたキャリア部材に、3連ピニオンギヤが回転自在に支持されている。この3連ピニオンギヤは、互いに異なるピッチ円を有するとともに互いに一体に設けられた第1ピニオンギヤ、第2ピニオンギヤおよび第3ピニオンギヤで構成されている。また、これらの第1および第2ピニオンギヤは、2つの回転軸のうちの他方の回転軸および一方の回転軸にそれぞれ連結されるとともに、第3ピニオンギヤおよびキャリア部材は、第1回収装置および第2回収装置にそれぞれ連結されている。
【0011】
さらに、第1回収装置により回転エネルギを回収することによって、キャリア部材を一方の回転軸に対して増速させるとともに、第2回収装置により回転エネルギを回収することによって、キャリア部材を一方の回転軸に対して減速させる。上述したように一方の回転軸および他方の回転軸が3連ピニオンギヤを介して互いに連結されていることと、3連ピニオンギヤがキャリア部材に回転自在に支持されていること、キャリア部材が一方の回転軸の周りに回転自在に支持されていることから、上記のキャリア部材の増速または減速によって、一方の回転軸から他方の回転軸に、あるいは他方の回転軸から一方の回転軸に、トルクを伝達することができる。また、第1および第2回収装置によりキャリア部材の増速度合および減速度合を制御することによって、一方および他方の回転軸へのトルクの分配を自由に制御することができる。以下、一方および他方の回転軸へのトルクの分配制御を「トルク分配制御」という。
【0012】
また、トルク分配制御のために、前述した従来の増速用および減速用クラッチに代えて、回転エネルギを回収可能な第1および第2回収装置を用いるので、トルク分配制御中、第1および第2回収装置で回収した回転エネルギを再利用することができ、その分、全体として損失を抑制することができる。特に、増速用および減速用クラッチが湿式の摩擦クラッチの場合と異なり、大きな引きずり損失が発生することがないので、このことによっても損失を抑制することができる。それに加え、増速用および減速用クラッチに油圧を供給する油圧ポンプも不要である。さらに、増速用および減速用クラッチを駆動するためのスプール弁や、ソレノイド、ストレーナなども不要であり、その分、装置の小型化および搭載性の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の動力伝達装置Tにおいて、第1および第2回収装置の各々は、回転エネルギと電気エネルギの間でエネルギを変換可能な回転電機(第1モータ13、第2モータ14)を有し、第3ピニオンギヤは、第1回収装置の回転電機に連結されるとともに、キャリア部材は、第2回収装置の回転電機に連結されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第1および第2回収装置が、回転電機を有しており、第3ピニオンギヤが第1回収装置の回転電機に、キャリア部材が第2回収装置の回転電機に、それぞれ連結されている。これにより、前述したトルク分配制御中、回転エネルギを回収するにあたり、回転電機により回転エネルギを電気エネルギに変換することができる。このため、例えば、動力伝達装置を車両に適用した場合には、変換した電気エネルギを車両用の補機に供給することによって、補機の電源を充電するための発電機の作動負荷および作動頻度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態による動力伝達装置を、これを適用した車両の駆動輪とともに概略的に示す図である。
【図2】ECUなどを示すブロック図である。
【図3】動力伝達装置におけるトルクの伝達状況を、車両の直進時について示す図である。
【図4】動力伝達装置におけるトルクの伝達状況を、車両の左旋回時について示す図である。
【図5】動力伝達装置におけるトルクの伝達状況を、車両の右旋回時について示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態による動力伝達装置を、これを適用した車両の駆動輪とともに概略的に示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態による動力伝達装置を、これを適用した車両の駆動輪とともに概略的に示す図である。
【図8】本発明による動力伝達装置を適用したFR式の車両を概略的に示す図である。
【図9】本発明による動力伝達装置を適用した全輪駆動式の車両を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1に示す内燃機関(以下「エンジン」という)3は、FF(フロントエンジン−フロントドライブ)式の四輪の車両(図示せず)に搭載されている。本発明の第1実施形態による動力伝達装置Tは、変速機(以下「T/M」という)4を介してエンジン3に連結されており、エンジン3のトルク(以下「エンジントルク」という)を、車両の左前輪WFLおよび右前輪WFRに伝達する。
【0017】
動力伝達装置Tは、差動装置D、キャリア部材11、3連ピニオンギヤ12、第1モータ13および第2モータ14を備えている。これらの差動装置D、キャリア部材11、第1モータ13および第2モータ14は、互いに同軸状に配置されている。差動装置Dは、いわゆるダブルピニオン式の遊星歯車装置であり、サンギヤSDと、サンギヤSDの外周に設けられたリングギヤRDと、サンギヤSDに噛み合う複数の第1ピニオンギヤPD1と、第1ピニオンギヤPD1およびリングギヤRDに噛み合う複数の第2ピニオンギヤPD2と、第1および第2ピニオンギヤPD1,PD2を回転自在に支持するキャリアCDを有している。
【0018】
また、リングギヤRDの外周部には、外歯ギヤGが形成されており、この外歯ギヤGは、T/M4の出力軸4aに一体に取り付けられたギヤ4bに噛み合っている。キャリアCDの右端部は、右出力軸SFRに一体に取り付けられており、この右出力軸SFRは、右前輪WFRに連結されている。また、キャリアCDの左端部には、中空の回転軸15が一体に取り付けられており、回転軸15は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されている。さらに、サンギヤSDは、左出力軸SFLに一体に取り付けられており、この左出力軸SFLは、回転軸15の内側に相対的に回転自在に配置されるとともに、左前輪WFLに連結されている。
【0019】
以上の構成の差動装置Dでは、エンジントルクが、T/M4を介してリングギヤRDに伝達されると、リングギヤRDに伝達されたトルクは、第1および第2ピニオンギヤPD1,PD2を介して、サンギヤSDおよびキャリアCDに、1:1のトルク分配比で分配される。サンギヤSDに分配されたトルクは、左出力軸SFLを介して左前輪WFLに伝達され、キャリアCDに分配されたトルクは、右出力軸SFRを介して右前輪WFRに伝達される。また、左右の出力軸SFL,SFRは、差動装置Dによって互いに差回転が可能である。
【0020】
前記キャリア部材11は、ドーナツ板状の基部11aと、3連ピニオンギヤ12を支持するための4つの支軸11b(2つのみ図示)で構成されている。キャリア部材11は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、左出力軸SFLおよび回転軸15の周りに配置されている。各支軸11bは、基部11aに一体に取り付けられており、基部11aから軸線方向に延びている。また、4つの支軸11bは、基部11aの円周方向に等間隔で配置されている。
【0021】
3連ピニオンギヤ12は、互いに一体に形成された第1ピニオンギヤP1、第2ピニオンギヤP2および第3ピニオンギヤP3で構成されている。3連ピニオンギヤ12の数Nは、値4であり(2つのみ図示)、各3連ピニオンギヤ12は、支軸11bに回転自在に支持されている。第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3は、キャリア部材11の軸線と平行な同一軸線上に、右側からこの順で配置されている。なお、3連ピニオンギヤ12の数Nおよび支軸11bの数は値4に限らず、任意である。
【0022】
第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3は、互いに異なるピッチ円直径を有しており、第1ピニオンギヤP1の歯数(以下「第1ピニオン歯数」という)ZP1、第2ピニオンギヤP2の歯数(以下「第2ピニオン歯数」という)ZP2、および第3ピニオンギヤP3の歯数(以下「第3ピニオン歯数」という)ZP3は、それらの最小歯数Mに正の整数を乗算した値(M、2M、3M…のいずれか)に、設定されている。具体的には、第1および第2ピニオン歯数ZP1、ZP2は、最小歯数M=17に設定されており、第3ピニオン歯数ZP3は、2M=34に設定されている。これにより、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3の歯の位相を、周方向に互いに揃えることができる。それにより、3連ピニオンギヤ12の組付時に、第1〜第3ピニオンギヤP1、P2およびP3をそれぞれ、後述する第1サンギヤS1、第2サンギヤS2および第3サンギヤS3に噛み合わせる際に、3連ピニオンギヤ12の周方向(回転方向)の位置決めが不要になり、組付性を向上させることができる。
【0023】
また、第1〜第3ピニオンギヤP1、P2およびP3には、第1サンギヤS1、第2サンギヤS2および第3サンギヤS3がそれぞれ噛み合っている。この第1サンギヤS1は回転軸15に、第2サンギヤS2は左出力軸SFLに、それぞれ一体に取り付けられており、第3サンギヤS3は、回転軸16に一体に取り付けられている。この回転軸16は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、その内側には、左出力軸SFLが、相対的に回転自在に配置されている。
【0024】
また、第1サンギヤS1の歯数(以下「第1サンギヤ歯数」という)ZS1、第2サンギヤS2の歯数(以下「第2サンギヤ歯数」という)ZS2、および第3サンギヤS3の歯数(以下「第3サンギヤ歯数」という)ZS3は、3連ピニオンギヤ12の数N(本実施形態では値4)に正の整数を乗算した値(N、2N、3N…のいずれか)に、設定されている。具体的には、第1および第3サンギヤ歯数ZS1、ZS3は、8N=32に設定されており、第2サンギヤ歯数ZS2は、7N=28に設定されている。これにより、第1〜第3サンギヤS1〜S3の歯の位相を、4つの3連ピニオンギヤ12と噛み合う位置において、互いに一致させることができる。それにより、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3の歯の位相を互いに異ならせずに済むので、3連ピニオンギヤ12の製造コストを削減することができる。
【0025】
なお、互いに噛み合う第1ピニオンギヤP1および第1サンギヤS1のモジュールを互いに一致させ、第2ピニオンギヤP2および第2サンギヤS2のモジュールを互いに一致させるとともに、第3ピニオンギヤP3および第3サンギヤS3のモジュールを互いに一致させるのであれば、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3および第1〜第3サンギヤS1〜S3のモジュールをすべて一致させる必要はない。
【0026】
第1モータ13は、ACモータであり、複数の鉄芯やコイルなどで構成された第1ステータ13aと、複数の磁石などで構成された第1ロータ13bを有している。この第1ステータ13aは、不動のケースCAに固定されている。第1ロータ13bは、第1ステータ13aに対向するように配置され、前述した回転軸16に一体に取り付けられており、回転軸16および第3サンギヤS3とともに回転自在である。第1モータ13では、第1ステータ13aに電力(電気エネルギ)が供給されると、供給された電力は、動力(回転エネルギ)に変換され、第1ロータ13bに出力される。また、第1ロータ13bに動力(回転エネルギ)が入力されると、この動力は、電力(電気エネルギ)に変換され(発電)、第1ステータ13aに出力される。
【0027】
また、第1ステータ13aは、第1パワードライブユニット(以下「第1PDU」という)21を介して、充電・放電可能なバッテリ23に電気的に接続されており、バッテリ23との間で電気エネルギを授受可能である。この第1PDU21は、インバータなどの電気回路で構成されている。図2に示すように、第1PDU21には、後述するECU2が電気的に接続されている。このECU2は、第1PDU21を制御することによって、第1ステータ13aに供給する電力と、第1ステータ13aで発電する電力と、第1ロータ13bの回転数を制御する。
【0028】
また、第2モータ14も、第1モータ13と同様、ACモータであり、第2ステータ14aおよび第2ロータ14bを有している。これらの第2ステータ14aおよび第2ロータ14bはそれぞれ、第1ステータ13aおよび第1ロータ13bと同様に構成されている。また、第2ロータ14bは、前述したキャリア部材11の基部11aに一体に取り付けられており、キャリア部材11とともに回転自在である。さらに、第2モータ14は、第1モータ13と同様、第2ステータ14aに供給された電力を動力に変換し、第2ロータ14bに出力可能であり、第2ロータ14bに入力された動力を電力に変換し、第2ステータ14aに出力可能である。
【0029】
また、第2ステータ14aは、第2パワードライブユニット(以下「第2PDU」という)22を介して、バッテリ23に電気的に接続されており、バッテリ23との間で電気エネルギを授受可能である。この第2PDU22は、第1PDU21と同様、インバータなどの電気回路で構成されており、第2PDU22には、ECU2が電気的に接続されている。ECU2は、第2PDU22を制御することによって、第2ステータ14aに供給する電力と、第2ステータ14aで発電する電力と、第2ロータ14bの回転数を制御する。
【0030】
以下、第1ロータ13b(第2ロータ14b)に入力された動力を用いて第1ステータ13a(第2ステータ14a)で発電するとともに、発電した電力をバッテリ23に充電することを適宜「回生」という。
【0031】
以上のように、動力伝達装置Tでは、3連ピニオンギヤ12の第1ピニオンギヤP1は、第1サンギヤS1、回転軸15およびキャリアCDを介して、右出力軸SFRに連結されている。第2ピニオンギヤP2は、第2サンギヤS2を介して、左出力軸SFLに連結されている。また、第3ピニオンギヤP3は、第3サンギヤS3および回転軸16を介して、第1モータ13に連結されている。キャリア部材11は、第2モータ14に連結されている。
【0032】
また、ECU2には、操舵角センサ31から車両のハンドルの操舵角θを表す検出信号が、車速センサ32から車速VPを表す検出信号が、入力される。ECU2にはさらに、電流電圧センサ33から、バッテリ23に入出力される電流・電圧値を表す検出信号が入力される。ECU2は、電流電圧センサ33からの検出信号に基づいて、バッテリ23の充電状態を算出する。
【0033】
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、上述した各種のセンサ31〜33からの検出信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、第1および第2モータ13、14を制御する。これにより、動力伝達装置Tの各種の動作が行われる。以下、車両の直進時および左右の旋回時における動力伝達装置Tの動作について説明する。
【0034】
・直進時
前述したエンジン3や第1・第2モータ13、14などの各種の要素の間の連結関係から明らかなように、エンジントルクは、差動装置Dや、キャリア部材11、3連ピニオンギヤ12を介して第1および第2モータ13、14に伝達される。それにより、キャリア部材11、第1および第2ロータ13b、14bは空転する。それに伴って第1および第2モータ13、14で発電が行われることによる引きずり損失が発生するのを回避するために、両モータ13、14のトルクがほぼ値0になるように、ゼロトルク制御が行われる。
【0035】
車両の直進時、エンジントルクは、差動装置Dを介して、左右の出力軸SFL、SFRに分配され、さらに左右の駆動輪WFL、WFRに伝達される。この場合、図3にハッチング付きの矢印で示すように、エンジン3から左右の出力軸SFL、SFRへのトルク分配比は、1:1である。また、車両の左右の旋回時とは異なり、キャリア部材11が左右の出力軸SFL、SFRと同じ回転数で空転するとともに、3連ピニオンギヤ12がキャリア部材11に対して回転しないため、左右の出力軸SFL、SFRの間で、3連ピニオンギヤ12を介してトルクが伝達されることはない。
【0036】
・左旋回時
第1モータ13で発電制御を行うとともに、第2モータ14でゼロトルク制御を行う。第1モータ13での発電制御に伴い、第1モータ13からの制動力が、第3サンギヤS3に作用する。また、第1モータ13による発電制御によって、第1モータ13に伝達された回転エネルギが、電気エネルギに変換されるとともに、変換された電気エネルギがバッテリ23に充電される(回生)。これにより、キャリア部材11が左出力軸SFLに対して増速することによって、図4にハッチング付きの矢印で示すように、左出力軸SFLのトルクの一部が、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、第1ピニオンギヤP1、第1サンギヤS1、回転軸15、およびキャリアCDを介して、右出力軸SFRに伝達される。その結果、右出力軸SFRの回転数(以下「右出力軸回転数」という)NFRが、左出力軸SFLの回転数(以下「左出力軸回転数」という)NFLに対して増速する。
【0037】
左旋回時、第1ロータ13bの回転数が値0になるように第1モータ13を制御した場合には、左右の出力軸回転数NFL、NFRの間の関係は、次式(1)によって表される。
NFR/NFL={1−(ZS3/ZP3)×(ZP1/ZS1)}
/{1−(ZS3/ZP3)×(ZP2/ZS2)}=1.167
……(1)
【0038】
また、左旋回時、第1モータ13での発電電力を介して第1モータ13の制動力を制御することにより、左出力軸SFLに対するキャリア部材11の増速度合を制御することによって、左出力軸SFLから右出力軸SFRに伝達されるトルクを自由に制御することができる。
【0039】
・右旋回時
右旋回時には、上述した左旋回時の場合とは逆に、第2モータ14で発電制御を行うとともに、第1モータ13でゼロトルク制御を行う。第2モータ14での発電制御に伴い、第2モータ14からの制動力が、キャリア部材11に作用する。また、第2モータ14による発電制御によって、第2モータ14に伝達された回転エネルギが、電気エネルギに変換されるとともに、変換された電気エネルギがバッテリ23に充電される(回生)。これにより、キャリア部材11が左出力軸SFLに対して減速することによって、図5にハッチング付きの矢印で示すように、右出力軸SFRのトルクの一部が、キャリアCD、回転軸15、第1サンギヤS1、第1ピニオンギヤP1、第2ピニオンギヤP2、および第2サンギヤS2を介して、左出力軸SFLに伝達される。その結果、左出力軸回転数NFLが、右出力軸回転数NFRに対して増速する。
【0040】
右旋回時、第2ロータ14bの回転数が値0になるように第2モータ14を制御した場合には、左右の出力軸回転数NFL、NFRの間の関係は、次式(2)によって表される。
NFL/NFR=(ZP2/ZS2)×(ZS1/ZP1)=1.143 ……(2)
【0041】
また、右旋回時、第2モータ14での発電電力を介して第2モータ14の制動力を制御することにより、左出力軸SFLに対するキャリア部材11の減速度合を制御することによって、右出力軸SFRから左出力軸SFLに伝達されるトルクを自由に制御することができる。
【0042】
また、本実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、本実施形態における左右の出力軸SFLおよびSFRが、本発明における2つの回転軸のうちの一方および他方にそれぞれ相当する。また、本実施形態における第1モータ13が、本発明における第1回収装置に相当するとともに、本実施形態における第2モータ14が、本発明における第2回収装置に相当する。さらに、本実施形態における第1および第2モータ13、14が、本発明における回転電機に相当する。
【0043】
以上のように、第1実施形態によれば、左出力軸SFLの周りに回転自在に設けられたキャリア部材11に、3連ピニオンギヤ12が回転自在に支持されている。この3連ピニオンギヤ12は、互いに異なるピッチ円を有するとともに、互いに一体に形成された第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3で構成されている。また、第1および第2ピニオンギヤP1、P2は、右出力軸SFRおよび左出力軸SFLにそれぞれ連結されるとともに、第3ピニオンギヤP3およびキャリア部材11は、第1および第2モータ13、14にそれぞれ連結されている。さらに、第1および第2モータ13、14には、バッテリ23が接続されており、第1および第2モータ13、14は、回転エネルギを電気エネルギとして回収し、蓄積可能である。
【0044】
また、車両の左旋回時、第1モータ13で発電制御を行うことにより、第1モータ13に伝達された回転エネルギを回収することによって、キャリア部材11を左出力軸SFLに対して増速させる。また、キャリア部材11の増速度合を制御することによって、左出力軸SFLから右出力軸SFRに伝達されるトルクを自由に制御することができる。
【0045】
さらに、車両の右旋回時、第2モータ14で発電制御を行うことにより、第2モータ14に伝達された回転エネルギを回収することによって、キャリア部材11を左出力軸SFLに対して減速させる。また、キャリア部材11の減速度合を制御することによって、右出力軸SFRから左出力軸SFLに伝達されるトルクを自由に制御することができる。以上のように、左右の出力軸SFL、SFRへのトルクの分配を自由に制御することができる。以下、左右の出力軸SFL、SFRへのトルクの分配制御を「トルク分配制御」という。
【0046】
また、トルク分配制御のために、前述した従来の増速用および減速用クラッチに代えて、第1および第2モータ13、14を用いるので、トルク分配制御中、第1および第2モータ13、14に伝達された回転エネルギを回収し、再利用することができ、その分、全体として損失を抑制することができる。特に、増速用および減速用クラッチが湿式の摩擦クラッチの場合と異なり、前述したゼロトルク制御によって、大きな引きずり損失が発生することがないので、このことによっても損失を抑制することができる。それに加え、増速用および減速用クラッチに油圧を供給する油圧ポンプも不要である。さらに、増速用および減速用クラッチを駆動するためのスプール弁や、ソレノイド、ストレーナなども不要であり、その分、動力伝達装置Tの小型化および搭載性の向上を図ることができる。
【0047】
さらに、トルク分配制御中、第1および第2モータ13、14に伝達された回転エネルギを回収するにあたり、両モータ13、14により回転エネルギを電気エネルギに変換することができる。このため、例えば、変換した電気エネルギを車両用の補機(図示せず)に供給することによって、補機の電源を充電するための発電機(図示せず)の作動負荷および作動頻度を低下させることができる。
【0048】
また、車両の減速時には、左右の前輪WFL、WFRから、左右の出力軸SFL、SFRや差動装置Dなどを介して第1および第2モータ13、14に伝達される動力を用いて、両モータ13、14で発電制御を行うことができ、それにより、車両の走行エネルギを回収することができる。
【0049】
次に、図6を参照しながら、本発明の第2実施形態による動力伝達装置について説明する。この動力伝達装置では、第1実施形態による動力伝達装置Tとは異なり、第1および第2モータ13、14はそれぞれ、第3サンギヤS3およびキャリア部材11に、直結されておらず、減速装置を介して連結されている。図6において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0050】
第1ロータ13bは、回転軸16には取り付けられておらず、第1ロータ13bおよび回転軸16にはそれぞれ、ギヤ41およびギヤ42が一体に取り付けられており、これらのギヤ41、42は互いに噛み合っている。第1モータ13の動力は、両ギヤ41、42によって減速された状態で、第3サンギヤS3に伝達される。また、第2ロータ14bは、キャリア部材11には取り付けられておらず、第2ロータ14bおよびキャリア部材11の基部11aにはそれぞれ、ギヤ43およびギヤ44が一体に取り付けられており、これらのギヤ43、44は互いに噛み合っている。第2モータ14の動力は、両ギヤ43、44によって減速された状態で、キャリア部材11に伝達される。
【0051】
以上のように、第2実施形態では、第1モータ13が、ギヤ41およびギヤ42から成る減速装置を介して第3サンギヤS3に連結されており、第2モータ14が、ギヤ43およびギヤ44から成る減速装置を介してキャリア部材11に連結されている。これにより、第1および第2モータ13、14のトルク(制動力)を、増大させた状態で第3サンギヤS3およびキャリア部材11にそれぞれ伝達することができるので、第1および第2モータ13、14の小型化を図ることができる。その他、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0052】
次に、図7を参照しながら、本発明の第3実施形態による動力伝達装置について説明する。この動力伝達装置では、第2実施形態による動力伝達装置とは異なり、第1および第2モータ13、14はそれぞれ、一対のギヤから成る減速装置ではなく、遊星歯車式の第1減速装置RG1および第2減速装置RG2を介して、第3サンギヤS3およびキャリア部材11に連結されている。図7において、第1および第2実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付している。以下、第1および第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0053】
この第1減速装置RG1は、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置であり、第1サンギヤSR1と、第1サンギヤSR1の外周に設けられた第1リングギヤRR1と、両ギヤSR1、RR1に噛み合う複数の第1ピニオンギヤPR1と、第1ピニオンギヤPR1を回転自在に支持する第1キャリアCR1を有している。
【0054】
第1サンギヤSR1は、中空の回転軸17に一体に取り付けられている。この回転軸17は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、その内側には、左出力軸SFLが、相対的に回転自在に配置されている。また、第1ロータ13bは、前述した回転軸16ではなく、回転軸17に一体に取り付けられており、回転軸17および第1サンギヤSR1とともに回転自在である。また、第1リングギヤRR1は、ケースCAに固定されている。第1キャリアCR1は、回転軸16に一体に取り付けられており、回転軸16および第3サンギヤS3とともに回転自在である。以上の構成の第1減速装置RG1によって、第1モータ13の動力は、減速された状態で第3サンギヤS3に伝達される。
【0055】
上記の第2減速装置RG2は、第1減速装置RG1と同様、シングルピニオンタイプの遊星歯車装置であり、第2サンギヤSR2と、第2サンギヤSR2の外周に設けられた第2リングギヤRR2と、両ギヤSR2、RR2に噛み合う第2ピニオンギヤPR2を有している。
【0056】
第2サンギヤSR2は、中空の回転軸18に一体に取り付けられている。この回転軸18は、軸受け(図示せず)に回転自在に支持されており、その内側には、前述した回転軸15および左出力軸SFLが、相対的に回転自在に配置されている。また、第2ロータ14bは、キャリア部材11ではなく、回転軸18に一体に取り付けられており、回転軸18および第2サンギヤSR2とともに回転自在である。また、第2リングギヤRR2は、ケースCAに固定されている。第2ピニオンギヤPR2は、3連ピニオンギヤ12と同じ個数(4つ。2つのみ図示)であり、キャリア部材11の支軸11bに回転自在に支持されている。以上の構成の第2減速装置RG2によって、第2モータ14の動力は、減速された状態でキャリア部材11に伝達される。
【0057】
以上のように、第3実施形態では、第1モータ13が、第1減速装置RG1を介して第3サンギヤS3に連結されており、第2モータ14が、第2減速装置RG2を介してキャリア部材11に連結されている。これにより、第2実施形態と同様、第1および第2モータ13、14のトルク(制動力)を、増大させた状態で第3サンギヤS3およびキャリア部材11にそれぞれ伝達することができるので、第1および第2モータ13、14の小型化を図ることができる。その他、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0058】
また、3連ピニオンギヤ12および第2ピニオンギヤPR2を支持するキャリア部材11を共用しているので、その分、動力伝達装置の小型化および搭載性の向上を図ることができる。
【0059】
また、図8に示すように、本発明による動力伝達装置は、FR(フロントエンジン−リヤドライブ)式の車両VFRにも適用可能である。この車両VFRでは、動力伝達装置TAは、車両VFRの後部に配置されており、その差動装置Dの前述したリングギヤ(図示せず)は、プロペラシャフトPSを介してT/M4に連結されている。また、差動装置Dのサンギヤおよびキャリア(いずれも図示せず)はそれぞれ、左右の出力軸SRL、SRRを介して、左右の後輪WRL、WRRに連結されている。以上の構成により、エンジントルクは、T/M4、プロペラシャフトPS、動力伝達装置TAおよび左右の出力軸SRL、SRRをそれぞれ介して、左右の後輪WRL、WRRに伝達される。この場合にも、第1〜第3実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0060】
さらに、図9に示すように、本発明による動力伝達装置は、全輪駆動式の車両VAWにも適用可能である。この車両VAWでは、左右の出力軸SFL、SFRは、フロントデフDF、センターデフDCおよびT/M4を介して、エンジン3に連結されている。また、動力伝達装置TBは、車両VAWの後部に配置されており、その差動装置Dのリングギヤ(図示せず)は、プロペラシャフトPSおよびセンターデフDCを介してT/M4に連結されている。また、差動装置Dのサンギヤおよびキャリア(いずれも図示せず)はそれぞれ、左右の出力軸SRL、SRRを介して、左右の後輪WRL、WRRに連結されている。
【0061】
以上の構成により、エンジントルクは、T/M4を介してセンターデフDCに伝達され、フロントデフDFおよびプロペラシャフトPSに分配される。フロントデフDFに分配されたトルクは、左右の出力軸SFL、SFRをそれぞれ介して、左右の前輪WFL、WFRに伝達される。プロペラシャフトPSに分配されたトルクは、動力伝達装置TBおよび左右の出力軸SRL、SRRをそれぞれ介して、左右の後輪WRL、WRRに伝達される。この場合にも、第1〜第3実施形態による効果を同様に得ることができる。
【0062】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、キャリア部材11を、左出力軸SFL(SRL)の周りに回転自在に設けているが、右出力軸SFR(SRR)の周りに回転自在に設けてもよい。また、実施形態では、第1〜第3ピニオンギヤP1〜P3を、互いに一体に形成しているが、別個に形成した後に、互いに一体に連結してもよい。
【0063】
さらに、実施形態では、第1および第2モータ13、14で発電され、回収された電力を、バッテリ23に充電(蓄積)しているが、キャパシタ(蓄電装置)のような他の電気エネルギ蓄積装置に蓄積してもよい。あるいは、第1および第2モータ13、14とは異なる他のモータと、この他のモータに連結されたフライホイール(運動エネルギ蓄積装置)とを用い、第1および第2モータ13、14で発電され、回収された電力を他のモータで動力に変換するとともに、変換された動力を、運動エネルギとしてフライホイールに蓄積してもよい。さらには、上記のような電気・運動エネルギ蓄積装置を設けずに、第1および第2モータ13、14で発電され、回収された電力を、電力消費装置(他のモータなど)に直接、供給してもよい。あるいは、第1および第2モータ13、14に代えて、回転エネルギを圧力エネルギに変換可能な油圧ポンプを用いるとともに、この油圧ポンプで変換された圧力エネルギをアキュームレータに蓄積してもよい。
【0064】
また、実施形態では、本発明における回転電機として、ACモータである第1および第2モータ13、14を用いているが、回転エネルギと電気エネルギの間でエネルギを変換可能な他の装置、例えばDCモータを用いてもよい。さらに、実施形態では、バッテリ23が第1および第2モータ13、14に共用されているが、バッテリを別個に設けてもよい。
【0065】
また、実施形態では、本発明による動力伝達装置を、左右の出力軸SFL、SFR(SRL、SRR)の間で互いにトルクを伝達するように構成しているが、全輪駆動式の車両における前後の駆動輪の間でトルクを伝達するように構成してもよい。あるいは、エンジン3などの動力源によっては直接、駆動されない非駆動輪の間でトルクを伝達するように構成してもよい。さらに、実施形態は、本発明を車両に適用した例であるが、本発明は、これに限らず、例えば船舶や航空機などに適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
T 動力伝達装置
SFL 左出力軸(一方の回転軸)
SFR 右出力軸(他方の回転軸)
11 キャリア部材
P1 第1ピニオンギヤ
P2 第2ピニオンギヤ
P3 第3ピニオンギヤ
12 3連ピニオンギヤ
13 第1モータ(第1回収装置、回転電機)
14 第2モータ(第2回収装置、回転電機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに差回転が可能な2つの回転軸の間で互いにトルクを伝達するための動力伝達装置であって、
前記2つの回転軸のうちの一方の回転軸の周りに回転自在に設けられたキャリア部材と、
互いに異なるピッチ円直径を有するとともに互いに一体に設けられた第1ピニオンギヤ、第2ピニオンギヤおよび第3ピニオンギヤで構成され、前記キャリア部材に回転自在に支持された3連ピニオンギヤと、
回転エネルギを回収可能な第1回収装置と、
回転エネルギを回収可能な第2回収装置と、を備え、
前記第1ピニオンギヤは、前記2つの回転軸のうちの他方の回転軸に連結され、前記第2ピニオンギヤは前記一方の回転軸に連結され、前記第3ピニオンギヤは、前記第1回収装置に連結されるとともに、前記キャリア部材は、前記第2回収装置に連結されており、
前記第1回収装置により回転エネルギを回収することによって、前記キャリア部材を前記一方の回転軸に対して増速させるとともに、前記第2回収装置により回転エネルギを回収することによって、前記キャリア部材を前記一方の回転軸に対して減速させることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記第1および第2回収装置の各々は、回転エネルギと電気エネルギの間でエネルギを変換可能な回転電機を有し、
前記第3ピニオンギヤは、前記第1回収装置の前記回転電機に連結されるとともに、前記キャリア部材は、前記第2回収装置の前記回転電機に連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−96531(P2013−96531A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241371(P2011−241371)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】