説明

化合物及び界面活性剤

【課題】樹脂改質剤や繊維防汚加工剤として有効な反応性界面活性剤を提供する。
【解決手段】一般式:
次の一般式(1)で表わされる化合物:
【化1】


式中、Rは水素原子又はメチル基、Rfはフッ素原子置換の炭化水素基又はアシル基、AO’は炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基又はスチレンオキサイド残基から選択された基を表し、m’は1〜500の数を表し、Xは水素原子又は親水基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物に関し、又、本発明は新規な反応性界面活性剤に関し、更に、本発明は該反応性界面活性剤の具体的用途に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤とは乳化、分散、洗浄、湿潤、起泡等の幅広い性能を有している。それらの諸性能を利用して、従来から繊維をはじめとし、紙、ゴム、プラスチック、金属、塗料、顔料、土木建築等あらゆる分野に利用されている。特に最近は界面活性剤を使用した末端商品の高性能化への動きが活発化してきており、それに伴って、界面活性剤が有する副次的な欠点も指摘されている。
例えば、界面活性剤は塗料、印刷インキ、接着剤などではその製品の製造時、あるいは製品の安定化、更には作業性などの点で欠かすことができないものとして製品中に含有される。それら界面活性剤を含む製品が、塗布、印刷あるいは接着、粘着等の作業で現実に使用される場合は、本来界面活性剤は不要であり、むしろ存在している界面活性剤によって、塗膜、印刷面、接着皮膜等の耐水性、耐油性等の性能を悪化させる場合が多い。
【0003】
又、ポリマーを乳化重合によって製造する際、従来乳化重合用乳化剤としてアルキル硫酸塩、アルキルベンゼン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のアニオン界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、プルロニック型界面活性剤等の非イオン性界面活性剤が使用されていた。乳化重合用乳化剤は重合の開始反応や生成反応に関与するだけでなく、生成したエマルジョンの機械安定性、化学的安定性、凍結安定性及び貯蔵安定性等にも関与し、更にエマルジョンの粒子径、粘性及び起泡性等のエマルジョン物性、フィルム化した時の耐水性、耐候性、接着性、耐熱性等のフィルム物性にも大きな影響を及ぼすことが知られている。
しかし、上記の通常の乳化剤を使用して乳化重合したエマルジョンには乳化剤に起因するエマルジョンの泡立ちが多くなること、又、エマルジョンからフィルムを作製した場合に乳化剤が遊離した状態でフィルム中に残るため、接着性、耐水性、耐候性耐熱性等のフィルム物性の低下などの問題点が指摘されている。
【0004】
又、従来懸濁重合用分散剤としては、工業的にビニル系樹脂を製造する場合、水性媒体中で分散安定剤の存在下に塩化ビニル系モノマーを分散させ、油溶性触媒を用いて重合を行う懸濁重合法が広く実施されている。このような樹脂の品質を支配する因子としては重合率、水/モノマー比、重合温度、触媒の種類及び量、重合層の型式、攪拌速度あるいは分散安定剤の種類、量等が挙げられるが、中でも分散安定剤の種類による影響が非常に大きい事が知られている。
従来のビニル系樹脂の懸濁重合用分散剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチンあるいはポリビニルアルコール等の水溶性高分子などが挙げられる。しかしこの様な分散剤は重合後のビニル樹脂中にフリーで残存してしまい、それに起因してビニル樹脂の耐水性、耐候性、耐久性等の樹脂の物性を下げてしまうという問題があった。
又、ビニル系樹脂改質剤としては、従来、ビニル重合体の改質剤として特開平1−174511号公報(特許文献1)があるが、このような改質剤を用いた場合、単量体との相溶性が悪いために均一な共重合体が得られなかった。相溶性を改良する試みとして、特開平1−174512号公報(特許文献2)があるが、尚充分な相溶性を得るには至らず、又重合体に対する改質効果も不充分であるという問題点があった。
又、一般にポリエステル繊維は天然繊維に比べて疎水性が高く、親水性に乏しい。この点が衣料材料において着心地の悪さ、静電気の蓄積、空気中のほこりの吸尽、油汚れの落ちにくさ、更に洗濯再汚染による黒ずみ等の欠点となっている。これらの欠点を取り除くため従来より様々な検討が行われている。
【0005】
ポリエステル繊維に対する防汚加工法としては、ポリエステル繊維に対して親和性を高めた水溶性ポリエステル樹脂を、吸着させる方法(特公昭53−47437号)(特許文献3)や、スチーマーを使用してパッドスチーム法によって吸着させる方法(特公昭51−2559号)(特許文献4)等があり、又、加工剤をポリエステルにグラフト重合させることによって防汚性・親水性を付与するものとしては特開平4−214467号(特許文献5)や特開平4−214466号(特許文献6)等もある。しかし、未だ性能的に十分な方法はなく、十分な防汚性を有するポリエステル繊維は得られていない。
一般に、乳化重合、懸濁重合等の条件は様々である。重合されるポリマーの種類、分子量、製造設備の条件、コスト、得られたポリマーの用途などにより重合条件は多種多様であり、それぞれの条件に適した乳化剤、分散剤が必要である。これは樹脂改質剤やポリエステル繊維の防汚加工においても同様である。
【0006】
【特許文献1】特開平1−174511号公報
【特許文献2】特開平1−174512号公報
【特許文献3】特公昭53−47437号公報
【特許文献4】特公昭51−2559号公報
【特許文献5】特開平4−214467号公報
【特許文献6】特開平4−214466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
界面活性剤の性能は主に親水基と疎水基のバランスにより決定されるが、従来の反応性界面活性剤では疎水性が十分でない場合があり、業界には新たな疎水基を有する反応性界面活性剤に対する要求があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで発明者らは鋭意検討し、疎水基としてフッ素原子を有する炭化水素基を有する新たな化合物及びその用途を開発し本発明を完成させるに至った。即ち本発明は、次の一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rfは1以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭化水素基又は1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたアシル基を表し、AO’は炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基又はスチレンオキサイド残基から選択された基を表し、m’は1〜500の数を表し、Xは水素原子又は親水基を表す〔但し、−SOM、−R−COOM、−PO、−POMH 又は −CO−R−COOM [式中、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム、アルキルアミンのアンモニウム又はアルカノールアミンのアンモニウム(但し、アルカリ土類金属原子は1/2)を表わし、Rはアルキレン基を表わし、Rは2塩基酸又はその無水物の残基を表わす]で表わされる親水基を除く〕
で表わされる化合物であり、又本発明は該化合物からなる界面活性剤、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂改質剤及びポリエステル繊維防汚加工剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化合物を乳化重合乳化剤又は懸濁重合分散剤として使用すれば、乳化重合又は懸濁重合で得られた樹脂の耐水性、耐候性、耐久性等を低下させることがない。又、樹脂改質剤として使用すれば樹脂に様々な物性を付与することができる。又、ポリエステル繊維防汚加工剤として使用すれば、ポリエステル繊維に防汚性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を表す。又、Rfは1以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭化水素基又は1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたアシル基を表す。炭化水素基としては例えば、フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアリール基、フルオロシクロアルキル基、フルオロシクロアルケニル基等が挙げられる。
【0013】
フルオロアルキル基としては例えば、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロイソブチル、パーフルオロターシャリブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロイソペンチル、パーフルオロネオペンチル、パーフルオロターシャリペンチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロヘプチル、パーフルオロオクチル、パーフルオロ2−エチルヘキシル、パーフルオロノニル、パーフルオロデシル、パーフルオロウンデシル、パーフルオロドデシル、パーフルオロトリデシル、パーフルオロイソトリデシル、パーフルオロテトラデシル、パーフルオロヘキサデシル、パーフルオロオクタデシル、パーフルオロイコシル、パーフルオロドコシル、パーフルオロテトラコシル、パーフルオロトリアコンチル、パーフルオロ2−オクチルドデシル、パーフルオロ2−ドデシルヘキサデシル、パーフルオロ2−テトラデシルオクタデシル等のC2n+1で表されるパーフルオロアルキル基の他、トリフルオロエチル、ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロブチル、ノナフルオロペンチル、ウンデカフルオロヘキシル、トリデカフルオロヘプチル、ペンタデカフルオロオクチル、ヘプタデカフルオロノニル、ノナデカフルオロデシル、ヘンイコサフルオロウンデシル、トリコサフルオロドデシル、ペンタコサフルオロトリデシル、ヘプタコサフロオロテトラデシル、ノナコサフルオロペンタデシル等のC2n−1又はF(CFn−1CH―で表わされるフルオロアルキル基、ジフルオロエチル、テトラフルオロプロピル、ヘキサフルオロブチル、オクタフルオロペンチル、デカフルオロヘキシル、ドデカフルオロヘプチル、テトラデカフルオロオクチル、ヘキサデカフルオロノニル、オクタデカフルオロデシル、イコサフルオロウンデシル、ドコサフルオロドデシル、テトラコサフルオロトリデシル、ヘキサコサフルオロテトラデシル、オクタコサフルオロペンタデシル、トリアコンタフルオロヘキサデシル等のC2n−2又はH(CFn−1CH―で表わされるフルオロアルキル基、モノフルオロエチル、トリフルオロプロピル、ペンタフルオロブチル、ヘプタフルオロペンチル、ノナフルオロヘキシル、ウンデカフルオロヘプチル、トリデカフルオロオクチル、ペンタデカフルオロノニル、ヘプタデカフルオロデシル、ノナデカフルオロウンデシル、ヘンイコサフルオロドデシル、トリコサフルオロトリデシル、ペンタコサフルオロテトラデシル、ヘプタコサフルオロペンタデシル、ノナコサフルオロヘキサデシル等のC2n−3又はF(CFn−2CHCH―で表わされるフルオロアルキル基、モノフルオロプロピル、トリフルオロブチル、ペンタフルオロペンチル、ヘプタフルオロヘキシル、ノナフルオロヘプチル、ウンデカフルオロオクチル、トリデカフルオロノニル、ペンタデカフルオロデシル、ヘプタデカフルオロウンデシル、ノナデカフルオロドデシル、ヘンイコサフルオロトリデシル、トリコサフルオロテトラデシル、ペンタコサフルオロペンタデシル、ヘプタコサフルオロヘキサデシル等のC2n−5又はF(CFn−3CHCHCH―で表わされるフルオロアルキル基、モノフルオロヘキシル、トリフルオロヘプチル、ペンタフルオロオクチル、ヘプタフルオロノニル、ノナフルオロデシル、ウンデカフルオロウンデシル、トリデカフルオロドデシル、ペンタデカフルオロトリデシル、ヘプタデカフルオロテトラデシル、ノナデカフルオロペンタデシル、ヘンイコサフルオロヘキサデシル等のC2n−1112又はF(CFn−6(CH―で表わされるフルオロアルキル基等が挙げられる。
【0014】
フルオロアルケニル基としては例えば、パーフルオロプロペニル、パーフルオロイソプロペニル、パーフルオロブテニル、パーフルオロイソブテニル、パーフルオロペンテニル、パーフルオロイソペンテニル、パーフルオロヘキセニル、パーフルオロヘプテニル、パーフルオロオクテニル、パーフルオロノネニル、パーフルオロデセニル、パーフルオロウンデセニル、パーフルオロドデセニル、パーフルオロテトラデセニル、パーフルオロオレイル等のパーフルオロアルケニル基の他、トリフルオロブテニル、ペンタフルオロペンテニル、ヘプタフルオロヘキセニル、ノナフルオロヘプテニル、ウンデカフルオロオクテニル、トリデカフルオロノネニル、ペンタデカフルオロデセニル、ヘプタデカフルオロウンデセニル、ノナデカフルオロドデセニル、ヘンイコサフルオロテトラデセニル、等のC2n−5又はF(CFn−3―CH=CHCH―で表わされるフルオロアルケニル基等が挙げられる。
【0015】
フルオロアリール基としては例えば、パーフルオロフェニル、パーフルオロトルイル、パーフルオロキシリル、パーフルオロクメニル、パーフルオロメシチル、パーフルオロベンジル、パーフルオロフェネチル、パーフルオロスチリル、パーフルオロシンナミル、パーフルオロンズヒドリル、パーフルオロトリチル、パーフルオロエチルフェニル、パーフルオロプロピルフェニル、パーフルオロブチルフェニル、パーフルオロペンチルフェニル、パーフルオロヘキシルフェニル、パーフルオロヘプチルフェニル、パーフルオロオクチルフェニル、パーフルオロノニルフェニル、パーフルオロデシルフェニル、パーフルオロウンデシルフェニル、パーフルオロドデシルフェニル、パーフルオロスチレン化フェニル、パーフルオロp−クミルフェニル、パーフルオロフェニルフェニル、パーフルオロベンジルフェニル等のパーフルオロアリール基等の他、モノフルオロフェニル、ジフルオロフェニル、トリフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、モノフルオロトルイル、(パーフルオロメチル)フェニル、(トリフルオロメチル)モノフルオロフェニル、(パーフルオロエチル)フェニル、(パーフルオロプロピル)フェニル、(パーフルオロブチル)フェニル、(パーフルオロペンチル)フェニル、(パーフルオロヘキシル)フェニル、(パーフルオロヘプチル)フェニル、(パーフルオロオクチル)フェニル、(パーフルオロノニル)フェニル、(パーフルオロデシル)フェニル、(パーフルオロウンデシル)フェニル、(パーフルオロドデシル)フェニル等が挙げられる。
【0016】
フルオロシクロアルキル基、フルオロシクロアルケニル基としては例えば、パーフルオロシクロペンチル、パーフルオロシクロヘキシル、パーフルオロシクロヘプチル、パーフルオロメチルシクロペンチル、パーフルオロメチルシクロヘキシル、パーフルオロメチルシクロヘプチル、パーフルオロシクロペンテニル、パーフルオロシクロヘキセニル、パーフルオロシクロヘプテニル、パーフルオロメチルシクロペンテニル、パーフルオロメチルシクロヘキセニル、パーフルオロメチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0017】
フルオロアシル基としては、前述のフッ化炭化水素基の結合末端にカルボニル基が結合した基が挙げられる。例えば、パーフルオロアセチル、パーフルオロプロピオニル、パーフルオロブチリル、パーフルオロイソブチリル、パーフルオロバレリル、パーフルオロイソバレリル、パーフルオロピバリル、パーフルオロドデカノイル、パーフルオロテトラデカノイル、パーフルオロヘキサデカノイル、パーフルオロオクタデカノイル、パーフルオロアクリロイル、パーフルオロプロピオロイル、パーフルオロメタクロイル、パーフルオロクロトノイル、パーフルオロオレイロイル、パーフルオロベンゾイル、パーフルオロフタロイル、パーフルオロスクシニル等のパーフルオロアシル基の他、モノフルオロアセチル、ジフルオロアセチル、テトラフルオロプロピオニル、ヘキサフルオロブチリル、オクタフルオロバレリル、ドコサフルオロドデカノイル、オクタコサフルオロテトラデカノイル、トリアコンタフルオロヘキサデカノイル等が挙げられる。
【0018】
以上の1以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭化水素基又は1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたアシル基のなかでも、F(CFn−1CH―、H(CFn−1CH―又はパーフルオロアシル基が好ましい。
一般式(1)のAO’は、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン等のオキシアルキレン基又はスチレンオキサイド残基である。AO’部はエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等のアルキレンオキサイド又はスチレンオキサイドを付加重合することにより得ることができ、付加させるアルキレンオキサイド等により、AO’が決定される。付加させるアルキレンオキサイド等は単独重合、2種類以上のランダム共重合、ブロック共重合又はランダム/ブロック共重合であってよい。付加の方法は公知の方法であってよい。AO’はオキシエチレン基が好ましく、2種以上のオキシアルキレン基又はスチレンオキサイド残基を用いる場合は1種はオキシエチレン基であることが、親水性を十分得るために好ましい。重合度m’は1〜1,000の数であり、m’は1〜500、好ましくは5〜100である。
一般式(1)において、Xは水素原子(水酸基)又は親水基〔但し、−SOM、−R−COOM、−PO、−POMH 又は −CO−R−COOM
[式中、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム、アルキルアミンのアンモニウム又はアルカノールアミンのアンモニウム(但し、アルカリ土類金属原子は1/2)を表わし、Rはアルキレン基を表わし、Rは2塩基酸又はその無水物の残基を表わす]で表わされる親水基を除く〕を表す。
【0019】
本発明の化合物は界面活性剤として使用することができ、又、特にビニル基等のラジカル重合系と反応性を有する界面活性剤として乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂用改質(撥水性向上、親水性調節、相溶性向上、帯電防止性向上、防曇性向上、耐水性向上、接着性向上、染色性向上、造膜性向上、耐候性向上、耐ブロッキング性向上等)剤、繊維加工助剤、無滴剤、繊維防汚加工剤等に使用することができる。又、共重合体型界面活性剤(例えば特願平8―271026号等)の原料としても使用することができる。
【0020】
本発明の界面活性剤を乳化重合用乳化剤として使用する場合は、従来公知の乳化重合用乳化剤の通常の使用量の範囲で任意に使用することができるが、概ね原料モノマーに対して、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.2〜10重量%使用することができる。又、本発明の乳化重合用乳化剤と他の反応性又は非反応性乳化剤との併用も可能である。又、乳化重合する単量体に特に制限はないが、好ましくはアクリレート系エマルジョン、スチレン系エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、SBR(スチレン/ブタジエン)エマルジョン、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)エマルジョン、BR(ブタジエン)エマルジョン、IR(イソプレン)エマルジョン、NBR(アクリロニトリル/ブタジエン)エマルジョン等に好適に使用できる。
【0021】
アクリレート系エマルジョンとしては例えば、(メタ)アクリル酸(エステル)同士、(メタ)アクリル酸(エステル)/スチレン、(メタ)アクリル酸(エステル)/酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸(エステル)/アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸(エステル)/ブタジエン、(メタ)アクリル酸(エステル)/塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アリルアミン、(メタ)アクリル酸(エステル)/ビニルピリジン、(メタ)アクリル酸(エステル)/アルキロールアミド、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N―ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸(エステル)/N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0022】
スチレン系エマルジョンとしては、スチレン単独の他例えば、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/ブタジエン、スチレン/フマルニトリル、スチレン/マレインニトリル、スチレン/シアノアクリル酸エステル、スチレン/酢酸フェニルビニル、スチレン/クロロメチルスチレン、スチレン/ジクロロスチレン、スチレン/ビニルカルバゾール、スチレン/N,N−ジフェニルアクリルアミド、スチレン/メチルスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン、スチレン/アクリロニトリル/メチルスチレン、スチレン/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール、スチレン/マレイン酸等が挙げられる。
【0023】
酢酸ビニル系エマルジョンとしては、酢酸ビニル単独の他例えば、酢酸ビニル/スチレン、酢酸ビニル/塩化ビニル、酢酸ビニル/アクリロニトリル、酢酸ビニル/マレイン酸(エステル)、酢酸ビニル/フマル酸(エステル)、酢酸ビニル/エチレン、酢酸ビニル/プロピレン、酢酸ビニル/イソブチレン、酢酸ビニル/塩化ビニリデン、酢酸ビニル/シクロペンタジエン、酢酸ビニル/クロトン酸、酢酸ビニル/アクロレイン、酢酸ビニル/アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0024】
本発明の界面活性剤を懸濁重合用分散剤として使用する場合は、従来公知の懸濁重合用分散剤の通常の使用量の範囲で任意に使用することができるが、概ね原料モノマーに対して、好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは0.2〜10重量%使用することができる。又、本発明の懸濁重合用分散剤と他の反応性又は非反応性分散剤、例えばポリビニルアルコール等との併用も可能である。又、懸濁重合する単量体に特に制限はなく、上記の重合性炭素−炭素二重結合を有する単量体の単独重合及び共重合に使用できるが、好ましくはハロゲン化オレフィン系、酢酸ビニル系等の重合に好適に使用できる。
【0025】
ハロゲン化オレフィン系の重合としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル/マレイン酸(エステル)、塩化ビニル/フマル酸(エステル)、塩化ビニル/酢酸ビニル、塩化ビニル/塩化ビニリデン、塩化ビニリデン/酢酸ビニル、塩化ビニリデン/安息香酸ビニル等が挙げられる。
酢酸ビニル系の重合については上記と同様である。
【0026】
又本発明の界面活性剤はフッ素原子を含有することからフッ化オレフィンの乳化重合及び懸濁重合に乳化重合用乳化剤又は懸濁重合用分散剤として使用することができる。フッ化オレフィンとしては例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロフルオロエチレン、クロロジフルオロエチレン、ジクロロフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。
【0027】
本発明の界面活性剤を乳化重合用乳化剤又は懸濁重合用分散剤として使用する場合は重合可能な二重結合基を有するため、従来、非反応型乳化剤を使用した場合に問題となっていたエマルション又はサスペンジョンの泡立ち、エマルション又はサスペンジョンから得られるポリマーの諸物性(耐水性・耐候性・接着性等)の低下、製造工程において出てくる排水中に乳化剤を含有するために起こる排水負荷、環境破壊等の種々の問題点を解決出来る。又、析出操作時に出る排水に該乳化剤又は該分散剤が含まれないため、排水負荷・環境破壊に繋がらないという利点を有する。この点については特にABS樹脂の製造時に顕著である。
【0028】
本発明の界面活性剤を樹脂改質剤として使用する場合、改質する樹脂の物性は例えば、親水性の調節、相溶性の向上、帯電防止性の向上、防曇性の向上、耐水性の向上、接着性の向上、染色性の向上、造膜性の向上、耐候性の向上、耐ブロッキング性の向上等である。改質の対象となる樹脂は特に限定されず、前記単量体の重合によって製造されるあらゆる樹脂に使用可能である。又、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリールエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等にも使用することができる。好ましくは塩化ビニル、塩化ビニリデン等のポリハロゲン化オレフィン類、エチレン、プロピレン等のポリα―オレフィン類等である。本発明の樹脂改質剤は、樹脂表面に塗工したり樹脂を加工したりする際に練りこむ等して添加することができる。又、樹脂製造時に単量体成分の一つとして他の単量体と重合させることにより樹脂の分子中に本発明の樹脂改質剤が組み込まれ、永久帯電防止等の永久改質効果を得ることができる。
【0029】
本発明の樹脂改質剤は、構造中にエーテル鎖を含有する化合物を用いることにより、単量体に対して優れた相溶性を示す。又、AO’は、必要に応じて該オキシアルキレン基の重合度(m’)及び構成するオキシアルキレン基の種類を改質の目的及び単量体との相溶性に応じて選択することにより親水性を容易に調節することができる。このため本発明の樹脂改質剤は単量体との相溶性と重合体の改質効果を同時に向上させることができるものである。又、本発明の樹脂改質剤を使用する事により、使用された樹脂に永久帯電防止、防曇性を付与する事が可能である。
【0030】
本発明の樹脂改質剤の使用量は、単量体の種類、改質の目的、要求される性能などにより、種々変えることができるが、単量体に対して好ましくは0.1〜80重量%使用する事ができ、特に親水性の不充分な水溶性樹脂を親水性の高い重合体にしようとする場合等では、単量体に対して1〜80重量%使用することがより好ましい。その他の用途、例えば耐水性、接着性、帯電防止性、防曇性、染色性、造膜性、耐候性、耐ブロッキング性等の向上のため、あるいはポリマ−アロイのための重合体に相溶化性を付与しようとする場合等には単量体に対して0.1〜60重量%使用することが好ましい。
【0031】
本発明の樹脂改質剤を使用する場合には樹脂物性の改善のためにジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ジビニル化合物等を通常の使用量の範囲で任意に使用することができる。更に、乳化重合用乳化剤、懸濁重合用分散剤、樹脂改質剤として使用する場合は例えば金属酸化剤の存在によって樹脂ポリマーを架橋させることも可能である。
【0032】
本発明の界面活性剤をポリエステル繊維防汚加工剤として使用する場合は、ポリエステル繊維にグラフト重合させることにより、防汚性を付与することができる。グラフト重合の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば電離性放射線を照射する方法、イオン放電による方法、熱酸化やオゾン酸化による方法、ラジカル重合開始触媒を使用する方法、或いは無触媒でグラフト重合させる方法などが挙げられる。又、本発明の防汚加工剤には必要に応じて香料、蛍光剤等その他の任意の成分を配合することができる。本発明の防汚加工剤をグラフト重合したポリエステル繊維は、防汚加工処理をしていないポリエステル繊維に比べて、著しく防汚性や耐再汚染性が向上する他、静電気の帯電防止等にも有用な効果がある。
【0033】
本発明の化合物の製造方法は特に限定されないが、例えばXが水素原子の場合は(メタ)アリルグリシジルエーテルと1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたアルコール、フェノール又はカルボン酸等との反応物に公知の方法でアルキレンオキサイド等を付加することにより得ることができる。(メタ)アリルグリシジルエーテルと1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたアルコール、フェノール又はカルボン酸等との反応の完了を確認するには、例えば、IR吸収、エポキシ当量等を測定すれば終点を確認することできる。又必要に応じて触媒を使用することができる。使用できる触媒はエポキシの開環反応に使用するものであれば特に限定されず、例えば、第3級アミン、第4級アンモニウム塩、三フッ化ホウ素又はそのエーテル錯塩、塩化アルミニウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0034】
アルキレンオキサイド等との反応の際の反応条件は得に制限されないが、通常は室温〜150℃、圧力0.1〜10kg/cmGで、必要ならば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、三フッ化ホウ素等を触媒として使用できる。Xが親水基の場合は、上記反応で得られた化合物に親水基の導入反応を行う。
【実施例】
【0035】
以下本発明を実施例(製造例)により具体的に説明する。なお以下の実施例(製造例)等において%及び部は特に記載が無い限り重量基準である。
(製造例1)
1リットルガラス製四つ口フラスコに、C13OHを500g、触媒として水酸化ナトリウム5gを仕込み、80±5℃、圧力10mmHg以下の減圧下で1時間脱水を行った。次いで窒素で常圧に戻し、滴下ロートを使用してアリルグリシジルエ−テル175gを滴下した。滴下後80±5℃で5時間反応させ、本発明の化合物(1−a)を得た。
得られた本発明の化合物(1−a)1モルとエチレンオキサイド30モルとを加圧反応装置に仕込み、反応温度80℃、開始圧力4kg/cmで15時間反応させ、エチレンオキサイド30モルを付加させた化合物(1−b)を得た。
【0036】
(製造例2)
13OHの代わりにC1225OHを使用し触媒にトリエチルアミンを使用した以外は製造例1と同様の反応を行い、エチレンオキサイド60モルを付加させ、化合物(2)を得た。
【0037】
(製造例3)
13OHの代わりにC1837OHを使用し、アリルグリシジルエーテルの代わりにメタリルグリシジルエーテルを使用した以外は製造例1と同様の反応をいエチレンオキサイド90モルを付加させ、化合物(3)を得た。
【0038】
(製造例4)
実施例1で得られた本発明の化合物(1−a)200gを500mlのガラス製四つ口フラスコに入れ、0〜5℃に冷却した。これにクロロスルホン酸115gを滴下ロートを使用して滴下した。滴下後同温度で1時間攪拌を行い、発生するHClは窒素を吹き込んで除去した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、ナトリウム塩とし、化合物(4)を得た。
【0039】
(製造例5)
実施例1で得られた本発明の化合物(1−b)を、実施例4と同様にクロロスルホン酸で処理して硫酸エステルとし、本発明の化合物(5−a)を得た。更に水酸化カリウム水溶液で中和し、化合物(5−b)を得た。
【0040】
(製造例6)
13OHの代わりにC1837OHを使用し、アリルグリシジルエーテルの代わりにメタリルグリシジルエーテルを使用して、実施例1と同様の反応を行い、エチレンオキサイドを30モル付加させた化合物(6−a)を得た。
この生成物200gを500mlのガラス製四つ口フラスコに入れ、40℃にて五酸化リン37gを投入した。投入後、60℃に加熱し2時間反応させ、更に80℃にて2時間熟成した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、ソーダ塩とし、化合物(6−b)を得た。又、水酸化ナトリウム水溶液の代わりにアンモニア水溶液を使用して中和し、化合物(6−c)を得た。又、水酸化ナトリウム水溶液の代わりに水酸化マグネシウム水溶液を使用して中和し、化合物(6−d)を得た。
【0041】
(製造例7)
エチレンオキサイドの代わりにスチレンオキサイドを使用した以外は製造例1と同様の反応を行い、スチレンオキサイド30、60、90モルをそれぞれ付加させ、本発明の化合物(7−a)、(7−b)、(7−c)を得た。
【0042】
(製造例8)
製造例7で得られた本発明の化合物(7−a)200gを500mlのガラス製四つ口フラスコに入れ、40℃にて五酸化リン37gを投入した。投入後、60℃に加熱し2時間反応させ、更に80℃にて2時間熟成した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で中和してナトリウム塩とし、化合物(8)を得た。
【0043】
(製造例9)
製造例1で得られた本発明の化合物(1−a)200gを500mlのガラス製四つ口フラスコに入れ、60±5℃に冷却した。これにモノクロル酢酸64gを滴下ロートを使用して滴下した。滴下後同温度で1時間攪拌を行い、発生するHClは窒素を吹き込んで除去した。その後、水酸化ナトリウム水溶液で中和してナトリウム塩とし、化合物(9−a)を得た。又、水酸化ナトリウムの代わりに水酸化カリウム水溶液を使用して中和し、化合物(9−b)を得た。
【0044】
(製造例10)
化合物(1−a)の代わりに製造例1で得られた本発明の化合物(1−b)を使用し製造例9と同様にして化合物(10)を得た。
【0045】
(製造例11)
1リットルガラス製四つ口フラスコに、F(CFCHOHを500g、触媒として水酸化ナトリウム5gを仕込み、80±5℃、圧力10mmHg以下の減圧下で1時間脱水を行った。次いで窒素で常圧に戻し、滴下ロートを使用してアリルグリシジルエ−テル175gを滴下した。滴下後80±5℃で5時間反応させた。その後、前記反応物1モルとエチレンオキサイド10モルを加圧反応装置に仕込み、反応温度80℃、開始圧力4kg/cmで15時間反応させ、エチレンオキサイド10モルを付加させた化合物(11)を得た。
【0046】
(製造例12)
F(CFCHOHに代えてF(CFOH、及びエチレンオキサイド20モルを用いた以外は製造例11に準じて、化合物(12)を得た。
【0047】
(製造例13)
F(CFCHOHに代えてH(CFCHOH、及びエチレンオキサイド15モルを用いた以外は製造例11に準じて、化合物(13)を得た。
【0048】
(製造例14)
F(CFCHOHに代えてH(CFCHOH、及び親水基導入にスルファミン酸を用いた以外は製造例11に準じて、化合物(14)を得た。
【0049】
(製造例15)
F(CFCHOHに代えてH(CFCHOH、親水基導入に無水マレイン酸、中和に水酸化ナトリウムを用いた以外は製造例11に準じて化合物(15)を得た。
【0050】
(製造例16)
F(CFCHOHに代えてCFPhOH、親水基導入に無水フタル酸、中和に水酸化ナトリウムを用いた以外は製造例11に準じて、本発明の化合物(16)を得た。
【0051】
(製造例17)
13OHに代えてC13COOHを用いた以外は製造例1に準じて、化合物(17−a)及び(17―b)を得た。
【0052】
(製造例18)
1225OHに代えてC1225COOHを用いた以外は製造例2に準じて、化合物(18)を得た。
【0053】
(製造例19)
1837OHに代えてC1837COOHを用いた以外は製造例3に準じて、化合物(19)を得た。
【0054】
(製造例20)
13OHに代えてC13COOHを用いた以外は製造例4に準じて、化合物(20)を得た。
【0055】
(製造例21)
13OHに代えてC13COOHを用いた以外は製造例5に準じて、化合物(21−a)及び(21―b)を得た。
【0056】
(製造例22)
1837OHに代えてC1837COOHを用いた以外は製造例6に準じて、化合物(22−a)、(22−b)、(22−c)及び(22―d)を得た。
【0057】
(製造例23)
13OHに代えてC13COOHを用いた以外は製造例7に準じて、本発明の化合物(23−a)、(23―b)及び(23―c)を得た。
【0058】
(製造例24)
13OHに代えてC13COOHを用いた以外は製造例8に準じて、化合物(24)を得た。
【0059】
(製造例25)
13OHに代えてC13COOHを用いた以外は製造例9に準じて、化合物(25−a)及び(25―b)を得た。
【0060】
(製造例26)
13OHに代えてC13COOHを用いた以外は製造例10に準じて、化合物(26)を得た。
【0061】
(製造例27)
H(CFCHOHに代えてC17COOHを用いた以外は製造例15に準じて、化合物(27)を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
以上の製造例で得られた本発明の化合物(1−b)、(11)〜(13)を用いて以下実施例及び試験を行った。なお、比較品としては次の構造を有するものを使用した。
【0064】
【化2】

【0065】
(実施例1)
本発明の界面活性剤(1−b)、(11)〜(13)について、カ−ボンブラックの分散性能を測定した。試験方法は以下の通りである。
容器100mlの共栓付メスシリンダ−に上記界面活性剤1g、カ−ボンブラック10gを入れ、水にて溶解分散させ100mlに調整した。次に、そのメスシリンダ−を1分間に100回振とうした後、1時間25℃にて静置した。その後、液上面から30cc抜き取りグラスフィルタ−にて濾過した後、105℃にて、乾燥させ、グラスフィルタ−上の残査の重量より分散性を次式により測定した。
分散性能(%)={グラスフィルタ−の残査重量(g)/3}×100
【0066】
【表2】

【0067】
(実施例2)
本発明の乳化重合用乳化剤(1−b)、(11)〜(13)及び比較品(1)〜(3)を用いて、スチレンとブタジエン及びアクリロニトリルをモノマーとして乳化重合を行った。得られた重合体エマルジョンについて、その機械安定性、及び重合体エマルジョンから得られるポリマ−フィルムについて耐水性を測定した。
【0068】
<重合方法>
系内を窒素ガスで置換した高圧反応容器に水110gを仕込み、本発明の乳化重合用乳化剤(1−b)、(11)〜(13)及び比較例(1)〜(3)を4.0g溶解した。その後、過硫酸カリウム1gを添加後、ブタジエン90gを5時間かけてフィードした。その後、熟成を行いポリブタジエンラッテクスを得た。
このポリブタジエンラテックスに水150gを添加し、本発明の乳化重合用乳化剤(1−b)、(11)〜(13)及び比較例(1)〜(3)を2.0g溶解した。系内を窒素ガスで置換した後、過硫酸カリウムを0.5gを反応容器に加え、スチレンモノマー40g、アクリロニトリルモノマー10gの混合モノマーを2時間にわたってフィードした。フィード終了後4時間熟成しABS樹脂のラッテクスを得た。
【0069】
(実施例3)
本発明の乳化重合用乳化剤(1−b)、(11)〜(13)及び比較品(1)〜(3)を用いて、アクリル酸エチルをモノマーとして乳化重合を行った。得られた重合体エマルジョンについて、その機械安定性、発泡性及び重合体エマルジョンから得られるポリマーフィルムについて耐水性を測定した。
【0070】
<重合方法>
還流冷却器、撹拌機、滴下ロ−ト及び温度計を備えた反応容器に水120gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。別にアクリル酸メチルを80gに本発明の乳化重合用乳化剤(1−b)、(11)〜(13)及び比較例(1)〜(3)を4g溶解し、この内の8.4gと過流酸カリウム0.08g,亜硫酸水素ナトリウム0.04gを反応容器に加え、50℃で重合を開始した。そして残りのモノマー及び乳化重合用乳化剤を2時間にわたって反応器内に連続的に滴下し、滴下終了後2時間熟成しエマルジョンを得た。
以上の実施例2及び3で得られた樹脂に対して以下の試験法により試験を行った。
【0071】
<試験方法>
・機械安定性
エマルジョン50gをマロン法安定度試験器で10kg、1000rpmの条件で5分間回転させ、生成した凝塊物を100メッシュの金網で濾過し、濾過残渣を水で洗浄後、105℃、2時間乾燥し、この重量を固型分に対する重量%で表した。
・酸析性試験
ABSエマルジョン100gに1N塩酸を10ml添加し、50℃で5分間撹拌後、静置した。その後、ABS樹脂の凝集性を観察した。
◎:完全に樹脂が凝集し、上澄み液が透明。
○:一部の樹脂が凝集し、上澄み液は白濁。
×:凝集がない。
・フィルムの耐水性
0.2mmのポリマ−フィルムの水浸漬法による白化に要する時間により、
◎:1日以上、○:1時間以上、×:1時間未満という基準で評価した。
【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【0074】
(実施例4)
グラスライニングオ−トクレ−ブに、脱イオン水150g、本発明の懸濁重合用分散剤(1−b)、(11)〜(13)及び比較品(1)〜(3)を2g及びジ−2−エチルヘキシルパ−オキジカ−ボネ−ト0.2gを仕込み、オ−トクレ−ブ内を50mmHgとなるまで脱気して酸素を除いた後、塩化ビニルモノマ−を100g仕込み、回転数500rpmで撹拌下に57℃に昇温して重合を行った。重合開始時、オ−トグレ−ブ内の圧力は8.0kg/cm2Gであったが、重合開始7時間後、4.0kg/cm2Gとなったので、この時点で重合を停止し、未反応塩化ビニルモノマ−をパ−ジし、内容物を取り出し脱水乾燥した。得られた樹脂に対して以下の試験法により試験を行った。
【0075】
・粒径分布
タイラーメッシュ基準の金網を使用して乾式篩い分析により行った。
・耐水性
0.5mm厚の塩化ビニル樹脂のフィルムを作成し、50℃の温水に浸漬させ、フィルムが白化するまでに要する時間を測定した。
【0076】
【表5】

【0077】
(実施例5)
還流冷却器、撹拌器、滴下ロ−ト及び温度計を備えた反応容器にキシレン100gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。別にスチレン150g、本発明の樹脂改質剤(1−b)、(11)〜(13)及び(26)、及び比較品(1)〜(3)7.5g、過酸化ベンゾイル2g、ジ・タ−シャリ−ブチルパ−オキサイド1gの混合溶液を調製し、反応温度130℃で上記混合溶液を2時間にわたり反応器内に連続的に滴下した。更に、キシレン10g、過酸化ベンゾイル0.5g、ジ・ターシャリブチルパ−オキサイド0.5gの混合溶液を滴下し、2時間反応させた。その後冷却し、キシレンを90g添加し、重合体溶液を得た。
【0078】
(実施例6)
還流冷却器、撹拌器、滴下ロ−ト及び温度計を備えた反応容器にキシレン100gを仕込み、系内を窒素ガスで置換した。別にアクリル酸ブチル150g、メタクリル酸5g、本発明の樹脂改質剤(1−b)、(11)〜(13)及び比較品(1)〜(3)15g、過酸化ベンゾイル2g、ジ・タ−シャリ−ブチルパ−オキサイド0.5gの混合溶液を調製し、反応温度130℃で上記混合溶液を2時間にわたり反応器内に連続的に滴下した。更に、キシレン10g、過酸化ベンゾイル0.5g、ジ・ターシャリブチルパ−オキサイド0.5gの混合溶液を滴下し2時間反応させた。その後冷却しキシレンを90g添加し、重合体溶液を得た。
以上の実施例5、6で得られた各重合体溶液で0.2mm厚のポリマ−フィルムを常法により作製し、それぞれ以下の方法で防曇性、帯電防止性を評価した。
【0079】
<評価方法>
・フィルムの防曇性
上記ポリマ−フィルムに対する水の接触角を測定した。
・フィルムの表面固有抵抗値(帯電防止性)
上記ポリマ−フィルムを温度20℃、湿度50%の雰囲気中に24時間放置後、表面固有抵抗を測定した。その後、家庭用台所洗剤で洗浄処理し、イオン交換水で十分に洗った後、表面の水分を乾燥除去してから温度20℃、湿度50%の雰囲気中に24時間放置後、表面固有抵抗を測定した。
【0080】
【表6】

【0081】
【表7】

【0082】
(実施例7)
ポリプロピレンの樹脂ペレット100gと、本発明の樹脂改質剤(1−b)、(5―b)、(11)〜(15)、(17―b)、(22―b)及び(26)、及び比較品(1)〜(3)5gを混練機に仕込み、210℃で30分間混練した。その後、10cm×10cm×5cmの型に流し込み、試験片を作成した。
【0083】
(実施例8)
ポリスチレンの樹脂ペレット100gと、本発明の樹脂改質剤(1−b)、11)〜(13)及び比較品(1)〜(3)10gを混練機に仕込み、210℃で30分間混練した。その後、10cm×10cm×5cmの型に流し込み、試験片を作成した。
以上の試験片を、実施例5、6と同様の試験方法により、防曇性及び表面固有抵抗値を測定した。
【0084】
【表8】

【0085】
【表9】

【0086】
(実施例9)
上記本発明の防汚加工剤(1−b)、(11)〜(13)及び比較品(1)〜(3)をそれぞれ用いて以下の試験1から4を行った。モノクロルベンゼン0.6%、重合開始剤としてベンジルパーオキサイド0.1%、及び溶媒として水を混合撹拌して乳化液として、これに本発明の防汚加工剤及び比較品をそれぞれ2%加え重合用溶液とした。耐圧型ステンレスポットにポリエチレンテレフタレート繊維からなるポリエステル布(5×5cm、0.15gを5枚)と重合溶液1リットルを入れて密封し、油浴中温度110℃で2時間加熱撹拌して、ポリエステル布のグラフト重合を行い、防汚加工したポリエステル繊維からなる布を得た。
このようにして得られたポリエステル布及び未処理ポリエステル布に関して次のように防汚性を評価した。
【0087】
(a)試料
上述のポリエステル布5枚のうち1枚を汚れ除去性及び再汚染防止性判定用標準試験片とし、2枚を汚れ除去性の試料、残り2枚を汚染防止性の試料とした。
(b)汚れ除去性
汚染液:カーボンブラック1.0g、牛脂1.0g、流動パラフィン5.0g、
四塩化炭素1,000ccを混合したもの。
試料2枚に汚染液0.3mlを滴下し、24時間放置後、後述の洗濯条件(d−1)により洗濯し、洗濯後の汚れの残存状態を、JIS L−0805に規定された染色堅牢度用のグレースケールで等級判別(5:良〜1:不良)した(洗濯回数1)。上述の、汚染液の滴下、乾燥、洗濯、乾燥のサイクルを更に19回繰り返し、汚れの残存状態を同様にして判別した(洗濯回数20)。
(c)再汚染防止性
再汚染液:(b)で用いた汚染液20g、非イオン界面活性剤10gを水道水で
10リットルとしたもの。
再汚染液に試料2枚を入れ、浴比1:50にて90℃で10分撹拌した後、後述の洗濯条件(d−2)により洗濯して、乾燥し、この汚れをJIS L−0805に規定された染色堅牢度用のグレースケールで等級判別(5:良〜1:不良)した。(洗濯回数1)。上述の、再汚染液への浸漬、洗濯、乾燥のサイクルを更に19回繰り返し、同様にして汚れを判別した(洗濯回数20)。
(d)洗濯条件
(d−1):洗濯の条件は、一般家庭を模して設定した。即ち、家庭用洗濯機(2.2kg)を使用し、家庭用粉末合成洗剤を40g/30リットルになるように加え、水温40℃で5分間洗濯した。ついで、常温で5分間の溜めすすぎを2回行った。
(d−2):家庭用洗濯機(2.2kg)を使用し、常温で5分間の溜めすすぎを2回行った。
【0088】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)で表わされる化合物:
【化1】

式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rfは1以上の水素原子がフッ素原子で置換された炭化水素基又は1以上の水素原子がフッ素原子で置換されたアシル基を表し、AO’は炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基又はスチレンオキサイド残基から選択された基を表し、m’は1〜500の数を表し、Xは水素原子又は親水基〔但し、−SOM、−R−COOM、−PO、−POMH 又は −CO−R−COOM
[式中、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム、アルキルアミンのアンモニウム又はアルカノールアミンのアンモニウム(但し、アルカリ土類金属原子は1/2)を表わし、Rはアルキレン基を表わし、Rは2塩基酸又はその無水物の残基を表わす]で表わされる親水基を除く〕を表す。
【請求項2】
Rfが、F(CFn−1CH―、H(CFn'−1CH―(但し、nは1以上の数を表し、n’は2以上の数を表す)又はパーフルオロアシル基である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物からなる界面活性剤。
【請求項4】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物からなる乳化重合用乳化剤。
【請求項5】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物からなる懸濁重合用分散剤。
【請求項6】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物からなる樹脂改質剤。
【請求項7】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物からなるポリエステル繊維防汚加工剤。

【公開番号】特開2008−24942(P2008−24942A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203331(P2007−203331)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【分割の表示】特願平9−527481の分割
【原出願日】平成9年1月28日(1997.1.28)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】