説明

化合物合成方法、マイクロアレイ、酸転写用組成物及びバイオチップ製造用組成物

【課題】感度及び酸転写性が向上された酸転写膜を用いて化合物を合成する方法、マイクロアレイ、酸転写用組成物及びバイオチップ製造用組成物の提供。
【解決手段】第1化合物を基板に結合して第1膜を形成する工程、特定のアクリルアミド単位および特定のアクリル酸エステル単位を有する重合体A、感放射線性酸発生剤B、増感剤Cを含む酸転写用組成物を用いて、第1膜上に第2膜を形成する工程、第2膜を露光し、第2膜の露光部に生じた酸を第1膜に転写して保護基を除去する工程、露光後の第2膜を除去する工程及び保護基が除去された第1化合物に第2化合物を結合する工程からなる化合物合成法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物合成方法、マイクロアレイ、酸転写用組成物及びバイオチップ製造用組成物に関する。更に詳しくは、酸発生剤を含有しない膜にパターンを形成する技術において好適に用いることができる化合物合成方法、マイクロアレイ、酸転写用組成物及びバイオチップ製造用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に生体高分子を合成する方法は公知である。例えば、フォードル(Fordor)らは、紫外線に不安定な保護基を有する核酸及びアミノ酸を固体表面上に連結させ、フォトリソグラフィマスクを利用して固体表面の特定部分を露光させて保護基を除去した後、これを光に不安定な保護基を有する核酸又はアミノ酸と反応させて、特定位置で核酸又はアミノ酸を延ばしていく(重合する)新しい合成方法を発表した(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
この方法は、特定位置に特定の配列及び長さを有するオリゴヌクレオチドプローブを選択的に合成できるので、所望の配列及び長さを有する様々なオリゴヌクレオチドプローブを所定の位置に合成するのに有用な方法である。また、この方法は半導体製造工程に使われる極微細加工マスクを使用するので、オリゴヌクレオチドプローブの高集積合成に非常に有用である。前記文献では、従来のサンガー方法よりはるかに簡便で且つ速いオリゴヌクレオチドプローブを用いた配列決定方法は高集積のオリゴヌクレオチドプローブを作製するのに有用であることが提示された。しかしながら、光に不安定な保護基を除去する方法は、光源の光度に比例するため、チップの高集積化のための極微細加工に限界がある。
【0003】
一方、半導体製造工程で微細パターンを形成するために使われるフォトレジスト(photoresist:PR)を利用したフォトリソグラフィ工程は、DNAチップの集積率を高めるための必須技術として注目されてきた。半導体チップのサイズや容量はフォトリソグラフィ工程での解像度に左右されるために、フォトリソグラフィ工程が半導体とマイクロエレクトロニクスの発展を左右してきたとみられる。フォトリソグラフィ工程はPRの溶解度が露光部位と非露光部位とによって異なることを利用するものである。露光部位の溶解度が減少するシステムをネガティブとし、逆の場合をポジティブとして、半導体チップの製造には主にポジティブが使用される。このようなフォトリソグラフィ工程を利用すれば、限られた面積のチップ上により多くの数のオリゴヌクレオチドプローブが配列できる。これまで、フォトリソグラフィ工程を適用した例としては、一般的なPRを利用した方法(例えば、特許文献3参照)及びマイクロミラーを利用した方法が挙げられる。
【0004】
このうち、PRを利用したフォトリソグラフィ工程(以下、PR工程)は既に半導体産業のために広く開発又は商業化されている材料が使用できる長所がある。この方法によれば、光照射によりパターンが形成され、露光された部分を洗浄すれば、その表面に標準的な固相核酸合成反応が起きて、ヌクレオチドが結合する。この時、PRの代表的な例としては、界面との接着力が優秀なジアゾキノン/クレゾール−ノボラックが挙げられるが、これは、i−ライン(365nm)で優秀なパターン特性を示して、半導体の16メガDRAM工程に使われている。しかしながら、このようなPRはアルカリ水溶液([OH−]>0.1M)の条件で現像すると、塩基のアミノ基を保護するアミド結合が切断してしまう。このような副作用を防止するために、PR下にプロテクトコーティングをして現像中の問題点を補完する方法が提案された(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
PR工程は3段階に大別されるが、第1段階は、主に、PRのコーティング、露光及び現像によるPRパターンの形成段階であり、第2段階は、露光、エッチングされた部分の保護基及びPRの酸溶液による除去段階であり、第3段階は、核酸の順次結合と後処理段階である。しかしながら、前記したように、PR工程は工程が複雑であるという短所がある。
【0006】
前記PR工程を改善するための方法として、PPA(Photoacid Patterned Array)システムが報告された(例えば、特許文献3参照)。PPAシステムは、光酸発生剤(PAG:Photoacid Generator)と混合されたポリマーマトリックスを使用する。PPAシステムでは、酸は露光された領域でだけ発生し、保護基は熱処理された後に除去される。従って、前記PR工程の第1及び第2段階が1段階で行われうる。しかしながら、PPAシステムでも、やはり幾つかの問題が明らかになっている。例えば、PAAシステムによって発生した酸はポリマーマトリックスにそのまま残っているために、さらに多くのPAGを使用せねばならないが、前記PAGが過量で使われる場合には、光を散乱させてマイクロパターン形成を妨害する短所がある。また、前記ポリマーマトリックス(ポリマーとPAGとの混合物のフィルム)を除去するためにはアセトン及びメチルエチルケトン(MEK)のような有機溶剤を使用しなければならないが、このような有機溶剤は再処理及び回収に高コストがかかる。
【0007】
フォトリソグラフィを利用してDNAチップを製作する他の方式としては、マイクロミラーを利用したDNAチップの製作が挙げられる。この方法は、PRを利用して固体基板上にオリゴヌクレオチドと反応できる支持体を作って、ここにPAG溶液を入れた後、マイクロミラーを利用して特定部位だけを露光して酸を発生させ、この発生酸がオリゴヌクレオチドに結合している保護基を除去して、これによりオリゴヌクレオチドを反応させる。このような段階を繰り返すことによって、所望のパターンのオリゴヌクレオチドが積層できる。この方法はPR方法に比べてチップの製作方法が単純であるという利点はあるが、PAGを溶液中で反応させるため、高密度チップの製作が難しく、使われる装備が高価であるという短所がある。
【0008】
前記の従来技術の問題点を解決するために、ポリマーマトリックス中にPAGを使用する代わりに、重合体PAGを利用して固体基板上にペプチド核酸(PNA:peptide nucleic acid)のアレイを製造する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、前記方法は重合体PAGを使用するために単量体化合物を重合する過程がさらに必要であるので、製造コストが高く、複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,445,934号明細書
【特許文献2】米国特許第5,744,305号明細書
【特許文献3】米国特許第5,658,734号明細書
【特許文献4】米国特許第6,359,125号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.Vac.Sci.Tech.,1989,B7(6),1734
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献等の方法によれば、基板上で化合物を種々合成することができるものの、更に正確且つ精密に基板上で高分子合成できる技術が求められている。
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、露光に対する感度及び酸転写性が各々向上された酸転写膜を用いて基板上に化合物を合成する化合物合成方法、この方法により得られるマイクロアレイ、この方法に用いられる酸転写用組成物及びバイオチップ製造用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下のとおりである。
〈1〉(P1)酸に不安定な保護基を有する第1化合物を、基板に結合して第1膜を形成する第1膜形成工程、
(P2)下記重合体(A)、下記感放射線性酸発生剤(B)、及び、下記増感剤(C)を含む酸転写用組成物を用いて、前記第1膜上に第2膜を形成する第2膜形成工程、
(P3)前記第2膜を露光し、該第2膜の露光部に生じた酸を、前記第1膜に転写すると共に該第2膜の露光部下の第1化合物から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(P4)前記露光後の第2膜を除去する第2膜除去工程、及び、
(P5)前記保護基が除去された第1化合物に、第2化合物を結合する第2化合物結合工程、を備え、前記第1化合物と前記第2化合物とが結合された化合物を合成することを特徴とする化合物合成方法。
(A)重合体:下記式(1)に示す構成単位及び下記式(2)に示す構造単位を有する重合体。
(B)感放射線性酸発生剤:下記式(3)に示す化合物。
(C)増感剤:下記式(4)に示す化合物。
【化1】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【化2】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【化3】

【化4】

〔式(4)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)
〈2〉前記感放射線性酸発生剤(B)は、前記重合体(A)100質量部に対して30〜200質量部含有される前記〈1〉に記載の化合物合成方法。
〈3〉前記基板は、シリコン、二酸化ケイ素、ガラス、ポリプロピレン又はポリアクリルアミドである前記〈1〉又は〈2〉に記載の化合物合成方法。
〈4〉前記第1膜形成工程(P1)において、前記第1化合物を、前記基板に間接的に結合する前記〈1〉又は〈2〉に記載の化合物合成方法。
〈5〉前記第1化合物と前記第2化合物とが結合された前記化合物がバイオチップを構成するプローブである前記〈1〉又は〈2〉に記載の化合物合成方法。
〈6〉前記第2化合物は、(1)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる化合物、又は、(2)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる2以上の化合物が結合された結合体、である前記〈5〉に記載の化合物合成方法。
〈7〉前記〈1〉に記載の化合物合成方法により製造されたことを特徴とするマイクロアレイ。
〈8〉下記重合体(A)、下記感放射線性酸発生剤(B)、及び、下記増感剤(C)、を含む酸転写組成物であって、
(P1)酸に不安定な保護基を有する第1化合物を基板に結合して第1膜を形成する第1膜形成工程、
(P2)酸転写用組成物を用いて、前記第1膜上に第2膜を形成する第2膜形成工程、
(P3)前記第2膜を露光し、該第2膜の露光部に生じた酸を、前記第1膜に転写すると共に該第2膜の露光部下の第1化合物から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(P4)前記露光後の第2膜を除去する第2膜除去工程、及び、
(P5)前記保護基が除去された第1化合物に、第2化合物を結合する第2化合物結合工程、を備え、前記第1化合物と前記第2化合物とが結合された化合物を合成する化合物合成方法に用いることを特徴とする酸転写用組成物。
(A)重合体:下記式(1)に示す構成単位及び下記式(2)に示す構造単位を有する重合体。
(B)感放射線性酸発生剤:下記式(3)に示す化合物。
(C)増感剤:下記式(4)に示す化合物。
【化5】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【化6】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【化7】

【化8】

〔式(4)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)
〈9〉前記感放射線性酸発生剤(B)は、前記重合体(A)100質量部に対して30〜200質量部含有される前記〈8〉に記載の酸転写用組成物。
〈10〉前記基板は、シリコン、二酸化ケイ素、ガラス、ポリプロピレン又はポリアクリルアミドである前記〈8〉又は〈9〉に記載の酸転写用組成物。
〈11〉前記第1膜形成工程(P1)において、前記第1化合物を、前記基板に間接的に結合する前記〈8〉又は〈9〉に記載の酸転写用組成物。
〈12〉下記重合体(A)、下記感放射線性酸発生剤(B)、及び、下記増感剤(C)を含むことを特徴とするバイオチップ製造用組成物。
(A)重合体:下記式(1)に示す構成単位及び下記式(2)に示す構造単位を有する重合体。
(B)感放射線性酸発生剤:下記式(3)に示す化合物。
(C)増感剤:下記式(4)に示す化合物。
【化9】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【化10】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【化11】

【化12】

〔式(4)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物合成方法によれば、露光に対する感度及び酸転写性が各々向上された酸転写膜(即ち、「工程P2における第2膜」、以下同様)を用いて基板上に化合物を合成することができ、正確且つ精密に基板上で化合物を合成することができる。
感放射線性酸発生剤(B)が、重合体(A)100質量部に対して30〜200質量部含有される場合は、より優れた酸転写の選択性が得られる。
基板が、シリコン、二酸化ケイ素、ガラス、ポリプロピレン又はポリアクリルアミドである場合は、化合物をより正確且つ精密に形成することができる。
第1膜形成工程(P1)において、第1化合物を、基板に間接的に結合する場合は、基板と第1化合物との間に種々の機能を付与できる。
第1化合物と第2化合物とが結合された化合物がバイオチップを構成するプローブである場合は、医薬分野で有用に活用できるバイオチップを得ることができる。
第2化合物が、(1)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる化合物、又は、(2)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる2以上の化合物が結合された結合体、である場合が、医薬分野で有用に活用できるバイオチップを得ることができる。
本発明のマイクロアレイによれば、露光に対する感度及び酸転写性が各々向上された酸転写膜を用いて基板上に化合物を合成することができ、基板上に正確且つ精密に化合物を配置することができる。
前記化合物合成方法に用いる本発明の酸転写用組成物によれば、露光に対する感度及び酸転写性が各々向上された酸転写膜を形成することができ、基板上に化合物を正確且つ精密に合成することができる。
感放射線性酸発生剤(B)が、重合体(A)100質量部に対して30〜200質量部含有される場合は、より優れた酸転写の選択性が得られる。
基板が、シリコン、二酸化ケイ素、ガラス、ポリプロピレン又はポリアクリルアミドである場合は、化合物をより正確且つ精密に形成することができる。
第1膜形成工程(P1)において、第1化合物を、基板に間接的に結合する場合は、基板と第1化合物との間に種々の機能を付与できる。
本発明のバイオチップ製造用組成物によれば、露光に対する感度及び酸転写性が各々向上された酸転写膜を形成することができ、基板上に化合物を正確且つ精密に合成したバイオチップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の化合物合成方法を模式的に説明する説明図である。
【図2】本発明の化合物合成方法を模式的に説明する説明図である。
【図3】本発明の化合物合成方法を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0016】
[1]化合物合成方法
本発明の化合物合成方法は、
(P1)第1膜形成工程、(P2)第2膜形成工程、(P3)保護基除去工程、(P4)第2膜除去工程、及び、(P5)第2化合物結合工程、を備え、第1化合物と第2化合物とが結合された化合物を合成することを特徴とする。
【0017】
前記「第1膜形成工程(P1)」(図1のP1参照)は、酸に不安定な保護基Pを有する第1化合物を、基板10に結合して第1膜20を形成する工程P1である。
【0018】
前記「第1化合物」は、酸に不安定な保護基P(以下、単に「保護基」ともいう)を有する化合物である。第1化合物は保護基Pを有すればよく、他の構成は特に限定されず、例えば、下記(1)〜(3)に例示される化合物が挙げられる。即ち、
(1)基板表面と第2化合物とを結合させるためのカップリング化合物。より具体的には、保護基で保護された第2化合物との結合手及び基板表面との結合手を有する化合物、即ち例えば、保護基とシリル基とを有する化合物など。
(2)保護基を導入するための保護基導入化合物。より具体的には、アミノ基やヒドロキシル基を保護する保護基を導入するための化合物、即ち例えば、アミノ基にペプチド結合できる基と保護基とを有する化合物など。
(3)第2化合物を基板表面から離間させるためのスペーサ化合物。即ち例えば、アルキル鎖によって離間されたアミノ基にペプチド結合できる基及び保護基を有する化合物など。
【0019】
前記例示した第1化合物のうち、(1)カップリング化合物は、通常、基板表面に対して直接的に結合されるが、他の化合物を介して基板表面に間接的に結合させてもよい。また、(2)保護基導入化合物及び(3)スペーサ化合物は、通常、他の化合物を介して基板表面と間接的に結合される。これらの(2)保護基導入化合物及び(3)スペーサ化合物と基板表面との間にはどのような化合物を介してもよいが、例えば、カップリング剤(カップリング化合物)を介することができる。
【0020】
このうち(2)保護基導入化合物としては、保護基として有するオメガ−アミノカプロン酸系化合物のようなアミノアルキルカルボン酸等が挙げられる。このような化合物としては、6−N−t−ブトキシカルボニルアミノカプロン酸、4−N−t−ブトキシカルボニルアミノブタン酸、5−N−t−ブトキシカルボニルアミノペンタン酸、7−N−t−ブトキシカルボニルアミノヘプタン酸等のt−ブトキシカルボニル基を保護基として有するカルボン酸誘導体類等が挙げられる。
また、第1化合物として前記(2)保護基導入化合物を用いる際に、基板と第1化合物(保護基導入化合物)とを接続するカップンリグ剤(カップリング化合物)としては、アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基及びシリル基を有するカップリング剤や、ヒドロキシル基とシリル基とを有するカップリング剤が挙げられる。
【0021】
その他、第1化合物としては、後述する第2化合物として挙げた各種化合物のうちの保護基を有する化合物や、後述する第2化合物として挙げた各種化合物に保護基が導入された誘導体などを用いることもできる。
【0022】
前記「酸に不安定な保護基(P)」は、酸の存在下で解離する基であり、より具体的には酸性の基であり、更に詳しくは、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、酸性を有する水酸基等の酸性基中の水素原子を置換する基を意味する。この保護基(P)としては、t−ブトキシカルボニル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、(チオテトラヒドロピラニルスルファニル)メチル基、(チオテトラヒドロフラニルスルファニル)メチル基や、アルコキシ置換メチル基、アルキルスルファニル置換メチル基、アセタール基、ヘミアセタール基、下記式(5)で表される基(以下、「酸解離性基(P)」ともいう。)等を挙げることができる。
【0023】
【化13】

〔式(5)中、R〜Rは、各々独立に、炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基、炭素数3〜20の非有橋式の1価の脂環式炭化水素基、炭素数3〜20の有橋式の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の1価の芳香族基を示すか、或いは、R〜Rのうちの何れか2つが結合して、炭素数3〜20の非有橋式の2価の脂環式炭化水素基、又は炭素数3〜20の有橋式の2価の脂環式炭化水素基を形成すると共に、R〜Rのうちの残りの1つが、炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基、炭素数3〜20の非有橋式の1価の脂環式炭化水素基、炭素数3〜20の有橋式の1価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の1価の芳香族基を示し、これらの各基は置換されていてもよい。〕
【0024】
式(5)における炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基、及び、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基、としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、I-プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基等が挙げられる。
【0025】
式(5)における炭素数3〜20の非有橋式の1価の脂環式炭化水素基、及び、炭素数3〜20の有橋式の1価の脂環式炭化水素基、としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、テトラシクロ[4.2.0.12,5.17,10]ドデシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0026】
式(5)における炭素数6〜20の1価の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0027】
式(5)において、前記R〜Rの各基は、各々独立に、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子等)、炭素数1〜14の直鎖状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等)、炭素数1〜14の分岐状のアルキル基(例えば、i−プロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等)、炭素数1〜8の直鎖状のアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等)、炭素数1〜8の分岐状のアルコキシル基(例えば、i−プロポキシ基、2−メチルプロポキシ基、1−メチルプロポキシ基、t−ブトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状のアルコキシアルキル基(例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基等)、炭素数2〜8の分岐状のアルコキシアルキル基(例えば、t−ブトキシメチル基等)、炭素数2〜8の直鎖状のアルコキシアルコキシル基(例えば、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基等)、炭素数2〜8の分岐状のアルコキシアルコキシル基(例えば、t−ブトキシメトキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜8の分岐状のアルキルカルボニルオキシ基(例えば、t−ブチルカルボニルオキシ基等)、炭素数2〜8の直鎖状のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、炭素数2〜8の分岐状のアルコキシカルボニル基(例えば、t−ブトキシカルボニル基等)、炭素数2〜14の直鎖状のシアノアルキル基(例えば、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基等)、炭素数2〜14の分岐状のシアノアルキル基、炭素数1〜14の直鎖状のフルオロアルキル基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)、炭素数1〜14の分岐状のフルオロアルキル基などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0028】
また、前記アルコキシ置換メチル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、n−ペンチルオキシメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基等を挙げることができる。
【0029】
前記アルキルスルファニル置換メチル基としては、例えば、メチルスルファニルメチル基、エチルスルファニルメチル基、メトキシエチルスルファニルメチル基、n−プロピルスルファニルメチル基、n−ブチルスルファニルメチル基、n−ペンチルスルファニルメチル基、n−ヘキシルスルファニルメチル基、ベンジルスルファニルメチル基等を挙げることができる。
【0030】
前記酸解離性基(P)としては、より具体的には、下記式(6)で示される基が挙げられる。
【化14】

〔式(6)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキソ基(=O)、シアノ基、炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシアルキル基、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシアルコキシル基、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数2〜8の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜14の直鎖状若しくは分岐状のシアノアルキル基、又は、炭素数1〜14の直鎖状若しくは分岐状のフルオロアルキル基を示す。〕
尚、式(6)におけるR〜Rの説明としては、酸解離性基(P)における前記置換基の説明をそのまま適用できる。
【0031】
また、前記アルコキシ置換メチル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、n−ペンチルオキシメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基、ベンジルオキシメチル基等を挙げることができる。
【0032】
前記アルキルスルファニル置換メチル基としては、例えば、メチルスルファニルメチル基、エチルスルファニルメチル基、メトキシエチルスルファニルメチル基、n−プロピルスルファニルメチル基、n−ブチルスルファニルメチル基、n−ペンチルスルファニルメチル基、n−ヘキシルスルファニルメチル基、ベンジルスルファニルメチル基等を挙げることができる。
【0033】
また、前記酸解離性基(P)は、どのような形態で第1化合物内に含まれてもよいが、酸解離性基(P)は第1化合物内において、酸素原子に結合されて存在することが好ましい。即ち、第1化合物は、酸素原子を有すると共に、この酸素原子を介して結合された酸解離性基(P)を有することが好ましい。この場合、酸転写用膜(第2膜)から発生した酸の作用により、円滑に第1化合物等から酸解離性基(P)を除去できる。
【0034】
前記「基板(10)」の種類は特に限定されず、無機材料からなってもよく、有機材料からなってもよく、これらの複合材料からなってもよい。また、基板10は、その表面側と他面側とが異なる材料からなってもよい。この基板材料としては、例えば、シリコン、二酸化ケイ素及びガラス(ホウケイ酸ガラス、表面改質ガラス、石英ガラス等を含む)等のケイ素を主成分とする無機材料が挙げられる。また、ポリプロピレン及びポリアクリルアミド(アクリルアミドによって表面が活性化されたポリアクリルアミドを含む)等の有機材料が挙げられる。この他、保護基を有する化合物の層(第1膜に限らない)を固定化するのに適した反応性部位(例えば、活性なアミノ基など)を有する表面を有する当該分野において既知の他の基板を適宜用いることができる。
【0035】
前記第1膜20は、どのようにして基板10上に結合させてもよいが、通常、第1化合物を含む液体を基板10(表面処理されていない基板及び表面処理された基板を含む)表面に塗布して、第1化合物と基板10表面とを反応させて結合させる。この際の塗布方法等は特に限定されず、従来公知の回転塗布(スピンコーティング等)、流延塗布、ロール塗布、噴射塗布(スプレーコーティング等)及び印刷(ドクターブレードコーティング等)などの種々の方法を用いることができる。
尚、前記基板は、予め洗浄溶液(アルカリ性のエタノール水溶液など)で洗浄したうえで乾燥して用いることが好ましい。
【0036】
更に、第1化合物は、基板10に直接結合させてもよく、他の化合物を介して間接的に結合させてもよい。即ち、換言すれば、第1膜(配向して並んだ複数の第1化合物又はその残基からなる膜)20は基板10に直接積層してもよく、1層又は2層以上の他膜を介して間接的に積層してもよい。
尚、第1化合物は、前記保護基を維持したまま、他部において前記基板に直接的に又は間接的に結合される。また、第1化合物は、この結合に際して、第1化合物の構造の一部が変化してもよく、変化しなくてもよい。変化する場合としては、第1化合物の構造の一部が脱離されて生じた結合手を利用する場合等が挙げられる。
【0037】
前記「第2膜形成工程(P2)」(図1のP2参照)は、重合体(A)、感放射線性酸発生剤(B)、及び、増感剤(C)を含む酸転写用組成物を用いて、第1膜20上に第2膜30を形成する工程P2である。
尚、酸転写用組成物、重合体(A)、感放射線性酸発生剤(B)、及び、増感剤(C)については後述する。
【0038】
この第2膜は酸転写用組成物を用いてなる膜であり、通常、酸転写用組成物に含まれる重合体(A)及び/又は重合体(A)の硬化物などが含まれる。この硬化物としては、重合体(A)が他の単量体、オリゴマー等を伴って結合された重合物や、重合体(A)同士が更に結合された重合物等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0039】
また、第2膜はどのような方法により膜化されたものであってもよい。例えば、溶剤を含有する酸転写用組成物を塗布した後、溶剤の一部又は全部除去することで得ることができる。この際の酸転写用組成物の塗布方法も特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布及び印刷等の適宜の塗布方法を用いることができる。また、これらの塗布方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。更に、溶剤の除去方法も特に限定されず、例えば、加熱除去、減圧除去、自然放散除去等が挙げられる。これらの溶剤除去方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
更に、この酸転写用組成物を塗布した後、必要に応じて、プレベーク(PB)することによって塗膜中の溶剤を揮発させることで第2膜30を形成することができる。このプレベークの加熱条件は、酸転写用組成物の配合組成によって適宜選択されるが、加熱温度は、通常、30〜150℃、好ましくは50〜130℃である。更に、加熱時間は、通常、30〜300秒間、好ましくは60〜180秒間である。
また、第2膜30の厚みは特に限定されないが、通常、1〜10000nmとすることが好ましく、5〜800nmとすることがより好ましく、10〜500nmとすることが更に好ましい。
【0041】
前記「保護基除去工程(P3)」(図1及び図2のP31とP32を含む)は、第2膜を露光し、第2膜の露光部に生じた酸を、第1膜に転写すると共に第2膜の露光部下の第1化合物から保護基を除去する工程である。この保護基除去工程P3には、図1及び図2に例示されるように、通常、第2膜30に対して放射線を露光する露光工程P31と、露光により第2膜30内に生じた酸を第1膜20へと転写(拡散)する酸転写工程P32とを備える。
【0042】
このうち露光工程P31は、マスク50を介して第2膜30を露光し、第2膜30内で前記酸を発生させる工程である。これにより図1に例示するように、第2膜30の露光された部位が酸発生部位31となる。
尚、前記マスク50は、望ましくは一定のパターンが描かれたマスク等を用いることができるが、このようなマスクに換えてマイクロミラーを使用して露光を行なうこともできる。この際、具体的な露光方法は、例えば、米国特許第6,426,184号明細書に記載される方法が利用できる。
【0043】
露光に使用される放射線の種類は特に限定されず、第2膜30に含まれる酸発生剤の種類等の第2膜30の特性に応じて適宜選択される。更に、露光量等も第2膜30に含まれる酸発生剤の種類等の第2膜30の特性に応じて適宜選択される。
【0044】
また、酸転写工程P32は、第2膜30に発生した酸を第1膜20へ転写する工程である。図2に例示するように、酸発生部位31に対応した第1膜20を構成している第1化合物から保護基Pを除去することにより、第1膜20の一部が酸転写部位21(酸転写部位21は保護基Pが解離された第1化合物の残基を含んでいる)となる。
この酸を転写する方法は特に限定されないが、具体的には、(1)加熱により転写する方法、(2)常温において放置することによって転写する方法、(3)浸透圧を利用して転写する方法などが挙げられる。これらの方法は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらの中でも(1)加熱により転写する方法が転写効率に優れるため好ましい。
【0045】
この加熱により転写を行う場合の加熱条件は、特に限定されないが、加熱温度は、50〜200℃が好ましく、70〜150℃が更に好ましい。更に、加熱時間は、30〜300秒間が好ましく、60〜180秒間が更に好ましい。
また、加熱により転写を行う場合は、上記加熱条件により1回の加熱で完了してもよいが、結果的に上記加熱条件と同様の結果となるように、2回以上の加熱を行うこともできる。
尚、前記(2)常温において放置することによって転写する方法とは、加熱を行わず、通常、温度20〜30℃の常温の環境に放置することで、第2膜30内に発生された酸を自然に第1膜20へと拡散させて転写する方法である。
【0046】
前記「第2膜除去工程(P4)」(図2のP4参照)は、露光後の第2膜30を除去する工程P4である。即ち、第2膜30を除去すると共に、その層下に酸が転写された第1膜20を露出させる工程P4である。
第2膜30の除去はどのような方法で行ってもよいが、通常、第2膜30を有機溶剤により溶解させて行う。この有機溶剤は、第2膜30を溶解させるものの、酸が転写された第1膜20を溶解させないものである。
【0047】
このような有機溶剤は、第2膜30及び第1膜20の各膜を構成する成分によって適宜選択することが好ましく、第1膜20が溶解されず且つ第2膜30が溶解される有機溶剤であれば限定されないが、具体的には、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン及びピリジン等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記「第2化合物結合工程(P5)」(図2のP5参照)は、保護基が除去された第1化合物に、第2化合物を結合する工程P5である。即ち、第1膜20のうち酸転写されて保護基Pが解離された部位21上に、第2化合物を含む部位41を積層する工程P5である。
【0049】
前記「第2化合物」の種類は特に限定されず種々の化合物を用いることができる。この第2化合物としては、例えば、(1)ヌクレオチド{ヌクレオチド、デオキシヌクレオチド及びこれらを除く類似体(合成ヌクレオチド類似体、合成デオキシヌクレオチド類似体など)を含む}、(2)アミノ酸、(3)単糖類、又は(4)これらヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類から選択される2以上の化合物が結合された結合体、(5)ペプチド核酸(PNA)を合成するためのペプチド核酸形成用化合物(ペプチド核酸モノマー)、(6)各種の端部形成用化合物等が挙げられる。これらの第2化合物は保護基及び活性基を有していてもよい。また、これらの第2化合物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記(1)ヌクレオチドとしては、デオキシヌクレオチド、合成ヌクレオチド類似体が挙げられる。
このうちヌクレオチドとしては、アデノシンホスフェート、グアノシンホスフェート、シチジンホスフェート、ウリジンホスフェート等が挙げられる。
また、デオキシヌクレオチドとしては、デオキシアデノシンホスフェート、デオキシグアノシンホスフェート、デオキシチジンホスフェート及びデオキシチミジンホスフェート等が挙げられる。
更に、合成ヌクレオチド類似体としては、2’−4’架橋ヌクレオチド類似体、3’−4’架橋ヌクレオチド類似体、5’−アミノ−3’,5’架橋ヌクレオチド類似体等の架橋型ヌクレオチド類似体等が挙げられる。
加えて、活性化された形態のヌクレオチドとして、例えば、ホスホルアミダイトヌクレオチド分子等が挙げられる。
【0051】
前記(2)アミノ酸(L体及びD体を含む)としては、アルキル鎖を持つグリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン、ヒドロキシ基を持つセリン・トレオニン、硫黄を含むシステイン・メチオニン、アミド基を持つアスパラギン・グルタミン、イミノ基を持つプロリン、芳香族基を持つフェニルアラニン・チロシン・トリプトファン等が挙げられる。
前記(3)単糖類としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン等が挙げられる。
前記(4)の結合体としては、ヌクレオチド同士の結合体であるオリゴヌクレオチド、アミノ酸同士の結合体であるペプチド及び蛋白質、等が挙げられる。
【0052】
前記ペプチド核酸形成用化合物としては、N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)−N−チミン−1−イルアセチル)グリシン、N−(N−4−(ベンジルオキシカルボニル)シトシン−1−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン、N−(N−6−(ベンジルオキシカルボニル)アデニン−9−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン及びN−(N−4−(ベンジルオキシカルボニル)グアニン−1−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン等が挙げられる。
【0053】
前記(5)端部形成用化合物としては、分子鎖末端を形成する化合物であり、各種保護基を有する保護基形成用化合物、各種キャッピング用化合物及び標識用化合物等が含まれる。このうち標識用化合物としては、各種蛍光標識用化合物(フロレシンイソチオシアネート等のフルオレセイン誘導体など)及び放射性同位体標識用化合物が含まれる。
【0054】
更に、前記第2化合物が有することができる保護基としては、前記第1化合物における酸解離性基(P)をそのまま適用できる他、光に不安定な保護基を用いることもできる。
また、前記第2化合物が有することができる活性基としては、ホスホルアミダイト基、H−ホスホネート、ホスホジエステル、ホスホトリエステル及びリン酸トリエステル等の遊離の水酸基と反応し得るリン含有基が挙げられる。即ち、例えば、活性化されたヌクレオチドとしては、ホスホルアミダイトヌクレオチド分子が挙げられる。その他、光化学的活性基及び熱化学的活性基としては、アミノ基、チオール基、マレイミド基、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、ホルミル基、カルボキシル基、アクリルアミド基、エポキシ基等が挙げられる。
【0055】
尚、第2化合物及びその結合過程は、前記例示に限定されるものではなく、合成しようとする化合物により適宜の種類及び形態とすることができる。例えば、Fordor et al.,Science,251,p.767(1991)に開示されている化合物及び方法を利用できる。
【0056】
そして、図3に例示されるように、前述の第1膜から保護基Pを解離させる操作と同様の操作{第3膜(酸転写層膜)形成工程P6、保護基除去工程P7(露光工程P71及び酸転写工程P72を含む)、第3膜除去工程P8}を施すことにより、保護基が残存された第1膜(第2化合物が結合されていない部位)から保護基Pを解離させ、その後、第3化合物結合工程P9を施すことによって、第1化合物の残基に対して第3化合物を結合させて、第3化合物の残基からなる部位42を形成することができる。
【0057】
更に、図2の最下図に例示するように、前記第2化合物が酸に不安定な保護基Pを有する場合には、前記と同様の操作を施すことで、第2化合物の残基からなる部位41上に他の化合物(第4化合物、第5化合物など)を結合させることができる。このように同様の操作を繰り返すことによって、基板上で高い自由度をもって化合物(高分子等)を合成できる。
【0058】
即ち、本発明の化合物合成では、少なくとも工程(P1)〜工程(P5)を1サイクルとして行なうものであって、所望の数(プローブ数等)の化合物や、所望の長さ(重合度等)の化合物が得られるように、前記サイクルを複数回繰り返すことができる。尚、所望の化合物が得られた(例えば、アレイ形態に合成された)後には、化合物に残存されたいずれの酸解離性基(P)をも除去することができる。
【0059】
尚、第2化合物に関する説明は、前記第3化合物、前記第4化合物及び前記第5化合物にそのまま適用できる。また、第1化合物、第2化合物、第3化合物、第4化合物及び第5化合物等は各々同じであってもよく異なっていてもよい。
【0060】
本発明の化合物合成方法に得られる化合物は、第1化合物と第2化合物とが結合された化合物を得ることができる。得られる化合物は、第1化合物(この第1化合物は第2化合物との結合に際して一部を失った第1化合物の残基であってもよい)と、第2化合物(この第2化合物は第1化合物との結合に際して一部を失った第2化合物の残基であってもよい)と、のみが結合された化合物であってもよいし、また、高分子化合物の一部として第1化合物と第2化合物とを含んだ化合物であってもよい。
【0061】
本発明の化合物合成方法によれば、基板上で高い自由度で化合物(高分子等)を設計することができる。この方法により合成される化合物(高分子等)は特に限定されないが、生体高分子及び擬似生体高分子の合成に特に好適である。特に、これらの生体高分子及び擬似生体高分子はバイオチップにおけるプローブとして機能できる。即ち、バイオチップを構成するプローブとしては生体高分子及び擬似生体高分子が挙げられる。
【0062】
より具体的には、前記化合物としては、核酸及び蛋白質が挙げられる。核酸としては、DNA、RNA及びPNA(Peptide Nucleic Acid)の他、架橋型ヌクレオチド類似体を一部又は全部に用いて合成された人工核酸〔LNA{Locked Nucleic Acid(Proligo LLC社商標)}及びBNAなど〕が挙げられる。
【0063】
更に、前記PNAは、DNA及びRNAがリン酸結合骨格を有するのに対して、ペプチド結合骨格を有する擬似生体高分子である。このPNAは、通常、アミノエチルグリシン誘導体を単量体とする化合物である。より具体的には、ペプチド結合によって連結されたN−(2−アミノエチル)−グリシン繰り返し単位からなる骨格を有し、塩基がメチレンカルボニル結合によって前記骨格に連結されている核酸類似体が含まれる。即ち例えば、N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)−N−チミン−1−イルアセチル)グリシン、N−(N−4−(ベンジルオキシカルボニル)シトシン−1−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン、N−(N−6−(ベンジルオキシカルボニル)アデニン−9−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン及びN−(N−4−(ベンジルオキシカルボニル)グアニン−1−イル)アセチル−N−(2−t−ブチルオキシカルボニル−アミノエチル)グリシン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0064】
前記「酸転写用組成物」は、重合体(A)、感放射線性酸発生剤(B)、及び、増感剤(C)を含む組成物である。尚、前記感放射線性酸発生剤(B)は、以下、単に「酸発生剤(B)」ともいう。
【0065】
前記「重合体(A)」は、下記式(1)に示す構成単位(以下、単に「構成単位(A1)ともいう」)、及び、下記式(2)に示す構造単位(以下、単に「構成単位(A2)」ともいう)を有する重合体である。
【化15】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【化16】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【0066】
重合体(A)が、構成単位(A1)を有することで、この酸転写用組成物を用いて形成される膜内において、酸発生剤(B)から発生された酸の膜内における不要な拡散を効果的に防止できる。即ち、酸拡散防止機能を有することができる。
【0067】
前記式(1)のR及びRが炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基である場合としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基などの脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0068】
また、前記式(1)のR及びRが炭素数3〜10の環状の炭化水素基である場合としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの脂環式基;フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−t−ブチルフェニル基、1−ナフチル基、ベンジル基などの芳香族基が挙げられる。
【0069】
更に、前記式(1)のR及びRが互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環(不飽和環であってもよく、飽和環であってもよい)を形成している場合としては、アジリジノ基、アゼチノ基、ピロリジノ基、ピロール基、ピペリジノ基、ピリジノ基等が挙げられる。
【0070】
また、前記式(1)のR及びRが窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環(不飽和環であってもよく、飽和環であってもよい)を形成している場合、前記アミン基としては、モルホリノ基、チオモルホリノ基、セレノモルホリノ基、イソオキサゾリジノ基、イソオキサゾール基、イソチアゾリジノ基、イソチアゾール基、イミダゾリジノ基、ピペラジノ基、トリアジノ基等が挙げられる。
【0071】
前記構成単位(A1)は、通常、下記式(7)で表される単量体(Am1)を用いて重合体(A)を重合することにより得ることができる。
【0072】
【化17】

〔式(7)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【0073】
前記式(7)のR及びRにおける、炭素数1〜10の直鎖状の炭化水素基、炭素数1〜10の分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基については、前記式(1)における各々をそのまま適用できる。
また、R及びRが互いに結合して形成する3〜10員環の単環式ヘテロ環、R及びRが窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子からなる群より選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して形成する4〜10員環の単環式ヘテロ環については、前記式(1)における各々をそのまま適用できる。
【0074】
より具体的には、前記式(7)のR及びRが炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基である単量体(Am1)としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。また、前記式(7)のR及びRがヘテロ原子を介して結合して形成された4〜10員環の単環式ヘテロ環を有する単量体(Am1)としては、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0075】
これらの単量体(Am1)のなかでも、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリンが好ましい。これらの好ましい単量体(Am1)を用いて得られた重合体(A)は、この酸転写用組成物を用いて形成される膜内において、酸発生剤(B)から発生された酸の膜内における不要な拡散をより効果的に防止できる。
【0076】
前記構成単位(A1)の重合体(A)に占める割合は特に限定されないが、重合体(A)の全構成単位を100モル%とした場合に1〜50モル%であることが好ましく、3〜40モル%であることがより好ましく、5〜30モル%であることが特に好ましい。重合体(A)に占める構成単位(A1)の割合が前記範囲内では、この酸転写用組成物を用いて形成される膜内において、酸発生剤(B)から発生された酸の膜内における不要な拡散をより効果的に防止できる。
【0077】
一方、前記式(2)のRにおける1価の有機基としては、例えば、炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、窒素原子含有有機基、環状炭化水素基及び脂環式基等が挙げられる。
【0078】
前記式(2)のRにおける炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。
【0079】
前記式(2)のRにおける炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシリル基、2,6−キシリル基、3,5−キシリル基、メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
【0080】
前記式(2)のRにおける炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシシクロペンチル基、4−ヒドロキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0081】
前記式(2)のRにおける前記窒素原子含有有機基としては、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、1−シアノプロピル基、2−シアノプロピル基、3−シアノプロピル基、1−シアノブチル基、2−シアノブチル基、3−シアノブチル基、4−シアノブチル基、3−シアノシクロペンチル基、4−シアノシクロヘキシル基等の炭素数2〜9のシアノアルキル基及び炭素数2〜9のシアノ基などが挙げられる。
【0082】
前記式(2)のRにおける環状炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
前記式(2)のRにおける脂環式基としては、ボルニル基、イソボルニル基等の橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。
尚、前記式(2)におけるRは、酸解離性基(P)であってもよいが、Rは酸解離性基(P)でないことが好ましい。
【0083】
前記構成単位(A2)は、通常、下記式(8)で表される単量体(Am2)を用いることにより、前記式(2)に示す構成単位を含む重合体(A)を得ることができる。
【0084】
【化18】

〔式(8)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
尚、前記式(8)のRおける1価の有機基については、前記式(2)における1価の有機基をそのまま適用できる。
【0085】
前記単量体(Am2)としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましく、より具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート化合物は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの(メタ)アクリレート化合物のなかでは、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0086】
重合体(A)中に占める前記構成単位(A2)の割合は、特に限定されないが、重合体(A)の全構成単位を100モル%とした場合に5〜99モル%であることが好ましく、10〜97モル%であることがより好ましく、15〜95モル%であることが特に好ましい。重合体(A)に占める構成単位(A2)の割合が前記範囲内では、この酸転写用組成物を用いて形成される膜内において、酸発生剤(B)から発生された酸の膜内における不要な拡散をより効果的に防止できる。
【0087】
重合体(A)は、構成単位(A1)及び構成単位(A2)以外の他の構成単位を含むことができる。他の構成単位の種類は特に限定されず本発明の目的を阻害しない範囲であればよい。この他の構成単位を含む場合、その割合は、特に限定されないが、重合体(A)の全構成単位を100モル%とした場合に30モル%以下であることが好ましく、1〜10モル%であることがより好ましい。この範囲内では本発明の目的を阻害することがない。
【0088】
前記重合体(A)の分子量については特に限定はなく、適宜選定することができるが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量分子量(以下、「Mw」という。)は、通常、1,000〜500,000であり、好ましくは2,000〜400,000であり、更に好ましくは3,000〜300,000である。
更に、重合体(A)の前記Mwと、GPCで測定したポリスチレン換算数分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)についても特に限定はなく、適宜選定できるが、通常、1〜10であり、好ましくは1〜8であり、更に好ましくは1〜3である。
【0089】
また、重合体(A)は、実質的に水酸基を有さない重合体であることが好ましい。「実質的に水酸基を有さない」とは、JIS K1557のプラスチック−ポリウレタン原料ポリオールの近赤外(NIR)分光法による水酸基価の求め方に準じて、波長2000〜2300nmのR−OH結合音、及び、1380〜1500nmのR−OH第1倍音の2つの波長域を用いて測定される重合体(A)についての水酸基価{重合体(A)1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムの質量(mg)}が1以下であることを意味する。
【0090】
同様に、重合体(A)は、実質的に酸解離性基(P)を有さない重合体であることが好ましい。「実質的に酸解離性基(P)を有さない」とは、重合体の合成に用いる全単量体中、酸解離性基(P)を有さない単量体が、95モル%以上用いて得られる重合体のことである。即ち、換言すれば、重合体(A)を構成する全構成単位100モル%中に、酸解離性基(P)を有する構成単位が5モル%未満であることを意味する。
【0091】
前記「感放射線性酸発生剤(B)」は、下記式(3)に示す化合物である。
【化19】

【0092】
前記酸発生剤(B)を含有することにより、露光に対する感度及び酸転写性が各々向上された酸転写膜を形成することができる。また、酸発生剤(B)は、放射線に対して露光することにより酸を発生させることができる成分であるが、感放射性が発現される放射線種は特に限定されず、例えば、紫外線、遠紫外線(KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー等を含む)、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等を適宜利用できる。
【0093】
この酸発生剤(B)の含有量は特に限定されないが、酸転写膜としての酸転写性を十分に確保する観点から、通常、前記重合体(A)100質量部に対して、1〜500質量部が含有される。更に、酸発生剤(B)と重合体(A)との組合せによる優れた酸転写の選択性(特に、被パターン化樹脂膜内での横方向への酸拡散の抑制)が得られるために、この含有量は5〜300質量部であることが好ましく、10〜250質量部であることがより好ましく、20〜200質量部であることが特に好ましい。
【0094】
前記「増感剤(C)」は、下記式(4)に示す化合物{即ち、チオキサントン(チオキサンテン−9−オン)又はその誘導体}である。
【化20】

〔式(4)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)
【0095】
前記増感剤(C)を含むことで、酸発生剤(B)に対して高い光増感性を発揮することができる。
前記式(4)の「R」と「R」及び「n」と「m」は各々同じであってもよく、異なっていてもよい。前記式(4)のR及びRのアルキル基は、直鎖のアルキル基であってもよく、分枝のアルキル基であってもよく、環状のアルキル基であってもよい。また、このアルキル基の炭素数は特に限定されないが、直鎖又は分枝のアルキル基である場合の炭素数は1〜14であることが好ましく、環状のアルキル基である場合の炭素数は4〜20であることが好ましい。
【0096】
このうち前記炭素数1〜14の直鎖又は分枝のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−及びi−)、ブチル基(n−、i−及びt−)、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の直鎖又は分子のアルキル基が挙げられる。また、前記炭素数は4〜20の環状アルキル基としては、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、式(4)中のハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0097】
前記増感剤(C)の具体例としては、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン{下記式(9−1)}、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン{下記式(9−2)、式(9−2)中のEtはエチル基を示す}、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、1−クロロ−4−イソプロピルチオキサントン{下記式(9−3)}、2−シクロヘキシルチオキサントン{下記式(9−4)}等が挙げられる。これらの中でも2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−イソプロピルチオキサントン、2−シクロヘキシルチオキサントンが好ましい。
【0098】
【化21】

【0099】
増感剤(C)の含有量は特に限定されないが、酸転写膜としての酸転写性を十分に確保する観点から、通常、酸転写用組成物内に、前記酸発生剤(B)100質量部に対して、1〜500質量部が含有される。更に、増感剤(C)と酸発生剤(B)との組合せによるより優れた酸転写性を確保する観点から、この含有量は10〜200質量部であることが好ましく、20〜150質量部であることがより好ましく、30〜100質量部であることが特に好ましい。
【0100】
前記酸転写用組成物は、通常、目的とする基板表面に塗布し、乾燥させることにより酸転写膜が得られる。このため、酸転写用組成物には、重合体(A)、酸発生剤(B)及び増感剤(C)に加えて、溶剤(D)を含有できる。
【0101】
前記溶剤(D)の種類は特に限定されないが、例えば、水及び/又は有機溶剤等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記有機溶剤(D)としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
【0102】
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ブチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、tert−ブチル−メチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル、tert−ブチルプロピルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、シクロヘキシルエチルエーテル、シクロペンチルプロピルエーテル、シクロペンチル−2−プロピルエーテル、シクロヘキシルプロピルエーテル、シクロヘキシル−2−プロピルエーテル、シクロペンチルブチルエーテル、シクロペンチル−tert−ブチルエーテル、シクロヘキシルブチルエーテル、シクロヘキシル−tert−ブチルエーテル等のアルキルエーテル類;
【0103】
1−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−プロパノール、ネオペンチルアルコール、tert−アミルアルコール、イソアミルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルキルアルコール類;
デカン、ドデカン、ウンデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;
その他、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンジルエチルエーテル、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等を挙げられる。
これらの有機溶剤は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0104】
この溶剤(D)は、酸転写用組成物において、重合体(A)を100質量部とした場合に、通常、10〜10000質量部含有され、20〜8000質量部が好ましく、30〜6000質量部がより好ましく、40〜4000質量部が更に好ましい。
更に、酸転写用組成物全体の粘度は特に限定されず、酸転写用組成物を塗布する方法等により適宜の粘度とすればよいが、例えば、温度25℃おける粘度を1〜100mPa・sとすることができる。この粘度は2〜80mPa・sが好ましく、3〜50mPa・sがより好ましい。
【0105】
また、酸転写用組成物には、溶剤(D)以外にも他の成分を含有できる。他の成分としては、界面活性剤(E)が挙げられる。界面活性剤(E)としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0106】
具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等を挙げることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0107】
界面活性剤(E)を用いる場合、その量は特に限定されないが、通常、重合体(A)の全量100質量部に対して0.01〜0.5質量部であり、好ましくは0.02〜0.1質量部である。
【0108】
更に、その他、酸転写用組成物には、架橋剤、ハレーション防止剤、保存安定化剤、着色剤、可塑剤、消泡剤等を適宜配合することができる。
【0109】
[2]マイクロアレイ
本発明のマイクロアレイは、前記本発明の化合物合成方法により製造されたことを特徴とする。このマイクロアレイとは、基板表面の一定領域に一定数の化合物が合成されて配置されたものである。この化合物については、前記本発明の化合物合成方法における化合物をそのまま適用できる。このマイクロチップとしては、バイオチップ等が含まれる。
【0110】
[3]酸転写用組成物
本発明の酸転写用組成物は、重合体(A)、感放射線性酸発生剤(B)、及び、増感剤(C)、を含む酸転写組成物であって、第1膜形成工程(P1)、第2膜形成工程(P2)、保護基除去工程(P3)、第2膜除去工程(P4)、第2化合物結合工程(P5)、を備え、第1化合物と第2化合物とが結合された化合物を合成する化合物合成方法に用いることを特徴とする。
【0111】
この酸転写用組成物における、重合体(A)、感放射線性酸発生剤(B)、増感剤(C)については、前記化合物合成方法における酸転写用組成物における各々をそのまま適用できる。また、その他の酸転写用組成物に関する事項についても、前記化合物合成方法における酸転写用組成物における各々をそのまま適用できる。更に、この酸転写用組成物を用いる化合物合成方法については、前記本発明の化合物合成方法をそのまま適用できる。
【0112】
[4]バイオチップ製造用組成物
本発明のバイオチップ製造用組成物は、重合体(A)、感放射線性酸発生剤(B)、及び、増感剤(C)を含むことを特徴とする。
これら重合体(A)、感放射線性酸発生剤(B)、増感剤(C)については、前記化合物合成方法における酸転写用組成物における各々をそのまま適用できる。また、その他の酸転写用組成物に関する事項についても、前記化合物合成方法における酸転写用組成物における各々をそのまま適用できる。
【0113】
本発明のバイオチップ製造用組成物におけるバイオチップとは、基板と、基板上に配置され、第1膜(化合物合成方法における第1膜を適用できる)等から構成されたプローブとを有する。このプローブとしては、DNA、RNA、PNA、BNA、人工核酸、プロテイン(ペプチド)、糖鎖、及びこれらを組み合わせたプローブ等が挙げられる。
このバイオチップとしては、具体的には、DNAチップ、RNAチップ、プロテインチップ、及び糖鎖チップ等が挙げられる。更には、これらの2種以上の機能を有する複合チップであってもよい。
このバイオチップは、通常、1〜10mm四方の基板の上に、数千〜数万種類のプローブが形成されたものであり、検体となるDNA等の発現パターンを同時に解析できる基板である。遺伝子発現のパターンニグ、新規遺伝子のスクーリング、遺伝子多型、及び遺伝子変異等の検出に好適に用いることができる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら制約されるものではない。尚、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
【0115】
[1]酸転写用組成物の調製(実施例1〜8及び比較例1〜3)
(1)重合体(A)の合成
〈重合体(A−1)の合成〉
本合成例1は、前記式(1)で表される構成単位(A1)を重合体(A)に導入するための単量体(Am1)として下記式(10)で表されるN,N−ジメチルアクリルアミドを用い、前記式(2)で表される構成単位(A2)を導入するための単量体(Am2)としてメチルメタクリレートを用いた合成例である。
【化22】

【0116】
500mLビーカー中にN,N−ジメチルアクリルアミド(単量体Am1)5g(単量体Am1と単量体Am2との合計を100モル%とした場合に5モル%)、メチルメタクリレート(単量体Am2)95g(単量体Am1と単量体Am2との合計を100モル%とした場合に95モル%)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤)3.0gを仕込み、重合開始剤が溶解するまで攪拌し均一な溶液を得た。別途、窒素置換したドライアイス/メタノール還流器の付いたフラスコ中に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)150gを仕込み、ゆるやかに攪拌を開始し80℃まで昇温した。その後、80℃にて、前記溶液を2時間かけて少量ずつ連続滴下した。滴下後、更に80℃にて3時間重合を行い、その後、100℃に昇温して1時間攪拌を行って重合を終了した。その後、得られた反応溶液を多量のシクロヘキサン中に滴下して生成物を凝固させた。次いで、得られた凝固物を水洗後、凝固物と同質量のテトラヒドロフランに再溶解し、多量のシクロヘキサンに滴下して再度凝固させた。この再溶解及び凝固を行うサイクルを計7回行った後、得られた凝固物を40℃で48時間真空乾燥して重合体(A−1)を得た。得られた重合体(A−1)の収率は55%であり、Mwは11,000であり、Mw/Mnは2.3、純度99%以上であった。
【0117】
〈重合体(A−2)の合成〉
本合成例2は、合成例1における各単量体の配合割合を変えて行った合成例である。
即ち、N,N−ジメチルアクリルアミド(単量体Am1)を10g(単量体Am1と単量体Am2との合計を100モル%とした場合に10モル%)、メチルメタクリレート(単量体Am2)90g(単量体Am1と単量体Am2との合計を100モル%とした場合に90モル%)、として前記合成例1と同様に重合を行って重合体(A−2)を得た。得られた重合体(A−2)の収率は48%であり、Mwは10,000であり、Mw/Mnは2.3、純度は99%以上であった。
【0118】
〈重合体(A−3)の合成〉
本合成例3は、合成例1における各単量体の配合割合を変えて行った合成例である。
即ち、N,N−ジメチルアクリルアミド(単量体Am1)を20g(単量体Am1と単量体Am2との合計を100モル%とした場合に20モル%)、メチルメタクリレート(単量体Am2)80g(単量体Am1と単量体Am2との合計を100モル%とした場合に80モル%)、として前記合成例1と同様に重合を行って重合体(A−3)を得た。得られた重合体(A−3)の収率は50%であり、Mwは9,000であり、Mw/Mnは2.3、純度は99%以上であった。
【0119】
重合体(A−1)〜重合体(A−3)について以下表1にまとめて示す。
【表1】

【0120】
<酸発生剤(B)>
下記式(3)に示すイミドスルホネート基を有する酸発生剤(市販品)5gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶かした溶液(有機層)を、水300mlで5回洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、硫酸マグネシウムを濾別して、溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を、減圧留去した。その後、アモルファス状の固体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100mlに溶解したのち、溶液をn−ヘプタンとイソプロピルアルコールの混合溶媒300ml中に滴下して再結晶させ、結晶を濾別し、真空乾燥して得られた酸発生剤B(純度99.9%以上、収量3.1g)を用いた。
【化23】

【0121】
<増感剤(C)>
下記式(9−1)に示す化合物である2−イソプロピルチオキサントン(市販品)5gをシクロヘキサノン100gに溶解したのち、溶液をイソプロピルアルコール300ml中に滴下して再結晶させ、得られた結晶を濾別し、真空乾燥して得られた酸発生剤C(純度99.9%以上、収量2.5g)を用いた。
【化24】

【0122】
更に、溶剤(D)として2種類の溶剤を用いた。このうち一方の溶剤D1は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、重合体(A)100質量部に対して80質量部となる量を用いた。更に、他方の溶剤D2は、γ−ブチロラクトンであり、重合体(A)100質量部に対して20質量部となる量を用いた。これら2種類の溶剤D1及び溶剤D2を混合した混合溶媒をとして用いた。
【0123】
これらの各成分を表2に示す配合となるように混合し、攪拌により均一な溶液(表2に示す各固形分濃度)とした。この溶液を孔径0.5μmのカプセルフィルターでろ過して11種類の各酸転写用組成物(実施例1〜8及び比較例1〜3)を得た。
【0124】
【表2】

【0125】
[2]第1化合物、及び、これを含む液体の調製
酸に不安定な保護基(酸解離性基)を有する第1化合物として酸解離性基含有樹脂を利用する。酸解離性基含有樹脂を形成する単量体として、酸解離性基を有する単量体にビス−(4−メトキシフェニル)−ベンジルアクリレートを用いた。その他、フェノール性水酸基を有する単量体にp−イソプロペニルフェノール、他の単量体にp−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート及びフェノキシポリエチレングリコールアクリレートを用いた。
【0126】
上記の単量体を以下の割合で利用する。即ち、ビス−(4−メトキシフェニル)−ベンジルアクリレート20g、p−イソプロペニルフェノール30g、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド20g、ヒドロキシエチルアクリレート20g、及びフェノキシポリエチレングリコールアクリレート10gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒)120gと、を混合して攪拌し、均一な溶液に調製した。
【0127】
その後、得られる溶液を30分間窒素ガスによりバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)4g添加し、窒素ガスによるバブリングを継続しながら、反応温度を70℃に維持して3時間重合を行った。次いで、更にAIBN1gを添加して3時間反応した後、100℃で1時間反応させて、重合を終了した。その後、得られた反応溶液と多量のヘキサンと混合し、反応溶液内の生成物を凝固させた。次いで、凝固された生成物をテトラヒドロフランに再溶解した後、再度ヘキサンにより凝固させる操作を数回繰り返して未反応モノマーを除去し、減圧下50℃で乾燥して酸解離性基含有樹脂(第1化合物)を得た。
得られた酸解離性基含有樹脂(第1化合物)の収率は95%であり、Mwは15,000であり、Mw/Mnは2.5であった。
【0128】
その後、得られた第1化合物(100質量部)、界面活性剤としてNBX−15〔ネオス社製〕(0.05質量部)、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(2000質量部)を混合し、攪拌により均一な溶液とした後、この溶液を孔径0.5μmのカプセルフィルターでろ過して第1化合物を含む液体(第1膜形成用組成物)を得た。を得た。
【0129】
尚、この合成におけるMwの測定は下記の要領で行った。更に、後述する各合成においても同様である。東ソー株式会社製GPCカラム(G2000HXL2本、G3000HXL1本、4000HXL1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。また、分散度Mw/Mnは測定結果より算出した。
【0130】
[3]化合物合成方法
(1)第1膜形成工程(P1)
シリコン基板の表面にスピンコーターを用いて、前記[2]で得られた第1化合物を含む液体を塗布した。その後、ホットプレート上で110℃で1分間加熱して、厚さ300nmの第1膜を形成した。
【0131】
(2)第2膜形成工程(P2)
前記[3](1)で得られた第1膜の表面にスピンコーターを用いて、前記[1]で得られた実施例1〜8及び比較例1〜3のいずれかの酸転写用組成物を塗布した。その後、ホットプレート上で100℃で1分間加熱して、厚さ300nmの第2膜を形成した。
【0132】
(3)保護基除去工程(P3)
(3−1)露光工程(P31)
パターンマスクを介して、前記(2)で得られた第2膜の表面に、超高圧水銀灯(OSRAM社製、形式「HBO」、出力1,000W)を用いて100〜1200mJ/cmの紫外光を照射した。露光量は、照度計〔株式会社オーク製作所製、形式「UV−M10」(照度計)に、形式「プローブUV−35」(受光器)をつないだ装置〕により確認した。
【0133】
(3−2)酸転写工程(P32)
前記(3−1)までに得られた積層体をホットプレート上にて、110℃で1分間加熱処理を行った。
【0134】
(4)第2膜除去工程(P4)
前記(3−2)までに得られた積層体をアセトニトリルに30秒間浸漬して、第2膜のみを除去した。
【0135】
(5)第2化合物結合工程(P5)
前記(3)及び前記(4)の保護基除去工程(P3)で第1膜から保護基が解離されて形成されると共に、前記(4)の工程でガラス基板表面に露出されアミノ基(遊離アミノ基)に、1mMのフロレシンイソチオシアネート(Aldrich社製、第2化合物)を含むDMF溶液中において、常温で1時間反応させて蛍光標識を形成する。その後、エタノール、水及びエタノールの順に洗浄した後、乾燥させて暗室に保管する。
【0136】
[4]評価(スポット形状の評価及び感度評価)
前記[3](5)までに得られた基板を、顕微レーザーラマン分光装置(Renishaw社製)を用いて、基板表面に形成された全スポットについて、イソチオシアネート基による吸収領域として観察すると共に、各スポット形状がパターンマスクに正確に対応した50μm×50μmに形成されているかを確認する。そして、上記吸収領域が50μm×50μmの形状に対して欠損が認められる数を換算し、下記基準に基づいて評価し、表3に併記した。また、表3における感度とは、50μm×50μmに形成された、前記(3−1)での最小露光量を示す。
「○」;全スポットに欠損が認められない。
「△」;全スポット数に対して50%以下のスポットに欠損が認められる。
「×」;全スポット数に対して50%を越えるスポットに欠損が認められる。
【0137】
【表3】

【0138】
尚、本発明においては、上記の具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【符号の説明】
【0139】
10;基板、
20;第1膜(第1化合物膜、被パターン化樹脂膜)、21;保護基が解離された部位、P;保護基、22;第1化合物、23;第1化合物の残基、
30;第2膜(酸転写用膜)、31;酸発生部位、32;第2化合物、
41;第2化合物の残基からなる部位、42;第3化合物(他の第2化合物)の残基からなる部位、50;マスク、
P1;第1膜形成工程、P2;第2膜形成工程、P3;保護基除去工程、P31;露光工程、P32;酸転写工程、P4;第2膜除去工程、P5;第2化合物結合工程、P6;第3膜(酸転写用膜)形成工程、P7;保護基除去工程、P71;露光工程、P72;酸転写工程、P8;第3膜除去工程、P9;第3化合物結合工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(P1)酸に不安定な保護基を有する第1化合物を、基板に結合して第1膜を形成する第1膜形成工程、
(P2)下記重合体(A)、下記感放射線性酸発生剤(B)、及び、下記増感剤(C)を含む酸転写用組成物を用いて、前記第1膜上に第2膜を形成する第2膜形成工程、
(P3)前記第2膜を露光し、該第2膜の露光部に生じた酸を、前記第1膜に転写すると共に該第2膜の露光部下の第1化合物から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(P4)前記露光後の第2膜を除去する第2膜除去工程、及び、
(P5)前記保護基が除去された第1化合物に、第2化合物を結合する第2化合物結合工程、を備え、前記第1化合物と前記第2化合物とが結合された化合物を合成することを特徴とする化合物合成方法。
(A)重合体:下記式(1)に示す構成単位及び下記式(2)に示す構造単位を有する重合体。
(B)感放射線性酸発生剤:下記式(3)に示す化合物。
(C)増感剤:下記式(4)に示す化合物。
【化1】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して、3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【化2】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【化3】

【化4】

〔式(4)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
前記感放射線性酸発生剤(B)は、前記重合体(A)100質量部に対して10〜250質量部含有される請求項1に記載の化合物合成方法。
【請求項3】
前記基板は、シリコン、二酸化ケイ素、ガラス、ポリプロピレン又はポリアクリルアミドである請求項1又は2に記載の化合物合成方法。
【請求項4】
前記第1膜形成工程(P1)において、前記第1化合物を、前記基板に間接的に結合する請求項1又は2に記載の化合物合成方法。
【請求項5】
前記第1化合物と前記第2化合物とが結合された前記化合物がバイオチップを構成するプローブである請求項1又は2に記載の化合物合成方法。
【請求項6】
前記第2化合物は、(1)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる化合物、又は、(2)ヌクレオチド、アミノ酸及び単糖類からなる群より選ばれる2以上の化合物が結合された結合体、である請求項5に記載の化合物合成方法。
【請求項7】
請求項1に記載の化合物合成方法により製造されたことを特徴とするマイクロアレイ。
【請求項8】
下記重合体(A)、下記感放射線性酸発生剤(B)、及び、下記増感剤(C)、を含む酸転写組成物であって、
(P1)酸に不安定な保護基を有する第1化合物を基板に結合して第1膜を形成する第1膜形成工程、
(P2)酸転写用組成物を用いて、前記第1膜上に第2膜を形成する第2膜形成工程、
(P3)前記第2膜を露光し、該第2膜の露光部に生じた酸を、前記第1膜に転写すると共に該第2膜の露光部下の第1化合物から前記保護基を除去する保護基除去工程、
(P4)前記露光後の第2膜を除去する第2膜除去工程、及び、
(P5)前記保護基が除去された第1化合物に、第2化合物を結合する第2化合物結合工程、を備え、前記第1化合物と前記第2化合物とが結合された化合物を合成する化合物合成方法に用いられることを特徴とする酸転写用組成物。
(A)重合体:下記式(1)に示す構成単位及び下記式(2)に示す構造単位を有する重合体。
(B)感放射線性酸発生剤:下記式(3)に示す化合物。
(C)増感剤:下記式(4)に示す化合物。
【化5】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して、3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【化6】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【化7】

【化8】

〔式(4)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)
【請求項9】
前記感放射線性酸発生剤(B)は、前記重合体(A)100質量部に対して30〜200質量部含有される請求項8に記載の酸転写用組成物。
【請求項10】
前記基板は、シリコン、二酸化ケイ素、ガラス、ポリプロピレン又はポリアクリルアミドである請求項8又は9に記載の酸転写用組成物。
【請求項11】
前記第1膜形成工程(P1)において、前記第1化合物を、前記基板に間接的に結合する請求項8又は9に記載の酸転写用組成物。
【請求項12】
下記重合体(A)、下記感放射線性酸発生剤(B)、及び、下記増感剤(C)を含むことを特徴とするバイオチップ製造用組成物。
(A)重合体:下記式(1)に示す構成単位及び下記式(2)に示す構造単位を有する重合体。
(B)感放射線性酸発生剤:下記式(3)に示す化合物。
(C)増感剤:下記式(4)に示す化合物。
【化9】

〔式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状の炭化水素基、炭素数3〜10の環状の炭化水素基を表す。また、R及びRは、互いに結合して、3〜10員環の単環式ヘテロ環、又は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子の群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を介して結合して4〜10員環の単環式ヘテロ環を形成してもよい。〕
【化10】

〔式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは1価の有機基を表す。〕
【化11】

【化12】

〔式(4)中、R及びRは各々独立に、アルキル基又はハロゲン原子を表す。n及びmは各々独立に1〜4の整数を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−131718(P2012−131718A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283611(P2010−283611)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】