説明

化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための方法および監視装置

【課題】化学感応性電界効果トランジスタが自己診断機能によって、該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を良好に識別できるようにすること。
【解決手段】前記課題は、化学感応性電界効果トランジスタのドレインコンタクトとソースコンタクトとの間に電圧(UDS)を調整し、該ソースコンタクトとゲート電極との間に電圧(U)を調整するステップ(102)と、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電流(IDS)を使用して化学感応性電界効果トランジスタの動作の仕方を監視するために、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電流(IDS)を検出するステップ(104)とを有する方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に記載された、化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための方法と、化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの機能を監視するための監視装置と、化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するためのコンピュータプログラム製品とに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果トランジスタをベースとする半導体式ガスセンサ、いわゆる化学感応性電界効果トランジスタまたはChemFETは、特定の種類のガスを検出するのに使用される。ガス分子と触媒活性のゲート電位とが相互作用し、この相互作用によって、発生する実効ゲート電位が変化し、この実効ゲート電位の変化が、センサ信号であるソース‐ドレイン電流の変化を引き起こし、このソース‐ドレイン電流の変化を測定することができる。ChemFETは、適切なゲート電極材料を使用することにより、混合気中に存在する非常に低濃度の所定のガス成分のみを、たとえば1桁のppm領域の所定のガス成分のみを、選択的に検出することができる。大きなバンドギャップを有するロバストな半導体材料(たとえばSiC、GaN)を使用することにより、ChemFETを高温でも使用できるようになり、ひいては、腐食性の環境内で高温のガスを測定するのにChemFETを使用することができ、たとえば燃焼排ガスを測定するのにChemFETを使用することができる。それでもなお、上述のような用途のためにロバストかつ長時間安定性のトランジスタを開発および製造することは非常に大きな手間を要する。というのも、たとえば半導体チャネル、オームコンタクト、ゲート絶縁部、ゲート電極等であるトランジスタの構成要素すべてを、とりわけ高温安定性かつ長時間安定性に作製しなければならないからである。素子の動作中に該素子が適正に動作するのを保証するためには、センサ測定信号の妥当性を適切な自己診断機能が検査しなければならず、場合によっては、この自己診断機能がセンサの不具合を識別しなければならないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、化学感応性電界効果トランジスタが自己診断機能によって、該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を良好に識別できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このことを背景として本発明では、独立請求項に記載された、化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための方法と、化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための監視装置と、化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するためのコンピュータプログラム製品とを開示する。各従属請求項および以下の記載に、有利な実施形態が記載されている。
【0005】
本発明は、自動車において化学感応性電界効果トランジスタが動作している間に該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための方法を提供する。前記化学感応性電界効果トランジスタは、ソースコンタクトとドレインコンタクトとゲート電極とを有し、前記方法は、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電圧を調整するステップと、該ソースコンタクトと該ゲート電極との間の電圧を調整するステップとを有する。さらに本発明の方法は、前記ドレインコンタクトと前記ソースコンタクトとの間に流れる電流を使用して前記化学感応性電界効果トランジスタの動作の仕方を監視するために、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電流を検出するステップを有する。
【0006】
また本発明は、自動車において化学感応性電界効果トランジスタが動作している間に該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための次のような方法、すなわち、該化学感応性電界効果トランジスタはソースコンタクトとドレインコンタクトとゲート電極とを有し、前記方法は、該ゲート電極と該ソースコンタクトとの間の交流電圧および/または該ゲート電極と該ドレインコンタクトとの間の交流電圧を調整するステップを有し、該交流電圧の周波数特性は可変である。さらに前記方法は、前記ゲート電極と前記ソースコンタクトおよび/または前記ドレインコンタクトとの間の容量を求めて該容量を用いて前記化学感応性電界効果トランジスタの動作を監視するために、該ゲート電極と該ソースコンタクトおよび/または該ドレインコンタクトとの間の電流を検出するステップを有する。
【0007】
本発明はさらに、自動車において化学感応性電界効果トランジスタが動作している間に該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための監視装置も開示し、該監視装置は、本発明の方法の各ステップを実行ないしは具現化するために構成されている。とりわけ前記制御装置は、本発明の方法の各ステップを実行するために構成された各装置を含むことができる。本発明の実施形態は監視装置の構成でも、本発明の基礎となる課題を迅速かつ効率的に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例の化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための方法のフローチャートである。
【図2】本発明の実施例の化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための制御装置のブロック回路図である。
【図3】本発明の1つの実施例の電気的接続関係を示す、化学感応性電界効果トランジスタの基本構成図である。
【図4】本発明の1つの実施例による、化学感応性電界効果トランジスタの駆動制御時の伝達特性曲線を示すグラフである。
【図5】本発明の1つの実施例による、化学感応性電界効果トランジスタの駆動制御時のトランジスタ伝達特性曲線群を示すグラフである。
【図6】本発明の1つの実施例による、化学感応性電界効果トランジスタの駆動制御時の電流値/電圧値の2つの値対が示されたトランジスタ伝達特性曲線を示すグラフである。
【図7】本発明の1つの実施例による、化学感応性電界効果トランジスタの駆動制御時の電流値/電圧値の4つの値対が示されたトランジスタ伝達特性曲線を示すグラフである。
【図8】本発明の1つの実施例による、化学感応性電界効果トランジスタの駆動制御時の最大容量の計算結果と容量特性曲線とを示すグラフである。
【図9】化学感応性電界効果トランジスタの断面と、本発明の実施例による、ゲート電極の容量‐インダクタンス等価モデルとを示す図である。
【図10】内燃機関の排ガス系統における、化学感応性電界効果トランジスタと、本発明の実施例の制御装置とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、監視装置とは、センサ信号を処理し、処理したセンサ信号に依存して制御信号を出力する電子機器を含むことができる。監視装置はインタフェースを有することができ、このインタフェースは、ハードウェアおよび/ソフトウェアで構成してもよい。ハードウェアで実現される場合には、インタフェースはたとえば、監視装置の種々の機能を含むいわゆるシステムASICの一部とすることができる。しかし、インタフェースは独立した集積回路であることも、少なくとも部分的にディスクリート素子から形成されていることも可能である。ソフトウェアで実現される場合、上記のインタフェースは、例えばマイクロコントローラ上に別のソフトウェアモジュールと並列して設けられるソフトウェアモジュールとすることができる。
【0010】
また、化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための次のようなコンピュータプログラム製品、すなわち、半導体メモリ、ハードディスク記憶装置又は光学記憶装置のような機械読み取り可能な媒体に記憶され、制御装置上で実行したときに上記実施形態に従って上記方法を実行するプログラムコードを含んだコンピュータプログラム製品も有利である。
【0011】
本発明は、ゲート電極の表面上で進行する触媒吸着反応過程によって、該ゲート電極とトランジスタの半導体材料との間の電位を変化させるという認識に基づいている。この電位の変化によって、トランジスタのソースコンタクトとドレインコンタクトとの間の電流の伝導度が変化する。それらの依存関係は非線形であるため、被検出対象である物質の濃度の変化が小さい場合に得られる電流の変化を可能な限り大きくするためには、ChemFETの動作点を最適に調整することが重要である。ChemFETの動作中に該ChemFETの特性を変化させることにより、最適な動作点を変化させることができる。場合によっては、動作点を補正によって追従制御できなくなることがあり、ChemFETがセンサとして機能できなくなってしまう。動作点を公差内で追従制御するためには、特性の変化を表す尺度が必要である。それゆえ、自動車において化学感応性電界効果トランジスタが動作している間に該化学感応性電界効果トランジスタを監視する必要がある。化学感応性電界効果トランジスタが動作している間、該化学感応性電界効果トランジスタの温度はたとえば50℃を上回り、とりわけ100℃を上回るか、または、該化学感応性電界効果トランジスタの周辺温度すなわち該化学感応性電界効果トランジスタ周辺の常温温度を上回る。
【0012】
電界効果トランジスタとは、ソースコンタクトとドレインコンタクトとゲート電極とである少なくとも3つの電気端子を備えた電気的部品を指すことができ、たとえばソースコンタクトとゲート電極との間の制御電圧によって電界が形成される電気的部品を指すことができる。このような電界が、電界効果トランジスタの半導体材料の電気的特性に影響する。前記ソースコンタクトと前記ゲート電極との間の電流は絶縁体によって阻止されるので、該ソースコンタクトと前記ドレインコンタクトとの間において半導体材料に流れる電流を近似的にほぼ電力なしで制御することができる。電界効果トランジスタが化学感応性である場合、前記ゲート電極の化学的特性はたいてい、触媒活性の特性を有する。たとえば、ガス分子とゲート電極とが相互作用し、該ゲート電極とチャネル領域との間の電界に影響することができる。このようにして、前記ゲート電極と相互作用するガス分子は、ソースコンタクトとドレインコンタクトとの間の電流に影響することができる。電圧を調整するとは、電圧を印加することを指すか、または、電圧値を設定することを指すことができる。この電圧はたとえば、一定の直流電圧とするか、または可変の直流電圧とするか、または平均値が一定である交流電圧とするか、または平均値が可変である交流電圧とすることができる。前記電圧が交流電圧である場合、交流電圧の周波数を可変とすることができる。電圧の平均値は0Vとすることができる。電流を検出するとは、電流を測定することを指すか、または、電流値を受け取ることを指すことができる。監視とは、記憶された目標値と実際に検出された値とを比較することを指すことができる。この比較結果は、記憶された目標値と実際に検出された値との差とすることができる。センサの動作が十分であることを識別するためには、前記差の公差上限と公差下限とを使用することができる。前記公差上限および公差下限をそれぞれ1つの値とするか、または、可変のパラメータに対する値の特性経過とすることができる。
【0013】
本発明の別の実施形態では、調整ステップにおいてソースコンタクトとゲート電極との間の電圧を固定に設定してドレインコンタクトと該ソースコンタクトの間の電圧を変化させるか、または、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電圧を固定に設定して該ソースコンタクトと該ゲート電極との間の電圧を変化させることができる。前記ソースコンタクトと前記ゲート電極との間の電圧を一定にしながら前記ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電圧を変化させることにより、トランジスタの特性曲線を求めることができる。このトランジスタ特性曲線は、オーム領域と、少なくとも1つの飽和領域とを有することができる。前記トランジスタ特性曲線のオーム領域の大きさ、または、該オーム領域におけるトランジスタ特性曲線の勾配が、電界効果トランジスタのオームコンタクトの品質を示唆することができる。前記ドレインコンタクトと前記ソースコンタクトとの間の電圧を一定にしながら該ソースコンタクトと前記ゲート電極との間の電圧を変化させることにより、化学感応性電界効果トランジスタの感度を監視することができる。これによって得られる伝達特性曲線は単調に上昇または下降し、この上昇または下降の勾配は可変であるから、この伝達特性曲線の勾配によって、たとえば分子がゲート電極に吸着することによって生じる電界の僅かな変化に対する電界効果トランジスタの感度を知ることができる。
【0014】
本発明の別の実施形態では、本発明の方法はさらに、ゲート電極とソースコンタクトとの間の電流を検出するステップおよび/または該ゲート電極とドレインコンタクトとの間の電流を検出するステップを有する。前記ゲート電極と前記ソースコンタクトおよび/または前記ドレインコンタクトとの間の電流を検出すると、絶縁体の不具合または少なくとも劣化を推定することができる。というのも、通常の場合にはこの電流は小さく、無視できる程度であるからだ。
【0015】
さらに、第1の調整ステップにおいて、少なくとも1つの第1の電圧値を調整し、第1の検出ステップにおいて、該第1の電圧値が調整された後に少なくとも1つの第1の電流値を求め、該第1の電流値と第1の電流目標値とを比較し、次の第2の調整ステップにおいて少なくとも1つの第2の電圧値を調整し、第2の検出ステップにおいて、該第2の電圧値が調整された後に少なくとも1つの第2の電流値を求め、該第2の電流値と第2の電流目標値とを比較する。このことによって、化学感応性電界効果トランジスタの特性曲線をたとえば該化学感応性電界効果トランジスタの所定の動作点において高速かつ簡単に監視することができる。
【0016】
別の実施形態では、前記検出ステップにおいて、前記第1の電圧値と前記第1の電流値との第1の値対と、前記第2の電圧値と前記第2の電流値との第2の値対とから、該第1の値対と該第2の値対との間の特性曲線の勾配を求めることができる。このことによって、第1の電圧値と第2の電圧値との間の間隔における微分商が得られる。前記間隔を小さくすることができ、たとえば0.2Vに小さくすることができる。このことによって、間隔の平均勾配が近似的に得られる。この勾配を、化学感応性電界効果トランジスタの監視に使用することができる。
【0017】
本発明の別の実施形態では、別の調整ステップにおいて少なくとも1つの別の電圧値を調整し、別の検出ステップにおいて、該別の電圧値が調整された後、少なくとも1つの別の電流値を求め、該別の電流値と別の電流目標値とを比較する。このことにより、少なくとも1つの別の監視点において特性曲線を監視することができる。値対の数を多くすることにより、化学感応性電界効果トランジスタの監視をより高精度で行うことができる。
【0018】
本発明の別の実施形態では、化学感応性電界効果トランジスタに、ガス組成が既知であるガスを供給する付加的なステップを有し、該付加的なステップにおいて、ガス組成が既知であるガスをゲート電極に接触させ、前記検出ステップにおいて、前記電流の値と、ガス組成が既知であるガスの組成に対応する記憶された値とを比較する。ガス組成が既知であるガスとは、たとえば空気、混合物を含む空気、または燃焼ガス等である混合気を指すことができ、たとえば、燃料供給なしで行われる慣性走行等であるエンジンの所定の動作状態では、エンジン周辺からの空気を変化させずに該エンジンに通すことができる。また、空気に所定量の添加剤を混合させることもでき、たとえば尿素を混合させることができる。この場合にはガスは、気体状または液状または固体状の物質から成る混合物を指すこともできる。さらに、エンジンが所定の動作点に近づくかまたは通過すると、組成が既知である燃焼排ガスが生成される。ガス組成が既知であるガス中の成分がChemFETのガス感応性のゲート電極と相互作用することにより、ソースコンタクトとドレインコンタクトとの間に流れる電流が変化する。この電流の変化分が、記憶された期待される変化分と異なる場合、ガス感度の変化分を表す尺度を、この期待される変化分との誤差の尺度とすることができる。
【0019】
本発明の別の実施形態では、ドレインコンタクトとソースコンタクトとの間に電圧を調整し、かつ該ソースコンタクトとゲート電極との間に電圧を調整するステップの後に、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間に流れる電流を検出するステップを行い、該ゲート電極と該ソースコンタクトおよび/または該ドレインコンタクトとの間に交流電圧を調整するステップの後に、該ゲート電極と該ソースコンタクトおよび/または該ドレインコンタクトとの間に流れる電流を検出するステップを行うことができる。または、前記ゲート電極と前記ソースコンタクトおよび/または前記ドレインコンタクトとの間に交流電圧を調整するステップの後に、該ゲート電極と該ソースコンタクトおよび/または該ドレインコンタクトとの間に流れる電流を検出するステップを行い、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電圧を調整し、かつ該ソースコンタクトと該ゲート電極との間の電圧を調整するステップの後に、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間に流れる電流を検出するステップを行うことができる。さらに、他のステップを、上述の実施形態の要領で実施することもできる。とりわけ、本発明の1つの実施形態では、個別に説明した上述の各方法の各ステップを相互に組み合わせることができる。このことにより、化学感応性電界効果トランジスタの複数の異なる特性を特に効率的かつ確実に監視することができる。
【実施例】
【0020】
添付図面に基づいて本発明の実施例をより詳細に説明する。
【0021】
図面中、同一の構成要素または類似する構成要素には同一の符号または類似する符号を付しており、これらについては繰り返し説明するのを省略する。さらに、図面の各図、その説明、及び請求項には、多数の特徴が組み合わせて含まれている。当業者にはこれらの特徴を個別に考えることも、本明細書には明示的に記載されていない別の組合せにまとめることも可能であることは明らかである。さらに以下では、種々の拡大縮小率や寸法を使用して本発明を説明するが、本発明はこの拡大縮小率や寸法に限定されないと解すべきである。また、本発明の方法のステップを繰り返して、かつここで記載された順序と異なる順序で実施することもできる。実施例において2つの特徴/ステップが「および/または」で結ばれている場合、この実施例は1つの実施形態では双方の特徴/ステップを含み、別の実施形態ではこれら両特徴/両ステップのうちいずれかのみを含むと解釈することができる。
【0022】
図1は、本発明の実施例の化学感応性電界効果トランジスタ(ChemFET)の少なくとも1つの動作の仕方を監視するための方法のフローチャートである。この実施例の方法は、電圧を調整するステップ102と、電流を検出するステップ104とを有する。このChemFETは、ソースコンタクトとドレインコンタクトとゲート電極とを有する。電圧を調整するステップ102では、ドレインコンタクトとソースコンタクトとの間の電圧を調整し、ソースコンタクトとゲート電極との間の電圧を調整する。この電圧の調整は、50℃を上回る電界効果トランジスタ温度で行われる。ここで、ドレインコンタクトとソースコンタクトとの間の電流を検出するステップ104において、ソースコンタクトとゲート電極との間の電圧を変化させて該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電圧を一定に維持すると、ChemFETの感度を推定することができる。ドレインコンタクトとソースコンタクトとの間の電圧を変化させ、該ソースコンタクトとゲート電極との間の電圧を一定に維持すると、該ドレインコンタクトおよび該ソースコンタクトにおけるChemFETのオームコンタクトの変化を電流から推定することができる。ドレインコンタクトとソースコンタクトとの間の電圧を一定にし、かつ該ソースコンタクトとゲート電極との間の電圧を離散的に変化させると、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電流の遅延で、センサ速度を推定することができる。
【0023】
図2は、本発明の実施例の化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための監視装置200のブロック回路図である。監視装置200は、電圧を調整するための装置202と、電流を検出するための装置204とを有する。このChemFETは、ソースコンタクトとドレインコンタクトとゲート電極とを有する。電圧を調整するための装置202は、ドレインコンタクトとソースコンタクトとの間の電圧、および、ソースコンタクトとゲート電極との間の電圧を調整する。この電圧の調整は、50℃を上回る電界効果トランジスタ温度で行われる。電流を検出するための装置204は、ドレインコンタクトとソースコンタクトとの間の電流を検出する。前記装置202が前記ソースコンタクトと前記ゲート電極との間の電圧を変化させ、前記ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電圧を一定に維持する場合、前記監視装置200は前記装置204を介して、電流からChemFETの感度を推定することができる。前記装置202が前記ドレインコンタクトと前記ソースコンタクトとの間の電圧を変化させ、前記ソースコンタクトと該ゲート電極との間の電圧を一定に維持する場合、前記監視装置200は前記装置204を介して、電流からChemFETのドレインコンタクトとソースコンタクトとにおけるオームコンタクトの変化を推定することができる。
【0024】
図3に示された化学感応性電界効果トランジスタは、該化学感応性電界効果トランジスタを動作させ該化学感応性電界効果トランジスタの電気的な動作を本発明の実施例にしたがって診断するための電気的端子を有する。ChemFETは、ゲート電極300とソースコンタクト302とドレインコンタクト304とゲート絶縁体306とオームコンタクト308とを有する。支持体材料としては半導体材料310が使用される。ChemFETガスセンサが適正に動作するための基本は、電界効果トランジスタとしての該ChemFETガスセンサの動作特性である。この電界効果トランジスタとしての動作特性を判定するためには、動作中に所定の時間間隔で電気的特性曲線を記録し、該電気的特性曲線と、予め記憶された目標値とを比較することができる。このことは、ソース302、ドレイン304およびゲート300の3つのコンタクトに、異なる電圧U,UDSを印加し、その結果としてドレインとソースとの間に生じる電流IDSを測定することによって行われる。場合によっては、目標値の公差領域を設定することもできる。動作中に測定された特性曲線が前記目標値の公差領域外にある場合、センサに不具合が生じている。ここで開示した方法によって、動作中にChemFETガスセンサの電気的特性とガス感知機能との双方を監視して判定することができる。このことは特に重要である。というのも、半導体センサを車両内部診断ないしはOBDセンサ(on board diagnosis)として使用する場合、まずはセンサの適正な動作を保証し、ひいては排ガス後処理システムの適正な動作を保証しなければならないことが法律で定められているからである。すなわち、センサの不具合をセンサ自体が検出して車載電子回路に通知できるようにしなければならない。本発明の1つの側面に、センサ動作特性の妥当性および測定された信号の妥当性を指示するために使用される測定方法を実現するという側面がある。このことを実現するためには、素子の電気的動作を判定し、かつ、ナノ構造化されたガス感応性のゲート電極300の感度を監視する。本発明の利点は、たとえばセンサ材料の過度の劣化に基づいて、センサ素子に発生した不具合を早期に識別することができ、新しい素子へのセンサの交換を適正な時点で、たとえば車両の車載コンピュータに通知できることである。このことにより、前記センサを自動車の排ガス系統において使用する場合にはたとえば、センサ信号の誤差に起因して、排出される有害ガス濃度が過度に高くなることを回避することができる。
【0025】
図4に、本発明の方法の一実施例の結果を示すグラフとして、ChemFETの伝達特性曲線400を示す。ゲート電圧Uを変化させ、ドレイン‐ソース電圧UDSを約7Vに一定に維持している。ここでは、チャネル電流Iを測定して記録している。特性曲線400はセンサの感度を表す。すなわち、動作点402における特性曲線の勾配が大きいほど、ゲート電圧Uの変化分がセンサ信号に変換されるのが改善される。計算によって、たとえば動作点402における特性曲線400の微分を求めることにより、特性曲線400の勾配を求めることができる。この特性曲線400の勾配が公差領域外にある場合、‐とりわけ低いガス濃度に対する‐センサの感度は得られなくなる。
【0026】
図5に、本発明の方法の一実施例の結果を示すグラフとして、ChemFETのトランジスタ特性曲線の曲線群を示す。以下では、本発明の実施例を説明するにあたり、上記で説明した図において使用された符号を使用した。ゲート電圧Uは各特性曲線ごとに対して一定に維持されており、それに対して、ドレイン‐ソース電圧UDSは変化している。それぞれチャネル電流IDSを測定して記録した。オームコンタクト308の劣化は、特性曲線群のオーム領域500の拡大によって分かる。センサが動作する動作点402は一般的に、特性曲線の飽和領域504内で選択される。オームコンタクトの劣化に起因してオーム領域500が拡大すると、動作点402は飽和領域504からオーム領域500に移り、このことにより、動作点402がソース‐ドレイン電圧UDSの変化に依存するようになってしまう。したがって、この特性曲線を用いて動作点402の適性位置を検査することができる。さらに、ゲート漏れ電流を検出することもできる。こうするためには、ゲート電極300と半導体310との間の直流電流を測定する。すなわち、ゲートコンタクト300とソースコンタクト302との間の直流電流ないしはゲートコンタクト300とドレインコンタクト304との間の電流を測定する。ゲート漏れ電流が上昇している場合、このことは、ゲート絶縁体306に損傷が起きていることを示唆しており、極端な場合には、ゲート絶縁体306に絶縁破壊が発生していることを示唆している。
【0027】
図6に、本発明の方法の一実施例の結果を示すグラフとして、ChemFETのトランジスタ特性曲線を示す。ChemFETの動作特性は基本的に、素子の電気的な動作と感知動作とから構成される。電気的動作は特性曲線の解析によって検出することができる。この特性曲線の解析では、最も一般的な場合、多次元のアナログ量が得られ、このアナログ量を適切に評価しなければならない。電気的動作を完全に表すためには、特性曲線全体を測定しなくてもよく、たとえば、特性曲線マップ内の2つの所定の電圧点ないしは基準電圧点TP1,TP2に所期のように調整して評価するだけで十分である。ChemFETの電気的動作の自己診断を行うために、制御装置にセンサの基準データを記憶し、すなわち規定された目標値を記憶し、後でセンサ動作中に、診断値を用いて補償を行うのにこの基準データを使用することができる。具体的な基準値の例には、オーム領域500における特性曲線の勾配、飽和領域504における特性曲線の勾配、オーム領域500における電流の絶対値、または、飽和電流504の絶対値がある。達した電圧点における測定値と、模範パターンの特性曲線上の対応する基準値との間の公差は総じて、0〜50%とすることができ、とりわけ0〜20%とすることができ、有利には0〜5%とすることができる。
【0028】
一例として、オーム領域500におけるテスト点TP1の評価を示す。トランジスタ特性曲線のオーム領域500は、チャネルのピンチオフが開始するまでの特性曲線の線形特性を表している。チャネル電流IDSはここでは基本的に、ソースおよびドレインにおけるオームコンタクト抵抗によって決定される。さらに一例として、飽和領域504におけるテスト点TP2の評価も示している。特性曲線の飽和領域504では、すなわち電圧UDSがUDS>U−UDSである場合、チャネル電流は、印加されるソース‐ドレイン電圧UDSに依存せず、チャネル電流IDSは基本的に、チャネル抵抗によって決定される。その際には、Uthは閾値電圧である。すなわち、チャネル電流を流すためにゲートに印加しなければならない電圧である。
【0029】
自己診断中に求められた値と、記憶された基準データとを使用して、たとえばセンサの現在の電気的状態の以下のような事例識別を行い、ひいては該実際の電気的状態の診断を行うことができる。
【0030】
第1のテスト点TP1における勾配が、該第1のテスト点TP1における勾配の記憶された基準値より低く、同時に、第2のテスト点TP2における絶対値が、該第2のテスト点TP2における記憶された基準値に等しい場合、このことは、オームコンタクトの劣化を示唆する。すなわち、半導体チャネルにおいて本来の電圧降下が実現するまでに必要とされるドレイン‐ソース電圧UDSは高くなる。
【0031】
第1のテスト点TP1における勾配が、該第1のテスト点TP1における勾配の記憶された基準値より大きく、同時に、第2のテスト点TP2における絶対値が、該第2のテスト点TP2における記憶された基準値に等しい場合、このことは、オームコンタクトの抵抗の低下を示唆する。このことは、たとえば不具合箇所が完全に直ることによって電気的なコンタクトが改善されたことを意味する。
【0032】
第1のテスト点TP1における勾配が、該第1のテスト点TP1における勾配の記憶された基準値に等しく、同時に、第2のテスト点TP2における絶対値が、該第2のテスト点TP2における記憶された基準値より低い場合、このことは、半導体チャネルの劣化を示唆する。すなわちチャネル抵抗が上昇すると、トランジスタの飽和電流は、この上昇したチャネル抵抗によって制限される。
【0033】
第1のテスト点TP1における勾配が、該第1のテスト点TP1における勾配の記憶された基準値に等しく、同時に、第2のテスト点TP2における絶対値が、該第2のテスト点TP2における記憶された基準値より大きい場合、このことは、たとえば不具合箇所が直ったことによってチャネル抵抗が低減したことを示唆する。
【0034】
第2のテスト点TP2における勾配が、該第2のテスト点TP2における勾配の記憶された基準値より大きい場合、このことは、トランジスタがピンチオフしていないために飽和状態で安定的な動作を行うことができないことを示唆する。
【0035】
第2のテスト点TP2における勾配が、該第2のテスト点TP2における勾配の記憶された基準値より小さい場合、このことは、トランジスタがピンチオフしていないために飽和状態で安定的な動作を行うことができないことを示唆する。
【0036】
第1のテスト点TP1と第2のテスト点TP2における絶対値が、記憶された基準値より低く、同時に、第2のテスト点TP2における絶対値と第1のテスト点TP1における絶対値との比が、該第2のテスト点TP2における記憶された基準値と該第1のテスト点TP1における記憶された基準値との比に等しく、同時に、第1のテスト点TP1における勾配が該第1のテスト点TP1における勾配の記憶された基準値に等しく、同時に、第2のテスト点TP2における勾配が該第2のテスト点TP2における勾配の記憶された基準値に等しい場合、このことは、オームコンタクトと半導体チャネルとが同様に劣化したことを示唆する。オームコンタクトと半導体チャネルとが同様に劣化すると、センサ全体の電流レベルは低下するが、電気的動作は変化しない。しかし、ガス信号の定量的な評価では、このように低減した電流レベルを考慮しなければならない。
【0037】
図7に、テスト点xにおける勾配を実測によって検出した結果と、本発明の一実施例にしたがって別の複数のテスト点から得られた該テスト点xにおける絶対値とを、図6の特性曲線とともに示す(xは、任意のテスト点を表す変数である)。事例識別を行うのに必要なパラメータを検出できるようにするためには、たとえば4つの測定された値対を使用することができる。こうするためには、特性曲線のオーム領域500と飽和領域504とにおいてそれぞれ、たとえば0.2Vの間隔で相互に離れている2つのUDS/IDS値対を測定する。たとえば、UDS(TP1.1)+0.2V=UDS(TP1.2)である。その際にはたとえば、IDS(TP1.1)およびIDS(TP1.2)の平均値を形成すること、ないしは、IDS(TP2.1)およびIDS(TP2.2)の平均値を形成することによって、TP1ないしはTP2におけるチャネル電流IDSの絶対値abs(TPx)を求めることができる。勾配m(TPx)は、上記2つの値対から直接計算することができる:m(TP1)=(IDS(TP1.1)−IDS(TP1.2))/(UDS(TP1.1)−UDS(TP1.2))、ないしは、TP2でも同様。
【0038】
上記式において、m(TPx)はテスト点xにおける勾配であり、abs(TPx)はテスト点xにおける絶対値である。
【0039】
別の実施形態では、テスト点TP1およびTP2を別のゲート電圧Uにおいて記録することができる。その際には、第1のゲート電圧UG1の場合の第2のテスト点TP2における絶対値が、第2のゲート電圧UG2の場合の第2のテスト点TP2における絶対値に等しい場合、このことが別の診断特徴と見なされ、その際には、トランジスタは電気的に制御できない状態にある。エラーの原因となっている可能性のあるものに、導体路とゲート電極との接続部分の亀裂や、ゲート電極全体に生じる不具合がある。
【0040】
補足的な実施形態ではたとえば、時間t1にわたってテスト点TP2を一定に設定し、たとえばUDS=3,U=0Vを印加し、その後、時間t2にわたってゲート電圧パルスを印加する。このようにしてこのゲート電圧の変化が、テストガス濃度の急峻な変化をシミュレートする。このようにして得られたチャネル電流特性に基づいて、すなわち、チャネル電流がゲート電圧の変化に応答する速度に基づいて、必要な応答時間および減衰時間が未だ満たされるか否かを検査することができる。
【0041】
図8に、本発明の方法の一実施例の結果を示すグラフとして、ChemFETの容量特性を示す。ガスセンサの感度を決定するのは、図3のガスセンサのゲート電極300のナノ多孔質のコーティングである。このナノ多孔質のコーティングは排ガスに直接さらされるので、ナノ多孔質コーティングには、センサの感度の不具合の原因となる種々の劣化が生じる。本発明の方法によって、センサ動作中にコーティングの機能性を検査することができ、この検査によって電極の経時変化を監視することができる。
【0042】
ゲート電極300と半導体310との間の容量を使用して、ナノ多孔質のコーティングの品質を判定することができる。こうするためには、ソース302およびドレイン304のコンタクトを双方ともに、接地電位/0電位にすると同時に、半導体が蓄積状態になるようにゲート電極300における直流電圧を選択する。この状態のとき、たとえば10mV〜500mVである小さい振幅の交流電圧を重畳することにより、有利には20mV〜100mVの振幅の交流電圧を重畳することにより、ゲート電極300と絶縁体306と半導体310とから構成される平行平板コンデンサの容量を測定することができる。この場合には、ガス吸着が発生してもこのガス吸着が重要性を持つことはない。というのも、半導体チャネルにおけるキャリア密度によって、吸着する可能性のあるガス粒子の密度が数オーダ上昇するからである。たとえばガス電極の面積A等であるゲート電極の幾何学的寸法と、絶縁膜の厚さdと、使用される絶縁体の誘電率εとから、この平行平板コンデンサの幾何学的容量を以下の数式で計算することができる:
=ε・ε・A/d
しかし、ゲート電極はナノ多孔質のメタライジングから形成されているので、面全体がメタライジングされているわけではなく、その一部の領域は、全体の容量に関与しない。したがって、上述のように計算された幾何学的容量と、実際に測定された容量との差ΔCが、コーティングの多孔性の程度を表す。ここで、新品状態で動作中に測定を行うことによって得られた測定値と、ある特定の動作時間後に測定を行うことによって得られた測定値とを比較すると、ゲート電極の劣化を推定することができる。測定された容量が減少し、ひいては前記差が拡大した場合、このことは、ガス感応性のコーティングの一部が剥がれ落ちたことを示唆する。このことに対応して、測定された容量が上昇しており、ひいては前記差が縮小した場合、このことから、ナノ構造が融解し、多孔性が減少したことが分かる。
【0043】
図9は、本発明の実施例のChemFETのゲート電極の等価回路図である。電気的に制御可能なゲート電極300の前提条件は、電気伝導度が良好であることだ。すなわち多孔質であっても、電極300の金属構造は電気的に接続されていなければならない。ナノ層の電気的なパーコレーションの程度は、蓄積状態で測定される容量の、周波数に対する依存性から知ることができる。別の実施形態ではこうするために、励振周波数の複数の異なる周波数で、たとえば1kHz,100kHz,1MHzで、ゲート電極300と絶縁体306と半導体310とから構成される平行平板コンデンサの蓄積状態での容量を測定する。この等価回路図で、最小容量と最小抵抗とのネットワークから、電気的なパーコレーションが不十分であるナノコーティングをモデリングすることができる。したがって、電極300は純粋なオーム特性でなく、電極300内には容量成分が存在する。この容量成分により、高周波で励振が行われると位相シフトが発生する。すなわち、特定の時点で印加される電位が局所的に異なってくる。このことは、測定される容量の、周波数に対する依存性となって現れ、ナノ層のパーコレーションが悪いほど、複数の異なる周波数で得られる容量値の相互間の差が大きくなる。本発明の方法はこの作用を利用して、ガス感応性のコーティングの電気的品質を判定する。分解や汚染に起因して、ナノ層の電気的パーコレーションはセンサ動作中に劣化していき、このことによって、センサを、電気的に設定された動作点に正確に調整できなくなり、ひずみや、期待される感度の損失が生じてしまうことになる。上記の測定方法をたとえば、許容可能な公差領域を用いて測定結果を初期化および補償する方法として規則的に使用することにより、ゲート電極の上述のような経時変化を識別することができる。
【0044】
センサの経時変化ないしは変化の程度が、予め設定された公差領域外にある場合にはさらに、半導体センサ(すなわちChemFET)の後調整を該半導体センサ自体が行うことができる。すなわち、センサ(ChemFET)がゲート300ないしはソース‐ドレインにおける電圧を調整して加減することにより、トランジスタの本来の電流値を得て、これによってトランジスタの勾配を所望の勾配に戻すように動作点を再調整する。この値を新たな動作点として、評価電子回路に書き込むことができる。このことは限られた範囲で可能であり、他のすべての自己診断機能が公差領域内にある場合に行うことができる。このことにより、センサの使用時間を長くすることができる。交流電圧と複数の異なる周波数とを使用して行われるセンサの駆動制御は、車両にすでに存在する車載電源網またはマルチメディアネットワークによって行うことができ、また、センサ用に設けられた電子回路も可能である。
【0045】
図10は、内燃機関1002の排ガス系統における、化学感応性電界効果トランジスタ1000と、本発明の実施例の制御装置200とを示す図である。化学感応性電界効果トランジスタ1000のガス感度を診断するために使用される手法は複数存在する。ChemFETガスセンサ1000をエンジン排ガス中で使用する場合、該ChemFETガスセンサ1000のガス感度を判定するためには、エンジン1002の所定の動作点を使用することができる。この所定の動作点は、現在の排ガスの組成と、該組成に対応するセンサ目標値とが既知である動作点である。たとえばエンジン1002の惰性運転中、すなわち燃料噴射が行われない期間中、センサ1000には周辺空気が与えられる。この場合に測定されたセンサ信号を、予め求められた基準信号‐たとえばセンサの設置時/最初の動作開始時に周辺空気で測定された基準信号‐と比較することができる。上記実施形態の代わりに、付加的なChemFETガスセンサ1004を使用することができ、該付加的なChemFETガスセンサ1004を、該付加的なChemFETガスセンサ1004がエンジン1002の排ガスに接触せずに空気基準センサ1004として車両の周辺空気とのみ接触するように設けることができる。このことにより、前記センサ1004は腐食性の排ガスによって劣化することがなくなり、該センサ1004の劣化の原因はもっぱら、運転温度での電気的な動作のみになる。それに対し、排ガス中に排ガスセンサ1000として設けられたChemFETには、電気的動作による劣化も、腐食性の排ガスによる劣化も生じる。両センサ1000,1004の電気的な動作はともに同様であり、それゆえ、両センサ1000,1004の動作に起因する劣化特性は同様であるから、両センサ1000,1004の感度の差と、腐食性の排ガスによる劣化との対応関係を得ることができる。感度差を求めるためには、エンジン1002が惰性運転中であり排ガス管に流れるのがもっぱら周辺空気のみである場合に、空気基準センサ1004と排ガスセンサ1000との間で比較測定を行うことができる。両センサ1000,1004が示す信号が同じである場合、排ガスセンサ1000の腐食に起因する劣化は生じていないことになる。両センサ1000,1004が示す信号が相違する場合、排ガス系統内の厳しい条件によって排ガスセンサ1000が劣化したことを推定することができる。この場合、両センサ1000,1004の差を排ガスセンサ1000のオフセット補償または再校正に使用することができ、後続の運転中にこの差を排ガス分析で考慮することができる。両センサ1000,1004の信号差が限界値(閾値)を超えた場合、制御装置200からエラー通知が出力される。このエラー通知は場合によっては、排ガスセンサ1000の交換を推奨するエラー通知である。
【0046】
別の実施例では、ラムダセンサとの酸素濃度の比較によってChemFETセンサ1000のガス感度を判定する。現在の酸素濃度の値は、ミリ秒領域でラムダセンサから制御装置200へ送信される。ChemFETセンサチップ1000に専用に設けられた酸素測定電極も排ガス中の酸素濃度を測定し、制御装置200がこれらの値を比較する。ガスにさらされる酸素基準電極も、たとえばNOxや場合によってはNH,HCを検出するための別の測定電極に対して予め決まった程度は経時変化するので、たとえばNOxや場合によってはNH,HCを測定するための別の測定電極の感度も評価することができる。
【0047】
別の実施例では、惰性運転中に尿素水溶液1008をSCRシステムに過剰調量することができる。惰性運転中にはエンジン排ガスが排ガス管に流れることはなく、周辺空気のみが排ガス管に流れるので、SCR触媒1010において尿素水溶液1008に含まれるアンモニアによって変換される窒酸化物は存在しない。したがって、アンモニアは消費されずにSCR触媒1010から出てくるので、尿素水溶液1008の状態で調量されたときの濃度に直接関係づけられる。SCR触媒から出てきたアンモニアは、たとえば酸化触媒による変換によって、センサ1000のセンサ表面上でたとえばNHまたはNOxとして検出される。尿素水溶液1008の過剰調量の程度が信号レベルの程度になるので、ChemFETセンサ1000の感度となり、予め求められた基準値と比較することができる。
【0048】
上記実施形態の代わりに、ガス感度を監視するために、エンジン1002の負荷点が異なる負荷点に切り替わるときに求められた基準値を使用することができる。たとえば、エンジン1002が運転点Aから運転点Bに負荷切り換えを行うと、排ガス組成に特徴的な変化が生じ、センサ1000の動作が適正である場合には、検出可能なガス内で特徴的な信号レベルを有する信号が生成される。複数の典型的な負荷切換の複数の基準値を記憶する場合には、センサ動作中に、1つの既知の負荷切換が行われると直ちにガス電極の機能を検査することができる。記憶されたセンサ基準値に対応する負荷切換を制御装置200が識別すると直ちに、該基準値と、この負荷切換中に実際に測定されたセンサ値とを比較することができる。基準値とセンサ値とが一致するか、ないしは基準値とセンサ値との差が許容可能な公差領域内にある場合、センサ1000の感度が正常であることを推定することができる。前記差が公差領域を超えた場合、まず、内燃機関の状態の変化の原因となる障害、ひいては、予め求められた基準値に排ガス値が一致しなくなる原因となる障害がエンジン1002に生じているか否かを検査することができる。たとえば、制御装置200に設けられたエンジン1002の自己診断やエラーメモリによって。エンジン1002に障害が発生していない場合、排ガスセンサ1000の感度に誤差が生じていることを推定することができる。
【0049】
上述の方法を巧妙に組み合わせることにより、不具合の原因を絞り込み、適切な補償計算を行ってセンサ1000をさらに動作させることができるか否かを決定することができる。このことはたとえば、惰性運転中の調整によって排ガスセンサ1000と空気基準センサ1004との間に差が生じており、にもかかわらず、尿素水溶液1008の過剰調量ではセンサ感度が目標領域内にある場合に当てはまる。このことは、NHないしはNOxに対する感度は変わらないが、センサ基準線が変化したことを示唆する。それゆえ、適切なオフセット補償を行えば、排ガスセンサ1000の動作を継続することができる。
【0050】
異なるガス環境中でインピーダンス測定ないしは直流電流測定を行うことにより、上述の自己診断機能の効果を直接見ることができる。
【符号の説明】
【0051】
102 電圧を調整するステップ
104 電流を検出するステップ
200 監視装置
202 電圧を調整するための装置
204 電流を検出するための装置
300 ゲート電極
302 ソースコンタクト
304 ドレインコンタクト
306 ゲート絶縁体
308 Ωコンタクト
310 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車において、ソースコンタクト(302)とドレインコンタクト(304)とゲート電極(300)とを有する化学感応性電界効果トランジスタの動作中に該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視する方法であって、
前記方法は、
・前記ドレインコンタクトと前記ソースコンタクトとの間の電圧(UDS)を調整し、該ソースコンタクトと前記ゲート電極との間の電圧(U)を調整するステップ(102)と、
・前記ドレインコンタクトと前記ソースコンタクトとの間の電流(IDS)を使用して前記化学感応性電界効果トランジスタの動作の仕方を監視するために、該ドレインコンタクトと該ソースコンタクトとの間の電流(IDS)を検出するステップ(104)と
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電圧を調整するステップ(102)において、
・前記ソースコンタクト(302)と前記ゲート電極(300)との間の電圧(U)を固定に設定して前記ドレインコンタクト(304)と該ソースコンタクトの間の電圧(UDS)を変化させるか、または、
・前記ドレインコンタクトと前記ソースコンタクトとの間の電圧を固定に設定して該ソースコンタクトと前記ゲート電極との間の電圧を変化させる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法はさらに、前記ゲート電極(300)と前記ソースコンタクト(302)との間の電流および/または該ゲート電極と前記ドレインコンタクト(304)との間の電流を検出するステップを有する、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記電圧を調整する第1の調整ステップ(102)において、少なくとも1つの第1の電圧値を調整し、前記電流を検出する第1の検出ステップ(104)において、該第1の電圧値が調整された後に少なくとも1つの第1の電流値を求め、該第1の電流値と第1の電流目標値とを比較し、
前記電圧を調整する第2の調整ステップにおいて、少なくとも1つの第2の電圧値を調整し、前記電流を検出する第2の検出ステップにおいて、該第2の電圧値が調整された後に少なくとも1つの第2の電流値を求め、該第2の電流値と第2の電流目標値とを比較する、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記電流を検出するステップ(104)において、前記第1の電圧値と前記第1の電流値との第1の値対(TP1)と、前記第2の電圧値と前記第2の電流値との第2の値対(TP2)とから、該第1の値対と該第2の値対との間の特性曲線の勾配を求める、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記電圧を調整する別の調整ステップ(102)において、少なくとも1つの別の電圧値を調整し、前記電流を検出する別の検出ステップ(104)において、該別の電圧値が調整された後、少なくとも1つの別の電流値を求め、該別の電流値と別の電流目標値とを比較する、
請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記方法はさらに、前記化学感応性電界効果トランジスタに、ガス組成が既知であるガスを供給し、該ガスを前記ゲート電極(300)に接触させるステップを有し、
前記電流を検出するステップにおいて、前記電流の値と、前記ガス組成が既知であるガスの組成に対応する記憶された値とを比較する、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
自動車において、ソースコンタクト(302)とドレインコンタクト(304)とゲート電極(300)とを有する化学感応性電界効果トランジスタの動作中に該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視する方法であって、
前記方法は、
・前記ゲート電極と前記ソースコンタクトおよび/または前記ドレインコンタクトとの間に、可変の周波数特性を有する交流電圧(UGS)を調整するステップ(102)と、
・前記ゲート電極と前記ソースコンタクトおよび/または前記ドレインコンタクトとの間の容量を検出し、該容量を使用して前記化学感応性電界効果トランジスタの動作の仕方を監視するために、該ゲート電極と該ソースコンタクトおよび/または該ドレインコンタクトとの間の電流を検出するステップ(104)と
を有することを特徴とする方法。
【請求項9】
自動車において、ソースコンタクト(302)とドレインコンタクト(304)とゲート電極(300)とを有する化学感応性電界効果トランジスタの動作中に該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための方法であって、
最初に請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法のステップを実施し、その後に請求項8に記載の方法のステップを実施するか、または、
最初に請求項8に記載の方法のステップを実施し、その後に請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法のステップを実施する
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
自動車において化学感応性電界効果トランジスタの動作中に該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するための監視装置であって、
前記監視装置は、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法のステップを実施するように構成されていることを特徴とする、監視装置。
【請求項11】
自動車において化学感応性電界効果トランジスタの動作中に該化学感応性電界効果トランジスタの少なくとも1つの動作の仕方を監視するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品であって、
プログラムが制御装置上で動作する場合に請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施するように、前記プログラムコードは機械読み取り可能な担体に記憶されている
ことを特徴とする、コンピュータプログラム製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−159511(P2012−159511A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21153(P2012−21153)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】