説明

化粧料組成物

【課題】美白剤、老化防止剤、及び/又は紫外線暴露によるシワ形成の抑制剤として有用な化粧料組成物を提供する。
【解決手段】下記の一般式(V):


(式中、R7はグリコシル基、リン酸基、硫酸基、又はR8と結合した環状リン酸基を示し;R8は-CH2OH、-CHO、-CH2NH2、-CH2-アミノ酸残基、又は-CH2-OPO2Hを示し;R9は水素原子又は-PO3H2を示す)で表される化合物又はその塩を含む化粧料のための組成物であって、美白剤、老化防止剤、及び/又は紫外線暴露によるシワ形成の抑制剤である組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピリドキシン、ピリドキサール、及びピリドキサミンはともにビタミンB6作用を持つ物質であり、それぞれの5'位のリン酸エステルであるピリドキシン 5'-リン酸、ピリドキサール 5'-リン酸、及びピリドキサミン 5'-リン酸とともにビタミンB6群と呼ばれている。これらの化合物は体内でピリドキサール 5'-リン酸に代謝され、アミノ酸代謝にあずかる酵素の補酵素として重要な役割を果たしている。
【0003】
ピリドキシン及びその塩酸塩は、光に対して非常に不安定であることが知られており、ピリドキサール、ピリドキサミン、及びピリドキサール 5'−リン酸も同様に光に対して非常に不安定である。このため、光安定性を向上させたビタミンB6群の化合物を提供することが望まれている。
【0004】
一方、ビタミンB6を配糖化したビタミンB6配糖体がいくつか報告されている。例えば、ピリドキシン 5'-β-D-グルコシドは植物体内に存在するが、その光安定性についての報告はない。4'又は5'位が配糖化されたビタミンB6配糖体(ピリドキシン 4'-α-D-グルコシド、ピリドキシン 5'-α-D-グルコシド)が酵素的に合成されている(例えば、J. Vitaminol., 15, pp.160-166, 1969及びMethods in Enzymology, 280, pp.66-71, 1997)。ピリドキシン 4'-α-D-グルコシド、ピリドキシン 5'-α-D-グルコシドの安定性については、塩酸ピリドキシンに比べ、これらの物質が製剤中で50℃での長期安定性に優れているとの報告がある(例えば、特開2002-265316号公報及び特開2002-265368号公報)。光安定性については、紫外線ランプ照射試験において、ピリドキシン 4'-α-D-グルコシドとピリドキシン 5'-α-D-グルコシドの混合物の光安定性が塩酸ピリドキシンより向上しているとの報告があるが(例えば、J. Vitaminol., 17, pp.121-124, 1971)、その安定性は実用に十分ではない。また、従来、ビタミンB6の3位を配糖化及びリン酸エステル化した化合物は報告されていない。
【0005】
ビタミンB6は、ホウ酸の添加(ビタミン、22、138-141(1961))又は糖アルコール類の添加(特開平07-20664公報)により光安定性が向上することが知られている。しかしながら、その効果は十分でなく、しかもホウ酸や糖アルコール類の添加により用途が限定されるという難点があった。
【0006】
ビタミンB6を他のビタミンと混合した場合には、他のビタミンの分解が促進される場合があることが知られている。例えば、パントテン酸カルシウムとビタミンB6とを混合し、40℃、75%RHで保存すると、パントテン酸カルシウムの分解が促進されることが報告されている(家庭薬研究、54(5)、54-58(1986))ホウ酸が添加された水溶液中では、ビタミンB6とパントテン酸類がともに安定に存在できることが知られているが(特開平05-17355公報)、その効果は十分ではなく、また、ホウ酸の添加により用途が限定されるという難点があった。
【0007】
ビタミンB6は生体中のタンパクの代謝に重要な働きをするビタミンであり、脂肪の代謝にも補酵素として働き、不足すると皮膚の炎症、腫張、脱毛などを引き起こす(フレグランスジャーナル、17(3)、96-100(1986)、特開2002-265368公報)。皮膚外用剤としては、従来より塩酸ピリドキシンなどのビタミンB6誘導体を配合した外用剤が肌あれ、ニキビ、日焼け、雪焼けによるほてりの軽減、炎症によるかゆみ、乾性脂漏によるふけの治療や予防などに用いられてきた。しかしながら、従来用いられてきたビタミンB6誘導体は光による安定性が悪く、その分解物に皮膚刺激が認められるなどの問題を有しており、皮膚外用剤に配合して使用した場合にもビタミンB6としての充分な効果が得られないという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ビタミンB6及びその誘導体の不安定さ、特に光に対する不安定さは実用上の障害となっている。光に対して安定なビタミンB6誘導体を提供することができれば、その用途を広げることが可能となる。従って、本発明の課題は、安定なビタミンB6誘導体を提供することにある。特に本発明の課題は、光に対する安定性を改善したビタミンB6誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ビタミンB6の3位を配糖化及びリン酸又は硫酸エステル化した特定の構造を有するビタミンB6誘導体(以下、「ビタミンB6誘導体」と略す場合がある。)が優れた安定性を有しており、特に光に対する安定性が顕著に改善されていることを見出した。また、本発明者らはさらに研究を行い、上記のビタミンB6誘導体の製造用中間体として有用な新規化合物、及び上記の該製造用中間体を用いた上記ビタミンB6誘導体の効率的な製造方法を見出した。また、本発明者らは、上記ビタミンB6誘導体が、医薬、食品、飼料、及び化粧料などの組成物中においても安定に存在して優れた効果を示すこと、及び該組成物中の他のビタミンの安定性に影響を与えないことを見出した。また、上記ビタミンB6誘導体が、特に美白効果、老化防止効果、及びシワ抑制効果などに顕著な効果を有することも見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明により、下記の一般式(I):
【化1】

(式中、R1はグリコシル基、リン酸基、又はR2と結合した環状リン酸基を示し;R2は-CH2OH、-CHO、-CH2NH2、-CH2-アミノ酸残基、又は-CH2-OPO2Hを示し;R3は水素原子又は-PO3H2を示す)で表される化合物又はその塩が提供される。
【0011】
また、本発明の別の態様により、上記一般式(I)で表される化合物の製造用中間体として有用な下記の一般式(IV):
【化2】

(式中、R4は-CH2OH、-CHO、又は-CH2NH2を示すか、あるいは保護基で保護された状態の-CH2OH、-CHO、又は-CH2NH2を示し;R5は水素原子、水酸基の保護基、又はリン酸基若しくは保護されたリン酸基を示し;R6は保護基を有していてもよいグリコシル基又は保護基を有していてもよいリン酸基を示す)で表される化合物又はその塩が提供される。
【0012】
さらに本発明の別の態様により、上記一般式(I)で表される化合物又はその塩の製造方法であって、一般式(II):
【化3】

(式中、R4は-CH2OH、-CHO、又は-CH2NH2を示すか、あるいは保護基で保護された状態の-CH2OH、-CHO、又は-CH2NH2を示し;R5は水素原子、水酸基の保護基、又はリン酸基若しくは保護されたリン酸基を示す)で表される化合物又はその塩と下記の一般式(III):
6−X (III)
(式中、R6は保護基を有していてもよいグリコシル基を示し、Xは脱離基を示す)で表される化合物とを反応させて上記の一般式(IV)で表される化合物を得る工程、及び必要に応じて上記一般式(IV)で表される化合物を脱保護する工程を含む方法が提供される。
【0013】
また、本発明により、下記の一般式(V):
【化4】

(式中、R7はグリコシル基、リン酸基、硫酸基、又はR8と結合した環状リン酸基を示し;R8は-CH2OH、-CHO、-CH2NH2、-CH2-アミノ酸残基、又は-CH2-OPO2Hを示し;R9は水素原子又は-PO3H2を示す)で表される化合物又はその塩を含む化粧料、医薬、食品、及び/又は飼料のための組成物が提供される。
【0014】
さらに、一般式(V)で表される化合物又はその塩を化粧料、医薬、食品及び/又は飼料のための組成物中に添加して、該組成物中のビタミンを安定化する方法、及び一般式(V)で表される化合物又はその塩と少なくとも一種のビタミンとを含み、該ビタミンの安定性が高められた化粧料、医薬、食品、及び/又は飼料のための組成物も本発明により提供される。
【0015】
これらに加えて、美白剤、老化防止剤、及び/又は紫外線暴露によるシワ形成の抑制剤である上記の化粧料のための組成物;(A)一般式(V)で表される化合物、及び(B)美白剤、酸化防止剤、消炎剤、血行促進剤、細胞賦活剤、及び紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上の物質を含有する化粧料のための組成物であって、美白剤、老化防止剤、及び/又は紫外線暴露によるシワ形成の抑制剤として用いる組成物;及び(A)一般式(V)で表される化合物、及び(B)アルブチンを含有する美白剤も本発明により提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
R1はグリコシル基、リン酸基、又はR2と結合した環状リン酸基を示す。本明細書において「グリコシル基」とは糖化合物の1位(フルクトースの場合には2位)の水酸基を除去して得られる残基を意味する。R1が示すグリコシル基とピリジン環とのエーテル結合のアノマー型はα又はβ型のいずれでもよく、あるいは両者の混合物であってもよい。グリコシル基を構成する糖化合物の種類は特に限定されず、例えば単糖、二糖、三糖、又は四糖以上のオリゴ糖のいずれでもよい。糖化合物の立体に関しては、D-又はL-、あるいは混合物のいずれであってよい。グリコシル基を構成する糖化合物としては、例えば、D−グルコース、L-グルコース、D−ガラクトース、L−ガラクトース、D−マンノース、L−マンノース、D−フルクトース、L−フルクトース、D−リボース、L―リボース、D−キシロース、L−キシロース、D−アラビノース、L−アラビノース、D−タロース、L−タロース、D-リキソース、L-リキソース、D-アロース、L-アロース、D-アルトロース、L-アルトロース、D-グロース、L-グロース、D-イドース、L-イドース、D−キノボース、L−キノボース、D−ラムノース、L−ラムノース、D−フコース、L−フコース、マルトース、セロビオース、ラクトース、又はマルトトリオースなどが挙げられる。これらのうち、D−グルコース、D−ガラクトースが好ましい。
【0017】
R1が示すリン酸基は、モノリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸などの鎖状エステル体、モノリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸などのR2との環状エステル体のいずれでもよく、あるいは両者の混合物であってもよい。
【0018】
R2は-CH2OH、-CHO、-CH2NH2、-CH2-アミノ酸残基、又は-CH2-OPO2Hを示す。R2が示す-CH2-アミノ酸残基は、アミノ酸のアミノ末端が-CH2-に結合した基を意味する。アミノ酸の不斉炭素原子が存在する場合は、光学活性体、又はラセミ体のいずれであってもよい。アミノ酸基を構成するアミノ酸化合物としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン酸、ホモシステイン酸などの酸性アミノ酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、セリン、ホモセリン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンなどの中性アミノ酸、リジン、オルニチン、アルギニン、ヒスチジンなどの塩基性アミノ酸が挙げられる。これらのうち、L−セリンが好ましい。
【0019】
R4、R5、及びR6における保護基は当業者に適宜選択可能である。例えば、水酸基、アミノ基、アルデヒド基などに適した保護基並びにその導入方法及び脱離方法は、例えば、セオドラ・W.・グリーン(Theodora W. Green)ら編「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシズ」(John Wiley & Sons, Inc., 1999)、「ハンドブック・オブ・リエージェンツ・フォー・オーガニック・シンセシス」(全4巻、John Wiley & Sons, Inc., 1999)等に記載されているので、当業者は所望の保護基を選択して、容易に保護基の導入及び脱離を行うことができる。
【0020】
上記一般式(I)又は(IV)で表される化合物は塩を形成することができる。薬理学的に許容される塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、あるいはメタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマール酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、マンデル酸塩、ケイ皮酸塩、乳酸塩等の有機酸塩を挙げることができる。酸性基が存在する場合には、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の金属塩、又はアンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、ジシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩を挙げることができる。グリシンなどのアミノ酸と塩を形成する場合もある。
【0021】
上記一般式(I)又は(IV)で表される化合物又はその塩は、水和物又は溶媒和物として存在する場合もある。一般式(I)又は(IV)で表される化合物は1以上の不斉炭素を有するので、光学活性体やジアステレオマーなどの立体異性体として存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、光学対掌体又はジアステレオマーの任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。
【0022】
上記一般式(I)で表される本発明の化合物の好ましい例として、例えば、
ピリドキシン 3-β-グルコシド
ピリドキシン 3-α-グルコシド
ピリドキサミン 3-β-グルコシド
ピリドキサミン 3-α-グルコシド
ピリドキサール 3-β-グルコシド
ピリドキサール 3-α-グルコシド
ピリドキシン 3-β-ガラクトシド
ピリドキシン 3-α-ガラクトシド
N-(4-ピリドキシルメチレン)-L-セリン 3-β-グルコシド
N-(4-ピリドキシルメチレン)-L-セリン 3-α-グルコシド
ピリドキシン 3-リン酸
ピリドキシン 3,4'-環状リン酸
N-(4-ピリドキシルメチレン)-L-セリン 3-リン酸
などを挙げることができる。また、これらの化合物のD-異性体をさらに好ましい例として挙げることができる。もっとも、本発明の化合物はこれらの具体例に限定されることはない。
【0023】
一般式(I)で表される本発明の配糖体化合物は、例えば、下記の反応式に従って製造することができる。スキーム中のR1、R2、R3、R4、R5、R6、及びXは上記の定義と同義であるが、下記の反応式は、1又は2以上の保護基を有する一般式(IV)で表される化合物を製造し(工程A)、該保護基を工程Bにより脱離する方法を示した(従って、R4、R5、及びR6からなる群から選ばれる基のうちの少なくとも1つは保護基を有する)。工程Bにおける脱保護は、保護基が複数ある場合には段階的に保護基を脱離する工程、あるいはすべての保護基を同時に脱離する工程などにより行われる。もっとも、一般式(I)で表される本発明の化合物の製造方法は下記の方法に限定されることはない。また、一般式(I)で表される本発明の化合物の範囲は、下記の方法により製造されたものに限定されることもない。
【0024】
【化5】

【0025】
まず、一般式(II)で表される化合物と一般式(III)で表される化合物とをグリコシル化反応に付して一般式(IV)で表される化合物を製造する。この時、活性化剤を使用しても、また使用しなくてもよい。一般式(II)で表される化合物は、例えば、α45-ジ-O-アセチルピリドキシンやα45-ジ-O-ベンゾイルピリドキシンは、W. Korytnykらが述べている方法(J. Org. Chem., 32, 3791-3796, 1967)で、例えば、α45-O-イソプロピリデンピリドキシンは水野らが述べている方法(ビタミン、49、395-401、1975)で、例えば、ピリドキサールモノエチルアセタールはD. Heylらが述べている方法(J. Am. Chem. Soc., 73, 3430-3439, 1951)で得ることができる。
【0026】
一般式(II)で表される化合物において、R4における水酸基の保護基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、tert-ブチルジメチルシリル基、テトラヒドロピラニル基、イソプロピリデン基、又はイソブチリデン基などを用いることができ、R4におけるホルミル基の保護基としては、例えば、アセチル基又は環状アセタール基などを用いることができ、R4におけるアミノ基の保護基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、又はtert-ブトキシカルボニルオキシ基などを用いることができる。R5としては、水素原子、水酸基の保護基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、tert-ブチルジメチルシリル基、テトラヒドロピラニル基、イソプロピリデン基、又はイソブチリデン基など)、又はリン酸若しくは保護されたリン酸(例えば、リン酸ジエチル、リン酸ジ-tert-ブチル、又はリン酸ジベンジルなど)を用いることができる。なお、R4及びR5が互いに結合して環を形成した保護基を示してもよい。例えば、R4及びR5が互いに結合した保護基としてイソプロピリデン基、イソブチリデン基、モノメチルアセタール基、又はモノエチルアセタール基などを例示することができる。
【0027】
一般式(III)で表される化合物は、糖化合物の1位(フルクトースの場合には2位)の水酸基がXで置換された化合物であり、他の水酸基は一部又は全部が保護されていることが好ましく、全部が保護されていることがより好ましい。この化合物は、例えば、実験化学講座26、第4版、有機合成VIII(日本化学会編、丸善、1992)、セオドラ・W.・グリーン(Theodora W. Green)ら編「プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシズ」(John Wiley & Sons, Inc., 1999)などに記載の方法などにより当業者が容易に入手できる。
【0028】
水酸基の保護基の種類は特に限定されず、水酸基を保護するための保護基として通常利用できるものであれば、いかなるものを利用してもよい。すべての保護基が同一であってもよいが、一部又は全部が異なる種類の保護基であってもよい。また、水酸基の保護基は他の保護基と環を形成していてもよい。水酸基の保護基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、又はベンジル基などが好ましい。
【0029】
Xが示す脱離基はグリコシル結合生成反応(すなわち一般式(II)で表される化合物のフェノール性水酸基との置換反応)において脱離するものであればその種類は特に限定されないが、例えば、水酸基、アセチルオキシ基などのアルカノイルオキシ基、ヨウ素、塩素、臭素、フッ素などのハロゲン原子、トリクロロアセトイミデート基、N-メチルアセトイミデート基、チオメチル基、チオフェニル基などを用いることができる。糖化合物としてはR1について説明した糖化合物を用いることができる。一般式(II)で表される化合物と一般式(III)で表される化合物の比率は特に限定されず、どちらかが過剰であっても差し支えないが、例えば、一般式(II)で表される化合物と一般式(III)で表される化合物とのモル比が0.01から100の範囲で反応を行うことができ、0.5から2の範囲であることが好ましい。
【0030】
本反応の活性化剤の使用量は特に限定されず、触媒量から大過剰量まで、活性化剤の種類に応じて適宜の使用量を選択することができる。例えば、一般式(II)で表される化合物と一般式(III)で表される化合物の少ないほうの当量に対して、0.01〜100当量の範囲を選択できる。活性化剤としては、例えば、臭化水銀(HgBr2)、シアン化水銀(Hg(CN)2)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(AgOSO2CF3)、過塩素酸銀(AgClO4)、炭酸銀(Ag2CO3)、酸化銀(Ag2O)、ケイ酸銀、銀ゼオライト、四フッ化ホウ酸銀(AgBF4)、p-トルエンスルホン酸銀(p-MeC6H5SO3Ag)、テトラエチルアンモニウムブロマイド(Et4NBr)、テトラブチルアンモニウムブロマイド、(n-Bu4NBr)、p-トルエンスルホン酸(p-TsOH)、塩化スズ(II)(SnCl2),塩化スズ(IV)(SnCl4)、トリメチルシリルトリフラート(Me3SiOSO2CF3)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF3・OEt2)、四フッ化ケイ素(SiF4)、メチルトリフラート(CH3OSO2CF3)、臭化銅(II)(CuBr2)、N-ブロムコハク酸イミド(NBS)、N-ヨウドコハク酸イミド(NIS)、トリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)、ヨードニウムジコリジン過塩素酸塩(IDCP)、無水トリフルオロメタンスルホン酸((CF3SO2)2O)、ジメチルメチルチオスルホニウムトリフラート(CH3SS+(CH3)2・CF3SO3-)、塩化ベンゼンセレネニル(C6H5SeCl)、メチルチオブロマイド(CH3SBr)、又は過塩素酸トリチル(TrClO4)等が挙げられ、好ましくは炭酸銀、酸化銀、過塩素酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀などが用いられる。2種以上の活性化剤を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
反応溶媒の種類は、反応の進行を妨げず、原料を溶解せしめる溶媒であれば特に限定されない。例えば、原料と同量から100倍程度の反応溶媒を用いることができ、5倍から20倍が好ましい。より具体的には、例えば、塩化メチレン(CH2Cl2)、クロロホルム(CHCl3)、ジクロロエタン(ClCH2CH2Cl)、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、又はニトロメタン(CH3NO2)等が挙げられ、好ましくは塩化メチレン又はトルエンなどが用いられる。2種以上の有機溶媒の混合物を用いてもよい。反応温度は、通常は−100〜150℃の範囲であり、好ましくは0〜100℃の範囲である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、例えば1〜72時間程度であり、好ましくは2〜24時間である。
【0032】
次いで、一般式(IV)で表される化合物に存在する1又は2以上の保護基を除去することにより、一般式(I)で表される化合物を製造することができる。例えば、保護基がアセチル基である場合は、アルカリ加水分解によって脱アセチル化できる。加水分解に使用する塩基としては、通常の反応において塩基として使用されるものであれば特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム、又はアンモニア水等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどを用いることができる。反応溶媒としては、反応の進行は妨げず、原料を溶解せしめる溶媒であれば特に制限はないが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール等)、DMF、DMAc、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、水、アセトン、又はこれらの混合物などであり、好ましくはアルコール類、水、又はこれらの混合物である。反応温度は、通常は−20〜150℃であり、好ましくは10〜30℃である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、通常5分〜36時間であり、好ましくは10分〜16時間である。
【0033】
例えば、保護基がベンジル基である場合は、水素添加によって脱ベンジル化できる。水素化触媒としてパラジウム炭素又は白金等の触媒を使用することができるが、好ましくはパラジウム炭素である。反応溶媒としては、触媒毒とならない不活性な有機溶媒であればその種類は特に限定されないが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール等)、DMF、DMAc、酢酸、水、又はそれらの混合物が用いられ、好ましくはメタノール又は酢酸を用いることができる。反応温度は通常0〜50℃であり、好ましくは10〜30℃である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、通常1〜24時間であり、好ましくは1〜16時間である。
【0034】
例えば、保護基がイソブチリデン基又はモノエチルアセタール基の場合は、酸加水分解によって脱アセタール化又は脱イソブチリデン化できる。加水分解に使用する酸としては、通常の反応において酸として使用されるものであれば特に制限はないが、塩酸、臭化水素水、硫酸、酢酸、又はp-トルエンスルホン酸等が挙げられ、好ましくは塩酸又は酢酸などを用いることができる。反応溶媒としては、反応の進行は妨げず、原料を溶解せしめる溶媒であれば特に制限はないが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール等)、DMF、DMAc、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、水、アセトン、又はこれらの混合物等であり、好ましくはアルコール類、水、又はこれらの混合物である。反応温度は、通常−20〜150℃であり、好ましくは10〜100℃である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、通常5分〜36時間であり、好ましくは10分〜16時間である。
【0035】
さらに所望により、R4が-CH2-アミノ酸、又は-CH2NH2である一般式(IV)の化合物は、R4が-CHOである一般式(IV)の化合物とアミノ酸又はヒドロキシルアミンとを縮合し、水素添加することにより製造することができる。アミノ酸はN末端アミノ基が無置換であることが好ましく、C末端のカルボキシル基及び側鎖の官能基は無置換であるか、又は保護されていてもよい。この化合物は、例えば、泉屋信夫ら編「ペプチド合成の基礎と実験」(丸善株式会社、1985)に記載の方法などにより当業者が容易に入手できる。
【0036】
縮合は塩基存在下で行ってもよい。使用する塩基としては、通常の反応において塩基として使用されるものであれば特に制限はないが、無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、又は酢酸ナトリウムなどが、有機塩基としては例えば、アンモニア、ジメチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルピペリジン、ルチジン、コリジン又はキノリンなどが挙げられ、好ましくは水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、又はトリエチルアミンなどが用いられる。反応溶媒としては、反応の進行を妨げず、原料を溶解することができる溶媒であれば特に制限はないが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、DMF、DMAc、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、水、アセトン、又はこれらの混合物などであり、好ましくはアルコール類、水又はこれらの混合物である。反応温度は、通常は-20〜150℃であり、好ましくは20〜100℃である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、通常5分〜72時間であり、好ましくは10分〜16時間である。
【0037】
水素添加に使用する水素化触媒としては、例えば、パラジウム炭素、白金などの触媒、又は水素化剤としてNaBH4、NaBH3CN、NaBH(OMe)3などの水素化剤を使用することができるが、好ましくはパラジウム炭素、又はNaBH4である。反応溶媒としては、触媒毒とならない不活性な有機溶媒であればその種類は特に限定されないが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、DMF、DMAc、酢酸、水、又はそれらの混合物が用いられ、好ましくはメタノール、水又はこれらの混合物を用いることができる。反応温度は通常0〜50℃であり、好ましくは10〜30℃である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、通常1〜24時間であり、好ましくは1〜16時間である。
【0038】
一般式(I)で表される本発明のリン酸エステル体化合物は、例えば、下記の反応式に従って製造することができる。スキーム中のR1、R2、R3、R4、R5又はR6は上記の定義と同義であるが、下記の反応式には、1又は2以上の保護基を有する一般式(IV)で表される化合物を製造し(工程C)、該保護基を工程Bにより脱離する方法を示した(従って、R4、R5、及びR6からなる群から選ばれる基のうちの少なくとも1つは保護基を有する)。工程Bにおける脱保護は、保護基が複数ある場合には段階的に保護基を脱離する工程、あるいはすべての保護基を同時に脱離する工程などにより行われる。もっとも、一般式(I)で表される本発明の化合物の製造方法は下記の方法に限定されることはない。また、一般式(I)で表される本発明の化合物の範囲は、下記の方法により製造されたものに限定されることもない。
【0039】
【化6】

【0040】
まず、塩基の存在下に、一般式(II)で表される化合物とリン酸化剤とをリン酸化反応に付して一般式(IV)で表される化合物を製造する。一般式(II)で表される化合物は、例えば、α45-ジ-O-アセチルピリドキシンやα45-ジ-O-ベンゾイルピリドキシンは、W. Korytnykらが述べている方法(J. Org. Chem., 32, 3791-3796, 1967)で、例えば、α45-O-イソプロピリデンピリドキシンは水野らが述べている方法(ビタミン、49、395-401、1975)で、例えばピリドキサール モノエチルアセタールは D. Heylらが述べている方法(J. Am. Chem. Soc., 73, 3430-3439, 1951)で得ることができる。
【0041】
一般式(II)で表される化合物において、R4における水酸基の保護基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、tert-ブチルジメチルシリル基、テトラヒドロピラニル基、イソプロピリデン基、又はイソブチリデン基などを用いることができ、R4におけるホルミル基の保護基としては、例えば、アセチル基又は環状アセタール基などを用いることができ、R4におけるアミノ基の保護基としては、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、又はtert-ブトキシカルボニルオキシ基などを用いることができる。R5としては、水素原子、水酸基の保護基(例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、tert-ブチルジメチルシリル基、テトラヒドロピラニル基、イソプロピリデン基、又はイソブチリデン基など)、又はリン酸若しくは保護されたリン酸(例えば、リン酸ジエチル、リン酸ジ-tert-ブチル、又はリン酸ジベンジルなど)を用いることができる。なお、R4及びR5が互いに結合して環を形成した保護基を示してもよい。例えば、R4及びR5が互いに結合した保護基としてイソプロピリデン基、イソブチリデン基、モノメチルアセタール基又はモノエチルアセタール基などを例示することができる。
【0042】
一般式(II)で表される化合物とリン酸化剤の比率は、例えば、一般式(II)で表される化合物に対してリン酸化剤のモル比が1から20倍モルの範囲で反応を行うことができ、2から10の範囲であることが好ましい。
【0043】
リン酸化剤としては、例えば、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、オキシフッ化リン、二塩化リン酸、塩化リン酸、臭化リン酸、リン酸、ポリリン酸、又はテトラクロルピロリン酸などが挙げられ、好ましくはオキシ塩化リンなどが用いられる。
【0044】
塩基の種類は特に限定されないが、無機塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二カリウム、又はリン酸三カリウムなどが用いられる。有機塩基としては、例えば、アンモニア、ジメチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルピペリジン、ルチジン、コリジン又はキノリンなどが挙げられ、好ましくはピリジンなどが用いられる。
【0045】
反応溶媒の種類は、反応の進行を妨げず、原料を溶解することができる溶媒であれば特に限定されないが、例えばピリジン、DMF、水、アセトン、トリメチルリン酸、又はこれらの混合物であり、好ましくはピリジンである。例えば、反応温度は、通常は-20〜100℃の範囲であり、好ましくは0〜50℃の範囲である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、例えば5分間〜36時間程度であり、好ましくは10分間〜16時間である。
【0046】
次いで、一般式(IV)で表される化合物に存在する1又は2以上の保護基を除去することにより、一般式(I)で表される化合物を製造することができる。例えば、保護基がアセチル基である場合は、アルカリ加水分解によって脱アセチル化できる。加水分解に使用する塩基としては、通常の反応において塩基として使用されるものであれば特に制限はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化リチウム、又はアンモニア水などが挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は炭酸水素ナトリウムなどを用いることができる。反応溶媒としては、反応の進行は妨げず、原料を溶解することができる溶媒であれば特に制限はないが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、DMF、DMAc、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、水、アセトン、又はこれらの混合物などであり、好ましくはアルコール類、水、又はこれらの混合物である。反応温度は、通常は−20〜150℃であり、好ましくは10〜30℃である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、通常5分〜36時間であり、好ましくは10分〜16時間である。
【0047】
例えば、保護基がベンジル基である場合は、水素添加によって脱ベンジル化できる。水素化触媒としてパラジウム炭素又は白金などの触媒を使用することができるが、好ましくはパラジウム炭素である。反応溶媒としては、触媒毒とならない不活性な有機溶媒であればその種類は特に限定されないが、例えば、アルコール(メタノール、エタノールなど)、DMF、DMAc、酢酸、水、又はそれらの混合物が用いられ、好ましくはメタノール又は酢酸を用いることができる。反応温度は通常0〜50℃であり、好ましくは10〜30℃である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、通常1〜24時間であり、好ましくは1〜16時間である。
【0048】
また、例えば、保護基がモノエチルアセタール又はイソブチリデン基の場合は、酸加水分解によって脱アセタール化、又は脱イソブチリデン化できる。加水分解に使用する酸としては、通常の反応において酸として使用されるものであれば特に制限はないが、塩酸、臭化水素水、硫酸、酢酸、又はp-トルエンスルホン酸などが挙げられ、好ましくは塩酸又は酢酸などを用いることができる。反応溶媒としては、反応の進行は妨げず、原料を溶解せしめる溶媒であれば特に制限はないが、例えば、アルコール類(メタノール、エタノールなど)、DMF、DMAc、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、水、アセトン、又はこれらの混合物などであり、好ましくはアルコール類、水、又はこれらの混合物である。反応温度は、通常−20〜150℃であり、好ましくは10〜100℃である。反応時間は、使用する原料、溶媒、反応温度などにより異なるが、通常5分〜36時間であり、好ましくは10分〜16時間である。
【0049】
本発明の組成物は、一般式(V)で表されるビタミンB6誘導体又はその塩を含む組成物である。本発明の組成物では、ビタミンB6誘導体の安定性が優れているだけでなく、組成物中の他の成分、特に他のビタミン類の安定性が改善されており、長期保存後において上記ビタミンB6誘導体及び他の成分の含有量低下が軽減されているいう特徴がある。
【0050】
本発明の組成物の用途は特に限定されないが、例えば医薬組成物、加工食品などの食品組成物、動物飼料などの飼料組成物、及び化粧料組成物としての用途が好ましい。医薬組成物にはヒトの病気の予防、診断、及び治療に用いられる医薬組成物のほか、いわゆる医薬部外品、総合ビタミン剤、ヒト以外の哺乳類動物の病気に用いられる医薬組成物などが含まれる。医薬組成物としては、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、錠剤(例えば、素錠、フィルムコーティング錠、薄層糖衣錠、糖衣錠、チュアブル錠、二層錠など)、カプセル剤、粉末吸入剤、液剤、又は乾燥粉末形態で提供される用時溶解型の注射剤などを挙げることができる。加工食品には、固形食品、栄養ドリンクなどの飲料水、食品添加剤のほか、補助栄養食品、特定保健用食品などの健康食品などが含まれる。化粧料組成物としては、例えば、パウダー、ファウンデーション、ローション、シャンプーなどを挙げることができる。もっとも、これらは例示のためのものであり、これらに限定されることはない。
【0051】
本発明の組成物において、上記ビタミンB6誘導体の含有率は特に限定されないが、たとえば、組成物の全重量に対して0.001重量パーセント以上、好ましくは0.005重量パーセント以上である。
【0052】
本発明の組成物には、たとえば造粒などの適宜の手段により任意の形状に成形されていてもよい。そのようにして得られるたとえば造粒物などの形態の成形物と一種又は二種以上の成分を混合して、さらに別の組成物を調製してもよい。このような目的で用いられる成分は、本発明の組成物の用途により当業者が適宜選択可能であり、その種類は特に限定されない。たとえば、医薬組成物であれば、通常用いられる製剤用添加物(たとえば医薬品添加物など)を用いることができ、加工食品などの食品組成物では食品添加物を用いることができ、化粧料組成物では化粧料用添加物を用いることができる。
【0053】
本発明の組成物におけるビタミンB6誘導体を除く他の成分としては、例えば、アミノ酸、脂質、糖、ホルモン、酵素、核酸などの生理活性物質、ササミ、小麦粉、米糠などを挙げることができる。また、結合剤として、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、プルラン、α化澱粉、糊化澱粉、アラビアゴム、ゼラチン、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、L-アラビノース、D-キシロース、D-2-デオキシリボース、D-リボース、D-及びL-ガラクトース、D-グルコース、D-マンノース、D-フルクトース、L-ソルボース、L-フコース、L-ラムノース、D-グルコサミン、D-ソルビトール、D-マンニトール、ガラクチトール、エリスリトール、セルビオース、ゲンチオビース、イソマルトース、コージビオース、ラクトース、ラクチトール、ラミナリビオース、マルトース、メリビオース、ニゲロース、ソホロース、ショ糖、パラチノース、トレハロース、パラチニット、デキストリン、ステアリン酸及びその誘導体、ショ糖脂肪酸エステル、トウモロコシデンプン、アスパルテーム、ステビア、アセスルファム、サッカリン、アミノアルキルメタクリレート共重合体、メタクリル酸共重合体、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミンアセテート、乳糖、キシリトール、マルチトール、粉末還元糖水飴、アラビトール、リビトール、グルシトール、コーンフラワー、小麦粉、米糠、綿実粕、アルギン酸ナトリウム、カラーギーナン、カゼイン、グルテン、カードラン、グアガムなどを挙げることができる。
【0054】
また、本発明の組成物におけるビタミンB6誘導体を除く他の成分は無機塩でもよく、たとえば食塩、炭酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸鉄、ヘム鉄、フェリチン、リン酸第二鉄、コハク酸第一鉄、フマル酸第一鉄、乳酸鉄、ピロリン酸第二鉄、ピロリン酸第一鉄、三二酸化鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸第二鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、塩化第二鉄、酢酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫化セレン、グルコン酸銅、硫酸銅、塩化銅、硫酸マンガン、グリセロリン酸マンガン、塩化マンガン、次亜リン酸マンガン、グルコン酸マンガン、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、リン酸マグネシウム(II)、リン酸マグネシウム(III)、炭酸カルシウムマグネシウム、牛骨粉、魚骨粉、帆立貝殻粉末、牡蠣殻粉末、貝殻粉末、卵殻粉末、乳清カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カリウム、ヨウ化カリウムなどを含んでいてもよい。さらに、香料として、例えば、ハッカ油、ユーカリ油、桂皮油、ウイキョウ油、チョウジ油、オレンジ油、レモン油、ローズ油、フルーツフレーバー、バナナフレーバー、ストロベリーフレーバー、ミントフレーバー、ペパーミントフレーバー、dl-メントール、l-メントールなどを含んでいてもよい。矯味剤として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスコルビン酸、アスパルテーム、ステビア、サッカリン、グリチルリチン二カリウム、ソーマチン、アセスルファームが挙げられる。もっとも、これらは単なる例示として挙げたものであり、上記の成分はこれらに限定されることはない。
【0055】
一般式(V)で表される化合物又はその塩は、安定性に優れたビタミンB6誘導体として、特に光に対して安定なビタミンB6誘導体として、医薬、食品、飼料、又は化粧料などの分野において有用である。例えば、医薬としては、ビタミンB6欠乏症の予防及び/又は治療、あるいは舌炎、胃炎、眼・鼻・口周囲の脂漏性皮膚病変、又は乳児痙攣などの疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。また、ビタミンB6の要求が増大し、食事からの摂取が不充分な場合、例えば、消耗性疾患、妊産婦、授乳婦など、経口避妊薬使用時、甲状腺機能亢進、放射線照射、慢性アルコール中毒、抗生物質の投与などの際に補給用の医薬として投与することもできる。さらに、ビタミンB6依存性(依存性貧血又は依存性痙攣など)の治療、ビタミンB6の欠乏又は代謝障害が関与していると思われる疾患(例えば口角炎、口唇炎、舌炎、急・慢性湿疹、接触皮膚炎など)の治療に有用である。
【0056】
また、食品としては、例えば、清涼飲料水、健康志向食品の栄養強化、栄養補助剤(サプリメント)などの成分として用いることができ、各種飼料においてビタミンB6の強化のために用いることができる。化粧品としては、例えば、頭髪化粧品、皮膚用化粧品、又はひげそり用化粧品などに添加することができる。もっとも、一般式(V)で表される化合物又はその塩の用途はこれらの具体的用途に限定されることはない。
【0057】
本発明の化粧料組成物、例えば(A)上記の一般式(V)で表される化合物と(B)美白剤、酸化防止剤、消炎剤、血行促進剤、細胞賦活剤、及び紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有する化粧料のための組成物は、美白剤、老化防止剤、及び紫外線暴露によるシワ形成抑制剤として優れた効果を示す。該組成物におけるビタミンB6誘導体の含有量は特に限定されないが、好ましくは組成物全重量に対して0.00001〜2.0質量パーセントであり、より好ましくは0.001〜1.0重量パーセントである。この範囲の含有量を選択すると、ビタミンB6誘導体を安定に配合することができ、かつ高い美白効果、老化防止剤、及び紫外線暴露によるシワ形成抑効果を得ることができる。
【0058】
本発明の美白剤、老化防止剤、及び紫外線暴露によるシワ形成抑制剤を製造するにあたり、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料や医薬部外品、外用医薬品等の製剤に通常使用される成分、例えば、水(精製水、温泉水、深層水等)、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、植物・動物・微生物由来の抽出物、活性酸素除去剤、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、他のビタミン類等を必要に応じて加えることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0060】
例1:ピリドキシン 3-β-D-グルコシドの製造
a) 3-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシル)-α4,α5-ジ-O-アセチルピリドキシン
α4,α5-ジ-O-アセチルピリドキシン塩酸塩 (4.90 g、17.2 mmol)にCHCl3(150 ml)と飽和NaHCO3水溶液(100 ml)を加え、室温で1時間攪拌した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた白色固体(4.0 g)、2,3,4,6-テトラ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシルブロマイド(9.74 g、23.7 mmol)をCH2Cl2(70 ml)に溶解し、炭酸銀(4.36 g、15.8 mmol)を加え、遮光、窒素雰囲気及び還流下、一晩攪拌した。反応液を減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラム(シリカゲル;600 g、n-ヘキサン:酢酸エチル=1:2の混合溶媒で溶出)で精製して白色固体の表記化合物(7.17 g、収率78%)を得た。
融点:89-93℃
比旋光度 [α]D=-20°(c=0.2、CHCl3)
1H-NMR (CDCl3) δ ppm ; 2.03(3H,s), 2.04(3H,s), 2.07(3H,s), 2.08(3H,s), 2.09(3H,s), 2.14(3H,s), 2.55(3H,s), 3.5-3.6(1H,m), 4.0-4.2(2H,m), 4.83(1H,d), 5.1-5.4(7H,m), 8.38(1H,s)
【0061】
b) ピリドキシン 3-β-D-グルコシド
例1−aの化合物 (7.10 g、12.2 mmol)をメタノール(40 ml)と水(20 ml)に溶解し、氷冷攪拌下、水酸化カリウム(3.38 g、51.8 mmol)を加え、溶解させた後、室温で1時間攪拌した。反応液を1N塩酸で中和し、減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラム(SP850 ; 100 ml、水から20% メタノール水溶液で溶出)で精製した。得られた固体を水(200 ml)に溶解し、活性炭(50% 湿体、150 mg)を投入し、60℃で30分間、攪拌した。活性炭を濾別後、水を減圧留去し、エタノール−水(10:1、88 ml)から再結晶することにより、白色結晶の表記化合物(3.14 g、収率78%)を得た。この化合物のアノマー型は、α−グルコシダーゼ(ロッシュ社製、Saccharomyces cerevisiae 由来)によって加水分解されず、β−グルコシダーゼ(オリエンタル酵母社製、アーモンド由来)によって完全に加水分解されピリドキシンが遊離したことから、β型であることが確認された。
融点;211-212℃
比旋光度 [α]D= -6.0°(c=1.0、H2O)、
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 2.49(3H,s), 3.0-3.7(6H,m), 4.3-5.2(10H,m), 5.59(1H,d,J = 4.8 Hz), 8.25(1H,s)
【0062】
例2:ピリドキサ−ル 3-β-D-グルコシドの製造
a) 3-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシル)-ピリドキサ−ル モノエチルアセタール
窒素雰囲気下でピリドキサ−ルモノエチルアセタール塩酸塩(11.0 g、47.5 mmol)をCH2Cl2(100 ml)に懸濁し、氷冷下、トリエチルアミン(6.63 ml、47.5 mmol)を加え、室温に昇温後、2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-グルコピラノシルブロマイド(23.4 g 、57.0 mmol)を加えた。反応容器を遮光後、炭酸銀(13.1 g 、47.5 mmol)を加え、室温で18時間攪拌した後、35℃で24時間攪拌を続けた。反応液をろ過、減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラム(シリカゲル;600 g、n-Hexane:酢酸エチル=1:2の混合溶媒で溶出)で精製して、表記化合物(20.8 g、84%)を得た。
1H-NMR (CDCl3)δppm; 1.2-1.4(3H,m), 2.0-2.1(12H,m), 2.45(1.7H,s), 2.54(1.3H,s), 3.5-4.3(5H,m), 4.9-5.6(6H,m), 6.24(0.5H,d,J=1.8Hz), 6.42(0.5H,d,J=1.7Hz), 8.16(0.5H,s), 8.30(0.5H,s)
【0063】
b) 3-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシル)-ピリドキサール
例2-a )の化合物(20.0 g、38.1 mmol)に水(200 ml)及び1N 塩酸 (38 ml)を加え、還流下、30分間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、飽和重曹水(200 ml)を加え、酢酸エチル (300 ml)で抽出した。無水MgSO4乾燥、減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラム(シリカゲル;600 g、CHCl3:MeOH(メタノール)=50:1の混合溶媒で溶出)で精製して、表記化合物(10.8 g、57.0%)を得た。
1H-NMR (CDCl3)δppm; 2.0-2.1(12H,m), 2.45(1.8H,s), 2.54(1.2H,s), 3.6-4.3(4H,m), 4.9-5.5(6H,m), 6.6-6.7(1H,m), 8.19(0.6H,s), 8.29(0.4H,s)
【0064】
c) ピリドキサール 3-β-D-グルコシド
例2-b)の化合物(2.0 g、4.02 mmol)をMeOH(25 ml)と水(3 ml)に溶解し、氷冷攪拌下、水酸化カリウム(262 mg、4.02 mmol)を水(2 ml)に溶解したものを加え、室温で1時間攪拌した。TLCで原料の消失を確認後、反応液を1N塩酸で中和し、減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラム(SP850 ; 100 ml、水から30% MeOH水溶液で溶出)で精製した。
得られた固体を水(200 ml)に溶解し、活性炭(50%湿体、150 mg)を投入し、60℃で30分間攪拌した。活性炭をろ別後、ろ液を凍結乾燥し、白色無定形粉末の表記化合物(1.16g、88%)を得た。
融点:130〜140℃
比旋光度[α]D= -38.4°(c=1.0、H2O)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 2.42(3H,s), 3.0-3.5(5H,m), 3.6-3.8(1H,m), 4.6-5.5(7H,m), 6.5-6.6(1H,m), 6.84(0.4H,d,J=6.6Hz), 6.98(0.6H,d,J=7.0Hz), 8.05(0.6H,s), 8.20(0.4H,s)
【0065】
例3:ピリドキサミン3-β-D-グルコシド の製造
a) 3-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシル)-ピリドキサ−ル オキシム
例2-b)の化合物(6.0 g、12.1 mmol)を水(200 ml)に懸濁し、酢酸ナトリウム(1.29 g 、15.7 mmol) と塩化ヒドロキシルアンモニウム(1.26 g、18.2 mmol)を加え、還流下、30分間攪拌した。室温まで冷却後、酢酸エチル(300 ml)で抽出し、無水MgSO4乾燥後、溶媒を減圧留去し、残渣にジエチルエーテルを加え、析出した固体をろ取し、ジエチルエーテルで洗浄後、減圧乾燥し、表記化合物(5.49 g、89%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δppm; 2.03(3H,s), 2.03(3H,s), 2.05(3H,s), 2.19(3H,s), 2.56(3H,s), 3.5-3.7(1H,m), 4.0-4.2(2H,m), 4.61(2H,brs), 4.80(1H,d,J=7.9Hz), 5.0(1H,brs), 5.1-5.5(3H,m), 8.40(1H,s), 8.57(1H,s), 10.9(1H,brs)
【0066】
b) 3-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-グルコピラノシル)-ピリドキサミン
例3-a)の化合物(2.28 g、4.41 mmol)を酢酸(60 ml)に溶解し、5% Pd-C(AD、50%wet、1.2g)の存在下、室温で1時間接触水素化した。触媒をろ別後、酢酸を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラム(シリカゲル;50 g、CHCl3:MeOH:AcOH(酢酸)=10:1:0.01で溶出)で精製し、表記化合物 (1.97g、90%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δppm; 2.01(3H,s), 2.05(6H,s), 2.16(3H,s), 2.53(3H,s), 3.5-5.4(14H,m), 8.32(1H,s)
【0067】
c) ピリドキサミン 3-β-D-グルコシド
例3-b)の化合物(1.90 g 、3.81 mmol)をメタノール(25 ml)と水(3 ml)に溶解し、氷冷攪拌下、水酸化カリウム(498 mg、7.62 mmol)を水(4 ml)に溶解したものを加え、室温で1時間攪拌した。原料の消失を確認後、6N 塩酸で中和し、減圧濃縮し、残渣を水(50 ml)に溶解し、1N 水酸化ナトリウムでpH 10とし、カラムクロマトグラム(SP850 ; 100 ml、水から30% MeOH水溶液で溶出)で精製した。得られた固体を水(200 ml)に溶解し、活性炭(50% 湿体、250 mg)を加え、60℃で30分間攪拌した。活性炭をろ別後、ろ液を凍結乾燥し、白色無定形粉末の表記化合物(189 mg、18%)を得た。
融点:205〜212℃
比旋光度[α]D= -6.1°(c=1.0、H2O)、
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 2.49(3H,s), 3.0-3.5(10H,m), 3.6-3.8(2H,m), 4.02(1H,d,J=12.0Hz), 4.3-4.7(3H,m), 5.0-5.1(2H,m), 8.15(1H,s)
【0068】
例4:ピリドキシン 3-β-D-ガラクトシド の製造
a) 3-(2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシル)-α45-ジ-O-アセチル-ピリドキシン
α4,α5−ジ−O−アセチルピリドキシン塩酸塩(7.82 g、27.0 mmol)にCHCl3 (300 ml)と飽和NaHCO3水溶液 (200 ml)を加え、室温で1時間攪拌した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた白色固体(11.4 g、27.0 mmol)と2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノシルブロミドをCH2Cl2 (60 ml)に溶解し、炭酸銀(6.70 g、24.3 mmol)を加え、遮光、窒素雰囲気下、室温で15時間、還流下、7時間攪拌した。不溶物をろ別後、溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラム(シリカゲル;700 g、Hexane:酢酸エチル=1:3の混合溶媒で溶出)で精製し、白色固体の表記化合物(8.23 g、58%)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ ppm ; 1.97(3H,s), 2.02(3H,s), 2.09(3H,s), 2.10(3H,s), 2.15(3H,s), 2.22(3H,s), 2.56(3H,s), 3.7-3.9(1H,m), 4.0-4.2(2H,m), 4.79(1H,d,J=8.1Hz), 5.0-5.6(7H,m), 8.39(1H,s)
【0069】
b) ピリドキシン 3-β-D-ガラクトシド
例4-a)の化合物(8.20 g、14.1mmol)をメタノール(80 ml)に溶解後、氷冷下、水酸化カリウム(5.99 g、91.8 mmol)を水(20 ml)に溶解したものを加え、室温で30分間攪拌した。原料の消失を確認後、6N 塩酸で中和し、減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラム(SP850 ; 100 ml、水から15% MeOH水溶液で溶出)で精製した。得られた固体を水(400 ml)に溶解し、活性炭(50% 湿体、500 mg)を加え、60℃で30分間攪拌した。活性炭をろ別後、水を減圧留去し、残渣をエタノール−水(2:1)(150 ml)から再結晶することにより無色針状結晶の表記化合物(3.67g 、79%)を得た。
融点:215℃以上
比旋光度[α]D= +4.5°(c=1.0、H2O)
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 2.49(3H,s), 3.2-3.7(6H,m), 4.4-4.9(9H,m), 5.20(1H,t), 5.45(1H,d,J=5.0Hz), 8.25(1H,s)
【0070】
例5:N-(4-ピリドキシルメチレン)-L-セリン 3-β-D-グルコシドの製造
L-セリン(1.06 g、10.1 mmol)をMeOH(50 ml)に懸濁攪拌し、50%水酸化カリウム(1.12 ml、10 mmol)を加え溶解した。そこへ例2-b)の化合物(5.0 g 、10.1mmol)を加え、室温で30分間攪拌した後、5% Pd-C(AD、50%wet、5.0g)の存在下、室温で16時間接触水素化した。析出した結晶をAcOH(1.2 ml)と水(10 ml)を加え溶解し、触媒をろ別後、溶媒を減圧留去した。残渣を逆相カラムクロマトグラム(Chromatorex ODS-1020T;250 g、水で溶出)で精製した。得られた固体を水(100 ml)に溶解し、活性炭(50% 湿体、500 mg)を加え、60℃で30分間攪拌した。活性炭をろ別後、ろ液を濃縮乾固した。得られた白色固体を90% エタノール(100 ml)で再結晶し、白色結晶の表記化合物(2.38 g、56.9%)を得た。
融点:165〜175℃
比旋光度[α]D= +8.8°(c=1.0、H2O)、
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ;2.49(3H,s), 3.0-3.7(14H,m), 4.0-4.2(2H,m), 4.56(2H,s), 4.68(1H,d,J=7.5Hz),5.1(3H,brs), 8.21(1H,s)。
【0071】
例6:ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウム の製造
a) 3-ホスホリル-α45-ジ-O-アセチルピリドキシン
α4,α5−ジ−O−アセチルピリドキシン塩酸塩(33.3 g、131 mmol)をピリジン(350 ml)に溶解し、水冷下でオキシ塩化リン(61.3 ml、657 mmol)のピリジン(150 ml)溶液を1.5時間かけて滴下した。1時間攪拌を続けた後、40℃に昇温し、15時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に氷冷下、アセトニトリル (100 ml)及び水(400 ml)を加え1.5時間攪拌した。28%アンモニア水を加え、溶液のpHを7.0とした後、減圧濃縮し、残渣をカラムクロマトグラム (シリカゲル250g、CHCl3:MeOH=10:1→5:1の混合溶媒で溶出)で精製し、表記化合物(25.6 g、59%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 1.98(3H,s), 2.05(3H,s), 2.49(3H,s), 5.14(2H,s), 5.31(2H,s), 6.9-7.3(1H,m), 8.22(1H,s)
【0072】
b) ピリドキシン 3,4'-環状リン酸
例6-a)の化合物(25.6 g、76.8 mmol)をメタノール(150 ml)と水(100 ml)に溶解後、氷水冷下、水酸化ナトリウム(6.34 g、154 mmol)を水(100 ml)で溶解したものを加え、室温で1時間攪拌した。原料の消失を確認後、2N-塩酸で中和し、減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラム(シリカゲル250 g、CHCl3:MeOH= 5:1→4:1→2:1の混合溶媒で溶出)で精製した。これを水(254 ml)に溶解、イオン交換樹脂(DOWEX50WX8、15g)を投入しpH3.2とした後、カラムクロマトグラム(SP207;800 ml、水で溶出)で脱塩した。目的フラクションを減圧濃縮後、水(300 ml)に溶解し、活性炭(50% 湿体、1.5 g)を投入し、50℃で30分間攪拌した。メンブランろ過後、凍結乾燥し、白色無定形粉末の表記化合物(10.4 g、58%)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 2.44(3H,s), 3.89(2H,brs), 4.50(2H,s), 5.22(2H,d,J=11.7Hz), 8.12(1H,s)
【0073】
c) ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウム
例6-b)の化合物(10.4 g、45 mmol)を水(80 ml)に溶解し1N 水酸化ナトリウムを加えてpH 10とし、カラムクロマトグラム(SP207;800 ml、水で溶出)で脱塩した。目的フラクションを集め、活性炭(50% 湿体、1 g)を投入し、50℃で30分間攪拌した。メンブランろ過後、減圧乾固し、エタノール(40 ml)とジエチルエーテル(300 ml)を加え、析出した結晶をろ取し、減圧下乾燥し、白色結晶の表記化合物 (9.63 g、85%)を得た。
融点:190〜200℃
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 2.28(3H,s), 4.37(2H,d,J=3.5Hz), 5.07(2H,d,J=5.9Hz), 5.22(1H,brs), 7.89(1H,s)
【0074】
例7:ピリドキシン 3,4'-環状リン酸マグネシウム
例6-b)の化合物(20.0 g、86.5 mmol)を水(500 ml)に溶解し酸化マグネシウム(1.6 g)を加えてpH 7.5 とし、カラムクロマトグラム(SP207;1,000 ml、水で溶出)で脱塩した。目的フラクションを集め、活性炭(50% 湿体、1 g)を投入し、50℃で30分間攪拌した。メンブランろ過後、減圧乾固し、アセトン(40 ml)を加え、析出した結晶をろ取し、減圧下乾燥し、白色結晶の表記化合物 (12.2 g、58%)を得た。
融点:230℃以上
1H-NMR (D2O) δppm ; 2.42(3H,s), 4.60(2H,s), 4.83(1H,s), 5.38(2H,d,J=12.3Hz), 8.02(1H,s)
【0075】
例8: ピリドキシン 3-リン酸二ナトリウムの製造
例6-a)の化合物(1.0 g、3.0 mmol)をメタノール(10 ml)に溶解後、氷水冷下、炭酸水素ナトリウム(0.50 g、6.0 mmol)を水(10 ml)で溶解したものを加え、室温で24時間攪拌した。2N塩酸で中和し、減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラム(シリカゲル30 g、CHCl3:MeOH= 4:1→2:1の混合溶媒で溶出)で精製した。目的フラクションを減圧濃縮後、残渣を水(10 ml)に溶解し、逆相カラムクロマトグラム(Chromatorex ODS-1020T;30g、水で溶出)で精製した。目的フラクションを30mlまで減圧濃縮後、活性炭(50% 湿体、1 g)を投入し、50℃で30分間攪拌した。メンブランろ過後、凍結乾燥し、白色無定形粉末の表記化合物(0.299 g、34%)を得た。
融点:137〜140℃
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 2.39(3H,s), 4.49(2H,d,J=6.6Hz), 4.61(2H,d,J=4.2Hz), 5.14(1H,t), 5.93(1H,t), 8.17(1H,s)
【0076】
例9:ピリドキシン 3-β−D-グルコシド塩酸塩の製造
例1-b)の化合物 (2.0 g、6.0 mmol)を水(150 ml)に溶解し、1N塩酸(6.0 ml)を加え、室温で1時間攪拌した後、水を減圧留去した。残渣をエタノール(130 ml)と水(10 ml)に還流下溶解し、冷蔵庫(5℃)で5日間冷却した。晶出した結晶をろ過し、減圧乾燥し、白色結晶の表記化合物(1.84 g、収率83%)を得た。
比旋光度[α]D= +1.7°(c=1.0、H2O)、融点:166〜170℃
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 2.73(3H,s), 3.3-3.4(1H,m), 3.5-3.7(2H,m), 3.7-3.9(3H,m), 4.7-5.0(12H,m), 8.47(1H,s)
【0077】
例10:ピリドキシン 3-α-D-グルコシドの製造
a) 3-(3,4,6‐トリ‐O‐アセチル‐α‐D‐グルコピラノシル)-α45‐ジ‐O‐アセチルピリドキシン
α4,α5‐ジ‐O‐アセチルピリドキシン塩酸塩 (0.67 g、2.34 mmol)にCHCl3(10 ml)と飽和NaHCO3水溶液(10 ml)を加え、室温で1時間攪拌した後、有機層を飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水MgSO4で乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた白色固体(0.59 g)と3,4,6‐トリ‐O‐アセチル‐β‐D‐グルコピラノシルクロライド(0.50 g、1.54 mmol)をトルエン(10 ml)に溶解し、モレキュラーシーブス4A(0.50 g)を加え、窒素雰囲気下、100℃で2時間、攪拌した。反応液を減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラム(シリカゲル;50 g、n-ヘキサン:酢酸エチル=1:2の混合溶媒で溶出)で精製して薄黄色オイルの表記化合物と3-(3,4,6-トリ‐O‐アセチル‐β‐D‐グルコピラノシル)‐α45‐ジ‐O‐アセチルピリドキシンの混合物(0.38g、収率46%、α:β=0.3:0.7)を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ ppm ; 2.0-2.2(15H,m), 2.59(2.3H,s), 2.67(0.7H,s), 3.4-4.8(6H,m), 5.0-5.6(6H,m), 8.35(0.2H,s), 8.38(0.8H,s)
【0078】
b) ピリドキシン 3‐α‐D‐グルコシド
例10-a)の化合物 (0.37 g、0.69 mmol)をメタノール(4 ml)と水(2 ml)に溶解し、氷冷攪拌下、水酸化カリウム(0.34 g、5.15 mmol)を加え、溶解させた後、室温で1時間攪拌した。反応液を1N塩酸で中和し、減圧濃縮後、残渣を水(14 ml)に溶解し、1M酢酸ナトリウム緩衝液(1.6 ml)とβ−グルコシダーゼ(オリエンタル酵母社製、アーモンド由来、4mg、147 U)を加え、37℃で14時間、インキュベートした。反応液を減圧濃縮後、カラムクロマトグラム(Chromatorex ODS-1020T;10 g、水で溶出)で精製した。得られた固体を水(10 ml)に溶解し、活性炭(50% 湿体、10 mg)を投入し、60℃で30分間、攪拌した。活性炭を濾別後、水を減圧留去し、白色結晶粉末の表記化合物(54 mg、収率 24%)を得た。この化合物はβ−グルコシダーゼ(オリエンタル酵母社製、アーモンド由来)によって加水分解されず、α−グルコシダーゼ(ロッシュ社製、Saccharomyces cerevisiae 由来)によって完全に加水分解されピリドキシンが遊離したことから、この化合物のアノマー型はα型であることが確認された。
比旋光度 [α]D= +141,8°(c=1.0、H2O)、融点;201〜202℃
1H-NMR (DMSO-d6) δppm ; 2.49(3H,s), 3.1-3.5(3H,m), 3.5-3.7(2H,m), 3.8-3.9(1H,m), 4.5-4.8(5H,m), 4.9-5.1(3H,m), 5.1-5.3(2H,m), 5.45(1H,d,J=5.3Hz), 8.16(1H,s)
【0079】
試験例1(ピリドキシン 3-β-D-グルコシドの光安定性)
ピリドキシン 3-β-D-グルコシドの0.5%(w/v)水溶液(pH 6.7)0.3 mlを1 ml容ガラスアンプルに封入し、D65蛍光ランプ(東芝)を14日間、照射した。照射は室温で行い、照度は13,000Lxとした。照射前、照射1日後、照射7日後、照射14日後のサンプルをHPLCで分析し、ピリドキシン 3-β-D-グルコシド含量を測定した。同濃度の塩酸ピリドキシン(pH 6.7に調整)について同様の処理を行い、結果を比較した。HPLC測定条件は以下の通りである。
カラム Inertsil ODS-3 (5μm,φ 4.6×150 mm, GL Science Inc.)
溶離液 アセトニトリル:0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸, 5mM sodium 1-hexanesulfonate = 1:9
流速 0.5 ml / min
検出 UV 280 nm
カラム温度 40℃
結果を第1図に示す。塩酸ピリドキシンが1日でほとんど分解されるのに対し、ピリドキシン 3-β-D-グルコシドは14日間ランプ照射しても分解が見られず、光安定性が格段に向上していることがわかった。また、塩酸ピリドキシン水溶液が光照射により淡黄色に着色するのに対して、ピリドキシン 3-β-D-グルコシド水溶液では着色が認められなかった。
【0080】
試験例2(ピリドキシン 3-β-D-グルコシドの熱安定性)
ピリドキシン 3-β-D-グルコシドの0.5%(w/v)水溶液(pH 6.7)0.3mlを1ml容ガラスアンプルに封入し、遮光状態で50℃に保った。90日間加温し、その間サンプルをHPLCで分析(分析条件は試験例1と同様)し、ピリドキシン 3-β-D-グルコシド含量を測定した。同濃度の塩酸ピリドキシン(pH6.7に調整)について同様の処理を行い、結果を比較した。
結果を第2図に示す。50℃、90日間の加温で塩酸ピリドキシンが約20%が分解するのに対し、ピリドキシン 3-β-D-グルコシドはほとんど分解しなかった。また、50℃、90日間の加温で塩酸ピリドキシン水溶液が黄色に着色するのに対し、ピリドキシン 3-β-D-グルコシド水溶液は着色しなかった。
【0081】
試験例3(ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩及び各種3位配糖体の光安定性)
ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、ピリドキサール 3-β-D-グルコシド、ピリドキサミン 3-β-D-グルコシド、ピリドキシン 3-β-D-ガラクトシド及び塩酸ピリドキシンそれぞれの0.5% (w/v) 水溶液(pH6.3-7.2にHCl又はNaOHで調整)0.3mlを1ml容ガラスアンプルに封入し、試験例1と同様の光照射及びHPLC定量をおこなった。結果を第3図に示す。塩酸ピリドキシンが1日でほとんど分解されるのに対し、ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、ピリドキサミン 3-β-D-グルコシド、ピリドキシン 3-β-D-ガラクトシドは14日間ランプ照射しても分解がみられず、光安定性が格段に向上していることがわかった。ピリドキサール 3-β-D-グルコシドについても安定性は明らかに向上していた。また、塩酸ピリドキシン水溶液が光照射により、淡黄色に着色するのに対し、ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、ピリドキサール 3-β-D-グルコシド、ピリドキサミン 3-β-D-グルコシド、ピリドキシン 3-β-D-ガラクトシドの各水溶液は着色しなかった。
【0082】
試験例4(ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩及び各種3位配糖体の熱安定性)
ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、ピリドキサール 3-β-D-グルコシド、ピリドキサミン 3-β-D-グルコシド、ピリドキシン 3-β-D-ガラクトシド、塩酸ピリドキシン、ピリドキサール塩酸塩及びピリドキサミン塩酸塩それぞれの0.5% (w/v) 水溶液(pH6.3-7.2にHCl又はNaOHで調整) 0.3 mlを1 ml容ガラスアンプルに封入し、試験例2と同様に、50℃加温及びHPLC分析を行った。結果を第4図に示す。50℃、90日間の加温で塩酸ピリドキシンが約15%、ピリドキサール塩酸塩が55%、ピリドキサミン塩酸塩が85%が分解するのに対し、ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、ピリドキサール 3-β-D-グルコシド、ピリドキサミン 3-β-D-グルコシド、ピリドキシン 3-β-D-ガラクトシドはほとんど分解しなかった。また、50℃、90日間の加温で塩酸ピリドキシン、ピリドキサール塩酸塩、ピリドキサミン塩酸塩水溶液が黄色に着色するのに対し、ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、ピリドキサール 3-β-D-グルコシド、ピリドキサミン 3-β-D-グルコシド、ピリドキシン 3-β-D-ガラクトシドの各水溶液は着色しなかった。
【0083】
試験例5(N-(4-ピリドキシメチレン)-L-セリン 3-β-D-グルコシドの光安定性)
N-(4-ピリドキシルメチレン)-L-セリン 3-β-D-グルコシド及び塩酸ピリドキシンそれぞれの0.5% (w/v) 水溶液(pHにHCl又はNaOHで調整)0.3 mlを1 ml容ガラスアンプルに封入し、試験例1と同様の光照射及びHPLC定量をおこなった。結果を第5図に示す。塩酸ピリドキシンが1日でほとんど分解されるのに対し、N-(4-ピリドキシルメチレン)-L-セリン 3-β-D-グルコシドは14日間ランプ照射しても分解がみられず、光安定性が格段に向上していることがわかった。
【0084】
試験例6(ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウム及びピリドキシン 3-リン酸二ナトリウムの光安定性)
ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウム及びピリドキシン 3-リン酸二ナトリウム0.5% (w/v) 水溶液(pH6.5−6.8に調整) 0.3 mlを1ml容ガラスアンプルに封入し、試験例1と同様の光照射及びHPLC定量をおこなった。結果を第6図に示す。塩酸ピリドキシンが1日でほとんど分解されるのに対し、ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムは14日間ランプ照射しても分解がみられず、光安定性が格段に向上していることがわかった。ピリドキシン 3-リン酸二ナトリウムも明らかに光安定性が向上していた。また、塩酸ピリドキシン水溶液が光照射により、淡黄色に着色するのに対し、ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウム水溶液及びピリドキシン 3-リン酸二ナトリウム水溶液は着色しなかった。
【0085】
試験例7(ピリドキシン 3,4'-環状リン酸マグネシウムの光安定性)
ピリドキシン3,4'-環状リン酸マグネシウム 0.5%(w/v)水溶液(pH6.5-6.8に調整)0.3 mlを1 ml 容ガラスアンプルに封入し、試験例1と同様に7日間の光照射及びHPLC定量を行なった。結果を第7図に示す。
【0086】
試験例8(ピリドキシン 3-α-D-グルコシド水溶液の光安定性)
ピリドキシン 3-α-D-グルコシド 0.5%(w/v)水溶液(pH6.5-6.8に調整)0.3 mlを1 ml容ガラスアンプルに封入し、試験例1と同様に1日間の光照射及びHPLC定量を行なった。結果を第8図に示す。
【0087】
試験例9(ピリドキシン 3-硫酸ナトリウム配合剤の光安定性)
ピリドキシン3-硫酸ナトリウムを文献(The Journal of Biological Chemistry, 262, pp.2642-2644, 1987)に従って合成した。ピリドキシン 3-硫酸ナトリウム 0.5%(w/v)水溶液(pH6.5−6.8に調整)0.3 mlを1 ml容ガラスアンプルに封入し、試験例1と同様に14日間の光照射及びHPLC定量を行なった。結果を第9図に示す。
【0088】
試験例10(ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムの熱安定性)
ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウム及び塩酸ピリドキシン0.5% (w/v) 水溶液(pH6.5−6.8に調整)0.3 mlを1ml容ガラスアンプルに封入し、試験例2と同様に、50℃加温及びHPLC分析を行った。結果を第10図に示す。50℃、90日間の加温で塩酸ピリドキシンが、約15%分解するのに対し、ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムはほとんど分解しなかった。また、50℃、90日間の加温で塩酸ピリドキシン水溶液が黄色に着色するのに対し、ピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウム水溶液は着色しなかった。
【0089】
試験例11(ローション)
セラミド配合物 0.1 g、1,3-ブチレングリコール 2.5 g、ジプロピレングリコール 2.5 g、メチルパラベン 0.01 gを80℃にて加温し透明になるまで攪拌した。35℃まで冷却後、攪拌しながら ビタミンB6誘導体(ピリドキシン3-β-D-グルコシド、ピリドキシン3-β-D-グルコシド塩酸塩、又はピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウム;以下、試験例11〜16において「ビタミンB6誘導体」という場合には上記3つのいずれかの物質を意味する)0.1 g又はピリドキシン 3-硫酸ナトリウム 0.1 gのいずれかと、ソルビトール発酵多糖 1.0 g及び精製水 90 mlを加えて溶解するまで攪拌し、10%クエン酸水溶液にてpH6.4とし、その後、精製水にて100 mlに調製しローションとした。この調製液には沈殿等が認められなかった。調製したローションをガラス瓶に6 ml入れ、D65蛍光ランプにて総照度として0、6万18万、及び30万lux・hr の光に曝しビタミンB6誘導体の定量を行い、別途、50℃に保存し、0、14日、1ヶ月、2ヶ月後に試験例1に記載のHPLC法によりビタミンB6誘導体の定量を行った。
【0090】
ランプ照射の結果を第11図に示す。塩酸ピリドキシンが照射3日の18万lux・hrで42%残存となり、5日の30万lux・hrではさらに30%残存となりほとんど分解されるのに対し、ビタミンB6誘導体は5日間ランプ照射しても分解はほとんど見られず、光安定性が格段に良好であった。
50℃に保存した結果を第12図に示す。ビタミンB6誘導体は、全く分解されないかほとんど分解が認められず、塩酸ピリドキシンより熱安定性が良好であった。
【0091】
試験例12(シャンプー)
ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 10.0 g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム 20.0 g、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 10.0 g、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 4.0 g、プロピレングリコール 2.0 g、ビタミンB6誘導体 0.1 g、パラオキシ安息香酸メチル 0.01 g を精製水 40 mlに加えて70℃に加温し溶解した。35℃以下まで冷却後、10%クエン酸水溶液にてpH6.8とし、その後、精製水にて100 mlに調製しシャンプーとした。この調製液には沈殿等が認められなかった。調製したシャンプーはガラス瓶に6 ml入れ、D65蛍光ランプにて総照度として0、6万、18万、及び30万lux・hr の光に曝しビタミンB6誘導体の定量を行い、別途、50℃に保存し、0日、14日、1ヶ月、2ヶ月後にビタミンB6誘導体の定量を上記実施例11と同様にHPLC法により行った。
【0092】
ランプ照射の結果を第13図に示す。塩酸ピリドキシンが照射3日の18万lux・hrで60%残存となり、5日の30万lux・hrでは58%残存にまで分解されるのに対し、ビタミンB6誘導体は5日間ランプ照射しても分解はほとんど見られず、光安定性が格段に良好であった。
50℃に保存した結果を第14図に示す。ビタミンB6誘導体は、全く分解されないかほとんど分解が認められず、塩酸ピリドキシンより熱安定性が良好であった。
【0093】
例13(目薬)
メチル硫酸ネオスチグミン 5 mg、L-アスパラギン酸カリウム 0.4 g、ホウ酸 5 mg、ホウ砂 5 mg、ホウ砂 5 mg、パラオキシ安息香酸メチル10 mg、クロロブタノール 0.1 g、ビタミンB6誘導体0.1 gを滅菌した精製水70 mlにて溶解した。溶解後、滅菌した精製水にて100 mlに調製し目薬とした。この調製液には沈殿等が認められなかった。調製した目薬はガラス瓶に6 ml入れ、D65蛍光ランプにて総照度として0、6万、18万及び、30万lux・hr の光に曝しビタミンB6誘導体の定量を上記実施例11と同様にHPLC法により行なった。
【0094】
ランプ照射の結果を第15図に示す。塩酸ピリドキシンが照射3日の18万lux・hrで68%残存となり、5日の30万lux・hrでは49%残存にまで分解されるのに対し、ビタミンB6誘導体は5日間ランプ照射しても分解はほとんど見られず、光安定性が格段に良好であった。
【0095】
例14(飲料水)
ブドウ糖 4.6 g、アスパルテーム 0.01 g、クエン酸 0.1 g、塩化ナトリウム 0.02 g、塩化カリウム 0.02 g、塩化マグネシウム 0.01 g、乳酸カルシウム 0.04 g、ビタミンB6誘導体 0.01 g、L-アスパラギン酸ナトリウム 0.07 g、L-グルタミン酸ナトリウム 0.02 g、L-アルギニン 0.02 g、香料 0.1 g を精製水 70 mlにて溶解し、その後、精製水にて100 mlに調整し飲料水とした。この調製液には沈殿などが認められなかった。調製した飲料水をガラス瓶に6 ml入れ、D65蛍光ランプにて総照度として0、6万、18万及び30万lux・hr の光に曝しビタミンB6誘導体の定量を上記実施例11と同様にHPLC法により行った。
【0096】
ランプ照射の結果を第16図に示す。塩酸ピリドキシンが照射3日の18万lux・hrで68%残存となり、5日の30万lux・hrでは56%残存にまで分解されるのに対し、ビタミンB6誘導体は5日間ランプ照射しても分解はほとんど見られず、光安定性が格段に良好であった。
【0097】
例15(ドックフード)
小麦粉 10gにビタミンB6誘導体 0.1 gを加えて均一に混合した。さらに、ササミ 40.0 g、大豆タンパク30.0 g、ブドウ糖 5.0 g、クエン酸 0.001 g、塩化ナトリウム 1.0 g、硫酸銅 0.01 g、硫酸鉄 0.01 g、ソルビン酸 0.3 g、プロピレングリコール 5.0 gを順じ加えて均一に混合する。これに精製水を加えて100 gに調製し均一に混合し、ドッグフードとした。
【0098】
調製したドッグフードをシャレーに5 g入れ、D65蛍光ランプにて総照度として0、6万、18万及び30万lux・hr の光に曝しビタミンB6誘導体の定量を上記実施例11と同様にHPLC法により行なった。
ランプ照射の結果を第17図に示す。塩酸ピリドキシンが照射3日の18万lux・hrで90%残存となり、5日の30万lux・hrでは85%残存にまで分解されるのに対し、ビタミンB6誘導体は5日間ランプ照射しても分解はほとんど見られず、光安定性が格段に良好であった。
【0099】
例16(配合変化試験)
パントテン酸カルシウム 1 gとビタミンB6誘導体 1 gを乳鉢で均一に混合し、粉体の安定性試料とした。ガラス瓶に入れた試料を開封状態で40℃、75%湿度下のオーブンに保存た。0日、14日及び1ヶ月後に目視で性状を観察しビタミンB6誘導体及びパントテン酸カルシウム定量を上記実施例11と同様にHPLC法により行なった。但し、パントテン酸カルシウムのみ検出波長は210 nmを使用した。
【0100】
配合変化を第18図に示す。塩酸ピリドキシンと配合したパントテン酸カルシウムは40℃、75%湿度下、1ヶ月の保存において81%残存になり性状は白色から淡褐色となりブロッキングや潮解が見られたが、ビタミンB6誘導体との配合では、配合物はほとんど分解されず、配合における安定性の向上が認められた。
【0101】
パントテン酸カルシウム 0.1 g、ビタミンB6誘導体 0.1 g を精製水にて溶解し100 mlに調整し、水溶液中での安定性試料とした。ガラス瓶に入れた試料を密栓状態で40℃に保存した。0日、14日及び1ヶ月後に目視で性状を観察しビタミンB6誘導体及びパントテン酸カルシウム定量を上記実施例11と同様にHPLC法により行なった。但し、パントテン酸カルシウムのみ検出波長は210 nmを使用した。
【0102】
配合変化を第19図に示す。塩酸ピリドキシンと配合したパントテン酸カルシウムは40℃、1ヶ月の保存において83%残存になったが、ビタミンB6誘導体との配合では、配合物はほとんど分解されず、配合における安定性の向上が認められた。
試験例17(培養細胞によるメラニン生成抑制及び細胞生存率試験)
【0103】
マウス由来のB16メラノーマ培養細胞を使用した。2枚の6穴プレートに10%FBS含有MEM培地を適量とり、B16メラノーマ細胞を播種し、37℃、二酸化炭素濃度5vol%中にて静置した。翌日、ビタミンB6誘導体(ピリドキシン 3-β-D-グルコシド又はピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩)を、最終固形物濃度が第20図に示す濃度となるように検体調製液を添加し混和した。培養5日目に培地を交換し、再度検体調製液を添加した。翌日培地を除き、1枚のプレートについて、細胞をリン酸緩衝液(pH7.0)にて洗浄した後回収し、B16メラノーマ培養細胞の白色化度をコウジ酸100μg/mlを対照として以下の基準にて評価した。結果を以下の表に示す。表中、+は「対照と同等の白色効果がある」を、±は「対照より弱いが白色効果がある」を、×は「効果なし」を、−は未試験を示す。細胞生育率はコントールを100%とした比率である。
【0104】
【表1】

【0105】
表に示した結果から、ビタミンB6誘導体(ピリドキシン 3-β-D-グルコシド及びピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩)は優れたメラニン生成抑制効果を示すことが明らかである。
【0106】
試験例18(美白剤との組み合わせによるメラニン生成抑制評価試験)
マウス由来のB16メラノーマ培養細胞を使用した。精製水に所定濃度溶解したビタミンB6誘導体(ピリドキシン 3-β-D-グルコシド)及びアルブチン(和光純薬社製)100μMを培地中に添加した。途中培地交換を行い、5日間培養後、細胞を回収し、細胞数を測定した後、細胞内のメラニンを定量した。溶媒コントロールとして、精製水を加えたものを用いた。溶媒コントロールのメラニン量を1として、各試料濃度における細胞内メラニン量をメラニン生成率とした。結果を第20図に示す。
【0107】
ビタミンB6誘導体(ピリドキシン 3-β-D-グルコシド)は、他の美白成分と組み合わせることにより、優れたメラニン産生の抑制効果を示すことが明らかになった。以上の結果から、ビタミンB6誘導体は他の美白成分と組み合わせることによって、より優れた美白効果を発揮できると結論された。
【0108】
試験例19(ヘアレスマウス紫外線照射による皮膚障害試験)
紫外線照射によるシワ形成を下記調製方法により調製した試料が抑制するかどうかについて評価をおこなった。
[試料(抗皮膚障害製剤)の調製]
ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩及びジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液(DETAPAC)を基剤(ポリエチレングリコール1000:エチルアルコール=1:1)に溶解し、2% 濃度に試料を調製し、ヘアレスマウス紫外線照射による皮膚評価試験に用いた。なお、DETAPACは陽性コントロールとして用いた。
【0109】
[試料塗布法と紫外線照射法]
1群8匹とし、紫外線照射90分前に上述の試料をヘアレスマウス(10週齢)背中に0.1 g塗布し、一定量の紫外線(東芝FL20S・BLBランプ)を1日2時間(5回/週)10週間照射し、シワ形成抑制効果を調べた。
これらの試料の紫外線吸収スペクトルを測定し、評価試験に影響を与えないことを確認した。
【0110】
[評価法]
(シワ形成抑制効果)
紫外線照射10週後のシワ形成について、下記に示す「光皮膚老化グレード」に基づいてシワグレードを判定した。なお、結果は、8匹の評点の平均値で表し評価した。試験及び評価法はBissettらの文献(Photochem Photobiol, Volume:46, Issue:3, Page:367-78, Year:1987)を参考に改変して用いた。
【0111】
【表2】

【0112】
第21図から明らかなように、ビタミンB6誘導体(ピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩)は陽性コントロールとして用いたDETAPACと同程度以上のシワ形成抑制効果を示すものであった。なお、DETAPACは、Grafらの報告(J Biol Chem. 259(6), pp. 3620-4, 1984 )にあるように鉄キレート能があり、鉄キレーターはJurkiewiczらの報告(Photochem Photobiol, 59, pp. 1-4, 1994 )で示されているように、シワを抑制し、紫外線により引き起こされる皮膚障害に関与していることが認められている。
【0113】
試験例20(化粧水)
下記成分(3)〜(5)及び(9)〜(11)を混合溶解した溶液と、成分(1)、(2)、(6)〜(8)及び(12)を混合溶解した溶液とを混合して、均一にし、化粧水を得た。
(処方) (%)
(1)グリセリン 5.0
(2)1,3-ブチレングリコール 6.5
(3)ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
モノラウリン酸エステル
(4)エチルアルコール 8.0
(5)ビタミンB6誘導体(ピリドキシン 3-β-D-グルコシド) 0.001
(6)L−アスコルビン酸グルコシド 0.5
(7)乳酸 0.05
(8)乳酸ナトリウム 0.1
(9)パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 3.0
(10)防腐剤 適量
(11)香料 適量
(12)精製水 残量
例20で調製した化粧水は、肌に適用することによって、肌を白く滑らかにする優れた化粧料であった。また、この化粧水には、沈殿等が認められず、安定性も良好であった。
【0114】
試験例21(乳液)
下記成分(13)、(16)及び(18)を加熱混合し、70℃に保った混合物を、成分(1)〜(9)、(12)及び(15)を加熱混合し、70℃に保った混合物に加えて混合し、均一に乳化した。さらにこの乳化物を、冷却後(10)及び(11)を加え均一に混合した。この混合物に(14)を加え、十分に攪拌し、さらに(17)を加え、均一に混合して乳液を得た。
(処方) (%)
(1)ポリオキシエチレン(10E.O.)ソルビタン 1.0
モノステアレート
(2)ポリオキシエチレン(60E.O.)ソルビット 0.5
テトラオレエート
(3)グリセリルモノステアレート 1.0
(4)ステアリン酸 0.5
(5)ベヘニルアルコール 0.5
(6)スクワラン 8.0
(7)パルミチン酸レチノール*1 0.002
(8)グリチルリチン酸ジカリウム*2 0.3
(9)ビタミンB6誘導体(ピリドキシン 3-β-D-グルコシド) 0.01
(10)カンゾウ抽出物*3 0.1
(11)ヒアルロン酸 0.1
(12)防腐剤 0.1
(13)カルボキシビニルポリマー 0.1
(14)水酸化ナトリウム 0.05
(15)エチルアルコール 5.0
(16)精製水 残量
(17)香料 適量
(18)酸化亜鉛*4 5.0
*1 日本ロシュ社製
*2 丸善製薬社製
*3 丸善製薬社製
*4 シグマ社製
試験例21で調製した乳液は、肌に適用することによって、肌を白く滑らかにする優れた化粧料であった。また、この乳液には、沈殿等が認められず、安定性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
一般式(I)で表される本発明の化合物は安定性に優れており、特に光安定性が顕著に改善されているという特徴がある。一般式(I)で表される化合物は、本発明の一般式(IV)で表される化合物を製造用中間体として用いることにより効率的かつ安価に製造することができる。本発明の組成物では、ビタミンB6誘導体及び他のビタミン類の熱安定性及び光安定性が顕著に改善されており、長期の保存や流通過程を経た後にも上記の各有効成分の含有量の低下が軽減されている。また本発明の組成物は、優れた美白効果、老化防止効果、及び紫外線暴露によるシワ形成抑制効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】第1図は、本発明の化合物の光安定性を示す。PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシドを、PN・HClは塩酸ピリドキシンを示す。
【図2】第2図は、本発明の化合物の熱安定性を示す。PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシドを、PN・HClは塩酸ピリドキシンを示す。
【図3】第3図は、本発明の化合物の光安定性を示す。PN-3-β-G・HClはピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩を、PL-3-β-Gはピリドキサール 3-β-D-グルコシド、PM-3-β-Gはピリドキサミン 3-β-D-グルコシド、PN-3-β-Galはピリドキシン3-β-D-ガラクトシド、PN・HClは塩酸ピリドキシンを示す。
【図4】第4図は、本発明の化合物の熱安定性を示す。PN-3-β-G・HClはピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩を、PL-3-β-Gはピリドキサール 3-β-D-グルコシド、PM-3-β-Gはピリドキサミン 3-β-D-グルコシド、PN-3-β-Galはピリドキシン 3-β-D-ガラクトシド、PN・HClは塩酸ピリドキシン、PL・HClはピリドキサール塩酸塩、PM・2HCl・H2Oはピリドキサミン塩酸塩を示す。
【図5】第5図は、本発明の化合物の光安定性を示す。Ser-PN-3-β-GはN-(4-ピリドキシルメチレン)-L-セリン 3-β-D-グルコシドを、PN・HClは塩酸ピリドキシンを示す。
【図6】第6図は、本発明の化合物の光安定性を示す。PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムを、PN-3-Pはピリドキシン 3-リン酸二ナトリウムを、PN・HClは塩酸ピリドキシンを示す。
【図7】第7図は、本発明の化合物の光安定性を示す。PN-3,4'-cP-Mgはピリドキシン 3,4'-環状リン酸マグネシウムを、PN・HClは塩酸ピリドキシンを示す。
【図8】第8図は、本発明の化合物の光安定性を示す。PN-3-α-Gはピリドキシン 3-α-D-グルコシドを、PN・HClは塩酸ピリドキシンを示す。
【図9】第9図は、本発明の化合物の光安定性を示す。PN-3-Sはピリドキシン 3-硫酸ナトリウムを、PN・HClは塩酸ピリドキシンを示す。
【図10】第10図は、本発明の化合物の熱安定性を示す。PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシドを、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムを、PN・HClは塩酸ピリドキシンを示す。
【図11】第11図は、本発明の化合物のローション中での光安定性を示す。PN・HClは塩酸ピリドキシン、PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシド、PN-3-β-G・HClはピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウム、PN-3-Sはピリドキシン 3-硫酸ナトリウムを示す。
【図12】第12図は、本発明の化合物のローション中での熱安定性を示す。PN・HClは塩酸ピリドキシン、PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシド、PN-3-β-G・HClはピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムを示す。
【図13】第13図は、本発明の化合物のシャンプー中での光安定性を示す。PN・HClは塩酸ピリドキシン、PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシド、PN-3-β-G・HClはピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムを示す。
【図14】第14図は、本発明の化合物のシャンプー中での熱安定性を示す。PN・HClは塩酸ピリドキシン、PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシド、PN-3-β-G・HClはピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムを示す。
【図15】第15図は、本発明の化合物の目薬中での光安定性を示す。PN・HClは塩酸ピリドキシン、PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシド、PN-3-β-G・HClはピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムを示す。
【図16】第16図は、本発明の化合物の飲料水中ででの光安定性を示す。PN・HClは塩酸ピリドキシン、PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシド、PN-3-β-G・HClはピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムを示す。
【図17】第17図は、本発明の化合物のドッグフード中での光安定性を示す。PN・HClは塩酸ピリドキシン、PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシド、PN-3-β-G・HClはピリドキシン 3-β-D-グルコシド塩酸塩、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムを示す。
【図18】第18図は、本発明の化合物をパントテン酸カルシウムと混合した場合のパントテン酸カルシウムの安定性を示す。図中、PN・HClは塩酸ピリドキシンと混合したパントテン酸カルシウム残存量、PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシドと混合したパントテン酸カルシウム残存量、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムと混合したパントテン酸カルシウム残存量を示す。
【図19】第19図は、本発明の化合物をパントテン酸カルシウムと混合した水溶液でのパントテン酸カルシウムの安定性を示す。図中、PN・HClは塩酸ピリドキシンと混合したパントテン酸カルシウム残存量、PN-3-β-Gはピリドキシン 3-β-D-グルコシドと混合したパントテン酸カルシウム残存量、PN-3,4'-cPはピリドキシン 3,4'-環状リン酸ナトリウムと混合したパントテン酸カルシウム残存量を示す。
【図20】第20図は、本発明の化合物と アルブチンからなる組成物の相乗美白効果を示す。PN-3-β-Gはピリドキシン3-β-D-グルコシドを示す。
【図21】第21図は、本発明の化合物の光皮膚老化グレード外観評価(10週後)を示す。PN-3-β-G・HClはピリドキシン3-β-D-グルコシド塩酸塩を、DETAPACジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(V):
【化1】

(式中、R7はグリコシル基、リン酸基、硫酸基、又はR8と結合した環状リン酸基を示し;R8は-CH2OH、-CHO、-CH2NH2、-CH2-アミノ酸残基、又は-CH2-OPO2Hを示し;R9は水素原子又は-PO3H2を示す)で表される化合物又はその塩を含む化粧料のための組成物であって、美白剤、老化防止剤、及び/又は紫外線暴露によるシワ形成の抑制剤である組成物。
【請求項2】
(A)請求項1に記載の一般式(V)で表される化合物、及び(B)美白剤、酸化防止剤、消炎剤、血行促進剤、細胞賦活剤、及び紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上の物質を含有する化粧料のための組成物であって、美白剤、老化防止剤、及び/又は紫外線暴露によるシワ形成の抑制剤として用いる組成物。
【請求項3】
(A)請求項1に記載の一般式(V)で表される化合物、及び(B)アルブチンを含有する美白剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−13578(P2008−13578A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237620(P2007−237620)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【分割の表示】特願2005−514496(P2005−514496)の分割
【原出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390010205)第一ファインケミカル株式会社 (23)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】