説明

医療機器

【課題】機器異常や生体異常情報、機台故障に繋がる異常警報などが発せられた場合、速やかにその情報を外部へ流し迅速な対応が取れるよう、無線通信精度を向上させた医療機器を提供する。
【解決手段】医療機器の運転情報、使用情報または使用者情報を記憶する記憶手段、記憶した情報を情報センターに送信する送信手段を備え、該送信手段が、稼動アンテナを備えた無線送受信機能を備え、無線電波強度の強度電圧値を計測し、該無線電波強度が微弱の場合は、該稼動アンテナにより無線電波強度が所定値以上になる位置を探索する手段を備えることを特徴とする医療機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機能を備えた医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器の発達と共に、医療機器の運転情報や検査結果、患者の情報などを病院内や別途設けられた情報センターで一括管理するシステムが各地で使用されるようになっている。医療機器も病院内で使用されるものの他、在宅医療の推進の中で患者宅で使用されるケースも増えており、機器の運転状況や患者の生体情報などを遠隔モニタリングするシステムも開発されている。
【0003】
近年、肺気腫、肺結核後遺症や慢性気管支炎などの慢性呼吸器疾患に苦しむ患者が増加する傾向にあるが、かかる患者に対する治療方法として、高濃度酸素を吸入させる酸素吸入療法が患者宅で行われている。酸素吸入療法とは前記疾病患者に対して酸素ガス若しくは酸素濃縮気体を吸入させる治療法であり、治療用の酸素ガス或いは濃縮酸素気体の供給源としては、高圧酸素ボンベ、液体酸素ボンベの他、長時間の連続使用に耐えることができ、また使い勝手がよいなどの理由により、酸素濃縮装置を使用するケースが増加している。
【0004】
酸素濃縮装置としては、コンプレッサを用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置が一般に使用されており、窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した吸着床にコンプレッサで圧縮空気を導入して加圧状態で窒素を吸着させることにより酸素濃縮気体を得る吸着工程と、吸着床の内圧を減少させて窒素を脱着させ吸着剤の再生を行う脱着工程を交互に行うことにより酸素濃縮気体を得ることができる。
【0005】
酸素濃縮装置が故障に繋がるような警報を発した場合や、定常運転時における機台運転情報、患者の生体情報を酸素濃縮装置内に備え付けられているセンサー等で検知し在宅通信装置、公衆電話回線を介して情報収集センターに送信し、解析結果を病院等にFAX等で伝送する在宅療法支援システムが知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−233744号公報
【特許文献2】特開平7−95963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸素濃縮装置に内蔵あるいは外付けで設置された在宅通信装置を電話回線に接続することで情報収集センターに情報を送信することが出来る。装置の設置場所と電話線端末位置が離れていると電話線設置工事が必要となるため、無線通信を利用する場合が増えている。無線通信を利用する在宅通信装置は、電話回線に接続される親機、酸素濃縮装置に接続される子機からなり、機台内で作成した警報情報あるいは運転情報などを無線通信機能により電話回線に接続されている親機へ伝送する。電話回線に繋がる親機は電話回線から情報収集センターのサーバーへアクセスし、警報情報や運転情報を送信する。
【0008】
このような酸素濃縮装置に備え付けられている無線通信機能を利用して家庭内子機から親機へ電送する場合、親機と子機の間の距離は、通常数メートル程度であることから安定した通信が期待される。しかし近年の家電機器を含む通信機器の発達は家庭内における通信環境に大きく影響し、数メートルの距離の医療機器の無線通信安定性に影響している。
【0009】
医療機器の機器異常警報や使用している患者の生体異常警報のような、患者の生命に影響するような情報に対しては直ちに何らかの対応を取る必要があり、無線通信を安定させることは非常に重要である。従来は通信が不安定で通信が正常に実施できなかった場合、通信が成功するまで再送信を繰り返す方法がとられる。しかし、上記のような機器異常や生体異常情報などは、警報が発せられた場合には、なるべく早く情報を伝達する必要があり、再電送を繰り返す時間の猶予が認められない場合が出てくる。
機台運転情報においても、データ転送の不備により正しいデータが伝送されなければ機台運転状況を、サーバーを介して情報収集センターで正しく把握する事が出来ない。
【0010】
本発明は、無線通信の成功率を高めるためものであって、機器異常や生体異常情報、機台故障に繋がる異常警報などが発せられた場合、速やかにその情報を外部へ流し迅速な対応が取れるよう、無線通信精度を向上させた医療機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題に対して、本発明者は鋭意検討した結果、親機・子機間の通信状態が不安定に陥ったとき、親機側の発信電波を基準に子機側のアンテナの向きを最適な方向に回転させることで受信強度を上げ、安定な通信状態を保つことができることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、医療機器の運転情報、使用情報または使用者情報を記憶する記憶手段、記憶した情報を情報センターに送信する送信手段を備え、該送信手段が、稼動アンテナを備えた無線送受信機能を備え、無線電波強度の強度電圧値を計測し、該無線電波強度が微弱の場合は、該稼動アンテナにより無線電波強度が所定値以上になる位置を探索する手段を備えることを特徴とする医療機器を提供するものである。
【0013】
また本発明は、かかる稼動アンテナが、アンテナ位置をモーターにより可変するアンテナであることを特徴とし、該送信手段が、該情報センターに有線通信回線及び該有線通信回線に接続された無線送受信手段を介して該記憶した情報を送信する手段であり、該有線通信回線に接続された無線送受信手段から発信される電波を受信し、受信した無線電波強度の強度電圧値に基づいて、該稼動アンテナのアンテナ位置を探査する手段を備えることを特徴とする医療機器を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の医療機器を使用することで、無線通信による安定化が実現され、正しい機台情報をサーバーに転送する事が可能となる。例えば、医療用酸素濃縮装置が故障に繋がるような警報を発した場合でも、この警報情報が正しくサーバーに転送されるので直ちに対応を取ることができる。したがって、使用者の迷惑程度を低減できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の医療機器の実施態様例として、無線通信機能を内蔵した酸素濃縮装置を例に説明する。空気中の酸素を分離し使用者に酸素濃縮空気を供給する医療用酸素濃縮装置は、酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤としてLi-X型ゼオライトなどの吸着剤を充填した吸着塔3にコンプレッサ1で加圧空気を供給し、空気中の窒素を吸着させ、未吸着の酸素をサージタンク9に取り出す吸着工程、切り替え弁2、自動開閉弁4を切り替えることにより、吸着塔3を減圧し窒素を脱着し吸着剤を再生する脱着工程を順次繰り返すことで酸素を生成する。生成した酸素ガスは自動開閉弁5、調圧弁6を介し一定圧力に調圧したのち、除菌フィルター7で塵埃を除去し、流量設定器8で処方流量に設定した後、加湿器10で加湿した酸素を供給する。
【0016】
機器が正常に運転し、使用者が処方どおり機器を使用しているかは、圧力センサー11や酸素濃度センサー12、流量設定器の設定値をフォトセンサーで検知するなど、各種センサー類を装備することで監視している。かかるセンサー情報は、1日1回所定時刻に、記憶情報を定時運転情報として、無線通信機能を介して家庭内に設置した親機に送信し、親機は電話回線を介して情報センターのサーバーに情報を送信する。
【0017】
医療用酸素濃縮縮装置が故障に繋がるような警報を発した場合には、装置内に備え付けられている無線通信機能により警報情報を即時に電話回線に接続されている親機へ電送する。親機は電話回線を介して情報収集センターのサーバーに伝送する。
【0018】
この時、医療用酸素濃縮装置に備え付けられている無線通信機能(子機)から親機へ情報を無線電送する際に、無線感度が悪く電送が行えなかった場合、あるいは電送が行えたとしても文字化け等が発生し、正しい電送が行えなかったりすると最終的には正しい機台情報をサーバーに送り込めなくなる。故障に繋がる警報を医療用酸素濃縮装置が発したとしても、データ電送が正しく行えなければ機台処置が遅れる結果となる。
【0019】
従って、無線通信を常時安定化させるために、CPU側で無線電波強度を常に監視し通信状態が悪くなった場合、電波を受信するためのアンテナの向きを変えさせる。無線モジュールには無線強度をDC0〜5Vのアナログ電圧に変換する機能を搭載し、電波強度の強弱を確認するために親機側から子機に擬似電波を送信することで電波強度を検知することができる。
【0020】
無線通信に必要となるアンテナの向きを親機・子機間の通信状態が不安定なときにCPUからの指令に基づいて変更する事で常に安定な通信状態を保つ。アンテナの向きを変えるためには例えば、アンテナをステッピングモーターに取り付けておいて無線電波強度が弱くなった場合、強度が安定する様にステッピングモーターを稼動させアンテナ位置を変更させる。
【0021】
図3に示すようにモーター14により回転する回転テーブル17を配置し、該回転テーブル上にアンテナ16が取り付けてある。アンテナ長は、使用する無線周波数から決まる波長の4分の1の長さが、最も効率良く電波を送・受信できる。しかし、周波数が低い場合には、かかるアンテナ長が長くなり該アンテナを移動させ難くなるので、送・受信感度は低下する。そのためチップ型などの小型アンテナを使用することが望ましい。
【0022】
アンテナ16から送信される信号は、図2に示すように無線専用IC15から該アンテナ16を経て空中へ放出される。逆にアンテナ16から受信される電波は、図2に示すように無線専用IC15に送られる。
【0023】
無線専用IC15内では、復調により受信データとして信号処理を行うために復調し、受信電波のスペクトラムから無線電波強度を計測する。無線専用IC15内で加工されたデータは、CPU13へ送る。該CPU13は該無線専用IC15から送られてきた無線電波強度値に対して、予め定められた強度以下であれば、安定した無線通信が困難と判断する。そして無線電波強度を高めるために、該CPU13はモーター14を回転させる指令を出す。
【0024】
回転角は、一度に大きく回転させるのではなく、少しずつ制御良く回転させた方が良いことから、ステッピングモーターを使用することが望ましい。該CPU13からの指令により該モーター14を回転させ、アンテナ16の向きを一定角度毎に変えさせる。該アンテナ16の位置を変えながら無線電波強度値を逐次判断し、最も無線電波強度値が高くなる場所を探す。周囲環境等により、無線電波強度が低下した時は、更に該モーター14を回転させ、最も無線電波強度が高くなる位置を探し、無線通信を行う。このようにして、無線通信の安定化を図る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】医療用酸素濃縮装置のフロー図。
【図2】アンテナ駆動を実施するためのブロック図。
【図3】アンテナを駆動させるためのブロック図。
【符号の説明】
【0026】
1 コンプレッサ
2 切り替え弁
4,5 自動開閉弁
3 吸着搭
6 調圧弁
7 除菌フィルター
8 流量設定器(フォトセンサー含む)
9 サージタンク
10 加湿器
11 圧力センサー
12 酸素濃度センサー
13 CPU
14 モーター
15 無線専用IC
16 アンテナ
17 回転テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器の運転情報、使用情報または使用者情報を記憶する記憶手段、記憶した情報を情報センターに送信する送信手段を備え、該送信手段が、稼動アンテナを備えた無線送受信機能を備え、無線電波強度の強度電圧値を計測し、該無線電波強度が微弱の場合は、該稼動アンテナにより無線電波強度が所定値以上になる位置を探索する手段を備えることを特徴とする医療機器。
【請求項2】
該稼動アンテナが、アンテナ位置をモーターにより可変するアンテナであることを特徴とする請求項1記載の医療機器。
【請求項3】
該送信手段が、該情報センターに有線通信回線及び該有線通信回線に接続された無線送受信手段を介して該記憶した情報を送信する手段であり、該有線通信回線に接続された無線送受信手段から発信される電波を受信し、受信した無線電波強度の強度電圧値に基づいて、該稼動アンテナのアンテナ位置を探査する手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の医療機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−103814(P2008−103814A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282492(P2006−282492)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】