説明

医療測定デバイス

本発明は測定信号を発生するための少なくとも一種の診断センサユニットと測定信号を処理するための評価ユニット(140)とを有する少なくとも一個の生理学的パラメータを非侵襲的に求めるための測定デバイスに関する。本発明の目的は機能性が先行技術に比べて技術的に拡張した生理学的パラメータを非侵襲的に求めるためのデバイスを提供することである。より詳細には本発明の目的は疾患の確実な早期発見と共に既存疾患の継続的モニターを可能にするためユーザーが楽に頻繁に利用できるデバイスを生み出すことである。このような目的は本発明によって解決され、本発明においては、診断センサユニットはコンピュータ(2)のキーボード(3)又は娯楽や通信技術のモバイルデバイス(10)に組込まれている又はそれらに接続可能であり、診断センサユニットは、
検査対象の体組織(240)に照射するための少なくとも一種の放射光源(4)と、体組織(240)から散乱及び/又は伝播した放射光を検出するための少なくとも一種の放射光センサ(5)とを有する光学測定ユニット(100)、及び/又は、
二以上のECG電極(7)を介してECG信号を捕捉するためのECGユニット(132)、及び/又は、
温度センサ又は熱センサ(6)、及び/又は、
生体電気インピーダンス測定ユニット(130)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定信号を発生させるための少なくとも一種の診断センサユニットと測定信号を処理するための評価ユニットを有する、少なくとも一個の生理学的パラメータを非侵襲的に求めるための測定デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
体組織への酸素の供給は、人間の最も重要な生命機能に属するものとして知られている。このため、今日では、酸素測定診断モダリティは医療において非常に重要である。所謂パルスオキシメータが日常的に用いられている。このようなパルスオキシメータの診断センサユニットは通常、体組織内に波長の異なる赤色光及び/又は赤外光を照射する二種の光源を有する。照射光は体組織内で散乱し、一部吸収される。散乱光は、好適なフォトセル(フォトダイオード)形状の光センサによって最終的に検出される。市販のパルスオキシメータでは通常、波長領域が660nmの光を用いる。この波長領域内では、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの光吸収は大幅に異なる。光センサによって検出される散乱光の強度は、酸素の豊富な及び/又は不足した血液が検査対象の体組織に供給される量(intensity)の関数として変化する。一方、波長領域が810nmの光が通常適用される。この光波長は、所謂近赤外スペクトル領域内に存在する。このスペクトル領域内でのオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの光吸収は本質的に等価である。更に、先行技術のパルスオキシメータは、プレチスモグラフ信号(即ち、パルスオキシメータによって覆われた微細血管系において心拍時に変化する血液量を反映する容積脈信号(volume pulse signal))を発生させることができる(所謂フォトプレチスモグラフィ)。異なる光波長が上述のスペクトル領域で用いられた場合、血中酸素量(酸素飽和度)に対する光吸収の違いから結論を得ることができる。通常のパルスオキシメータは患者の指先又は耳たぶで用いる。この場合、容積脈信号は、このような体組織領域内の微細血管系の血液灌流から生じる。
【0003】
特にフレキシブルに利用可能な酸素測定診断デバイスが、WO00/69328A1によって公知である。この先行技術デバイスは、人体の任意の測定点に適用されるべく手動で操作可能である。この先行技術デバイスによって、患者の体を系統的にスキャンすることがほぼ可能である。診断デバイスの固定(通常のパルスオキシメータではなされている)は、上述の印刷刊行物に記載の公知デバイスでは省略することができる。
【0004】
更に、上述のWO00/69328A1には、患者の皮膚表面付近の体組織における炎症や腫瘍、動脈硬化症の部位分解認識(site-resolved recognition)に対する酸素測定診断デバイスの適用可能性が記載されている。この種の疾患によって、体組織の血液循環量に変化が生じる。人体の部位分解酸素測定スキャンを行った場合、対応する疾患を示唆する血液循環量の変化は、上述のデバイスによって検出し、その場所を特定することができる。
【0005】
ECG(心電図)は、心血管疾患の診断に最も頻繁に用いられる検査モダリティである。ECGデバイスの診断センサユニットによって、二以上のECG電極を用い、検査対象の患者の体から電気信号を得る。このようにして得たECGは、心室刺激伝導及び再分極時に心臓で生じる生体電気的緊張(bioelectrical tensions)を反映する。ECGには、診断評価可能な多数のパラメータが含まれる。心拍の際の心筋の収縮時には、ECGにR波と称される明確なピークが示される。更に、ECGには、R波に先行する所謂P波が含まれる。R波には所謂T波が続く。ECGにおいて、R波の直前及び直後の最小値はそれぞれQ及びSと称される。心血管診断の対象となるパラメータは、P波の持続時間とその振幅、PQ間隔の持続時間、QRS群の持続時間、QT間隔の持続時間及びT波の振幅である。心血管系の健康状態に対する結論は、上述のパラメータの絶対値(absolute value)とこれらのパラメータの比の両方から得ることができる。ECG測定のためのデバイス及び方法は、例えば、米国特許第6,331,162号又は第4,960,126号によって公知である。
【0006】
他の生理学的パラメータ(例えば、体脂肪量)を求めるための、生体電気インピーダンス測定の原理については、例えば、米国特許第6,714,814号によって公知である。しかし、体組織の組成は光学的に求めることもできる。赤外光によって体脂肪量を光学的に求める原理については、例えば、米国特許第4,928,014号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生理学的パラメータを非侵襲的に求めるためのデバイスであって、その機能性が先行技術に比べて技術的に展開したデバイスを提供することである。より詳細には、本発明の目的は、疾患の確実な早期発見と共に、既存疾患の継続的なモニターを可能にするためユーザーが楽に且つ頻繁に利用することのできるデバイスを生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、最初に述べた種類の測定デバイスに基づき本発明によって解決されるが、この測定デバイスにおいては、診断センサユニットがコンピュータのキーボード又は娯楽や通信技術のモバイルデバイスに組込まれているか又は接続可能であり、診断センサユニットは、検査対象の体組織に照射するための少なくとも一種の放射光源(radiation source)と、体組織によって散乱及び/又は伝播した放射光(radiation)を検出するための少なくとも一種の放射光センサとを有する光学測定ユニット、及び/又は、二以上のECG電極を介してECG信号を記録するためのECGユニット、及び/又は、温度センサ又は熱センサを有する。
【0009】
測定デバイスの診断センサユニットをコンピュータのキーボード又は娯楽や通信技術のモバイルデバイスへ組込むことによって、コンピュータ及び/又はモバイルデバイスのユーザーは、いつでも測定デバイスを用いて対象となる上述の生理学的パラメータを求めることができる。今日では、多くの人がオフィスや家庭でコンピュータにアクセスできる。更に、殆どの人がモバイル通信デバイス(例えば、携帯電話や所謂スマートフォン)を利用している。また、モバイル娯楽デバイス(例えば、MP3プレーヤや所謂ウォークマン(登録商標))も一般に利用されている。診断測定ユニットをコンピュータのキーボード又は上述した種類の娯楽や通信技術のモバイルデバイスへ組込むことによって、確実にユーザーが測定デバイスを頻繁に利用できるようになる。ユーザーは、コンピュータで仕事をしたり、対応するデバイスを用いながらほぼ同時に生理学的パラメータを求めるための測定を行うことができる。この目的のために別のデバイスを用いる必要がない点で有利である。また、第三者の目からみると、診断測定がコンピュータのキーボードやモバイルデバイスの通常の操作と区別できないため、人目につかずに生理学的パラメータを求めることができる点で特に有利である。特に糖尿病患者にとっては、本発明の測定デバイス自体は血糖値を求めるのに適している。更に、本発明の測定デバイスは、既存疾患の治療経過をモニターし記録するのに好適である。ユーザーは、定期的に測定デバイスを利用し、治療を管理する上で対象となる上述のパラメータを記録することができる。このようなパラメータは、記録したり(測定日時を含む)、記憶させたり、好適なデータ伝送ネットによって伝送させたりすることができる。
【0010】
本発明においては、診断センサユニットに酸素測定及び/又はプレチスモグラフ測定信号を発生させるための光学測定ユニットを設けることができる。これによって、ユーザーの体組織への酸素の供給量をモニターすること、及び/又は容積脈信号を発生させることが可能となる。
【0011】
本発明の測定デバイスの評価ユニットは、光学測定ユニットの信号から少なくとも一個の局所代謝パラメータ(特に局所酸素消費量)を求めるのに適切に設けられている。評価ユニットでは、所定の測定箇所(即ち、特にキーボードやモバイルデバイスにおけるユーザーの指先)で局所酸素濃度を求めるだけでなく、特に、局所代謝活性の重要な指標としての局所酸素消費量も求めるために、光学測定ユニットによって得た酸素測定及び/又はプレチスモグラフ測定信号を用いる。本発明の測定デバイスによって、代謝の病理学的変化に基づいて疾患を検出することができる。
【0012】
本発明の測定デバイスの光学測定ユニットは、検査対象の体組織に電磁放射光線を照射するための放射光源と、体組織から散乱及び/又は伝播した放射光を検出するための少なくとも一種の放射光センサを有する。従来の発光ダイオードや光学的放射光(即ち、対応するスペクトル領域内の光)を発するレーザダイオードも放射光源として用いるのに適している。血中酸素濃度を求め、これに基づき検査対象の体組織における血液循環量を求めるためには、本発明のデバイスを用いて、少なくとも二種類(より望ましくは三種類)の光波長で該組織内の放射光吸収を測定することが特に有利であることが分かった。
【0013】
目的にかなう構成においては、本発明の測定デバイスの光学測定ユニットは、体組織から散乱及び/又は伝播した放射光を検出するための少なくとも二種の放射光センサを有し、これらの放射光センサは、放射光源に対して異なる距離に配置されている。これによって、体組織において放射光で覆われた距離に関する結論が得られる可能性が広がる。これに基づき、血液中及び深さの異なる組織層中の酸素濃度を検査することができる。また、より深い位置の組織層からの測定信号は動脈血の影響をより強く受ける一方、表面により近い領域での放射光吸収は、毛細血管系の血液の影響をより強く受けるという状況を利用することもできる。
【0014】
本発明の測定デバイスにおいては、検査対象の体組織の異なる体積範囲(volume ranges)に照射するために少なくとも二種の放射光源を設ける構成が有利である。これによって、光吸収の示差測定を容易に実現することができる。血液中の酸素が豊富な及び/又は不足した検査対象の体組織における血液循環量の代謝誘導による変化を検査することが可能となる。ここで用いる因子は、局所酸素消費量が組織の代謝活性の関数として変化するということである。可変的な酸素消費量を求めることによって、酸素消費量に直接相関する局所エネルギー消費量に関する結論を得ることができる。これによってグルコース濃度に関する結論を得ることができることは特に興味深い。このように、本発明の測定デバイスによって、有利に血糖値を非侵襲的に求めることもできる。
【0015】
本発明の測定デバイスの光学測定ユニットの二種の放射光源は、これらによって照射される体積範囲が酸素豊富な血液又は酸素不足の血液の血液循環によって異なった影響を受けるように構成する必要がある。例えば、これは、少なくとも二種の放射光源が異なる空間放射特性を有する点で達成し得る。例えば、類似の波長(例えば、630nmと650nm)を有する発光ダイオード及びレーザを放射光源として用いることができる。しかし、これら二種の放射光源は放射開口角が異なる。例えば、発光ダイオードの場合、検査対象の体組織に大きい開口角で照射するが、レーザダイオードからの光は非常に小さい開口角で体組織に入射する。その結果、これら二種の放射光源で捕捉される体組織の体積範囲が異なる。開口角が大きいため、発光ダイオードによって捕捉される血液が供給されない表皮の体積範囲は、レーザの場合に比べて大きくなる。血液が供給されない表皮は、実際にはヘモグロビン濃度の変化の影響を受けない。従って、体組織から散乱及び/又は伝播した発光ダイオード放射光の強度は、レーザ放射光の強度と比べて、ヘモグロビン濃度の変化に強く依存しない。前提条件として、これらの各放射光源からの放射光の波長の選択は、その放射光がオキシヘモグロビン及び/又はデオキシヘモグロビンによって異なる強度で吸収されるように行う。従って、波長は600〜700nmの範囲、好ましくは630〜650nmの範囲とする必要がある。
【0016】
本発明の測定デバイスの評価ユニットは、体組織から散乱及び/又は伝播する二種の放射光源の放射光から局所代謝パラメータを求めるのに有利に構成することができる。検査対象の体組織で酸素が消費される場合、オキシヘモグロビンがデオキシヘモグロビンに転化する。体組織の体積範囲の違いに起因する二種の放射光源からの放射光を比較することによって、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの濃度比の変化を求めることが可能である。これによって、局所酸素消費量、そして最終的に(間接的に)血糖値が得られる。このように、本発明の測定デバイスの評価ユニットは、体組織から散乱及び/又は伝播する二種の放射光源の放射光の強度に基づいて局所酸素消費量及び/又は血糖値を求めるのに適切に設けられている。
【0017】
本発明の測定デバイスにおいては、放射光源と放射光センサは、キーボードのユーザーインターフェース(例えば、キーボードの操作キーに対して多少の横方向間隔)で適切に配置されている。この構成によって、コンピュータで仕事をしながら(例えば、放射光源と放射光センサが配置されたキーボードのユーザーインターフェースで測定フィールドに指を置いて仕事をしながら)測定デバイスの光学測定ユニットをいつでも利用することができる。或いは、測定デバイスをいつでも利用できるように、放射光源と放射光センサを、対応するモバイル娯楽デバイス又は通信デバイスのケースの外側に配置することもできる。放射光源と放射光センサは表面に直接配置する必要はない。また、放射光の伝播は、キーボード及び/又はデバイスケースの表面から内部に配置された放射光源及び/又は放射光センサまで設けられた光ファイバによってなされてもよい。
【0018】
好ましい実施形態においては、本発明の測定デバイスは、脂肪量、水分量及び/又は血液循環量等の局所組織パラメータを記録するために、キーボード及び/又は娯楽や通信エレクトロニクスのモバイルデバイスに更に測定ユニットを組込んでおり、評価ユニットは、光学測定ユニット及び組織パラメータの信号から少なくとも一個の局所代謝パラメータを求めるのに適切に設けられている。
【0019】
例えば、本発明の趣旨における重要な局所組織パラメータは血液循環量である。これは、血液循環量によって検査対象の体組織の体積変動が生じることを意味する。血液循環量を記録するため、既に上述したように、本発明の測定デバイスには従来のプレチスモグラフユニット(例えば、フォトプレチスモグラフ)を設けることができる。このようにして、本発明の測定デバイスの光学測定ユニットを用いると同時に局所組織パラメータを記録することができる。
【0020】
本発明は特に、酸素測定信号とプレチスモグラフ信号を組合わせて記録することによって局所代謝パラメータを求める可能性が広がるという知見に基づく。
【0021】
局所酸素消費量を求めるためには、酸素測定によって求めた動脈酸素濃度に加え、本発明の測定デバイスによって組織内の毛細血管酸素濃度を求めることも可能である。しかし、この場合、検査対象の体組織の組成を知ることが必要となる。重要なパラメータは、体組織の局所脂肪量及び/又は水分量である。例えば、これらのパラメータは、生体電気インピーダンス測定によって記録することができる。本発明の好適な実施形態においては、従来の(光学的)酸素測定ユニットを生体電気インピーダンス測定ユニットと組合わせて独特なデバイスとしている。生体電気インピーダンス測定ユニットによって得た測定信号から、例えば、検査対象の体組織の組成を求めることができる。これに基づいて、測定デバイスの評価ユニットによる酸素測定信号から組織内の毛細血管酸素飽和度を求めることが可能となる。生体電気インピーダンス測定の場合、キーボードのユーザーインターフェース及び/又は娯楽や通信技術のデバイスのケース表面に電極を適切に組込む。具体的には、一種の電流供給電極と一種の測定電極を各々、例えば、携帯電話のケースの外側に配置した場合、デバイスのユーザーは、一方の手で一方の電極に触れながら、他方の手で他方の電極に触れることができる。本発明の測定デバイスに他のセンサがある場合にも測定電極の領域内に配置することができ、これによって、ユーザーはデバイスを両手でしっかりと持ちながら、必要な測定を全て同時に行うことができる。このようにして、ユーザーが読みやすいようにデバイスの統合ディスプレイ上に測定結果を示すことができる。
【0022】
生体電気インピーダンスを求めるための従来の測定方法の場合、例えば、検査対象の人の一方の手と一方の足との間で測定を行い、それによって、測定対象の体の各々の側の全身的指標がもたらされる。本発明の測定デバイスの診断センサユニットには、交流電流を供給するための一対のフィーダ電極とインピーダンスを測定するための一対の測定電極を有する生体電気インピーダンス測定ユニットを設けることができる。一対のフィーダ電極と一対の測定電極との間の距離は10cm未満が適切であり、1cm未満が好ましい。電極間距離を数ミリメートル未満(最大で数センチメートル)まで短くすることによって、本発明においては体全体に渡る統合はなされないが、生体電気インピーダンスは局所的に記録される。これによって、インピーダンスの局所変化を求めることが可能である。例えば、局所バイオインピーダンスの変化は、一回の脈動における血液量の変化によって生じる。これによって、局所生体電気インピーダンスにより心拍数を求めることが可能である。同時に、脈振幅が重要な生理学的パラメータとして求められる。この脈振幅が体温と相関していることが明らかになったが、これは、バイオインピーダンス解析によって検査対象の体の部分の温度を求めることが可能なことを意味する。更に、局所バイオインピーダンスは液体の量(即ち、検査対象組織内の局所血液量)に依存し、これによって、検査対象組織の局所血液循環量を求めることが可能である。最終的には、体の局所生体電気インピーダンスは食物摂取量の関数として変化するため、血糖値に決定的な影響を及ぼす代謝をバイオインピーダンスによって検査することができる。従って、本発明の測定デバイスによって血糖値を間接的且つ非侵襲的にモニターすることができ、グルコースの作用及び/又はグルコースによって開始される体内での生理的反応のエネルギー需要について検査することができる。この趣旨において、様々な生理学的パラメータ(例えば、心臓活性及び/又は血液循環量及び/又は体温及び/又はバイオインピーダンス)を用いて代謝を説明する。好適なアルゴリズムを用いることによって、生体電気インピーダンス解析で記録された測定信号からも、更にこの測定信号を本発明のデバイスの他の測定モダリティの測定信号と組合せても血糖値を求めることができる。
【0023】
本発明の測定デバイスの目的にかなう展開(development)は、生体電気インピーダンス測定ユニットを構成して更に全身的組織パラメータ(例えば、全体脂肪量及び/又は全体水分量)を記録することである。これによって本発明の測定デバイスの機能性が拡大する。本発明の測定デバイスの生体電気インピーダンス測定ユニットは、局所組織パラメータと全身的組織パラメータの両方が測定可能なように構成することができる。
【0024】
また、体組織の組成は本発明の測定デバイスによって光学的に求めることもできる。赤外光で体脂肪量を光学的に求める原理については先行技術によって公知である。本発明の測定デバイスの光学測定ユニットをこの趣旨で用いることができる。
【0025】
本発明のデバイスは、その有利な構成においては、一体化した温度−熱センサを有する。これを用いて、局所熱発生量を求めることができる。最も簡単な場合、温度センサは、測定点における皮膚の表面温度を測定するのに適切に構成する。測定点において場所、時間及び深さについて分けた熱測定が熱センサによって実行可能であるのが好ましい。熱交換に基づき、局所代謝活性に関して結論を得ることができる。更に、熱センサは局所血液循環量を求めるのに好適である。熱測定に関するより正確な背景情報については、Nitzan et al.による印刷刊行物(Meir Nitzan, Boris Khanokh, "Infrared Radiometry of Thermally Insulated Skin for the Assessment of Skin Blood Flow"(「皮膚血流を評価するための熱絶縁された皮膚の赤外放射光測定」), Optical Engineering 33, 1994, No.9, 2953〜2956頁)を参照されたい。一般に、代謝パラメータを求めるのに有利に用いることができるデータは、熱センサによって供給される。
【0026】
検査対象の組織の種類に依存する動脈酸素飽和度(SaO2)及び静脈酸素飽和度(SvO2)によって毛細血管(動静脈)酸素飽和度(StO2)が求まる。即ち、次式:
*SvO2+(1−K)*SaO2=StO2
(式中、Kは検査対象の組織内の動脈と静脈の体積比に依存する組織依存型補正因子である)が適用される。平均すると、この値は0.5をわずかに下回る。本発明においては、生体電気インピーダンス測定を行い、これによって上述の式に基づいて静脈酸素飽和度を求めることによって対象組織にとって決定的に重要な値を求めることができる。温度及び/又は熱測定及び/又は生体電気インピーダンス(インピーダンスプレチスモグラフィ)によって、血液循環量V(即ち、血液循環量に左右される検査対象の体組織の体積変動)を求めることが可能である。次の関係:
VO2=V*(SaO2−SvO2
によって、測定点における代謝活性の基準となる局所酸素消費量VO2を最終的に算出することができる。
【0027】
二以上の電極でECG信号を記録するためのECGユニットによって、本発明の測定デバイスの機能範囲は有利に拡大する。本発明のこの有利な展開においては、測定デバイスによってプレチスモグラフ信号とECG信号を組合わせて記録し、評価する。測定デバイスの評価ユニットは、容積脈信号及びECG信号の時間経過を評価するのに有利に設けることができる。好適なプログラム制御によって、本発明の測定デバイスの評価ユニットはECG信号内のR波を自動的に認識することができる。従って、心拍の正確な時点が自動的に求まる。そのプログラム制御のため、評価ユニットは更に容積脈信号の最大値を認識することができる。容積脈信号の最大値に基づき、測定デバイスによって、心拍時に引き起こされた脈波の到達時点を周辺測定部位で検出し、捕捉することができる。最終的には、ECG信号のR波と容積脈信号の続く最大値との時間間隔を求めることが可能である。この時間間隔は、所謂脈波速度(pulse wave rate)の基準となる。一方、脈波速度に基づき、血圧に関する説明を行うことができる。脈波速度の低下に伴って血圧は上昇するが、脈波速度の増加は血圧の低下を示唆する。しかし、傾向が示されるにすぎないため、脈波速度から血圧を正確に求めることはできない。また、脈波速度は血液密度、特に血管壁(例えば、大動脈壁)の弾性に依存する。血管の弾性から、動脈硬化が存在する可能性についての結論を得ることができる。また、心拍数、心拍数の変動、及び対応する心臓の不整脈についての絶対値(absolute value)もこの評価において考慮することができる。例えば、洞性頻脈や洞性徐脈、洞停止、所謂補充収縮等の不整脈を自動的に確認することができる。ECG信号に基づき、一心拍における心臓の心耳収縮の一時的持続や心室収縮の一時的持続、心室弛緩の持続等に関して説明することも可能である。更に、心臓における電気励起信号の導管内での所謂ブロック(AVブロックや脚ブロック等)に関する予備診断や、血液循環障害や梗塞に関する予備診断も可能となる。他の脈経過(pulse course)における不規則性は容積脈信号に基づいて検出することができる。
【0028】
ECG信号の評価を自動評価における容積脈信号と組合わせることによって、本発明の測定デバイスは、患者の血管系の機能評価を自律的に行うことができる。自動的に評価された信号に基づき、本発明のデバイスによって、(全身的な)心血管状態や、一般にはユーザーの健康状態を大まかに推定することができ、動脈硬化や心血管の他の問題について何らかの徴候が示される場合には、対応する警告信号又はデバイスのユーザーが容易に読み取れる健康指標や危険指標を発生させて、それを、例えば、キーボード接続のコンピュータに接続されたモニター又は娯楽や通信技術のモバイルデバイスの統合ディスプレイによって表示することができる。このように、本発明の測定デバイスを心血管疾患の自己診断に有利に用いることができる。
【0029】
上述の測定方法、即ち、酸素測定、ECG測定、温度及び/又は熱測定、及び生体電気インピーダンス測定の本発明の組合せが特に有利である。デバイスの評価ユニットによって、測定信号全てを好適なアルゴリズムで評価することができ、更に、代謝を検査するために測定信号全てを組合わせることができる。各種測定モダリティを組合せることによって、病理学的変化を効率良く高い信頼性で認識することができる。全てのパラメータは、ユーザーが容易に読み取れると共に、ユーザーにその一般健康状態に関する直接的且つ具体的な手がかりを与える全身的指標へと有利にまとめることができる。
【0030】
上述のように本発明の測定デバイスに集約された各種測定モダリティを組合せることは、これによってグルコース濃度を非侵襲的且つ間接的に測定することができるため、更に有利である。本発明のデバイスによって血糖値を求める上での可能なアプローチについては、以下により詳細に説明する。
【0031】
本発明の測定デバイスは、代謝によって影響を受けるデータの測定及び評価に役立つ。測定デバイスのユーザーが摂取した食物のエネルギー収支や組成が重要な役割を果たすことは明らかである。周知のように、代謝に関与する栄養素は主に炭水化物、脂肪及びタンパク質である。更なるプロセスによって、炭水化物はグルコースに転化し、タンパク質はアミノ酸に転化し、脂肪は脂肪酸に転化する。エネルギー担体はその後、体組織の細胞内で酸素と共にエネルギーの散逸によってATP(アデノシン三リン酸)に転化する。ATPは実際の内因性エネルギー担体である。グルコースを用いたATPの産生が優先する。しかし、グルコースからのATP産生が阻害された場合(例えば、インスリン欠乏のため)、それに代わって、脂肪酸の酸化が増強する。しかし、このプロセスにおける酸素消費量は異なる。
【0032】
上述したように、食物の摂取に対する人体の代謝反応は、その食物の組成に特徴的に依存する。例えば、人体の血管系は、摂取した食物を体内で消化するのに必要なエネルギー量に依存して反応する。本発明の測定デバイスによって求めることができる脈波速度に基づき、更に血圧振幅及び脈拍に基づいて、食物の摂取に対する体の反応を確認することができる。この趣旨に対し、本発明の測定ユニットの評価ユニットは、脈波速度の時間経過を評価し、測定デバイスのユーザーが摂取した食物の組成を食物摂取時からの脈波速度の時間経過に基づいて求めるのに適切に設けられている。脈波速度、血圧振幅及び脈拍は、食物の摂取が始まるとすぐに変化する。これらの最大値及びその最大値に対応する時点は、食物の組成によって影響を受ける。本発明の測定デバイスの評価ユニットによって摂取食物の組成を求めるため、脈波速度、血圧振幅及び脈拍の経過や絶対値を用いることができる。
【0033】
通常の状態(即ち、休眠状態や所謂中程度温度帯)においては、人体の代謝は主にグルコース収支によって支配される。従って、このような通常状態における体組織の細胞内でのグルコース濃度は、単なる熱産生量と酸素消費量の関数として説明することができる。即ち、次式:
[Glu]=f1(ΔT,VO2
(式中、[Glu]はグルコース濃度を示す)が適用される。熱産生量ΔTは、本発明の測定デバイスの熱センサによって、例えば、動脈温度と皮膚表面が完全に熱絶縁に達する温度との差から求めることができる(ΔT=Tso−Tartery)。項f1(ΔT,VO2)はグルコース濃度の熱産生量及び酸素消費量に対する関数依存性を示す。上述のように、酸素消費量は静脈及び動脈酸素飽和度と血液循環量との差から得られる。しかし、食物摂取時及び/又は摂取直後のグルコース濃度を求めるためには、エネルギー収支における脂質代謝の割合を反映する補正項を考慮する必要がある。よって、次式:
[Glu]=f1(ΔT,VO2)+X・f2(ΔT,VO2
(式中、Xは食物摂取後に負となる因子である)が適用される。従って、Xは摂取した食物の組成に依存する。特に、Xは脂肪と炭水化物が代謝に関与する割合に依存する。上述のように、因子Xは脈波速度の時間経過に基づいて求めることができる。単に炭水化物を摂取した場合やグルコースを直接摂取した場合には、Xはゼロとなる。摂取した食物中の脂肪の割合が多くなる程、Xの量は増加する。脈波速度、血圧振幅及び/又は脈拍の時間経過から補正因子Xを求めるためには、通常は、本発明の測定デバイスをそのユーザーに合わせて調整する必要がある。脂肪代謝の場合、f2(ΔT,VO2)はグルコース濃度の熱産生量及び酸素消費量に対する関数依存性を示す。
【0034】
このように、本発明の測定デバイスの評価ユニットを用いて、局所酸素消費量と局所熱産生量から局所グルコース濃度を求めることができる。この趣旨に対し、測定デバイスには適切な測定モダリティを設ける必要がある。上述のように、酸素測定を生体電気インピーダンス測定と組合わせることによって酸素消費量を求めることができる。熱産生量を求めるには更に好適な熱センサが必要である。最終的には、上述の関数的相関に応じてグルコース濃度算出を可能にするために、補正因子Xを、例えば、脈波速度の時間経過から求める必要がある。また、上述したように、これは、ECG信号とプレチスモグラフ信号を組合わせて測定することによって行うことができる。従って、グルコース濃度を求めるためには、本発明の測定デバイスにおいては、パルスオキシメータ、ECGユニット、生体電気インピーダンス測定及び熱センサを適切に組合わせる。
【0035】
上述の方法では、最初は細胞内グルコース濃度を求めることができるにすぎない。簡単なアプローチにおいては、血中グルコース濃度との次の相関関係がある。
[Glu]cell=a+b*ln(c*[Glu]blood
【0036】
定数a、b及びcは測定デバイスのユーザーの個々の生理機能に依存する。局所グルコース濃度から血糖値を求めるように本発明の測定デバイスの評価ユニットを更に構成することができるが、その際、測定デバイスのユーザーの生理機能に依存するパラメータを考慮する必要がある。このようなパラメータは、適切な較正によって(例えば、従来の方法で侵襲的に求めた血糖値と比較することによって)求めることができる。
【0037】
本発明の測定デバイスを実際に実現するためには、キーボードが接続されたコンピュータによって評価ユニットを有利に構成し、コンピュータで動作するソフトウェアによって前述の評価ユニットの機能を実現させ、ソフトウェアによって求めた生理学的パラメータをコンピュータに記憶させて保存する。この構成により、何らかの形でコンピュータに備わっているデータ処理用電子機器を用いて、診断測定ユニットによって得た測定信号を処理する。これは、適切なソフトウェアを設けることによって容易に成し遂げられる。同時に、ソフトウェアによって求めた生理学的パラメータをコンピュータに記憶させて保存することができる。これによって、疾患の経過や対応する治療の効果を追跡したり、実証することが可能となる。
【0038】
或いは、娯楽や通信技術の機器内に何らかの形で備わっているマイクロプロセッサやマイクロコントローラが評価ユニットとして働き、評価ユニットの機能は、マイクロプロセッサやマイクロコントローラで動作するソフトウェアによって実現する。
【0039】
評価ユニットによって求めた生理学的パラメータを評価するための診断ユニットを有することは、更に本発明のデバイスの目的にかなう。診断ユニットの機能はソフトウェアによって実現することができる。診断に必要なパラメータを上述のような方法で求めるために、評価ユニットは記録信号を評価する役割を担っている。疾患が存在する場合には、それに関連した結論を得るため、これらのパラメータを更に診断ユニットで処理する。特に、ユーザーが自己診断用に測定デバイスを用いて、ユーザーへ適切な警告信号を発生させる場合には、診断ユニットは、疾患の存在を自動的に認識する役割も担っている。
【0040】
従って、本発明の測定デバイスの診断ユニットは、評価ユニットによって求めたパラメータから心血管系の状態を確認するのに適切に設けられている。本発明の特に有利な構成においては、診断ユニットは、心血管系の状態及び(生体電気インピーダンス測定によって記録された)全身的組織パラメータに基づいて全身的健康指数を算出するのに更に適切に設けられている。このように、全身的組織パラメータを用いて、ユーザーの一時的な健康状態について特に有益な全身的健康指数を得ることができる。全身的健康指数を求めるためには、ユーザーの記録された測定値全てを考慮することができる。必要に応じて、限定できる期間における平均値を求める。心血管測定値や全身的組織パラメータ(全体脂肪量、全体水分量)とは別に、局所組織パラメータ及び局所代謝パラメータ(例えば、局所酸素消費量)も考慮することができる。全身的健康指数の結果は、測定デバイスのユーザーが特に読み取り易い単一の値である。
【0041】
求めた生理学的パラメータを表示したり、診断ユニットによって得た検査所見や結果を表示するために、表示ユニット(例えば、従来のモニタ)を本発明の測定デバイスのコンピュータに適切に接続する。或いは、娯楽や通信技術の機器に何らかの形で備わっているディスプレイも表示装置として好適に機能する。
【0042】
本発明の測定デバイスは、リモートデータ伝送、即ち、データネットや通信ネットを介して医療測定信号や求めた生理学的パラメータを伝送するのに適している。例えば、本発明においては、データネットワーク(例えば、インターネット)を介して、測定ユニットを含むキーボードが接続されたコンピュータによってデータ転送を行うことができる。或いは、本発明に係る測定デバイスが例えば、携帯電話に組込まれている場合には、モバイルラジオネットワークを介して生理学的パラメータを伝送することができる。測定信号や生理学的データは、例えば、セントラルステーション(ヘルスケアセンター)へ伝送して、より徹底的に解析し文書化すると共に個々のパラメータの時間的推移をモニターすることができる。そこでは、ファイルされた患者データ(慢性疾患や既往症に関する情報を含む)を考慮しながら、データの評価を例えば、好適な解析アルゴリズムによって行う。測定デバイスのユーザーにその健康状態について知らせるため、対応するデータネットや通信ネットを介して結果を測定デバイスへ返信することができる。セントラルステーションからは、必要に応じ、本発明の測定デバイスによって更なる選択的測定を開始することができる。更に、評価結果により病歴を補充(extend)する目的で、データネットワークや通信ネットワークを介して患者にバッククエリーを返信することができる。データや評価結果は自動的に検査医師に伝送することができる。測定結果や評価結果から緊急症例への手がかりが明らかになった場合には、必要な対策(例えば、救助サービスの自動警告)を即座に開始することができる。リモートデータ転送の他の利点は、測定信号の評価に必要なソフトウェアをデバイス自体で実行する必要がなく、データを受信し、且つデータが常に利用できて適切な状態に維持されているセントラルロケーションでのみソフトウェアが実行されることにある。
【0043】
コンピュータがモバイル機器(より詳細には、ノートブックやラップトップ、パームトップ、ハンドヘルド)の場合、本発明の測定デバイスの構成は特に実際的となる。この場合、進行中であっても、コンピュータを用いていつでも診断測定を行うことができる。
【0044】
フォトプレチスモグラフ測定の場合、光学センサへの指の接触圧は測定信号に大きな影響を及ぼす。従って、測定ユニットに置かれた指の接触圧を測定する手段を本発明の測定デバイスに設けることは意味を成し得る。この手段は、例えば、ピエゾ抵抗素子形状の従来の圧力センサでもよい。指の接触圧を測定するための光学プロセスも実行可能である。また、指の接触圧は測定信号に対して特徴的な影響を及ぼすため、(フォトプレチスモグラフ)信号自体から指の接触圧を求めることも考えられる。例えば、血液循環量に対する指の接触圧の影響を相殺するために、求めた指の接触圧を測定信号の更なる評価において考慮することができる。
【0045】
本発明の測定デバイスの目的にかなう展開は、測定デバイスの環境における周囲温度を求めるための温度センサを更に組込むことによってなされる。例えば、周囲空気での音速(sound spread velocity)の測定に基づく機能を有する温度センサを用いるのが好適である。周囲温度は人体の代謝に影響を及ぼす。この点で、測定デバイスによって得た測定信号の評価において周囲温度を考慮することは意味を成す。
【0046】
本発明の有利な構成においては、体内深部温度を測定するための一個又は数個の温度センサを測定デバイスに設ける。温度センサは、検査対象の体内部分に直接接触できる場所に設置するのが適切である。或いは、体内深部温度を測定するための温度センサは、コンピュータキーボードから離れたユニットであってもよく、キーボード及び/又はモバイル機器にワイヤレス(例えば、Bluetooth(登録商標))又は配線によって接続されたモバイル機器から離れたユニットであってもよい。このように、体内深部温度を測定するためのユニットは、温度を測定する上で何の問題もなく操作することができる。実際に知られた種類の従来のセンサシステムを用いて体内深部温度を測定することができる。体内深部温度は重要な参照変数であり、本発明の趣旨において生理学的パラメータ(特に、代謝パラメータ)を求める上で考慮することができる。
【0047】
このように、本発明の測定デバイスの評価ユニットは、測定デバイスの測定信号から呼吸数を求めるのに有利且つ適切であり得る。例えば、呼吸数は、フォトプレチスモグラフィで求めた脈振幅に基づいて推定することができる。また、脈振幅は心拍数に相互に依存する。
【0048】
本発明の好ましい実施形態においては、少なくとも一種の診断センサユニットが、娯楽や通信技術のモバイルデバイスから離れているが、コードレス又はコード結合信号線によってモバイルデバイスと接続されたユニットを構成する。これは、測定デバイスの機能性がモバイルデバイスに組込まれていることを意味する。しかし、センサ自体はモバイルデバイスから離れている。このような構成の場合、例えば、モバイルデバイスから独立してユーザーの体の好適な部分に測定ユニットを恒久的に配置することができるため、血糖値や他の生理学的パラメータを継続的にモニターするのに特に好適である。評価ユニットは測定ユニットに設置してもよく、測定ユニットが接続されたモバイルデバイスに設置してもよい。
【0049】
本発明の測定デバイスはその機能性において、血液や尿、便、呼気、汗、唾液、毛髪、ホルモンサンプル等のサンプルを解析するためのユニットが診断センサユニットに設けられている点で更に展開することができる。このように、本測定デバイスは、デバイスのユーザーに容易に用いられる個人用メディカルラボラトリーの機能をも満たす。この機能は、継続的な監視及び緊急時利用の両方の目的にかなう。
【0050】
本発明の目的にかなう展開においては、光学測定ユニットと温度センサ又は熱センサを共通のセンサケースに配置し、センサケースの上側には平坦なECG電極を構成し、ECG電極は、少なくとも一種の放射光源から放出される放射光の通過を可能とする少なくとも一個の開口部(recess)を有する。平坦なECG電極には、温度センサ又は熱センサ用の他の開口部を設けるのが適切である。放射光源、放射光センサ及び温度センサ又は熱センサは、センサケース内の共通のプリント回路基板に配置することができる。このようにして、必要な測定モダリティをセンサケースに集約させ、コンピュータキーボードやモバイルデバイスにフレキシブルに何の問題もなく組込むことができるユニットを構成する。また、測定センサがオンデマンドでのみ利用できるように、キーボードやモバイルデバイスに対し(例えば、好適なプラグ接続によって)着脱可能且つ接続可能な配置でセンサケースを構成することも考えられる。更に、この構成によって、キーボードやモバイルデバイスを改良して本発明の測定機能性を組込むことが可能である。本発明の趣旨において問題なくフレキシブルに用いるためには、センサケースの寸法は1cm×1cm×1cm未満でなければならない。更に生体電気インピーダンス測定を可能とするために、インピーダンス測定ユニットのフィーダ電極又は測定電極として機能する少なくとも一個の更なる平坦電極をセンサケースの上側に構成することができる。
【0051】
本発明の目的にかなう展開においては、測定デバイスに、収縮期及び/又は拡張期の血圧を測定するための血圧測定ユニットを更に設ける。血圧は重要な参照変数であり、所見や結果の信頼性を向上させるため、本発明の趣旨において生理学的パラメータや代謝パラメータを求める上で更に考慮することができる。血圧測定ユニットは、市販型の血圧測定器具(例えば、手首で用いる電子血圧測定器具)で今日既に用いられている関連センサシステムを有する従来型の血圧計であることができる。本発明においては、血圧測定ユニットは、コンピュータキーボード及び/又はモバイルデバイスにワイヤ結合又はワイヤレスで接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、本発明の測定デバイスの第一の実施形態の概略図を示す。
【図2】図2は、ブロック図に基づいて本発明のデバイスを示す。
【図3】図3は、本発明の測定デバイスの酸素測定ユニットのブロック図を示す。
【図4】図4は、熱測定ユニットのブロック図を示す。
【図5】図5は、測定デバイスのインピーダンス測定ユニットのブロック図を示す。
【図6】図6は、測定デバイスのECGユニットのブロック図を示す。
【図7】図7は、本発明の測定デバイスの第二の実施形態の概略図を示す。
【図8】図8は、本発明における局所生体電気インピーダンス測定を示す。
【図9】図9は、本発明の測定デバイスの診断センサユニットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
図1は、本発明の測定デバイスの第一の実施形態を示す。この測定デバイスは、キーボード3に接続されたコンピュータ2から成る。キーボード3のユーザーインタフェースには各種医療測定モダリティが組込まれている。デバイスのユーザーが指先でこれに触れると測定が実行される。例えば、様々な波長で光を放出することが可能な発光ダイオードの形態の光源4、4’がキーボードに組込まれている。この目的においては、例えば、様々な発光半導体素子を共通のケースに収容する。また、光導波路を用いて様々な光源からの光をキーボード3のユーザーインタフェースに誘導することも考えられる。更に、キーボード3は、一個又は数個の光センサ5を有する。これらの光センサはそれぞれ、光源4及び4’のすぐ近くに配置されている。センサ5は、ユーザーの指先における組織内で散乱した光源4及び/又は4’からの光を受け取る。更に、熱センサ6が光源4及び/又は4’のすぐ隣に設けられている。これによって確実に、光学測定と同じ場所で熱測定に基づく血液供給量の測定が行える。更に、局所生体電気インピーダンスを測定するために、合計四個の電極7及び/又は7’がキーボード3のユーザーインタフェースに設けられている。デバイスのユーザーは、一方の手で二個の電極7及び/又は7’の各々に同時に触れる。二接触面の一方は、測定場所で電流を印加する役割を果たし、他方の接触面は電圧測定に用いられる。このように、測定結果が測定電極の接触抵抗によって影響を受けないことは確実である。また、参照番号7で示される二個の電極は、測定デバイスのECG(これもキーボード3に組込まれる)のECG電極としても用いられる。二点誘導(腕−腕測定)が得られるように指先を二個の電極各々に触れる。キーボード3に組込まれたセンサによって得た測定信号はコンピュータ2で処理される。このようにして得た生理学的パラメータはその後、コンピュータ2に接続されたモニタ9の表示画面8に表示される。例えば、表示画面には、動脈酸素飽和度(SaO2)、毛細血管酸素飽和度(StO2)及び静脈酸素飽和度(SvO2)が示される。更に、求められた心拍数(heat frequency)(HR)及び組織の脂肪量(BF)が表示される。最終的には血糖値(BG)も示される。ユーザーは対象となる生理学的パラメータをいつでも求めることができる。この目的の場合、ユーザーは、キーボード3のキーを動かす指を単に電極7、7’に置くだけである。これらのパラメータは、コンピュータ2で測定信号を処理した後、モニタ9によってすぐに表示される。デバイス1のユーザーは実際には、生理学的パラメータを求めるのにコンピュータ2での作業を中断する必要はない。
【0054】
図1に示す実施形態においては、二個の放射光源4及び4’は、検査対象の体組織の異なる体積範囲に照射するために設けられている。この趣旨に対し、二個の放射光源4及び4’は異なる空間放射特性(即ち、異なる放射角)を有する。放射光源4は発光ダイオードであり、放射光源4’はレーザ(例えば、所謂VCSELレーザ(垂直キャビティ面発光レーザ))である。発光ダイオード4及びレーザ4’の両方は、非常に類似した波長(例えば、630nmと650nm)の光を放出するが、開口角が異なる(例えば、25°と55°)。図1に示す配置においては、上述のように、代謝誘導による血中酸素量の変化の示差測定を行うことが可能である。この趣旨に対し、放射光源4及び4’から放出される放射光の波長は各々、光がオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンによって異なる強度で吸収される範囲内にある必要がある。血中酸素量(酸素飽和度)の絶対測定を可能にするためには、更なる放射光源(図1には示さず)が必要であり、その光波長は、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンによる光吸収が主として同じスペクトル領域(所謂、等吸収点(isobectic point))内にある必要がある。発光ダイオード及び/又はレーザから放出された光は、適切な光ファイバによってキーボードのユーザーインタフェースの対応する部分へ伝えることができる。この場合の対応するファイバ末端を図1に参照番号4及び4’で示す。発光ダイオードとレーザが所望の異なる開口角で検査対象の体組織に放射するように、これらを適切なファイバに接続することは実現可能である。従って、両方の放射光源を用いて体積の異なる体組織を検査する。開口角が大きいため、発光ダイオードによって検査される体組織の血液が供給されない表皮部分は、レーザを用いた場合に比べて大きくなる。体組織内で散乱し、一部吸収される放射光源4及び放射光源4’からの光はセンサ5によって検出される。センサ5はキーボード3のユーザーインタフェースに直接配置する必要はない。その代わりに、光伝導ファイバによって光をキーボード3の内部に配置されたセンサに供給することができる。放射光源4の光を放射光源4’の光と区別するため、光源4及び4’の両方を異なる時間モジュールで操作し、センサ5で検出した信号をそれに応じて復調することができる。或いは、放射光源4及び4’両方からの放射光を波長の違いに基づいて区別することも可能である。放射光源4及び4’から放出される放射光の放射強度は体組織を通過する経路長に応じて減衰するが、強度減衰と吸収物質(酸化ヘモグロビン)濃度の相関については周知のランベルト・ベールの法則によって与えられる。図1に示すセンサ5によって、放射光源4及び4’の各々で捕捉される検査対象の体組織の体積範囲とは別に、強度減衰の対象となるパラメータを求めることができる。このように示差測定を行うために、異なる放射光源4及び4’に割り当てられる強度減衰のパラメータを本発明の測定デバイスの評価ユニットによって互いに関連付けることができる。最も簡単な場合、放射光源4及び4’両方からの放射光の強度減衰のパラメータから商を算出する。これらの商の変化から、代謝の変化に関する結論を得ることができる。例えば、食物摂取後に血糖値が上昇した場合、(多少の時間的遅延後に)体組織の細胞内に多くのグルコースが入り、そこで転換する。このプロセスにおいては酸素が消費される。この酸素は血液を経由して細胞が受け取る。従って、酸素の散逸によって酸化ヘモグロビンは脱酸化ヘモグロビンになる。これに応じて、酸化ヘモグロビンに対する脱酸化ヘモグロビンの比は上昇する。放射光源4及び4’からの放射の開口角が異なるため、ヘモグロビン濃度の変化は、対応する強度減衰へ異なる影響を及ぼす。このようにして、ヘモグロビン濃度の変化は強度減衰のパラメータの商から検出することができる。これによって、酸素消費量に関する間接的な結論を得ることが可能である。酸素消費量は血糖値に依存するため、上述の放射光吸収の示差測定によって血糖値を求めることも可能である。このプロセスを補うため、光学測定と並行してバイオインピーダンス解析を行うが、図1に示す電極7及び7’はこの目的のために設けられている。バイオインピーダンス測定の目的は、とりわけ、局所血液供給量を求めることである。局所血液供給量は、酸素消費量及び血糖値を求める上で他のパラメータとして機能し得る。また、適切な光学素子(例えば、ビーム分割器やレンズ等)を用いることによってのみ、一個の放射光源4で様々な放射開口角を得ることもできる。
【0055】
図2では、本発明の測定デバイスの構成をブロック図で概略的に示す。デバイス1は、体組織の血管系の酸素濃度を所定の測定部分で光学測定するための光学測定ユニット100を有する。光学測定ユニット100で記録された酸素測定信号及びプレチスモグラフ信号は、アナライザユニット110に伝えられる。デバイス1の他の必須構成要素は、局所熱産生量を求めるための熱測定ユニット120である。熱測定ユニット120は、検査対象の体部分を隔絶する特別な熱センサである。この部分では、血流によってしか熱を取得又は排出することができない。従って、温度の時間分解測定によって血液供給量と熱産生量を求めることが可能である。血液供給量が多い場合には、検査対象の体部分は非常に短時間で最高温度に達する。血液供給量が少ない場合には、より長い時間がかかる。更に、測定場所の温度は動脈温度と局所熱産生量のみによって定まるため、測定温度の推定によって動脈温度に関する結論を得ることができる。熱測定ユニット120によって記録された測定信号もアナライザユニット110に伝えられて更に処理される。また、デバイスは、生体電気インピーダンス測定によって局所組織パラメータを記録する役割を果たすインピーダンス測定ユニット130を有する。インピーダンス測定ユニット130の測定信号もアナライザユニット110によって処理される。最後に、本発明においては、ECG信号を記録するためのECGユニット132も設けられている。ECGユニット132もアナライザユニット110に接続されており、ECG信号が処理される。図1に示すキーボード3の光源4及び光センサ5は、光学測定ユニット100に割り当てられている。熱測定ユニット120は熱センサ6に接続されている。インピーダンス測定ユニット130では、キーボード3の電極7及び/又は7’を介して測定信号が記録される。アナライザユニット110では測定信号全ての前処理を行う。この趣旨に対し、ネット周波数50Hz及び60Hzそれぞれの領域内での干渉をフィルタにかけるために、信号はバンドパスフィルタを通過させる。更に、信号に対してノイズ抑圧を行う。光学測定ユニット100、熱測定ユニット120、インピーダンス測定ユニット130及びECGユニット132からの処理信号は、アナライザユニット110を通過した後、評価ユニット140に入る。評価ユニット140は、測定信号から必須の診断パラメータを算出する役割を果たす。評価ユニット140の機能は、コンピュータ2で動作するソフトウェアによって主に実現する。時間に依存して記録されたインピーダンス測定ユニット130の測定信号からは、検査対象の体組織の組成(水分量や脂肪量等)が最初に算出される。光学測定ユニット100の信号からは、動脈酸素飽和度及び毛細血管酸素飽和度(即ち、インピーダンス測定に基づいて求まる組織パラメータ)が算出される。更に、熱測定ユニット120の測定信号と時間依存性インピーダンス測定から得られるプレチスモグラフデータからは、血液供給量と動脈温度が求まる。脈波速度はECGユニット132の信号と光学測定ユニット100の信号から求まる。最終的に、静脈酸素飽和度や更なる代謝パラメータ、特に、測定部分における局所酸素消費量やグルコース濃度については、既に為された計算全ての結果に基づき、評価ユニット140によって算出される。計算結果は診断ユニット150によって解釈される。コンピュータ2のソフトウェアとしても実行可能な診断ユニット150は、評価ユニット140によって算出された局所代謝パラメータを評価する役割を果たす。測定結果を表示するため、評価ユニット140と診断ユニット150は、モニタ9を作動させるグラフィックユニット160に接続されている。得られたデータはメモリユニット170に記憶させることができる(即ち、対応する測定の日時の同時記憶による)。更に、算出した生理学的パラメータを伝送するためのデータネットワークにコンピュータ2を接続する役割を果たすインタフェースユニット180が設けられている。インタフェース180によって、処理を行う医師の図示しないPCに全てのデータ及びパラメータ(特に、メモリユニット170に記憶されたデータ及びパラメータ)を伝送することができる。そこでは、データをより詳細に解析することができる。特に、既存疾患の進行に関する結論を得るために、デバイス1で長期間に亘って記録されたデータやパラメータの変化についてチェックすることができる。
【0056】
図3は、本発明のデバイス1の光学測定ユニット100の構成を示す。光学測定ユニット100はマイクロコントローラ190を有する。マイクロコントローラ190の一部を成すのはタイミング発生器200である。これによって、変調ユニット210に伝えられる制御信号が発生する。発光ダイオード4から放出された光の時間変調がこれによって制御される。発光ダイオード4は制御ユニット220を介して変調ユニット210に接続されている。発光ダイオード4から放出される光の強度は、性能速度制御ユニット230によって更に調節可能である。発光ダイオード4は少なくとも三種類の波長で光を放出することができる。この目的においては、様々な発光半導体素子を発光ダイオード4の単一のケースに一体化させる。タイミング発生器200によって、発光の時系列が様々な光波長で制御される。デバイス1の測定ヘッド3に組込まれた光センサ5は発光ダイオード4と共に、図3に概略的に示したユーザーの体組織240に接触している。体組織240においては、発光ダイオード4からの光は組織240を流れる血液の酸素濃度に応じて散乱し、吸収される。散乱光は光センサ5によって記録される。各光センサ5の光電流はコンバータ250によって電圧に変換され、増幅器260によって増幅され、デジタル/アナログトランス270によってデジタル測定信号に変換される。デジタル信号はその後、マイクロコントローラ190の一部を成す復調器280に伝えられる。復調器280では、得られた測定信号を対応する光波長で分離する。最終的に、信号はアナライザユニット110に伝えられる。
【0057】
図4は、本発明の測定デバイスの熱測定ユニット120の構成の概略を示す。体組織240に接触している熱センサ6は、より正確には、図示しない数個の温度測定素子及び熱伝導素子を有する。センサ6が組織240に接触するとすぐに熱交換が始まる。温度測定素子によって、センサ6の熱伝導素子上の様々な部分で温度が測定される。これについては、組織240内で局所的に産生した熱を求めることが可能である(場所、時間及び深さについて分解)。温度測定素子によって記録された信号はインピーダンストランス290及び増幅器292を通過し、アナログ/デジタルトランス300によってデジタル化される。デジタル測定信号はその後、アナライザユニット110に伝えられて更に処理される。好適な熱センサ6については、例えば、Ok Kyung Cho et al.による印刷刊行物(Ok Kyung Cho, Yoon Ok Kim, Hiroshi Mitsumaki, Katsuhiko Kuwa, "Noninvasive Measurement of Glucose by Metabolic Heat Conformation Method"(「代謝熱形態法によるグルコースの非侵襲的測定」), Clinical Chemistry 50, 2004, No.10, 1894〜1898頁)に記載されている。
【0058】
図5は、本発明の測定デバイスのインピーダンス測定ユニット130の構成の概略を示す。インピーダンス測定ユニット130は電極7及び7’を有する。接触表面7を介して、電源310で発生した交流電流が検査対象の体組織240に印加される。電源310はサイナスジェネレータ320によって始動する。交流電流の周波数は20kHz〜100kHzで変化する。接触表面7を介して、体組織240における測定信号として電圧が得られる。印加電流に対する測定電圧の比から、体組織240のインピーダンスに関する結論を得ることができる。この目的においては、干渉信号を排除するため、電圧を増幅器330によって増幅し、フィルタ340によってフィルタをかける。アナログ/デジタルトランス350によって再度デジタル化を行う。デジタル化された測定値はアナライザユニット110に伝えられて更に処理される。
【0059】
図6は、本発明の測定デバイスのECGユニット132の構成の概略を示す。ECGユニット132ではECG電極7を介してECG信号を捕捉する。ECG電極7はインピーダンス測定ユニット130の電極である。電極7は、ここに記載の実施形態の対の機能を果たす。ECG信号の使用可能な二点誘導は、上述のように片手で電極7の両方を触れることによって生じる。キーボード7には二個の電極3が組込まれている。別々の電極、例えば、ケーブルを介して接続された電極は(ECG信号の単純な二点誘導には)必要ない。得られたECG信号は増幅器360及びフィルタ370によって処理される。信号は他のアナログ/デジタルトランス380を通過した後、アナライザユニット110に伝えられる。
【0060】
図7は、本発明の測定デバイスの第二の実施形態を示す。本発明の測定デバイスはモバイルデバイス10(即ち、携帯電話)から成る。デバイス10の手前側には通常の操作キー11が見える。デバイス10のケースの側面領域には様々な診断測定センサが組込まれている。デバイスのユーザーが指先でこれらに触れると測定を実行する。例えば、様々な波長で光を放出することが可能な発光ダイオードの形態の光源4、4’がケースに組込まれている。更に、デバイス10は一個又は数個の光センサ5を有する。これらの光センサはそれぞれ、光源4及び4’のすぐ近くに配置されている。センサ5は、ユーザーの指先における組織内で散乱した光源4及び/又は4’からの光を受け取る。更に、熱センサ6が光源4及び/又は4’のすぐ隣に設けられている。これによって確実に、光学測定と同じ場所で熱測定に基づく血液供給量の測定が行える。更に、局所生体電気インピーダンスを測定するために、合計四個の電極7及び/又は7’が携帯電話10のケース側面に設けられている。携帯電話10のユーザーは、一方の手で二個の電極7及び/又は7’の各々に同時に触れる。二接触面の一方は、測定場所で電流を印加する役割を果たし、他方の接触面は電圧測定に用いられる。このように、測定結果が測定電極の接触抵抗によって影響を受けないことは確実である。また、参照番号7で示される二個の電極は、測定デバイスのECG(これも携帯電話10に組込まれる)のECG電極としても用いられる。二点誘導(腕−腕測定)が得られるように指先を二個の電極各々に触れる。携帯電話10に組込まれた様々なセンサによって記録された測定信号は、携帯電話10の(図示しない)マイクロプロセッサによって処理される。このようにして得た生理学的パラメータはその後、携帯電話10のディスプレイ12に表示される。例えば、ディスプレイには、動脈酸素飽和度、毛細血管酸素飽和度、及び静脈酸素飽和度が示される。更に、求められた心拍数及び組織の脂肪量が表示される。最終的には血糖値も示される。ユーザーは対象となる生理学的パラメータをいつでも求めることができる。この趣旨に対し、ユーザーは、キー11を動かす指を単に電極7、7’に置くだけである。これらのパラメータは、携帯電話10のマイクロプロセッサによって測定信号を処理した後、ディスプレイ12によってすぐに表示される。本発明で医療測定デバイスとして構成されている携帯電話10の機能は主に、グルコースの作用及び/又はグルコースによって開始される体内での生理学的反応のエネルギー転換を検査する、上述のように血糖値を非侵襲的に求めるための間接的プロセスに基づく。図1に示す実施形態の説明については関連する記載を参照されたい。キーボード3の場合と同様に、光源4、4’及びセンサ5のどちらも携帯電話10のケース表面に直接配置する必要がない。その代わり、実際の光源及び/又はセンサをケース内部に配置したまま、ケース表面からの及び/又はケース表面への光の伝導は光伝導ファイバを介して行うことができる。数個の光源及び/又はセンサを特有の光伝導ファイバに接続することができる。
【0061】
図8に示すように、本発明の測定デバイスの生体電気インピーダンス測定ユニット130は、電源310から可変周波数の交流電流を供給して局所抵抗及び局所リアクタンスを求めるための二個の電極7と、体組織240のインピーダンス測定のための二以上の測定電極7’をデバイスのユーザーの指領域内に有する。四点測定のため、電極7、7’と体組織240との間の一時的な抵抗については測定を誤ることがない。電極7、7’間の距離はわずか数ミリメートル(最大で数センチメートル)とするのが適切である。このように複素インピーダンスの測定が可能であるため、電源310によって可変周波数の交流電流を発生させるのが有利である。測定信号は電圧計390によって捕捉する。測定信号は、アナログ/デジタルトランス(図8には示さず)によってデジタル化した後、離散フーリエ変換(DFT)に付すのが適切である。次いで、DFTアルゴリズムによってインピーダンスの実部と虚部が得られる。電極間距離が小さいため、ここに示すインピーダンス測定ユニット130は非常にコンパクトな構成にすることができ、モバイル電子デバイス(例えば、腕時計や携帯電話、MP3プレーヤ、デジタルカメラ等)にうまく組込むことができる。
【0062】
図9は、本発明の測定デバイスの診断センサユニットの設計及び構成を示す。外寸法の非常に小さいセンサケース400にセンサユニットの各種測定ユニットが組込まれている。ケース400の上側には薄い導電箔から成る平坦なECG電極7が配置されている。センサユニットをコンピュータキーボードやモバイル機器に設置するに当り、センサケース400の配置は、ユーザーがECG電極7と他の電極(図9には示さず)に手で触れてECGを誘導できるように行う。ECG電極は薄いステンレス鋼箔であるのが賢明である。寸法が5mm(W)×8mm(L)×1.8mm(H)のマイクロケースの小型構造モジュール(図示の実施形態)の場合、市場で入手可能な各種機器の様々なケースにセンサユニットをフレキシブルに低コストで設置することができる。動脈血中酸素飽和度の同時測定を可能にするためには、光学測定ユニット(即ち、パルスオキシメータ)をセンサケース400に組込む。パルスオキシメータは、ECG電極7の開口部410を通過することのできる放射光を放出する二個又は数個の光放射光源を有する。更に、パルスオキシメータは、例えば、フォトダイオード形状の二個の光放射光センサを有する。体組織(例えば、電極7に置かれた指)内で散乱した光は、電極7の二個の開口部420及び430を通過して放射光センサ上に落下する。開口部420及び430は開口部410に対して異なる距離に配置されている。センサユニットにおいては、開口部410のみが放射光源全てに対応し、センサユニットの放射光源全てからの光が検査対象の体組織内の同じ部分を伝導するように、ケース400内の二個又は数個の光放射光源(例えば、発光ダイオード)からの光を光伝導ファイバ又は好適な光伝導体に結合する。各フォトダイオードは別々に一個の光ファイバ又は好適に構成された光伝導体に結合される。光学測定ユニットによって、検査対象の体組織を流れる血液の酸素飽和度と容積脈を同時に測定することができる。この目的のためには、発光ダイオードだけでなく、他の放射光源(例えば、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL))も用いるのが賢明である。センサケースに温度センサ(即ち、サーミスタ)を組込んで、検査対象組織の熱的特性を同時に求めることができる。そのためにECG電極7には他の開口部440が設けられている。センサケース400内のサーミスタは、検査対象の体組織と良好な熱的接触をするように配置されている。図示の実施形態においては、サーミスタは、光放射光源の光伝導ファイバ用開口部410と第一のフォトダイオードの光伝導ファイバ用開口部420との間に設置されている。センサユニットには、インピーダンス測定ユニットを容易に追加することができる。この趣旨に対し、少なくとも一個の更なる平坦電極(図9には示さず)をセンサケース400の上側に構成し、インピーダンス測定ユニットのフィーダ電極又は測定電極として機能させる必要がある。同じ測定電極を用いてバイオインピーダンス信号とECG信号を捕捉することができるのが賢明である。センサユニットを例えば、携帯電話の電子機器と電気的に接触させるためには、測定ユニット全てが組込まれたセンサケース400を好適な伝導経路を有するリボンケーブル450に直接取付けて、センサユニットがリボンケーブル450によって容易に電気的に設置できるようにする。リボンケーブル450には補強材460を好適な部分に設けて安定性を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定信号を発生させるための診断センサユニットと測定信号を処理するための評価ユニット(140)を有する、少なくとも一個の生理学的パラメータを非侵襲的に求めるための測定デバイスであって、診断センサユニットはコンピュータ(2)のキーボード(3)又は娯楽や通信技術のモバイルデバイス(10)に組込まれているか、又はそれらに接続可能であり、診断センサユニットは、
検査対象の体組織(240)に照射するための少なくとも一種の放射光源(4)と、体組織(240)から散乱及び/又は伝播した放射光を検出するための少なくとも一種の放射光センサ(5)とを有する光学測定ユニット(100)、及び/又は、
二以上のECG電極(7)を介してECG信号を捕捉するためのECGユニット(132)、及び/又は、
温度センサ又は熱センサ(6)、及び/又は、
生体電気インピーダンス測定ユニット(130)を有することを特徴とする測定デバイス。
【請求項2】
光学測定ユニット(100)は、検査対象の体組織(240)に照射するための少なくとも一種の放射光源(4)と、体組織(240)から散乱及び/又は伝播した放射光を検出するための少なくとも一種の放射光センサ(5)を有することを特徴とする、請求項1に記載の測定デバイス。
【請求項3】
光学測定ユニット(100)は、検査対象の体組織(240)に照射するための少なくとも一種の放射光源(4)と、体組織(240)から散乱及び/又は伝播した放射光を検出するための少なくとも二種の放射光センサ(5)を有し、これらの放射光センサ(5)は放射光源に対して異なる距離に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の測定デバイス。
【請求項4】
検査対象の体組織(240)の異なる体積範囲に照射するための少なくとも二種の放射光源(4、4’)が設けられていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の測定デバイス。
【請求項5】
少なくとも二種の放射光源(4、4’)は異なる空間放射特性を有することを特徴とする、請求項4に記載の測定デバイス。
【請求項6】
評価ユニット(140)は、体組織(240)から散乱及び/又は伝播した二種の放射光源(4、4’)からの放射光の強度に基づいて局所酸素消費量及び/又は血糖値を求めるために設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の測定デバイス。
【請求項7】
生体電気インピーダンス測定ユニット(130)は、交流電流を供給するための一対のフィーダ電極と、インピーダンス測定のための一対の測定電極を有し、一対のフィーダ電極と一対の測定電極との間の距離は10cm未満であり、好ましくは1cm未満であることを特徴とする、請求項6に記載の測定デバイス。
【請求項8】
評価ユニット(140)は、診断センサユニットの測定信号から局所グルコース濃度を求めるために設けられていることを特徴とする、先の請求項1〜7のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項9】
評価ユニット(140)は、更に、局所グルコース濃度から血糖値を求めるために設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の測定デバイス。
【請求項10】
コンピュータ(2)が評価ユニット(140)を構成し、評価ユニット(140)の機能は前記コンピュータ(2)で動作するソフトウェアによって実現することを特徴とする、先の請求項1〜9のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項11】
娯楽や通信技術のデバイス(10)に組込まれたマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラが評価ユニット(140)を構成し、評価ユニット(140)の機能は前記マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラで動作するソフトウェアによって実現することを特徴とする、先の請求項1〜10のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項12】
評価ユニット(140)によって求められた生理学的パラメータを評価するための診断ユニット(150)を有し、診断ユニット(150)の機能はソフトウェアによって実現することを特徴とする、先の請求項1〜11のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項13】
求められた生理学的パラメータを表示するために前記コンピュータ(2)に接続された表示ユニット(9)によって特徴付けられる、先の請求項1〜12のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項14】
コンピュータ(2)は、データネット又は通信ネットを介して測定信号又は少なくとも一個の生理学的パラメータを伝送するために設けられていることを特徴とする、先の請求項1〜13のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項15】
娯楽や通信技術のデバイス(10)は、データネット又は通信ネットを介して測定信号又は少なくとも一個の生理学的パラメータを伝送するために設けられていることを特徴とする、先の請求項1〜14のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項16】
前記コンピュータ(2)はモバイルデバイスであり、より詳細にはノートブック、ラップトップ、パームトップ又はハンドヘルドであることを特徴とする、先の請求項1〜15のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項17】
測定デバイスの環境における周囲温度を求めるための温度センサによって特徴付けられる、先の請求項1〜16のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項18】
体内深部温度を求めるための他の温度センサによって特徴付けられる、先の請求項1〜17のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項19】
評価ユニット(140)は、診断測定ユニットの測定信号から呼吸数を求めるために設けられていることを特徴とする、先の請求項1〜18のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項20】
診断センサユニットは、娯楽や通信技術のモバイルデバイス(10)から離れているが、コードレス又はコード結合信号線によってモバイルデバイス(10)と接続されたユニットを構成することを特徴とする、先の請求項1〜19のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項21】
少なくとも一種の診断センサユニットは、血液や尿、便、呼気、汗、唾液、毛髪、ホルモンサンプル等のサンプルを解析するためのユニットを有することを特徴とする、先の請求項1〜20のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項22】
光学測定ユニット(100)と温度センサ又は熱センサ(6)は共通のセンサケース(400)に配置されており、センサケース(400)の上側には平坦なECG電極(7)が構成されており、ECG電極(7)は、少なくとも一種の放射光源(4)から放出される放射光の通過を可能とする少なくとも一個の開口部(410)を有することを特徴とする、先の請求項1〜21のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項23】
平坦なECG電極(7)は、温度センサ又は熱センサ(6)に対する更なる開口部(440)を有することを特徴とする、請求項22に記載の測定デバイス。
【請求項24】
放射光源(4)、放射光センサ(5)及び温度センサ又は熱センサ(6)は、センサケース(400)内の共通のプリント回路基板に配置されていることを特徴とする、請求項22又は23に記載の測定デバイス。
【請求項25】
センサケース(400)の寸法は1cm×1cm×1cm未満であることを特徴とする、先の請求項22〜24のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項26】
前記センサケース(400)の上側に少なくとも一種の更なる平坦電極が構成されており、前記電極はインピーダンス測定ユニット(130)のフィーダ電極又は測定電極として機能することを特徴とする、先の請求項23〜26のいずれかに記載の測定デバイス。
【請求項27】
収縮期及び/又は拡張期の血圧を測定するための血圧測定ユニットによって特徴付けられる、先の請求項1〜26のいずれかに記載の測定デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−510010(P2010−510010A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537555(P2009−537555)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010207
【国際公開番号】WO2008/061788
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(507314475)
【Fターム(参考)】