説明

医療画像処理装置および医療画像処理プログラム

【課題】視線の移動を少なくしてドラッグによる操作種別を切り替えることができる医療画像処理装置および医療画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】ユーザが描画ウィンドウ11上でクリックを行うと、カーソル12の近傍に画像に対する操作の種類を表現するアイコン群(アイコン13〜16)が現れる。そして、ユーザがアイコン13〜16を起点としてドラッグ操作を行うことにより、そのアイコン13〜16に対応した種別の画像の操作が行われる。アイコン群(アイコン13〜16)が出現する位置は、カーソル12との相対的な座標によって決定される。これにより、アイコン13〜16の位置をユーザが体感的に記憶することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を作成し描画ウィンドウに表示させる際の操作性を向上させる医療画像処理装置および医療画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータを用いた画像処理技術の進展に伴い、3次元物体の内部を可視化する技術が注目されている。特に、医療分野では、生体内部を可視化することにより病巣を早期に発見することができるCT(Computed Tomography)装置もしくはMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置による医療診断が広く行われている。
【0003】
また、物体内部の3次元画像を得る方法として、ボリュームレンダリングという方法が知られている。このボリュームレンダリングでは、3次元のボクセル(微小体積要素)空間に対して光(レイ)を照射することにより投影面に画像が投影される。この操作をレイキャスティングと称する。このレイキャスティングでは、レイの経路に沿って一定間隔でサンプリングし、各サンプリング点のボクセルからボクセル値を取得する。
【0004】
ボクセルは、物体の3次元領域の構成単位であり、ボクセル値は、ボクセルの濃度値等の特性を表わす固有のデータである。物体全体はボクセル値の3次元配列であるボクセルデータで表現される。通常、CTにより得られる2次元の断層画像データを断層面に垂直な方向に沿って積層し、必要な補間を行うことにより3次元配列のボクセルデータが得られる。
【0005】
レイキャスティングでは、仮想視点から物体に対して照射された仮想光線に対する仮想反射光は、ボクセル値に対して人為的に設定される不透明度に応じて生ずるものとされる。そして、仮想的な表面を捕捉するためにボクセルデータのグラディエントすなわち法線ベクトルを求め、仮想光線と法線ベクトルのなす角の余弦から陰影付けのシェーディング係数を計算する。仮想反射光は、ボクセルに照射される仮想光線の強度にボクセルの不透明度とシェーディング係数を乗じて算出される。
【0006】
図11は、描画ウィンドウとアイコンを説明するための図である。この場合、描画ウィンドウ11には、ボリュームデータから作成された心臓の3次元画像が表示されている。また、描画ウィンドウ11の周辺には、画像回転アイコン13、画像平行移動アイコン14、画像拡大縮小アイコン15およびWW(ウィンドウ幅)/WL(ウィンドウレベル)変換アイコン16を含むアイコン群が表示されている。
【0007】
ユーザは、画像回転アイコン13、画像平行移動アイコン14、画像拡大縮小アイコン15またはWW/WL変換アイコン16をクリックすることによって操作種別を変更し、画像上でカーソル12を位置aから位置fへドラッグすることにより、クリックしたアイコン13〜16に対応する操作をその画像に対して行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、描画ウィンドウ11の周辺に操作種別に対応したアイコン13〜16が表示されているが、ユーザが操作種別を変更する都度、カーソルを移動させるために描画ウィンドウ11内の画像を見ていた視線を描画ウィンドウ11外のアイコン13〜16へ頻繁に動かす必要がある。例えば、医師が医療画像を見ながら病変部を探す場合、画像の回転、移動、拡大および縮小などを頻繁に行い、視線を画像とアイコンの間で頻繁に動かすので、医療画像の病変部(陰影や色がわずかに異なる)を見失ってしまう恐れもある。
【0009】
また、これはユーザの疲労を大きくし、結果として見落としの発生など、診断の質の低下を招く場合があった。また、操作種別を変更する場合に、キーボードのシフトキーなどを用いて操作種別の変更を行うようなUI(ユーザインターフェース)は、多数の画像種が存在し、画像種毎に操作可能な操作種別がそれぞれ異なる医療画像処理装置においては、不適切である。
【0010】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、視線の移動を少なくして操作種別を切り替えることができる医療画像処理装置および医療画像処理プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、パラメータに応じた画像を作成し描画ウィンドウに表示させる医療画像処理装置であって、前記描画ウィンドウ領域内にカーソルが存在するかどうか検出するカーソル制御手段と、前記描画ウィンドウ領域内に前記カーソルが存在する場合に、指定の操作が行われたことに応答して、前記カーソルの位置の近傍に、前記描画ウィンドウに表示される画像の1次元以上の連続なパラメータを表現するアイコンを少なくとも二つ含むアイコン群を表示させるアイコン制御手段と、前記アイコンを起点としてドラッグ操作が行われた場合に、前記アイコンの表現する前記1次元以上の連続なパラメータを前記ドラッグ操作に対応して変化させるパラメータ制御手段と、を備える医療画像処理装置である。
【0012】
上記構成によれば、描画ウィンドウ領域内にカーソルが存在する場合に、ユーザが指定の操作を行うことに応答してカーソルの近傍にアイコン群が出現し、カーソルの近傍に表示されたアイコンを起点としてドラッグ操作を行うことにより、パラメータを変更し所望の操作を実行できるので、ユーザは、画像上で関心がある位置(カーソルが存在する位置)から視線をそらすことなく、所望の操作を迅速に行うことができる。すなわち、画像回転などの操作を1回のポインティングデバイスのボタンの押下に続くドラッグ操作で行うことができるので、ユーザの操作負担を軽減することができる。
【0013】
また、本発明の医療画像処理装置は、前記アイコンを表示し、前記アイコンに対するドラッグ操作を受け付けるタッチパネルを備える。
【0014】
上記構成によれば、可動部分がなく消毒殺菌等が容易なタッチパネルを手術現場で好適に使用することができる。
【0015】
また、本発明の医療画像処理装置において、前記カーソル制御手段は、前記アイコンに対するドラッグ操作完了後に、前記カーソルの位置を、ドラッグ操作開始時における前記描画ウィンドウの座標上の位置に復帰させる。
【0016】
上記構成によれば、ドラッグ操作完了後に、カーソルの位置をドラッグ操作開始時における描画ウィンドウの座標上の位置に復帰させるので、次の操作に直ちに取りかかることができる。これは、特に、ドラッグ操作によりカーソルが描画ウィンドウの外に移動した場合に便利である。
【0017】
また、本発明の医療画像処理装置において、前記カーソル制御手段は、前記アイコンに対するドラッグ操作完了後に、前記カーソルの位置を、ドラッグ操作開始時の画像上の点に対応する位置に移動させる。
【0018】
上記構成によれば、例えば画像の平行移動または拡大縮小操作の時に、カーソル位置を操作後の画像上の点に追従させ、画像操作後にカーソルを探すための視線の移動をなくすことができる。また、次の操作のためにカーソルを移動させる距離が短くなり、次の操作を迅速に行うことができる。
【0019】
また、本発明の医療画像処理装置において、前記パラメータ制御手段は、前記アイコンに対し、前記ドラッグ操作の2自由度に対応してそれぞれ異なるパラメータの操作を割り当てる。
【0020】
上記構成によれば、一つのアイコンを2つの操作種別に対応させるので、表示するアイコンの数を減らして多くの操作を割り当てることができる。また、1回のクリックまたは連続するドラッグ操作で2つの操作種別を実行できるので、操作を迅速に行うことができる。
【0021】
また、本発明の医療画像処理装置は、前記アイコンに対して操作が行われたときにあらかじめ定められた処理を起動する。
【0022】
上記構成によれば、1回の操作であらかじめ定められた処理を実行できるので、操作を迅速に行うことができる。
【0023】
また、本発明の医療画像処理装置において、前記アイコンの表現する前記1次元以上の連続なパラメータは、2次元以上の連続パラメータであり、前記パラメータ制御手段は、前記アイコンを起点としてドラッグ操作が行われた場合、前記ドラッグ操作開始時にカーソルの動いた方向により前記2次元以上の連続パラメータから前記1次元以上の連続なパラメータを更に決定する。
【0024】
上記構成によれば、直感的な操作により操作種別を決定できるので操作が容易になる。
【0025】
また、本発明の医療画像処理装置において、前記パラメータ制御手段は、前記アイコンに対して操作が行われたときに、前記アイコンの表現する前記1次元以上の連続なパラメータを選択し、前記描画ウィンドウを起点としてドラッグ操作が行われたときに、前記選択された1次元以上の連続なパラメータを前記ドラッグ操作に対応して変化させる。
【0026】
上記構成によれば、アイコンに対する操作により、操作種別が切り替わった後は、描画ウィンドウ内で自由に何度ドラッグ操作を行っても、その選択された操作種別に従った処理が行われるため、頻繁には操作種別を変更する必要がない場合等に利便性が高い。
【0027】
また、本発明の医療画像処理装置は、ボリュームデータから前記描画ウィンドウに表示する画像を生成する画像処理手段を備え、前記アイコン制御手段は、前記描画ウィンドウに表示される画像の種別に対応して、表示させるアイコン群を決定する。
【0028】
上記構成によれば、表示する画像種に応じて異なるアイコン群を表示させるので、画像種に応じた操作を迅速に行い、画像診断を円滑に行うことができる。
【0029】
また、本発明の医療画像処理装置において、前記カーソルの位置の近傍とは、前記カーソルの位置に対してあらかじめ相対的に定められた位置である。
【0030】
上記構成によれば、アイコン群をカーソルの位置に対してあらかじめ相対的に定められた位置に表示するので、ユーザはアイコンが表示される位置を体感的に記憶でき、操作を正確に高速に行うことができる。
【0031】
また、本発明は、画像を作成し描画ウィンドウに表示させる医療画像処理プログラムであって、コンピュータを、上記医療画像処理装置を構成する各手段として機能させるための医療画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる医療画像処理装置および医療画像処理プログラムによれば、アイコン群はカーソルの近傍に出現するので、カーソルの近傍に表示されたアイコンを起点として画像を操作するドラッグ操作を行う時に、画像から視線を逸らす必要がないのでより迅速に操作ができる。更に、ユーザはアイコンの表示される位置を体感的に記憶でき、操作を正確に高速に行うことができるようになる。更に、表示する画像種に応じて異なるアイコン群を表示させるので、ユーザは、画像種に応じた操作を迅速に行い、画像診断を円滑に行うことがきる。更に、ドラッグ開始時のカーソルの動いた方向により操作種別を決定するので、ユーザは、ドラッグ方向に注意を払うことなく画像の操作に専念することができ、画像診断を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1は、本発明の一実施形態にかかる医療画像処理装置およびコンピュータ断層撮影(CT)装置を概略的に示す。コンピュータ断層撮影装置は、被検体の組織等を可視化するものである。X線源101からは同図に鎖線で示す縁部ビームを有するピラミッド状のX線ビーム束102が放射される。X線ビーム束102は、例えば患者103である被検体を透過しX線検出器104に照射される。X線源101及びX線検出器104は、本実施形態の場合にはリング状のガントリー105に互いに対向配置されている。リング状のガントリー105は、このガントリーの中心点を通るシステム軸線106に対して、同図に示されていない保持装置に回転可能(矢印a参照)に支持されている。
【0034】
患者103は、本実施形態の場合には、X線が透過するテーブル107上に寝ている。このテーブルは、図示されていない支持装置によりシステム軸線106に沿って移動可能(矢印b参照)に支持されている。
【0035】
従って、X線源101及びX線検出器104は、システム軸線106に対して回転可能でありかつシステム軸線106に沿って患者103に対して相対的に移動可能である測定システムを構成するので、患者103はシステム軸線106に関して種々の投影角及び種々の位置のもとで投射されることができる。その際に発生するX線検出器104の出力信号は、画像処理手段111に供給される。
【0036】
シーケンス走査の場合には患者103の層毎の走査が行なわれる。その際に、X線源101及びX線検出器104はシステム軸線106を中心に患者103の周りを回転し、X線源101及びX線検出器104を含む測定システムは患者103の2次元断層を走査するために多数の投影を撮影する。その際に取得された測定値から、走査された断層を表示する断層像が再構成される。相連続する断層の走査の間に、患者103はその都度システム軸線106に沿って移動される。この過程は全ての関心断層が捕捉されるまで繰り返される。
【0037】
一方、スパイラル走査中は、X線源101及びX線検出器104を含む測定システムはシステム軸線106を中心に回転し、テーブル107は連続的に矢印bの方向に移動する。すなわち、X線源101及びX線検出器104を含む測定システムは、患者103に対して相対的に連続的にスパイラル軌道上を、患者103の関心領域が全部捕捉されるまで移動する。本実施形態の場合、同図に示されたコンピュータ断層撮影装置により、患者103の診断範囲における多数の相連続する断層信号が画像処理手段111に供給される。
【0038】
カーソル制御手段112は、画像に表示されているカーソルが存在する位置を制御するものであり、画像を表示する描画ウィンドウの領域(描画ウィンドウ領域)内にカーソルが存在するかどうかを検出する。アイコン制御手段114は、描画ウィンドウ領域内にカーソルが存在する場合に、ユーザがクリック操作により指定の操作を行ったことに応答して、カーソルの位置の近傍に、描画ウィンドウに表示される画像の1次元以上の連続なパラメータを表現するアイコンを少なくとも二つ含むアイコン群を表示する。ここで、カーソルの位置の近傍とは、カーソルの位置に対してあらかじめ定められた相対的な位置であり、ユーザが、カーソルが存在している位置に注目した状態で視認可能な、該カーソルの位置の周辺領域を意味する。
【0039】
パラメータ制御手段115は、ユーザが描画ウィンドウ領域内に表示されるアイコンを起点としてドラッグ操作を行う場合に、ドラッグ操作に対応して、当該アイコンに対応付けられた1次元以上の連続なパラメータを変化させる。ここで、ユーザが描画ウィンドウ内に表示されるアイコンを起点としてドラッグ操作を行う場合とは、アイコンの表示領域内に、ドラッグ操作の開始位置が存在する場合を意味する。また、ドラッグ操作に対応してパラメータを変化させるとは、ドラッグ操作の操作方向及び操作量、操作時間、加速度に応じてパラメータを変化させることを意味する。また、画像処理手段111は、断層信号からボリュームデータを生成し、表示手段116に表示する画像を作成する。
【0040】
また、操作手段113はGUI(Graphical User Interface)を含み、キーボードやポインティングデバイス(マウスやトラックボール)などからの操作信号に応じて、描画ウィンドウの設定を行って設定値の制御信号を生成し、カーソル制御手段112、アイコン制御手段114、パラメータ制御手段115に供給する。これにより、表示手段116に表示される画像を見ながら画像をインタラクティブに変更し、病巣領域の発見を支援することができる。
【0041】
図2は、本発明の実施形態にかかる医療画像処理方法を説明するためのフローチャートを示す。まず、画像処理手段111は、CT装置から供給されるボリュームデータに基づいて描画ウィンドウに表示する画像を生成する(ステップS11)。また、アイコン制御手段114は、描画ウィンドウに表示される画像の種別に対応して、表示するアイコン群を決定する(ステップS12)。
【0042】
次に、カーソル制御手段112は、描画ウィンドウ領域内にカーソルが存在するかどうか判断する(ステップS13)。そして、描画ウィンドウ領域内にカーソルが存在する場合(Yes)、ユーザが指定の操作(例えば画像上クリック操作)を行ったかどうかを判断する(ステップS14)。
【0043】
ユーザが指定の操作を行った場合(Yes)、アイコン制御手段114は、ユーザの操作に応答してカーソルの位置の近傍に、描画ウィンドウに表示される画像の1次元以上の連続なパラメータを表現する2以上のアイコンを含むアイコン群を表示する(ステップS15)。
【0044】
次に、パラメータ制御手段115は、アイコンを起点としたドラッグ操作が行われたかどうかを判断し(ステップS16)、ユーザがアイコンを起点としてドラッグ操作を行った場合(Yes)は、起点となったアイコンの種別に対応した1次元以上の連続なパラメータを変化させる(ステップS17)。
【0045】
次に、カーソル制御手段112は、ドラッグ操作が完了したかどうかを判断し(ステップS18)、起点となったアイコンに対するドラッグ操作完了を検出した場合(Yes)に、カーソルの位置をドラッグ操作開始時における描画ウィンドウの座標上の位置に復帰させる(ステップS19)。なお、この場合、起点となったアイコンに対するドラッグ操作完了後に、カーソルの位置をドラッグ操作開始時の画像上の点に対応する位置に移動させることもできる。
【0046】
図3は、本発明の実施形態にかかる医療画像処理装置における描画ウィンドウ11の例を示す。ユーザが描画ウィンドウ11上でクリックを行うと、図3aに示すように、カーソル12の近傍に画像に対する操作の種類を表現するアイコン群(アイコン13〜16)が現れる。図3bは、カーソル12位置にアイコン群(アイコン13〜16)を表示する例を示す。図3bに示すように、カーソル12の近傍とは、カーソル12位置からの距離が0である位置を含む。そして、ユーザがアイコン13〜16を起点としてドラッグ操作を行うことにより、そのアイコン13〜16に対応した種別の画像の操作が行われる。アイコン群(アイコン13〜16)が出現する位置は、カーソル12との相対的な座標によって決定される。これにより、アイコン13〜16の位置をユーザが体感的に記憶することが出来る。
【0047】
このように本発明の実施形態にかかる医療画像処理装置によれば、アイコン群(アイコン13〜16)はカーソル12の近傍に出現するので、カーソル12の近傍に表示されたアイコン13〜16を起点として画像を操作するドラッグ操作を行う時に、画像から視線を逸らす必要がないのでより迅速に操作ができる。更に、ユーザはアイコン13〜16の表示される位置を体感的に記憶でき、操作を正確に高速に行うことができるようになる。
【実施例1】
【0048】
図4は、本実施形態の医療画像処理装置において、ドラッグ操作後にカーソル位置を自動復帰させる様子を示す図である。まず、画像を回転する場合、描画ウィンドウ11に表示されている画像回転アイコン13上にカーソル12を合わせ、そこでポインティングデバイスのボタンを押下したままカーソル12を位置aから位置fへドラッグ操作を行うことにより、描画ウィンドウ11に表示されている画像を回転させることができる。
【0049】
このように本実施形態の医療画像処理装置によれば、画像上で関心がある位置(カーソルが存在する位置)の近傍にアイコン群(アイコン13〜16)が表示されているので、ユーザは、関心領域から視線を外すことなく、画像回転などの操作を行うことができる。また、画像回転を1回のポインティングデバイスによる操作であるドラッグ操作で行うことができるので、ユーザの操作負担を軽減することができる。
【0050】
一方、本実施形態の医療画像処理装置では、カーソル12を位置aから位置fへドラッグし画像回転操作を行った後に、カーソル12を位置aに自動的に復帰させる。これにより画像拡大縮小などの他の操作に直ちに取りかかることができる。また、画像操作後にカーソル12を探すための視線の移動をなくすことができる。また、特に、カーソル12がドラッグ操作により描画ウィンドウ11の外に移動した場合(位置f)に操作終了後にカーソルを手動で描画ウィンドウに復帰させる必要がないので便利である。なお、ドラッグ操作中にカーソル12を非表示にしても良い。このようにすることで、カーソル12がドラッグ操作により画面の端に到達移動した場合に操作が中断されることが無くなる。その為に、実装上はカーソルを全く移動させずにポインティングデバイスに対する移動操作のみを検知しても良い。また、アイコン群(アイコン13〜16)を非表示にしても良い。このようにすることで、ユーザは画像に集中することが出来る。
【実施例2】
【0051】
図5は、本実施形態の医療画像処理装置において、操作中の画像にカーソル12を追従させる様子を示す図である。図5(a)は、ユーザが画像の平行移動を行うために、カーソル12を画像平行移動アイコン14上に合わせた場合を示す。ユーザは、画像平行移動アイコン14上でポインティングデバイスのボタンを押下し、ボタンを押下したまま右にドラッグすることにより、画像を右に平行移動することができる。
【0052】
図5(b)は、カーソル12を位置aから位置cにドラッグし、画像を平行移動した状態を示す。本実施形態では、位置cでドラッグ操作を終了した場合に、カーソル12を位置cに残しておく。このように本実施形態によれば、特に画像の平行移動、拡大縮小操作の時に、カーソル位置を操作後の画像上の点に追従させるので、画像操作後にカーソル12を探すための視線の移動をなくすことができる。また、この時にアイコン群(アイコン13〜16)も操作後の画像に追従させることにより、次の操作のためにカーソル12を移動させる距離が短くなり、次の操作を迅速に行うことができる。
【実施例3】
【0053】
図6は、本実施形態の医療画像処理装置において、一つのアイコンを2つの操作種別に対応させる場合を示す図である。ドラッグ操作には上下左右の2自由度があるので、「上下のスライスの表示」と「時系列上の前後」のように複数の異なる概念の操作種別を一つのアイコンで行うようにしても良い。また、ドラッグではなく単にクリックしたことに対して、なんらかの処理、例えばメニューの表示などの処理を起動しても良い。
【0054】
図6は、アイコン群の一つにスライス/時系列アイコン21が表示されており、ユーザがカーソル12をスライス/時系列アイコン21に合わせている様子を示す。この場合、スライス/時系列アイコン21上でポインティングデバイスのボタンを押下し、上下にドラッグすることによりスライス位置が異なるスライス画像を表示することがきる。一方、スライス/時系列アイコン21上でポインティングデバイスのボタンを押下し、左右にドラッグすることにより時系列に従った画像を表示することができる。
【0055】
このように本実施形態の医療画像処理装置によれば、一つのアイコンを2つの操作種別に対応させるので、表示するアイコンの数を減らして多くの操作を割り当てることができる。また、1回のポインティングデバイスのボタンの押下または連続するドラッグ操作で2つの操作種別を実行できるので、操作を迅速に行うことができる。
【実施例4】
【0056】
図7は、本実施形態の医療画像処理装置において、表示する画像種に応じて異なるアイコン群を表示させる場合の説明図である。本実施形態では、カーソルが存在する描画ウィンドウの画像の画像種(ボリュームデータの可視化手段)に応じて表示されるアイコンが異なる。
【0057】
図7(a)は、描画ウィンドウ11に3次元画像を表示する場合のアイコン群を示す。この場合のアイコン群は、画像回転アイコン13、画像平行移動アイコン14、画像拡大縮小アイコン15およびWW(ウィンドウ幅)/WL(ウィンドウレベル)変換アイコン16で構成される。
【0058】
WW/WL値はMIP(Maximum Intensity Projection)画像のように濃淡で表現される画像において表示のコントラストと明るさを調整するためのパラメータである。例えば、濃淡値が4096階調で与えられているときに、その内の特に診断に有効な範囲を切り出して256階調に変換することをWW/WL変換と言い、この時の切り出し範囲の幅をWW(ウィンドウ幅)、切り出し範囲の中心値をWL(ウィンドウレベル)値と言う。
【0059】
図7(b)は、描画ウィンドウ11にスライス画像を表示する場合のアイコン群を示す。この場合のアイコン群は、画像平行移動アイコン14、画像拡大縮小アイコン15、WW/WL変換アイコン16、およびスライス変更アイコン26で構成される。本実施形態によれば、表示する画像種に応じて異なるアイコン群を表示させるので、画像種に応じた操作を迅速に行い、画像診断を円滑に行うことがきる。
【0060】
なお、画像種とアイコンは(表1)のように対応させることができる。
【0061】
【表1】

【実施例5】
【0062】
図8は、本実施形態の医療画像処理装置において、ドラッグ開始時のカーソルの動きにより操作種別を決定する場合の説明図を示す。本実施形態では、ドラッグ操作開始時にカーソルの動いた方向により操作種別を決定する。すなわち、本実施形態においては、アイコンが2次元以上の連続パラメータを表現するものであり、パラメータ制御手段が、アイコンを起点としてドラッグ操作が行われた場合、ドラッグ操作開始時にカーソルの動いた方向により前記2次元以上の連続パラメータから前記1次元以上の連続なパラメータを更に決定するものである。例えば、ドラッグ開始時にカーソルが左右に動いた場合は水平回転と決定し、ドラッグ開始時にカーソルが上下に動いた場合は垂直回転と決定し、ドラッグ開始時にカーソルがななめに動いた場合は自由回転と決定する。これによれば、直感的な操作により操作種別を決定できるので操作が容易になる。
【0063】
図8は、描画ウィンドウ11に画像回転アイコン13等が表示されている様子を示す。ユーザが、画像回転アイコン13にカーソル12を合わせてポインティングデバイスのボタンを押下し、右(位置a〜d)にドラッグすることにより、画像の水平回転を行うことができる。本実施形態によれば、ドラッグ開始時のカーソルの動いた方向により操作種別を決定するので、操作中にドラッグ方向が少々ななめにずれた場合でも、画像の水平回転を継続することができる。従って、ユーザの意図に即したと判断される処理が決定されることによりユーザは、ドラッグ方向に注意を払うことなく画像の操作に専念することができ、画像診断を円滑に行うことができる。
【実施例6】
【0064】
図9は、本実施形態の医療画像処理装置において、アイコンをダブルクリックすることにより操作モードを切り替える場合の説明図を示す。本実施形態では、アイコンのダブルクリックにより、操作種別が切り替わった後は、描画ウィンドウ内で自由に何度ドラッグ操作を行っても、その操作種別に従った処理が行われる。これによれば、頻繁には操作種別を変更する必要がない場合等に利便性が高い。
【0065】
図9は、描画ウィンドウ11に画像回転アイコン13等が表示されている様子を示す。ユーザが、画像平行移動アイコン14にカーソル12を合わせてダブルクリックすることにより、画像平行移動モードとすることができる。本実施形態によれば、一旦、ダブルクリックにより画像平行移動モードに設定した後は、そのモードに従った処理を行うことが可能となり、利便性が高い。特に、ダブルクリックによりモードを設定した後、次にアイコン群が表示されるときに、モードをリセットすることにより、一層利便性が向上する。なお、モードの変更があったときは、カーソルをそのモードを表現するものに変更すると使い勝手がよい。また、モードは、描画ウィンドウ毎に設定可能である。
【0066】
図10は、本明細書において使用する用語について説明するための図である。描画ウィンドウ11は、ボリュームレンダリングの描画結果の表示されるウィンドウを表わす。アイコン13〜16,13’〜16’は、何らかのコマンドが割り当てられている図形もしくは図形と文字の組み合わせを表示するものである。アイコン群(group)17は、画像種に対応して操作可能なアイコンのグループを示す。なお、「操作種別」は、操作可能なレンダリングの条件を決定する連続なパラメータもしくは連続なパラメータの組合せの種別を表わし、「操作」はユーザが行う操作を言う。また、「連続なパラメータ」とは回転角度、座標、時間、コントラスト値等のように本来的に連続であるが情報処理の都合上離散値を取るものを指す。また、スライス画像の番号も事実上スライス画像の座標等を表現するので、「連続なパラメータ」に含まれる。
【0067】
また、上記の説明では、アイコン群をあらかじめ設定しておき画像種に応じて表示するものとして説明したが、アイコン群の例えば表示させるアイコンの種類、表示させる場所等をユーザがカスタマイズすることもできる。また、描画ウィンドウの外にアイコン群をあらかじめ表示しておいても良い。また、アイコンのなかにはコマンドの起動などドラッグ操作と関係ない操作を受け付けるアイコンがあっても良い。
【0068】
また、上記の説明では、ユーザがアイコンを起点としてドラッグ操作によって操作が行われたが、アイコンにポインティングデバイスをあわせた状態でホイールの回転操作を行っても良い。これにより、ポインティングデバイスの上下左右方向への移動の2自由度に加えて、3自由度の操作ができるので、3次元画像に対する操作を容易に行うことができる。
【0069】
また、上記の説明では、ユーザの操作に応答してカーソルの位置の近傍にアイコン群を表示していたが、この時のカーソルの位置を後の操作に用いても良い。例えば、拡大縮小操作を行うときに、カーソルの位置を拡大縮小の中心と出来る。また、例えば、回転操作を行うときに、カーソルの位置からボリュームデータに投射した物体上の座標(いわゆるポイントピック処理で得られる座標)を回転の中心と出来る。
【0070】
また、本実施形態の医療画像処理装置において、アイコンを表示し、アイコンに対するドラッグ操作を受け付けるタッチパネルを操作表示手段として設けることもできる。タッチパネルは、可動部分がなく消毒殺菌等が容易なため手術現場で使用する場合に好適である。
【0071】
また、クリック以外の方法でアイコン群が表示されるようにしてもよい。例えば、キーボードに対する操作や、音声入力デバイスに対する操作や、専用スイッチに対する操作が考えられる。
【0072】
このように本実施形態の医療画像処理装置によれば、画像上で関心がある位置(カーソルが存在する位置)の近傍にアイコン群が表示されているので、ユーザは、関心領域から視線を外すことなく、画像回転などの操作を行うことができる。また、画像回転などを1回のポインティングデバイスのボタンの押下に続くドラッグ操作で行うことができるので、ユーザの操作負担を軽減することができる。これは特に次々と操作種別を切り替えながら操作を行うときに有効である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、視線の移動を少なくしてドラッグによる操作種別を切り替えることができる医療画像処理装置および医療画像処理プログラムとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態にかかる医療画像処理装置およびコンピュータ断層撮影(CT)装置を概略的に示す図
【図2】本発明の実施形態にかかる医療画像処理装置の動作を説明するためのフローチャート
【図3a】本発明の実施形態にかかる医療画像処理装置における描画ウィンドウ11の例を示す図
【図3b】本発明の実施形態にかかる医療画像処理装置における描画ウィンドウ11の他の例を示す図
【図4】実施例1において、ドラッグ操作後にカーソル位置を自動復帰させる様子を示す図
【図5】実施例2において、操作中の画像にカーソル12を追従させる様子を示す図
【図6】実施例3において、一つのアイコンを2つの操作種別に対応させる場合を示す図
【図7】実施例4において、表示する画像種に応じて異なるアイコン群を表示させる場合の説明図
【図8】実施例5において、ドラッグ開始時のカーソルの動きにより操作種別を決定する場合の説明図
【図9】実施例6において、アイコンをダブルクリックすることにより操作モードを切り替える場合の説明図
【図10】本明細書において使用する用語について説明する図
【図11】描画ウィンドウとアイコンを説明するための図
【符号の説明】
【0075】
11 描画ウィンドウ
12 カーソル
13 画像回転アイコン
14 画像平行移動アイコン
15 画像拡大縮小アイコン
16 WW/WL変換アイコン
17 アイコン群
21 スライス/時系列アイコン
26 スライス変更アイコン
101 X線源
102 X線ビーム束
103 患者
104 X線検出器
105 ガントリー
106 システム軸線
107 テーブル
111 画像処理手段
112 カーソル制御手段
113 操作手段
114 アイコン制御手段
115 パラメータ制御手段
116 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータに応じた画像を作成し描画ウィンドウに表示させる医療画像処理装置であって、
前記描画ウィンドウ領域内にカーソルが存在するかどうか検出するカーソル制御手段と、
前記描画ウィンドウ領域内に前記カーソルが存在する場合に、指定の操作が行われたことに応答して、前記カーソルの位置の近傍に、前記描画ウィンドウに表示される画像の1次元以上の連続なパラメータを表現するアイコンを少なくとも二つ含むアイコン群を表示させるアイコン制御手段と、
前記アイコンを起点としてドラッグ操作が行われた場合に、前記アイコンの表現する前記1次元以上の連続なパラメータを前記ドラッグ操作に対応して変化させるパラメータ制御手段と、を備える医療画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記アイコンを表示し、前記アイコンに対するドラッグ操作を受け付けるタッチパネルを備える医療画像処理装置。
【請求項3】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記カーソル制御手段は、前記アイコンに対するドラッグ操作完了後に、前記カーソルの位置を、ドラッグ操作開始時における前記描画ウィンドウの座標上の位置に復帰させる医療画像処理装置。
【請求項4】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記カーソル制御手段は、前記アイコンに対するドラッグ操作完了後に、前記カーソルの位置を、ドラッグ操作開始時の画像上の点に対応する位置に移動させる医療画像処理装置。
【請求項5】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記パラメータ制御手段は、前記アイコンに対し、前記ドラッグ操作の2自由度に対応してそれぞれ異なるパラメータの操作を割り当てる医療画像処理装置。
【請求項6】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記アイコンに対して操作が行われたときにあらかじめ定められた処理を起動する医療画像処理装置。
【請求項7】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記アイコンの表現する前記1次元以上の連続なパラメータは、2次元以上の連続パラメータであり、
前記パラメータ制御手段は、前記アイコンを起点としてドラッグ操作が行われた場合、前記ドラッグ操作開始時にカーソルの動いた方向により前記2次元以上の連続パラメータから前記1次元以上の連続なパラメータを更に決定する医療画像処理装置。
【請求項8】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記パラメータ制御手段は、前記アイコンに対して操作が行われたときに、前記アイコンの表現する前記1次元以上の連続なパラメータを選択し、
前記描画ウィンドウを起点としてドラッグ操作が行われたときに、前記選択された1次元以上の連続なパラメータを前記ドラッグ操作に対応して変化させる医療画像処理装置。
【請求項9】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
ボリュームデータから前記描画ウィンドウに表示する画像を生成する画像処理手段を備え、
前記アイコン制御手段は、前記描画ウィンドウに表示される画像の種別に対応して、表示させるアイコン群を決定する医療画像処理装置。
【請求項10】
請求項1記載の医療画像処理装置であって、
前記カーソルの位置の近傍とは、、前記カーソルの位置に対してあらかじめ相対的に定められた位置である医療画像処理装置。
【請求項11】
パラメータに応じた画像を作成し描画ウィンドウに表示させる医療画像処理プログラムであって、コンピュータを、請求項1及び3乃至10のいずれか一項記載の各手段として機能させるための医療画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−116581(P2009−116581A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288451(P2007−288451)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(500109320)ザイオソフト株式会社 (59)
【Fターム(参考)】