説明

医薬組成物

NK受容体アンタゴニストであるタルネタント、ポビドン、エリトリトールおよび界面活性剤を含む新規な医薬組成物、およびその製法が開示されている。安定した医薬組成物の調製におけるエリトリトールの可溶性充填剤としての使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧乾燥した医薬組成物において安定した可溶性充填剤としてのエリトリトールの使用に、特に賦形剤としてのエリトリトール(erythritol)およびNK受容体アンタゴニストであるタルネタント(talnetant)を含む新規な組成物に関する。
【0002】
タルネタント、(S)−(−)−N−(α−エチルベンジル)−3−ヒドロキシ−2−フェニルキノリン−4−カルボキサミド(別名、3−ヒドロキシ−2−フェニル−N−[(1S)−1−フェニルプロピル]−4−キノリンカルボキサミド)は、構造式(A)を有する。
【0003】
【化1】

【背景技術】
【0004】
タルネタント、その調製、ならびに肺障害、中枢神経系の障害および神経変性障害の治療におけるその使用は、国際特許出願公開WO95/32948に開示されている。国際特許出願公開WO97/19927、WO97/19928、WO99/14196およびWO02/094187は、タルネタントのさらなる治療上の有用性、医薬上許容される塩およびその調製方法を開示する。WO05/97077は、生物学的利用能を高めたタルネタントを含有する噴霧乾燥させた組成物を開示する。上記の特許出願は、各々個々の公開資料が具体的かつ個別的に全文を記載したかの如く出典明示により本明細書の一部とされることを示すものであり、その出典を明示することにより本明細書の一部とされる。
【0005】
タルネタントは、水溶性が低い(pH1で約0.03mg/mlおよびpH7.0で0.001mg/ml)。典型的には、水溶性の低い薬物は、胃腸管(GIT)内でその固体が難溶であるため、GITの壁を介してゆっくりと吸収され、少ない拡散性推進力がもたらされる。
【0006】
特定の薬物の吸収を改善するために使用されるいくつかの異なる方法がある。可溶化基(例えば、ホスファート、スクシナートまたはポリエチレングリコール)を薬物に結合させ、それによって誘導性プロドラッグ/塩の高い溶解性および溶解速度を利用することによって、いわゆる活性剤のプロドラッグまたは塩、すなわちより可溶性の誘導体を開発することが可能である。別法として、製剤の溶解速度、したがって吸収速度を増加するために、アモルファス薬物または可溶性担体中の分散体を使用するなどの物理的製剤法を使用することが知られている(J.H.Fincher、J.Pharm.Sci、1968、57、1825およびG.L.Amidonら、J.Pharm.Sci.、1980、12、1363)。
さらなる別法は薬物の粒径を小さくすることである。粒径の縮小は、薬物粒子の表面積を増加させ、したがってその溶解速度を増加させる。
【0007】
薬物の微粒子を調製するために種々の方法が開発されてきた。典型的には、粒状の医薬の調製のために乾式粉砕技術が使用される(E.L.Parrott、J.Pharm.Sci.、1974、63、813を参考のこと)。粉砕材料から汚染が持ち込まれる危険性を下げるため、空気ジェットミルおよび流体エネルギーミル(微細化)が好まれてきた。より最近では、湿式粉砕法を用いて1μm未満の大きさの粒子を得てきた。例えば、欧州特許出願公開第EP−A−0262560号には、平均粒径が1μm以下であるベンゾイル尿素誘導体を含有する組成物を調製するための湿式粉砕技術の使用が記載されている。微粒子を提供することによって、水難溶性ベンゾイル尿素化合物のGITからの吸収性を向上させ、したがってそれらの生物学的利用能を増加させると言われている。欧州特許出願第EP−0499299B1号は、結晶性の薬物の粒子の調製のための湿式粉砕手順が記載されており、この粒子は、約400nm未満の「有効な平均粒径」を維持するのに十分な量の表面改質剤が表面に吸着されている。
【0008】
湿式粉砕法から得られる水性分散体は、適当な衛生条件下で、例えば、ヨーロッパ薬局方/米国薬局方の標準に合致する水および他の成分を使用することによって調製した場合は、治療剤として直接使用され得る。ヒトの治療での使用のための処方の調製には、水性分散体を乾燥粉末に変換することが好ましい。これは、適当には、得られた水性分散体を噴霧乾燥させ、典型的には、サイクロンセパレーターを使用して乾燥機から生成物を回収することによって行われる。得られた水性分散体を噴霧造粒することもできる。
【0009】
噴霧乾燥の目的は、粉末を加工処理し、さらにカプセルまたは錠剤あるいは他の適当な経口剤形に調製され得るように、薬物粒子の分散体から水を除去することである。しかし、噴霧乾燥した粉末から得られる粒子は、水性媒体に分散させた場合、粉砕したばかりの粒子と実質的に同じ大きさであることが望ましい。粉砕したばかりの粒子と同じ大きさの粒子が得られる場合は、当該分野で(および後記にて)完全な「粒径の回復」と称する。
【0010】
他方において、噴霧乾燥した粉末中の賦形剤の形態は、噴霧乾燥した粉末が良好な貯蔵安定性を有するように、熱力学的に安定した形態として存在することもまた望ましい。典型的には、噴霧乾燥した医薬組成物中の可溶性充填剤として、従来通り、マンニトールまたはラクトースが使用される。しかしながら、マンニトールは、3種の異なる結晶性多形性形態:α、βおよびδにて存在しうるという欠点を有する(例えば、Burger,A.、Henck,J.O.、Hetz,S.、Rollinger,J.、Weissnicht,A.、Stottner,H. J.Pharm Sci,89、457(2000)を参照のこと)。噴霧乾燥方法により、α−マンニトールまたはδ−マンニトールあるいはα−マンニトールとδ−マンニトールの形態の混合物が得られることが多い。これらは、外界条件で熱力学的に安定な形態である、β−マンニトールに比べて順安定的な形態である。マンニトール形態の相互変換は噴霧乾燥した材料を貯蔵する間、あるいは噴霧乾燥した材料より製造した医薬剤形の貯蔵する間に可能である。ラクトースは噴霧乾燥した材料にて無定形として存在し、それが噴霧乾燥した材料を貯蔵する間、あるいは噴霧乾燥した材料より製造した医薬剤形の貯蔵する間に結晶形に変換しうるという欠点を有する。
【0011】
加えて、タルネタントの特定の湿式粉砕した分散体を噴霧乾燥に付すと、粒径の回復は不良である。すなわち噴霧乾燥した材料を水性媒体に再度分散させると、粒径の有意な増加が見られる。特定の賦形剤を含有するタルネタントの湿式粉砕した分散体を噴霧乾燥することによって、この問題に対処し、粒径の回復および生物学的利用能の増加がもたらされる。しかし、このことは、必ずしも安定性の問題に、特に、粒径の回復の減少をもたらすことが多い、貯蔵の際における可溶性の充填剤の形態の変換に対処し得ない。
【0012】
多くの治療活性剤を商業的に製造する場合、特にタルネタントを製造する場合、信頼できる粒径の回復に至る貯蔵安定性が重要である。この度、噴霧乾燥した医薬組成物、特に結晶性のエリトリトールを含有するタルネタント処方がこの問題に対処し、噴霧乾燥粉末中にて可溶性充填剤の安定した結晶形態をもたらすことが見いだされた。
【0013】
かくして、第一の態様にて、本発明は、実質的に結晶性のエリトリトールの、噴霧乾燥工程において安定した可溶性充填剤としての使用を提供する。
もう一つ別の態様にて、本発明は、実質的に結晶性のエリトリトールの、噴霧乾燥した医薬組成物の調製において安定した可溶性充填剤としての使用を提供する。
特記しない限り、「安定した」なる語は、意図して、エリトリトールの形態がその投入した形態から噴霧乾燥した材料にて変化しないことを意味する。
【0014】
もう一つ別の実施形態において、本発明は、(i)医薬活性物質、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤を含む、噴霧乾燥した医薬組成物を提供する。
さらなる実施形態において、本発明は、(i)タルネタント、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤を含む、医薬組成物を提供する。
一の実施形態において、タルネタントは0.1ないし2.0μmの範囲にあるDv90を有するタルネタント粒子の形態である。本明細書にて用いる場合、Dv90なる語は、低角度レーザー光散乱(Malvern Mastersizer2000)から由来の容量分布の90パーセンタイルでのマイクロメートル値をいう。同様に、Dv50およびDv10パラメーターは、各々、同じ分布の50および10パーセンタイルをいう。
【0015】
0.1〜2.0μmの範囲のDv90を有するタルネタント粒子を得るためには、タルネタントを、適当な水性、非水性または有機溶媒(例えば、油)中でまず湿式粉砕し、次いで噴霧乾燥に付す。適当な粉砕装置として、Nylacast(Nylacast Components、200Hastings Road、Leicester、LE5 0HL、UKから入手可能)、Netzsch(Erich NETZSCH GmbH & Co.Holding KG Gebruder−Netzsch−Straβe19,D−95100 Selb、Germanyから入手可能)、Drais(Draiswerke、Inc、40Whitney Road、Mahwah、NJ07430、USAから入手可能)およびその他により製造されたものなどの従来の湿式ビーズミルが挙げられる。粉砕装置の粉砕室は、耐摩耗性ポリマー材料で裏打ちまたは構成し得る。粉砕装置の粉砕室は、ナイロンで裏打ちまたは構成し得る。適当な粉砕室の一例が、国際特許公開WO02/00196に記載されている。適当な粉砕媒体として、ガラスビーズおよびセラミックビーズ、例えば、希土類酸化物材料から作製されたものが挙げられる。前記粉砕媒体の直径は、例えば、0.1mm〜3mmの範囲内、適当には0.3mm〜0.8mmの範囲内である。前記粉砕媒体の密度は、例えば、3gcm−3超、適当には5〜10gcm−3の範囲内である。適当な噴霧乾燥および噴霧造粒技術は、当業者であれば明らかであろうし(例えば、Gilbert S.Banker、「Modern Pharmaceutics,Drugs and the Pharmaceutical Sciences」、1996およびそこで引用された参照文献を参照のこと)、Niro SD6.3R噴霧乾燥機(Niro A/S、Gladsaxevej305、2860Soeborg、Denmark)、Niro Mobile Minor、Yamato GA−32噴霧乾燥機(2−1−6 Nihonbashi Honcho、Chuo−ku、Tokyo、103−8432、Japan)などの噴霧乾燥機、またはGlatt流動層造粒機などの流動層造粒機を使用して行い得る。タルネタント粒子は、レーザー光回折および光子相関分光などの当該分野で公知の従来の技術を使用して大きさを決定してもよい。
【0016】
ポビドン(ポリビニルピロリドンまたはPVPとしても公知)は抗凝集剤である。一例として、KollidonおよびPlasdoneK29/32が挙げられる。
エリトリトールは種々の医薬製剤に用いられ、錠剤充填剤として固形剤形に(Bi YX、SunadaY、Yonezawa Y、Danjo K、Evaluation of rapidly disintegrating tablets prepared by a direct compression method.Drug Dev Ind Pharm 1999;25(5);571−581);およびコーティング剤に(Ohmori S,Ohno,Y、Makino T、Kashihara T.、Characteristics of erythritol and formulation of a novel coating with erythritol termed thin−layer sugarless coating. Int J Pharm 2004;278(2);447−457)含まれる、非齲食原性賦形剤である。また、感湿薬と組み合わせて湿式造粒工程にて希釈剤として使用されてもよい(Michaud J、Haest G、Erythritol:a new multipurpose excipient. Pharmaceut Technol Eur2003;15(10);69−72)。
【0017】
エリトリトールは本発明にて可溶性担体として作用する可溶性炭水化物である。一例として、エリデックス(Eridex)が挙げられる。本発明にて使用されるエリトリトールは、C.Ceccarelli、G.A.Jeffrey、R.K.McMullen、Acta Crystallogr B.Vol36、3079頁(1980)に報告されるように実質的に結晶形態である。本発明の組成物の個々の利点は、エリトリトールの結晶形態が懸濁液に溶解させる前の流入材料の結晶形態に適合しており、その後に噴霧乾燥に付されることである。さらには、エリトリトールはこの処方にて物理的に安定しており、貯蔵安定性および安定した粒径の回復に寄与することである。
エリトリトールは湿式粉砕の前に分散液に溶解させてもよい。別法として、噴霧乾燥の前に湿式粉砕分散液に溶解させてもよい。
【0018】
本発明の組成物中の界面活性剤は、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤でよい。イオン性界面活性剤が使用される場合は、界面活性剤はアニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤であり得る。アニオン性界面活性剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウム、およびスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ドクサートナトリウム)などの硫酸アルキルが挙げられる。カチオン性界面活性剤の例には、塩化セチルピリジニウムおよび臭化セチルトリメチルアンモニウムが挙げられる。一の実施形態では、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。さらなる実施形態では、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムまたはスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ドクサートナトリウム)である。またさらなる実施形態では、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0019】
一の実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤の例には、POEアルキルフェノール、POE直鎖アルコール、POEポリオキシプロピレングリコール、POEメルカプタン、天然脂肪酸のグリセリルおよびポリグリセリルエステルなどの長鎖カルボン酸エステル、プロピレングリコール、ソルビトールおよびPOEソルビトールエステル、ポリオキシエチレングリコールエステルなどが挙げられる。さらなる実施形態では、非イオン性界面活性剤は、POEポリオキシプロピレングリコールである。
【0020】
一の実施形態では、噴霧乾燥させた組成物中の界面活性剤の濃度は、タルネタントの0.05〜50.0重量%である。一の実施形態では、噴霧乾燥前の分散体中の界面活性剤の濃度は、分散体の0.05〜10.0重量%である。さらなる実施形態では、噴霧乾燥前の分散体中の界面活性剤の濃度は0.05〜2.0%である。
一の実施形態では、分散体は、タルネタント1モル当たりイオン性界面活性剤0.001〜0.1モルを含有する。さらなる実施形態では、分散体は、タルネタント1モル当たり界面活性剤0.005〜0.05モルを含有する。
【0021】
本発明の組成物は、加えてもよいさらなる適当な医薬上許容される賦形剤を含有し得る。適当な賦形剤は、アメリカ薬剤師協会および英国薬剤師協会により出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients、Pharmaceutical Press、第5版、2006に記載されている。さらなる賦形剤の例には、懸濁液中に粒子を維持するための安定剤が挙げられる。
【0022】
本発明の組成物は、乾式粉砕、湿式粉砕および/または噴霧乾燥に付されてもよい。上記したように、湿式粉砕のためには、典型的には、水を水性媒体として通常使用し、次いで噴霧乾燥により除去し、噴霧乾燥させた粉末が得られる。したがって一の実施形態では、本発明の組成物は水も含む。一の実施形態では、本発明の組成物は、単位処方%w/wで25%〜90%の水を含む。
【0023】
一実施形態では、本発明の組成物は、以下の:
【0024】
【表1】

【0025】
一実施形態では、本発明の組成物は、以下の:
【0026】
【表2】

【0027】
一の態様にて、噴霧乾燥した組成物の調製方法であって、
(1)(i)医薬活性物質、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤の分散体を湿式粉砕に付し;ついで
(2)得られた分散体を噴霧乾燥または噴霧造粒に付すことを含む、方法が提供される。
さらなる態様において、噴霧乾燥した組成物の調製方法であって、
(1)(i)タルネタント、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤の分散体を湿式粉砕に付し;ついで
(2)得られた分散体を噴霧乾燥または噴霧造粒に付すことを含む、方法が提供される。
【0028】
もう一つ別の態様において、本発明は上記した方法により得ることができる噴霧乾燥した組成物を提供する。すなわち、本発明は(i)医薬活性物質、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤を含む、噴霧乾燥した組成物を提供する。
もう一つ別の態様において、本発明は上記した方法により得ることができる噴霧乾燥した組成物を提供する。すなわち、本発明は(i)タルネタント、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤を含む、噴霧乾燥した組成物を提供する。
【0029】
本発明の第1の態様の特徴および実施形態はすべて他の態様に準用する。
本発明の組成物は、さらに処理せずに対象に投与し得る。しかし、一般に、所望の剤形によって選択されるさらなる医薬上許容される賦形剤と共に、他の剤形に処方されるであろう。これらのさらなる賦形剤は、典型的には、噴霧乾燥後に噴霧乾燥した組成物に添加される。
したがって、一の実施形態では、第1の態様に記載した組成物を含む剤形を提供する。
【0030】
一の実施形態では、剤形は経口で投与される。経口投与は、典型的には、化合物がGITに入るように、嚥下することを含む。経口投与のための剤形には、錠剤、(粒子、粉末または非水性懸濁物を含有する)カプセル、サシェ、バイアル、散剤、顆粒、ロゼンジ、復元可能な散剤などの固形処方、および(懸濁剤、乳剤およびエリキシルなどの)液体製剤が挙げられる。
【0031】
経口剤形は、結合剤(例えば、シロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、デンプン、PVP、HPMC、およびトラガカント);充填剤(例えば、ラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールおよびグリシン);打錠滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);流動促進剤(例えば、Cab−O−Sil M−5Pなどのコロイド状二酸化ケイ素)および崩壊剤(例えば、デンプン、クロスポビドン(Polyplasdone XL)、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムおよび微結晶セルロース(Avicel PH102))などのさらなる賦形剤を含有し得る。さらに、経口剤形は、保存料、抗酸化剤、香味剤、顆粒化結合剤、湿潤剤および着色剤を含有し得る。
【0032】
一の実施形態において、経口投与用剤形はカプセルである。液体剤形を調製するのに適する賦形剤として、懸濁化剤(例えば、ソルビトール、シロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルおよび硬化食用脂);乳化剤(例えば、レシチン、ソルビタンモノオレアートおよびアカシア);水性または非水性ビヒクル、食用油(例えば、落花生油および分別ココヤシ油)、油性エステル(例えば、グリセリンおよびプロピレングリコールのエステル)、エチルアルコール、グリセリン、水および生理食塩水を含む;保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸真チルまたはプロピルおよびソルビン酸);および、要すれば、従来の矯味矯臭剤または着色剤が挙げられる。
【0033】
他の実施形態において、経口投与用剤形は錠剤である。錠剤は、製剤の科学者にはよく知られている標準的技術、例えば、直接圧縮法、顆粒化、融解凝固および押出を使用して調製し得る。錠剤は、コーティングされていてもいなくてもよい。錠剤は、即時放出または制御放出となるように処方し得る。制御放出処方には、遅延放出、徐放、パルス放出または2段階放出が挙げられる。適当な打錠賦形剤は、アメリカ薬剤師協会および英国薬剤師協会により出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients、Pharmaceutical Press、第5版、2006に記載されている。典型的な打錠賦形剤として、担体[例えば、微結晶セルロース(Avicel PH102)]、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、結合剤、湿潤剤、着色剤、矯味矯臭剤、流動促進剤[例えば、コロイド状二酸化ケイ素(Cab−O−Sil M−5P)]および崩壊剤[例えば、クロスポビドン(Polyplasdone XL)]が挙げられる。
【0034】
一の実施形態では、剤形は以下の:
【0035】
【表3】

【0036】
一の実施形態では、剤形は以下の:
【0037】
【表4】

【0038】
タルネタントの有効用量は、患者の状態、投与頻度および経路によって決まる。単位用量は、一般に、20〜1000mgのタルネタントを、一実施形態では30〜800mgの、さらなる実施形態では200または600mgのタルネタントを含有するであろう。単位用量は、1日当たり1回または複数回投与し得る(例えば、1日当たり2、3または4回)。70kgの大人の1日の総用量は、通常、100〜3000mgの範囲であろう。あるいは、単位用量は2〜20mgの活性成分を含有し、所望であれば上記の1日用量とするために複数回で投与されるであろう。
【0039】
一の実施形態において、本発明の組成物および錠剤は、医学または獣医学分野での使用に適用される。例えば、このような調製物は、その症状の治療における薬剤として、手書きまたは印刷された使用説明書を伴うパック形態であってもよい。
【0040】
タルネタントを含めたNK受容体アンタゴニストは、NK受容体の過剰刺激に特徴付けられる多種多様の臨床疾患および症状の治療および予防に有用である。これらの疾患および症状(以下「本発明の疾患および症状」と称する)には、うつ病(この語には、(I型およびII型を含めた)双極性(躁)うつ病、単極性うつ病、精神病性の症状、緊張性の症状、憂うつの症状、非定型の症状(例えば、嗜眠、過食/肥満症、過眠症)または産後の発症を有するまたは有さない単発性または再発性の大うつ病エピソード、季節性情動障害および情緒異常、うつ病に関連する不安、精神病性うつ病、ならびにそれだけに限らないが、心筋梗塞、糖尿病、流産または中絶を含む一般的病状に由来するうつ病性障害を含む);不安障害(全般性不安障害、社会不安障害、精神病患者における動揺、緊張、引きこもりまたは情緒性離脱、パニック障害、および強迫性障害を含む);恐怖症(広場恐怖症および対人恐怖を含む);精神病および精神病性障害(統合失調症、統合失調感情障害、統合失調症様疾患、急性精神病、アルコール精神病、自閉症、せん妄、躁病(急性躁病を含む)、躁うつ病、幻覚、内因性精神病、器質性精神症候群、双極性障害、偏執傾向および妄想性障害、産褥精神病、ならびにアルツハイマー病などの神経変性疾患に伴う精神病を含む);心的外傷後ストレス障害;注意欠陥多動性障害;認知機能障害(例えば、注意、配向、記憶(記憶障害、記憶喪失、記憶喪失障害および年齢に関連した記憶機能障害)を含めた認知機能および言語機能の機能障害、ならびに脳卒中、アルツハイマー病、エイズに関連する認知症または他の認知症状態、ならびにせん妄またはうつ病(仮性痴呆状態)などの認知低下をもたらし得る他の急性または亜急性の状態が原因の認知機能障害を含めた認知機能障害治療);てんかんなどの痙攣性障害(単純部分発作;複雑部分発作;続発性全身発作;欠神発作、ミオクローヌス発作、間代発作、強直発作、強直間代発作および無緊張発作を含めた全身発作を含む);精神性機能不全(性的関心欠損症(低いリビドー)、性的刺激または性的興奮阻害、オルガスム機能不全、女性のオルガスム阻害および男性のオルガスム阻害、性的欲求低下障害、女性の性的欲求障害、ならびにSSRIの部類の抗うつ剤による治療により誘発された性的機能不全の副作用を含む);睡眠障害(サーカディアンリズムの障害、睡眠異常、不眠、睡眠時無呼吸およびナルコレプシーを含む);摂食行動障害(神経性食欲不振症および神経性過食症を含む);神経変性疾患(アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、運動ニューロン疾患、およびパーキンソン病などの他の運動障害(目的のある動作の障害、振戦、動作緩慢、運動亢進(中等度および重度)、無動、硬直、バランスおよび協調の障害、ならびに姿勢の障害において身体障害が徐々に進行することを含めた、歩行運動欠如および/または運動能力障害の軽減を含む)、パーキンソン病における認知症、ハンチントン舞踏病における認知症、神経弛緩剤が誘発するパーキンソニズムおよび晩発性運動異常症、脳卒中、心停止、肺バイパス、外傷性脳損傷、脊髄損傷または同様のものに続く神経変性、ならびに多発性硬化症および筋萎縮性側索硬化症などの脱髄性疾患等);禁煙またはこのような活動の程度もしくは頻度の低下を含めた薬物乱用からの退薬症状(コカイン、エタノール、ニコチン、ベンゾジアゼピン、アルコール、カフェイン、フェンシクリジンおよびフェンシクリジン様化合物、カンナビス、ヘロイン、モルヒネなどのオピエート、鎮静剤、催眠剤、アンフェタミン、またはデキストロアンフェタミン、メチルアンフェタミンなどのアンフェタミンに関連する薬物、あるいはそれらの組合せの乱用など);疼痛(神経因性疼痛(糖尿病性神経障害;坐骨神経痛;非特異的な腰の痛み;多発性硬化症の疼痛;線維筋痛または癌に伴う疼痛;AIDSに関連するおよびHIVに関連する神経障害;化学療法が誘発する神経障害;ヘルペス感染後神経痛および三叉神経痛などの神経痛;交感神経的に維持される疼痛、ならびに身体外傷、切断、癌、毒素または関節リウマチおよび骨関節炎などの慢性炎症性疾患がもたらす疼痛;肩手症候群などの反射性交感神経性ジストロフィーを含めた)、急性疼痛(例えば、筋骨格の疼痛、術後疼痛および手術疼痛)、炎症性疼痛および慢性疼痛、「しびれが切れたときのぴりぴりする感覚」などの通常痛くない感覚に伴う疼痛(感覚異常および知覚異常)、触れられたときの感受性の増加(感覚過敏)、非侵害刺激に続く痛い感覚(動的アロディニア、静的アロディニアまたは熱アロディニア)、侵害刺激に対する感受性の増加(温熱性痛覚過敏、冷痛覚過敏、機械的痛覚過敏)、刺激除去の後の連続する痛覚(痛覚異常鋭敏症)または選択的感覚経路の欠如もしくは欠乏(痛覚鈍麻)、片頭痛に伴う疼痛、および非心臓性胸痛を含めた);特定のCNSが介在する障害(嘔吐、過敏性腸症候群および非潰瘍性消化不良など);ならびに肺障害(喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道反応性亢進および咳など)などのCNS障害が挙げられる。
【0041】
NK受容体の変調によって媒介されるさらなる疾患または症状(以下「本発明の好ましい疾患および症状」と称する)として、うつ病、不安障害、恐怖症、精神病および精神病性障害、心的外傷後ストレス障害、注意欠陥多動性障害、禁煙またはこのような活動の程度もしくは頻度の低下を含めた薬剤の乱用からの退薬症状、過敏性腸症候群、認知機能障害、痙攣性障害、精神性機能不全、睡眠障害、摂食行動障害、神経変性疾患、疼痛、嘔吐、過敏性腸症候群、非潰瘍性消化不良、ならびに肺障害(喘息、慢性閉塞性肺疾患、気道反応性亢進および咳など)が挙げられる。
【0042】
次に実施例を用いて本発明を説明する。
分析法
・ナノ粉砕した懸濁液の粒径分布は、Malvern Mastersizer2000レーザー光回折装置で直接測定し得る。噴霧乾燥させた粉末の粒径の回復のために、噴霧乾燥させた粉末を、水と穏やかに混合し(水10mL中に50mg)、得られた懸濁液を粒径測定のために使用する。
【0043】
実施例1
組成物1
【0044】
【表5】

【0045】
ラウリル硫酸ナトリウムを水に溶かした。ついで、タルネタント、ポビドンおよびエリトリトールを加え、均一な懸濁液が得られるまでミキサーを用いて混合を続けた。45nmのDv90が得られるまで、該懸濁液をNetzschビーズミルに通した。該懸濁液を、下記の設定で、Niro Mobile Minor噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥させた(製造主の指示に従って操作した):2本の流体ノズル;霧化圧2バール;乾燥ガス流速:65m/時間;懸濁液噴霧速度:約35〜50g/分;入口温度:約150℃;出口温度:約60℃。
【0046】
組成物1より生成した噴霧乾燥した粉末をX−線粉末回折により分析した。該装置はPhilips X’Pert Pro Diffractometerであり、次のパラメータを用いた:スキャン範囲2−40°の2シータ;発電力:40kV、40mA;線源:Cu Ka;スキャン型:連続式;工程時間:10.160秒;工程サイズ:0.0167°2−シータ/工程;サンプル回転:25rpm;入射ビーム光学:0.5°の移動式開口度で1°に固定したスリット、0.04ラジアンソリエスリット、10mmビームマスク;回折ビーム光学:固定スリット(X’celerator module)、0.04ラジアンソリエスリット;検出器の型:Philips X’celerator Real Time Multi Strip。
【0047】
XRPD分析により、組成物1のエリトリトールが噴霧乾燥の際に再結晶化し、この形態が開始時の形態と適合することを確認する。
さらには、得られた噴霧乾燥粉末の粒径の回復もほとんど完全であった。
【0048】
実施例2
組成物2
【0049】
【表6】

【0050】
組成物2から由来の噴霧乾燥した粉末を組成物1と同様の方法にて調製した。XRPD分析により、組成物2中のエリトリトールが噴霧乾燥の際に再結晶化し、この形態が出発時の形態と適合することが確認された。
得られた噴霧乾燥粉末の粒径の回復は完全であった。
【0051】
実施例3
【0052】
【表7】

【0053】
組成物3から由来の噴霧乾燥した粉末を組成物1と同様の方法にて調製した。XRPD分析により、組成物3中のエリトリトールが噴霧乾燥の際に再結晶化し、この形態が出発時の形態と適合することが確認された。
【0054】
実施例4
【0055】
【表8】

【0056】
組成物4から由来の噴霧乾燥した粉末を組成物1と同様の方法にて調製した。XRPD分析により、組成物4中のエリトリトールが噴霧乾燥の際に再結晶化し、この形態が出発時の形態と適合することが確認された。
【0057】
比較例1
組成物5
【0058】
【表9】

【0059】
組成物5から由来の噴霧乾燥した粉末を組成物1と同様の方法にて調製した。噴霧乾燥した粉末をXRPD分析に付し、ラクトースが無定形にて存在し、熱力学的に安定した形態でないことが示された。
【0060】
比較例2
【0061】
【表10】

【0062】
組成物6から由来の噴霧乾燥した粉末を組成物1と同様の方法にて調製した。噴霧乾燥した粉末をXRPD分析に付し、マンニトールがα−マンニトールとδ−マンニトールの混合物の形態として存在することが示された。これらの形態は外界条件で熱力学的に安定した形態である投入時の形態(β)とは異なる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に結晶性のエリトリトールの、噴霧乾燥工程において安定した可溶性充填剤としての使用。
【請求項2】
実質的に結晶性のエリトリトールの、噴霧乾燥した医薬組成物の調製において安定した可溶性充填剤としての使用。
【請求項3】
(i)医薬活性物質、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤を含む、噴霧乾燥した医薬組成物。
【請求項4】
(i)タルネタント、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤を含む、医薬組成物。
【請求項5】
タルネタントが0.1ないし2.0μmの範囲にあるDv90を有するタルネタント粒子の形態である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
界面活性剤がイオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤である、請求項3ないし5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムまたはスルホコハク酸ジオクチルナトリウム(ドクサートナトリウム)である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
水も含む、請求項3ないし7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
【表1】

からなる、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
【表2】

からなる、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
噴霧乾燥した組成物の調製方法であって、
(1)(i)タルネタント、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤の分散体を湿式粉砕に付し;ついで
(2)得られた分散体を噴霧乾燥または噴霧造粒に付すことを含む、方法。
【請求項12】
(i)タルネタント、(ii)ポビドン、(iii)実質的に結晶性のエリトリトール、および(iv)界面活性剤を含む、噴霧乾燥した組成物。
【請求項13】
請求項3ないし10または請求項12のいずれか一項に記載の組成物を含む剤形。
【請求項14】
経口投与用の請求項13記載の剤形。
【請求項15】
カプセルまたは錠剤である、請求項13または請求項14記載の剤形。
【請求項16】
【表3】

からなる、請求項13記載の剤形。
【請求項17】
【表4】

からなる、請求項13記載の剤形。

【公表番号】特表2009−510099(P2009−510099A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533660(P2008−533660)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/038067
【国際公開番号】WO2007/044251
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】