説明

半導体ウエハーの乾燥方法及びその装置

【課題】半導体ウエハー表面にパーティクルの付着無く、半導体ウエハー及び収納カセットにウォーターマークが発生せず、スピンドライヤーを使用せず乾燥装置内で静止状態で迅速に半導体ウエハーを乾燥する方法及びその乾燥装置を提供する。
【解決手段】カセット内の各収納室に収納された洗浄後の半導体ウエハーを乾燥装置1内に導入し、半導体ウエハーを収納したカセットを乾燥装置1内の乾燥室1cに固定する工程と、乾燥室1c内の上部の噴射ノズルから放射状熱風を強制噴射する工程と、温風噴射停止後、室内の半導体ウエハー及び収納カセットに付着した残余水分を真空乾燥に一定温度条件下で短時間に蒸発乾燥させる工程と、その後、大気圧に戻し再度噴射ノズルにて半導体ウエハー及び収納カセットに熱風を放射状に強制噴射する工程と、再度、温度条件下で真空乾燥する工程を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子の製造工程において、半導体素子の素材であるシリコンウエハーの表面に付着した不純粒子などの不純物を洗浄除去して電気的性能の向上を図る必要があるが、洗浄後の乾燥工程で使用される従来のスピンドライヤーによる乾燥に代えて洗浄後のシリコンウエハーを静止状態で効率良く乾燥させる半導体ウエハーの乾燥方法及びその乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウエハー等の洗浄後の物体を回転させて遠心力により乾燥させるスピンドライヤーとして、回転軸により自転する回転体と、前記回転体に支持され前記回転軸の軸線を中心として対称の位置に配置された複数のクレイドルとを備え、前記回転体の自転により前記回転軸を中心に前記複数のクレイドルを公転させて前記クレイドルに保持された乾燥させるべき物体を乾燥させるスピンドライヤーであって、前記回転軸に連結されて前記回転体と同期回転する移動可能なダミーウェイトと、前記各クレイドルに保持されるべき物体の個数に応じて前記複数のクレイドル間に発生する偏荷重を算出し前記ダミーウェイトが前記算出された偏荷重を打ち消す位置に移動するように前記ダミーウェイトの移動を制御するダミーウェイト移動制御手段とを備えていることを特徴とするスピンドライヤーがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−59893
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の発明は、回転体の非自転時にはダミーウェイトの移動を許容しているため、乾燥させるべき半導体ウエハー等の入れ替えに伴う2つのクレイドル間に生じる偏荷重の変動に応じてダミーウェイトを偏荷重に打ち消す位置に適切に移動させることができる一方、この2つのクレイドル間に存在する偏荷重は、回転体の回転時において振動の原因となるため、このように、回転体の回転時にダミーウェイトを偏荷重を打ち消す位置に固定することにより、振動を確実に抑制することができる実益があるという利点を有するものの、被乾燥物である半導体ウエハーは依然として遠心力により回転運動が働き、回転中に半導体ウエハーの破損は避けがたく、高価な製品の乾燥歩留が悪いという難点は避けがたいものであった。
【0005】
また、洗浄後の半導体ウエハーをカセットに装填した状態で、乾燥装置で乾燥する場合に次の3点をクリアする必要がある。(1) 乾燥効率の向上及び生産数を確保するために半導体ウエハーの乾燥時間は5分以内であること。(2) 半導体ウエハーの表面にミクロンレベルのごみであるパーティクルの付着が無いこと。(3)
半導体ウエハー及び該半導体ウエハーを収納するカセットの各表面に水染み現象であるウォーターマークが発生しないことである。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上記3つの条件である半導体ウエハーの乾燥時間が5分以内であり、半導体ウエハーの表面にパーティクルの付着が無く、半導体ウエハー及び該半導体ウエハーを収納するカセットにウォーターマークが発生しない乾燥方法及び乾燥装置であり、かつ洗浄後の半導体ウエハーをスピンドライヤーで乾燥させること無く乾燥装置内において静止状態で迅速に半導体ウエハーを乾燥する方法及びその乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体ウエハーの乾燥方法は、カセット内の仕切り板で仕切られた各収納室に収納された洗浄後の半導体ウエハーを乾燥装置内に導入し、該半導体ウエハーを収納したカセットを前記乾燥装置内の乾燥室に静止固定するステップと、乾燥室内の上部に間隔をおいて設置した複数の噴射ノズルから半導体ウエハー及びカセットの方向に向けて放射状に熱風を強制噴射するステップと、温風噴射を停止後、乾燥室内の半導体ウエハー及びカセットに付着する残余の水分を真空乾燥にて半導体ウエハーに影響を及ぼさない温度条件下で短時間に蒸発乾燥させるステップと、真空乾燥後、乾燥室内を大気圧に戻し再度上記噴射ノズルにて半導体ウエハー及びカセットに向けて熱風を放射状に強制噴射するステップと、熱風を放射状に強制噴射後、再度、上記温度条件下で真空乾燥するステップを繰り返すことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る半導体ウエハーの乾燥装置は、洗浄後の半導体ウエハーを収納したカセットを静止状態で収納固定する乾燥室と、乾燥室内の半導体ウエハー及びカセットの方向に向けて放射状に熱風を強制噴射する該乾燥室内の上部に間隔をおいて設置した複数の噴射ノズルと、複数の噴射ノズルから強制噴射する熱風の停止中は半導体ウエハーに影響を及ぼさない温度条件下で短時間に該乾燥室を減圧状態にする真空ポンプと、乾燥室内の熱風による強制噴射と乾燥室内の減圧加熱により真空乾燥を交互に行う制御部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、乾燥効率の向上及び生産数を確保するために半導体ウエハーの乾燥時間は短時間で乾燥が可能となり、半導体ウエハーの表面にミクロンレベルのごみであるパーティクルの付着が無く、半導体ウエハー及び該半導体ウエハーを収納するカセットの各表面に水染み現象であるウォーターマークが発生しない。
【0010】
また、本発明は、洗浄後の半導体ウエハーを収納したカセットを前記乾燥装置内の乾燥室に静止固定した状態で乾燥することができるので、従来のように洗浄後の半導体ウエハーをスピンドライヤーで乾燥させること無く乾燥装置内において静止状態で迅速に半導体ウエハーを乾燥する方法及びその乾燥装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】は本発明の乾燥装置を模式的に示す説明図、
【図2】は本発明の乾燥装置の内部を示す正面図、
【図3】は本発明の乾燥装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の乾燥装置を模式的に示す説明図であり、図2は本発明の乾燥装置の内部を正面図、図3は本発明の乾燥装置の側面図である。
1は乾燥装置であり、筐体1aの内部は仕切板1bを介して左右に仕切られており、図2の右側の部屋には真空ポンプ2と送風機3が搭載され、左側の部屋には乾燥室1cが設けられている。真空室1cの左側面には、引き出し部4aを備えた開閉扉4が形成されている。この引き出し部4aには洗浄工程で洗浄された複数枚の半導体ウエハー(図示せず)がカセット5の複数に区画された箇所にそれぞれ収納される。このカセット5も引き出し部4aに複数台が固定した状態で設置される。
【0013】
半導体ウエハーをカセット5に収納した状態で開閉扉4を閉めると乾燥室1cは密閉状態となる。6は乾燥室1c内の上部に所定間隔をおいて設置した複数の噴射ノズルで、図2に示すように半導体ウエハー(図示せず)及びカセット5に向けて放射状に熱風が強制噴射される。噴射時間は数十秒から数分以内とする。
【0014】
乾燥室1cの底部には熱風循環管7が接続されており、この熱風循環管7の途中には熱風循環弁8、送風機3、コンデンサー9 (熱媒体凝縮用の熱交換器としての凝縮器であり、水や熱媒体の液温を管理しながら循環させることで、温度を一定に保つための小型チラー10を備えている) 、ダクトヒーター11、フィルター12 (乾燥室1cに清浄な空気を送るためのもの) 、熱風吹き出し弁13 がそれぞれ取付けられており、熱風循環管7の終端は乾燥室1c内の噴射ノズル6に接続する。
【0015】
14は熱風循環管7の終端と熱風吹き出し弁13の間に分岐させる用にして連結した外気取り入れ管である。外気取り入れ管14には真空破壊弁15、フィルター16、流量計17、レギュレーター18及びフィルター19がそれぞれ取付けられている。外気取り入れ管14の端部は外気に接している。
【0016】
20は乾燥室1cの底部に接続した排気管であり、途中に真空主弁21及びドライ真空ポンプ2が取付けられており、排気管20の終端は外気に接している。
図中、22は乾燥室1c内の圧力を監視する圧力スイッチ、23は乾燥室1c内の真空度を測定する真空計である。24はバイパス弁で乾燥室1c内の真空雰囲気と熱風噴射の雰囲気の切替えが迅速になされるようにするためのものである。
【実施例】
【0017】
実施例1
乾燥室1c内に洗浄後の8インチサイズのシリコン製半導体ウエハーを並列に設置したカセット5に10枚ずつ収納した。乾燥室1cの開閉扉4を閉め、室内を密閉状態にした後、熱風循環弁8を開放し、送風機3を作動させ、コンデンサー9により除湿された内気を乾燥室1c内に噴射させる熱風温度を調整する。本実施例では乾燥室1c内に噴射ノズル6からシリコン製半導体ウエハー及びカセット5に向けて放射状に噴射させる温度を60℃に設定した。噴射時間は1分30秒行った。次に、熱風吹き出し弁13を閉じ、熱風循環弁8も閉じ、真空ポンプ2を作動させ、真空主弁21を開放し、500Paで乾燥室1c内の温度が約50℃の雰囲気で2分間乾燥させた。乾燥後、真空主弁21を閉じ、再度、送風機3を作動させ、乾燥室1c内に噴射ノズル6により同一条件で1分間噴射させた。その後送風機3を停止させ再び、真空乾燥を同一条件で2分間行った。
乾燥室での合計の乾燥時間は6分30秒であったが、作業の効率化を図ることにより5分以内での乾燥が可能であることが判明した。乾燥室1cから取り出したシリコン製半導体ウエハーおよびカセット5にはいずれも洗浄水の付着も無く残渣も無かった。
尚、本実施例では乾燥室1c内に洗浄後の8インチサイズのシリコン製半導体ウエハーを並列に設置したカセット5に10枚ずつ収納した場合について説明したが、シリコン製半導体ウエハーを単独のカセットに収納する場合あるいは複数のカセットに収納する場合のいずれであっても良い。また、乾燥対象の半導体ウエハーのサイズに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0018】
1 乾燥装置 1a 筐体
1b 仕切板 1c 乾燥室
2 真空ポンプ 3 送風機
4 開閉扉 4a 引き出し部
5 カセット 6 噴射ノズル
7 熱風循環管 8 熱風循環弁
9 コンデンサー 10 小型チラー
11 ダクトヒーター 12 フィルター
13 熱風吹き出し弁 14 外気取り入れ管
15 真空破壊弁 16 フィルター
17 流量計
18 圧力スイッチ付レギュレーター 19 フィルター
20 排気管 21 真空主弁
22 圧力スイッチ 23 真空計
24 バイパス弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセット内の仕切り板で仕切られた各収納室に収納された洗浄後の半導体ウエハーを乾燥装置内に導入し、該半導体ウエハーを収納したカセットを前記乾燥装置内の乾燥室に静止固定するステップと、乾燥室内の上部に間隔をおいて設置した複数の噴射ノズルから半導体ウエハー及びカセットの方向に向けて放射状に熱風を強制噴射するステップと、温風噴射を停止後、乾燥室内の半導体ウエハー及びカセットに付着する残余の水分を真空乾燥にて半導体ウエハーに影響を及ぼさない温度条件下で短時間に蒸発乾燥させるステップと、真空乾燥後、乾燥室内を大気圧に戻し再度上記噴射ノズルにて半導体ウエハー及びカセットに向けて熱風を放射状に強制噴射するステップと、熱風を放射状に強制噴射後、再度、上記温度条件下で真空乾燥するステップを繰り返すことを特徴とする半導体ウエハーの乾燥方法。
【請求項2】
洗浄後の半導体ウエハーを収納したカセットを静止状態で収納固定する乾燥室と、乾燥室内の半導体ウエハー及びカセットの方向に向けて放射状に熱風を強制噴射する該乾燥室内の上部に間隔をおいて設置した複数の噴射ノズルと、複数の噴射ノズルから強制噴射する熱風の停止中は半導体ウエハーに影響を及ぼさない温度条件下で短時間に該乾燥室を減圧状態にする真空ポンプと、乾燥室内の熱風による強制噴射と乾燥室内の減圧加熱により真空乾燥を交互に行う制御部を備えていることを特徴とする半導体ウエハーの乾燥装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−114095(P2011−114095A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268090(P2009−268090)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(509324780)株式会社サンエイ (1)
【Fターム(参考)】