半導体ウエハ上に膜を構築するためのチャンバ
【課題】抵抗率が改善された、共形性の高い拡散バリアの、インシチュウによる構築を遂行する。
【解決手段】本発明の一態様では、処理チャンバと、シャワーヘッドと、ウエハ支持体と、RFシグナル手段とを有していてもよい。シャワーヘッドを具備することにより、処理チャンバ内にガスを供給する。ウエハ支持体は、処理チャンバ内でウエハを支持するために具備される。シャワーヘッドに第1のRFシグナルを供給しまたウエハ支持体に第2のRFシグナルを供給するために、RFシグナル手段がシャワーヘッドとウエハ支持体の両方に結合していてもよい。あるいは、RFシグナル手段は、ウエハ支持体にRFシグナルを供給するためにウエハ支持体だけに結合していてもよい。本発明の態様を実施することによりアルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を防止する拡散バリアの能力を、向上させることができる。
【解決手段】本発明の一態様では、処理チャンバと、シャワーヘッドと、ウエハ支持体と、RFシグナル手段とを有していてもよい。シャワーヘッドを具備することにより、処理チャンバ内にガスを供給する。ウエハ支持体は、処理チャンバ内でウエハを支持するために具備される。シャワーヘッドに第1のRFシグナルを供給しまたウエハ支持体に第2のRFシグナルを供給するために、RFシグナル手段がシャワーヘッドとウエハ支持体の両方に結合していてもよい。あるいは、RFシグナル手段は、ウエハ支持体にRFシグナルを供給するためにウエハ支持体だけに結合していてもよい。本発明の態様を実施することによりアルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を防止する拡散バリアの能力を、向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、集積回路製造の分野を指向するものである。
【従来の技術】
【0002】
集積回路を製造する場合、堆積プロセスを用いてウエハの上に絶縁材料や導電材料の薄い層を堆積させる。堆積は、化学気相堆積(CVD)や物理気相堆積(PVDやスパッタリング)等の様々な既知のプロセスによって行われる。
【0003】
CVDプロセスでは、化学気相堆積チャンバの中にウエハが搬入される。従来からのCVDプロセスでは、反応性のガスをウエハ表面に供給し、そこでは、熱誘起化学反応が生じ、被処理ウエハの表面の上に薄膜層が形成される。CVDの用途には、メタロ有機化合物を含有するプロセスガスから、窒化チタン等のチタン含有化合物をウエハの上に堆積させることが挙げられる。このメタル有機化合物の1つに、以下の構造式を有するテトラキス(ジアルキルアミド)チタン(Ti(NR2)4)がある。
【0004】
【化1】
ここで、Rは、それぞれが別々のものであるが、アルキル基であり、例えば、炭素原子1〜5のアルキル基である。例えば、式Ti(N(CH3)2)4を有するテトラキス(ジメチルアミド)チタン(TDMAT)が普通に用いられる。
【0005】
ヘリウム、アルゴン、窒素又は水素等の不活性ガスがチャンバ内に係る化合物を随伴し、エネルギーが与えられるようにする。このエネルギーは、熱CVDの場合は熱源により、プラズマ励起CVDの場合は高周波(RF)シグナル源により、発生させることができる。エネルギーが与えられた気相化合物は、ウエハ表面と反応して、物質の薄い層をウエハの上に生成する。TDMATの気相化合物を用いる場合は、ウエハ表面に窒化チタン膜が生成する。
【0006】
スパッタリングプロセスでは、物理気相堆積(PVD)チャンバ内にウエハを配置させ、アルゴン等のガスでチャンバを満たす。チャンバ内に電界を発生することにより、正荷電イオンを有するプラズマがこのガスから生成する。正荷電イオンは加速されて、チャンバ内に設置されているターゲットに衝突する。これにより、ターゲットからターゲット材料の原子が分離してウエハに堆積し、ウエハ表面にターゲット材料の層を形成する。
【0007】
従来からのスパッタリングプロセスでは、正荷電イオンによるターゲット材料の衝突は、ターゲット材料に負のバイアスを与えることにより増強される。これは、ターゲット材料を支持している電極に高周波シグナルを与えることにより実現される。
【0008】
高密度プラズマPVDチャンバ内に正荷電イオンを発生させるため、別個のRFシグナルをチャンバに誘導結合させてもよい。高密度プラズマPVDチャンバは、ターゲット材料のウエハへの誘引を向上するため、ウエハ支持体に結合した別のRFシグナルを有していてもよい。
【0009】
CVDチャンバやPVDチャンバ等の堆積チャンバを用いて、集積回路に拡散バリアを堆積させてもよい。拡散バリアは、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルが、シリコン基板の上に構築した半導体デバイスのアクティブ領域に拡散することを防止する。これにより、基板内へのコンタクトメタルの相互拡散が防止される。材料の絶縁層とは異なり、拡散バリアは、電流を流すことができる導電性の経路を成す。例えば、拡散バリアを用いて、コンタクトホールのベースにおいてシリコン基板の上を覆うとこもできる。
【0010】
集積回路の温度が450℃を越えれば、コンタクトメタルとシリコン基板の間にひどい相互拡散の発生が開始することがある。相互拡散を発生させるままにすれば、コンタクトメタルがシリコン基板内に浸透してしまう。これにより、集積回路内にオープンコンタクトが発生し、集積回路が欠陥を有するようになる。
【0011】
集積回路の製造においては、450℃を越える高温で操作がなされるアルミニウム及び銅のメタライゼーションプロセスを用いることが多かった。従って、拡散バリアは、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を防止する強力な能力を有していることが望ましい。
【0012】
従来では、この要望をかなえるため、拡散バリアをより厚くしていた。しかし、集積回路の製造では、幾何関係をより小さくするようになってきた。幾何関係を小さくすることにより、コンタクトホールの寸法も小さくなり、そのため、核酸バリアはより薄く且つより共形になることが望ましくなってきた。
【0013】
図1は、シリコン基板101の導電領域105とコンタクトプラグ102との間にある拡散バリア100を例示する。基板101の上にある二酸化珪素等の材料の絶縁層104に、コンタクトホール103が形成されている。拡散バリア100を理想的に形成するためには、これを薄く、且つ、コンタクトホール103の表面の等高線に実質的に共形となるようにする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
拡散バリア100が薄く且つ共形度が高い場合は、コンタクトメタル102は、シリコン基板の導電領域105と十分な導電性を有するオーミックコンタクトを形成することができる。拡散バリア100が厚すぎる場合又は図2に示されるようにうまく形成されない場合は、コンタクトメタル102が基板領域105と十分な導電性を有するオーミックコンタクトを形成できなくなるだろう。
【0015】
図2では、うまく形成されない拡散バリア100がコンタクトホール103の開口をひどく狭めてしまう。開口が狭くなることにより、コンタクトメタル102が形成される際、コンタクトホール103のベースに到達できなくなる。その結果、ボイド106が発生する。
【0016】
コンタクトメタル102と基板領域105の間に良好なオーミックコンタクトを確保するため、拡散バリア100の抵抗を最小にすることが望ましい。代表的には、抵抗率の値は、1000μΩ−cm以下が許容される。拡散バリアとして用いることに成功した材料の1つは、窒化チタン(TiN)である。
【0017】
しかし、例えばTDMAT等、堆積プロセスによっては、抵抗率の高い不安定なバリア層を与えてしまう。TDMATの場合では、堆積したバリア材料の大きな部分が炭素から構成されている(炭化水素、カーバイド等)ことが、その原因の一部である。更に、チタンは、化学反応性のメタルであるが、膜と完全に反応しきってしまうわけではない。このようなバリア材料の層を堆積後処理してやることにより、抵抗率を下げ安定化させることが望ましい。
【0018】
集積回路の製造においては、堆積と堆積後処理、のように、連続する製造プロセスのステップを同じチャンバ内で行う(「インシチュウ」)ことが望ましい。インシチュウ操作により、ウエハが別々の製造装置間を移送することが必要な回数を減らすことにより、ウエハをさらす汚染の量を減らす。また、インシチュウ操作により、半導体製造者が購入し保守をする必要がある高価な製造装置の数を減らすことにもつながる。
【0019】
従って、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を抑止する能力を高めた、共形性が高く薄い拡散バリアを構築することが望ましい。更に、この拡散バリアが、電流の導通のための良好な経路を成すような抵抗を有するようにすることが望ましい。また、この拡散バリアをインシチュウで構築することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に従った装置及び方法は、抵抗率が改善された、共形性の高い拡散バリアの、インシチュウによる構築を遂行することを提供する。本発明の態様を実施することにより、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を防止する拡散バリアの能力を、向上させることができる。このように拡散バリアの向上を行っても、その厚さや抵抗率は、許容限度を越えて大きくなることはない。
【0021】
本発明の具体例を実施することができる半導体処理装置は、処理チャンバと、シャワーヘッドと、ウエハ支持体と、RFシグナル手段とを有していてもよい。本発明の具体例の1つでは、半導体ウエハ処理装置は化学気相堆積を行うことができるものである。
【0022】
シャワーヘッドを具備することにより、処理チャンバ内にガスを供給する。ウエハ支持体は、処理チャンバ内でウエハを支持するために具備される。シャワーヘッドに第1のRFシグナルを供給しまたウエハ支持体に第2のRFシグナルを供給するために、RFシグナル手段がシャワーヘッドとウエハ支持体の両方に結合していてもよい。あるいは、RFシグナル手段は、ウエハ支持体にRFシグナルを供給するためにウエハ支持体だけに結合していてもよい。
【0023】
ウエハ支持体は、支持アームによって、処理チャンバ内に支持されている。支持アームは、RFシグナル手段をウエハ支持体に結合させる。また、ウエハ支持体の温度を測定するため、支持アームは、ウエハ支持体内に収容された熱電対を温度測定装置に結合させる。熱電対は、RFシグナル手段から電気的に絶縁される。
【0024】
本発明の態様を実施する場合は、ウエハ上に膜を構築してもよい。第1に、材料の層をウエハの上に堆積させる。この材料は、2種原子の窒化メタル(MxNy)又は3種原子の窒化珪化メタル(MxSiyNz)であってもよい(Mは、チタンTi、ジルコニウムZr、ハフニウムHf、タンタルTa、モリブデンMo、タングステンW又はその他のメタルであってもよい。)。この材料の堆積操作は、化学気相堆積や物理気相堆積等、様々な手段で遂行することができる。
【0025】
材料の堆積後、この材料の層の抵抗率を低減するため、材料をプラズマアニールする。このプラズマアニールは、イオンを有する環境下にこの材料を曝露する工程と、この材料の層に電気的バイアスを与えて、イオンがこの材料に衝撃を与えるようにする工程とを有していてもよい。
【0026】
あるいは、アニールは、異なるガスを用いて連続的に行う多数のアニールステップから成っていてもよい。例えば、第1のアニールのステップには、窒素と水素の混合ガスを用い、また、次のアニールのステップでは、窒素とヘリウムの混合ガスを用いてもよい。この後の方のアニールのステップでは、材料から水素分子を除去して、抵抗率を低減する。
【0027】
アニールが完了すれば、材料の層を酸化してもよい。この酸化により、アルミニウム等のコンタクトメタルの拡散をこの材料が抑止する能力が高められる。あるいは、アニールを施した材料の層をシランガスに曝露することにより、銅等の等のコンタクトメタルの拡散をこの材料が抑止する能力が高められる。
【0028】
本発明に従い、堆積、アニール及び酸化若しくはシラン曝露の全てを、これら3つ全ての操作が完了する前にウエハをチャンバから取り出すことなく、1つのチャンバ内で行うことができる。従って、材料に対しての堆積、アニール及び酸化若しくはシラン曝露を、インシチュウで行うことができる。
【発明の実施の形態】
【0029】
(A.ウエハ処理のためのチャンバ)
(1.概説)図3(a)及び3(b)を組み合わせて、従来のCVDチャンバ10が示される。CVDチャンバ10は、処理チャンバ12を有しており、この中でサセプタ等のウエハ支持体16によりウエハ14が支持される。ウエハ支持体16は円形のディスク18により支持され、このディスクは典型的には、アルミナセラミック等の材料でできている。ディスク18は、支持アーム22の自由端20の上に載っている。支持アーム22はステム26に取り付けられているその固定端24とともにカンチレバーをなす。ステム26は、変位機構28の動きの下で、垂直変位が可能である。変位機構28を動作させて、支持アーム20を処理チャンバ12内で垂直に運動させる。
【0030】
ウエハ14の処理の間、シャワーヘッド36を介してガスを処理チャンバ12内に注入する。シャワーヘッド36は、典型的な態様ではウエハ14の真上に載置されている。
【0031】
動作の際は、CVDチャンバ10の下に設置されている1組の赤外ランプ30により処理チャンバ12の内部が加熱される。ランプ30は、クオーツウィンドウ32を介して処理チャンバの内部を照射するが、このウィンドウ32はランプ30と処理チャンバ12の内部との間に配置される。ランプ30は、処理チャンバ12とウエハ支持体16の両方を加熱する働きをする。その結果、ウエハ支持体16上のウエハ14も加熱される。
【0032】
ウエハ支持体16の加熱を高めるため、図3(b)に示されるように、セラミック支持板18には、数多くのホール(穴)34が貫通して形成される。図3(b)に示されるホール34の典型的な配置により、何故このプレート18がしばしば「スイスチーズ」プレートと呼ばれるかが明らかになる。
【0033】
熱CVDウエハ処理は、ウエハ温度に非常に敏感である。ウエハが適切な温度に維持されることを確保するため、ウエハ温度が熱電対38により測定される。熱電対38は支持アーム22の自由端20で支持され、ウエハ支持体16の本体の中に設置される。導電ケーブル42によって熱電対38が、処理チャンバ12の外側に設置される温度測定装置40につなげられる。ケーブル42は典型的には、支持アーム22の中心内部に形成される孔に沿って走っている。
【0034】
図4は、集積回路を含むウエハの製造を遂行するために適したマルチチャンバ真空システムを示す。チャンバAは、集積回路を形成しようとする基板のプレクリーニングのためのものである。プレクリーニングの後、基板の上に膜を堆積させることができるよう、基板はCVDチャンバBに移送される。そして、基板は、堆積膜の品質向上のため、堆積後処理チャンバCに移送される。
【0035】
拡散バリアのように膜動作を向上させる物質を膜に「詰める(スタッフする)」ことが望ましい場合は、基板を、この「詰め(スタッフィング)」を行うことができるチャンバDに移送してもよい。例えば、膜は窒化チタン材料の層であってもよく、これには酸素が詰められ、膜のアルミニウムに対する拡散性が低減される。窒化チタンバリア層に酸素を詰める事は、 Ngan らの米国特許第5,378,660号、標題「バリア層及びアルミニウムコンタクト」に開示されている。
【0036】
上述のシステムのいずれを用いても、本発明の態様を実施することができる。しかし、これらいずれのシステムも、ウエハ上への材料の堆積と材料への堆積後処理を行って膜を形成することを、1つのチャンバ内で行う能力を与えるものではない。この堆積後処理には、アニール、酸化、珪素への曝露又はこれらの組み合わせが含まれていることもある。
【0037】
(2.インシチュウ操作のためのチャンバ)図5は、本発明に従った半導体ウエハ処理チャンバ110Aを例示する。ウエハ処理チャンバ110Aは、半導体ウエハ114に対して、一連の堆積のステップと堆積後処理のステップとをインシチュウで行うことを提供する。本発明に従い、図5に示されたチャンバ110Aは、米国特許出願08/567,461号及び08/677,185号に詳細が記載されるような化学気相堆積チャンバであってもよい。
【0038】
ウエハ処理チャンバ110Aは本発明に従い、材料の堆積及び処理を行うために多数のチャンバを用いる必要を排除する。例えば、ウエハ処理チャンバ110Aを用い、ウエハの上に材料を堆積させこの堆積材料をアニールして安定化させ抵抗を低減することにより、ウエハの上に膜を形成してもよい。その結果、膜の形成中に、チャンバ110Aの外部にあるダメージを与えるような不純物にウエハがさらされることはない。
【0039】
図5に示されるように、半導体ウエハ処理チャンバ110Aは、アースにつながっている処理チャンバを有している。処理チャンバ112内では、半導体ウエハ114は、ウエハ支持体116の上に支持されていてもよく、これは、図3(a)及び3(b)に示されるようなウエハ支持体16と同じであってもよい。ウエハ支持体116は、サセプタ、ペデスタル、抵抗ヒータ、又はその他のウエハ114を支持するに適した手段であってもよい。
【0040】
図5では、ウエハ支持体116はサセプタであり、これは、ランプを用いてウエハ支持体116を照射する場合にしばしば用いられるタイプのウエハ支持体である。このサセプタは、陽極酸化アルミニウム製であり、図3(b)の支持プレート18と同様の、従来からのアルミナセラミック支持プレート118である。
【0041】
支持プレート118とウエハ支持体116とウエハ114とは一緒に、カンチレバーのアルミナ支持アーム122の自由端120の上に支持されている。支持アーム122の固定端124は、略垂直に運動可能であるステム126に載置され、このステムはアイソレータ160により処理チャンバから電気的に絶縁されている。この垂直方向に可動であるステム126は、変位機構128の動きの下で、垂直に変位することができる。
【0042】
処理チャンバ112及びその内容物は、従来形のランプ130によって加熱され、このランプは、従来形のクオーツウィンドウ132を介してウエハ支持体116に照射する。半導体ウエハ処理チャンバ110Aは更に、温度測定装置140を有している。温度測定装置はウエハ支持体116につながっており、ウエハ支持体116の温度を感知する。圧力制御ユニット157には、真空ポンプ、圧力ゲージ及び圧力調整弁の全てが含まれている。圧力制御ユニット157は、処理チャンバ112内の圧力を調整し、処理チャンバ112からキャリアガスと反応副生成物の両方を排出する。
【0043】
処理チャンバ112内のウエハ支持体116の上方には、シャワーヘッド136が配置され、これはアイソレータ159によってチャンバから電気的に絶縁されている。シャワーヘッド136には、ガスパネル52からプロセスガスが供給される。ガスパネル52は、コンピュータの形態のガスパネルコントローラ50によって制御される。
【0044】
堆積後アニールを行うため、半導体ウエハ処理チャンバ110Aは、RFソース142を有している。RFソース142はRF電力を、第1の電極として機能するシャワーヘッド136と、第2の電極として機能するウエハ支持体116に印加する。RFソース142は、1MHz未満の周波数を有するシグナルを与える能力を有し、好ましくは周波数350kHzであるシグナルを与える能力を有している。RFシグナルを2つの電極136及び116に与えることにより、他の従来形の半導体ウエハ処理チャンバ、例えばPVDチャンバ等において2つの電極にRFシグナルを与える場合には存在しないような難問を克服する。
【0045】
本発明の具体例では、シャワーヘッド136への過剰な負バイアスの印加を防止するこことが可能である。シャワーヘッド136に過剰な負バイアスが与えられれば、シャワーヘッド136のイオン衝突が増大し、その結果、汚染粒子が発生するようになる。
【0046】
従来形のPVDチャンバでは、ターゲット電極のイオン衝突の量が大きいことが望ましい。従来形のPVDチャンバでは、ターゲット電極が、堆積しようとする材料のターゲットを支持している。このターゲット電極は大きな負バイアスが与えられているため、イオンはターゲット材料と直ちに衝突し、ターゲット材料を堆積させる。
【0047】
更に、従来からのスパッタリングプロセスにおいて、ウエハ支持体に負バイアスを与える事と、ウエハ温度を制御する事は、典型的な場合ではさほど重要ではない。このことは、本発明の具体例においては真実ではない。ウエハ支持体116への負バイアスを制御することは、ウエハ114へ向かうイオン流束を最適レベルとするために望ましい。ウエハ114の温度を正確に設定することは、堆積と、堆積材料の堆積後処理の両方を行うために望ましい。
【0048】
従って、ウエハ支持体116は、RFソース142につながっている機能と、熱電対温度感知機構(図示せず)を収容する機能の、2つの機能を与える。RFソース142は、ウエハ支持体116への負バイアス供給を制御し、熱電対はウエハ114の温度をモニタする。
【0049】
正確なウエハ温度読み出しを得るため、熱電対シグナルからRFソースシグナルを絶縁するようにウエハ支持体116及び支持アーム122が設計される。この絶縁により、熱電対シグナルとRFソースシグナルの両方とも、チャンバ110Aの中で適正に伝達されるため、ウエハ114には適正にバイアスが与えられ、且つ適正に加熱される。ウエハ支持アーム122の詳細は、図6〜14を参照して以下に説明される。
【0050】
(3.ウエハ支持アーム)図6〜9(b)を概略的に参照すれば、ウエハ114がウエハ支持体116の上に支持されており、このウエハ支持体自体は、従来からの「スイスチーズ」アルミナセラミック支持板118に支持されている。薄いクオーツプレート119が、支持板118とウエハ支持体116の間に配置されている。クオーツは、支持板116とウエハ処理チャンバ110A内の他の部品との間のアーク発生を防止する。クオーツプレート119は、ランプ130によって与えられるエネルギーを放射するため、透明である。これにより、ランプ130はウエハ支持体116を速く加熱できるようになる。
【0051】
ウエハ支持体116は、クオーツシールド150によって取り囲まれている。クオーツシールド150は、アルミナ支持板118の上に置かれており(図7に部分的に示される)、ウエハ支持体116の上方に伸び、ウエハ支持体116とウエハ114の両方がその中に存在するウエハ受容ポケットを画成する。ウエハ114をウエハ支持体116から出し入れする際にウエハ114を容易に受容できるよう、クオーツシールド150の上エッジは外側に向かう方に面取りがされている。クオーツシールド150は、ウエハ支持体116のエッジがアーク誘発する事を防止する重要な機能を有している。
【0052】
処理においては、ウエハ支持体116内に設置した熱電対152によりウエハ支持体116の温度を測定する。熱電対152は、ウエハ支持体116の本体の中にぴったりとフィットするアルミナ窒化物シース154の中に設置される。シース154は、熱電対152とウエハ支持体116の本体との間を電気的に絶縁する。シース154は、電気抵抗が高いが、良好な熱伝導体である。シース154は熱容量が低いため、熱的慣性が低く、このため、熱電対152と共に用いることが適している。更に、シース154は、処理チャンバ112の処理環境の中で化学的に安定である。
【0053】
熱電対152は、導電ケーブル156により温度測定装置140に接続される。以下に述べていくように、ケーブル156は、支持アーム122の中心部分に沿って通過し、処理チャンバ112の中であらゆる高周波エネルギーから電気的に絶縁される。
【0054】
熱電対152は、導電ケーブル156にクリンプしたニッケル小球158によって適所に配置される。球158は、キー状のセラミック保持部品162に形成されたスロット160の中に保持される。キー状保持部品162は、ウエハ支持体116の下側の中央突起スタブ166に形成されたグルーブ164の中に鍵状に嵌合する。この構成により、ウエハ支持体116が支持アーム122から離されれば、熱電対152を比較的容易に取り出し交換することができることが確保される。上述の構成により、熱電対をウエハ支持体116の本体の中に適所にしっかりと保持しつつ、ウエハ支持体116と熱電対152の間の電気絶縁を維持することが、確保される。
【0055】
ウエハ支持体116は、中央スタブ166内にねじ止めされる1対のボルト168により支持アーム122に固定される。図8は、支持アーム120が主に、逆U字形セラミック部分170により構成されることを示している。このU字形部分170の水平部を貫くホールのそれぞれの中をボルト168が通っている。ボルトがU字形部分170の水平部上に過剰な負荷を与えることを防止するため、各ヘッドはベルベディアばねワッシャ174によって水平部分から間隔がおかれている。ボルト168のヘッドがセラミックU字形部分170へ過剰な負荷を与える事を防止することは重要であり、何故なら、セラミック、特に薄い部分のセラミックは比較的脆いからである。過剰な負荷の力は、U字形部分170を破壊してしまうことがある。
【0056】
RF導通ストリップ180が、支持アーム122に沿って通っている。ストリップ180は、ウエハ支持体116の下側のスタブ166のところに電気的に接続する。RF導通ストリップ180は、高温でエラストマー的な性質の誘電材料、ポリイミド等、例えばデュポンエレクトリック社から Pyralin の商品名で入手可能な材料等、によりコーティングされている。
【0057】
このポリイミドコーティングが、RF導通ストリップ180に電気的絶縁を与える。加えて、RF導通ストリップ180は、セラミックアイソレータ182により導電ケーブル156から電気的に絶縁される。セラミックアイソレータの詳細は、図10(a)及び10(b)を参照して以下に説明する。更に、RF導通ストリップ180は、逆U字形部分170の「脚」により、またアイソレータ184により、処理チャンバ112の内部から絶縁される。アイソレータの詳細は、図11(a)及び11(b)を参照して下記に説明する。
【0058】
組立中に、熱電対152及びこれに係るシース154をウエハ支持体116内に挿入する。次いで、熱電対のリードケーブル156をU字形部分170の中に供給する。ボルト168を用いて、ウエハ支持体116をU字形部分170の上に留める。導電ケーブル156の上にアイソレータを配置して、導電ケーブルをRFストリップ180から絶縁する。そして、RF導通ストリップ180はアイソレータ182の上に導かれ、また、アイソレータ184はRF導通ストリップ180の上に配置される。
【0059】
その後、U字形部分170の「脚」の自由端に近接して形成されたグルーブ188の中に平坦なセラミックリテーナ186を挿入する。リテーナ186は、U字形部分170の本体の中に配置された様々な部品全てに対してのリテーナとして機能する。リテーナ186の詳細は、図12に示される。
【0060】
図9(a)及び9(b)に示されるように、支持アーム122は、比較的細身の部分に、その自由端120及び固定端122において大きくなった部分を有する構成を有している。支持アーム122の自由端120は2つのボルト穴172を有し、これらは、自由端120の上面に形成されたスロット190のそれぞれいずれかの側に形成されている。このスロット190は、ウエハ支持体116の底部のスタブ166から下向きにウエハ支持体116まで伸びるキー状構成物192を受容する。このキー状構成物192は、スロット190に嵌合し、ウエハ支持体116が支持アーム122上に配置されたときにこれを更に安定にする。キー状構成物192の詳細は、図8及び14に示される。支持アーム122の固定端124は、垂直可動ステム194に固定されるが、その詳細は図13を参照して説明する。
【0061】
図10(a)及び10(b)から、アイソレータ182がU字形チャンネルの形態でありその中に導電ケーブル156が入っていることがわかる。このU字形チャンネルは、大きくなった部分196を一方の端部に有している。この大きくなった部分196は、支持アーム122の固定端124でRF導通ストリップ180をカバーする。
【0062】
図11(a)及び11(b)に示されるように、アイソレータ184は大きくなった部分198を有し、この部分は、支持アーム122の自由端120の中に比較的しっかりとフィットしている。大きくなった部分198はその中にチャンネル200を有している。装置を組み立てるときは、RF導通ストリップ180がアイソレータ184の上面202の上に置かれている。また、RF導通ストリップ180は、チャンネル200の内側の等高線に沿うように変形する。この構成は図7に示されており、RF導通ストリップ180を接続ボルト168から分離させる。図7から理解されるように、適切なスペーサー部品204がチャンネル200の中にフィットするように具備され、RF導通ストリップ180とボルト168の間に電気的絶縁を与える。
【0063】
リテーナ186の詳細は、図12に例示される。リテーナ186は、略スプーン状であり、支持アーム122の自由端120に形成されたグルーブの中に受容されるようなサイズを有する大きくなった部分206を有している。組立中は、リテーナ186は、支持アーム122の自由端120からスロット188の中に挿入される。
【0064】
支持アーム122の固定端124は、図13に例示されるように、ステム194に接続される。ステム194は、中空のチューブであり、その上端で広がってフランジ210を画し、このフランジに、支持アーム122の固定端124がボルト212によりボルト留めされる。ボルト212とセラミック固定端124の間に過剰な負荷力が働くのを防止するため、各ボルト212と支持アーム122の固定端124の間に皿ばねワッシャ214が与えられる。
【0065】
ステンレス鋼のベローズ216が、フランジ210と処理チャンバ112の下壁の間に配置される。ベローズ216により、支持アーム122が垂直上下に動くことができつつ、同時に、これが処理チャンバ112の壁218を貫いて通過するときにステム194の周りにシールを与えることが可能となる。
【0066】
前に指摘したように、ステム194は中空のチューブの形態である。ステム194を形成するチューブの内側に、非導電チューブ220が配置される。非導電チューブ220は、典型的には、ポリイミド製であり、処理チャンバ112と中空RF導通チューブ222との間を電気的に絶縁する。RF導通チューブ220は、RFソース142とRF導通ストリップ180とに接続される。熱電対152と温度測定装置140の間を連通させる導電ケーブルが、RF導通チューブ222に形成された中心孔を下に通過する。
【0067】
図14は、図13と共に、RF導通ストリップ180とRF導通チューブ222との間をどのように接続するかを例示する。図13に示されるように、RF導通チューブ222はその上端で広がり、円形のフランジ224を画する。RF導通ストリップ180は、図14に例示されているが、円形の導電フープ226のところで終了している。支持アーム122が組み立てられるとき、フープ226はRF導通チューブ222の円形フランジ224の上に置かれている。
【0068】
これにより、ウエハ支持体116につながっているRF導通ストリップ180へのRF導通接続が与えられる。この接続によって、支持アーム122の組立及び分解が容易になる。また、この接続により、支持アーム122の固定端124がステム194のフランジ210の上に配置される場合に、決まった量の(ステム194の縦のアクセスの上方の)回転の自由度が与えられる。
【0069】
(4.整合回路網)本発明に従い、RFソースは、ウエハ支持体116とシャワーヘッド136の両方に、整合回路網145を介して結合する。整合回路網145は、抵抗器/インダクタ/キャパシタの回路網である。整合回路網145は、与えられた周波数においてソースにより与えられる電力を最大にするため、負荷インピーダンスをソースインピーダンスにマッチングさせる。また、整合回路網145は、RF電力をウエハ支持体116とシャワーヘッド136に分け、シャワーヘッド136とウエハ支持体116に与えられるRFシグナルの位相シフトを設定する。
【0070】
本発明の一具体例で用いられる整合回路網145が、図15(a)に例示される。図15(a)に示される整合回路網145は、負荷整合トランス70と、2つのインダクタ80,82と2つのキャパシタ72,74とを有している。負荷整合トランス70は、一端でRFソース142とアースに、他方の端でインダクタ80及び82に結合している。インダクタ80はキャパシタ72を介してシャワーヘッド136に、インダクタ82はキャパシタ74を介してウエハ支持体116に、それぞれ結合する。
【0071】
負荷整合トランス70は、1次巻き線と2次巻き線の比が1:1〜1:4であってもよく、1:1.22が典型的である。本発明に従い、負荷整合トランス70の1次コイルは18巻きであってもよく、また、負荷整合トランス70の2次巻き線は47巻きであってもよい。インダクタ80及び82はそれぞれ、インダクタンスが50μHであってもよく、キャパシタ72及び74はそれぞれ、キャパシタンスが0.01μFであってもよい。
【0072】
負荷整合トランス70の巻き線比を変えることにより、シャワーヘッド136とウエハ支持体116との間のRFシグナルの分解及び移動シフトを変えることができる。あるいは、図15(b)に示されるように、負荷整合トランス71が選択可能接地タップ78を有していてもよい。この選択可能接地タップ78により、接地タップの位置を変えて選択して、シャワーヘッド136とウエハ支持体116との間のRFシグナルの分解及び移動シフトを変えることができるようになる。
【0073】
整合回路網145のまた別の具体例が図15(c)に示される。キャパシタ72とシャワーヘッド136は両方とも、誘導チョーク83を介してアースにつながっている。キャパシタ74とウエハ支持体116は両方とも、誘導チョーク84を介してアースにつながっている。誘導チョーク83及び誘導チョーク84はそれぞれ、500μHである。この具体例を用いる場合は、シャワーヘッド136とウエハ支持体116にはDCバイアスが与えられなくなる。
【0074】
プラズマアニール及び/又は酸化のために処理チャンバ112を用いる場合には、整合回路網145を介してシャワーヘッド136とウエハ支持体116をRFソース142に結合することは有利である。シャワーヘッド136とウエハ支持体116におけるRFシグナルの位相シフトを設定して、堆積後処理中に生成するプラズマの均一性を向上させる。シャワーヘッド136のシグナルとウエハ支持体116のシグナルの間の位相の関係がずれれば、プラズマ中のイオンが、接地されている処理チャンバ112よりもウエハ支持体116の方へと誘引される。また、この位相のずれは、シャワーヘッド136とウエハ支持体116の間の電圧ポテンシャルを上げるため、ウエハ114へ向かうイオン流束の均一性を向上させる。
【0075】
シャワーヘッド136とウエハ支持体116へのシグナルの電力分割を調節することにより、ウエハ114とシャワーヘッド136のイオン衝突の強度を制御することが可能となる。プラズマ生成中にウエハ支持体116に負のバイアスを与えれば、一般に、ウエハ114へ向かうイオンの加速度が上がる。ウエハ支持体116に過剰な負バイアスを与えれば、ウエハ114にダメージを与えるようなエネルギーでイオンがウエハ114に衝突するようになる。プラズマ生成中にシャワーヘッド136に過剰な負のバイアスを与えれば、一般に、イオンがシャワーヘッド136に衝突するようになり、汚染粒子が発生する。
【0076】
本発明の具体例においては、RFソース145のシグナルの電力分割の選択は、チャンバ110Aのオペレータにより行うことができる。シャワーヘッド136とウエハ支持体116の負バイアスが前述の汚染及びウエハにダメージを与えるイオン衝突を生じる可能性を最小にするように、この電力分割を設定することができる。
【0077】
本発明に従い、ウエハ支持体116とシャワーヘッド136とに供給されるシグナルが同じ電力及び周波数を有するが位相は180度ずれるように、整合回路網145の構成を与えてもよい。これにより、処理チャンバ112内のガスをプラズマへ変換するため、RF電力を効率よくシャワーヘッド136とウエハ支持体116に結合させる。
【0078】
RF分割電力の構成の具体例は、 Sugiyama らへの米国特許第5,314,603号、標題「チャンバ内の電極において実際のRF電力を検出し制御することが可能なプラズマ処理装置」や、Ogle らへの米国特許第4,871,421号、標題「プラズマエッチングシステムのための分割位相ドライバ」を参照して理解することができる。
【0079】
(5.チャンバ動作)堆積プロセス中は、ガスパネルコントローラ50により、ガスパネル52がTDMAT等のCVDプロセスガスをシャワーヘッド136へ供給するようになる。シャワーヘッド136を介してプロセスガスが処理チャンバ112内に導入され、加熱されているウエハ114へと輸送される。その結果、材料の薄い層がウエハ114の上面に堆積する。TDMATを用いる場合は、形成される材料の薄膜は窒化チタンTiN である。
【0080】
半導体処理チャンバ110A内で行われる堆積後処理の間、下記のように、アニール、酸化又は珪素への曝露を行ってもよい。プラズマアニールプロセス中は、ガスパネルコントローラ50の制御の下、ガスパネル52により、窒素、水素、アルゴン又はこれらの混合物等のプラズマガスをシャワーヘッド136に供給する。堆積後の酸化プロセスにおいては、ガスパネルコントローラ50の制御の下、ガスパネル52により、O2又はN2/O2の混合物等の酸素ベースのガスをシャワーヘッド136に供給する。珪素曝露プロセス中は、ガスパネルコントローラ50の制御の下、ガスパネル52により、シラン(SiH4)等の珪素ベースのガスをシャワーヘッド136に供給する。
【0081】
プラズマアニールプロセスと酸化プロセスでは共に、シャワーヘッド136により供給されるガスは、ウエハ114と反応する正荷電イオンを含むプラズマへと変換される。珪素曝露プロセスでは、ウエハ114及びウエハ支持体116の加熱によって、ガスにエネルギーが与えられる。堆積や堆積後処理の何れにおいて用いられるいかなるキャリアガスも、堆積や堆積後処理の副生成物と共に、圧力制御ユニット157によって処理チャンバ112から排出される。
【0082】
(6.代替的なチャンバの構成)図16は、本発明に従ってプロセスを遂行するための本発明の代替的な具体例を内包する半導体ウエハ処理チャンバ110Bを例示する。半導体ウエハ処理チャンバ110Bは、シャワーヘッド136がRFソースと結合していない点を除いて、図5に示されるチャンバ110Aと同じである。RFソース62は、整合回路網63を介してウエハ支持体116に結合し、また、シャワーヘッド136は接地されている。
【0083】
整合回路網63は、ウエハ支持体116の負荷インピーダンスをRFソース62のインピーダンスに整合させるための従来からの手段を用いている。この整合により、RFソース62によって与えられる電力が、所与の周波数において最大になる。本発明に従って、ウエハ114に過剰な負バイアスを与えることなくプラズマアニールや酸化を行うために十分なRFエネルギーを提供するよう、整合回路網63及びRFソース62がRFシグナルをウエハ支持体116に提供できるように構成されてもよい。
【0084】
図17は、本発明の代替的な具体例を内包し本発明に従ってプロセスを遂行することができる半導体ウエハ処理チャンバ110Cを例示する。半導体ウエハ処理チャンバ110Cは、シャワーヘッド136がRFソース143に、ウエハ支持体116がRFシグナルソース144にそれぞれ別々に結合している点を除いて、図5に示されるチャンバ110Aと同じである。RFソース143は、整合回路網146を介してシャワーヘッド136に結合し、RFソース144は、整合回路網147を介してウエハ支持体116に結合している。
【0085】
整合回路網146はシャワーヘッド136を、整合回路網147はウエハ支持体116を、それぞれソースインピーダンスに整合させるための、従来からの手段をそれぞれ用いている。この整合により、各ソースによって与えられる電力が、所与の周波数において最大になる。好ましくは、シャワーヘッド136に与えられるRFシグナルとウエハ支持体116に与えられるRFシグナルの間の位相シフトと電力分割を制御できるよう、RFソース143と144とはつながれている(図示せず)。本発明に従い、ウエハ支持体116へのRFシグナルとシャワーヘッド136へのRFシグナルを、同じ電力及び周波数で且つ位相が180度ずれるように供給できるよう、整合回路網146及び147とRFソース143及び144を構成してもよい。
【0086】
本発明のまた別の具体例では、図5、図16又は図17の何れのウエハ支持体116も、抵抗ヒータを有していてもよい。この抵抗ヒータはウエハ114を支持し且つウエハ114加熱のため抵抗コイルを内包する。
【0087】
図5、図16及び図17に示される半導体ウエハ処理チャンバを用いて、数多くのプロセスを行ってもよい。本発明の更なる特徴においては、拡散バリアを形成するためのプロセスが与えられる。本発明のプロセスは前述の諸装置において行うことが有利であることが認識される。しかし、ここに開示する方法は、適切なチャンバを何個でも利用して行うことができることが、更に認識される。
【0088】
(B.膜の構築)
(1.概説)本発明の具体例は、集積回路において改良された抵抗値を有する膜を構築するものである。ここで構築できる膜の1つは、拡散バリアである。しかし、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を抑止する目的で、本発明の具体例を用いて他の膜を構築することもできる。
【0089】
本発明に従って、半導体ウエハ等の基板上に、材料の層が堆積される。次いで、この材料にはプラズマアニールが施され、この堆積材料の抵抗率が低減される。続いて、この堆積した層の上に、材料の新たな層が堆積する。この材料をまたアニールして、材料の抵抗率を低減させる。材料の堆積及びアニールを数回繰り返して、ウエハの上面に配置される膜を形成してもよい。
【0090】
本発明の別の具体例では、分子で詰められる(スタッフされる)べきウエハ上の材料をアニールする。このスタッフィングを行うことにより、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を抑止する材料の能力が向上する。アルミニウムに対するバリアとしての膜の機能を向上させるため、アニールを施した材料に酸化を施すことによりスタッフィングを行ってもよい。銅に対するバリアとしての膜の機能を向上させるため、アニールを施した材料をシラン(SiH4)に曝露することによりスタッフィングを行ってもよい。あるいは、3元素の窒化珪化メタルである材料を堆積させることにより、銅の拡散を低減してもよい。
【0091】
本発明のまた別の特徴は、ウエハ上の膜の堆積、アニール及びスタッフィングに関して、インシチュウで行ってもよいことである。
【0092】
(2.膜抵抗率の低下のためのアニール)本発明に従い、その抵抗率を下げるように、ウエハ上に材料の層を堆積させこの材料の層をプラズマアニールすることにより、ウエハ上に膜を形成してもよい。
【0093】
ウエハ上への材料の膜の堆積は、従来のCVDを行うことができるチャンバ、例えば図3(a)のチャンバ10、図5のチャンバ110A、図16のチャンバ110Bや図17のチャンバ110C等において、行うことができる。窒化チタン材料の堆積は、メタロ有機チタン化合物、好ましくはテトラキス(ジアルキルアミド)チタン(Ti(NR2)4)を用いて実現することができる。
【0094】
キャリアガス、例えばヘリウム、アルゴン、窒素又は水素が、チタン化合物をチャンバ内に同伴させる。チャンバ内では、チタン化合物は、別の場所で生成した反応性種、例えばハロゲンラジカル、アンモニウムラジカルや水素ラジカル等と反応する。窒化チタンの堆積を促進するため、ウエハ温度を約200〜600℃に設定し、処理チャンバの圧力を約0.1〜100トールに設定する。
【0095】
堆積した窒化チタンは、少なからぬ量の炭素を含有しているため、窒化チタン膜は化学反応性を有することとなる。従って、この膜を空気やその他の酸素含有ガスに曝露すれば、膜に酸素が吸収される。この酸素吸収は調節できないため、膜の安定性は損なわれ、膜の抵抗率は悪化上昇する。このことにより、ウエハ上に形成するデバイスの信頼性が低くなることがある。
【0096】
空気への曝露後、窒化チタン膜のシート抵抗率は、約10,000μΩ−cm/sqから約100,000μΩ−cm/sqの値まで上昇する。これは、堆積した窒化チタンが導電性のコンタクト及びバイアに対するバリアとして機能している場合に、甚だ望ましくない。バリア層に対しては、抵抗率は、約1,000μΩ−cm/sq未満のオーダーであることが望ましい。
【0097】
本発明に従い、高エネルギーイオンを含む不活性プラズマによって、堆積窒化チタン膜をプラズマアニールする。DCバイアス電圧をウエハに印加することにより、これらイオンが得られる。このDCバイアス電圧のウエハへの印加は、ウエハ支持体に結合して前駆体ガスからプラズマを生成するに十分な電力を与える低電力のRFソースによって行われてもよい。ウエハへの電圧の印加は、約100〜1,000ボルトであれば十分である。例えば、100ワットのRF電力を有する400ボルトを印加してプラズマを生成してもよい。これは高エネルギーイオンの生成に十分であり、また、経時的に安定であるように窒化チタン膜をパッシベーション又は密度化させるに十分である。
【0098】
本発明に従ってアニールを施した窒化チタン膜を、空気、酸素又は水蒸気に曝露した場合、酸素は吸収されないか、あるいは、ウエハにバイアス電圧を印加しない場合に較べて著しく少ない量しか吸収されない。本発明に従って堆積しアニールを施した窒化チタン膜は、メタロ有機チタン化合物の従来からの熱CVDによって生成した窒化チタン膜に較べて、結晶性が高く、窒素をより多く含み、酸素及び炭素の含有量が低い。本発明に従ってアニールを施した堆積窒化チタン膜は、低く且つ安定なシート抵抗率も有している。
【0099】
本発明の厳密なメカニズムは知られるところではない。しかし、バイアスが与えられている基板上の堆積材料に高エネルギーイオンが衝突することにより、膜の密度が高められると考えられる。
【実施例】
【0100】
(a.窒素プラズマ)本発明の1つの具体例では、堆積窒化チタンをアニールするためのプラズマの生成に用いるガスは、いかなるガスであってもよいが、酸素及び炭素を含有しないガス、例えば、窒素、アンモニアやアルゴン等であることが好ましい。窒素は、窒化チタン材料のパッシベーションに最も有効である。あるいは、イオンソース等の非ガス種から生成したイオンを、堆積材料に衝突させてもよい。堆積窒化チタンのプラズマ処理は、堆積材料の粒子の性能、ステップカバレージ、堆積速度やバリア性能に悪影響を与えない。
【0101】
従来からの真空化学気相堆積チャンバ10において、以下の条件の下に、窒化チタンをシリコンウエハ上に堆積した。処理チャンバ12内の圧力は0.45トールであり、ウエハ支持体16の温度を420℃に設定した。ヘリウム流量は、Ti(NR2)4のバブラを介して40sccmを採用し、窒素希釈の流量は100sccmに設定した。窒化チタンの堆積に続いて、アルゴンパージガスをチャンバ内に200sccmで流入させた。窒化チタンを堆積させるための従来からのCVDプロセスは、 Sandhu らに発行の米国特許第5,246,881号に開示されている。開示されている。
【0102】
この結果、毎分約425オングストロームの堆積速度で窒化チタンが堆積した。この結果堆積した窒化チタン膜は、厚さが非常に均一であり、4枚のウエハの厚さ変動は3.03%であった。しかし、シート抵抗率(ウエハ4枚の平均)は、11,360μΩ−cm/sqと高かった。また、抵抗率は不安定であった。
【0103】
図18は、堆積窒化チタンのシート抵抗率(Ω/sq)の時間(hour)に対するグラフである。四角(□)で示される測定値は、所望の膜厚が得られた後堆積チャンバから取り出した膜から得られた値である。丸(○)で示される測定値は、堆積チャンバから取り出す前に温度150℃に冷却した膜から得られた値である。丸で示される膜のシート抵抗率は四角で示される膜のそれよりも低いが、両方の膜ともに安定性は低く、シート抵抗率は経時的に上昇している。このような特性は、拡散バリアには望ましくない。
【0104】
堆積窒化チタン膜にラザフォード後方散乱測定を行った。得られたスペクトルは図19に与えられる。炭素のピークC、窒素のピークN及び酸素のピークOが、珪素界面のものとしてスペクトル中に示される。窒化チタン中の様々な物質の含有量は、以下の通りである。炭素含有量は約30%、窒素含有量は約24%、酸素含有量は約25%、チタン含有量は約23%である。これは、堆積窒化チタン膜が比較的高いレベルの炭素及び酸素の不純物を含んでいることを示すものである。
【0105】
窒化チタンのシート抵抗率を低減するための試みとして、堆積の操作中に様々なガスを添加することにより、窒化チタンの堆積方法を変えた。その結果は図20の表Iに当てられる。表Iの「コントロール」欄のチタンは、この直前で述べた方法を用いて堆積したものである。窒化チタンのシート抵抗率を下げるために最も成功した試行は、堆積中にNF3(7sccm)の流入を含めた試行である。これにより、シート抵抗率が2,200μΩ−cmに下げられた。しかし、NF3処理材料のラザフォード後方散乱スペクトル(図23参照)では、膜中に弗素が不純物として包含されていることが示されている。弗素の包含は望ましいことではない。
【0106】
次に、堆積前及び堆積後のガス流入及びプラズマ処理を用いて、このような処理が堆積窒化チタンのシート抵抗率に影響するか否かを求めた。2つのケースでは、窒化チタンの化学気相堆積の前後にプラズマを点火した。プラズマの生成は、100ワットの低電力で行われ、窒化チタン堆積を受ける基板シリコンウエハへバイアスを与えなかった。その結果を、図21に示される表IIにまとめた。堆積前処理及び堆積後処理のいずれも、堆積窒化チタンのシート抵抗率にさほど影響を与えなかった。このように、プラズマ中でウエハにバイアス電圧を印加することにより、シート抵抗率を下げ且つこれを経時的に安定させることは、甚だ予測困難である。
【0107】
本発明の特徴を、以下の実施例によって更に説明するが、本発明はここに記載される詳細事項に制限されると解されるものではない。窒化チタン層を有するシリコンウエハ基板にバイアス電圧400ボルトを印加する一連のテストを行った。窒化チタン層のウエハ上への堆積は、図16のチャンバ110Bで行い、約100ワットのRF電力を印加してプラズマによりアニールを行った。堆積とバイアス印加を連続的にサイクルさせた。これら2つのステップを〜5回サイクルさせた。堆積物の厚さ、サイクルの回数及び経時的に得られる抵抗率を、図22の表IIIに与える。「コントロール」は、停止せずに5ステップで堆積させたものであり、堆積と他の間にはプラズマ中のアニール行わなかったものである。
【0108】
表IIIのデータによれば、窒化チタンの堆積後アニールを行うことにより、窒化チタンの抵抗率が著しく低減し安定性が劇的に向上した事を示している。表IIIの各実施例において、「コントロール」のケースに較べて抵抗率及び抵抗率の経時変化が向上している。アニールを施した窒化チタンの初期抵抗率は低く、経時的に抵抗率はほとんど上昇しない。
【0109】
図24は、実施例1の窒化チタン膜のオージェ分析のグラフである。このグラフは、膜のスパッタエッジ深さ(オングストローム)に対する膜中の元素の原子濃度を表している。窒化チタンにバイアスが30秒間2回与えられた(表III参照)。図24に示されるように、チタン濃度は安定に維持されるが、このグラフによれば、炭素及び窒素が低いままで膜表面の窒素濃度が高いことが明らかに示される。この炭素及び酸素の不純物レベルの低減は、深さ約100オングストロームに対して維持される。深さ400オングストロームでは、膜が先ず高エネルギーイオンでアニールを受ければ、窒素濃度が上昇し、他方炭素及び酸素の濃度は低下する。図24のグラフは、本発明に従ったアニール後の膜の元素組成における変化も示している。深さに関する元素分析は、図25の表IVに示される。
【0110】
バリア層には、厚さ100オングストロームの窒化チタン層が適しているため、当該堆積後アニールは、窒化チタンバリア層の安定性を高め抵抗率を下げるのに理想的である。堆積後アニールを行った実施例7の窒化チタンに存在する表面元素を示すオージェスペクトルが、図26に示される。このスペクトルには、堆積した膜のバルクは窒化チタンであり少量のチタンが存在していることが示される。表面には炭素及び酸素が不純物として存在している。
【0111】
しかし、図27に示されるように、実施例7の膜のオージェスパッタリング分析では、膜のバルクにおいて酸素濃度が低いレベルへと著しく低下していることが示される。酸素以外の主な不純物は炭素だけであるが、これは当該アニールプロセスによって影響を受けないままである。深さ200オングストロームにおいては、膜中の元素の濃度(原子パーセント)は、酸素2.8%、炭素20.9%、チタン38.8%、窒素37.5%である。珪素は存在しなかった。
【0112】
比較のため、コントロール膜の表面オージェ分析を図28に示し、コントロル膜のスパッタオージェ分析を図29に示す。コントロール膜の酸素濃度は著しく高い。深さ200オングストロームにおいては、コントロール膜の元素の濃度(原子パーセント)は、酸素10.8%、炭素20.7%、チタン41.0%、窒素27.5%である。珪素は存在しなかった。
【0113】
実施例8の窒化チタン膜の表面オージェ分析を図30に示し、深さ(オングストローム)に対するスパッタオージェ分析を図31に示す。この膜の酸素濃度は低かった。深さ43オングストロームにおいては、元素の濃度(原子パーセント)は、酸素3.1%、炭素13.7%、チタン40.0%、窒素43.2%である。珪素は存在しなかった。
【0114】
ラザフォード後方散乱を用いて、コントロール窒化チタン堆積膜と実施例の窒化チタン堆積膜の濃度(原子/cm3)を求めた。これらのデータを図32の表Vにまとめた。表Vのデータからわかるように、高エネルギーイオンによる堆積窒化チタンの衝突を含んだプラズマアニールにより、窒化チタン膜の濃度が、コントロール膜に較べて増加する。
【0115】
本発明は、窒化チタンバリア膜に限定されるものではない。本発明は、アルミニウム、銅、タンタル、五酸化タンタル、珪化物、その他窒化物等の他の物質の性能を向上させ化学組成を向上させるものでもある。例えば、二元素の窒化メタルMXNY 及び三元素の窒化珪化メタル MXSiYNZ の性質及び化学組成(MはTi、Zr、Hf、Ta、Mo、W及びその他のメタル)は、本発明の特徴を実行することにより向上させることができる。ステンレス鋼、メタル、酸化物、ガラスや珪化物等、シリコンウエハ以外の基板を用いることもできる。
【0116】
堆積とプラズマアニールは、チャンバ110A、110B及び110C等の前駆体ガス及びプラズマの機能を有するCVDチャンバ1つの中で行うことができる。チャンバ110A、110B又は110Cを用いる場合は、窒化チタンを堆積した後同じチャンバでアニールを行うことができる。あるいは、図3(a)に示されるような装置を本発明の実施に用いる場合は、チャンバ1つ以上を使用してもよい。チャンバ1つ以上を用いる場合は、基板をCVDチャンバ10からからアニールチャンバへ移送させる間、真空状態を維持することが好ましい。
【0117】
堆積窒化チタンのプラズマアニールをチャンバ110Bで行う場合は、以下の手順をその後に行うことができる。ウエハ114はウエハ支持体116上に置かれ、シャワーヘッド136から約0.3〜0.8インチ、好ましくは0.6〜0.7インチの間隔が置かれている。約350kHz、電力100〜500ワットでRFシグナルソースから基板にエネルギーを印加することにより、エネルギーが与えられたイオンが得られる。これは言い換えれば、ウエハ114の表面積の平方センチメートル(cm2)当たり約0.3〜1.6ワットということである。
【0118】
ウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に負の電力が与えられ、チャンバ壁が接地されて、50〜1,000ボルトのDC自己バイアス電圧が誘起される。ウエハ114と接地の間には、自己バイアス電圧が200〜800ボルトであることが好ましい。これは、イオンを誘引してウエハ114表面に高いエネルギーで衝撃を与えるに十分である。その結果、堆積窒化チタンは、パッシベーション又は密度化が施され、経時的に安定を維持するようになる。
【0119】
図33は、本発明に従って形成した窒化チタンの2つの異なる層に対して、空気曝露時間に対する原子酸素濃度のグラフである。これら両方の窒化チタン膜は、同じチャンバ内で堆積しプラズマアニールが施された。このチャンバは、上述のチャンバ110Bと同様のものである。
【0120】
各膜について、堆積とアニールのサイクルを繰り返すことにより、厚さ200オングストロームの窒化チタン膜が形成された。これを行うには、100オングストロームの層を堆積し、次いで、アニールを行い、この後、第2の100オングストロームの層を堆積しアニールする。アニールは、N2プラズマを用いて行った。原子酸素のパーセンテージは、2つの膜に対して、24時間の期間繰り返し測定され、これはプロット312に反映されている。
【0121】
プロット312からわかるように、酸素の濃度は最初は約2%であった。24時間後の濃度は2.5%未満であり、堆積膜が非常に安定であったことが示された。これに較べ、プロット314はアニールを行わない従来からのCVDを用いて堆積した窒化チタン膜について測定した酸素濃度測定を例示する。これらの膜は、最初から高い酸素濃度(15%)を有していただけでなく、高い速度で酸素を吸収していた。また、従来技術により形成した膜は安定性が低く、抵抗率は経時的に著しく上昇した。比較のため、図34における点316は、物理気相堆積により堆積した窒化チタン膜の典型的な酸素濃度(約1%)を例示する。
【0122】
図34(a)〜(c)は、それぞれ別の膜についてのXPSスペクトルのグラフである。図34(a)は、200オングストロームの非アニール膜のスペクトルを表し、316において有機結合炭素のレベルが比較的高いことを示している。これとは対称的に、図34(b)及び34(c)の作成に用いた200オングストローム膜の測定結果は、それぞれ317,318において、有機結合炭素のレベルが下がったことを示している。図34(b)のために用いた膜の形成は、100オングストロームの窒化チタン層を堆積し、本発明に従ってプラズマアニールし、その後第2の窒化チタンの100オングストローム層を堆積しアニールすることにより行われたことを、注記すべきである。図34(c)は、窒化チタンの50オングストローム厚の層4つを連続的に堆積及びアニールしたものである。
【0123】
図35(a)及び(b)は、本発明による向上を更に例示するものである。図35(a)は、堆積しN2でプラズマアニールしたCVD窒化チタン膜を用いたバイアの抵抗率を示す。これらバイアは、先ずCVD窒化チタン接着層によってラインが形成され、その後、CVDタングステンプラグにより充填された。図35(a)は、膜堆積厚に対するバイア抵抗率のグラフである。このグラフは、アスペクト比が約2.5の0.5μmバイアについて作成されたものである。図示のように、プラズマアニール膜についてバイア抵抗率(プロット320)は、非アニールの従来法で堆積した膜(プロット322)よりも実質的に低い。比較のため、PVD堆積窒化チタン膜が矢印324によって例示される。
【0124】
窒化チタン厚さに対するサリサイドコンタクト抵抗を表す図35(b)のグラフにより、同様の向上が例示される。このグラフは、アスペクト比が約2.5の0.5μmバイアについてプロットしたものである。プロット330は、本発明に従ってN2プラズマ処理により作ったコンタクトの抵抗を示す。プロット330は、従来からのCVD堆積によって得られらたコンタクト抵抗を表すプロット332で例示される抵抗よりも実質的に低い抵抗を例示する。比較のため、PVDチタンコントロールコンタクト抵抗が、矢印334によって与えられる。
【0125】
図36は、所望の厚さの膜1つを形成するために用いる堆積及びアニールのサイクルの数の効果を例示する。図36では、総厚みが200オングストロームの窒化チタン膜が化学気相堆積によって堆積されN2プラズマでアニールされた。プロット340で例示される第1のケースでは、プロセスは4サイクルで行い、この4層のそれぞれにおいては、厚さ50オングストロームの層を堆積させプラズマアニールを次の層の堆積の前に行った。プロット342で例示される第2のケースでは、100オングストロームの2層を堆積し別々にアニールした。
【0126】
プロット340で示されるケースでは、曲線342で与えられるケース(700〜800μΩ−cm)よりも低い抵抗率(500〜600μΩ−cm)が示される。しかし、プロット340及び342の両方で示される膜の抵抗率は、上限である1000μΩ−cmよりも低い。また、各ケースにおいて8日後の抵抗率の上昇は、両ケースにおいてほぼ同じであり5%未満であった。
【0127】
プラズマ処理プロセスの圧力が膜の抵抗率とDCバイアス電圧に及ぼす影響を調べるため、更にテストを行った。このテストの結果は、図37に例示される。図37は、印加電力が約20ワットでプラズマ中で60秒処理を行った200オングストロームの窒化チタン堆積物に対して作成したものである。
【0128】
プロット350に示されるように、本発明のプロセスにより生成した膜によって示される向上した抵抗率は、プロセス圧力には概略的には依存しない。しかし、プロセス圧力が200ミリトールよりも低い場合では、低い抵抗率が実現されなかった。
【0129】
プロット352に例示されるように、プロセス圧力が約200ミリトールから1000ミリトールへと上昇するにつれて、プラズマ全体で誘起されるDCバイアスは実質的に下がった。その後、約150ボルトで比較的一定に維持された。
【0130】
図38(a)は、処理時間及び周波数の膜抵抗率への影響を例示する。総膜圧が400オングストロームの4つの異なる膜の比較を行った。プロット360で示される膜は、最初に50オングストロームの層を1層堆積及びアニールし、その後、25オングストロームの層を6層堆積及びアニールして、形成した。これらの層それぞれは、堆積させた後に次の層の他の前にアニールを施したものである。プロット362で示される第2の膜は、50オングストロームの層を4層それぞれ堆積及びアニールして形成したものである。プロット364で示される第3の膜は、100オングストロームの層を2層それぞれ堆積及びアニールして形成したものである。プロット366で示される最後の膜は、200オングストロームの層1層を堆積させた後、本発明に従ってアニールして形成したものである。
【0131】
図38(a)のこれらのプロットから、数多くの観測が可能である。最終的な層を作るための個々の層の数が多くなれば、抵抗率が低くなるだろう。また、個々の層が薄くなれば、プラズマ処理の時間が抵抗率に与える影響が小さくなる。図38(b)は、プラズマ処理時間の膜抵抗率に及ぼす影響についての別の例を例示する。
【0132】
抵抗の低減及び膜の安定性の上昇に加えて、本発明の方法を他の目的に用いることができるだろう。N2プラズマを用いてアニールを施した膜の分析は、膜の表面近くの窒素の量が上昇することを示した。これは、窒素イオンの一部が膜中に埋め込まれ膜と反応したと思われる。従って、プラズマからのイオン/分子を膜中に増やすために、このアニールプロセスを用いることができるだろう。更に、このプロセスを用いて、膜から不要な分子/イオンを排除ないし交代させることができるだろう。図34(b)〜(c)は、膜に衝突したイオンが炭素原子を追い出すことを示している。
【0133】
(b.窒素/水素プラズマ)本発明の別の具体例では、窒素と水素の混合ガスを用いて、ウエハ114上に堆積した膜のプラズマアニール中にプラズマを生成する。第1のステップとして、従来からの熱CVD処理を用いて、ウエハ114上に窒化チタン膜を堆積させる。その後、窒素と水素の混合ガスを有するガスから生成したプラズマを用いて、堆積材料をアニールする。
【0134】
チャンバ110A、110B又は110Cの何れを用いてこれらのステップを行う場合は、CVD処理及びアニールは同じチャンバ内で行ってもよい。あるいは、1つのチャンバで窒化チタンをウエハ114上に堆積させ、堆積後プラズマアニールのためにウエハ114を別のチャンバ内に移送してもよい。
【0135】
チャンバ110Aを用いる場合は、ウエハ114をウエハ支持体116上に配置させ、シャワーヘッド136から約0.3〜0.8インチ、好ましくは0.6〜0.7インチ間隔をとる。上述の如く、窒化チタン膜の層をウエハ114上に堆積させてもよい。最初に堆積させる窒化チタン層は、厚さ50〜200オングストロームであってもよい。
【0136】
堆積が完了した後、堆積材料のプラズマアニールを開始させる。シャワーヘッド136を介して、窒素と水素が3:1の混合ガスを備えるガスを処理チャンバ112内に導入する。窒素と水素の混合ガスは、窒素の流量が約30sccmで導入させる。次いで、RFソース142は、整合回路網145を介して、350ワットのRF電力を350kHzで供給し、RFシグナルをウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に発生させる。シャワーヘッド136のRFシグナルとウエハ支持体116のRFシグナルは、位相が180度ずれていることが好ましい。
【0137】
上述の混合ガスは窒素と水素の比が3:1であるが、3:1〜2:1の間であれば何れの比を用いることができる。一般的には、混合ガス中の水素の割合が多いほど、膜が長期間の安定性を有するようになる。しかし、プラズマ中の水素が多すぎる場合は、水素が膜中の炭素と結合してポリマーを生成し、膜の抵抗率を上昇させる。
【0138】
シャワーヘッド136及びウエハ支持体116に供給されるRF電力の影響下で、プラズマに含有される正荷電の窒素及び水素イオンが生成する。プラズマは典型的には、10〜30秒間維持される。上述の如く、処理チャンバ112は接地されている。シャワーヘッド136は、−100〜−400ボルト、典型的には−200ボルトの負バイアスを得る。ウエハ114は自己バイアスにより、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトの負バイアスを得る。この負バイアス電圧は、衝突の時間中はおよそ一定に維持される。
【0139】
衝突の時間中は、プラズマからの正荷電イオンは、ウエハ114の表面における電圧勾配により加速される。これにより、イオンがウエハ表面に衝突して50〜100オングストロームの深さまで浸透するようになる。また、エネルギーを受けた中性の原子粒子がウエハ114に衝突することもある。
【0140】
イオン衝突の結果、堆積材料の圧縮が生じ、その厚さが20〜50%減少することがある。この減少は、ウエハ温度とプラズマ処理の時間及びエネルギーに依存する。所望により、続けて、窒化チタンの層を更に堆積させアニールしてもよい。この更に形成する層はそれぞれ、厚さが50〜100オングストロームであることが好ましい。
【0141】
アニールが完了した後、得られたアニール済み窒化チタン膜は、数多くの性能の向上を示す。酸素含有量は20〜25%減少し、酸素は堆積アニール材料の1%未満を占めるだけとなる。膜の密度は、立方センチメートル当たり3.1グラム(3.1g/cm3 )未満であったのが、約3.9 g/cm3 に増加する。堆積膜中に含まれる炭素の分率は25%以上減少し、炭素は堆積膜の3%を占めるだけとなる。膜の構造の変化が起こり、膜の抵抗率が処理前の10,000μΩ−cmから150μΩ−cmへと降下する。アニールした膜を酸素、空気又は水蒸気に曝露した場合、堆積膜にアニールをしない場合に較べて、酸素の吸収量が著しく小さくなる。プラズマアニールにより、このように堆積させた膜中の炭素及び窒素をプラズマからの窒素に交代させる。
【0142】
プラズマ生成ガスへ水素を添加することにより、イオン衝突により膜から追い出され処理チャンバ112の内側をコーティングする炭素の量を著しく低減させることが見出された。処理チャンバ112の炭素コーティングを低減することは利益があり、何故なら、このような炭素コーティングはチャンバのインピーダンスを変化させ、プラズマの正確な制御を困難にしてしまうからである。炭素コーティングを減らすことにより、クリーニングが必要になるまで処理チャンバ112を使用できる回数が多くなる。
【0143】
図39(a)は、二酸化珪素層の上に厚さ100オングストロームの窒化チタン層を堆積し、続けてアニールして形成した窒化チタン膜に対してのオージェ電子分光深さプロファイルである。図39(a)に示されるように、炭素含有量及び酸素含有量は、膜のほぼ全域で均一であり、炭素は9原子パーセント、酸素は2原子パーセントである。アニールした窒化チタン膜の抵抗率は、約250μΩ−cmである。
【0144】
図39(b)は、窒化チタンの50オングストロームの層を堆積しアニールして得られた場合の更なる向上を示す。図39(b)は、二酸化珪素層の上面に厚さ50オングストロームの窒化チタン層を堆積し、続けてアニールして形成した窒化チタン膜に対してのオージェ電子分光深さのプロファイルである。ここでも、炭素含有量及び酸素含有量は、膜のほぼ全域で均一であり、炭素は3原子パーセント、酸素は1原子パーセントである。チタンと窒素の割合は、100オングストロームのプロセスにおけるよりも高い。アニールした窒化チタン膜の抵抗率は、約180μΩ−cmである。
【0145】
(c.窒素/水素/希ガスのプラズマ)本発明のまた別の具体例では、アニールプラズマを生成するために用いる窒素及び水素の混合ガスは、他のガス、例えばアルゴン、ヘリウムやアンモニア等を含んでいてもよい。また、希ガスを更に含むことにより、イオン衝突処理が向上する。アルゴン原子はヘリウム原子よりも重いため、アルゴン原子の方が優れた衝突能力を与えるだろう。
【0146】
更に、窒化チタン以外の材料でできた膜の組成を、本発明と同様の方法で変えてもよいことが考えられる。膜中に含有させるか、膜に存在する不純物と反応させるかのいずれかにより、膜の化学組成を変えるために他のガスをプラズマに加えてもよい。例えば、NH3及びCH4を用いてもよい。酸素ベースのプラズマガスは、Ta2O5 等の酸化膜を処理するためにより適している。
【0147】
本発明をプラズマ衝突CVD堆積膜について説明してきたが、本発明は、PVD堆積膜にも適用性がある。更に、本発明は、二元素の窒化メタルMXNY 及び三元素の窒化珪化メタル MXSiYNZ (MはTi、Zr、Hf、Ta、Mo、W及びその他のメタル)の処理において顕著な用途が見出されている。
【0148】
また、本発明を用いて、膜のモルフォロジーを有利な方へ変えることもできる。薄いバリア材料は、その粒子配向(グレインオリエンテーション)の均一性を向上させるために、本発明の高密度イオン衝突を受けてもよい。下にある層のグレインの配向がその次に堆積する層の構造に影響を与えるため、本発明は、下の層の結晶構造及び/又は成長方向を変えることにより、その次に堆積する層のモルフォロジーを変え向上させる能力を提供する。
【0149】
多数の層のモルフォロジーを制御するには、厚さ50オングストローム未満の薄い核界面層を堆積し、次いで高密度イオン衝突によりこれを変化させ、そして、標準的な技術によりバルク又は残りの膜を堆積させればよい。上にある層の構造は、前に変化させた下層の構造により決定できる。
【0150】
このことは、図40を参照して例示することができる。窒化チタン膜については、好ましい結晶及び配向は<200>であると決められてきた。水素をプラズマに加えれば、結晶性を高めることにより膜を向上できることが考えられる。図40は、シリコンウエハ上に堆積させた厚さ1000オングストロームの従来形CVD窒化チタン層の、角度走査に係るX線回折である。<200>方向に配向するグレインの数を表すカーブの点は、ラベル300によって示される。このグラフからわかるように、明確なTiN<200>ピークは存在しない。このことは、従来からのCVDプロセスを用いて形成した膜中には、結晶性TiN<200>は弱いことを示している。
【0151】
図41は、本発明に従ってシリコンウエハ上に堆積させアニールを施した、厚さ1000オングストロームのCVD窒化チタン層の、角度走査に係るX線回折である。この回折パターンから、ラベル350で示されるように、膜が好ましい配向<200>を有する微少結晶性であることが示される。40〜45度の間においては、ほぼ<200>方向に配向したグレインの数が多い。更に、図40のピーク310は、図41において著しく低い。
【0152】
(3.続けて行うアニール)堆積膜の抵抗率を更に下げるため、本発明に従ってプラズマアニールプロセスを変え、2つの連続したプラズマアニールのステップを含めるようにしてもよい。第1のアニールのステップは、上述のように窒素及び水素を含む混合ガスから生成したプラズマを用いて行う。第2のプラズマアニールのステップは、アニールした材料から水素を除去するために行われるが、それは水素は酸素との親和力が高く、このため抵抗率を上げてしまうからである。
【0153】
第2のプラズマで生成したイオンは、堆積及びアニールした材料に衝突し、材料の表面にある水素を、膜から不要な副生成物として追い出す。水素が低減することにより、酸素に対する材料の親和力が低減し、これによって、膜の抵抗率が低くなり向上した安定性を示すことが可能となる。
【0154】
続けて行う第2のアニールのステップにおいてプラズマ生成のために用いるガスは、窒素又は、ヘリウムとアルゴンとネオンとの何れかと窒素との混合ガスを有していてもよい。ヘリウムは、窒素分子のイオン化を促進しN+、N2+、N3+及びN4+の各イオンの再結合の確率を低減するため好ましい。窒素及びヘリウムの混合ガスは、窒素単独で用いるよりも好ましく、その理由は、ヘリウムベースのプラズマのイオンは、イオン化効率を向上させることが可能であり、そのため、イオン反応性を促進し浸透深さを大きくすることができる。浸透深さが深くなれば、追い出される水素の量が多くなり、堆積材料の抵抗率の低減を最大にすることができるようになる。更に、少量のヘリウムがあれば、水素原子が存在していたため堆積材料に残された空隙であって、窒素原子で充填するには小さすぎる空隙を充填することが可能となる。
【0155】
本発明に従い、チャンバ110A等のチャンバ内にウエハ114を配置させ、上述のようにウエハ上に材料の層を堆積させる。堆積材料は、拡散バリアとして用いるための窒化チタンであってもよい。
【0156】
材料の層を堆積した後は、イオン衝突の第1のアニールのプロセスを行う。ウエハ114は、ウエハ支持体116上に置かれているが、シャワーヘッド136から約0.3〜0.8インチのところにあってもよい。ウエハ114はシャワーヘッド136から0.6〜0.7インチであることが好ましい。
【0157】
イオン衝突は、先ずシャワーヘッド136を介してガスを処理チャンバ112へ移動させることにより実現される。本発明の一具体例では、ガスは、窒素対水素の比が2:3の窒素と水素の混合ガスであり、窒素の流量が約600sccmで処理チャンバ112内に導入される。処理チャンバ112内の圧力は、約1.0トールに設定され、ウエハ温度は350〜450℃に設定される。本発明の代替的な具体例では、ガスは、窒素対水素の比が3:1〜1:2の混合ガスを含んでいてもよい。
【0158】
第1のアニールのプロセスに次いで、RFソース142がシャワーヘッド136とウエハ支持体116にRFシグナルを供給する。これにより、ガスが、正荷電イオンを含むプラズマを生成する。RFソース142は、整合回路網145を介して、350ワットのRF電力を350kHzで供給し、位相が180度ずれているRFシグナルをウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に発生させる。典型的には、プラズマを20秒間維持する。あるいは、RFソース142は、1MHz未満の周波数で350ワットのRF電力を供給してもよい。
【0159】
RFソース142から電圧を繰り返しサイクルさせることにより、ウエハ114の近隣において電子が過剰になり、これがウエハ114に負バイアスを発生させる。ウエハ支持体116は、−100〜−400ボルト、典型的には−200ボルトの負バイアスを得ることができる。処理チャンバ112は接地され、ウエハ114の負バイアスは、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトであり、これは、衝突の時間中はおよそ一定に維持される。
【0160】
イオン衝突中は、プラズマからの正荷電イオンは、ウエハ114の表面における電圧勾配により加速され、100〜110オングストロームの深さまで浸透する。また、エネルギーを受けた中性の原子粒子がウエハ114に衝突することもある。20秒間の第1のアニールが完了すれば、処理チャンバ112をパージする。
【0161】
次いで、第2のアニールのプロセスを開始させる。本発明の一具体例では、プラズマ発生ガスは窒素のみである。このガスを、窒素流量約500〜1000sccmで処理チャンバ112内に導入する。処理チャンバ112内の圧力は約1.0トールに設定され、ウエハ温度は350〜450℃に設定される。
【0162】
本発明の代替的な具体例では、ガスは窒素とヘリウムの混合ガスで、窒素とヘリウムの比が0.2〜1.0であってもよい。アルゴン、ネオン、ヘリウム又はこれらの混合ガスと、窒素との組み合わせを含むガスを用いてもよい。
【0163】
次に、第2のアニールのプロセスでは、RFソース142はシャワーヘッド136とウエハ支持体116にRFシグナルを供給する。これにより、正荷電を有するプラズマがガスから生成する。RFソース142は、整合回路網145を介して、300〜1,500ワットのRF電力を300〜400kHzで供給し、位相が180度ずれているRFシグナルをウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に発生させる。典型的には、プラズマを15秒間維持する。あるいは、RFソース142は、13.5MHzの周波数で300〜1,500ワットのRF電力を供給してもよい。ソースの電力は、処理するウエハのサイズの変更に対する必要性を基に縮尺させてもよい。
【0164】
第1のアニールのケースにおけると同様に、RFソース142から電圧を繰り返しサイクルさせることにより、ウエハ114の近隣において電子が過剰になり、これがウエハ114に負バイアスを発生させる。ウエハ支持体116は、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトの負バイアスを得ることができ、シャワーヘッド136は−100〜−400ボルト、典型的には−200ボルトの負バイアスを得ることができる。処理チャンバ112は接地され、ウエハ114の負バイアスは、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトであり、これは、衝突の時間中はおよそ一定に維持される。
【0165】
イオン衝突中は、プラズマからの正荷電イオンは、ウエハ114の表面における電圧勾配により加速され。イオンはウエハ114の表面に浸透し、堆積しアニールした材料の水素分子を追い出す。また、エネルギーを受けた中性の原子粒子がウエハ114に衝突することもある。15秒間の第2のアニールが完了すれば、処理チャンバ112をパージする。
【0166】
窒素ガスを用いる場合は、イオンは深さ70〜80オングストロームまで浸透する。ガスが窒素とヘリウムの混合ガスである場合は、イオンは深さ100〜125オングストロームまで浸透する。従って、窒素とヘリウムの混合ガスでアニールすれば、窒素のみを用いてアニールした場合よりもさらに多くの水素分子を追い出すことができる。
【0167】
所望の厚さ、例えば150〜300オングストロームの拡散バリアを形成するため、上述のCVD堆積及び連続アニールするプロセスを繰り返す。所望の厚さを実現するまで、厚さ50〜100オングストロームのバリア材料の層を順番に、堆積及び連続アニールすることにより、堆積させる。
【0168】
チャンバ110A、110B又は110Cの何れかにおいて、続けて行うアニールのプロセスを行う場合は、堆積、第1のアニール及び第2のアニールの全てを同じチャンバで行ってもよい。従って、堆積及び連続的なアニールをインシチュウで行ってもよい。しかし、堆積及び連続的なアニールのプロセスステップはインシチュウで行う必要はなく、別のチャンバを用いてもよい。
【0169】
図42の表VIは、連続的なアニールのプロセスを、1回アニールを行うプロセスと比較するために得られた実験結果を反映する。表VIのデータを収集するために、1組のウエハがそれぞれ本発明の別の具体例に従って処理された。厚さ200オングストロームの窒化チタン層を、本発明に従って各ウエハ上に形成した。
【0170】
第1のウエハは、上述のアニール1回のプロセスに従い、アニールプラズマを生成するために窒素及び水素のガスを用いて処理した。第2のウエハは、窒素のみを含むプラズマガスを用い、連続アニールにより処理した。第3のウエハは、窒素とヘリウムを含むプラズマガスを用い、連続アニールにより処理した。第4のウエハは、3相の連続アニール、即ち順番に、窒素−水素プラズマアニールを15秒間、窒素プラズマアニールを15秒間、そして窒素−水素プラズマアニールを5秒間行うことにより処理した。
【0171】
第2のウエハは、窒素ガスで連続アニールしたものであるが、1つのアニールステップのみ行った第1のウエハよりも著しく抵抗率が小さいことが示された。第2のウエハの抵抗率は、450〜500μΩ−cmであり、第1のウエハの抵抗率は、570〜630μΩ−cmであった。さらに、第2のウエハは50時間後の抵抗率の増加は7〜8%しかなかったが、第1のウエハのこの増加は11〜12%であった。
【0172】
第2のプラズマアニールにおいて窒素とヘリウムの混合ガスを用いた第3のウエハにおいては、さらに良好な結果が確認された。第3のウエハは、抵抗率は440〜480μΩ−cmであり、50時間で3〜7%しか増加しなかった。また、第3のウエハは酸素濃度が小さかった。第2のウエハに較べて第3のウエハの方が酸素濃度のレベルが低かったのは、窒素−ヘリウムの混合ガスの窒化チタン層から水素を追い出す性能が優れていたことによる。
【0173】
第4のウエハは、窒素と水素の混合ガスにより第3のアニールを行うが、抵抗率及び抵抗率の劣化の測定値は第1のウエハに近かった。これは、第2のアニールの後に水素を再び導入することにより、水素過剰の状態を作り出していることを示している。この水素過剰は、第2のアニールにおいて実現した利益を損ねてしまう。
【0174】
(4.拡散性低減のための酸化)ウエハ上の膜の抵抗率を向上させることに加えて、次のプロセスを行うことにより、膜の下の基板へのコンタクトメタルの拡散に対して、膜がさらに抑止をすることが可能となる。特に、アルミニウムの拡散をよりつよく抑止するため、膜を処理することになる。
【0175】
先ず、材料の層をウエハ114の上面にインシチュウ(層形成中のあらゆる時点においても処理チャンバ112からウエハを取り出さず)で形成する。本発明の一具体例では、材料の堆積とそれに続くアニールをチャンバ110Aで大古成って膜を形成する。熱CVDを用いてウエハ114の上面に材料の層を堆積させ、材料がウエハ114上面に適合できるようにしてもよい。堆積中は、処理チャンバ内の圧力が0.6〜1.2トールとなるように圧力制御ユニット157を設定してもよく、ウエハ114の温度が360〜380℃となるようにランプ130を設定してもよい。
【0176】
本発明の一具体例では、堆積材料はバリア材料であってもよく、例えば、窒化チタン(TiN)のような二元素メタル窒化物等である。本発明の別の具体例では、二元素メタル窒化物の代わりに、三元素メタル窒化珪化物をバリア材料として用いてもよい。堆積材料は、厚さ50〜300オングストロームであってもよく、好ましくは50〜100オングストロームである。
【0177】
バリア材料を堆積させた後、イオン衝突のプロセスを通じてこれをアニールする。ウエハ114は、ウエハ支持体116上に置かれているが、シャワーヘッド136から0.3〜0.8インチのところにあってもよい。ウエハ114はシャワーヘッド136から0.6〜0.7インチのところにあることが好ましい。
【0178】
イオン衝突を行うには、先ず、シャワーヘッド136を介してガスを処理チャンバ112内に導入する。本発明の一具体例では、ガスは窒素と水素の混合ガスであり、これは、窒素と水素の比が2:3であり、窒素流量が約400sccmで処理チャンバ112内に導入される。処理チャンバ112内の圧力は約1.0トールに設定され、ウエハ温度は300〜400℃(好ましくは360℃)に設定される。
【0179】
本発明の別の具体例では、ガスは窒素と水素の比が3:1〜1:2であるガスを備えていてもよい。窒素及び水素に、アルゴン又はヘリウム又はアンモニアを組み合わせた別のガスを用いてもよい。
【0180】
次に、アニールプロセスにおいて、RFソース142がシャワーヘッド136とウエハ支持体116にRFシグナルを供給することにより、ガス206が正荷電イオンを含有するプラズマを生成する。RFソース142は整合回路網145を介して350ワットのRF電力を350kHzで供給し、位相が180度ずれているRFシグナルをウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に発生させてもよい。典型的には、プラズマを10〜30秒間維持する。あるいは、RFソース142は、1MHz未満の異なる周波数で350ワットのRF電力を供給してもよい。
【0181】
ウエハ114には負バイアスが発生する。ウエハ支持体116は、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトの負バイアスを得ることができ、シャワーヘッド136は、−100〜−400ボルト、典型的には−200ボルトの負バイアスを得ることができる。処理チャンバ112は接地され、ウエハ114の負バイアスは、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトであり、これは、衝突の時間中はおよそ一定に維持される。
【0182】
イオン衝突中は、プラズマからの正荷電イオンは、ウエハ114の表面における電圧勾配により加速され、50〜200オングストロームの深さまで浸透する。また、エネルギーを受けた中性の原子粒子がウエハ114に衝突することもある。
【0183】
イオン衝突の結果、バリア材料の堆積材料の厚さが、基板温度とプラズマ処理時間及びエネルギーに依存して、20〜50%減少する。上述のように、厚さが50〜100オングストロームのバリア材料の層を用いたCVD堆積及びアニールを繰り返し、所望の厚さの材料の層を形成してもよい。
【0184】
あるいは、ウエハ114上への材料の堆積及びアニールは、これとは異なる数多くの手段により遂行してもよい。米国特許出願08/498,990号、標題「薄膜のバイアスプラズマアニール」、米国特許出願08/567,461号、標題「薄膜のプラズマアニール」、米国特許出願08/680,913号、標題「薄膜のプラズマ衝突」の、それぞれには、CVDプロセス及びプラズマアニールを用いて、ウエハ上面へバリア材料の層を形成するためのプロセスが開示される。これらの出願のそれぞれは、参照としてここに包含される。これらの出願で開示されるプロセスのそれぞれは、ウエハ上に材料の層を形成するための本発明の具体例に用いることができる。
【0185】
本発明の一具体例では、物理気相堆積を行うことができる装置の中にウエハを配置させ、従来からのスパッタリングプロセスにより材料の層を形成する。本発明の他の具体例では、化学気相堆積を行うことができるチャンバの中にウエハを配置させ、CVDにより材料の層を形成し、付加的なアニールは行わない。
【0186】
集積回路の製造においては、アルミニウムはコンタクトメタルとして頻繁に用いられる。アルミニウムは酸素に対して親和性を有するため、酸素リッチメタルにおいてアルミニウムの拡散性が下げられることもある。従って、材料に酸素を浸透させることにより、アルミニウムコンタクトメタルへの向上した拡散バリアとして機能するように、ウエハ114上に形成された材料の層を処理することができる。
【0187】
材料に酸素を浸透させるため、ウエハ114上の材料をインシチュウ(材料の層を形成した後、酸化が完了するまで、処理チャンバ112から取り出さずに)で酸化させる。即ち、材料の層の形成及び材料の層の酸化のプロセス全体を、1つのチャンバ内でインシチュウで行うことができる。材料の粒界は酸化されるが材料の粒(グレイン)自身はほとんど酸化されないように、酸化が行われる。
【0188】
材料の粒界の酸化は、図5に示す半導体ウエハ処理チャンバ110Aを用いてインシチュウで行ってもよい。材料をウエハ114上に形成(堆積及びアニール)した後、ウエハ114を処理チャンバ112内に残す。圧力制御ユニット157により、処理チャンバ112内の圧力を0.5〜1.0トールに設定する。ウエハ114の温度を、300〜400℃(好ましくは360℃)となるように設定する。
【0189】
材料の層を、N2/O2混合ガス又はO2等の酸素含有ガスに曝露する。このガスは、流量100〜1000sccmでシャワーヘッド136を介して処理チャンバ112内に移送される。ガス208は、窒素と酸素の両方を含んでいてもよく、窒素対酸素の混合比は4:1であってもよい。次いで、RFソース142がウエハ支持体116とシャワーヘッド136の双方へ整合回路網145を介してシグナルを供給し、ガスを正荷電酸素イオンを含むプラズマに変換する。
【0190】
RFソース142は、整合回路網145を介して350ワットのRF電力を350kHzで約20秒間供給し、シャワーヘッド136とウエハ支持体116に180度位相がずれたRFシグナルを発生させる。シャワーヘッド136、ウエハ支持体116及びウエハ114のそれぞれは、アニールプロセスについて上述したように、負バイアスを得る。その結果、正荷電酸素イオンが、ウエハ114の方へ加速され、材料の層の表面に浸透し、材料の粒界に付着する。
【0191】
本発明の一具体例においてこの酸化が完了した後は、酸化した材料の層は酸化した窒化チタンである。この酸化した窒化チタンは、酸素に対する親和性を有するコンタクトメタル(例えばアルミニウム等)に対して向上した拡散バリアとして機能することが可能である。あるいは、材料の層が、他の二元素の窒化メタルMXNY 又は三元素の窒化珪化メタル MXSiYNZ (MはTi、Zr、Hf、Ta、Mo、W及びその他のメタル)とした場合にも、向上した拡散バリアを本発明に従って形成することができる。
【0192】
本発明の代替的な具体例では、同じ半導体ウエハ処理チャンバ110Aを用いて、材料の熱酸化を行う。酸素含有ガス、例えば酸素、オゾン、空気や水等を、流量100〜1000sccmで、シャワーヘッド136を介して処理チャンバ112内に移送する。次いで、ランプ130によりウエハ114を300〜400℃の温度に加熱する一方、処理チャンバ内の圧力を0.5〜100トール(好ましくは1.0トール)に設定する。
【0193】
この結果、酸素含有ガスにおける酸素がバリア材料層の表面に浸透し、バリア材料の粒界に付着する。バリア材料の粒界を酸化させるプロセスの1つが、 Ngan らの米国特許第5,378,660号、標題「バリア層及びアルミニウムコンタクト」に開示されており、これは参照としてここに包含される。材料の層200を形成し酸化させた後、ウエハ114は処理チャンバ112から取り出される。
【0194】
ウエハ114上の材料の層の形成及び酸化について、具体的に、図5の半導体ウエハ処理チャンバ110Aにおいて行われるように説明してきたが、このプロセスはチャンバ110A内で行われることに限定されない。このプロセスは、図16のチャンバ110B、図17のチャンバ110C等、本発明に従ってインシチュウで形成及び酸化処理を行うためのあらゆる半導体ウエハ処理チャンバにおいて行うことも可能である。
【0195】
従来では、コンタクトメタルの拡散に対して十分な保護を与えるためには、拡散バリアを厚くしていた。本発明の具体例の結果、コンタクトメタルの拡散を抑止するために、拡散バリアは厚くしなくてもよい。本発明の具体例では、バリアメタルの酸化により、酸素に対する親和性を有するコンタクトメタル(アルミニウム等)の拡散が低減する。このコンタクトメタルがバリア材料の酸化層の中に拡散を開始したとき、コンタクトメタルは酸素イオンと結合し、この酸素イオンがバリア材料の粒界に付着する。その結果、コンタクトメタルは、その下の拡散バリアの領域に到達することができない。
【0196】
図43(a)におけるチャートは、酸化は行わず本発明に従ってバリア材料の層を堆積及びプラズマアニールした後の、ウエハの化学組成を深さを変えて示す。図43(b)は、本発明に従ってバリア材料の層を堆積及びプラズマアニールし酸化を行った後の、ウエハの化学組成を深さを変えて示すグラフが含まれる。
【0197】
これらのチャートのそれぞれは、窒化チタンのバリア層によってその上が覆われたシリコン基板を有するウエハからとったデータを表している。オージェ電子分光分析によりウエハを調べた。各チャートは、ウエハの深さが異なる場合に、化合物毎の原子濃度を示している。この2つのチャートを比較してわかるように、ウエハの頂部、すなわちバリア材料で構成される部分の酸素レベルは、酸化しないバリア材料(図43(a))よりも酸化させたバリア材料(図43(b))の方が著しく高くなっている。
【0198】
バリア材料中に酸素が存在することにより、アルミニウム等のコンタクトメタルは、バリア材料中の酸素イオンと結合することにより、その拡散性が著しく低くなる。従って、酸化させたバリア材料(図43(b))の方が、酸化しないバリア材料(図43(a))よりも、コンタクトメタル(アルミニウム等)とその下のシリコン基板との間に良好な拡散バリアを与える。
【0199】
加えて、本発明の具体例により形成した拡散バリアのシート抵抗は、酸化プロセスにより、許容できる程度に妥協できないわけではない。図44は、この事実を例示する表を例示する。この表に示されるように、本発明に従って堆積及びプラズマアニールを行ったが酸化を行っていない窒化チタンバリア材料の200オングストローム層は、410Ω/sqのシート抵抗値を有し、シート抵抗値の標準偏差は2.2%であるだろう。このバリア材料の層の抵抗率は、820μΩ−cmと得られる。本発明に従って堆積、プラズマアニールを行い20秒間酸化を行った窒化チタンバリア材料の200オングストローム層は、630Ω/sqのシート抵抗値を有し、シート抵抗値の標準偏差は3.7%であるだろう。このバリア材料の層の抵抗率は、1260μΩ−cmと得られる。
【0200】
また、図44の表は、窒化チタンバリア材料の300オングストローム層に対するシート抵抗を示す。本発明に従って堆積及びプラズマアニールを行った後、窒化チタンバリア材料の300オングストローム層は、235Ω/sqのシート抵抗値を有し、シート抵抗値の標準偏差は2.0%であるだろう。本発明に従って堆積、プラズマアニール及び20秒間の酸化を行った後は、窒化チタンバリア材料の300オングストローム層は、250Ω/sqのシート抵抗値を有し、シート抵抗値の標準偏差は2.7%であるだろう。従って、酸化しないバリア材料の300オングストローム層の抵抗率は705μΩ−cmであるが、酸化したバリア材料の300オングストローム層の抵抗率は750μΩ−cmであろう。
【0201】
図44の表に表されている窒化チタンバリア材料の酸化しない層と酸化した層の相対的な有効性は、以下のように評価された。上面に酸化しない窒化チタンバリア材料を有するウエハと酸化した窒化チタンバリア材料を有するウエハに、アルミニウムの1000オングストロームの層を堆積させた。ウエハ上への堆積を行った後、アルミニウムを550℃の炉内で1時間アニールした。酸化していない窒化チタンバリア材料の200オングストロームの層を有するウエハと300オングストロームの層を有するウエハは、ウエハの基板へのアルミニウムの拡散により重大な欠陥が認められた。本発明に従って堆積、プラズマアニール及び酸化を行った窒化チタンバリア材料の200オングストロームの層を有するウエハは、アルミニウムの拡散による軽微な欠陥のみ認められ、300オングストロームの層を有するウエハは、この欠陥が全く認められなかった。
【0202】
図43(a)、43(b)及び44のデータは、本発明の具体例を行って得ることができる結果の一例に過ぎない。これらの図表に示される結果は、本発明の具体例が同じ結果又は実質的に同じ結果を実現することに限定することを意味するものではない。
【0203】
(5.拡散性低減のための珪素の濃縮)本発明の別の具体例では、酸化のステップは、珪素のスタッフィングの操作により置き換えられる。珪素スタッフィングの操作により、銅等のコンタクトメタルの、基板を覆う材料層(窒化チタン等)への拡散性が、低減する。珪素が窒素と結合して堆積窒化チタンの粒界を充填する能力は、窒化チタンのバリア性能の向上を促進するメカニズムである。
【0204】
本発明に従って、窒化チタン等の材料のウエハ上への堆積及びアニールは、酸化のステップを含むプロセスに対して上述と同じ方法で行われる。窒化チタンの100オングストローム層を堆積させることが好ましい。窒素と水素の混合ガスを含むプラズマでこの材料をアニールした後の窒化チタン層の厚さは、約50オングストロームである。
【0205】
窒化チタン材料の堆積及びアニールは、チャンバ110A、110B又は110Cの何れかで行ってもよい。あるいは、堆積のステップ及びアニールのステップを行うことができる他のチャンバやチャンバ群を用いてもよい。チャンバ110A、110B又は110Cを用いた場合は、堆積及びアニールを行ったと同じチャンバで珪素スタッフィングを行ってもよい。その結果、珪素スタッフィングプロセスの全体をインシチュウで行うことができる。
【0206】
堆積及びアニールの後、アニールした窒化チタンをシラン(SiH4)に曝露することにより、珪素スタッフィングが行われる。シランを、流量30sccmで約30秒間チャンバ110Aに流入させる。シラン曝露の間は、チャンバ圧力を1.2トールに設定し、ウエハ支持体116を420℃に加熱し、窒素をチャンバ110Aに流量140sccmで流入させる。200sccmのアルゴンパージの流入を採用する。シランへの曝露に続いて、排気パージを行い、チャンバ10A及び供給ラインから残留のSiH4を掃引する。
【0207】
この曝露を行っている間は、珪素は窒化チタン表面に結合して、堆積材料の粒界を充填する。このスタッフィングされた珪素により、この後堆積する銅等のコンタクトメタルの拡散が抑止される。
【0208】
構築する膜が所望の厚さになるまで、窒化チタン材料の堆積、アニール及び珪素スタッフィングのステップを続けて繰り返す。200オングストローム膜の構築の場合、窒化チタンの堆積、アニール及び曝露は全部で3回行うことが好ましく、各回に堆積させる窒化チタンは100オングストローム層である。この結果、珪素をスタッフィングした厚さ150オングストロームの窒化チタン層が構築される。求める厚さの200オングストロームに到達させるため、最後の100オングストロームの窒化チタンのキャップ層を堆積させアニールして、厚さ50オングストロームとする。この窒化チタンのキャップ層のアニールは、上述のように、窒素及び水素の両方を含むプラズマを用いて行ってもよい。この最終の堆積及びアニールを行った材料のキャップ層は、シランへの曝露を行わない。
【0209】
堆積しアニールした材料の最終の部分をシランに曝露しないのは、シランの酸素に対する親和性にその理由がある。シランへの曝露により窒化チタン膜の最終表面キャップに珪素が導入されれば、膜の抵抗率は許容できないほど高くなるだろう。膜に窒化チタンのアニール層でキャップを被せた後は、この膜の抵抗率は約520μΩ−cmである。窒化チタンの上層をシランに曝露すれば、膜の抵抗率はおそらく非常に高くなるだろう。
【0210】
ラザフォード後方散乱分光分析により、本発明に従って珪素をスタッフィングした膜は以下の特徴を有していたことがわかった。Si含有量は5原子パーセント、Ti含有量は35.2原子パーセント、N含有量は52.8原子パーセント、H含有量は7原子パーセントであった。本発明に従って形成した膜のオージェ深さプロファイルが図45に示される。このオージェ深さプロファイルによれば、窒素含有量とチタン含有量が均一であり珪素含有量は上下しており、これは、窒化チタンにキャッピングしようとする珪素含有材料が150オングストロームであることと一致している。
【0211】
上記の測定及び手順は、本発明に従って珪素スタッフィングをいかに行うかの非限定的な例として与えられることに、注意すべきである。本発明の別の具体例では、基板上に堆積した材料の層をアニールするステップとこの材料をシランに曝露するステップとを相互に交換してもよい。この結果、窒化チタン等の堆積材料を、珪素スタッフィングの目的で先ずシランに曝露し、その後、プラズマを用いてアニールして、この材料の抵抗率を低減する。加えて、CVD以外の堆積プロセス、例えばスパッタリング等を行ってもよい。
【0212】
珪素スタッフィングに代替するものとして、三元素の珪化窒化メタル、例えばチタニアシリカ カーボナイトライド(TiSiCN)等を、窒化チタン材料の代わりに堆積させてもよい。そして、堆積させた珪素リッチな材料をアニールして、抵抗率を下げることができるだろう。上記のプロセスのように、堆積及びアニールを繰り返して、所望の厚さの膜を形成することができるのである。
【0213】
本発明のこのような具体例に従って、堆積プロセスを行うことができるチャンバの中にウエハを配置させる。このチャンバは、珪素リッチ膜をインシチュウで構築することが可能なチャンバ110A、110B又は110Cの何れかであってもよい。あるいは、珪素リッチ膜を形成する以下のステップを行うために用いることができる他のチャンバやチャンバ群を用いてもよい。
【0214】
ウエハをチャンバ内に配置させた後、チタニアシリカ カーボナイトライド(TiSiCN)材料をウエハ上に堆積させる。この堆積操作は、TDMATを用いた従来からの熱CVDを用いて行ってもよい。珪素を導入するため、或る体積のシランをチャンバ内に流入させる。TDMATを用いたCVDで窒化チタンを堆積させる場合に用いる容量と比較して、等しい体積の窒素希釈ガスを随伴させる。
【0215】
堆積操作を行うにあたり、チャンバ圧力を1.2トールに設定し、ウエハ支持体の温度を420℃に設定し、シランを10sccm、He/TDMATを70sccm、窒素希釈ガスを90sccmで、チャンバ内に流入させる。アルゴンパージを流量200sccmで行う。堆積を32秒間行い、厚さ100オングストロームの材料の層を形成することができる。窒化チタンの化学気相堆積では、シランを用いず、窒素の流量は100sccmとなる。
【0216】
この堆積に続いて、酸素スタッフィングを含むプロセスについて上述したように、窒素及び水素のプラズマを用いてTiSiCNのアニールを行う。堆積材料の開始厚さが100オングストロームであり層の厚さが50オングストロームであることが望ましい場合は、このアニールには、20秒間行われるイオン衝突の工程が含まれる。堆積及びアニールを続けて繰り返し、所望の厚さの膜を構築する。本発明の一具体例では、200オングストロームの膜が望ましい。100オングストロームのTiSiCNの層を堆積させ、次いでアニールして、50オングストロームの材料の層とする。TiSiCNの100オングストロームの堆積とアニールを4回行って、求める200オングストロームの膜を得る。
【0217】
一例では、得られた200オングストローム膜は、Siを15原子パーセント、Tiを25.3原子パーセント、Nを49.7原子パーセント、Hを10原子パーセント含んでいたことが、ラザフォード後方散乱分光分析によって示された。この膜のオージェ深さプロファイルが図46に示される。オージェ深さプロファイルにより、約5原子パーセントの低い炭素含有量と、1原子パーセントの酸素含有量を有する、均一な組成であることが示される。この膜の抵抗率は、2,400μΩ−cmである。図47は、珪素スタッフィングを用いて形成した200オングストローム膜と、チタニアシリカ カーボナイトライドを堆積させて形成した200オングストローム膜の、抵抗率及び組成の比較を示す。
【0218】
拡散バリアとして機能させるため非常に珪素リッチな膜を得ることとの引き替えに、抵抗率が高くなる。1,000μΩ−cmの抵抗率は、拡散バリアとして十分許容されるものである。堆積のステップで用いるシランの量を減らして、膜の抵抗率を下げてもよい。最良の抵抗率が得られるのは、上述の如く、堆積及びアニールの後に材料の層の中に珪素をスタッフィングする場合である。しかし、珪素をスタッフィングさせた拡散バリアは、銅の拡散に対して、珪素含有材料を堆積させて形成した膜と同様の強力な抑止効果は与えない。例えば、珪素をスタッフィングさせた二元素窒化メタル(例えば窒化チタン等)は、銅の拡散を防止できず、これは、三元素窒化珪化メタル(例えばTiSiCN等)を堆積させて構築した膜についても同様である。集積回路の製造者は、膜の構築における製造者の要求に最もよく適合する珪素濃縮の方法を選択することができる。
【0219】
また、上述の珪素濃縮プロセスのそれぞれにおいて採用した堆積プロセスを変形することができることは注記すべきである。化学気相堆積の代わりに、スパッタリング等他の堆積プロセスを用いてもよい。TiSiCN以外の他の三元素窒化珪化メタルを本発明の具体例に用いてもよい。
【0220】
更に、上述のアニールのステップは、窒素と水素だけから成るプラズマを用いることに限定されない。堆積材料の抵抗率を下げるように作用する他のプラズマ組成を用いてもよい。このようなプラズマの一例は、窒素、水素及びアルゴンを含有する上述のプラズマである。これに続けてアニールを行ってもよい。
【0221】
シランへ曝露することによる珪素スタッフィングを含むプロセスにおいては、この曝露のステップは、エネルギーを熱により受ける点に制限されない。本発明の代替的な具体例では、珪素イオンを含有するプラズマは、RFシグナルによりエネルギーを受けた珪素リッチなガスにより生成することができる。また、珪素スタッフィングしようとする材料を含むウエハにバイアスを与えて、材料への珪素の衝撃を高めてもよい。プラズマを用いて珪素スタッフィングを行う場合は、珪素スタッフィングは、抵抗率を低くするための材料のアニールのステップの前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
【0222】
(c.プロセッサにより制御を行う膜の構築)上述の材料の堆積、アニール、酸化及び珪素スタッフィングのプロセスは、プロセッサに基づく制御ユニットにより制御を行うチャンバにて行ってもよい。ず48は、このような場合において使用できる制御ユニット600を示す。この制御ユニットは、プロセッサユニット605と、メモリ610と、マスストレージデバイス620と、入力制御ユニット670と、ディスプレイユニット650とを有し、これら全ては、制御ユニットバス625につながっている。
【0223】
プロセッサユニット605は、マイクロプロセッサ又は、メモリに保存された命令を実行することができるその他のエンジンであってもよい。メモリ610は、ハードディスクドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、RAMとROMの組み合わせ又はその他のメモリを備えていてもよい。メモリ610は、プロセッサユニット605が実行して上述のプロセスステップの遂行を促す命令を備えている。メモリ610の中の命令は、プログラムコード緒の形態であってもよい。プログラムコードは、多種多様なプログラム言語のいずれにも適合することができる。例えば、プログラムコードは、C+、C++、BASIC、Pascal、又はその他の様々な言語に書き換えることができる。
【0224】
マスストレージデバイス620は、データ及び命令を保存し、また、磁気ディスクや磁気テープ等のプロセッサ読み出し可能な保存媒体からデータ及び命令を読み込む。例えば、マスストレージデバイス620は、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、テープドライブ又は光ディスクドライブであってもよい。マスストレージデバイス620は、プロセッサユニットから受け取った指示に応じて、命令を保存したり読み込んだりする。マスストレージデバイス620によって保存したり読み込んだりするデータ及び命令は、上述のプロセスステップを行うため、プロセッサユニット605によって用いられる。先ず、データ及び命令は、マスストレージデバイス620により媒体から読み込まれ、次いで、プロセッサユニット605で用いるためメモリ610に転送される。
【0225】
ディスプレイユニット650はプロセッサユニット605の制御の下、チャンバオペレータに対して、情報をグラフィックディスプレイ及び文字数字キャラクタの形態で与える。入力制御ユニット670は、データ入力デバイス、例えばキーボード、マウスやライトペン等を制御ユニットに結合させ、チャンバオペレータの入力を受けることができるようにする。
【0226】
制御ユニットバス625は、データ及び制御信号を、制御ユニットバス625につながっている全てのデバイスの間で転送させる。ここでは制御ユニットバスは1つのバスであって制御ユニット600のデバイスに直接続しているように示されているが、制御ユニットバス625はバスの集合であってもよい。例えば、ディスプレイユニット650、入力制御ユニット670及びマスストレージデバイス620が入力−出力周辺バスにつながり、他方でプロセッサユニット605及びメモリ610はローカルプロセッサバスにつながっていてもよい、このローカルプロセッサバスと入力−出力周辺バスとがつながり、制御ユニットバス625を形成してもよい。
【0227】
制御ユニット600は、基板上に膜を形成するために用いるチャンバの要素につながっている。このような要素のそれぞれが制御ユニットバス625につながり、制御ユニット600とこれら要素の間の連絡を容易にしてもよい。これら要素は、ガスパネル52と、ランプ130等の加熱要素と、圧力制御ユニット157と、RFソース又はソース62,142,143,144と、チャンバ温度測定装置140とを有している。本発明の一具体例では、制御ユニット600は、チャンバ110A、110B及び110Cで必要なガスパネルコントローラ50である。
【0228】
基板上への材料の堆積、アニール、酸化及び珪素スタッフィングのプロセスステップについて上述した操作を、これら要素が行うように、制御ユニット600はこれら要素に信号を与える。また、制御ユニット600は、前述のプロセスステップの実行の制御をいかに進行させるかを決定するため、これら要素から信号を受け取る。例えば、制御ユニット600は温度測定デバイス140から信号を受け取り、ランプ130がチャンバに与えるべき熱量を決定する。
【0229】
図49は、メモリ610から読み込まれたプログラムコードの命令に応じてプロセッサユニット605が行うことができるプロセスステップのシーケンスを例示する。基板上への膜の形成を開始するに当たり、堆積ステップ700が行われる。堆積ステップ700では、プロセッサユニット605が、メモリ610から読み込まれた命令を実行する。このような命令の実行の結果、チャンバの要素が、上述のような基板上への材料の層の堆積を行うよう動作する。例えば、読み込まれた命令に応答してプロセッサユニット605により、ガスパネルがチャンバ内に前駆体ガスを供給し、ランプ130がチャンバを加熱し、圧力制御ユニット157がチャンバ内の圧力を設定するようになる。
【0230】
堆積素700が完了した後、メモリ610から読み込まれた命令により、プロセッサユニット605がチャンバの要素に対して、上述のアニールプロセスの中の1つ等のアニールのステップ701を行わせる。このアニールの操作は、窒素、窒素と水素の混合ガス、窒素と水素と他のガス(アルゴン等)との混合ガスの何れかを用いたプラズマアニールを含んでいてもよい。あるいは、アニールのステップ701は、上述のように連続アニールステップを実行させてもよい。
【0231】
アニールのステップ701の完了後、制御ユニット600に酸化プロセスステップが実行するか否かを決定する酸化決定のステップ702を行わせる。酸化を行わない場合は、ステップ703でメモリから命令を読み込み、プロセッサユニット605に珪素スタッフィングを行うか否かを決定させる。珪素スタッフィングを行わない場合は、制御ユニット600はステップ706において他の堆積操作を行うべきか否かを決定する。堆積操作は、既に堆積した材料の厚さが所望の膜厚と実質的に等しくなるまで行われる。所望の膜厚に達した場合は、基板上への膜の構築のプロセスは完了する。あるいは、新たな堆積のステップ700を行う。
【0232】
酸化決定のステップ702において酸化を行うことを決定した場合は、プロセッサユニット605は酸化のステップ704を実行させる。酸化のステップ704では、読み込まれた命令により、プロセッサユニット605は、チャンバの要素に、上述の堆積材料の酸化のプロセスステップを遂行するに必要な操作を行わせる。この酸化は、プラズマに基づくものであってもよいし、熱によるものであってもよい。酸化ステップ704が完了すれば、プロセッサユニット605は、新たな堆積のステップ700をステップ706において行うべきか否かを決定する。
【0233】
ステップ703において珪素スタッフィングを行うと決定した場合は、プロセスユニット605は珪素スタッフィングのステップ705を実行させる。プロセッサユニット605は、メモリ610内の珪素スタッフィングの命令を読み込みこれを実行させる。この命令に応答して、プロセッサユニット605は、上述の珪素スタッフィングの手順を実行することを可能にする方法で、チャンバの要素を作動させる。この珪素スタッフィングは、熱によりエネルギーが与えられたシランガスに堆積材料を曝露させることにより行ってもよい。あるいは、珪素スタッフィングは、RFシグナルを用いてプラズマを発生させて生成した珪素イオン含有環境に堆積材料を曝露させることにより行ってもよい。珪素スタッフィングのステップ705が完了すれば、堆積ステップ700を繰り返す。
【0234】
図50は、メモリ610から読み込んだプログラムコード命令に応答してプロセッサユニット605が実行することができる、別のプロセスステップのシーケンスを例示する。このプロセスステップのシーケンスは、図49に示されると同じステップを含んでいる。しかし、ステップの順番を変え、アニールのステップ701の前に珪素スタッフィングのステップ705を行っている。
【0235】
堆積のステップ700を行った直後、プロセッサユニット605は、ステップ703において命令を実行し、珪素スタッフィングを行うか否かを決定する。行う場合、珪素スタッフィングのステップ705を行い、次いで、アニールのステップ701を行う。行わない場合は、アニール701を行う。アニールのステップ701の後、プロセッサユニット605がステップ702において酸化を行うか否かを決定する。行う場合は、酸化のステップ704を実行させる。行わない場合は、ステップ706において、新たな堆積を行うか否かを決定する。また、酸化のステップ704を行った後、ステップ706において係る決定を行う。新たな堆積が必要なときは、堆積のステップ700を実行する。そうでない場合は、膜の構築のプロセスは完了する。
【0236】
ここまで特定の具体例について本発明の説明を行ってきたが、特許請求の範囲における本発明の本質及び範囲から離れることなく、いわゆる当業者により様々な変形や変更を行うことができることが認識されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】拡散バリアを含む、集積回路のコンタクトプラグを例示する図である。
【図2】拡散バリアによりふさがれた集積回路のコンタクトホールを例示する図である。
【図3】(a)は化学気相堆積チャンバを例示する図であり、(b)は(a)に示されるチャンバのためのウエハ支持体及び支持アームを例示する図である。
【図4】マルチチャンバ処理装置を例示する図である。
【図5】本発明に従ったウエハ処理チャンバの一具体例を例示する図である。
【図6】図5に示されるウエハ支持体及び支持アームの縦断面図である。
【図7】図6の支持アームの断面図において支持アームがウエハ支持を支持しているところの拡大図である。
【図8】図7の6−6線に沿った部分断面図である。
【図9】(a)は図6に示される支持アームの上面図であり、(b)は図9(a)の7−7線に沿った縦断面図である。
【図10】(a)は図6に示される支持アームの熱電対アイソレータの上面図であり、(b)は図10(a)の8−8線に沿った縦断面図である。
【図11】(a)は図6に示される支持アームのRF電力ストリップアイソレータの上面図であり、(b)は図11(a)に示されるアイソレータの部分的に断面図である正面図である。
【図12】図6の支持アームの下側保持プレートの上面図である。
【図13】図6の支持アーム固定端における詳細を示す断面図である。
【図14】図6の支持アームに配置されるRF電力ストリップのコネクタの詳細を表す図である。
【図15】(a)〜(c)とも、図5で示される整合回路網の具体例を例示する図である。
【図16】本発明に従った半導体ウエハ処理チャンバの別の具体例を例示する図である。
【図17】本発明に従った半導体ウエハ処理チャンバのまた別の具体例を例示する図である。
【図18】従来からの堆積プロセスを用いて堆積させた窒化チタン膜についてのシート抵抗値の時間に対するグラフである。
【図19】従来からの堆積プロセスを用いてシリコンウエハ上に堆積させた窒化チタン膜のラザフォード後方散乱スペクトルのチャートである。
【図20】表Iを示す図である。
【図21】表IIを示す図である。
【図22】表IIIを示す図である。
【図23】NF3のガスを流入させる化学気相堆積を用いて堆積させた窒化チタン膜のラザフォード後方散乱スペクトルのチャートである。
【図24】本発明に従った窒化チタン膜のオージェスパッタ分析のグラフである。
【図25】表IVを示す図である。
【図26】本発明に従った他の窒化チタン膜の元素のオージェ表面スペクトルである。
【図27】図26の窒化チタン膜における様々な元素の原子濃度のグラフである。
【図28】コントロール窒化チタン膜の元素のオージェ表面スペクトルである。
【図29】図28のコントロール窒化チタン膜における様々な元素の原子濃度のグラフである。
【図30】本発明に従った他の窒化チタン膜の元素のオージェ表面スペクトルである。
【図31】図30の窒化チタン膜における様々な元素の原子濃度のグラフである。
【図32】表Vを示す図である。
【図33】本発明に従って生じさせた膜による酸素の吸収を例示するグラフである。
【図34】(a)〜(c)とも、本発明に従って行った膜の有機炭素含有量の低減を例示するグラフである。
【図35】(a)〜(b)とも、本発明に従って形成したバイア及びサリサイドコンタクトの膜抵抗が改善される事を示すグラフである。
【図36】堆積及びプラズマ処理のサイクルの数を変えて生成させた膜の抵抗率を示すグラフである。
【図37】膜の抵抗率とバイアス電圧をプラズマ処理圧力の関数としてプロットしたグラフである。
【図38】(a)は、アニール時間と周波数が膜の抵抗率に与える影響を表すグラフであり、(b)は、アニール時間の膜抵抗率に対する影響についての別の例を表すグラフである。
【図39】(a)〜(b)とも、窒化チタンを連続的に堆積及びアニールして形成した窒化チタン膜についての、オージェ電子分光分析深さプロファイルのグラフである。
【図40】シリコンウエハ上に堆積させた厚さ1000オングストロームの従来形CVD窒化チタン層の、角度走査に係るX線回折のグラフである。
【図41】シリコンウエハ上に堆積させアニールを施した厚さ1000オングストロームのCVD窒化チタン層の、角度走査に係るX線回折のグラフである。
【図42】表VIを示す図である。
【図43】(a)〜(b)とも、本発明の一具体例に従って形成した、非酸化拡散バリア(a)と酸化拡散バリア(b)の化学組成を例示するグラフである。
【図44】本発明の一具体例に従って形成した拡散バリア抵抗特性を例示するグラフである。
【図45】本発明に従った珪素スタッフィングを用いて形成した膜のオージェ深さプロファイルを例示するグラフである。
【図46】本発明に従って珪素を含有する材料を堆積させることにより形成される膜のオージェ深さプロファイルを例示するグラフである。
【図47】図45と図46に示される膜の抵抗率及び組成を比較するグラフである。
【図48】本発明に従って基板上に膜を構築するために用いた、チャンバ制御のための制御ユニットを例示する構成図である。
【図49】本発明の一具体例に従って、図48の制御ユニットにより行う操作のシーケンスを例示するフローチャートである。
【図50】本発明の別の具体例に従って、図48の制御ユニットにより行う操作のシーケンスを例示するフローチャートである。
【符号の説明】
【0238】
10…CVDチャンバ、12…処理チャンバ、14…ウエハ、16…ウエハ支持体、18…ディスク、20…自由端、22…支持アーム、24…固定端、26…ステム、28…変位機構、30…ランプ、32…ウィンドウ、34…ホール、36…シャワーヘッド、38…熱電対、40…温度測定装置、42…ケーブル、100…拡散バリア、101…シリコン基板、102…コンタクトプラグ、103…コンタクトホール、105…導電領域、106…ボイド、110…半導体ウエハ処理チャンバ、112…処理チャンバ、114…ウエハ、116…ウエハ支持体、136…シャワーヘッド、142…RFソース。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、集積回路製造の分野を指向するものである。
【従来の技術】
【0002】
集積回路を製造する場合、堆積プロセスを用いてウエハの上に絶縁材料や導電材料の薄い層を堆積させる。堆積は、化学気相堆積(CVD)や物理気相堆積(PVDやスパッタリング)等の様々な既知のプロセスによって行われる。
【0003】
CVDプロセスでは、化学気相堆積チャンバの中にウエハが搬入される。従来からのCVDプロセスでは、反応性のガスをウエハ表面に供給し、そこでは、熱誘起化学反応が生じ、被処理ウエハの表面の上に薄膜層が形成される。CVDの用途には、メタロ有機化合物を含有するプロセスガスから、窒化チタン等のチタン含有化合物をウエハの上に堆積させることが挙げられる。このメタル有機化合物の1つに、以下の構造式を有するテトラキス(ジアルキルアミド)チタン(Ti(NR2)4)がある。
【0004】
【化1】
ここで、Rは、それぞれが別々のものであるが、アルキル基であり、例えば、炭素原子1〜5のアルキル基である。例えば、式Ti(N(CH3)2)4を有するテトラキス(ジメチルアミド)チタン(TDMAT)が普通に用いられる。
【0005】
ヘリウム、アルゴン、窒素又は水素等の不活性ガスがチャンバ内に係る化合物を随伴し、エネルギーが与えられるようにする。このエネルギーは、熱CVDの場合は熱源により、プラズマ励起CVDの場合は高周波(RF)シグナル源により、発生させることができる。エネルギーが与えられた気相化合物は、ウエハ表面と反応して、物質の薄い層をウエハの上に生成する。TDMATの気相化合物を用いる場合は、ウエハ表面に窒化チタン膜が生成する。
【0006】
スパッタリングプロセスでは、物理気相堆積(PVD)チャンバ内にウエハを配置させ、アルゴン等のガスでチャンバを満たす。チャンバ内に電界を発生することにより、正荷電イオンを有するプラズマがこのガスから生成する。正荷電イオンは加速されて、チャンバ内に設置されているターゲットに衝突する。これにより、ターゲットからターゲット材料の原子が分離してウエハに堆積し、ウエハ表面にターゲット材料の層を形成する。
【0007】
従来からのスパッタリングプロセスでは、正荷電イオンによるターゲット材料の衝突は、ターゲット材料に負のバイアスを与えることにより増強される。これは、ターゲット材料を支持している電極に高周波シグナルを与えることにより実現される。
【0008】
高密度プラズマPVDチャンバ内に正荷電イオンを発生させるため、別個のRFシグナルをチャンバに誘導結合させてもよい。高密度プラズマPVDチャンバは、ターゲット材料のウエハへの誘引を向上するため、ウエハ支持体に結合した別のRFシグナルを有していてもよい。
【0009】
CVDチャンバやPVDチャンバ等の堆積チャンバを用いて、集積回路に拡散バリアを堆積させてもよい。拡散バリアは、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルが、シリコン基板の上に構築した半導体デバイスのアクティブ領域に拡散することを防止する。これにより、基板内へのコンタクトメタルの相互拡散が防止される。材料の絶縁層とは異なり、拡散バリアは、電流を流すことができる導電性の経路を成す。例えば、拡散バリアを用いて、コンタクトホールのベースにおいてシリコン基板の上を覆うとこもできる。
【0010】
集積回路の温度が450℃を越えれば、コンタクトメタルとシリコン基板の間にひどい相互拡散の発生が開始することがある。相互拡散を発生させるままにすれば、コンタクトメタルがシリコン基板内に浸透してしまう。これにより、集積回路内にオープンコンタクトが発生し、集積回路が欠陥を有するようになる。
【0011】
集積回路の製造においては、450℃を越える高温で操作がなされるアルミニウム及び銅のメタライゼーションプロセスを用いることが多かった。従って、拡散バリアは、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を防止する強力な能力を有していることが望ましい。
【0012】
従来では、この要望をかなえるため、拡散バリアをより厚くしていた。しかし、集積回路の製造では、幾何関係をより小さくするようになってきた。幾何関係を小さくすることにより、コンタクトホールの寸法も小さくなり、そのため、核酸バリアはより薄く且つより共形になることが望ましくなってきた。
【0013】
図1は、シリコン基板101の導電領域105とコンタクトプラグ102との間にある拡散バリア100を例示する。基板101の上にある二酸化珪素等の材料の絶縁層104に、コンタクトホール103が形成されている。拡散バリア100を理想的に形成するためには、これを薄く、且つ、コンタクトホール103の表面の等高線に実質的に共形となるようにする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
拡散バリア100が薄く且つ共形度が高い場合は、コンタクトメタル102は、シリコン基板の導電領域105と十分な導電性を有するオーミックコンタクトを形成することができる。拡散バリア100が厚すぎる場合又は図2に示されるようにうまく形成されない場合は、コンタクトメタル102が基板領域105と十分な導電性を有するオーミックコンタクトを形成できなくなるだろう。
【0015】
図2では、うまく形成されない拡散バリア100がコンタクトホール103の開口をひどく狭めてしまう。開口が狭くなることにより、コンタクトメタル102が形成される際、コンタクトホール103のベースに到達できなくなる。その結果、ボイド106が発生する。
【0016】
コンタクトメタル102と基板領域105の間に良好なオーミックコンタクトを確保するため、拡散バリア100の抵抗を最小にすることが望ましい。代表的には、抵抗率の値は、1000μΩ−cm以下が許容される。拡散バリアとして用いることに成功した材料の1つは、窒化チタン(TiN)である。
【0017】
しかし、例えばTDMAT等、堆積プロセスによっては、抵抗率の高い不安定なバリア層を与えてしまう。TDMATの場合では、堆積したバリア材料の大きな部分が炭素から構成されている(炭化水素、カーバイド等)ことが、その原因の一部である。更に、チタンは、化学反応性のメタルであるが、膜と完全に反応しきってしまうわけではない。このようなバリア材料の層を堆積後処理してやることにより、抵抗率を下げ安定化させることが望ましい。
【0018】
集積回路の製造においては、堆積と堆積後処理、のように、連続する製造プロセスのステップを同じチャンバ内で行う(「インシチュウ」)ことが望ましい。インシチュウ操作により、ウエハが別々の製造装置間を移送することが必要な回数を減らすことにより、ウエハをさらす汚染の量を減らす。また、インシチュウ操作により、半導体製造者が購入し保守をする必要がある高価な製造装置の数を減らすことにもつながる。
【0019】
従って、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を抑止する能力を高めた、共形性が高く薄い拡散バリアを構築することが望ましい。更に、この拡散バリアが、電流の導通のための良好な経路を成すような抵抗を有するようにすることが望ましい。また、この拡散バリアをインシチュウで構築することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に従った装置及び方法は、抵抗率が改善された、共形性の高い拡散バリアの、インシチュウによる構築を遂行することを提供する。本発明の態様を実施することにより、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を防止する拡散バリアの能力を、向上させることができる。このように拡散バリアの向上を行っても、その厚さや抵抗率は、許容限度を越えて大きくなることはない。
【0021】
本発明の具体例を実施することができる半導体処理装置は、処理チャンバと、シャワーヘッドと、ウエハ支持体と、RFシグナル手段とを有していてもよい。本発明の具体例の1つでは、半導体ウエハ処理装置は化学気相堆積を行うことができるものである。
【0022】
シャワーヘッドを具備することにより、処理チャンバ内にガスを供給する。ウエハ支持体は、処理チャンバ内でウエハを支持するために具備される。シャワーヘッドに第1のRFシグナルを供給しまたウエハ支持体に第2のRFシグナルを供給するために、RFシグナル手段がシャワーヘッドとウエハ支持体の両方に結合していてもよい。あるいは、RFシグナル手段は、ウエハ支持体にRFシグナルを供給するためにウエハ支持体だけに結合していてもよい。
【0023】
ウエハ支持体は、支持アームによって、処理チャンバ内に支持されている。支持アームは、RFシグナル手段をウエハ支持体に結合させる。また、ウエハ支持体の温度を測定するため、支持アームは、ウエハ支持体内に収容された熱電対を温度測定装置に結合させる。熱電対は、RFシグナル手段から電気的に絶縁される。
【0024】
本発明の態様を実施する場合は、ウエハ上に膜を構築してもよい。第1に、材料の層をウエハの上に堆積させる。この材料は、2種原子の窒化メタル(MxNy)又は3種原子の窒化珪化メタル(MxSiyNz)であってもよい(Mは、チタンTi、ジルコニウムZr、ハフニウムHf、タンタルTa、モリブデンMo、タングステンW又はその他のメタルであってもよい。)。この材料の堆積操作は、化学気相堆積や物理気相堆積等、様々な手段で遂行することができる。
【0025】
材料の堆積後、この材料の層の抵抗率を低減するため、材料をプラズマアニールする。このプラズマアニールは、イオンを有する環境下にこの材料を曝露する工程と、この材料の層に電気的バイアスを与えて、イオンがこの材料に衝撃を与えるようにする工程とを有していてもよい。
【0026】
あるいは、アニールは、異なるガスを用いて連続的に行う多数のアニールステップから成っていてもよい。例えば、第1のアニールのステップには、窒素と水素の混合ガスを用い、また、次のアニールのステップでは、窒素とヘリウムの混合ガスを用いてもよい。この後の方のアニールのステップでは、材料から水素分子を除去して、抵抗率を低減する。
【0027】
アニールが完了すれば、材料の層を酸化してもよい。この酸化により、アルミニウム等のコンタクトメタルの拡散をこの材料が抑止する能力が高められる。あるいは、アニールを施した材料の層をシランガスに曝露することにより、銅等の等のコンタクトメタルの拡散をこの材料が抑止する能力が高められる。
【0028】
本発明に従い、堆積、アニール及び酸化若しくはシラン曝露の全てを、これら3つ全ての操作が完了する前にウエハをチャンバから取り出すことなく、1つのチャンバ内で行うことができる。従って、材料に対しての堆積、アニール及び酸化若しくはシラン曝露を、インシチュウで行うことができる。
【発明の実施の形態】
【0029】
(A.ウエハ処理のためのチャンバ)
(1.概説)図3(a)及び3(b)を組み合わせて、従来のCVDチャンバ10が示される。CVDチャンバ10は、処理チャンバ12を有しており、この中でサセプタ等のウエハ支持体16によりウエハ14が支持される。ウエハ支持体16は円形のディスク18により支持され、このディスクは典型的には、アルミナセラミック等の材料でできている。ディスク18は、支持アーム22の自由端20の上に載っている。支持アーム22はステム26に取り付けられているその固定端24とともにカンチレバーをなす。ステム26は、変位機構28の動きの下で、垂直変位が可能である。変位機構28を動作させて、支持アーム20を処理チャンバ12内で垂直に運動させる。
【0030】
ウエハ14の処理の間、シャワーヘッド36を介してガスを処理チャンバ12内に注入する。シャワーヘッド36は、典型的な態様ではウエハ14の真上に載置されている。
【0031】
動作の際は、CVDチャンバ10の下に設置されている1組の赤外ランプ30により処理チャンバ12の内部が加熱される。ランプ30は、クオーツウィンドウ32を介して処理チャンバの内部を照射するが、このウィンドウ32はランプ30と処理チャンバ12の内部との間に配置される。ランプ30は、処理チャンバ12とウエハ支持体16の両方を加熱する働きをする。その結果、ウエハ支持体16上のウエハ14も加熱される。
【0032】
ウエハ支持体16の加熱を高めるため、図3(b)に示されるように、セラミック支持板18には、数多くのホール(穴)34が貫通して形成される。図3(b)に示されるホール34の典型的な配置により、何故このプレート18がしばしば「スイスチーズ」プレートと呼ばれるかが明らかになる。
【0033】
熱CVDウエハ処理は、ウエハ温度に非常に敏感である。ウエハが適切な温度に維持されることを確保するため、ウエハ温度が熱電対38により測定される。熱電対38は支持アーム22の自由端20で支持され、ウエハ支持体16の本体の中に設置される。導電ケーブル42によって熱電対38が、処理チャンバ12の外側に設置される温度測定装置40につなげられる。ケーブル42は典型的には、支持アーム22の中心内部に形成される孔に沿って走っている。
【0034】
図4は、集積回路を含むウエハの製造を遂行するために適したマルチチャンバ真空システムを示す。チャンバAは、集積回路を形成しようとする基板のプレクリーニングのためのものである。プレクリーニングの後、基板の上に膜を堆積させることができるよう、基板はCVDチャンバBに移送される。そして、基板は、堆積膜の品質向上のため、堆積後処理チャンバCに移送される。
【0035】
拡散バリアのように膜動作を向上させる物質を膜に「詰める(スタッフする)」ことが望ましい場合は、基板を、この「詰め(スタッフィング)」を行うことができるチャンバDに移送してもよい。例えば、膜は窒化チタン材料の層であってもよく、これには酸素が詰められ、膜のアルミニウムに対する拡散性が低減される。窒化チタンバリア層に酸素を詰める事は、 Ngan らの米国特許第5,378,660号、標題「バリア層及びアルミニウムコンタクト」に開示されている。
【0036】
上述のシステムのいずれを用いても、本発明の態様を実施することができる。しかし、これらいずれのシステムも、ウエハ上への材料の堆積と材料への堆積後処理を行って膜を形成することを、1つのチャンバ内で行う能力を与えるものではない。この堆積後処理には、アニール、酸化、珪素への曝露又はこれらの組み合わせが含まれていることもある。
【0037】
(2.インシチュウ操作のためのチャンバ)図5は、本発明に従った半導体ウエハ処理チャンバ110Aを例示する。ウエハ処理チャンバ110Aは、半導体ウエハ114に対して、一連の堆積のステップと堆積後処理のステップとをインシチュウで行うことを提供する。本発明に従い、図5に示されたチャンバ110Aは、米国特許出願08/567,461号及び08/677,185号に詳細が記載されるような化学気相堆積チャンバであってもよい。
【0038】
ウエハ処理チャンバ110Aは本発明に従い、材料の堆積及び処理を行うために多数のチャンバを用いる必要を排除する。例えば、ウエハ処理チャンバ110Aを用い、ウエハの上に材料を堆積させこの堆積材料をアニールして安定化させ抵抗を低減することにより、ウエハの上に膜を形成してもよい。その結果、膜の形成中に、チャンバ110Aの外部にあるダメージを与えるような不純物にウエハがさらされることはない。
【0039】
図5に示されるように、半導体ウエハ処理チャンバ110Aは、アースにつながっている処理チャンバを有している。処理チャンバ112内では、半導体ウエハ114は、ウエハ支持体116の上に支持されていてもよく、これは、図3(a)及び3(b)に示されるようなウエハ支持体16と同じであってもよい。ウエハ支持体116は、サセプタ、ペデスタル、抵抗ヒータ、又はその他のウエハ114を支持するに適した手段であってもよい。
【0040】
図5では、ウエハ支持体116はサセプタであり、これは、ランプを用いてウエハ支持体116を照射する場合にしばしば用いられるタイプのウエハ支持体である。このサセプタは、陽極酸化アルミニウム製であり、図3(b)の支持プレート18と同様の、従来からのアルミナセラミック支持プレート118である。
【0041】
支持プレート118とウエハ支持体116とウエハ114とは一緒に、カンチレバーのアルミナ支持アーム122の自由端120の上に支持されている。支持アーム122の固定端124は、略垂直に運動可能であるステム126に載置され、このステムはアイソレータ160により処理チャンバから電気的に絶縁されている。この垂直方向に可動であるステム126は、変位機構128の動きの下で、垂直に変位することができる。
【0042】
処理チャンバ112及びその内容物は、従来形のランプ130によって加熱され、このランプは、従来形のクオーツウィンドウ132を介してウエハ支持体116に照射する。半導体ウエハ処理チャンバ110Aは更に、温度測定装置140を有している。温度測定装置はウエハ支持体116につながっており、ウエハ支持体116の温度を感知する。圧力制御ユニット157には、真空ポンプ、圧力ゲージ及び圧力調整弁の全てが含まれている。圧力制御ユニット157は、処理チャンバ112内の圧力を調整し、処理チャンバ112からキャリアガスと反応副生成物の両方を排出する。
【0043】
処理チャンバ112内のウエハ支持体116の上方には、シャワーヘッド136が配置され、これはアイソレータ159によってチャンバから電気的に絶縁されている。シャワーヘッド136には、ガスパネル52からプロセスガスが供給される。ガスパネル52は、コンピュータの形態のガスパネルコントローラ50によって制御される。
【0044】
堆積後アニールを行うため、半導体ウエハ処理チャンバ110Aは、RFソース142を有している。RFソース142はRF電力を、第1の電極として機能するシャワーヘッド136と、第2の電極として機能するウエハ支持体116に印加する。RFソース142は、1MHz未満の周波数を有するシグナルを与える能力を有し、好ましくは周波数350kHzであるシグナルを与える能力を有している。RFシグナルを2つの電極136及び116に与えることにより、他の従来形の半導体ウエハ処理チャンバ、例えばPVDチャンバ等において2つの電極にRFシグナルを与える場合には存在しないような難問を克服する。
【0045】
本発明の具体例では、シャワーヘッド136への過剰な負バイアスの印加を防止するこことが可能である。シャワーヘッド136に過剰な負バイアスが与えられれば、シャワーヘッド136のイオン衝突が増大し、その結果、汚染粒子が発生するようになる。
【0046】
従来形のPVDチャンバでは、ターゲット電極のイオン衝突の量が大きいことが望ましい。従来形のPVDチャンバでは、ターゲット電極が、堆積しようとする材料のターゲットを支持している。このターゲット電極は大きな負バイアスが与えられているため、イオンはターゲット材料と直ちに衝突し、ターゲット材料を堆積させる。
【0047】
更に、従来からのスパッタリングプロセスにおいて、ウエハ支持体に負バイアスを与える事と、ウエハ温度を制御する事は、典型的な場合ではさほど重要ではない。このことは、本発明の具体例においては真実ではない。ウエハ支持体116への負バイアスを制御することは、ウエハ114へ向かうイオン流束を最適レベルとするために望ましい。ウエハ114の温度を正確に設定することは、堆積と、堆積材料の堆積後処理の両方を行うために望ましい。
【0048】
従って、ウエハ支持体116は、RFソース142につながっている機能と、熱電対温度感知機構(図示せず)を収容する機能の、2つの機能を与える。RFソース142は、ウエハ支持体116への負バイアス供給を制御し、熱電対はウエハ114の温度をモニタする。
【0049】
正確なウエハ温度読み出しを得るため、熱電対シグナルからRFソースシグナルを絶縁するようにウエハ支持体116及び支持アーム122が設計される。この絶縁により、熱電対シグナルとRFソースシグナルの両方とも、チャンバ110Aの中で適正に伝達されるため、ウエハ114には適正にバイアスが与えられ、且つ適正に加熱される。ウエハ支持アーム122の詳細は、図6〜14を参照して以下に説明される。
【0050】
(3.ウエハ支持アーム)図6〜9(b)を概略的に参照すれば、ウエハ114がウエハ支持体116の上に支持されており、このウエハ支持体自体は、従来からの「スイスチーズ」アルミナセラミック支持板118に支持されている。薄いクオーツプレート119が、支持板118とウエハ支持体116の間に配置されている。クオーツは、支持板116とウエハ処理チャンバ110A内の他の部品との間のアーク発生を防止する。クオーツプレート119は、ランプ130によって与えられるエネルギーを放射するため、透明である。これにより、ランプ130はウエハ支持体116を速く加熱できるようになる。
【0051】
ウエハ支持体116は、クオーツシールド150によって取り囲まれている。クオーツシールド150は、アルミナ支持板118の上に置かれており(図7に部分的に示される)、ウエハ支持体116の上方に伸び、ウエハ支持体116とウエハ114の両方がその中に存在するウエハ受容ポケットを画成する。ウエハ114をウエハ支持体116から出し入れする際にウエハ114を容易に受容できるよう、クオーツシールド150の上エッジは外側に向かう方に面取りがされている。クオーツシールド150は、ウエハ支持体116のエッジがアーク誘発する事を防止する重要な機能を有している。
【0052】
処理においては、ウエハ支持体116内に設置した熱電対152によりウエハ支持体116の温度を測定する。熱電対152は、ウエハ支持体116の本体の中にぴったりとフィットするアルミナ窒化物シース154の中に設置される。シース154は、熱電対152とウエハ支持体116の本体との間を電気的に絶縁する。シース154は、電気抵抗が高いが、良好な熱伝導体である。シース154は熱容量が低いため、熱的慣性が低く、このため、熱電対152と共に用いることが適している。更に、シース154は、処理チャンバ112の処理環境の中で化学的に安定である。
【0053】
熱電対152は、導電ケーブル156により温度測定装置140に接続される。以下に述べていくように、ケーブル156は、支持アーム122の中心部分に沿って通過し、処理チャンバ112の中であらゆる高周波エネルギーから電気的に絶縁される。
【0054】
熱電対152は、導電ケーブル156にクリンプしたニッケル小球158によって適所に配置される。球158は、キー状のセラミック保持部品162に形成されたスロット160の中に保持される。キー状保持部品162は、ウエハ支持体116の下側の中央突起スタブ166に形成されたグルーブ164の中に鍵状に嵌合する。この構成により、ウエハ支持体116が支持アーム122から離されれば、熱電対152を比較的容易に取り出し交換することができることが確保される。上述の構成により、熱電対をウエハ支持体116の本体の中に適所にしっかりと保持しつつ、ウエハ支持体116と熱電対152の間の電気絶縁を維持することが、確保される。
【0055】
ウエハ支持体116は、中央スタブ166内にねじ止めされる1対のボルト168により支持アーム122に固定される。図8は、支持アーム120が主に、逆U字形セラミック部分170により構成されることを示している。このU字形部分170の水平部を貫くホールのそれぞれの中をボルト168が通っている。ボルトがU字形部分170の水平部上に過剰な負荷を与えることを防止するため、各ヘッドはベルベディアばねワッシャ174によって水平部分から間隔がおかれている。ボルト168のヘッドがセラミックU字形部分170へ過剰な負荷を与える事を防止することは重要であり、何故なら、セラミック、特に薄い部分のセラミックは比較的脆いからである。過剰な負荷の力は、U字形部分170を破壊してしまうことがある。
【0056】
RF導通ストリップ180が、支持アーム122に沿って通っている。ストリップ180は、ウエハ支持体116の下側のスタブ166のところに電気的に接続する。RF導通ストリップ180は、高温でエラストマー的な性質の誘電材料、ポリイミド等、例えばデュポンエレクトリック社から Pyralin の商品名で入手可能な材料等、によりコーティングされている。
【0057】
このポリイミドコーティングが、RF導通ストリップ180に電気的絶縁を与える。加えて、RF導通ストリップ180は、セラミックアイソレータ182により導電ケーブル156から電気的に絶縁される。セラミックアイソレータの詳細は、図10(a)及び10(b)を参照して以下に説明する。更に、RF導通ストリップ180は、逆U字形部分170の「脚」により、またアイソレータ184により、処理チャンバ112の内部から絶縁される。アイソレータの詳細は、図11(a)及び11(b)を参照して下記に説明する。
【0058】
組立中に、熱電対152及びこれに係るシース154をウエハ支持体116内に挿入する。次いで、熱電対のリードケーブル156をU字形部分170の中に供給する。ボルト168を用いて、ウエハ支持体116をU字形部分170の上に留める。導電ケーブル156の上にアイソレータを配置して、導電ケーブルをRFストリップ180から絶縁する。そして、RF導通ストリップ180はアイソレータ182の上に導かれ、また、アイソレータ184はRF導通ストリップ180の上に配置される。
【0059】
その後、U字形部分170の「脚」の自由端に近接して形成されたグルーブ188の中に平坦なセラミックリテーナ186を挿入する。リテーナ186は、U字形部分170の本体の中に配置された様々な部品全てに対してのリテーナとして機能する。リテーナ186の詳細は、図12に示される。
【0060】
図9(a)及び9(b)に示されるように、支持アーム122は、比較的細身の部分に、その自由端120及び固定端122において大きくなった部分を有する構成を有している。支持アーム122の自由端120は2つのボルト穴172を有し、これらは、自由端120の上面に形成されたスロット190のそれぞれいずれかの側に形成されている。このスロット190は、ウエハ支持体116の底部のスタブ166から下向きにウエハ支持体116まで伸びるキー状構成物192を受容する。このキー状構成物192は、スロット190に嵌合し、ウエハ支持体116が支持アーム122上に配置されたときにこれを更に安定にする。キー状構成物192の詳細は、図8及び14に示される。支持アーム122の固定端124は、垂直可動ステム194に固定されるが、その詳細は図13を参照して説明する。
【0061】
図10(a)及び10(b)から、アイソレータ182がU字形チャンネルの形態でありその中に導電ケーブル156が入っていることがわかる。このU字形チャンネルは、大きくなった部分196を一方の端部に有している。この大きくなった部分196は、支持アーム122の固定端124でRF導通ストリップ180をカバーする。
【0062】
図11(a)及び11(b)に示されるように、アイソレータ184は大きくなった部分198を有し、この部分は、支持アーム122の自由端120の中に比較的しっかりとフィットしている。大きくなった部分198はその中にチャンネル200を有している。装置を組み立てるときは、RF導通ストリップ180がアイソレータ184の上面202の上に置かれている。また、RF導通ストリップ180は、チャンネル200の内側の等高線に沿うように変形する。この構成は図7に示されており、RF導通ストリップ180を接続ボルト168から分離させる。図7から理解されるように、適切なスペーサー部品204がチャンネル200の中にフィットするように具備され、RF導通ストリップ180とボルト168の間に電気的絶縁を与える。
【0063】
リテーナ186の詳細は、図12に例示される。リテーナ186は、略スプーン状であり、支持アーム122の自由端120に形成されたグルーブの中に受容されるようなサイズを有する大きくなった部分206を有している。組立中は、リテーナ186は、支持アーム122の自由端120からスロット188の中に挿入される。
【0064】
支持アーム122の固定端124は、図13に例示されるように、ステム194に接続される。ステム194は、中空のチューブであり、その上端で広がってフランジ210を画し、このフランジに、支持アーム122の固定端124がボルト212によりボルト留めされる。ボルト212とセラミック固定端124の間に過剰な負荷力が働くのを防止するため、各ボルト212と支持アーム122の固定端124の間に皿ばねワッシャ214が与えられる。
【0065】
ステンレス鋼のベローズ216が、フランジ210と処理チャンバ112の下壁の間に配置される。ベローズ216により、支持アーム122が垂直上下に動くことができつつ、同時に、これが処理チャンバ112の壁218を貫いて通過するときにステム194の周りにシールを与えることが可能となる。
【0066】
前に指摘したように、ステム194は中空のチューブの形態である。ステム194を形成するチューブの内側に、非導電チューブ220が配置される。非導電チューブ220は、典型的には、ポリイミド製であり、処理チャンバ112と中空RF導通チューブ222との間を電気的に絶縁する。RF導通チューブ220は、RFソース142とRF導通ストリップ180とに接続される。熱電対152と温度測定装置140の間を連通させる導電ケーブルが、RF導通チューブ222に形成された中心孔を下に通過する。
【0067】
図14は、図13と共に、RF導通ストリップ180とRF導通チューブ222との間をどのように接続するかを例示する。図13に示されるように、RF導通チューブ222はその上端で広がり、円形のフランジ224を画する。RF導通ストリップ180は、図14に例示されているが、円形の導電フープ226のところで終了している。支持アーム122が組み立てられるとき、フープ226はRF導通チューブ222の円形フランジ224の上に置かれている。
【0068】
これにより、ウエハ支持体116につながっているRF導通ストリップ180へのRF導通接続が与えられる。この接続によって、支持アーム122の組立及び分解が容易になる。また、この接続により、支持アーム122の固定端124がステム194のフランジ210の上に配置される場合に、決まった量の(ステム194の縦のアクセスの上方の)回転の自由度が与えられる。
【0069】
(4.整合回路網)本発明に従い、RFソースは、ウエハ支持体116とシャワーヘッド136の両方に、整合回路網145を介して結合する。整合回路網145は、抵抗器/インダクタ/キャパシタの回路網である。整合回路網145は、与えられた周波数においてソースにより与えられる電力を最大にするため、負荷インピーダンスをソースインピーダンスにマッチングさせる。また、整合回路網145は、RF電力をウエハ支持体116とシャワーヘッド136に分け、シャワーヘッド136とウエハ支持体116に与えられるRFシグナルの位相シフトを設定する。
【0070】
本発明の一具体例で用いられる整合回路網145が、図15(a)に例示される。図15(a)に示される整合回路網145は、負荷整合トランス70と、2つのインダクタ80,82と2つのキャパシタ72,74とを有している。負荷整合トランス70は、一端でRFソース142とアースに、他方の端でインダクタ80及び82に結合している。インダクタ80はキャパシタ72を介してシャワーヘッド136に、インダクタ82はキャパシタ74を介してウエハ支持体116に、それぞれ結合する。
【0071】
負荷整合トランス70は、1次巻き線と2次巻き線の比が1:1〜1:4であってもよく、1:1.22が典型的である。本発明に従い、負荷整合トランス70の1次コイルは18巻きであってもよく、また、負荷整合トランス70の2次巻き線は47巻きであってもよい。インダクタ80及び82はそれぞれ、インダクタンスが50μHであってもよく、キャパシタ72及び74はそれぞれ、キャパシタンスが0.01μFであってもよい。
【0072】
負荷整合トランス70の巻き線比を変えることにより、シャワーヘッド136とウエハ支持体116との間のRFシグナルの分解及び移動シフトを変えることができる。あるいは、図15(b)に示されるように、負荷整合トランス71が選択可能接地タップ78を有していてもよい。この選択可能接地タップ78により、接地タップの位置を変えて選択して、シャワーヘッド136とウエハ支持体116との間のRFシグナルの分解及び移動シフトを変えることができるようになる。
【0073】
整合回路網145のまた別の具体例が図15(c)に示される。キャパシタ72とシャワーヘッド136は両方とも、誘導チョーク83を介してアースにつながっている。キャパシタ74とウエハ支持体116は両方とも、誘導チョーク84を介してアースにつながっている。誘導チョーク83及び誘導チョーク84はそれぞれ、500μHである。この具体例を用いる場合は、シャワーヘッド136とウエハ支持体116にはDCバイアスが与えられなくなる。
【0074】
プラズマアニール及び/又は酸化のために処理チャンバ112を用いる場合には、整合回路網145を介してシャワーヘッド136とウエハ支持体116をRFソース142に結合することは有利である。シャワーヘッド136とウエハ支持体116におけるRFシグナルの位相シフトを設定して、堆積後処理中に生成するプラズマの均一性を向上させる。シャワーヘッド136のシグナルとウエハ支持体116のシグナルの間の位相の関係がずれれば、プラズマ中のイオンが、接地されている処理チャンバ112よりもウエハ支持体116の方へと誘引される。また、この位相のずれは、シャワーヘッド136とウエハ支持体116の間の電圧ポテンシャルを上げるため、ウエハ114へ向かうイオン流束の均一性を向上させる。
【0075】
シャワーヘッド136とウエハ支持体116へのシグナルの電力分割を調節することにより、ウエハ114とシャワーヘッド136のイオン衝突の強度を制御することが可能となる。プラズマ生成中にウエハ支持体116に負のバイアスを与えれば、一般に、ウエハ114へ向かうイオンの加速度が上がる。ウエハ支持体116に過剰な負バイアスを与えれば、ウエハ114にダメージを与えるようなエネルギーでイオンがウエハ114に衝突するようになる。プラズマ生成中にシャワーヘッド136に過剰な負のバイアスを与えれば、一般に、イオンがシャワーヘッド136に衝突するようになり、汚染粒子が発生する。
【0076】
本発明の具体例においては、RFソース145のシグナルの電力分割の選択は、チャンバ110Aのオペレータにより行うことができる。シャワーヘッド136とウエハ支持体116の負バイアスが前述の汚染及びウエハにダメージを与えるイオン衝突を生じる可能性を最小にするように、この電力分割を設定することができる。
【0077】
本発明に従い、ウエハ支持体116とシャワーヘッド136とに供給されるシグナルが同じ電力及び周波数を有するが位相は180度ずれるように、整合回路網145の構成を与えてもよい。これにより、処理チャンバ112内のガスをプラズマへ変換するため、RF電力を効率よくシャワーヘッド136とウエハ支持体116に結合させる。
【0078】
RF分割電力の構成の具体例は、 Sugiyama らへの米国特許第5,314,603号、標題「チャンバ内の電極において実際のRF電力を検出し制御することが可能なプラズマ処理装置」や、Ogle らへの米国特許第4,871,421号、標題「プラズマエッチングシステムのための分割位相ドライバ」を参照して理解することができる。
【0079】
(5.チャンバ動作)堆積プロセス中は、ガスパネルコントローラ50により、ガスパネル52がTDMAT等のCVDプロセスガスをシャワーヘッド136へ供給するようになる。シャワーヘッド136を介してプロセスガスが処理チャンバ112内に導入され、加熱されているウエハ114へと輸送される。その結果、材料の薄い層がウエハ114の上面に堆積する。TDMATを用いる場合は、形成される材料の薄膜は窒化チタンTiN である。
【0080】
半導体処理チャンバ110A内で行われる堆積後処理の間、下記のように、アニール、酸化又は珪素への曝露を行ってもよい。プラズマアニールプロセス中は、ガスパネルコントローラ50の制御の下、ガスパネル52により、窒素、水素、アルゴン又はこれらの混合物等のプラズマガスをシャワーヘッド136に供給する。堆積後の酸化プロセスにおいては、ガスパネルコントローラ50の制御の下、ガスパネル52により、O2又はN2/O2の混合物等の酸素ベースのガスをシャワーヘッド136に供給する。珪素曝露プロセス中は、ガスパネルコントローラ50の制御の下、ガスパネル52により、シラン(SiH4)等の珪素ベースのガスをシャワーヘッド136に供給する。
【0081】
プラズマアニールプロセスと酸化プロセスでは共に、シャワーヘッド136により供給されるガスは、ウエハ114と反応する正荷電イオンを含むプラズマへと変換される。珪素曝露プロセスでは、ウエハ114及びウエハ支持体116の加熱によって、ガスにエネルギーが与えられる。堆積や堆積後処理の何れにおいて用いられるいかなるキャリアガスも、堆積や堆積後処理の副生成物と共に、圧力制御ユニット157によって処理チャンバ112から排出される。
【0082】
(6.代替的なチャンバの構成)図16は、本発明に従ってプロセスを遂行するための本発明の代替的な具体例を内包する半導体ウエハ処理チャンバ110Bを例示する。半導体ウエハ処理チャンバ110Bは、シャワーヘッド136がRFソースと結合していない点を除いて、図5に示されるチャンバ110Aと同じである。RFソース62は、整合回路網63を介してウエハ支持体116に結合し、また、シャワーヘッド136は接地されている。
【0083】
整合回路網63は、ウエハ支持体116の負荷インピーダンスをRFソース62のインピーダンスに整合させるための従来からの手段を用いている。この整合により、RFソース62によって与えられる電力が、所与の周波数において最大になる。本発明に従って、ウエハ114に過剰な負バイアスを与えることなくプラズマアニールや酸化を行うために十分なRFエネルギーを提供するよう、整合回路網63及びRFソース62がRFシグナルをウエハ支持体116に提供できるように構成されてもよい。
【0084】
図17は、本発明の代替的な具体例を内包し本発明に従ってプロセスを遂行することができる半導体ウエハ処理チャンバ110Cを例示する。半導体ウエハ処理チャンバ110Cは、シャワーヘッド136がRFソース143に、ウエハ支持体116がRFシグナルソース144にそれぞれ別々に結合している点を除いて、図5に示されるチャンバ110Aと同じである。RFソース143は、整合回路網146を介してシャワーヘッド136に結合し、RFソース144は、整合回路網147を介してウエハ支持体116に結合している。
【0085】
整合回路網146はシャワーヘッド136を、整合回路網147はウエハ支持体116を、それぞれソースインピーダンスに整合させるための、従来からの手段をそれぞれ用いている。この整合により、各ソースによって与えられる電力が、所与の周波数において最大になる。好ましくは、シャワーヘッド136に与えられるRFシグナルとウエハ支持体116に与えられるRFシグナルの間の位相シフトと電力分割を制御できるよう、RFソース143と144とはつながれている(図示せず)。本発明に従い、ウエハ支持体116へのRFシグナルとシャワーヘッド136へのRFシグナルを、同じ電力及び周波数で且つ位相が180度ずれるように供給できるよう、整合回路網146及び147とRFソース143及び144を構成してもよい。
【0086】
本発明のまた別の具体例では、図5、図16又は図17の何れのウエハ支持体116も、抵抗ヒータを有していてもよい。この抵抗ヒータはウエハ114を支持し且つウエハ114加熱のため抵抗コイルを内包する。
【0087】
図5、図16及び図17に示される半導体ウエハ処理チャンバを用いて、数多くのプロセスを行ってもよい。本発明の更なる特徴においては、拡散バリアを形成するためのプロセスが与えられる。本発明のプロセスは前述の諸装置において行うことが有利であることが認識される。しかし、ここに開示する方法は、適切なチャンバを何個でも利用して行うことができることが、更に認識される。
【0088】
(B.膜の構築)
(1.概説)本発明の具体例は、集積回路において改良された抵抗値を有する膜を構築するものである。ここで構築できる膜の1つは、拡散バリアである。しかし、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を抑止する目的で、本発明の具体例を用いて他の膜を構築することもできる。
【0089】
本発明に従って、半導体ウエハ等の基板上に、材料の層が堆積される。次いで、この材料にはプラズマアニールが施され、この堆積材料の抵抗率が低減される。続いて、この堆積した層の上に、材料の新たな層が堆積する。この材料をまたアニールして、材料の抵抗率を低減させる。材料の堆積及びアニールを数回繰り返して、ウエハの上面に配置される膜を形成してもよい。
【0090】
本発明の別の具体例では、分子で詰められる(スタッフされる)べきウエハ上の材料をアニールする。このスタッフィングを行うことにより、アルミニウムや銅等のコンタクトメタルの拡散を抑止する材料の能力が向上する。アルミニウムに対するバリアとしての膜の機能を向上させるため、アニールを施した材料に酸化を施すことによりスタッフィングを行ってもよい。銅に対するバリアとしての膜の機能を向上させるため、アニールを施した材料をシラン(SiH4)に曝露することによりスタッフィングを行ってもよい。あるいは、3元素の窒化珪化メタルである材料を堆積させることにより、銅の拡散を低減してもよい。
【0091】
本発明のまた別の特徴は、ウエハ上の膜の堆積、アニール及びスタッフィングに関して、インシチュウで行ってもよいことである。
【0092】
(2.膜抵抗率の低下のためのアニール)本発明に従い、その抵抗率を下げるように、ウエハ上に材料の層を堆積させこの材料の層をプラズマアニールすることにより、ウエハ上に膜を形成してもよい。
【0093】
ウエハ上への材料の膜の堆積は、従来のCVDを行うことができるチャンバ、例えば図3(a)のチャンバ10、図5のチャンバ110A、図16のチャンバ110Bや図17のチャンバ110C等において、行うことができる。窒化チタン材料の堆積は、メタロ有機チタン化合物、好ましくはテトラキス(ジアルキルアミド)チタン(Ti(NR2)4)を用いて実現することができる。
【0094】
キャリアガス、例えばヘリウム、アルゴン、窒素又は水素が、チタン化合物をチャンバ内に同伴させる。チャンバ内では、チタン化合物は、別の場所で生成した反応性種、例えばハロゲンラジカル、アンモニウムラジカルや水素ラジカル等と反応する。窒化チタンの堆積を促進するため、ウエハ温度を約200〜600℃に設定し、処理チャンバの圧力を約0.1〜100トールに設定する。
【0095】
堆積した窒化チタンは、少なからぬ量の炭素を含有しているため、窒化チタン膜は化学反応性を有することとなる。従って、この膜を空気やその他の酸素含有ガスに曝露すれば、膜に酸素が吸収される。この酸素吸収は調節できないため、膜の安定性は損なわれ、膜の抵抗率は悪化上昇する。このことにより、ウエハ上に形成するデバイスの信頼性が低くなることがある。
【0096】
空気への曝露後、窒化チタン膜のシート抵抗率は、約10,000μΩ−cm/sqから約100,000μΩ−cm/sqの値まで上昇する。これは、堆積した窒化チタンが導電性のコンタクト及びバイアに対するバリアとして機能している場合に、甚だ望ましくない。バリア層に対しては、抵抗率は、約1,000μΩ−cm/sq未満のオーダーであることが望ましい。
【0097】
本発明に従い、高エネルギーイオンを含む不活性プラズマによって、堆積窒化チタン膜をプラズマアニールする。DCバイアス電圧をウエハに印加することにより、これらイオンが得られる。このDCバイアス電圧のウエハへの印加は、ウエハ支持体に結合して前駆体ガスからプラズマを生成するに十分な電力を与える低電力のRFソースによって行われてもよい。ウエハへの電圧の印加は、約100〜1,000ボルトであれば十分である。例えば、100ワットのRF電力を有する400ボルトを印加してプラズマを生成してもよい。これは高エネルギーイオンの生成に十分であり、また、経時的に安定であるように窒化チタン膜をパッシベーション又は密度化させるに十分である。
【0098】
本発明に従ってアニールを施した窒化チタン膜を、空気、酸素又は水蒸気に曝露した場合、酸素は吸収されないか、あるいは、ウエハにバイアス電圧を印加しない場合に較べて著しく少ない量しか吸収されない。本発明に従って堆積しアニールを施した窒化チタン膜は、メタロ有機チタン化合物の従来からの熱CVDによって生成した窒化チタン膜に較べて、結晶性が高く、窒素をより多く含み、酸素及び炭素の含有量が低い。本発明に従ってアニールを施した堆積窒化チタン膜は、低く且つ安定なシート抵抗率も有している。
【0099】
本発明の厳密なメカニズムは知られるところではない。しかし、バイアスが与えられている基板上の堆積材料に高エネルギーイオンが衝突することにより、膜の密度が高められると考えられる。
【実施例】
【0100】
(a.窒素プラズマ)本発明の1つの具体例では、堆積窒化チタンをアニールするためのプラズマの生成に用いるガスは、いかなるガスであってもよいが、酸素及び炭素を含有しないガス、例えば、窒素、アンモニアやアルゴン等であることが好ましい。窒素は、窒化チタン材料のパッシベーションに最も有効である。あるいは、イオンソース等の非ガス種から生成したイオンを、堆積材料に衝突させてもよい。堆積窒化チタンのプラズマ処理は、堆積材料の粒子の性能、ステップカバレージ、堆積速度やバリア性能に悪影響を与えない。
【0101】
従来からの真空化学気相堆積チャンバ10において、以下の条件の下に、窒化チタンをシリコンウエハ上に堆積した。処理チャンバ12内の圧力は0.45トールであり、ウエハ支持体16の温度を420℃に設定した。ヘリウム流量は、Ti(NR2)4のバブラを介して40sccmを採用し、窒素希釈の流量は100sccmに設定した。窒化チタンの堆積に続いて、アルゴンパージガスをチャンバ内に200sccmで流入させた。窒化チタンを堆積させるための従来からのCVDプロセスは、 Sandhu らに発行の米国特許第5,246,881号に開示されている。開示されている。
【0102】
この結果、毎分約425オングストロームの堆積速度で窒化チタンが堆積した。この結果堆積した窒化チタン膜は、厚さが非常に均一であり、4枚のウエハの厚さ変動は3.03%であった。しかし、シート抵抗率(ウエハ4枚の平均)は、11,360μΩ−cm/sqと高かった。また、抵抗率は不安定であった。
【0103】
図18は、堆積窒化チタンのシート抵抗率(Ω/sq)の時間(hour)に対するグラフである。四角(□)で示される測定値は、所望の膜厚が得られた後堆積チャンバから取り出した膜から得られた値である。丸(○)で示される測定値は、堆積チャンバから取り出す前に温度150℃に冷却した膜から得られた値である。丸で示される膜のシート抵抗率は四角で示される膜のそれよりも低いが、両方の膜ともに安定性は低く、シート抵抗率は経時的に上昇している。このような特性は、拡散バリアには望ましくない。
【0104】
堆積窒化チタン膜にラザフォード後方散乱測定を行った。得られたスペクトルは図19に与えられる。炭素のピークC、窒素のピークN及び酸素のピークOが、珪素界面のものとしてスペクトル中に示される。窒化チタン中の様々な物質の含有量は、以下の通りである。炭素含有量は約30%、窒素含有量は約24%、酸素含有量は約25%、チタン含有量は約23%である。これは、堆積窒化チタン膜が比較的高いレベルの炭素及び酸素の不純物を含んでいることを示すものである。
【0105】
窒化チタンのシート抵抗率を低減するための試みとして、堆積の操作中に様々なガスを添加することにより、窒化チタンの堆積方法を変えた。その結果は図20の表Iに当てられる。表Iの「コントロール」欄のチタンは、この直前で述べた方法を用いて堆積したものである。窒化チタンのシート抵抗率を下げるために最も成功した試行は、堆積中にNF3(7sccm)の流入を含めた試行である。これにより、シート抵抗率が2,200μΩ−cmに下げられた。しかし、NF3処理材料のラザフォード後方散乱スペクトル(図23参照)では、膜中に弗素が不純物として包含されていることが示されている。弗素の包含は望ましいことではない。
【0106】
次に、堆積前及び堆積後のガス流入及びプラズマ処理を用いて、このような処理が堆積窒化チタンのシート抵抗率に影響するか否かを求めた。2つのケースでは、窒化チタンの化学気相堆積の前後にプラズマを点火した。プラズマの生成は、100ワットの低電力で行われ、窒化チタン堆積を受ける基板シリコンウエハへバイアスを与えなかった。その結果を、図21に示される表IIにまとめた。堆積前処理及び堆積後処理のいずれも、堆積窒化チタンのシート抵抗率にさほど影響を与えなかった。このように、プラズマ中でウエハにバイアス電圧を印加することにより、シート抵抗率を下げ且つこれを経時的に安定させることは、甚だ予測困難である。
【0107】
本発明の特徴を、以下の実施例によって更に説明するが、本発明はここに記載される詳細事項に制限されると解されるものではない。窒化チタン層を有するシリコンウエハ基板にバイアス電圧400ボルトを印加する一連のテストを行った。窒化チタン層のウエハ上への堆積は、図16のチャンバ110Bで行い、約100ワットのRF電力を印加してプラズマによりアニールを行った。堆積とバイアス印加を連続的にサイクルさせた。これら2つのステップを〜5回サイクルさせた。堆積物の厚さ、サイクルの回数及び経時的に得られる抵抗率を、図22の表IIIに与える。「コントロール」は、停止せずに5ステップで堆積させたものであり、堆積と他の間にはプラズマ中のアニール行わなかったものである。
【0108】
表IIIのデータによれば、窒化チタンの堆積後アニールを行うことにより、窒化チタンの抵抗率が著しく低減し安定性が劇的に向上した事を示している。表IIIの各実施例において、「コントロール」のケースに較べて抵抗率及び抵抗率の経時変化が向上している。アニールを施した窒化チタンの初期抵抗率は低く、経時的に抵抗率はほとんど上昇しない。
【0109】
図24は、実施例1の窒化チタン膜のオージェ分析のグラフである。このグラフは、膜のスパッタエッジ深さ(オングストローム)に対する膜中の元素の原子濃度を表している。窒化チタンにバイアスが30秒間2回与えられた(表III参照)。図24に示されるように、チタン濃度は安定に維持されるが、このグラフによれば、炭素及び窒素が低いままで膜表面の窒素濃度が高いことが明らかに示される。この炭素及び酸素の不純物レベルの低減は、深さ約100オングストロームに対して維持される。深さ400オングストロームでは、膜が先ず高エネルギーイオンでアニールを受ければ、窒素濃度が上昇し、他方炭素及び酸素の濃度は低下する。図24のグラフは、本発明に従ったアニール後の膜の元素組成における変化も示している。深さに関する元素分析は、図25の表IVに示される。
【0110】
バリア層には、厚さ100オングストロームの窒化チタン層が適しているため、当該堆積後アニールは、窒化チタンバリア層の安定性を高め抵抗率を下げるのに理想的である。堆積後アニールを行った実施例7の窒化チタンに存在する表面元素を示すオージェスペクトルが、図26に示される。このスペクトルには、堆積した膜のバルクは窒化チタンであり少量のチタンが存在していることが示される。表面には炭素及び酸素が不純物として存在している。
【0111】
しかし、図27に示されるように、実施例7の膜のオージェスパッタリング分析では、膜のバルクにおいて酸素濃度が低いレベルへと著しく低下していることが示される。酸素以外の主な不純物は炭素だけであるが、これは当該アニールプロセスによって影響を受けないままである。深さ200オングストロームにおいては、膜中の元素の濃度(原子パーセント)は、酸素2.8%、炭素20.9%、チタン38.8%、窒素37.5%である。珪素は存在しなかった。
【0112】
比較のため、コントロール膜の表面オージェ分析を図28に示し、コントロル膜のスパッタオージェ分析を図29に示す。コントロール膜の酸素濃度は著しく高い。深さ200オングストロームにおいては、コントロール膜の元素の濃度(原子パーセント)は、酸素10.8%、炭素20.7%、チタン41.0%、窒素27.5%である。珪素は存在しなかった。
【0113】
実施例8の窒化チタン膜の表面オージェ分析を図30に示し、深さ(オングストローム)に対するスパッタオージェ分析を図31に示す。この膜の酸素濃度は低かった。深さ43オングストロームにおいては、元素の濃度(原子パーセント)は、酸素3.1%、炭素13.7%、チタン40.0%、窒素43.2%である。珪素は存在しなかった。
【0114】
ラザフォード後方散乱を用いて、コントロール窒化チタン堆積膜と実施例の窒化チタン堆積膜の濃度(原子/cm3)を求めた。これらのデータを図32の表Vにまとめた。表Vのデータからわかるように、高エネルギーイオンによる堆積窒化チタンの衝突を含んだプラズマアニールにより、窒化チタン膜の濃度が、コントロール膜に較べて増加する。
【0115】
本発明は、窒化チタンバリア膜に限定されるものではない。本発明は、アルミニウム、銅、タンタル、五酸化タンタル、珪化物、その他窒化物等の他の物質の性能を向上させ化学組成を向上させるものでもある。例えば、二元素の窒化メタルMXNY 及び三元素の窒化珪化メタル MXSiYNZ の性質及び化学組成(MはTi、Zr、Hf、Ta、Mo、W及びその他のメタル)は、本発明の特徴を実行することにより向上させることができる。ステンレス鋼、メタル、酸化物、ガラスや珪化物等、シリコンウエハ以外の基板を用いることもできる。
【0116】
堆積とプラズマアニールは、チャンバ110A、110B及び110C等の前駆体ガス及びプラズマの機能を有するCVDチャンバ1つの中で行うことができる。チャンバ110A、110B又は110Cを用いる場合は、窒化チタンを堆積した後同じチャンバでアニールを行うことができる。あるいは、図3(a)に示されるような装置を本発明の実施に用いる場合は、チャンバ1つ以上を使用してもよい。チャンバ1つ以上を用いる場合は、基板をCVDチャンバ10からからアニールチャンバへ移送させる間、真空状態を維持することが好ましい。
【0117】
堆積窒化チタンのプラズマアニールをチャンバ110Bで行う場合は、以下の手順をその後に行うことができる。ウエハ114はウエハ支持体116上に置かれ、シャワーヘッド136から約0.3〜0.8インチ、好ましくは0.6〜0.7インチの間隔が置かれている。約350kHz、電力100〜500ワットでRFシグナルソースから基板にエネルギーを印加することにより、エネルギーが与えられたイオンが得られる。これは言い換えれば、ウエハ114の表面積の平方センチメートル(cm2)当たり約0.3〜1.6ワットということである。
【0118】
ウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に負の電力が与えられ、チャンバ壁が接地されて、50〜1,000ボルトのDC自己バイアス電圧が誘起される。ウエハ114と接地の間には、自己バイアス電圧が200〜800ボルトであることが好ましい。これは、イオンを誘引してウエハ114表面に高いエネルギーで衝撃を与えるに十分である。その結果、堆積窒化チタンは、パッシベーション又は密度化が施され、経時的に安定を維持するようになる。
【0119】
図33は、本発明に従って形成した窒化チタンの2つの異なる層に対して、空気曝露時間に対する原子酸素濃度のグラフである。これら両方の窒化チタン膜は、同じチャンバ内で堆積しプラズマアニールが施された。このチャンバは、上述のチャンバ110Bと同様のものである。
【0120】
各膜について、堆積とアニールのサイクルを繰り返すことにより、厚さ200オングストロームの窒化チタン膜が形成された。これを行うには、100オングストロームの層を堆積し、次いで、アニールを行い、この後、第2の100オングストロームの層を堆積しアニールする。アニールは、N2プラズマを用いて行った。原子酸素のパーセンテージは、2つの膜に対して、24時間の期間繰り返し測定され、これはプロット312に反映されている。
【0121】
プロット312からわかるように、酸素の濃度は最初は約2%であった。24時間後の濃度は2.5%未満であり、堆積膜が非常に安定であったことが示された。これに較べ、プロット314はアニールを行わない従来からのCVDを用いて堆積した窒化チタン膜について測定した酸素濃度測定を例示する。これらの膜は、最初から高い酸素濃度(15%)を有していただけでなく、高い速度で酸素を吸収していた。また、従来技術により形成した膜は安定性が低く、抵抗率は経時的に著しく上昇した。比較のため、図34における点316は、物理気相堆積により堆積した窒化チタン膜の典型的な酸素濃度(約1%)を例示する。
【0122】
図34(a)〜(c)は、それぞれ別の膜についてのXPSスペクトルのグラフである。図34(a)は、200オングストロームの非アニール膜のスペクトルを表し、316において有機結合炭素のレベルが比較的高いことを示している。これとは対称的に、図34(b)及び34(c)の作成に用いた200オングストローム膜の測定結果は、それぞれ317,318において、有機結合炭素のレベルが下がったことを示している。図34(b)のために用いた膜の形成は、100オングストロームの窒化チタン層を堆積し、本発明に従ってプラズマアニールし、その後第2の窒化チタンの100オングストローム層を堆積しアニールすることにより行われたことを、注記すべきである。図34(c)は、窒化チタンの50オングストローム厚の層4つを連続的に堆積及びアニールしたものである。
【0123】
図35(a)及び(b)は、本発明による向上を更に例示するものである。図35(a)は、堆積しN2でプラズマアニールしたCVD窒化チタン膜を用いたバイアの抵抗率を示す。これらバイアは、先ずCVD窒化チタン接着層によってラインが形成され、その後、CVDタングステンプラグにより充填された。図35(a)は、膜堆積厚に対するバイア抵抗率のグラフである。このグラフは、アスペクト比が約2.5の0.5μmバイアについて作成されたものである。図示のように、プラズマアニール膜についてバイア抵抗率(プロット320)は、非アニールの従来法で堆積した膜(プロット322)よりも実質的に低い。比較のため、PVD堆積窒化チタン膜が矢印324によって例示される。
【0124】
窒化チタン厚さに対するサリサイドコンタクト抵抗を表す図35(b)のグラフにより、同様の向上が例示される。このグラフは、アスペクト比が約2.5の0.5μmバイアについてプロットしたものである。プロット330は、本発明に従ってN2プラズマ処理により作ったコンタクトの抵抗を示す。プロット330は、従来からのCVD堆積によって得られらたコンタクト抵抗を表すプロット332で例示される抵抗よりも実質的に低い抵抗を例示する。比較のため、PVDチタンコントロールコンタクト抵抗が、矢印334によって与えられる。
【0125】
図36は、所望の厚さの膜1つを形成するために用いる堆積及びアニールのサイクルの数の効果を例示する。図36では、総厚みが200オングストロームの窒化チタン膜が化学気相堆積によって堆積されN2プラズマでアニールされた。プロット340で例示される第1のケースでは、プロセスは4サイクルで行い、この4層のそれぞれにおいては、厚さ50オングストロームの層を堆積させプラズマアニールを次の層の堆積の前に行った。プロット342で例示される第2のケースでは、100オングストロームの2層を堆積し別々にアニールした。
【0126】
プロット340で示されるケースでは、曲線342で与えられるケース(700〜800μΩ−cm)よりも低い抵抗率(500〜600μΩ−cm)が示される。しかし、プロット340及び342の両方で示される膜の抵抗率は、上限である1000μΩ−cmよりも低い。また、各ケースにおいて8日後の抵抗率の上昇は、両ケースにおいてほぼ同じであり5%未満であった。
【0127】
プラズマ処理プロセスの圧力が膜の抵抗率とDCバイアス電圧に及ぼす影響を調べるため、更にテストを行った。このテストの結果は、図37に例示される。図37は、印加電力が約20ワットでプラズマ中で60秒処理を行った200オングストロームの窒化チタン堆積物に対して作成したものである。
【0128】
プロット350に示されるように、本発明のプロセスにより生成した膜によって示される向上した抵抗率は、プロセス圧力には概略的には依存しない。しかし、プロセス圧力が200ミリトールよりも低い場合では、低い抵抗率が実現されなかった。
【0129】
プロット352に例示されるように、プロセス圧力が約200ミリトールから1000ミリトールへと上昇するにつれて、プラズマ全体で誘起されるDCバイアスは実質的に下がった。その後、約150ボルトで比較的一定に維持された。
【0130】
図38(a)は、処理時間及び周波数の膜抵抗率への影響を例示する。総膜圧が400オングストロームの4つの異なる膜の比較を行った。プロット360で示される膜は、最初に50オングストロームの層を1層堆積及びアニールし、その後、25オングストロームの層を6層堆積及びアニールして、形成した。これらの層それぞれは、堆積させた後に次の層の他の前にアニールを施したものである。プロット362で示される第2の膜は、50オングストロームの層を4層それぞれ堆積及びアニールして形成したものである。プロット364で示される第3の膜は、100オングストロームの層を2層それぞれ堆積及びアニールして形成したものである。プロット366で示される最後の膜は、200オングストロームの層1層を堆積させた後、本発明に従ってアニールして形成したものである。
【0131】
図38(a)のこれらのプロットから、数多くの観測が可能である。最終的な層を作るための個々の層の数が多くなれば、抵抗率が低くなるだろう。また、個々の層が薄くなれば、プラズマ処理の時間が抵抗率に与える影響が小さくなる。図38(b)は、プラズマ処理時間の膜抵抗率に及ぼす影響についての別の例を例示する。
【0132】
抵抗の低減及び膜の安定性の上昇に加えて、本発明の方法を他の目的に用いることができるだろう。N2プラズマを用いてアニールを施した膜の分析は、膜の表面近くの窒素の量が上昇することを示した。これは、窒素イオンの一部が膜中に埋め込まれ膜と反応したと思われる。従って、プラズマからのイオン/分子を膜中に増やすために、このアニールプロセスを用いることができるだろう。更に、このプロセスを用いて、膜から不要な分子/イオンを排除ないし交代させることができるだろう。図34(b)〜(c)は、膜に衝突したイオンが炭素原子を追い出すことを示している。
【0133】
(b.窒素/水素プラズマ)本発明の別の具体例では、窒素と水素の混合ガスを用いて、ウエハ114上に堆積した膜のプラズマアニール中にプラズマを生成する。第1のステップとして、従来からの熱CVD処理を用いて、ウエハ114上に窒化チタン膜を堆積させる。その後、窒素と水素の混合ガスを有するガスから生成したプラズマを用いて、堆積材料をアニールする。
【0134】
チャンバ110A、110B又は110Cの何れを用いてこれらのステップを行う場合は、CVD処理及びアニールは同じチャンバ内で行ってもよい。あるいは、1つのチャンバで窒化チタンをウエハ114上に堆積させ、堆積後プラズマアニールのためにウエハ114を別のチャンバ内に移送してもよい。
【0135】
チャンバ110Aを用いる場合は、ウエハ114をウエハ支持体116上に配置させ、シャワーヘッド136から約0.3〜0.8インチ、好ましくは0.6〜0.7インチ間隔をとる。上述の如く、窒化チタン膜の層をウエハ114上に堆積させてもよい。最初に堆積させる窒化チタン層は、厚さ50〜200オングストロームであってもよい。
【0136】
堆積が完了した後、堆積材料のプラズマアニールを開始させる。シャワーヘッド136を介して、窒素と水素が3:1の混合ガスを備えるガスを処理チャンバ112内に導入する。窒素と水素の混合ガスは、窒素の流量が約30sccmで導入させる。次いで、RFソース142は、整合回路網145を介して、350ワットのRF電力を350kHzで供給し、RFシグナルをウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に発生させる。シャワーヘッド136のRFシグナルとウエハ支持体116のRFシグナルは、位相が180度ずれていることが好ましい。
【0137】
上述の混合ガスは窒素と水素の比が3:1であるが、3:1〜2:1の間であれば何れの比を用いることができる。一般的には、混合ガス中の水素の割合が多いほど、膜が長期間の安定性を有するようになる。しかし、プラズマ中の水素が多すぎる場合は、水素が膜中の炭素と結合してポリマーを生成し、膜の抵抗率を上昇させる。
【0138】
シャワーヘッド136及びウエハ支持体116に供給されるRF電力の影響下で、プラズマに含有される正荷電の窒素及び水素イオンが生成する。プラズマは典型的には、10〜30秒間維持される。上述の如く、処理チャンバ112は接地されている。シャワーヘッド136は、−100〜−400ボルト、典型的には−200ボルトの負バイアスを得る。ウエハ114は自己バイアスにより、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトの負バイアスを得る。この負バイアス電圧は、衝突の時間中はおよそ一定に維持される。
【0139】
衝突の時間中は、プラズマからの正荷電イオンは、ウエハ114の表面における電圧勾配により加速される。これにより、イオンがウエハ表面に衝突して50〜100オングストロームの深さまで浸透するようになる。また、エネルギーを受けた中性の原子粒子がウエハ114に衝突することもある。
【0140】
イオン衝突の結果、堆積材料の圧縮が生じ、その厚さが20〜50%減少することがある。この減少は、ウエハ温度とプラズマ処理の時間及びエネルギーに依存する。所望により、続けて、窒化チタンの層を更に堆積させアニールしてもよい。この更に形成する層はそれぞれ、厚さが50〜100オングストロームであることが好ましい。
【0141】
アニールが完了した後、得られたアニール済み窒化チタン膜は、数多くの性能の向上を示す。酸素含有量は20〜25%減少し、酸素は堆積アニール材料の1%未満を占めるだけとなる。膜の密度は、立方センチメートル当たり3.1グラム(3.1g/cm3 )未満であったのが、約3.9 g/cm3 に増加する。堆積膜中に含まれる炭素の分率は25%以上減少し、炭素は堆積膜の3%を占めるだけとなる。膜の構造の変化が起こり、膜の抵抗率が処理前の10,000μΩ−cmから150μΩ−cmへと降下する。アニールした膜を酸素、空気又は水蒸気に曝露した場合、堆積膜にアニールをしない場合に較べて、酸素の吸収量が著しく小さくなる。プラズマアニールにより、このように堆積させた膜中の炭素及び窒素をプラズマからの窒素に交代させる。
【0142】
プラズマ生成ガスへ水素を添加することにより、イオン衝突により膜から追い出され処理チャンバ112の内側をコーティングする炭素の量を著しく低減させることが見出された。処理チャンバ112の炭素コーティングを低減することは利益があり、何故なら、このような炭素コーティングはチャンバのインピーダンスを変化させ、プラズマの正確な制御を困難にしてしまうからである。炭素コーティングを減らすことにより、クリーニングが必要になるまで処理チャンバ112を使用できる回数が多くなる。
【0143】
図39(a)は、二酸化珪素層の上に厚さ100オングストロームの窒化チタン層を堆積し、続けてアニールして形成した窒化チタン膜に対してのオージェ電子分光深さプロファイルである。図39(a)に示されるように、炭素含有量及び酸素含有量は、膜のほぼ全域で均一であり、炭素は9原子パーセント、酸素は2原子パーセントである。アニールした窒化チタン膜の抵抗率は、約250μΩ−cmである。
【0144】
図39(b)は、窒化チタンの50オングストロームの層を堆積しアニールして得られた場合の更なる向上を示す。図39(b)は、二酸化珪素層の上面に厚さ50オングストロームの窒化チタン層を堆積し、続けてアニールして形成した窒化チタン膜に対してのオージェ電子分光深さのプロファイルである。ここでも、炭素含有量及び酸素含有量は、膜のほぼ全域で均一であり、炭素は3原子パーセント、酸素は1原子パーセントである。チタンと窒素の割合は、100オングストロームのプロセスにおけるよりも高い。アニールした窒化チタン膜の抵抗率は、約180μΩ−cmである。
【0145】
(c.窒素/水素/希ガスのプラズマ)本発明のまた別の具体例では、アニールプラズマを生成するために用いる窒素及び水素の混合ガスは、他のガス、例えばアルゴン、ヘリウムやアンモニア等を含んでいてもよい。また、希ガスを更に含むことにより、イオン衝突処理が向上する。アルゴン原子はヘリウム原子よりも重いため、アルゴン原子の方が優れた衝突能力を与えるだろう。
【0146】
更に、窒化チタン以外の材料でできた膜の組成を、本発明と同様の方法で変えてもよいことが考えられる。膜中に含有させるか、膜に存在する不純物と反応させるかのいずれかにより、膜の化学組成を変えるために他のガスをプラズマに加えてもよい。例えば、NH3及びCH4を用いてもよい。酸素ベースのプラズマガスは、Ta2O5 等の酸化膜を処理するためにより適している。
【0147】
本発明をプラズマ衝突CVD堆積膜について説明してきたが、本発明は、PVD堆積膜にも適用性がある。更に、本発明は、二元素の窒化メタルMXNY 及び三元素の窒化珪化メタル MXSiYNZ (MはTi、Zr、Hf、Ta、Mo、W及びその他のメタル)の処理において顕著な用途が見出されている。
【0148】
また、本発明を用いて、膜のモルフォロジーを有利な方へ変えることもできる。薄いバリア材料は、その粒子配向(グレインオリエンテーション)の均一性を向上させるために、本発明の高密度イオン衝突を受けてもよい。下にある層のグレインの配向がその次に堆積する層の構造に影響を与えるため、本発明は、下の層の結晶構造及び/又は成長方向を変えることにより、その次に堆積する層のモルフォロジーを変え向上させる能力を提供する。
【0149】
多数の層のモルフォロジーを制御するには、厚さ50オングストローム未満の薄い核界面層を堆積し、次いで高密度イオン衝突によりこれを変化させ、そして、標準的な技術によりバルク又は残りの膜を堆積させればよい。上にある層の構造は、前に変化させた下層の構造により決定できる。
【0150】
このことは、図40を参照して例示することができる。窒化チタン膜については、好ましい結晶及び配向は<200>であると決められてきた。水素をプラズマに加えれば、結晶性を高めることにより膜を向上できることが考えられる。図40は、シリコンウエハ上に堆積させた厚さ1000オングストロームの従来形CVD窒化チタン層の、角度走査に係るX線回折である。<200>方向に配向するグレインの数を表すカーブの点は、ラベル300によって示される。このグラフからわかるように、明確なTiN<200>ピークは存在しない。このことは、従来からのCVDプロセスを用いて形成した膜中には、結晶性TiN<200>は弱いことを示している。
【0151】
図41は、本発明に従ってシリコンウエハ上に堆積させアニールを施した、厚さ1000オングストロームのCVD窒化チタン層の、角度走査に係るX線回折である。この回折パターンから、ラベル350で示されるように、膜が好ましい配向<200>を有する微少結晶性であることが示される。40〜45度の間においては、ほぼ<200>方向に配向したグレインの数が多い。更に、図40のピーク310は、図41において著しく低い。
【0152】
(3.続けて行うアニール)堆積膜の抵抗率を更に下げるため、本発明に従ってプラズマアニールプロセスを変え、2つの連続したプラズマアニールのステップを含めるようにしてもよい。第1のアニールのステップは、上述のように窒素及び水素を含む混合ガスから生成したプラズマを用いて行う。第2のプラズマアニールのステップは、アニールした材料から水素を除去するために行われるが、それは水素は酸素との親和力が高く、このため抵抗率を上げてしまうからである。
【0153】
第2のプラズマで生成したイオンは、堆積及びアニールした材料に衝突し、材料の表面にある水素を、膜から不要な副生成物として追い出す。水素が低減することにより、酸素に対する材料の親和力が低減し、これによって、膜の抵抗率が低くなり向上した安定性を示すことが可能となる。
【0154】
続けて行う第2のアニールのステップにおいてプラズマ生成のために用いるガスは、窒素又は、ヘリウムとアルゴンとネオンとの何れかと窒素との混合ガスを有していてもよい。ヘリウムは、窒素分子のイオン化を促進しN+、N2+、N3+及びN4+の各イオンの再結合の確率を低減するため好ましい。窒素及びヘリウムの混合ガスは、窒素単独で用いるよりも好ましく、その理由は、ヘリウムベースのプラズマのイオンは、イオン化効率を向上させることが可能であり、そのため、イオン反応性を促進し浸透深さを大きくすることができる。浸透深さが深くなれば、追い出される水素の量が多くなり、堆積材料の抵抗率の低減を最大にすることができるようになる。更に、少量のヘリウムがあれば、水素原子が存在していたため堆積材料に残された空隙であって、窒素原子で充填するには小さすぎる空隙を充填することが可能となる。
【0155】
本発明に従い、チャンバ110A等のチャンバ内にウエハ114を配置させ、上述のようにウエハ上に材料の層を堆積させる。堆積材料は、拡散バリアとして用いるための窒化チタンであってもよい。
【0156】
材料の層を堆積した後は、イオン衝突の第1のアニールのプロセスを行う。ウエハ114は、ウエハ支持体116上に置かれているが、シャワーヘッド136から約0.3〜0.8インチのところにあってもよい。ウエハ114はシャワーヘッド136から0.6〜0.7インチであることが好ましい。
【0157】
イオン衝突は、先ずシャワーヘッド136を介してガスを処理チャンバ112へ移動させることにより実現される。本発明の一具体例では、ガスは、窒素対水素の比が2:3の窒素と水素の混合ガスであり、窒素の流量が約600sccmで処理チャンバ112内に導入される。処理チャンバ112内の圧力は、約1.0トールに設定され、ウエハ温度は350〜450℃に設定される。本発明の代替的な具体例では、ガスは、窒素対水素の比が3:1〜1:2の混合ガスを含んでいてもよい。
【0158】
第1のアニールのプロセスに次いで、RFソース142がシャワーヘッド136とウエハ支持体116にRFシグナルを供給する。これにより、ガスが、正荷電イオンを含むプラズマを生成する。RFソース142は、整合回路網145を介して、350ワットのRF電力を350kHzで供給し、位相が180度ずれているRFシグナルをウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に発生させる。典型的には、プラズマを20秒間維持する。あるいは、RFソース142は、1MHz未満の周波数で350ワットのRF電力を供給してもよい。
【0159】
RFソース142から電圧を繰り返しサイクルさせることにより、ウエハ114の近隣において電子が過剰になり、これがウエハ114に負バイアスを発生させる。ウエハ支持体116は、−100〜−400ボルト、典型的には−200ボルトの負バイアスを得ることができる。処理チャンバ112は接地され、ウエハ114の負バイアスは、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトであり、これは、衝突の時間中はおよそ一定に維持される。
【0160】
イオン衝突中は、プラズマからの正荷電イオンは、ウエハ114の表面における電圧勾配により加速され、100〜110オングストロームの深さまで浸透する。また、エネルギーを受けた中性の原子粒子がウエハ114に衝突することもある。20秒間の第1のアニールが完了すれば、処理チャンバ112をパージする。
【0161】
次いで、第2のアニールのプロセスを開始させる。本発明の一具体例では、プラズマ発生ガスは窒素のみである。このガスを、窒素流量約500〜1000sccmで処理チャンバ112内に導入する。処理チャンバ112内の圧力は約1.0トールに設定され、ウエハ温度は350〜450℃に設定される。
【0162】
本発明の代替的な具体例では、ガスは窒素とヘリウムの混合ガスで、窒素とヘリウムの比が0.2〜1.0であってもよい。アルゴン、ネオン、ヘリウム又はこれらの混合ガスと、窒素との組み合わせを含むガスを用いてもよい。
【0163】
次に、第2のアニールのプロセスでは、RFソース142はシャワーヘッド136とウエハ支持体116にRFシグナルを供給する。これにより、正荷電を有するプラズマがガスから生成する。RFソース142は、整合回路網145を介して、300〜1,500ワットのRF電力を300〜400kHzで供給し、位相が180度ずれているRFシグナルをウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に発生させる。典型的には、プラズマを15秒間維持する。あるいは、RFソース142は、13.5MHzの周波数で300〜1,500ワットのRF電力を供給してもよい。ソースの電力は、処理するウエハのサイズの変更に対する必要性を基に縮尺させてもよい。
【0164】
第1のアニールのケースにおけると同様に、RFソース142から電圧を繰り返しサイクルさせることにより、ウエハ114の近隣において電子が過剰になり、これがウエハ114に負バイアスを発生させる。ウエハ支持体116は、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトの負バイアスを得ることができ、シャワーヘッド136は−100〜−400ボルト、典型的には−200ボルトの負バイアスを得ることができる。処理チャンバ112は接地され、ウエハ114の負バイアスは、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトであり、これは、衝突の時間中はおよそ一定に維持される。
【0165】
イオン衝突中は、プラズマからの正荷電イオンは、ウエハ114の表面における電圧勾配により加速され。イオンはウエハ114の表面に浸透し、堆積しアニールした材料の水素分子を追い出す。また、エネルギーを受けた中性の原子粒子がウエハ114に衝突することもある。15秒間の第2のアニールが完了すれば、処理チャンバ112をパージする。
【0166】
窒素ガスを用いる場合は、イオンは深さ70〜80オングストロームまで浸透する。ガスが窒素とヘリウムの混合ガスである場合は、イオンは深さ100〜125オングストロームまで浸透する。従って、窒素とヘリウムの混合ガスでアニールすれば、窒素のみを用いてアニールした場合よりもさらに多くの水素分子を追い出すことができる。
【0167】
所望の厚さ、例えば150〜300オングストロームの拡散バリアを形成するため、上述のCVD堆積及び連続アニールするプロセスを繰り返す。所望の厚さを実現するまで、厚さ50〜100オングストロームのバリア材料の層を順番に、堆積及び連続アニールすることにより、堆積させる。
【0168】
チャンバ110A、110B又は110Cの何れかにおいて、続けて行うアニールのプロセスを行う場合は、堆積、第1のアニール及び第2のアニールの全てを同じチャンバで行ってもよい。従って、堆積及び連続的なアニールをインシチュウで行ってもよい。しかし、堆積及び連続的なアニールのプロセスステップはインシチュウで行う必要はなく、別のチャンバを用いてもよい。
【0169】
図42の表VIは、連続的なアニールのプロセスを、1回アニールを行うプロセスと比較するために得られた実験結果を反映する。表VIのデータを収集するために、1組のウエハがそれぞれ本発明の別の具体例に従って処理された。厚さ200オングストロームの窒化チタン層を、本発明に従って各ウエハ上に形成した。
【0170】
第1のウエハは、上述のアニール1回のプロセスに従い、アニールプラズマを生成するために窒素及び水素のガスを用いて処理した。第2のウエハは、窒素のみを含むプラズマガスを用い、連続アニールにより処理した。第3のウエハは、窒素とヘリウムを含むプラズマガスを用い、連続アニールにより処理した。第4のウエハは、3相の連続アニール、即ち順番に、窒素−水素プラズマアニールを15秒間、窒素プラズマアニールを15秒間、そして窒素−水素プラズマアニールを5秒間行うことにより処理した。
【0171】
第2のウエハは、窒素ガスで連続アニールしたものであるが、1つのアニールステップのみ行った第1のウエハよりも著しく抵抗率が小さいことが示された。第2のウエハの抵抗率は、450〜500μΩ−cmであり、第1のウエハの抵抗率は、570〜630μΩ−cmであった。さらに、第2のウエハは50時間後の抵抗率の増加は7〜8%しかなかったが、第1のウエハのこの増加は11〜12%であった。
【0172】
第2のプラズマアニールにおいて窒素とヘリウムの混合ガスを用いた第3のウエハにおいては、さらに良好な結果が確認された。第3のウエハは、抵抗率は440〜480μΩ−cmであり、50時間で3〜7%しか増加しなかった。また、第3のウエハは酸素濃度が小さかった。第2のウエハに較べて第3のウエハの方が酸素濃度のレベルが低かったのは、窒素−ヘリウムの混合ガスの窒化チタン層から水素を追い出す性能が優れていたことによる。
【0173】
第4のウエハは、窒素と水素の混合ガスにより第3のアニールを行うが、抵抗率及び抵抗率の劣化の測定値は第1のウエハに近かった。これは、第2のアニールの後に水素を再び導入することにより、水素過剰の状態を作り出していることを示している。この水素過剰は、第2のアニールにおいて実現した利益を損ねてしまう。
【0174】
(4.拡散性低減のための酸化)ウエハ上の膜の抵抗率を向上させることに加えて、次のプロセスを行うことにより、膜の下の基板へのコンタクトメタルの拡散に対して、膜がさらに抑止をすることが可能となる。特に、アルミニウムの拡散をよりつよく抑止するため、膜を処理することになる。
【0175】
先ず、材料の層をウエハ114の上面にインシチュウ(層形成中のあらゆる時点においても処理チャンバ112からウエハを取り出さず)で形成する。本発明の一具体例では、材料の堆積とそれに続くアニールをチャンバ110Aで大古成って膜を形成する。熱CVDを用いてウエハ114の上面に材料の層を堆積させ、材料がウエハ114上面に適合できるようにしてもよい。堆積中は、処理チャンバ内の圧力が0.6〜1.2トールとなるように圧力制御ユニット157を設定してもよく、ウエハ114の温度が360〜380℃となるようにランプ130を設定してもよい。
【0176】
本発明の一具体例では、堆積材料はバリア材料であってもよく、例えば、窒化チタン(TiN)のような二元素メタル窒化物等である。本発明の別の具体例では、二元素メタル窒化物の代わりに、三元素メタル窒化珪化物をバリア材料として用いてもよい。堆積材料は、厚さ50〜300オングストロームであってもよく、好ましくは50〜100オングストロームである。
【0177】
バリア材料を堆積させた後、イオン衝突のプロセスを通じてこれをアニールする。ウエハ114は、ウエハ支持体116上に置かれているが、シャワーヘッド136から0.3〜0.8インチのところにあってもよい。ウエハ114はシャワーヘッド136から0.6〜0.7インチのところにあることが好ましい。
【0178】
イオン衝突を行うには、先ず、シャワーヘッド136を介してガスを処理チャンバ112内に導入する。本発明の一具体例では、ガスは窒素と水素の混合ガスであり、これは、窒素と水素の比が2:3であり、窒素流量が約400sccmで処理チャンバ112内に導入される。処理チャンバ112内の圧力は約1.0トールに設定され、ウエハ温度は300〜400℃(好ましくは360℃)に設定される。
【0179】
本発明の別の具体例では、ガスは窒素と水素の比が3:1〜1:2であるガスを備えていてもよい。窒素及び水素に、アルゴン又はヘリウム又はアンモニアを組み合わせた別のガスを用いてもよい。
【0180】
次に、アニールプロセスにおいて、RFソース142がシャワーヘッド136とウエハ支持体116にRFシグナルを供給することにより、ガス206が正荷電イオンを含有するプラズマを生成する。RFソース142は整合回路網145を介して350ワットのRF電力を350kHzで供給し、位相が180度ずれているRFシグナルをウエハ支持体116及びシャワーヘッド136に発生させてもよい。典型的には、プラズマを10〜30秒間維持する。あるいは、RFソース142は、1MHz未満の異なる周波数で350ワットのRF電力を供給してもよい。
【0181】
ウエハ114には負バイアスが発生する。ウエハ支持体116は、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトの負バイアスを得ることができ、シャワーヘッド136は、−100〜−400ボルト、典型的には−200ボルトの負バイアスを得ることができる。処理チャンバ112は接地され、ウエハ114の負バイアスは、−100〜−400ボルト、典型的には−300ボルトであり、これは、衝突の時間中はおよそ一定に維持される。
【0182】
イオン衝突中は、プラズマからの正荷電イオンは、ウエハ114の表面における電圧勾配により加速され、50〜200オングストロームの深さまで浸透する。また、エネルギーを受けた中性の原子粒子がウエハ114に衝突することもある。
【0183】
イオン衝突の結果、バリア材料の堆積材料の厚さが、基板温度とプラズマ処理時間及びエネルギーに依存して、20〜50%減少する。上述のように、厚さが50〜100オングストロームのバリア材料の層を用いたCVD堆積及びアニールを繰り返し、所望の厚さの材料の層を形成してもよい。
【0184】
あるいは、ウエハ114上への材料の堆積及びアニールは、これとは異なる数多くの手段により遂行してもよい。米国特許出願08/498,990号、標題「薄膜のバイアスプラズマアニール」、米国特許出願08/567,461号、標題「薄膜のプラズマアニール」、米国特許出願08/680,913号、標題「薄膜のプラズマ衝突」の、それぞれには、CVDプロセス及びプラズマアニールを用いて、ウエハ上面へバリア材料の層を形成するためのプロセスが開示される。これらの出願のそれぞれは、参照としてここに包含される。これらの出願で開示されるプロセスのそれぞれは、ウエハ上に材料の層を形成するための本発明の具体例に用いることができる。
【0185】
本発明の一具体例では、物理気相堆積を行うことができる装置の中にウエハを配置させ、従来からのスパッタリングプロセスにより材料の層を形成する。本発明の他の具体例では、化学気相堆積を行うことができるチャンバの中にウエハを配置させ、CVDにより材料の層を形成し、付加的なアニールは行わない。
【0186】
集積回路の製造においては、アルミニウムはコンタクトメタルとして頻繁に用いられる。アルミニウムは酸素に対して親和性を有するため、酸素リッチメタルにおいてアルミニウムの拡散性が下げられることもある。従って、材料に酸素を浸透させることにより、アルミニウムコンタクトメタルへの向上した拡散バリアとして機能するように、ウエハ114上に形成された材料の層を処理することができる。
【0187】
材料に酸素を浸透させるため、ウエハ114上の材料をインシチュウ(材料の層を形成した後、酸化が完了するまで、処理チャンバ112から取り出さずに)で酸化させる。即ち、材料の層の形成及び材料の層の酸化のプロセス全体を、1つのチャンバ内でインシチュウで行うことができる。材料の粒界は酸化されるが材料の粒(グレイン)自身はほとんど酸化されないように、酸化が行われる。
【0188】
材料の粒界の酸化は、図5に示す半導体ウエハ処理チャンバ110Aを用いてインシチュウで行ってもよい。材料をウエハ114上に形成(堆積及びアニール)した後、ウエハ114を処理チャンバ112内に残す。圧力制御ユニット157により、処理チャンバ112内の圧力を0.5〜1.0トールに設定する。ウエハ114の温度を、300〜400℃(好ましくは360℃)となるように設定する。
【0189】
材料の層を、N2/O2混合ガス又はO2等の酸素含有ガスに曝露する。このガスは、流量100〜1000sccmでシャワーヘッド136を介して処理チャンバ112内に移送される。ガス208は、窒素と酸素の両方を含んでいてもよく、窒素対酸素の混合比は4:1であってもよい。次いで、RFソース142がウエハ支持体116とシャワーヘッド136の双方へ整合回路網145を介してシグナルを供給し、ガスを正荷電酸素イオンを含むプラズマに変換する。
【0190】
RFソース142は、整合回路網145を介して350ワットのRF電力を350kHzで約20秒間供給し、シャワーヘッド136とウエハ支持体116に180度位相がずれたRFシグナルを発生させる。シャワーヘッド136、ウエハ支持体116及びウエハ114のそれぞれは、アニールプロセスについて上述したように、負バイアスを得る。その結果、正荷電酸素イオンが、ウエハ114の方へ加速され、材料の層の表面に浸透し、材料の粒界に付着する。
【0191】
本発明の一具体例においてこの酸化が完了した後は、酸化した材料の層は酸化した窒化チタンである。この酸化した窒化チタンは、酸素に対する親和性を有するコンタクトメタル(例えばアルミニウム等)に対して向上した拡散バリアとして機能することが可能である。あるいは、材料の層が、他の二元素の窒化メタルMXNY 又は三元素の窒化珪化メタル MXSiYNZ (MはTi、Zr、Hf、Ta、Mo、W及びその他のメタル)とした場合にも、向上した拡散バリアを本発明に従って形成することができる。
【0192】
本発明の代替的な具体例では、同じ半導体ウエハ処理チャンバ110Aを用いて、材料の熱酸化を行う。酸素含有ガス、例えば酸素、オゾン、空気や水等を、流量100〜1000sccmで、シャワーヘッド136を介して処理チャンバ112内に移送する。次いで、ランプ130によりウエハ114を300〜400℃の温度に加熱する一方、処理チャンバ内の圧力を0.5〜100トール(好ましくは1.0トール)に設定する。
【0193】
この結果、酸素含有ガスにおける酸素がバリア材料層の表面に浸透し、バリア材料の粒界に付着する。バリア材料の粒界を酸化させるプロセスの1つが、 Ngan らの米国特許第5,378,660号、標題「バリア層及びアルミニウムコンタクト」に開示されており、これは参照としてここに包含される。材料の層200を形成し酸化させた後、ウエハ114は処理チャンバ112から取り出される。
【0194】
ウエハ114上の材料の層の形成及び酸化について、具体的に、図5の半導体ウエハ処理チャンバ110Aにおいて行われるように説明してきたが、このプロセスはチャンバ110A内で行われることに限定されない。このプロセスは、図16のチャンバ110B、図17のチャンバ110C等、本発明に従ってインシチュウで形成及び酸化処理を行うためのあらゆる半導体ウエハ処理チャンバにおいて行うことも可能である。
【0195】
従来では、コンタクトメタルの拡散に対して十分な保護を与えるためには、拡散バリアを厚くしていた。本発明の具体例の結果、コンタクトメタルの拡散を抑止するために、拡散バリアは厚くしなくてもよい。本発明の具体例では、バリアメタルの酸化により、酸素に対する親和性を有するコンタクトメタル(アルミニウム等)の拡散が低減する。このコンタクトメタルがバリア材料の酸化層の中に拡散を開始したとき、コンタクトメタルは酸素イオンと結合し、この酸素イオンがバリア材料の粒界に付着する。その結果、コンタクトメタルは、その下の拡散バリアの領域に到達することができない。
【0196】
図43(a)におけるチャートは、酸化は行わず本発明に従ってバリア材料の層を堆積及びプラズマアニールした後の、ウエハの化学組成を深さを変えて示す。図43(b)は、本発明に従ってバリア材料の層を堆積及びプラズマアニールし酸化を行った後の、ウエハの化学組成を深さを変えて示すグラフが含まれる。
【0197】
これらのチャートのそれぞれは、窒化チタンのバリア層によってその上が覆われたシリコン基板を有するウエハからとったデータを表している。オージェ電子分光分析によりウエハを調べた。各チャートは、ウエハの深さが異なる場合に、化合物毎の原子濃度を示している。この2つのチャートを比較してわかるように、ウエハの頂部、すなわちバリア材料で構成される部分の酸素レベルは、酸化しないバリア材料(図43(a))よりも酸化させたバリア材料(図43(b))の方が著しく高くなっている。
【0198】
バリア材料中に酸素が存在することにより、アルミニウム等のコンタクトメタルは、バリア材料中の酸素イオンと結合することにより、その拡散性が著しく低くなる。従って、酸化させたバリア材料(図43(b))の方が、酸化しないバリア材料(図43(a))よりも、コンタクトメタル(アルミニウム等)とその下のシリコン基板との間に良好な拡散バリアを与える。
【0199】
加えて、本発明の具体例により形成した拡散バリアのシート抵抗は、酸化プロセスにより、許容できる程度に妥協できないわけではない。図44は、この事実を例示する表を例示する。この表に示されるように、本発明に従って堆積及びプラズマアニールを行ったが酸化を行っていない窒化チタンバリア材料の200オングストローム層は、410Ω/sqのシート抵抗値を有し、シート抵抗値の標準偏差は2.2%であるだろう。このバリア材料の層の抵抗率は、820μΩ−cmと得られる。本発明に従って堆積、プラズマアニールを行い20秒間酸化を行った窒化チタンバリア材料の200オングストローム層は、630Ω/sqのシート抵抗値を有し、シート抵抗値の標準偏差は3.7%であるだろう。このバリア材料の層の抵抗率は、1260μΩ−cmと得られる。
【0200】
また、図44の表は、窒化チタンバリア材料の300オングストローム層に対するシート抵抗を示す。本発明に従って堆積及びプラズマアニールを行った後、窒化チタンバリア材料の300オングストローム層は、235Ω/sqのシート抵抗値を有し、シート抵抗値の標準偏差は2.0%であるだろう。本発明に従って堆積、プラズマアニール及び20秒間の酸化を行った後は、窒化チタンバリア材料の300オングストローム層は、250Ω/sqのシート抵抗値を有し、シート抵抗値の標準偏差は2.7%であるだろう。従って、酸化しないバリア材料の300オングストローム層の抵抗率は705μΩ−cmであるが、酸化したバリア材料の300オングストローム層の抵抗率は750μΩ−cmであろう。
【0201】
図44の表に表されている窒化チタンバリア材料の酸化しない層と酸化した層の相対的な有効性は、以下のように評価された。上面に酸化しない窒化チタンバリア材料を有するウエハと酸化した窒化チタンバリア材料を有するウエハに、アルミニウムの1000オングストロームの層を堆積させた。ウエハ上への堆積を行った後、アルミニウムを550℃の炉内で1時間アニールした。酸化していない窒化チタンバリア材料の200オングストロームの層を有するウエハと300オングストロームの層を有するウエハは、ウエハの基板へのアルミニウムの拡散により重大な欠陥が認められた。本発明に従って堆積、プラズマアニール及び酸化を行った窒化チタンバリア材料の200オングストロームの層を有するウエハは、アルミニウムの拡散による軽微な欠陥のみ認められ、300オングストロームの層を有するウエハは、この欠陥が全く認められなかった。
【0202】
図43(a)、43(b)及び44のデータは、本発明の具体例を行って得ることができる結果の一例に過ぎない。これらの図表に示される結果は、本発明の具体例が同じ結果又は実質的に同じ結果を実現することに限定することを意味するものではない。
【0203】
(5.拡散性低減のための珪素の濃縮)本発明の別の具体例では、酸化のステップは、珪素のスタッフィングの操作により置き換えられる。珪素スタッフィングの操作により、銅等のコンタクトメタルの、基板を覆う材料層(窒化チタン等)への拡散性が、低減する。珪素が窒素と結合して堆積窒化チタンの粒界を充填する能力は、窒化チタンのバリア性能の向上を促進するメカニズムである。
【0204】
本発明に従って、窒化チタン等の材料のウエハ上への堆積及びアニールは、酸化のステップを含むプロセスに対して上述と同じ方法で行われる。窒化チタンの100オングストローム層を堆積させることが好ましい。窒素と水素の混合ガスを含むプラズマでこの材料をアニールした後の窒化チタン層の厚さは、約50オングストロームである。
【0205】
窒化チタン材料の堆積及びアニールは、チャンバ110A、110B又は110Cの何れかで行ってもよい。あるいは、堆積のステップ及びアニールのステップを行うことができる他のチャンバやチャンバ群を用いてもよい。チャンバ110A、110B又は110Cを用いた場合は、堆積及びアニールを行ったと同じチャンバで珪素スタッフィングを行ってもよい。その結果、珪素スタッフィングプロセスの全体をインシチュウで行うことができる。
【0206】
堆積及びアニールの後、アニールした窒化チタンをシラン(SiH4)に曝露することにより、珪素スタッフィングが行われる。シランを、流量30sccmで約30秒間チャンバ110Aに流入させる。シラン曝露の間は、チャンバ圧力を1.2トールに設定し、ウエハ支持体116を420℃に加熱し、窒素をチャンバ110Aに流量140sccmで流入させる。200sccmのアルゴンパージの流入を採用する。シランへの曝露に続いて、排気パージを行い、チャンバ10A及び供給ラインから残留のSiH4を掃引する。
【0207】
この曝露を行っている間は、珪素は窒化チタン表面に結合して、堆積材料の粒界を充填する。このスタッフィングされた珪素により、この後堆積する銅等のコンタクトメタルの拡散が抑止される。
【0208】
構築する膜が所望の厚さになるまで、窒化チタン材料の堆積、アニール及び珪素スタッフィングのステップを続けて繰り返す。200オングストローム膜の構築の場合、窒化チタンの堆積、アニール及び曝露は全部で3回行うことが好ましく、各回に堆積させる窒化チタンは100オングストローム層である。この結果、珪素をスタッフィングした厚さ150オングストロームの窒化チタン層が構築される。求める厚さの200オングストロームに到達させるため、最後の100オングストロームの窒化チタンのキャップ層を堆積させアニールして、厚さ50オングストロームとする。この窒化チタンのキャップ層のアニールは、上述のように、窒素及び水素の両方を含むプラズマを用いて行ってもよい。この最終の堆積及びアニールを行った材料のキャップ層は、シランへの曝露を行わない。
【0209】
堆積しアニールした材料の最終の部分をシランに曝露しないのは、シランの酸素に対する親和性にその理由がある。シランへの曝露により窒化チタン膜の最終表面キャップに珪素が導入されれば、膜の抵抗率は許容できないほど高くなるだろう。膜に窒化チタンのアニール層でキャップを被せた後は、この膜の抵抗率は約520μΩ−cmである。窒化チタンの上層をシランに曝露すれば、膜の抵抗率はおそらく非常に高くなるだろう。
【0210】
ラザフォード後方散乱分光分析により、本発明に従って珪素をスタッフィングした膜は以下の特徴を有していたことがわかった。Si含有量は5原子パーセント、Ti含有量は35.2原子パーセント、N含有量は52.8原子パーセント、H含有量は7原子パーセントであった。本発明に従って形成した膜のオージェ深さプロファイルが図45に示される。このオージェ深さプロファイルによれば、窒素含有量とチタン含有量が均一であり珪素含有量は上下しており、これは、窒化チタンにキャッピングしようとする珪素含有材料が150オングストロームであることと一致している。
【0211】
上記の測定及び手順は、本発明に従って珪素スタッフィングをいかに行うかの非限定的な例として与えられることに、注意すべきである。本発明の別の具体例では、基板上に堆積した材料の層をアニールするステップとこの材料をシランに曝露するステップとを相互に交換してもよい。この結果、窒化チタン等の堆積材料を、珪素スタッフィングの目的で先ずシランに曝露し、その後、プラズマを用いてアニールして、この材料の抵抗率を低減する。加えて、CVD以外の堆積プロセス、例えばスパッタリング等を行ってもよい。
【0212】
珪素スタッフィングに代替するものとして、三元素の珪化窒化メタル、例えばチタニアシリカ カーボナイトライド(TiSiCN)等を、窒化チタン材料の代わりに堆積させてもよい。そして、堆積させた珪素リッチな材料をアニールして、抵抗率を下げることができるだろう。上記のプロセスのように、堆積及びアニールを繰り返して、所望の厚さの膜を形成することができるのである。
【0213】
本発明のこのような具体例に従って、堆積プロセスを行うことができるチャンバの中にウエハを配置させる。このチャンバは、珪素リッチ膜をインシチュウで構築することが可能なチャンバ110A、110B又は110Cの何れかであってもよい。あるいは、珪素リッチ膜を形成する以下のステップを行うために用いることができる他のチャンバやチャンバ群を用いてもよい。
【0214】
ウエハをチャンバ内に配置させた後、チタニアシリカ カーボナイトライド(TiSiCN)材料をウエハ上に堆積させる。この堆積操作は、TDMATを用いた従来からの熱CVDを用いて行ってもよい。珪素を導入するため、或る体積のシランをチャンバ内に流入させる。TDMATを用いたCVDで窒化チタンを堆積させる場合に用いる容量と比較して、等しい体積の窒素希釈ガスを随伴させる。
【0215】
堆積操作を行うにあたり、チャンバ圧力を1.2トールに設定し、ウエハ支持体の温度を420℃に設定し、シランを10sccm、He/TDMATを70sccm、窒素希釈ガスを90sccmで、チャンバ内に流入させる。アルゴンパージを流量200sccmで行う。堆積を32秒間行い、厚さ100オングストロームの材料の層を形成することができる。窒化チタンの化学気相堆積では、シランを用いず、窒素の流量は100sccmとなる。
【0216】
この堆積に続いて、酸素スタッフィングを含むプロセスについて上述したように、窒素及び水素のプラズマを用いてTiSiCNのアニールを行う。堆積材料の開始厚さが100オングストロームであり層の厚さが50オングストロームであることが望ましい場合は、このアニールには、20秒間行われるイオン衝突の工程が含まれる。堆積及びアニールを続けて繰り返し、所望の厚さの膜を構築する。本発明の一具体例では、200オングストロームの膜が望ましい。100オングストロームのTiSiCNの層を堆積させ、次いでアニールして、50オングストロームの材料の層とする。TiSiCNの100オングストロームの堆積とアニールを4回行って、求める200オングストロームの膜を得る。
【0217】
一例では、得られた200オングストローム膜は、Siを15原子パーセント、Tiを25.3原子パーセント、Nを49.7原子パーセント、Hを10原子パーセント含んでいたことが、ラザフォード後方散乱分光分析によって示された。この膜のオージェ深さプロファイルが図46に示される。オージェ深さプロファイルにより、約5原子パーセントの低い炭素含有量と、1原子パーセントの酸素含有量を有する、均一な組成であることが示される。この膜の抵抗率は、2,400μΩ−cmである。図47は、珪素スタッフィングを用いて形成した200オングストローム膜と、チタニアシリカ カーボナイトライドを堆積させて形成した200オングストローム膜の、抵抗率及び組成の比較を示す。
【0218】
拡散バリアとして機能させるため非常に珪素リッチな膜を得ることとの引き替えに、抵抗率が高くなる。1,000μΩ−cmの抵抗率は、拡散バリアとして十分許容されるものである。堆積のステップで用いるシランの量を減らして、膜の抵抗率を下げてもよい。最良の抵抗率が得られるのは、上述の如く、堆積及びアニールの後に材料の層の中に珪素をスタッフィングする場合である。しかし、珪素をスタッフィングさせた拡散バリアは、銅の拡散に対して、珪素含有材料を堆積させて形成した膜と同様の強力な抑止効果は与えない。例えば、珪素をスタッフィングさせた二元素窒化メタル(例えば窒化チタン等)は、銅の拡散を防止できず、これは、三元素窒化珪化メタル(例えばTiSiCN等)を堆積させて構築した膜についても同様である。集積回路の製造者は、膜の構築における製造者の要求に最もよく適合する珪素濃縮の方法を選択することができる。
【0219】
また、上述の珪素濃縮プロセスのそれぞれにおいて採用した堆積プロセスを変形することができることは注記すべきである。化学気相堆積の代わりに、スパッタリング等他の堆積プロセスを用いてもよい。TiSiCN以外の他の三元素窒化珪化メタルを本発明の具体例に用いてもよい。
【0220】
更に、上述のアニールのステップは、窒素と水素だけから成るプラズマを用いることに限定されない。堆積材料の抵抗率を下げるように作用する他のプラズマ組成を用いてもよい。このようなプラズマの一例は、窒素、水素及びアルゴンを含有する上述のプラズマである。これに続けてアニールを行ってもよい。
【0221】
シランへ曝露することによる珪素スタッフィングを含むプロセスにおいては、この曝露のステップは、エネルギーを熱により受ける点に制限されない。本発明の代替的な具体例では、珪素イオンを含有するプラズマは、RFシグナルによりエネルギーを受けた珪素リッチなガスにより生成することができる。また、珪素スタッフィングしようとする材料を含むウエハにバイアスを与えて、材料への珪素の衝撃を高めてもよい。プラズマを用いて珪素スタッフィングを行う場合は、珪素スタッフィングは、抵抗率を低くするための材料のアニールのステップの前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
【0222】
(c.プロセッサにより制御を行う膜の構築)上述の材料の堆積、アニール、酸化及び珪素スタッフィングのプロセスは、プロセッサに基づく制御ユニットにより制御を行うチャンバにて行ってもよい。ず48は、このような場合において使用できる制御ユニット600を示す。この制御ユニットは、プロセッサユニット605と、メモリ610と、マスストレージデバイス620と、入力制御ユニット670と、ディスプレイユニット650とを有し、これら全ては、制御ユニットバス625につながっている。
【0223】
プロセッサユニット605は、マイクロプロセッサ又は、メモリに保存された命令を実行することができるその他のエンジンであってもよい。メモリ610は、ハードディスクドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、RAMとROMの組み合わせ又はその他のメモリを備えていてもよい。メモリ610は、プロセッサユニット605が実行して上述のプロセスステップの遂行を促す命令を備えている。メモリ610の中の命令は、プログラムコード緒の形態であってもよい。プログラムコードは、多種多様なプログラム言語のいずれにも適合することができる。例えば、プログラムコードは、C+、C++、BASIC、Pascal、又はその他の様々な言語に書き換えることができる。
【0224】
マスストレージデバイス620は、データ及び命令を保存し、また、磁気ディスクや磁気テープ等のプロセッサ読み出し可能な保存媒体からデータ及び命令を読み込む。例えば、マスストレージデバイス620は、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、テープドライブ又は光ディスクドライブであってもよい。マスストレージデバイス620は、プロセッサユニットから受け取った指示に応じて、命令を保存したり読み込んだりする。マスストレージデバイス620によって保存したり読み込んだりするデータ及び命令は、上述のプロセスステップを行うため、プロセッサユニット605によって用いられる。先ず、データ及び命令は、マスストレージデバイス620により媒体から読み込まれ、次いで、プロセッサユニット605で用いるためメモリ610に転送される。
【0225】
ディスプレイユニット650はプロセッサユニット605の制御の下、チャンバオペレータに対して、情報をグラフィックディスプレイ及び文字数字キャラクタの形態で与える。入力制御ユニット670は、データ入力デバイス、例えばキーボード、マウスやライトペン等を制御ユニットに結合させ、チャンバオペレータの入力を受けることができるようにする。
【0226】
制御ユニットバス625は、データ及び制御信号を、制御ユニットバス625につながっている全てのデバイスの間で転送させる。ここでは制御ユニットバスは1つのバスであって制御ユニット600のデバイスに直接続しているように示されているが、制御ユニットバス625はバスの集合であってもよい。例えば、ディスプレイユニット650、入力制御ユニット670及びマスストレージデバイス620が入力−出力周辺バスにつながり、他方でプロセッサユニット605及びメモリ610はローカルプロセッサバスにつながっていてもよい、このローカルプロセッサバスと入力−出力周辺バスとがつながり、制御ユニットバス625を形成してもよい。
【0227】
制御ユニット600は、基板上に膜を形成するために用いるチャンバの要素につながっている。このような要素のそれぞれが制御ユニットバス625につながり、制御ユニット600とこれら要素の間の連絡を容易にしてもよい。これら要素は、ガスパネル52と、ランプ130等の加熱要素と、圧力制御ユニット157と、RFソース又はソース62,142,143,144と、チャンバ温度測定装置140とを有している。本発明の一具体例では、制御ユニット600は、チャンバ110A、110B及び110Cで必要なガスパネルコントローラ50である。
【0228】
基板上への材料の堆積、アニール、酸化及び珪素スタッフィングのプロセスステップについて上述した操作を、これら要素が行うように、制御ユニット600はこれら要素に信号を与える。また、制御ユニット600は、前述のプロセスステップの実行の制御をいかに進行させるかを決定するため、これら要素から信号を受け取る。例えば、制御ユニット600は温度測定デバイス140から信号を受け取り、ランプ130がチャンバに与えるべき熱量を決定する。
【0229】
図49は、メモリ610から読み込まれたプログラムコードの命令に応じてプロセッサユニット605が行うことができるプロセスステップのシーケンスを例示する。基板上への膜の形成を開始するに当たり、堆積ステップ700が行われる。堆積ステップ700では、プロセッサユニット605が、メモリ610から読み込まれた命令を実行する。このような命令の実行の結果、チャンバの要素が、上述のような基板上への材料の層の堆積を行うよう動作する。例えば、読み込まれた命令に応答してプロセッサユニット605により、ガスパネルがチャンバ内に前駆体ガスを供給し、ランプ130がチャンバを加熱し、圧力制御ユニット157がチャンバ内の圧力を設定するようになる。
【0230】
堆積素700が完了した後、メモリ610から読み込まれた命令により、プロセッサユニット605がチャンバの要素に対して、上述のアニールプロセスの中の1つ等のアニールのステップ701を行わせる。このアニールの操作は、窒素、窒素と水素の混合ガス、窒素と水素と他のガス(アルゴン等)との混合ガスの何れかを用いたプラズマアニールを含んでいてもよい。あるいは、アニールのステップ701は、上述のように連続アニールステップを実行させてもよい。
【0231】
アニールのステップ701の完了後、制御ユニット600に酸化プロセスステップが実行するか否かを決定する酸化決定のステップ702を行わせる。酸化を行わない場合は、ステップ703でメモリから命令を読み込み、プロセッサユニット605に珪素スタッフィングを行うか否かを決定させる。珪素スタッフィングを行わない場合は、制御ユニット600はステップ706において他の堆積操作を行うべきか否かを決定する。堆積操作は、既に堆積した材料の厚さが所望の膜厚と実質的に等しくなるまで行われる。所望の膜厚に達した場合は、基板上への膜の構築のプロセスは完了する。あるいは、新たな堆積のステップ700を行う。
【0232】
酸化決定のステップ702において酸化を行うことを決定した場合は、プロセッサユニット605は酸化のステップ704を実行させる。酸化のステップ704では、読み込まれた命令により、プロセッサユニット605は、チャンバの要素に、上述の堆積材料の酸化のプロセスステップを遂行するに必要な操作を行わせる。この酸化は、プラズマに基づくものであってもよいし、熱によるものであってもよい。酸化ステップ704が完了すれば、プロセッサユニット605は、新たな堆積のステップ700をステップ706において行うべきか否かを決定する。
【0233】
ステップ703において珪素スタッフィングを行うと決定した場合は、プロセスユニット605は珪素スタッフィングのステップ705を実行させる。プロセッサユニット605は、メモリ610内の珪素スタッフィングの命令を読み込みこれを実行させる。この命令に応答して、プロセッサユニット605は、上述の珪素スタッフィングの手順を実行することを可能にする方法で、チャンバの要素を作動させる。この珪素スタッフィングは、熱によりエネルギーが与えられたシランガスに堆積材料を曝露させることにより行ってもよい。あるいは、珪素スタッフィングは、RFシグナルを用いてプラズマを発生させて生成した珪素イオン含有環境に堆積材料を曝露させることにより行ってもよい。珪素スタッフィングのステップ705が完了すれば、堆積ステップ700を繰り返す。
【0234】
図50は、メモリ610から読み込んだプログラムコード命令に応答してプロセッサユニット605が実行することができる、別のプロセスステップのシーケンスを例示する。このプロセスステップのシーケンスは、図49に示されると同じステップを含んでいる。しかし、ステップの順番を変え、アニールのステップ701の前に珪素スタッフィングのステップ705を行っている。
【0235】
堆積のステップ700を行った直後、プロセッサユニット605は、ステップ703において命令を実行し、珪素スタッフィングを行うか否かを決定する。行う場合、珪素スタッフィングのステップ705を行い、次いで、アニールのステップ701を行う。行わない場合は、アニール701を行う。アニールのステップ701の後、プロセッサユニット605がステップ702において酸化を行うか否かを決定する。行う場合は、酸化のステップ704を実行させる。行わない場合は、ステップ706において、新たな堆積を行うか否かを決定する。また、酸化のステップ704を行った後、ステップ706において係る決定を行う。新たな堆積が必要なときは、堆積のステップ700を実行する。そうでない場合は、膜の構築のプロセスは完了する。
【0236】
ここまで特定の具体例について本発明の説明を行ってきたが、特許請求の範囲における本発明の本質及び範囲から離れることなく、いわゆる当業者により様々な変形や変更を行うことができることが認識されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】拡散バリアを含む、集積回路のコンタクトプラグを例示する図である。
【図2】拡散バリアによりふさがれた集積回路のコンタクトホールを例示する図である。
【図3】(a)は化学気相堆積チャンバを例示する図であり、(b)は(a)に示されるチャンバのためのウエハ支持体及び支持アームを例示する図である。
【図4】マルチチャンバ処理装置を例示する図である。
【図5】本発明に従ったウエハ処理チャンバの一具体例を例示する図である。
【図6】図5に示されるウエハ支持体及び支持アームの縦断面図である。
【図7】図6の支持アームの断面図において支持アームがウエハ支持を支持しているところの拡大図である。
【図8】図7の6−6線に沿った部分断面図である。
【図9】(a)は図6に示される支持アームの上面図であり、(b)は図9(a)の7−7線に沿った縦断面図である。
【図10】(a)は図6に示される支持アームの熱電対アイソレータの上面図であり、(b)は図10(a)の8−8線に沿った縦断面図である。
【図11】(a)は図6に示される支持アームのRF電力ストリップアイソレータの上面図であり、(b)は図11(a)に示されるアイソレータの部分的に断面図である正面図である。
【図12】図6の支持アームの下側保持プレートの上面図である。
【図13】図6の支持アーム固定端における詳細を示す断面図である。
【図14】図6の支持アームに配置されるRF電力ストリップのコネクタの詳細を表す図である。
【図15】(a)〜(c)とも、図5で示される整合回路網の具体例を例示する図である。
【図16】本発明に従った半導体ウエハ処理チャンバの別の具体例を例示する図である。
【図17】本発明に従った半導体ウエハ処理チャンバのまた別の具体例を例示する図である。
【図18】従来からの堆積プロセスを用いて堆積させた窒化チタン膜についてのシート抵抗値の時間に対するグラフである。
【図19】従来からの堆積プロセスを用いてシリコンウエハ上に堆積させた窒化チタン膜のラザフォード後方散乱スペクトルのチャートである。
【図20】表Iを示す図である。
【図21】表IIを示す図である。
【図22】表IIIを示す図である。
【図23】NF3のガスを流入させる化学気相堆積を用いて堆積させた窒化チタン膜のラザフォード後方散乱スペクトルのチャートである。
【図24】本発明に従った窒化チタン膜のオージェスパッタ分析のグラフである。
【図25】表IVを示す図である。
【図26】本発明に従った他の窒化チタン膜の元素のオージェ表面スペクトルである。
【図27】図26の窒化チタン膜における様々な元素の原子濃度のグラフである。
【図28】コントロール窒化チタン膜の元素のオージェ表面スペクトルである。
【図29】図28のコントロール窒化チタン膜における様々な元素の原子濃度のグラフである。
【図30】本発明に従った他の窒化チタン膜の元素のオージェ表面スペクトルである。
【図31】図30の窒化チタン膜における様々な元素の原子濃度のグラフである。
【図32】表Vを示す図である。
【図33】本発明に従って生じさせた膜による酸素の吸収を例示するグラフである。
【図34】(a)〜(c)とも、本発明に従って行った膜の有機炭素含有量の低減を例示するグラフである。
【図35】(a)〜(b)とも、本発明に従って形成したバイア及びサリサイドコンタクトの膜抵抗が改善される事を示すグラフである。
【図36】堆積及びプラズマ処理のサイクルの数を変えて生成させた膜の抵抗率を示すグラフである。
【図37】膜の抵抗率とバイアス電圧をプラズマ処理圧力の関数としてプロットしたグラフである。
【図38】(a)は、アニール時間と周波数が膜の抵抗率に与える影響を表すグラフであり、(b)は、アニール時間の膜抵抗率に対する影響についての別の例を表すグラフである。
【図39】(a)〜(b)とも、窒化チタンを連続的に堆積及びアニールして形成した窒化チタン膜についての、オージェ電子分光分析深さプロファイルのグラフである。
【図40】シリコンウエハ上に堆積させた厚さ1000オングストロームの従来形CVD窒化チタン層の、角度走査に係るX線回折のグラフである。
【図41】シリコンウエハ上に堆積させアニールを施した厚さ1000オングストロームのCVD窒化チタン層の、角度走査に係るX線回折のグラフである。
【図42】表VIを示す図である。
【図43】(a)〜(b)とも、本発明の一具体例に従って形成した、非酸化拡散バリア(a)と酸化拡散バリア(b)の化学組成を例示するグラフである。
【図44】本発明の一具体例に従って形成した拡散バリア抵抗特性を例示するグラフである。
【図45】本発明に従った珪素スタッフィングを用いて形成した膜のオージェ深さプロファイルを例示するグラフである。
【図46】本発明に従って珪素を含有する材料を堆積させることにより形成される膜のオージェ深さプロファイルを例示するグラフである。
【図47】図45と図46に示される膜の抵抗率及び組成を比較するグラフである。
【図48】本発明に従って基板上に膜を構築するために用いた、チャンバ制御のための制御ユニットを例示する構成図である。
【図49】本発明の一具体例に従って、図48の制御ユニットにより行う操作のシーケンスを例示するフローチャートである。
【図50】本発明の別の具体例に従って、図48の制御ユニットにより行う操作のシーケンスを例示するフローチャートである。
【符号の説明】
【0238】
10…CVDチャンバ、12…処理チャンバ、14…ウエハ、16…ウエハ支持体、18…ディスク、20…自由端、22…支持アーム、24…固定端、26…ステム、28…変位機構、30…ランプ、32…ウィンドウ、34…ホール、36…シャワーヘッド、38…熱電対、40…温度測定装置、42…ケーブル、100…拡散バリア、101…シリコン基板、102…コンタクトプラグ、103…コンタクトホール、105…導電領域、106…ボイド、110…半導体ウエハ処理チャンバ、112…処理チャンバ、114…ウエハ、116…ウエハ支持体、136…シャワーヘッド、142…RFソース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ上に窒化メタル膜を構築する方法であって、
(a)前記ウエハ上にメタロ有機前駆体から前記窒化メタル膜を形成するステップと、
(b)珪素を含有する環境において前記窒化メタル膜をプラズマ処理するステップと、
(c)前記ステップ(b)の前記窒化メタル膜上に窒化メタルのキャップ層を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)が、
(a1)チャンバ内において、前記ウエハ上に前記窒化メタル膜を堆積するステップと、
(a2)窒素を含有するプラズマにおいて前記窒化メタル膜を処理するステップと、
を有しており、
前記ステップ(a1)と前記ステップ(a2)との間において、前記チャンバから前記ウエハが取り出されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)の前記環境がシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a2)の前記窒素を含有するプラズマが更に水素を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記窒素を含有するプラズマが含む窒素と水素の比が、3:1から1:2の間である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)が、
(a1)チャンバ内において、前記ウエハ上に前記窒化メタル膜を堆積するステップと、
(a2)窒素及び水素を含有する第1のプラズマにおいて前記窒化メタル膜を処理するステップと、
(a3)前記ステップ(a2)の後で、本質的に窒素及び不活性ガスから成る第2のプラズマにおいて、前記窒化メタル膜を処理するステップと、
を有しており、
前記ステップ(a1)と前記ステップ(a2)との間において、前記チャンバから前記ウエハが取り出されない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(a3)の前記不活性ガスが、ヘリウム、アルゴン及びネオンのグループから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)が約1トールの圧力で実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(b)が約420℃の温度で実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)中に、珪素が前記窒化メタル膜に加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項1】
ウエハ上に窒化メタル膜を構築する方法であって、
(a)前記ウエハ上にメタロ有機前駆体から前記窒化メタル膜を形成するステップと、
(b)珪素を含有する環境において前記窒化メタル膜をプラズマ処理するステップと、
(c)前記ステップ(b)の前記窒化メタル膜上に窒化メタルのキャップ層を形成するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)が、
(a1)チャンバ内において、前記ウエハ上に前記窒化メタル膜を堆積するステップと、
(a2)窒素を含有するプラズマにおいて前記窒化メタル膜を処理するステップと、
を有しており、
前記ステップ(a1)と前記ステップ(a2)との間において、前記チャンバから前記ウエハが取り出されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)の前記環境がシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a2)の前記窒素を含有するプラズマが更に水素を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記窒素を含有するプラズマが含む窒素と水素の比が、3:1から1:2の間である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)が、
(a1)チャンバ内において、前記ウエハ上に前記窒化メタル膜を堆積するステップと、
(a2)窒素及び水素を含有する第1のプラズマにおいて前記窒化メタル膜を処理するステップと、
(a3)前記ステップ(a2)の後で、本質的に窒素及び不活性ガスから成る第2のプラズマにおいて、前記窒化メタル膜を処理するステップと、
を有しており、
前記ステップ(a1)と前記ステップ(a2)との間において、前記チャンバから前記ウエハが取り出されない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(a3)の前記不活性ガスが、ヘリウム、アルゴン及びネオンのグループから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(b)が約1トールの圧力で実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(b)が約420℃の温度で実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ(b)中に、珪素が前記窒化メタル膜に加えられる、請求項1に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15(a)】
【図15(b)】
【図15(c)】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34(a)】
【図34(b)】
【図34(c)】
【図35(a)】
【図35(b)】
【図36】
【図37】
【図38(a)】
【図38(b)】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43(a)】
【図43(b)】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図39】
【図2】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15(a)】
【図15(b)】
【図15(c)】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34(a)】
【図34(b)】
【図34(c)】
【図35(a)】
【図35(b)】
【図36】
【図37】
【図38(a)】
【図38(b)】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43(a)】
【図43(b)】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図39】
【公開番号】特開2009−71293(P2009−71293A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−208111(P2008−208111)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【分割の表示】特願平9−218887の分割
【原出願日】平成9年7月9日(1997.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208111(P2008−208111)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【分割の表示】特願平9−218887の分割
【原出願日】平成9年7月9日(1997.7.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】
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