説明

半導体センサ、及び、その製造方法

【課題】回路部の一部をキャップ基板のデッドスペースに形成することで、体格が低減された半導体センサ、及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】センサ基板10とキャップ基板50が絶縁膜51を介して接合された半導体センサであって、キャップ基板50の裏面50bから絶縁膜51までが除去されて、外部に露出したキャップ基板50の壁面に絶縁膜60が形成され、絶縁膜60を側壁、外部に露出した絶縁膜51を底部とする凹部56aが、センサ基板10の内部配線13bにおける裏面50b側への射影位置に形成され、凹部56a上の外部配線53a及び内部配線13bによってコンデンサC1、キャップ基板50に形成された貫通電極52aと凹部56aとの間の外部配線53aによって抵抗R1が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシング部が形成されたセンサ基板と、センシング部を気密封止するためのキャップが形成されたキャップ基板とが接合されて成る半導体センサ、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、互いに離間した複数の電極を具備し、当該複数の電極間の静電容量の変化を力学量として検出する力学量センサが提案されている。この力学量センサは、第1支持基板上に第1絶縁膜を介して第1半導体層が形成されて成るセンサ基板と、センサ基板の第1半導体層上に形成された第2半導体層を備えたキャップ基板と、を備えている。そして、センサ基板に形成された電極が、第2半導体層に形成された凹部と、該凹部と対向するセンサ基板の領域とによって構成された空間内に気密封止されている。第2半導体層には、キャップ基板を貫通する貫通電極が形成されており、この貫通電極を介して、センサ基板の電気信号が、外部に出力されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−283900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の力学量センサでは、電極の他に、貫通電極と電気的に接続するためのパッド、及び、回路部(容量−電圧変換部、フィルタ、信号増幅部)がセンサ基板に形成されている。これに対して、キャップ基板には、電極を気密封止するための凹部、及び、パッドと電気的に接続される貫通電極が形成されているだけであり、センサ基板の回路部に対応する部材が形成されていない。そのため、キャップ基板における回路部との対向領域がデッドスペースとなっている。また、キャップ基板におけるセンサ基板との接合面の裏面は、貫通電極と接続されるパッドが形成されるだけとなっており、その他の領域は、デッドスペースとなっている。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、回路部の一部をキャップ基板のデッドスペースに形成することで、体格が低減された半導体センサ、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、センシング部(12)が形成されたセンサ基板(10)と、センシング部(12)を気密封止するためのキャップ(55)が形成されたキャップ基板(50)とが、第1絶縁膜(51)を介して接合されて成る半導体センサであって、センサ基板(10)におけるキャップ基板(50)との接合面(10a)側に、センシング部(12)及び内部配線(13)が形成され、キャップ基板(50)におけるセンサ基板(10)との接合面(50a)の裏面(50b)から第1絶縁膜(51)までが除去されて、外部に露出したキャップ基板(50)の壁面及びキャップ基板(50)の裏面(50b)に第2絶縁膜(60)が形成され、キャップ基板(50)の裏面(50b)に、第2絶縁膜(60)を介して、外部電極(54)及び外部配線(53)が形成され、キャップ基板(50)、第1絶縁膜(51)、及び、第2絶縁膜(60)には、内部配線(13)と外部配線(53)とを電気的に接続する貫通電極(52)が形成され、外部に露出したキャップ基板(50)の壁面を覆う第2絶縁膜(60)を側壁、外部に露出した第1絶縁膜(51)を底部とする凹部(56)が形成されており、内部配線(13)は、センシング部(12)と電気的に接続された第1内部配線(13a)と、グランドと電気的に接続される第2内部配線(13b)と、を有し、外部電極(54)は、センシング部(12)の電気信号を送信するための第1外部電極(54a)と、グランドに接続するための第2外部電極(54b)と、を有し、外部配線(53)は、第1外部電極(54a)と電気的に接続された第1外部配線(53a)と、第2外部電極(54b)と電気的に接続された第2外部配線(53b)と、を有し、貫通電極(52)は、第1内部配線(13a)と第1外部配線(53a)とを電気的に接続する第1貫通電極(52a)と、第2内部配線(13b)と第2外部配線(53b)とを電気的に接続する第2貫通電極(52b)と、を有し、凹部(56)は、第2内部配線(13b)におけるキャップ基板(50)の裏面(50b)側への射影位置に形成された第1凹部(56a)を有しており、第1外部配線(53a)は、第1凹部(56a)の側壁及び底部を介して、第1貫通電極(52a)と第1外部電極(54a)との間に形成され、第1凹部(56a)の底部上の第1外部配線(53a)、及び、該第1外部配線(53a)と底部を介して対向する第2内部配線(13b)の一部によってコンデンサ(C1)が形成され、第1貫通電極(52a)と第1凹部(56a)との間の第1外部配線(53a)によって抵抗(R1)が形成され、第1貫通電極(52a)と第1外部電極(54a)との間に、抵抗(R1)とコンデンサ(C1)とから成るRCフィルタ(80)が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このように本発明によれば、キャップ基板(50)に抵抗(R1)が形成され、凹部(56)の底部に形成された第1外部配線(53a)と、センサ基板(10)に形成された第2内部配線(13b)の一部とによってコンデンサ(C1)が形成されて、RCフィルタ(80)が形成されている。このように、RCフィルタ(80)の一部がキャップ基板(50)に形成されるので、RCフィルタ(80)の全てがセンサ基板(10)に形成された構成と比べて、半導体センサの体格が低減される。
【0008】
また、RCフィルタ(80)を構成する抵抗(R1)は、デッドスペースであるキャップ基板(50)の裏面(50b)に形成されるので、半導体センサの体格を増大することなく、抵抗(R1)の形状(第1外部配線(53a)の長さ)を調整することができる。これにより、抵抗(R1)の抵抗値を調整して、RCフィルタ(80)の帯域幅を調整することができる。
【0009】
請求項2に記載のように、キャップ基板(50)の裏面(50b)における第1貫通電極(52a)と第1凹部(56a)との間は凸凹しており、抵抗(R1)は、凸凹を形作る壁面の第2絶縁膜(60)上に形成された第1外部配線(53a)である構成が好適である。
【0010】
このように、デッドスペースである、キャップ基板(50)の裏面(50b)の形状を凸凹に形成し、この凸凹した部位に第1外部配線(53a)を形成することで、第1外部配線(53a)の長さを調整することができる。これにより、抵抗(R1)の抵抗値を調整して、RCフィルタ(80)の帯域幅を調整することができる。
【0011】
請求項3に記載のように、内部配線(13)は、グランドと電気的に接続される第3内部配線を有し、外部電極(54)は、グランドに接続するための第3外部電極及び第4外部電極を有し、外部配線(53)は、第3外部電極と電気的に接続された第3外部配線を有し、貫通電極(52)は、第4外部電極と第3内部配線とを電気的に接続する第3貫通電極を有し、凹部(56)は、第3内部配線におけるキャップ基板の裏面側への射影位置に形成された第2凹部(56b)を有し、第3外部配線は、第2凹部(56b)の側壁及び底部を介して、第3貫通電極と第3外部電極との間に形成され、第2凹部(56b)の底部上の第3外部配線、及び、該第3外部配線と底部を介して対向する第3内部配線の一部によって、外部ノイズを遮蔽するための遮蔽コンデンサ(C2)が形成されており、該遮蔽コンデンサ(C2)を構成する第3外部配線と第3内部配線との間に、内部配線(13)の一部が設けられた構成が好ましい。
【0012】
このように、遮蔽コンデンサ(C2)の一部をキャップ基板(50)に形成しているので、遮蔽コンデンサ(C2)の全てがセンサ基板(10)に形成された構成と比べて、半導体センサの体格の増大が抑制される。
【0013】
また、内部配線(13)が遮蔽コンデンサ(C2)によって囲まれているので、内部配線(13)を伝播する電気信号に外部ノイズが畳重されること、及び、内部配線(13)を伝播する電気信号に起因する電磁波が外部に漏れることが抑制される。これにより、電磁環境適合性(EMC)が向上される。
【0014】
請求項4に記載のように、第3内部配線と第2内部配線(13b)とは、互いに電気的に接続された構成が良い。これによれば、内部配線(13)のパターンが簡素化される。
【0015】
請求項5に記載のように、第3外部配線は、第3貫通電極における裏面(50b)側の部位と電気的に接続されており、第3外部電極は、第4外部電極と同一部材である構成が良い。これによれば、外部電極(54)の数が低減され、部品点数が低減される。
【0016】
請求項6,7に記載の発明の作用効果は、請求項5に記載の発明の作用効果と同等なので、その記載を省略する。
【0017】
請求項8に記載の発明の作用効果は、請求項1に記載の発明の作用効果と同等なので、その記載を省略する。
【0018】
請求項9に記載の発明の作用効果は、請求項2に記載の発明の作用効果と同等なので、その記載を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る圧力センサの概略構成を示す上面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】圧力センサの製造工程を示す断面図であり、(a)は接合工程、(b)はトレンチ形成工程、(c)は第2絶縁膜形成工程を示す。
【図4】圧力センサの製造工程を示す断面図であり、(a)は露出工程、(b)は金属膜形成工程、(c)は電極形成工程を示す。
【図5】圧力センサの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を、圧力センサに適用した場合の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る圧力センサの概略構成を示す上面図である。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、圧力センサの製造工程を示す断面図であり、(a)は接合工程、(b)はトレンチ形成工程、(c)は第2絶縁膜形成工程を示す。図4は、圧力センサの製造工程を示す断面図であり、(a)は露出工程、(b)は金属膜形成工程、(c)は電極形成工程を示す。なお、図1ではメンブレン11を破線で示し、図2では抵抗R1を含む領域を破線で囲んで示し、コンデンサC1を含む領域を一点鎖線で囲んで示す。
【0021】
図1及び図2に示すように、圧力センサ100は、センサ基板10と、キャップ基板50とが、第1絶縁膜51を介して直接接合されて成る。センサ基板10には局所的に厚さの薄くなったメンブレン11が形成されており、このメンブレン11に圧電素子12が形成されている。また、キャップ基板50には局所的に厚さの薄くなったキャップ55が形成されている。圧電素子12は、キャップ55を構成する壁面とセンサ基板10におけるキャップ基板50との接合面10aによって囲まれた空間内に気密封止されている。センサ基板10には内部配線13が形成され、キャップ基板50には貫通電極52、外部配線53、及び、外部電極54が形成されている。圧電素子12の出力信号は、内部配線13、貫通電極52、外部配線53、及び、外部電極54を介して外部に出力される。
【0022】
センサ基板10はシリコンから成り、接合面10aの表層に、圧力を電気信号に変換する圧電素子12、及び、圧電素子12と貫通電極52とを電気的に接続する内部配線13が形成されている。内部配線13は、圧電素子12の出力信号を伝達する第1内部配線13aと、グランドと電気的に接続される第2内部配線13bと、電源と電気的に接続される第3内部配線(図示略)と、を有する。図示しないが、センサ基板10には、圧電素子12の出力信号を処理する処理回路が形成されており、この処理回路を介した圧電素子12の出力信号が、第1内部配線13aを介して貫通電極52に出力される。なお、圧電素子12が、特許請求の範囲に記載のセンシング部に相当する。
【0023】
キャップ基板50はシリコンから成り、キャップ55が形成されている。キャップ55を形成した後、表面を酸化することで、キャップ基板50の表層に第1絶縁膜51が形成される。キャップ基板50には、内部配線13と外部配線53とを電気的に接続する貫通電極52が形成され、裏面50b上には、第2絶縁膜60を介して、外部配線53と外部電極54とが形成されている。また、キャップ基板50には、裏面50bから接合面50a側の第1絶縁膜51までを除去するトレンチが複数形成されており、外部に露出したキャップ基板50の側面、及び、外部に露出した第1絶縁膜51が第2絶縁膜60によって覆われている。これにより、外部に露出したキャップ基板50の側面を覆う第2絶縁膜60を側壁、外部に露出した第1絶縁膜51及びこの第1絶縁膜51を覆う第2絶縁膜60を底部とする凹部56が構成されている。なお、凹部56の側壁、及び、凹部56の底部の構成要素の一部である第1絶縁膜51によって構成される凹部が、特許請求の範囲に記載の凹部に相当する。
【0024】
貫通電極52は、裏面50bから接合面50aまでが除去されて、外部に露出したキャップ基板50の壁面を覆う第2絶縁膜60、及び、この第2絶縁膜60及び外部に露出した内部配線13の上に形成された導電部材57によって構成されている。貫通電極52は、第1内部配線13aと電気的に接続された第1貫通電極52a、第2内部配線13bと電気的に接続された第2貫通電極52b、及び、第3内部配線(図示略)と電気的に接続された第3貫通電極52cを有する。
【0025】
外部配線53は、貫通電極52と外部電極54とを電気的に接続する機能を果たすものであり、裏面50b上の第2絶縁膜60、及び、凹部56の側壁と底部を成す第2絶縁膜60上に形成されている。外部配線53は、貫通電極52の構成要素である導電部材57と連続的に連結されており、第1貫通電極52aと電気的に接続された第1外部配線53a、第2貫通電極52bと電気的に接続された第2外部配線53b、及び、第3貫通電極52cと電気的に接続された第3外部配線53cを有する。図1に示すように、外部配線53a〜53cはそれぞれ一方向(以下、第1方向と示す)に延びており、第2外部配線53bと第3外部配線53cとは、メンブレン11を介して、第1方向に垂直な方向(以下、第2方向と示す)に並んでいる。
【0026】
外部電極54は、ワイヤ70を介して、外部機器(図示略)との電気的な接続を果たすものである。外部電極54は、圧電素子12の電気信号を送信するための第1外部電極54a、グランドに接続するための第2外部電極54b、及び、電源に接続するための第3外部電極54cを有する。図1に示すように、第1外部電極54aと第2外部電極54bとは、第1方向に並んでおり、第2外部電極54bと第3外部電極54cとは、メンブレン11を介して、第二方向に並んでいる。
【0027】
キャップ55は、圧電素子12を気密封止するためのものである。キャップ55は、異方性エッチングによって、センサ基板10との接合面50aから、その裏面50bに向って局所的にエッチングすることで形成される。
【0028】
凹部56は、本実施形態に係る圧力センサ100の特徴点なので、後で詳説する。
【0029】
次に、本実施形態に係る圧力センサ100の製造方法を図3及び図4に基づいて説明する。先ず、圧電素子12、内部配線13、及び、処理回路が形成されたセンサ基板10と、キャップ55が形成され、表層に第1絶縁膜51が形成されたキャップ基板50とを準備する。そして、真空雰囲気中で、接合面10a,50aそれぞれの上層を活性化する。この後、真空雰囲気中で、センサ基板10とキャップ基板50とを対向させて、キャップ55によって圧電素子12が覆われるように、接合面10a,50aを接触させることで、接合面同士を直接接合する。この結果、図3の(a)に示すように、センサ基板10とキャップ基板50とが第1絶縁膜51を介して直接接合される。以上が、接合工程である。
【0030】
接合工程後、図3の(b)に示すように、キャップ基板50の裏面50bから接合面50a側の第1絶縁膜51まで達する、貫通電極用のトレンチ61、及び、凹部用のトレンチ62をキャップ基板50に形成する。以上が、トレンチ形成工程である。
【0031】
トレンチ形成工程後、図3の(c)に示すように、トレンチ61,62を構成する壁面、及び、裏面50bに第2絶縁膜60を形成する。こうすることで、凹部56が形成される。以上が、第2絶縁膜形成工程である。
【0032】
第2絶縁膜形成工程後、図4の(a)に示すように、貫通電極用のトレンチ61における接合面50a側の端部を閉塞する絶縁膜51,60を除去して、内部配線13の一部を外部に露出する。以上が、露出工程である。
【0033】
露出工程後、図4の(b)に示すように、第2絶縁膜60、及び、外部に露出した内部配線13それぞれの上に所定パターンの金属膜を形成する。こうすることで、外部配線53及び貫通電極52が形成され、後述するRCフィルタ80が形成される。以上が、金属膜形成工程である。なお、厳密に言えば、露出工程において、外部に露出した第1絶縁膜51上にも、金属膜が形成される。
【0034】
露出工程後、図4の(c)に示すように、外部電極54を形成してワイヤ70を接続する。以上が、電極形成工程である。
【0035】
電極形成工程後、異方性エッチングによって、接合面10aの裏面からキャップ基板50に向って局所的にエッチングすることでメンブレン11を形成する。以上が、メンブレン形成工程である。以上の各工程を経ることで、図2に示す圧力センサ100が形成される。なお、メンブレン形成工程後に電極形成工程を行っても良い。
【0036】
次に、本実施形態に係る圧力センサ100の特徴である凹部56について説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態では、第1方向に沿って、3つの凹部56が、第1貫通電極52aと第1外部電極54aとの間に並んで形成されている。そして、第1外部配線53aが凹部56の側壁と底部を成す第2絶縁膜60上に形成されており、凹部56がキャップ基板50に形成されていない構成と比べて、第1外部配線53aの配線長が長くなっている。
【0037】
また、図2に示すように、第1外部電極54a側の凹部56(以下、第1凹部56aと示す)が、第2内部配線13bにおける裏面50b側への射影位置に形成されている。これにより、第1凹部56aの底部(絶縁膜51,60)を介して、第1外部配線53aの一部と第2内部配線13bの一部とが対向し、コンデンサC1が形成されている。また、残り二つの凹部56によって、第1凹部56aと第1貫通電極52aとの間の領域が凸凹とされ、その凸凹に形成されることで配線長が長くなった(抵抗値が高くなった)第1外部配線53aによって抵抗R1が形成されている。以上の構成により、第1貫通電極52aと第1外部電極54aとの間に、抵抗R1とコンデンサC1とから成るRCフィルタ80が形成され、圧電素子12の出力信号が、RCフィルタ80を介して外部に出力されるようになっている。
【0038】
次に、本実施形態に係る圧力センサ100の作用効果を説明する。上記したように、キャップ基板50に抵抗R1が形成され、センサ基板10とキャップ基板50とにコンデンサC1が形成され、抵抗R1とコンデンサC1とによってRCフィルタ80が形成されている。このように、RCフィルタ80の一部がキャップ基板50に形成されるので、RCフィルタ80の全てがセンサ基板10に形成された構成と比べて、圧力センサ100の体格が低減される。
【0039】
また、抵抗R1は、デッドスペースを有するキャップ基板50に形成されるので、圧力センサ100の体格を増大することなく、抵抗R1の形状(第1外部配線53aの長さ)を調整することができる。これにより、抵抗R1の抵抗値を調整して、RCフィルタ80の帯域幅を調整することができる。
【0040】
本実施形態では、第1凹部56aを除く、残り二つの凹部56によって、第1凹部56aと第1貫通電極52aとの間の領域が凸凹とされ、その凸凹に形成された第1外部配線53aによって抵抗R1が形成されている。このように、凸凹した部位に第1外部配線53aを形成することで、第1外部配線53aの長さを調整することができる。これにより、抵抗R1の抵抗値を調整して、RCフィルタ80の帯域幅を調整することができる。
【0041】
また、接合工程から金属膜形成工程を経ることで、貫通電極52とRCフィルタ80とが形成される。このように、貫通電極52と同一の形成工程にてRCフィルタ80が形成されるので、RCフィルタ80の形成によって、圧力センサ100の製造工程が煩雑となることが抑制される。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0043】
本実施形態では、本発明に係る半導体センサを圧力センサに適用例を示した。しかしながら、本発明に係る半導体センサの適用としては、上記例に限定されず、例えば、角速度センサなどに適用することができる。
【0044】
本実施形態では、第1絶縁膜51がキャップ基板50の表層に形成された例を示した。しかしながら、第1絶縁膜51は、センサ基板10とキャップ基板50との間に位置すればよいので、キャップ基板50の表層に第1絶縁膜51が形成されていなくとも良い。
【0045】
第2絶縁膜形成工程において、図3の(c)に示すように、トレンチ61,62を構成する壁面全てに第2絶縁膜60が形成される例を示した。しかしながら、トレンチ形成工程において、図3の(b)に示すように、トレンチ61,62を構成する壁面の内、外部に露出したキャップ基板50の壁面のみに第2絶縁膜60を形成しても良い。この場合、凹部56の底部は、第1絶縁膜51のみによって構成される。
【0046】
本実施形態では、第1方向に沿って、3つの凹部56が並んでいる例を示した。しかしながら、凹部56の配置、及び個数としては、上記例に限定されない。
【0047】
本実施形態では、RCフィルタ80の構成要素であるコンデンサC1が、センサ基板10とキャップ基板50とに形成された例を示した。しかしながら、図5に示すように、上記したコンデンサC1の他に、電磁環境適合性(EMC)を向上するための遮蔽コンデンサC2が、センサ基板10とキャップ基板50とに形成された構成を採用することもできる。
【0048】
図5に示すセンサ基板10は、圧電素子12の形成面12a上に形成された複数の絶縁層20を有しており、この絶縁層20とキャップ基板50の表層に形成された第1絶縁膜51とが直接接合されている。図5に示すように、絶縁層20の中に第1内部配線13aの一部が形成されており、形成面12aの表層に第2内部配線13bが形成されている。
【0049】
キャップ基板50には、RCフィルタ80を構成するための凹部56の他に、遮蔽コンデンサC2を構成するための凹部56(以下、第2凹部56bと示す)が形成されている。第2凹部56bは、第2内部配線13bにおける裏面50b側への射影位置に形成されており、第2凹部56bを構成する側壁及び底部に第2外部配線53bが形成されている。これにより、絶縁膜51,60及び絶縁層20を介して互いに対向する第2外部配線53bの一部と第2内部配線13bの一部とによって、遮蔽コンデンサC2が形成されている。図5に示す例では、遮蔽コンデンサC2を構成する第2外部配線53bと第2内部配線13bとの間に、第1内部配線13aの一部が設けられている。
【0050】
このように、第1内部配線13aが遮蔽コンデンサC2によって囲まれているので、第1内部配線13aを伝播する電気信号に外部ノイズが畳重されること、及び、第1内部配線13aを伝播する電気信号に起因する電磁波が外部に漏れることが抑制される。これにより、電磁環境適合性(EMC)が向上される。また、遮蔽コンデンサC2の一部がキャップ基板50に形成されているので、遮蔽コンデンサC2の全てがセンサ基板10に形成された構成と比べて、圧力センサ100の体格の増大が抑制される。なお、図5は、圧力センサの変形例を示す断面図であり、遮蔽コンデンサC2を含む領域を二点鎖線で囲んで示している。
【0051】
図5に示す変形例では、第1内部配線13aが遮蔽コンデンサC2によって囲まれた例を示した。しかしながら、遮蔽コンデンサC2によって囲まれる内部配線13としては、上記例に限定されず、例えば、電源と電気的に接続される第3内部配線(図示略)が遮蔽コンデンサC2によって囲まれた構成を採用することもできる。
【0052】
図5に示す変形例では、コンデンサC1、遮蔽コンデンサC2それぞれが、共通の第2内部配線13bを有する例を示した。しかしながら、コンデンサC1、遮蔽コンデンサC2それぞれが、別々の第2内部配線13bを有しても良い。ただし、内部配線13のパターンの簡素化を考慮した場合、図5に示す変形例の方が好ましい。
【0053】
図5に示す変形例では、コンデンサC1、遮蔽コンデンサC2それぞれが、共通の第2外部電極54bに接続される例を示した。しかしながら、コンデンサC1、遮蔽コンデンサC2それぞれが、別々の第2外部電極54bに接続される構成を採用することもできる。ただし、部品点数(外部電極54の数)の低減を考慮した場合、図5に示す変形例の方が好ましい。
【0054】
図5に示す変形例では、遮蔽コンデンサC2を構成する第2内部電極13bと第2外部電極54bとが互いに電気的に接続された例を示した。しかしながら、遮蔽コンデンサC2を構成する第2内部電極13bと第2外部電極54bとは分離していても良い。
【符号の説明】
【0055】
10・・・センサ基板
12・・・圧電素子
13・・・内部配線
50・・・キャップ基板
51・・・第1絶縁膜51
52・・・貫通電極
53・・・外部配線
54・・・外部電極
56・・・凹部
60・・・第2絶縁膜
R1・・・抵抗
C1・・・コンデンサ
80・・・RCフィルタ
100・・・圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センシング部(12)が形成されたセンサ基板(10)と、前記センシング部(12)を気密封止するためのキャップ(55)が形成されたキャップ基板(50)とが、第1絶縁膜(51)を介して接合されて成る半導体センサであって、
前記センサ基板(10)における前記キャップ基板(50)との接合面(10a)側に、前記センシング部(12)及び内部配線(13)が形成され、
前記キャップ基板(50)における前記センサ基板(10)との接合面(50a)の裏面(50b)から前記第1絶縁膜(51)までが除去されて、外部に露出した前記キャップ基板(50)の壁面及び前記キャップ基板(50)の裏面(50b)に第2絶縁膜(60)が形成され、
前記キャップ基板(50)の裏面(50b)に、前記第2絶縁膜(60)を介して、外部電極(54)及び外部配線(53)が形成され、
前記キャップ基板(50)、前記第1絶縁膜(51)、及び、前記第2絶縁膜(60)には、前記内部配線(13)と前記外部配線(53)とを電気的に接続する貫通電極(52)が形成され、
外部に露出した前記キャップ基板(50)の壁面を覆う第2絶縁膜(60)を側壁、外部に露出した第1絶縁膜(51)を底部とする凹部(56)が形成されており、
前記内部配線(13)は、前記センシング部(12)と電気的に接続された第1内部配線(13a)と、グランドと電気的に接続される第2内部配線(13b)と、を有し、
前記外部電極(54)は、前記センシング部(12)の電気信号を送信するための第1外部電極(54a)と、グランドに接続するための第2外部電極(54b)と、を有し、
前記外部配線(53)は、前記第1外部電極(54a)と電気的に接続された第1外部配線(53a)と、前記第2外部電極(54b)と電気的に接続された第2外部配線(53b)と、を有し、
前記貫通電極(52)は、前記第1内部配線(13a)と前記第1外部配線(53a)とを電気的に接続する第1貫通電極(52a)と、前記第2内部配線(13b)と前記第2外部配線(53b)とを電気的に接続する第2貫通電極(52b)と、を有し、
前記凹部(56)は、前記第2内部配線(13b)における前記キャップ基板(50)の裏面(50b)側への射影位置に形成された第1凹部(56a)を有しており、
前記第1外部配線(53a)は、前記第1凹部(56a)の側壁及び底部を介して、前記第1貫通電極(52a)と前記第1外部電極(54a)との間に形成され、
前記第1凹部(56a)の底部上の第1外部配線(53a)、及び、該第1外部配線(53a)と前記底部を介して対向する前記第2内部配線(13b)の一部によってコンデンサ(C1)が形成され、
前記第1貫通電極(52a)と前記第1凹部(56a)との間の第1外部配線(53a)によって抵抗(R1)が形成され、
前記第1貫通電極(52a)と前記第1外部電極(54a)との間に、前記抵抗(R1)と前記コンデンサ(C1)とから成るRCフィルタ(80)が形成されていることを特徴とする半導体センサ。
【請求項2】
前記キャップ基板(50)の裏面(50b)における前記第1貫通電極(52a)と前記第1凹部(56a)との間は凸凹しており、
前記抵抗(R1)は、前記凸凹を形作る壁面の第2絶縁膜(60)上に形成された前記第1外部配線(53a)であることを特徴とする請求項1に記載の半導体センサ。
【請求項3】
前記内部配線(13)は、グランドと電気的に接続される第3内部配線を有し、
前記外部電極(54)は、グランドに接続するための第3外部電極及び第4外部電極を有し、
前記外部配線(53)は、前記第3外部電極と電気的に接続された第3外部配線を有し、
前記貫通電極(52)は、前記第4外部電極と前記第3内部配線とを電気的に接続する第3貫通電極を有し、
前記凹部(56)は、前記第3内部配線における前記キャップ基板の裏面側への射影位置に形成された第2凹部(56b)を有し、
前記第3外部配線は、前記第2凹部(56b)の側壁及び底部を介して、前記第3貫通電極と前記第3外部電極との間に形成され、
前記第2凹部(56b)の底部上の第3外部配線、及び、該第3外部配線と前記底部を介して対向する前記第3内部配線の一部によって、外部ノイズを遮蔽するための遮蔽コンデンサ(C2)が形成されており、
該遮蔽コンデンサ(C2)を構成する第3外部配線と前記第3内部配線との間に、前記内部配線(13)の一部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体センサ。
【請求項4】
前記第3内部配線と前記第2内部配線(13b)とは、互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体センサ。
【請求項5】
前記第3外部配線は、前記第3貫通電極における前記裏面側の部位と電気的に接続されており、
前記第3外部電極は、前記第4外部電極と同一部材であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の半導体センサ。
【請求項6】
前記第2外部配線(53b)と前記第3外部配線とは、互いに電気的に接続されており、
前記第2外部電極(54b)は、前記第4外部電極と同一部材であることを特徴とする請求項5に記載の半導体センサ。
【請求項7】
前記第2外部配線(53b)と前記第3外部配線とは、互いに電気的に接続されており、
前記第2外部電極(54b)は、前記第3外部電極と同一部材であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の半導体センサ。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の半導体センサの製造方法であって、
前記センシング部(12)及び前記内部配線(13)が形成されたセンサ基板(10)と、前記キャップ(55)が形成されたキャップ基板(50)とを、前記キャップ(55)によって前記センシング部(12)が覆われるように、前記第1絶縁膜(51)を介して接合する接合工程と、
該接合工程後、前記キャップ基板(50)の裏面(50b)から前記第1絶縁膜(51)まで達する、前記貫通電極用のトレンチ(61)、及び、前記凹部用のトレンチ(62)を前記キャップ基板(50)に形成するトレンチ形成工程と、
該トレンチ形成工程後、前記トレンチ(61,62)を構成する壁面、及び、前記キャップ基板(50)の裏面(50b)に第2絶縁膜(60)を形成して、前記凹部(56)を形成する第2絶縁膜形成工程と、
該第2絶縁膜形成工程後、前記トレンチ形成工程において外部に露出した複数の第1絶縁膜(51)の内、前記貫通電極用のトレンチ(61)の第1絶縁膜(51)を除去して、前記内部配線(13)の一部を外部に露出する露出工程と、
該露出工程後、前記第2絶縁膜(60)、及び、外部に露出した内部配線(13)それぞれの上に所定パターンの金属膜を形成して、前記外部配線(53)、及び、前記貫通電極(52)を形成する金属膜形成工程と、を有することを特徴とする半導体センサの製造方法。
【請求項9】
前記トレンチ形成工程において、前記キャップ基板(50)の裏面(50b)における前記第1貫通電極(52a)と前記第1外部電極(54a)との間に少なくとも1つのトレンチを形成することで、前記キャップ基板(50)の裏面(50b)における前記第1貫通電極(52a)と前記第1外部電極(54a)との間を凸凹にすることを特徴とする請求項8に記載の半導体センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−195442(P2012−195442A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58203(P2011−58203)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】