説明

半導体デバイスにおける無電解ニッケルおよび金めっき

説明した例の半導体デバイスは、半導体基板及び金属コンタクトパッドの上に形成される不活性化層を含む。ENIG無電解めっきプロセスを用いて不活性化層及び金属コンタクトパッドの上にニッケルが、ニッケルの上に金が堆積される。ニッケルは、ニッケルの不活性化層とのインタフェースに及びニッケルの不活性化層及び金属コンタクトパッドとの接合に多孔質ニッケルのない第1非多孔質ニッケル領域(250A)を含み、第1ニッケル層の上の多孔質ニッケル領域(270)も含む。多孔質ニッケル層の上に金領域(260)がある。第2非多孔質ニッケル領域(250B)が多孔質ニッケル領域と金領域との間にあってもよい。金リッチ・ニッケル領域(275)が、多孔質ニッケル領域と金領域との間にあってもよい。堆積されるニッケル及び堆積される金の相対的厚さは、無電解金めっきプロセス中にニッケル層の腐食がデバイス層に達しないように選択される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、半導体デバイスの製造におけるニッケルおよび金の無電解めっきのための方法、ならびに、こうした無電解めっきを用いて製造されるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明が関する無電解めっきのタイプは、半導体デバイスの金属パッド(例えば、アルミニウム・パッド)の上にニッケル(Ni)層および金(Au)層をめっきするための方法である。無電解めっきは、無電解めっき用の装置の方が安価であること、ならびに、この方法の方がニッケルおよび金の材料消費が少ないことから、電解めっきよりも有利である。
【0003】
Ni/Au無電解めっきが半導体デバイスのめっきに使用される場合、NiがAuと反応し、臨界インタフェースおよびデバイス層の接合点で「腐食」の領域を生成することが、本発明者によって見つけられている。この腐食は、特にNiと下にある不活性化酸化物(PO)層との間の結合に影響を与える。腐食は、Ni/POインタフェース、ボイド、およびNi層が非常に金リッチである領域に沿った、非常に多孔質なNi層の形式となり得る。腐食により、水分およびイオン不純物がICの能動エリアへ移動し、デバイス欠陥を発生させる可能性がある。
【0004】
無電解めっきプロセスが完了した時点であっても、デバイス層インタフェースおよび接合でのニッケル層の完全性を維持できることが求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、無電解めっきプロセスが完了した時点で、半導体デバイスの層インタフェースおよび接合間の機械的結合を維持するための方法および構造を提供する。
【0006】
例示的実施形態は、金(Au)層の厚さを決定すること、および、その後、金めっきプロセスが完了した時点で、ニッケル/不活性化層インタフェースおよびニッケル/不活性化層/金属接合での、ニッケルの非多孔質層を残存させるために必要な、ニッケル(Ni)の厚さを決定することを含む。
【0007】
更なる例示的実施形態は、下にある金属パッド、ニッケル/不活性化層/金属接合の接合での非多孔質ニッケル層、非多孔質ニッケル層の上の多孔質ニッケル層、多孔質ニッケル層の上の金層、および、金層と多孔質ニッケル領域との間の金リッチ・ニッケル領域を、含むことができる。
【0008】
本発明の原理を実装する例示的実施形態について、添付の図面を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】半導体デバイスのニッケル/不活性化層インタフェース付近の層の断面イメージである。
【0010】
【図2】一例の実施形態に従った半導体デバイスを示す断面図である。
【0011】
【図3A】一例の実施形態に従った、半導体デバイスを形成する方法を示す図である。
【図3B】一例の実施形態に従った、半導体デバイスを形成する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
無電解ニッケル置換金(ENIG)は、ニッケルを酸化から保護するために置換金の層で覆った無電解ニッケルめっきを指す。これは、例えば印刷回路基板上で使用される表面めっきの一種である。
【0013】
例示的実施形態によれば、無電解めっきプロセスが完了した時点で、非多孔質ニッケル層との、ニッケル/不活性化層インタフェースおよびニッケル/不活性化層/金属接合での、機械的完全性が維持される。
【0014】
図1は、一例の半導体デバイス100内の腐食関連エリアを示す、走査型電子顕微鏡(SEM)の顕微鏡写真を示す。図1では、本明細書における例示的実施形態に関連したある層を含む、半導体デバイス100の一部が示されている。具体的に言えば、デバイス100は、基板110、基板110上の金属パッド120、基板110および金属パッド120上の不活性化層130、ならびに、ニッケル/金(Ni/Au)無電解めっき層150/160を含むことができる。ニッケル層150と不活性化層130との間にインタフェース180が見られ、ニッケル層150、不活性化層130、および金属パッド120の接合部に、接合190が見られる。
【0015】
図1に示される腐食は、典型的な無電解プロセス中のニッケル層上の金のガルバニック攻撃(galvanic attack)によって発生する可能性がある。図1では、1)ガルバニック攻撃(例えば、金とニッケルとの間の高活性電気化学反応)が非常に多孔質なニッケル層を生成したエリア、2)ニッケルが完全に溶解してボイドを生成した領域、ならびに、3)EDX(エネルギー分散X線分光法)が金の非常に豊富なニッケル層を検出した領域を含む、3つの領域の腐食が観察できる。
【0016】
本発明に関連して、ニッケルと不活性化層130(不活性化酸化物(PO))との間の結合が機械的であり、化学的でないことが分かった。この機械的結合は、ニッケルが多孔質になる場合に弱められ、多孔性により、金原子をニッケル層内に拡散させ、金めっき反応中の置換によってニッケル原子を置き換えることができる。金層付近のニッケルの欠乏が、ニッケル原子を金層へ拡散させ、下にあるニッケル層150内にボイドを生成させることになる。このボイドにより、水分およびイオン不純物などの異質な化学物質の、浸透、開口を通じた移動、および、集積回路の能動エリアへの到達が可能となり、デバイスに損傷を与え、最終的にデバイス欠陥を発生させる。言い換えれば、ニッケル層/保護層インタフェースまたはニッケル層/保護層/金属パッド接合での、ニッケル層の完全性が損なわれた場合、不純物イオンがデバイスに到達して金属パッドの腐食を引き起こし、イオンがデバイスの能動エリアに到達した場合は、デバイスリークを引き起こす可能性がある。
【0017】
図2は、本発明の原理を実装する半導体デバイス200を示す。例示されたデバイス200は実装の単なる一例であり、追加の要素を含んでもよいこと、あるいはいくつかの例示された要素を修正または省略してもよいことを理解されたい。
【0018】
例示された半導体デバイス200は、基板210、基板210上に形成される金属コンタクトパッド220、基板210と金属コンタクトパッド220の一部との上に形成される不活性化層230、ならびに、金属パッド220および不活性化層230の上にENIGプロセスで形成されるニッケル250および金260の無電解めっき層を含む。無電解めっきされたニッケル層250は、第1の非多孔質ニッケル層または領域250A、多孔質ニッケル層または領域270、および第2の非多孔質ニッケル層または領域250Bを含むことができる。多孔質ニッケル層270は、非多孔質ニッケル層250Aと250Bとの間に挟まれている。第2の非多孔質ニッケル層250Bは、ENIGプロセスにおける金層260の無電解めっき中に金層260によって攻撃されない初期の無電解ニッケル堆積の部分を含む。
【0019】
基板210は、当分野で知られているようなシリコン基板を含んでもよい。金属コンタクトパッド220は金属を含み、例えば銅(Cu)またはアルミニウム(Al)を含んでもよい。例示の目的で、および限定することは意図しないが、金属コンタクトパッド220はアルミニウムを含み、アルミニウム・パッドと呼ばれ得る。不活性化層230は、当分野で知られているような不活性化酸化物(PO)を含むことができる。
【0020】
前述のように、電気めっきされたニッケル層250は、第1の非多孔質ニッケル層250A、および、第1の非多孔質ニッケル層250Aの上の多孔質ニッケル層270を含んでもよい。第1の非多孔質ニッケル層250Aは、ニッケル層/不活性化層インタフェース280の、およびニッケル層/不活性化層/金属コンタクトパッド接合290の両方にあり得る。第1および第2の非多孔質ニッケル層250Aおよび250Bは、無電解めっきされたニッケル層250の所定の厚さのため、および金層260の所定の厚さのため、無電解めっきプロセスの完了時点に残存する。金層260は多孔質ニッケル層250の上に形成され、無電解めっきプロセスの結果として、金層260と多孔質ニッケル領域270との間に金リッチ・ニッケル領域275が生じ得る。しかしながら、第1の非多孔質ニッケル層250Aが、不活性化層230が金リッチ・ニッケル領域275によって直接影響を受けることのないように保護する。第1および第2の非多孔質ニッケル層250A、250B、ならびに多孔質ニッケル層270を「層」と呼ぶが、めっき、および金層のニッケルとの相互作用は、結果として正確に明確な層を明らかに生じさせることになる均一性を必ずしも生じさせないため、これらの層は、無電解ニッケル250の「領域」として特徴付けることもできることが意図されていることが理解されよう。
【0021】
図2に示されるように、無電解ニッケル層250は、ニッケル/不活性化層(すなわちNi/PO)インタフェース280での、およびニッケル/不活性化層/金属コンタクトパッド(すなわちNi/PO/Al)接合290での、デバイス200の機械的完全性を維持する厚さとすることができる。さらに図2に示されるように、無電解ニッケル層250は、多孔質ニッケル層270の厚さが、不活性化層230、金属パッド220、または半導体デバイス200の能動面に到達することなく、所定の厚さのAu層260を達成するのに十分な厚さとすることができる。
【0022】
図3Aは、本発明の原理に従って半導体デバイスを作成するためのプロセスの一例の実施形態のフロー図300を示す。当業者であれば、図3に示されたフロー図300が一般化された概略的なプロセスフローの例を表すこと、および、追加のステップを追加してもよいこと、または示されたステップを修正または省略してもよいことが、容易に明らかとなろう。
【0023】
図3Aのブロック310に示すように、プロセスは、結果として生じる構造のため(例えば、ワイヤボンディングおよびはんだ付けのため)の金層の厚さを決定することによって開始される。ブロック320に示すように、プロセスは、その後、決定された金層の厚さに到達するための、金めっきの速度および時間を決定することを含む。ブロック330に示すように、プロセスは、その後、金めっきステップ中に多孔質ニッケル層の先端がどの程度の速さで進行するかを決定することを含む。ブロック340に示すように、プロセスは、多孔質(部分、すなわち多孔質のNi層)ニッケル層が不活性化層または金属パッドに到達しないようにするために必要とされる金層の下のニッケル層の厚さを決定することによって、続行する。この決定に続き、ブロック350で、金属パッドをニッケル層でめっきすること、および、ニッケル層の上に金層をめっきすることによって、半導体チップを処理することができる。このプロセスは、ブロック360で終了する。
【0024】
例示された方法では、非多孔質ニッケル層は不活性化層との機械的結合を形成する。この方法は、非多孔質ニッケル層の不活性化層とのインタフェースで、ならびに、非多孔質ニッケル層の不活性化層および金属コンタクトパッドとの接合で、非多孔質ニッケルの層を維持する。前述のように、金属コンタクトパッドはアルミニウム(Al)を含んでもよく、無電解めっきプロセスはENIGプロセスとしてもよい。
【0025】
図3Bは、修正されたフローを使用する一例の方法を示し、ここでニッケル層の厚さは固定値に保たれ、金層の厚さまたはめっき速度/時間は、形成される多孔質ニッケル端が金属パッド/不活性化層インタフェースから妥当な距離を残すように選択される。
【0026】
例示的無電解めっきプロセスおよび結果として生じる構造の利点は、コストの利点および電解めっき全体にわたる容易さを含むことができる。他の利点は、多孔質ニッケル領域が金属(例えばAlまたはCu)パッドに接する構造での信頼性である。例示的実施形態は、不活性化層と無電解ニッケルおよび金めっきとの間のインタフェースでの機械的完全性が、湿気およびイオンをデバイスの能動エリアに到達させないようにするため、結果として生じる半導体デバイスは、湿気およびイオン不純物の存在下で一層ロバストとなる。
【0027】
例示の実施例の文脈で説明したような特徴又はステップのすべて又はその幾つかを有する例示の実施例の文脈で説明した一つ又は複数の特徴又はステップの異なる組み合わせを有する実施例も、本明細書に包含されることを意図している。当業者であれば、多くの他の実施形態および変形も、本発明の特許請求の範囲内で可能であることを理解されよう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスであって、
基板、
前記基板の上に形成される金属コンタクトパッド、
前記基板の上および前記金属コンタクトパッドの一部の上に形成される不活性化層、および、
前記金属コンタクトパッドおよび不活性化層の上に形成される、ニッケルおよび金の無電解めっき層、
を含み、
前記ニッケルおよび金の無電解めっき層が、前記ニッケルの前記不活性化層とのインタフェースに、ならびに前記ニッケルの前記不活性化層および金属パッドとの接合に、多孔質ニッケルのない第1の非多孔質ニッケル領域と、前記第1の非多孔質ニッケル領域の上の多孔質ニッケル領域と、前記多孔質ニッケル領域の上の金領域とを含む、
半導体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、前記ニッケルおよび金の無電解めっき層が、前記多孔質ニッケル領域と前記金領域との間に第2の非多孔質ニッケル領域をさらに含む、デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載のデバイスであって、前記金領域と前記多孔質ニッケル領域との間に金リッチ・ニッケル領域をさらに含む、デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、前記金属コンタクトパッドがアルミニウムコンタクトパッドを含む、デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスであって、前記無電解めっき層が、無電解ニッケル置換金めっきプロセスによって堆積される層である、デバイス。
【請求項6】
半導体デバイスを製造する方法であって、
基板の上に金属コンタクトパッドを形成すること、
前記基板の上および前記金属コンタクトパッドの一部の上に不活性化層を形成すること、
前記金属コンタクトパッドおよび不活性化層の上にニッケルを堆積させること、および、
前記ニッケルの上に金を堆積させること、
を含み、
前記ニッケルおよび金が無電解めっきプロセスを使用して堆積され、前記堆積されるニッケルが、前記ニッケルの前記不活性化層とのインタフェースに、ならびに前記ニッケルの前記不活性化層および金属パッドとの接合に、多孔質ニッケルのない第1の非多孔質ニッケル領域と、前記第1の非多孔質ニッケル領域の上の多孔質ニッケル領域とを含み、前記堆積される金が、前記多孔質ニッケル領域の上の金領域を含む、
方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記堆積されるニッケルが、前記多孔質ニッケル領域と前記金領域との間に第2の非多孔質ニッケル領域をさらに含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記堆積されるニッケルおよび堆積される金が、前記金領域と前記多孔質ニッケル領域との間の金リッチ・ニッケル領域をさらに含む、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記金属コンタクトパッドがアルミニウムコンタクトパッドを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記無電解めっきプロセスが、無電解ニッケル置換金めっきプロセスである、方法。
【請求項11】
ニッケル/半導体デバイス層インタフェースで機械的結合を維持する方法であって、
前記デバイス層をニッケルの層で無電解めっきすること、および、
前記ニッケル層の上に金層を無電解めっきすること、
を含み、前記無電解金めっきプロセス中に前記ニッケル層の腐食が前記半導体デバイス層に到達しないように、前記ニッケル層の厚さが前記金層に関して構成される、
方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記金層の厚さを決定すること、および、その後、下にあるニッケル層の厚さを、前記金の無電解めっきの完了時点に非多孔質ニッケルの層が残存できるようにするよう決定することをさらに含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記半導体デバイス層が不活性化層および金属コンタクトパッドを含み、前記ニッケル層が前記不活性化層との機械的結合を形成する、方法。
【請求項14】
ニッケル/金無電解めっきプロセスにおいて、半導体デバイスのニッケル/不活性化インタフェースに非多孔質ニッケル層を維持する方法であって、
前記半導体デバイスの金層の厚さを決定すること、
前記決定された厚さに到達するように、前記金層の無電解めっき速度およびめっき時間を決定すること、
無電解金めっきプロセスの終了時に、前記ニッケル/不活性化インタフェースに非多孔質ニッケル層を維持するために、前記金層の下のニッケルの厚さを決定すること、および、
前記決定に従って、前記ニッケル層および金層のそれぞれを、前記決定された厚さまで前記デバイス層上に順次無電解めっきすること、
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記半導体デバイスが、基板上に形成される金属コンタクトパッドを含み、前記方法が、前記無電解金めっきプロセスの完了時点で、前記不活性化層、非多孔質ニッケル層、および金属コンタクトパッドの接合に、非多孔質ニッケルの層を維持する、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2013−516550(P2013−516550A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548016(P2012−548016)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/060262
【国際公開番号】WO2011/084415
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(390020248)日本テキサス・インスツルメンツ株式会社 (219)
【出願人】(507107291)テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】