説明

半導体デバイス検査装置

【課題】 外部からの雑音を減らして精度の高い非破壊検査を可能とする。
【解決手段】 電子ビームを半導体デバイスに照射してそのときに半導体デバイスに生じる電流を測定する半導体デバイス検査装置において、前記測定された電流の波形をあらかじめ設定された標準波形と比較する手段と、前記比較する手段の比較結果から半導体デバイス検査装置の異常か半導体デバイスの検査領域の異常かを識別する手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製造工程中の半導体デバイスの検査に関する。特に、電子ビームを照射したときに半導体デバイスに生ずる電流を測定することによりそのデバイスの良否を判定する半導体デバイス検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工程中の半導体デバイスを非破壊で検査する技術として、コンタクトホールを通過して基板に達した電子ビームにより生じる電流を検出し、コンタクトホールの底部の位置や寸法を検出することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、複数のコンタクトホールを含む領域に電子ビームを照射し、それらのホールを貫通した電流値により、その領域内における正常なコンタクトホールの割合を検査することが開示されている(例えば、特許文献2参照)。さらに、特願2000-311196、特願2000-332754には、特許文献1に開示された技術を利用した種々の技術が開示されている。
【特許文献1】特開平10−281746号公報
【特許文献2】特開2000−174077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来技術は、基本的に、電子ビームの照射により生じた二次電子放出を補償するように流れる電流を測定するものである。このため、測定される電流値はピコアンペア以下と微小であり、測定条件や測定対象の半導体デバイスの構造あるいは材料、測定機器の時定数などにより、測定値に影響が出てしまう可能性がある。
【0004】
本発明は、このような課題を解決し、外部からの雑音を減らして精度の高い非破壊検査が可能な半導体デバイス検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の観点によると半導体デバイスが形成された検査対象試料上の検査領域に電子ビームを照射する手段と、検査領域に設けられたホールを電子ビームが通過してその下地の導電層に達することによりその導電層に生じる電流を測定する手段と、1以上のホールが設けられた領域を検査領域とし、順次または一括して電子ビームを照射したときに前記測定する手段により得られる平均電流値をその検査領域の良否判定の基準として求める処理手段とを備え、前記処理手段は、ホールが設けられていない領域に電子ビームを照射したときに前記測定する手段により得られた平均電流値をバックグラウンド値とし、このバックグンド値を検査領域により得られた平均電流値から減算する手段を含むことを特徴とする半導体デバイス検査装置が提供される。
【0006】
本発明の第二の観点によると、半導体デバイスが形成された検査対象試料上の検査領域に電子ビームを照射する手段と、検査領域の下地の導電層に電子ビームが達することによりその導電層に生じる電流を測定する手段とを備え、前記測定する手段は、前記導電層に接続された第一の電流計と、検査対象試料の近傍に設けられたアース電極に接続された第二の電流計と、前記第一の電流計の測定値と前記第二の電流計の測定値の差を求める手段を含むことを特徴とする半導体デバイス検査装置が提供される。
【0007】
前記アース電極として、検査対象試料を収容する筐体の一部を利用することができる。前記第一の電流計と前記第二の電流計との間にバイアス電圧を印加する手段を備えることもできる。前記差を求める手段は、その利得あるいはオフセットが外部から設定可能であることが望ましい。
【0008】
本発明の第三の観点によると、半導体デバイスが形成された検査対象試料上の検査領域に電子ビームを照射する手段と、検査領域の下地の導電層に電子ビームが達することによりその導電層に生じる電流を測定する手段と、この測定する手段により測定された電流波形をあらかじめ設定された標準波形と比較する手段と、この比較する手段の比較結果があらかじめ定められた範囲を越えたときには、それが検査領域の異常なのか検査装置の異常なのかを識別する手段とを備えたことを特徴とする半導体デバイス検査装置が提供される。
【0009】
前記識別する手段は、前記比較する手段の比較結果があらかじめ定められた範囲を越えたときには、前記電子ビームを照射する手段からの電子ビームを参照試料に照射して前記測定する手段により電流波形を測定し、その電流波形に対してもなお前記比較する手段の比較結果が前記範囲を越えているときには装置異常と判断し、前記比較する手段の比較結果が前記範囲内であるときには検査対象の半導体デバイスに異常があるものと判断する手段を含むことがよい。
【0010】
また、前記標準波形は波形の立ち上がりあるいは立ち下がり時のオーバーシュートおよびその後の減衰振動を含む過渡的波形のパターンであり、前記識別する手段は、前記比較する手段の比較結果があらかじめ定められた範囲を越えたときに装置異常と判断する手段を含むこともできる。この場合、前記比較する手段は、波形の立ち上がり時間、オーバーシュート量、オーバーシュートの期間、平坦期間、アンダーシュート量、アンダーシュートの期間、零点のオフセット、あるいは周波数分析値のいずれか1以上を比較する。
【0011】
本発明の第四の観点によると、半導体デバイスが形成された検査対象試料上の検査領域に電子ビームを照射する手段と、検査領域の下地の導電層に電子ビームが達することによりその導電層に生じる電流を測定する手段と、前記電子ビームを照射する手段から検査領域に達する電子ビームの電流値を測定するビーム測定手段と、このビーム測定手段の測定値により前記電流を測定する手段の測定値を補正する手段とを備えたことを特徴とする半導体デバイス検査装置が提供される。
【0012】
前記ビーム測定手段は、検査対象試料の検査前、検査中、検査後あるいはその検査対象試料上の個々の検査領域の検査前、検査中、検査後のいずれか1以上の時点で検査対象試料に置き換えて電子ビーム照射位置に配置されるディテクタ、例えばファラデーカップを含むことが望ましい。
【0013】
本発明の第五の観点によると、半導体デバイスが形成された検査対象試料上の検査領域に電子ビームを照射する手段と、検査領域の下地の導電層に電子ビームが達することによりその導電層に生じる電流を測定する手段と、この測定する手段による測定値のうち電子ビームの照射後に電流が安定した領域の電流値を取り込んで処理する処理手段を備えたことを特徴とする半導体デバイス検査装置が提供される。
【0014】
前記処理手段は、電子ビームが照射されてから電流が安定するまでの待ち時間を記憶する手段と、同じ検査対象試料の別の検査領域または同じ種類の別の検査対象試料に対する検査時には、電子ビームが照射されてから前記記憶する手段に記憶された待ち時間が経過した後に電流値を取り込む手段とを含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体デバイス検査装置は、外部からの雑音を減らして精度の高い非破壊検査が可能である。具体的には、平均電流を測定する際に、ホールが設けられていない領域から得られた値をバックグラウンド値として補正することで、ホールのない領域でも生じる電流の影響を除去し、正確な測定を行うことができる。また、電流測定を電流差動入力アンプ構成とすることで、外来ノイズを除去し、測定に必要なオフセット電圧の印可も可能になる。さらに、測定された電流波形から、その測定結果がデバイス異常によるものか装置異常によるものかを識別することで、検査結果の信頼性を高めることができ、装置異常を早期に検出することができる。電子ビームの電流値を測定する場合には、高精度で電流を測定できるので、正確なホール径あるいは膜厚が測定できる。電子ビーム照射後に電流測定値が安定するまでの待ち時間を記憶して再利用することで、検査時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の検査装置の実施形態を示すブロック構成図である。この装置は、電子ビーム2を発生する電子銃1、電子ビームを平行化するコンデンサレンズ3、ビーム形状を規定するアパーチャー4、半導体デバイスが形成された検査対象試料(ウェハ)5を保持し、この検査対象試料5を移動させることにより検査領域の決定および電子ビーム2の照射位置の走査を行う可動ステージ6、検査領域の下地の導電層に電子ビームが達することによりその導電層に生じる電流を測定する電極7および電流測定装置8、可動ステージ6の移動距離を測定する移動距離測定装置9、検査対象試料5、可動ステージ6および電極7と置き換えられて電子ビームの電流値を測定するファラデーカップ10、電流測定装置8の測定結果のデータ処理および検査のための制御を行うコンピュータ等のデータ処理装置11、可動ステージ6の移動を制御するステージ制御部12、および電子ビームの加速電圧の変更や照射周期の変更その他の制御を行うビーム制御部13を備える。
【0018】
電子銃1から飛び出した電子ビーム2は、コンデンサレンズ3により一旦平行電子ビームに変換され、非常に小さな穴が設けられたアパーチャー4に照射される。アパーチャー4は金属等の導電体でできており、アパーチャー4に照射された電子がアパーチャー4に蓄積しないように、アースされている。アパーチャー4を通過した電子ビーム2は、アパーチャー4が規定しているのとほぼ同じ大きさの非常に細いビームとなり、検査対象試料5に照射される。加熱によってアパーチャー径が変化するのを防止するために、アパーチャーを冷却する構成とすることもできる。
【0019】
検査対象試料5は電流収集用の電極7の上に載せられ、この電極7が可動ステージ6の上に載せられる。可動ステージ6の近傍には、干渉計などの原理によりこの可動ステージ6の移動距離をオングストロームオーダーで精密に測定する移動距離測定装置9が設けられる。移動距離測定装置9としては光学式の装置が一般的であるが、電磁波、電気抵抗あるいは容量を用いた装置、量子力学的効果を利用した装置など、距離に応じて変化する物理量を検出することを原理とする装置を用いることもできる。
【0020】
検査対象試料5と電極7とを直流的に接触が取れるように接触配置してもよいし、検査対象試料5に照射する電子ビームが高周波数で変調されている場合には、容量結合により電流が測定できるので、電極7を検査対象試料5に隣接させるだけでもよい。一般的に半導体の製造工程においては、基板裏面は素子分離のための局所酸化膜を形成することが多いので、ウェハ裏面に絶縁膜が形成されていることが多い。そのような場合には、検査対象試料5と可動ステージ6との接触を図るために、容量結合ステージを用いることも効果的である。検査対象試料5の側面を利用して接続することも可能である。
【0021】
測定するコンタクトホールの寸法が微細であるので、検査対象試料5は可動ステージ6上に平坦に載置されていることが必要である。このためには検査対象試料5の外周を例えばリング状の治具で押さえ込むことも有効である。
【0022】
電極7で集められた電流は電流測定装置8によって測定される。測定結果はデジタル信号に変換されデータ処理装置11へと出力される。データ処理装置11は、各種のデータ処理を行い、特に、検査対象試料5上の検査領域のコンタクトホールあるいはビアホールが良好に形成されているかどうかを検査することができる。
【0023】
ウェハを検査する場合、電子ビームの走査速度および微小電流を測定することに伴う測定系の時定数の問題から、ウェハ上のすべてのチップないしウェハのすべての領域を検査するには、かなりの時間がかかってしまう。これは、量産前の段階では必要になる場合もあるが、量産時のインライン検査に利用することはできない。そこで、複数のホールが存在するある程度の大きさの領域に一括して電子ビームを照射し、平均電流として測定することが考えられている。その場合、平均電流が小さければ、その領域の正常なホールの数が少ないことになり、その領域の良否を判断することができる。
【0024】
図2および図3はホールを検査する場合に測定される電流波形の一例を示す。図2はホール径より細い電子ビームを走査したときにその走査位置に対応して測定される補償電流波形を示し、図3は複数のホールが存在する領域に一括して電子ビームを照射したときの補償電流波形を示す。細い電子ビームを走査することで、図2に示すように、ホールの位置に応じて補償電流の増加が観測され、ホールが正しくエッチングされているかどうかがわかる。一方、比較的広い領域に一括して電子ビームを照射した場合には、図3に示すように、電子ビームを照射している間、ホール底の総面積に応じた補償電流が観測される。観測された補償電流をCADデータから得られるその領域のホール数で規格化することで、ホール1個あたりの平均電流が求められる。
【0025】
平均電流の測定を行う場合、測定対象の材料や構造によっては、ホールのない場合でも多量の電流が流れることがある。その場合、ホール領域の示す電流がバックグラウンドに隠されて正確な測定ができなくなってしまう。このようなバックグラウンドを補正する手段について以下に説明する。
【0026】
図4はバックグラウンド補正手順を含むデバイス検査のフローを示す。図1および図4を参照して説明すると、まず、検査対象試料5上の1以上のホールが設けられた領域を検査領域に設定し、その領域に電子銃1からの電子ビーム2が順次または一括して照射されるように、ステージ制御部12により可動ステージ6を制御する。データ処理装置11では、このときの電流測定装置8の測定値を取り込み(S1)、それを記憶する(S2)。続いて、同じ検査対象試料5内で、ホールが形成されていないことを除いて同材料かつ同構造のダミー領域を選択し、同一条件で測定を行う(S3)。データ処理装置11は、このダミー領域から得られた測定値をバックグラウンド値として取り込み、検査領域から得られた測定値から減算する(S4)。データ処理装置11はさらに、この減算された値が所定の範囲内かどうかを調べ、範囲内であればその検査領域が良好であると判断する(S6)。減算された値が所定の範囲から外れている場合には、その領域にホールが正しく形成されていない不良があると判断する(S7)。
【0027】
ここでは検査領域を最初に測定する例を示したが、ダミー領域を最初に測定してもよい。また、複数の検査領域からそれぞれ得られた測定値について、ひとつのダミー領域により得られたバックグラウンド値で補正することもできる。
【0028】
図5は電流測定装置8の詳しい構成例を示す。この電流測定装置8は、電流測定用の電極7に接続された第一の電流計21と、測定対象の半導体デバイスの近傍に設けられたアース電極24に接続された第二の電流計22と、電流計21、22の測定値の差を求める電流差動アンプ23とにより構成される。二つの電流計21、22はその性能が同じである。電流差動アンプ23はその利得あるいはオフセットをデータ処理装置11から設定可能であり、二つの電流計21、22の測定値の差を正確に測定できる。
【0029】
電子ビームを照射するには高真空が必要なことから、図1に示した検査対象試料5、可動ステージ6および電極7は、移動距離測定装置9およびファラデーカップ10と共に、ひとつの真空筐体内に配置される。アース電極24もまたこの筐体内に配置される。アース電極24は筐体そのものであってもよい。電流測定装置8はそれ自体が雑音源となる可能性があるので、ここではすべて筐体外に配置している。雑音の影響を考えると、電極7およびアース電極24と電流測定装置8との接続線は短いことが望ましく、場合によっては、電流測定装置8の少なくとも一部を筐体内に配置することも考えられる。
【0030】
図5に示した構成例では、アース電極24と電流計22との間にバイアス電圧源25が挿入される。このバイアス電圧源25は、電流計21、22間にバイアス電圧を加えることにより、接触電流などによる誤差電流を相殺することができる。
【0031】
また、電流測定用の電極7と電流計21との間にバイアス電圧源を挿入し、電極7を介して検査対象試料の基板あるいは導電層に、バイアス電圧を印加することもできる。
【0032】
異常な測定結果が得られたときには、通常は検査対象に不良があると考えられるが、場合によっては、検査装置の故障によることも考えられる。これらの識別について以下に説明する。
【0033】
図6は装置故障を検出する手順を含むデバイス検査のフローを示す。まず、設定された検査領域の電流波形を測定する(S11)。データ処理装置11(図1参照)は、測定された電流波形をあらかじめ設定された標準波形と比較し(S12)、その比較結果が所定の範囲内であれば(S13)、検査領域は良品であるとし、測定された電流波形をデータベースに蓄積する(S14)。標準波形との比較結果が所定の範囲外のときには、データ処理装置11はステージ制御部12およびビーム制御部13に制御信号を出力し、電子ビームを参照試料に照射して電流波形を測定して(S15)、その電流波形を標準波形と比較する(S16)。比較結果が所定の範囲内であれば(S17)、検査領域に不良があっと判断し、その不良領域の場所をデータベースに蓄積する(S18)。参照試料の電流波形と標準波形との比較結果が所定の範囲外であれば、装置異常と考えられるので、測定データを廃棄するとともに、警報を出力する(S19)。
【0034】
測定された電流波形と標準波形との比較は、二つの波形間の相関(パターンマッチング)をとることにより行う。
【0035】
参照試料としては、あらかじめ不良がないことが判明している試料を用いてもよく、ステージに付属した検査パターンを用いてもよい。
【0036】
図7は装置異常の検出手順を含むデバイス検査のフローを示す。図6に示した例では、参照試料により得られた電流波形に基づいて異常の原因を識別していた。これに対して図7に示す例では、測定された電流波形そのものから異常原因を識別する。すなわち、測定される電流波形には、波形の立ち上がりあるいは立ち下がり時のオーバーシュートおよびその後の減衰振動を含む過渡的波形に、特定のパターンが現れる。このパターンは、エッチング不良であることが判明している試料でも変化することはない。そこで、あらかじめその特定パターンを調べて標準波形として記憶しておき、測定されたパターンと比較する(S21、S22)。比較結果が所定の範囲内であれば(S23)、測定データを蓄積する(S24)。オーバーシュートが異常に大きい、減衰振動にならず振動が続くなど、比較結果が所定の範囲からはずれたときには、装置異常と判断し、測定データを廃棄するとともに、警報を出力する(S25)。
【0037】
比較するパターンとしては、波形の立ち上がり時間、オーバーシュート量、オーバーシュートの期間、平坦期間、アンダーシュート量、アンダーシュートの期間、零点のオフセット、周波数分析値などが考えられる。
【0038】
図8は電子ビームの電流値により測定値を補正することにより測定精度を高めたデバイス検査のフローを示す。まず、電子ビームが照射される位置に検査対象試料5の代わりにファラデーカップ10(図1参照)を配置し、ビーム電流I1を測定する(S31)。続いて、ファラデーカップ10をビーム照射位置から外し、検査対象試料5に電子ビームを照射して、補償電流Jを測定する(S32)。この測定の後、ファラデーカップ10を用いてビーム電流I2を測定する(S33)。補償電流Jをビーム電流I1、I2を用いて補正し、測定値を規格化する(S34)。これをデータベースに蓄積する(S35)。
【0039】
電子ビームを利用した測定では、一般に、二次電子顕微鏡(SEM)や電子ビーム露光装置を利用して、あるいはこのような装置と同等の電子ビーム源を用いて、測定が行われる。このような装置の電子ビーム源は非常に安定に動作するように設計されており、1日の変動量は高々1%程度と通常の利用形態で問題になることはない。しかし、電子ビームを走査してホールの状況を検査する場合には、電流の変動量自体が1%程度である。このため、電子ビームの電流がわずかに変動しただけでも、補償電流の測定値に誤差が生じてしまう。
【0040】
ビーム電流が変動する原因としては、ビーム源の温度、ビーム源の経年変化、ビーム源に供給される電力の変動などが考えられる。これらは装置依存性が高く、各装置でビーム電流を計測し、その変動のパターン、周期などを調査して補正の関数を決定する必要がある。
【0041】
ビーム電流の変動周期が1枚のウェハに要する測定時間に比べて十分に長い場合には、図8に示したように、測定開始直前と直後にビーム電流値を測定し、その平均値、あるいはビーム電流値が時間とともに一定の割合で変化すると仮定して、補償電流の測定値を補正する。ビーム電流の変動周期が非常に長く補償電流の測定中にほとんど変化しない場合には、ビーム電流の測定は1枚のウェハに対して1回、あるいは、複数枚のウェハに対して前後2回またはその一方だけでもよい。
【0042】
ビーム電流の変動が大きい場合には、補償電流の測定中に何度かビーム電流を測定し、その値により補償電流の測定値を補正する。
【0043】
図9はデータ処理装置11における電流値の取り込みのフローを示し、図10は取り込みのタイミングを説明する図である。
【0044】
補償電流を測定する場合、装置やウェハによりLCRの値が異なるため、取得できる波形の応答時間が変化し、定常状態となるまでの時間が変化する。ウェハごとにその応答時間を解析するとなると、それだけでかなりの時間が必要となってしまう。一方、装置や検査対象により応答の特性により違いはあるものの、例えば波形の立ち上がりからある程度(1秒程度)の測定を行えば平坦化した部分が含まれる。そこで、データ処理の時点でその部分の電流値を取り込んで処理する。これにより、計測条件設定の時間が短縮できる。
【0045】
そのためには、あらかじめ、同じ種類のウェハごとに電子ビーム照射後の波形を観察し、安定したとみなせる領域、例えば変動が平均値から±5%以内の領域、を見つけ、電子ビームが入射されてから電流が安定するまでの待ち時間を記憶しておく。実際の測定時には、測定対象と同じ種類のウェハについて待ち時間のデータがあれば(S41)それを利用し、個々の検査領域について、電子ビームが入射されてからその待ち時間が経過した後に電流値を取り込む(S42)。待ち時間のデータがない場合には、そのウェハについて電子ビーム照射による電流波形を観察し(S43)、波形が安定した領域を判定し(S44)、波形安定までの待ち時間を記憶する(S45)とともに、この待ち時間を用いて、そのウェハ内の各検査領域について電流値を取り込む(S46)。
【0046】
同じ種類のウェハであればLCRの値にあまり大きな違いは生じないため、測定に利用する部分を記憶して再利用することで、測定時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック構成図。
【図2】ホール径より細い電子ビームを走査したときにその走査位置に対応して測定される補償電流波形の一例を示す図。
【図3】複数のホールが存在する領域に一括して電子ビームを照射したときの補償電流波形の一例を示す図。
【図4】バックグラウンド補正手順を含むデバイス検査のフローチャート。
【図5】電流測定装置の詳細を示すブロック構成図。
【図6】装置故障を検出する手順を含むデバイス検査のフローチャート。
【図7】装置異常の検出手順を含むデバイス検査のフローチャート。
【図8】電子ビームの電流値により測定値を補正するデバイス検査のフローチャート。
【図9】電流値取り込みのフローチャート。
【図10】取り込みのタイミングを説明する図。
【符号の説明】
【0048】
1 電子銃
2 電子ビーム
3 コンデンサレンズ
4 アパーチャー
5 検査対象試料
6 可動ステージ
7 電極
8 電流測定装置
9 移動距離測定装置
10 ファラデーカップ
11 データ処理装置
12 ステージ制御部
13 ビーム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを半導体デバイスに照射してそのときに半導体デバイスに生じる電流を測定する半導体デバイス検査装置において、
前記測定された電流の波形をあらかじめ設定された標準波形と比較する手段と、
前記比較する手段の比較結果から半導体デバイス検査装置の異常か半導体デバイスの検査領域の異常かを識別する手段とを有することを特徴とする半導体デバイス検査装置。
【請求項2】
電子ビームを半導体デバイスに照射してそのときに半導体デバイスに生じる電流を測定する手段を有する半導体デバイス検査装置において、
電子ビームを参照試料に照射してそのときに参照試料に生じる電流を測定する手段と、
前記半導体デバイスに生じる電流を測定する手段によって測定された電流波形と前記参照試料に生じる電流を測定する手段によって測定された電流波形を比較する手段と、
前記比較する手段の比較結果から半導体デバイス検査装置の異常か半導体デバイスの検査領域の異常かを識別する手段とを有することを特徴とする半導体デバイス検査装置。
【請求項3】
前記標準波形は波形の立ち上がりあるいは立ち下がり時のオーバーシュートおよびその後の減衰振動を含む過渡的波形のパターンであり、
前記識別する手段は、前記比較する手段の比較結果があらかじめ定められた範囲を越えたときに装置異常と判断する手段を含む
請求項1記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項4】
前記比較する手段は、波形を比較するための特徴量として、波形の立ち上がり時間、オーバーシュート量、オーバーシュートの期間、平坦期間、アンダーシュート量、アンダーシュートの期間、零点のオフセット、あるいは周波数分析値のうち少なくとも1つを利用することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項5】
電子ビームを半導体デバイスに照射してそのときに半導体デバイスに生じる電流を測定する手段を有する半導体デバイス検査装置において、
前記測定する手段による測定値のうち、電子ビーム照射の開始の後に半導体デバイスに生じる電流が安定した時期の電流値を選択する手段を有し、
前記選択する手段は、前記測定する手段の出力波形を観察し、前記波形における平均値からの変動が所望値以内の領域を前記安定した時期と判定するものであることを特徴とする半導体デバイス検査装置。
【請求項6】
電子ビーム照射によって半導体デバイスに生じる電流が前記安定した時期の状態となるまでの待ち時間を記憶する手段と、
前記記憶する手段で記憶された時間に従って測定開始時間を変更する手段とを有していることを特徴とする請求項5記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項7】
前記半導体デバイスに生じる電流を測定する電流測定手段を有し、
前記半導体デバイスが形成された検査対象試料と前記電流測定手段とが容量結合されていることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス検査装置。
【請求項8】
前記半導体デバイスに生じる電流を測定する電流測定手段を有し、
前記電流測定手段が真空筐体内に配置されていることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−19761(P2006−19761A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249152(P2005−249152)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【分割の表示】特願2000−374572(P2000−374572)の分割
【原出願日】平成12年12月8日(2000.12.8)
【出願人】(502277762)ファブソリューション株式会社 (9)
【Fターム(参考)】