説明

半導体又はフラットパネルディスプレイ製造・検査装置用のヒータユニット及びそれを備えた装置

【課題】 均熱性に優れると共に、セラミックヒータを支持する筒状支持体にかかる応力を軽減して、破損のないヒータユニットを提供する。
【解決手段】 抵抗発熱体を有するセラミックヒータ1に背面板2が機械的に結合され、この背面板2が更に筒状支持体3に機械的に結合されている。抵抗発熱体の電極端子4aはセラミックヒータ1の背面側に複数設けてあり、セラミックヒータ1の径方向に沿った同心円状の複数の径方向長さゾーンに分けて配置されると共に、複数の電極端子4aから筒状支持体3の内側空間内に給電リード4が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に半導体基板やフラットディスプレイパネル基板を加熱する際に用いるヒータユニット、並びにそのヒータユニットを搭載した製造・検査装置に関するものであり、特に半導体基板の加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の加熱処理装置については、例えば特開2002−373837号公報に、被処理物を加熱するためのサセプターと、サセプターに接合された支持部材とを備え、支持部材の内側に空間が設けられている支持構造が提案されている。支持部材の接合は、ロウ材によって接合されるロウ付けや、固相接合または固液接合により実現される。
【0003】
この支持構造においては、応力集中による破損を防ぐために、支持部材の形状についてエッヂ部に丸みを設けることにより、支持部材に集中する応力を緩和している。また、電極端子や温度センサは、支持部材の配置領域内でサセプタの裏面に設置されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−373837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のサセプターの支持構造では、支持部材はサセプターに直接接合されていることから、接合領域からの放熱により、外周部に比較して支持部材が接合されている中心部の温度が低くなり、面内温度分布がいわゆるセンタークールとなり、面内均熱性が悪化することがあった。また、これにより接合領域におけるサセプターと支持部材の境界付近に内部応力が発生し、ヒータや支持部材が破損する恐れがあった。
【0005】
また、支持部材下部とチャンバの間を封止するOリング等の部材を適切な温度に保つために、サセプターと支持部材の接合面積を小さくして接触熱抵抗を設ける等の対策が必要である反面、接合強度を向上させるために支持部材を肉厚にして接合面積を増大させる必要がある等、得られる特性がトレードオフの関係にあった。
【0006】
更に、支持部材に設けられている内側空間内に電極端子や温度センサを設置するとなると、その数が空間的制約から限られてしまう。また、温度制御もその空間的制約の下で配置された温度センサに頼るしかないため、ヒータ外周部の温度予測及びヒータの面内均熱性の向上が困難であった。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、セラミックヒータを支持する筒状支持体について、応力を軽減することにより破損を防止することができ、更には抵抗発熱体の電極端子や温度センサの配置を工夫することで、均熱性を一層向上させることが可能なヒータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明が提供するヒータユニットは、抵抗発熱体を有するセラミックヒータと、セラミックヒータの背面側に機械的に結合した背面板と、背面板のセラミックヒータと反対側に機械的に結合した筒状支持体とを備え、該筒状支持体はセラミックヒータと直接接触していないことを特徴とするものである。
【0009】
上記本発明のヒータユニットにおいては、前記抵抗発熱体の電極端子が前記セラミックヒータの前記背面板に対向する面に複数設けてあり、該電極端子の少なくとも一つは前記セラミックヒータに対向している前記筒状支持体の配置領域外に存在することが好ましい。
【0010】
上記本発明のヒータユニットでは、前記複数の電極端子から前記支持体の内側空間内に給電リードが形成されていることが好ましい。また、前記複数の電極端子は、前記セラミックヒータの径方向に沿った同心円状の複数の径方向長さゾーンに分けて配置されていることが好ましい。更に、前記電極端子を配置した径方向長さゾーン毎に、温度センサが設置されていることが好ましい。
【0011】
本発明は、また、上記した本発明のヒータユニットを搭載したことを特徴とする半導体の製造・検査装置、あるいは、フラットパネルディスプレイの製造・検査装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セラミックヒータと筒状支持体との間に接触抵抗が存在し、セラミックヒータに発生する熱応力に対し筒状支持体に生じる応力を軽減することができるため、割れ等の損傷の危険性を低減させ、信頼性を向上させることができる。その改善により、特に半導体製造装置あるいは/およびフラットディスプレイパネルの製造プロセスにおいて、昇温、降温側への温度条件変更時にヒータユニットが割れ等の損傷の危険性を低減させ、信頼性の高い加熱プロセスを実現することができる。
【0013】
また、電極端子及び温度センサの配置位置や制御に制約がなくなり、ウェハ面内の温度均一性を向上させることができる。ウェハ面内の均熱性を向上することで、この熱処理工程を経て製造される半導体製造装置やフラットディスプレイパネルの生産性、性能、歩留まり、信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のヒータユニットは、その一具体例である図1に示すように、抵抗発熱体(図示せず)を有するセラミックヒータ1と、セラミックヒータ1の背面側(ウェハ等の被処理物の載置面に対する反対側)に設置された背面板2と、背面板2をセラミックヒータ1の反対側で支持する筒状支持体3とを備えている。また、抵抗発熱体の電極端子4aに接続した給電リード4や、温度センサ5からのセンサリード6は、筒状支持体3の内側空間内に収納されるように形成されている。
【0015】
上記セラミックヒータ1と背面板2、並びに背面板2と筒状支持体3は、ネジなどの手段により機械的に結合して固定されている。特に、背面板2のセラミックヒータ1への取り付けは、機械的な手法が好ましい。セラミックヒータと背面板を接合等の化学的な手法で取り付けると、それぞれの熱膨張係数差から変形が生じ、破損に至る恐れがあるためである。セラミックヒータと背面板の機械的取り付け方法の中でも、特にネジ止めが好ましい。
【0016】
セラミックヒータの抵抗発熱体は、セラミックヒータの内部に埋設されているか、あるいはセラミックヒータの背面に設置されている。例えば、セラミック基板の裏面(背面)に抵抗発熱体回路を例えば渦巻状に配設し、その上に電気絶縁膜をコーティングして作製することができる。その際、筒状支持体の内側空間内に電極部品が集中することでクールエリアが生じることを避けるため、電極端子などは散在させて設置し、それに合わせてヒータ温度をモニタするための温度センサも散在させて設置することが好ましい。
【0017】
具体的には、例えば図2に示すように、抵抗発熱体の電極端子4aは、セラミックヒータ1の背面(背面板に対向する面)に複数に分けて配置し、そのうち少なくとも1つの電極端子4aは筒状支持体3の配置領域(図示した点線の内側)外に存在することが好ましい。また、複数の電極端子4aは、セラミックヒータ1の径方向に沿った同心円状の複数の径方向長さゾーンに分けて、即ち各給電リード4の長さができるだけ異なるように、配置することが好ましい。更に、温度センサについても、電極端子4aを配置した径方向長さゾーン毎に、センサリード6の長さを変えて設置することが好ましい。
【0018】
尚、図2のセラミックヒータの場合、抵抗発熱体の電極端子4aが6個、セラミックヒータ1の半径方向に沿った同心円状の3つの径方向長さゾーン毎に2個ずつに分けて形成してあり、それぞれの径方向長さゾーンは直径150mm、260mm、340mmとなっている。また、温度センサ5は3個設置してあり、各センサリード6の長さを変えることで、上記3つの径方向長さゾーン毎にそれぞれ1個ずつ設置している。このように、抵抗発熱体等を複数ゾーンに分けて配置することによって、反ったウェハに対しても、各ゾーンのパワー配分をコントロールすることで均一の熱量を与えることができる。
【0019】
電極端子及びその給電経路としての給電リードは、例えば図3に示すように、セラミックヒータ1に対して垂直方向に電極端子4aをネジ止めにより取り付けると共に、電極端子4aに接続した給電リード4は、背面板2にザグリ加工を施して形成した凹部内を通して、筒状支持体3の内側空間内まで配設する。各電極端子4aと給電リード4はそれぞれネジなどで機械的に固定され、全ての給電リード4は筒状支持体3の内側空間でセラミックプレート7を介して電極ロッド8に結集される。
【0020】
また、温度センサは、セラミックヒータに対して垂直方向に取り付けられる。温度センサからのセンサリードは、セラミックヒータに対して水平方向となるように直角に折り曲げられ、背面板に形成された溝に沿って筒状支持体の内側空間内まで導かれる。更に筒状支持体の内側空間内において直角に折り曲げられ、筒状支持体内に収納される。このような構造とすることで、電極端子及び温度センサに対する配置の制約をなくすことができる。
【0021】
上記電極端子と給電リードの接続は、機械的な手段が好ましい。例えば、電極端子に設けた雄ネジに給電リードに設けた貫通孔を通し、雌ネジを設けたナットを電極端子の雄ネジに螺合することで、給電リードを連結することができる。この場合、電極端子とナットは直接螺合されるため、同じ材質または熱膨張係数の近い材質であることが好ましい。また、上記給電リードと電極ロッドの結合も、機械的な手段が好ましい。例えば、雄ネジを設けた連結ネジを給電リードに設けた貫通孔に通し、電極ロッドに設けた雌ネジと螺合して連結することができる。この場合、連結ネジと電極ロッドは直接螺合されるため、同じ材質または熱膨張係数の近い材質であることが好ましい。
【0022】
尚、給電リードと電極ロッドの連結部には、耐熱性と絶縁性を有し、特に高温域においても絶縁特性が劣化しないセラミック、例えば、酸化アルミニウムあるいは窒化珪素等のプレートを介在させることが好ましい。これは、給電リードが筒状支持体の内側空間内にまで形成されるため、それぞれの径方向長さゾーンからの給電リードの間隔が狭くなり、各給電リード間の絶縁性を保つ必要性が生じることによる。
【0023】
更に、筒状支持体は背面板に機械的に固定されていることが好ましい。例えば接合等の化学的な手段を用いた場合、それぞれの熱膨張係数差から変形が生じ、破損に至る恐れがあるためである。また、筒状支持体と背面板の機械的な固定にはネジを用い、例えば、筒状支持体のフランジ部に設けた貫通孔及び背面板に設けた貫通孔に雄ネジを設けた連結ボルトを通し、雌ネジを有する連結ナットを螺合して、筒状支持体と背面板を固定する構造とすることができる。この場合、背面板及び筒状支持体の貫通孔は、段付き孔であっても良い。
【0024】
また、連結ナットと背面板が接する各々の面には、テーパーを形成することが好ましい。例えば図4に示すように、連結ナット9bと背面板2とが接する各々の接触面をテーパー形状とすることにより、両者の熱膨張に伴う歪みや応力の集中を回避することができる。即ち、テーパーを有しない構造では、連結ナットと背面板の各コーナー部に応力集中ポイントが生じ、背面板が破損する恐れがある。好ましいテーパー角度θとしては、30°から145°が好ましく、特に60°から120°が好ましい。尚、連結ナット9bは連結ボルト9aと螺合している。
【0025】
セラミックヒータの材質は、耐熱性及び絶縁性を有するものが好ましく、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化珪素等のセラミックを公的に使用することができる。これらの中では、特に熱伝導率の高い窒化アルミニウムが好ましい。また、背面板の材質は、絶縁性及び耐熱性を有するセラミック、特に窒化アルミニウム、窒化珪素、酸化アルミニウム等が好ましい。
【0026】
電極端子の材質は、タングステンあるいはモリブデンが好ましい。これらは耐熱性に優れ、またセラミックヒータとの熱膨張係数が近いためである。その場合、タングステンまたはモリブデンの表面に、耐食性に優れるニッケルめっきを施すことが好ましい。給電リード及び電極ロッドの材質は、表面に耐食性に優れるニッケルめっきを施したタングステンまたはモリブデン、あるいはニッケル等から選択されることが好ましい。
【0027】
連結ボルトや連結ナットなど連結用のネジの材質は、耐熱性に優れたタングステン、モリブデン、ニッケル等から選択されることが好ましく、特に背面板及び筒状支持体よりも熱膨張係数が大きいものを選択することが好ましい。このような熱膨張係数の材質を選択することにより、高温環境下において、連結ボルトや連結ナットなどのネジが背面板や筒状支持体よりも膨張して、背面板及び筒状支持体に圧縮応力が掛からなくなるためである。
【0028】
以上に示した本発明によるヒータユニットは、半導体製造・検査装置、またはフラットディスプレイパネルの製造・検査装置に搭載することが好ましい。そのようにすることによって、従来の装置よりも信頼性が高く、かつヒータの温度分布がより均一になり、半導体やフラットディスプレイパネルの性能、歩留まり、信頼性の向上が図れる。
【0029】
次に、セラミックヒータの製造方法を、窒化アルミニウム(AlN)の場合を例に説明する。AlNの原料粉末は、比表面積が2.0〜5.0m/gのものが好ましい。比表面積が2.0m/g未満の場合は焼結性が低下し、5.0m/gを超えると粉末の凝集が非常に強くなるので取扱いが困難になる。また、原料粉末に含まれる酸素量は、2wt%以下が好ましい。酸素量が2wt%を超えると、焼結体の熱伝導率が低下する。また、原料粉末に含まれるアルミニウム以外の金属不純物量は、2000ppm以下が好ましい。金属不純物量がこの範囲を超えると、焼結体の熱伝導率が低下する。特に、金属不純物として、Si等の4族元素やFe等の鉄族元素は、焼結体の熱伝導率を低下させる作用が高いので、それぞれ含有量は500ppm以下であることが好ましい。
【0030】
AlNは難焼結性材料であるので、AlN原料粉末に焼結助剤を添加することが好ましい。添加する焼結助剤は、希土類元素化合物が好ましい。希土類元素化合物は、焼結中に窒化アルミニウム粉末粒子の表面に存在するアルミニウム酸化物あるいはアルミニウム酸窒化物と反応して、窒化アルミニウムの緻密化を促進すると共に、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率を低下させる原因となる酸素を除去する働きがあるため、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率を向上させることができる。
【0031】
上記希土類元素化合物は、特に酸素を除去する働きが顕著であるイットリウム化合物が好ましい。その添加量は、0.01〜5wt%が好ましい。0.01wt%未満であると、緻密な焼結体を得ることが困難であると共に、焼結体の熱伝導率が低下する。また、5wt%を超えると、窒化アルミニウム焼結体の粒界に焼結助剤が存在することになるので、腐食性雰囲気で使用する場合、この粒界に存在する焼結助剤がエッチングされ、脱粒やパーティクルの原因となる。更に好ましくは焼結助剤の添加量は、1wt%以下である。1wt%以下であれば粒界の3重点にも焼結助剤が存在しなくなるので、耐食性が一層向上する。
【0032】
また、上記希土類元素化合物としては、酸化物、窒化物、フッ化物、ステアリン酸化合物等が使用できる。この中で、酸化物は安価で入手が容易であり好ましい。また、ステアリン酸化合物は、有機溶剤との親和性が高いので、窒化アルミニウム原料粉末と焼結助剤等を有機溶剤で混合する場合には、混合性が高くなるので特に好適である。
【0033】
次に、これらAlN原料粉末や焼結助剤粉末に、所定量の溶剤、バインダー、更には必要に応じて分散剤や邂逅剤を添加し、十分に混合する。混合方法は、ボールミル混合や超音波による混合等が可能である。このような混合によって、原料スラリーを得ることができる。得られたスラリーを成形し、焼結することによって窒化アルミニウム焼結体を得ることができる。その方法には、コファイアー法とポストメタライズ法の2種類の方法が可能である。
【0034】
ここでは、ポストメタライズ法について説明する。上記スラリーをスプレードライアー等の手法によって、顆粒を作製する。この顆粒を所定の金型に挿入し、プレス成形を施す。この時のプレス圧力は、9.8MPa以上であることが望ましい。9.8MPa未満の圧力では、成形体の強度が充分に得られないことが多く、ハンドリング等で破損し易くなる。
【0035】
成形体の密度は、バインダーや焼結助剤の添加量によって異なるが、1.5g/cm以上であることが好ましい。1.5g/cm未満であると、原料粉末粒子間の距離が相対的に大きくなるので、焼結が進行しにくくなる。また、成形体密度は、2.5g/cm以下であることが好ましい。2.5g/cmを超えると、次工程の脱脂処理で成形体内のバインダーを充分除去することが困難となるため、前述のように緻密な焼結体を得ることが困難となる。
【0036】
次に、上記成形体を非酸化性雰囲気中で加熱し、脱脂処理を行う。大気等の酸化性雰囲気で脱脂処理を行うと、AlN粉末の表面が酸化されるので、焼結体の熱伝導率が低下する。非酸化性雰囲気ガスとしては、窒素やアルゴンが好ましい。脱脂処理の加熱温度は、500〜1000℃が好ましい。500℃未満の温度では、バインダーを充分除去することができず、脱脂処理後の成形体中にカーボンが過剰に残存するため、その後の焼結工程での焼結を阻害する。また、1000℃を超える温度では、残存するカーボンの量が少なくなり過ぎるため、AlN粉末表面に存在する酸化被膜の酸素を除去する能力が低下し、焼結体の熱伝導率が低下する。また、脱脂処理後の成形体中に残存するカーボン量は、1.0wt%以下であることが好ましい。1.0wt%を超えるカーボンが残存していると、焼結を阻害するので、緻密な焼結体を得ることができない。
【0037】
脱脂処理した成形体は、次いで焼結する。焼結は、窒素やアルゴン等の非酸化性雰囲気中で、1700〜2000℃の温度で行う。使用する窒素等の雰囲気ガスに含有する水分は、露点で−30℃以下であることが好ましい。これ以上の水分を含有する場合、焼結時にAlNが雰囲気ガス中の水分と反応して酸窒化物が形成されるので、熱伝導率が低下する可能性がある。また、雰囲気ガス中の酸素量は、0.001vol%以下であることが好ましい。酸素量が多いとAlNの表面が酸化して、熱伝導率が低下する可能性がある。
【0038】
尚、焼結時に使用する治具は、窒化ホウ素(BN)成形体が好適である。このBN成形体は、上記の焼結温度に対して充分な耐熱性を有すると共に、その表面に固体潤滑性があるので、焼結時に成形体が収縮する際の治具と成形体との間の摩擦を小さくすることができ、歪みの少ない焼結体を得ることができる。
【0039】
得られた焼結体は、必要に応じて加工を施す。例えば、ウェハなどの被処理物搭載する載置面の表面粗さは、Raで5μm以下が好ましい。Raで5μmを超えると、被処理物との摩擦によってAlNの脱粒が多くなることがある。脱粒した粒子はパーティクルとなり、被処理物上への成膜やエッチング等の処理に対して悪影響を与えることになる。表面粗さは、Raで1μm以下あれば更に好適である。
【0040】
上記表面粗さを研磨加工する際には、焼結体の両面にスクリーン印刷する場合は当然であるが、片面のみにスクリーン印刷を施す場合でも、スクリーン印刷する面と反対側の面も研磨加工を施す方がよい。スクリーン印刷する面のみを研磨加工した場合、スクリーン印刷時には、研磨加工していない面で焼結体を支持することになる。その時、研磨加工していない面には突起や異物が存在することがあるので、焼結体の固体が不安定になり、スクリーン印刷で回路パターンがうまく描けないことがあるからである。
【0041】
また、この時、両加工面の平行度は0.5mm以下であることが好ましい。平行度が0.5mmを超えるとスクリーン印刷時に導電ペーストの厚みのバラツキが大きくなることがある。平行度は0.1mm以下であれば特に好適である。更に、スクリーン印刷する面の平面度は、0.5mm以下であることが好ましい。0.5mmを超える平面度の場合にも、導電ペーストの厚みのバラツキが大きくなることがある。平面度も0.1mm以下であれば特に好適である。
【0042】
研磨加工を施した焼結体に、スクリーン印刷により導電ペーストを塗布し、電気回路の形成を行う。導電ペーストは、金属粉末と必要に応じて酸化物粉末と、バインダーと溶剤を混合することにより得ることができる。金属粉末は、セラミックスとの熱膨張係数のマッチングから、タングステンやモリブデンあるいはタンタルが好ましい。
【0043】
また、AlNとの密着強度を高めるために、酸化物粉末を添加することもできる。酸化物粉末は、2A族元素や3A族元素の酸化物やAl、SiOなどが好ましい。特に、酸化イットリウムはAlNに対する濡れ性が非常に良好であるので、好ましい。これらの酸化物の添加量は、0.1〜30wt%が好ましい。0.1wt%未満の場合、形成した電気回路である金属層とAlNとの密着強度が低下する。また30wt%を超えると、電気回路である金属層の電気抵抗値が高くなる。導電ペーストの厚みは、乾燥後の厚みで、5μm以上、100μm以下であることが好ましい。厚みが5μm未満の場合は、電気抵抗値が高くなりすぎるとともに、密着強度も低下する。また、100μmを超える場合も、密着強度が低下する。
【0044】
また、形成する回路パターンが、ヒータ回路(発熱体回路)の場合は、パターンの間隔は0.1mm以上とすることが好ましい。0.1mm未満の間隔では、発熱体に電流を流したときに、印加電圧及び温度によっては漏れ電流が発生し、ショートする。特に、200℃以上の温度で使用する場合には、パターン間隔は1mm以上とすることが好ましく、2mm以上であれば更に好ましい。
【0045】
また、本発明においては、発熱体層を複数形成することもできるため、上記と同様の手法で複数の基板を準備し、それぞれに発熱体を形成する。次に、導電ペーストを脱脂した後、焼成する。脱脂は、窒素やアルゴン等の非酸化性雰囲気中で行う。脱脂温度は500℃以上が好ましい。500℃未満では、導電ペースト中のバインダーの除去が不十分で金属層内にカーボンが残留し、焼成したときに金属の炭化物を形成するので、金属層の電気抵抗値が高くなる。
【0046】
上記焼成は、窒素やアルゴンなどの非酸化性雰囲気中で、1500℃以上の温度で行うのが好適である。1500℃未満の温度では、導電ペースト中の金属粉末の粒成長が進行しないので、焼成後の金属層の電気抵抗値が高くなり過ぎる。また、焼成温度はセラミックスの焼結温度を超えない方がよい。セラミックスの焼結温度を超える温度で導電ペーストを焼成すると、セラミックス中の含有する焼結助剤などが揮散しはじめ、更には導電ペースト中の金属粉末の粒成長が促進されてセラミックスと金属層との密着強度が低下する。
【0047】
次に、形成した金属層の絶縁性を確保するために、金属層の上に絶縁性コートを形成することができる。絶縁性コートの材質は、金属層が形成されているセラミックスと同じ材質であることが好ましい。該セラミックスと絶縁性コートの材質が大幅に異なると、熱膨張係数の差から焼結後に反りが発生するなどの問題が生じる。例えば、AlNの場合、AlN粉末に焼結助剤として所定量の2A族元素あるいは3A族元素の酸化物や炭酸化物を加え、混合し、これにバインダーや溶剤を加えてペーストとし、該ペーストをスクリーン印刷により、前記金属層の上に塗布することができる。
【0048】
この時、添加する焼結助剤量は、0.01wt%以上であることが好ましい。0.01wt%未満では絶縁性コートが緻密化せず、金属層の絶縁性を確保することが困難となる。また、焼結助剤量は20wt%を超えないことが好ましい。20wt%を超えると、過剰の焼結助剤が金属層中に浸透するので、金属層の電気抵抗値が変化してしまうことがある。塗布する厚みに特に制限はないが、5μm以上であることが好ましい。5μm未満では、絶縁性を確保することが困難となるからである。このようにしてスクリーン印刷にて絶縁性コートを形成した上で、必要に応じて脱脂を行った後、所定の温度で焼成することにより形成することができる。
【0049】
次に、コファイアー法について説明する。前述した原料スラリーをドクターブレード法によりシート成形する。シート成形に関して特に制約はないが、シートの厚みは乾燥後で3mm以下が好ましい。シートの厚みが3mmを超えると、スラリーの乾燥収縮量が大きくなるので、シートに亀裂が発生する確率が高くなる。
【0050】
上述したシート上に所定形状の電気回路となる金属層を、導体ペーストをスクリーン印刷などの手法により塗布することによって形成する。導電ペーストは、ポストメタライズ法で説明したものと同じものを用いることができる。ただし、コファイアー法では、導電ペーストに酸化物粉末を添加しなくても支障は少ない。
【0051】
次に、回路形成を行ったシート及び回路形成をしていないシートを積層する。積層の方法は、各シートを所定の位置にセットし、重ね合わせる。この時、必要に応じて各シート間に溶剤を塗布しておく。重ね合わせた状態で、必要に応じて加熱する。加熱する場合、加熱温度は150℃以下であることが好ましい。これを超える温度に加熱すると、積層したシートが大きく変形する。そして、重ね合わせたシートに圧力を加えて一体化する。加える圧力は、1〜100MPaの範囲が好ましい。1MPa未満の圧力では、シートが充分に一体化せず、その後の工程中に剥離することがある。また、100MPaを超える圧力を加えると、シートの変形量が大きくなりすぎる。
【0052】
この積層体を、前述のポストメタライズ法と同様に、脱脂処理並びに焼結を行う。脱脂処理や焼結の温度や、炭素量等はポストメタライズ法と同じである。前述したように、導電ペーストをシートに印刷する際に、複数のシートにそれぞれヒータ回路や静電吸着用電極などを印刷し、それらを積層することで、複数の電気回路を有するヒータ基板を容易に作成することも可能である。このようにして、ヒータ基板となるセラミックス積層焼結体を得ることができる。
【0053】
なお、発熱体回路などの電気回路が、セラミックス積層体の最外層に形成されている場合は、電気回路の保護と絶縁性の確保のために、前述のポストメタライズ法と同様に、電気回路の上に絶縁性コートを形成することができる。
【0054】
得られたセラミックス積層焼結体は、必要に応じて加工を施す。通常、焼結した状態では、半導体製造装置で要求される精度に入らないことが多い。加工精度は、例えば、被処理物搭載面の平面度は0.5mm以下が好ましく、更には0.1mm以下が特に好ましい。平面度が0.5mmを超えると、被処理物とヒータ基板との間に隙間が生じやすくなり、ヒータ基板の熱が被処理物に均一に伝わらなくなるため、被処理物の温度ムラが発生しやすくなる。
【0055】
また、被処理物搭載面の面粗さは、Raで5μm以下が好ましい。Raで5μmを超えると、ヒータ基板と被処理物との摩擦によって、AlNの脱粒が多くなることがある。この時、脱粒した粒子はパーティクルとなり、被処理物上への成膜やエッチングなどの処理に対して悪影響を与えることになる。更に、表面粗さは、Raで1μm以下であれば一層好適である。
【実施例】
【0056】
100重量部の窒化アルミニウム粉末と0.6重量部のステアリン酸イットリウム粉末を混合し、更にバインダーのポリビニルブチラールと溶剤のジブチルフタレートとを、それぞれ10重量部及び5重量部混合した。得られたスラリーをスプレードライにより顆粒とし、プレス成形した後、700℃の窒素雰囲気下で脱脂し、更に窒素雰囲気中にて1850℃で焼結して、窒化アルミニウム焼結体を作製した。尚、使用した窒化アルミニウム粉末は、平均粒径が0.6μm、比表面積が3.4m/gである。
【0057】
得られた窒化アルミニウム焼結体を加工し、直径340mm、厚さ18mmの基板とした。この窒化アルミニウム基板の裏面に、抵抗発熱体回路を渦巻状に配設し、その上に電気絶縁膜をコーティングしてセラミックヒータとした。抵抗発熱体及びその電極端子の配置は、セラミックヒータの径方向に沿った同心円状の径方向長さゾーンで、1つの長さゾーンに配置したものと、3つの長さゾーンに分けて配置したものとを用意した。尚、3つの径方向長さゾーンは、それぞれ直径150mm、260mm、340mmとした。
【0058】
抵抗発熱体の電極端子は、合計6個で全て筒状支持体の配置領域外とし、特に径方向長さゾーンを3つに分けたものでは各ゾーンに2個ずつ形成した。また、制御温度のモニタのため、径方向長さゾーン毎に温度センサを1個設置した。抵抗発熱体の電極端子には、Wの表面にNiめっきを施したものを用いた。各電極端子にはNiからなる給電リードをネジ止めし、筒状支持体の内側空間内となる位置まで配設し、その端部をネジ止めにより電極ロッドに固定した。使用したネジの材質は、上記電極端子と熱膨張係数がほぼ等しいWとした。
【0059】
これらのセラミックヒータの背面側に、背面板をネジで機械的に結合した。使用した背面板は、上記と同様の製法により作製した窒化アルミニウム焼結体であり、加工により直径340mm、厚さ8mmとしたものである。また、背面板にはザグリ加工により外周部分を残して凹部を形成し、且つ中央部に貫通孔を設けた。更に、背面板の中央部でセラミックヒータの反対側に、筒状支持体をネジで機械的に結合し、背面板の貫通孔と筒状支持体の内側空間を連通させた。その際、背面板の材質をAlN、Al、Siに変えると共に、上記径方向長さゾーンの数を1又は3とすることにより、下記表1に示す本発明による試料1〜6の各ヒータユニットを構成した。
【0060】
また、比較例として、背面板を形成せずに、セラミックヒータと筒状支持体とをロウ材を用いて化学的に直接接合した試料7と、背面板を形成せずに、セラミックヒータと筒状支持体をネジで機械的に直接固定した試料8の各ヒータユニットを作製した。この試料7〜8のヒータユニットでは、径方向長さゾーンの数を1とすると共に、電極端子を筒状支持体の内側空間内に2つ形成した。
【0061】
上記の各ヒータユニットについて、均熱性を評価すると共に、昇温時に於ける筒状支持体の損傷の有無を調査して、得られた結果を下記表1に示した。即ち、各ヒータユニットに通電して昇温し、ヒータ制御温度を750℃としたとき、ウェハ温度計を用いてヒータ表面の温度分布を測定し、ウェハ面内に埋設された測温素子の示す最高温度と最低温度との差を均熱性として下記表1に示した。また、室温→750℃→室温の温度サイクルを10サイクル繰り返した後、ヒータユニットを解体して筒状支持体の結合部の損傷を調べ、その結果を表1に併せて示した。
【0062】
【表1】

【0063】
上記の結果から分るように、比較例の試料7は、背面板を使用せず、筒状支持体をセラミックヒータに化学的に直接接合しているため、ヒータ表面内の均熱性は25.3℃に留まり、特に筒状支持体の内側空間内においてクールエリアの発生が顕著であった。また、ヒートサイクル後の解体調査において、セラミックヒータと筒状支持体の接合部にクラックが確認された。
【0064】
一方、比較例の試料8では、上記試料7と同じく背面板を使用していないが、筒状支持体をセラミックヒータに機械的に結合したことにより、筒状支持体とセラミックヒータの間に接触抵抗が生じたことが寄与し、筒状支持体からの熱放散が若干抑えられ、試料7に比べて均熱特性が僅かに向上した。また、ヒートサイクル後の解体調査においても、損傷は確認されなかった。
【0065】
これに対して、筒状支持体を背面板に機械的に結合し、セラミックヒータと直接接しない構造とした本発明の試料1〜6のヒータユニットでは、上記比較例のヒータユニットに比べて均熱性が向上した。これは、背面板が均熱板として機能したこと、熱容量が増えて外乱への耐性が増したこと、筒状支持体からの放熱が減少したこと等が寄与したものと考えられる。尚、背面板の材質をAlN、Al、Siに変えることで均熱特性が若干変化したが、これは材料の熱伝導率の差によるものと考えられる。
【0066】
特に、抵抗発熱体及びその電極端子をセラミックヒータの径方向に沿った同心円状の径方向長さゾーンを3つに分けて配置した試料4〜6では、1つの径方向長さゾーンで配置した試料1〜3に比べ更なる均熱性の向上が認められた。その中でも背面板の材質をセラミックヒータと同じAlNとした試料4においては、背面板の均熱板としての作用等に加え、特に外周部からの放熱を補うように外周部のみ発熱させることで全体をバランスさせることが可能となり、目標とする均熱性レンジ15℃を達成することができた。
【0067】
また、本発明の試料1〜6のヒータユニットは、ヒートサイクル後の解体調査において、背面板の材質に拘わらず、損傷は全く発生しなかった。これは、セラミックヒータに発生する温度差から生じる応力が、筒状支持体の結合部においては直接的に影響せず、損傷に至るような応力が結合部に掛からなかったものと考えられる。
【0068】
尚、最も均熱性に優れる試料4のヒータユニットについて、恣意的に温度差を設けるように熱バランスを制御し、抵抗発熱体の内外周で32.7℃まで温度差をつけても、筒状支持体の結合部に損傷は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明によるヒータユニットの一具体例を示す概略の断面図である。
【図2】本発明のヒータユニットにおける電極端子と給電リード及びセンサとセンサリードの配置例を示す概略の平面図である。
【図3】本発明のヒータユニットにおける電極端子と給電リードと電極ロッドの取り付け構造を示す概略の断面図である。
【図4】本発明のヒータユニットにおける背面板と筒状支持体の連結状態を示す概略の断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 セラミックヒータ
2 背面板
3 筒状支持体
4 給電リード
4a 電極端子
5 温度センサ
6 センサリード
7 セラミックプレート
8 電極ロッド
9a 連結ナット
9b 連結ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗発熱体を有するセラミックヒータと、セラミックヒータの背面側に機械的に結合した背面板と、背面板のセラミックヒータと反対側に機械的に結合した筒状支持体とを備え、該筒状支持体はセラミックヒータと直接接触していないことを特徴とするヒータユニット。
【請求項2】
前記抵抗発熱体の電極端子が前記セラミックヒータの前記背面板に対向する面に複数設けてあり、該電極端子の少なくとも一つは前記セラミックヒータに対向している前記筒状支持体の配置領域外に存在することを特徴とする、請求項1に記載のヒータユニット。
【請求項3】
前記複数の電極端子から前記支持体の内側空間内に給電リードが形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のヒータユニット。
【請求項4】
前記複数の電極端子は、前記セラミックヒータの径方向に沿った同心円状の複数の径方向長さゾーンに分けて配置されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のヒータユニット。
【請求項5】
前記電極端子を配置した径方向長さゾーン毎に温度センサが設置されていることを特徴とする、請求項4に記載のヒータユニット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のヒータユニットを搭載したことを特徴とする半導体の製造・検査装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のヒータユニットを搭載したことを特徴とするフラットパネルディスプレイの製造・検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−43589(P2009−43589A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207658(P2007−207658)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(505186636)SEIハイブリッド株式会社 (52)
【Fターム(参考)】