説明

半導体基板、トランジスタおよび半導体基板の製造方法

【課題】大きな電流密度あるいは大きな利得での駆動と低いオン抵抗とを両立したHFETを得る。
【解決手段】InAlGa1−x−yAs1−z(ただしx、yおよびzは、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1および0≦z≦1を満たす)からなる半導体層を有し、前記半導体層が、トランジスタのソースとして機能するソース領域の全部または一部と、前記トランジスタのドレインとして機能するドレイン領域の全部または一部と、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に配置され、前記トランジスタのゲートとして機能するゲート領域の全部または一部とを含み、前記ゲート領域の全部または一部における前記半導体層の最大電子親和力が、前記ソース領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力または前記ドレイン領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力より小さい半導体基板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、トランジスタおよび半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ゲート下のチャネルの電子濃度を下げてゲート・ドレイン耐圧の向上を図る一方、ソースおよびドレイン領域のチャネルの電子濃度を上げて低コンタクト抵抗を実現する半導体装置を開示する。当該半導体装置では、動作層となるGaN層上に、電子供給層として、Al組成の異なるAl0.3Ga0.7N層およびAl0.1Ga0.9N層を設ける。Al0.3Ga0.7N層の設けられた領域を低抵抗領域とし、Al0.1Ga0.9N層の設けられた領域を高抵抗領域として利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−16245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
化合物半導体のヘテロ界面近傍に形成される2次元電子ガスをチャネルとして利用したHFET(Heterojunction-Field Effect Transistor)では、電子供給層の電子親和力が小さいほど多くの電子がチャネル層に誘起されるので、チャネルの電子密度が大きくなり、大きな電流密度あるいは大きな利得で動作するトランジスタが作製できる。また、ゲートから電子供給層に注入される電子密度が小さくなるため、ゲートリーク電流を低く抑えることができ、ゲート耐圧の向上ができる。しかし、電子供給層の電子親和力が小さいと、ソース電極およびドレイン電極の接触抵抗が増加する。また、電極から電子供給層に供給される電子の注入効率が低下する。その結果、ソース電極またはドレイン電極からチャネルまでの経路での抵抗が増え、トランジスタのオン抵抗が上昇する。すなわち、大きな電流密度、大きな利得での駆動およびゲート耐圧と低いオン抵抗とはトレードオフの関係にあり、これらを両立したHFETの作製は困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、InAlGa1−x−yAs1−z(ただしx、yおよびzは、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1および0≦z≦1を満たす)からなる半導体層を有し、前記半導体層が、トランジスタのソースとして機能するソース領域の全部または一部と、前記トランジスタのドレインとして機能するドレイン領域の全部または一部と、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に配置され、前記トランジスタのゲートとして機能するゲート領域の全部または一部とを含み、前記ゲート領域の全部または一部における前記半導体層の最大電子親和力が、前記ソース領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力または前記ドレイン領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力より小さい半導体基板を提供する。
【0006】
前記半導体層は、前記ソース領域の全部または一部または前記ドレイン領域の全部または一部から前記ゲート領域の全部または一部にかけて、電子親和力が連続的かつ単調に小さくなっているものであってもよい。前記半導体層は、その電子親和力に応じて不純物濃度が変化していてもよい。ベース基板をさらに有してもよく、前記半導体層が前記ベース基板の上に形成されてもよく、前記ベース基板の上に、前記半導体層の成長を阻害する阻害層が形成されてもよく、前記阻害層は、下地結晶層に達する開口が形成されてもよく、前記半導体層は、前記阻害層の前記開口の内部に、選択エピタキシャル成長により形成されたものであってもよい。前記半導体層として、電界効果トランジスタのショットキー層もしくは電荷供給層またはその両方として機能するものが挙げられる。前記半導体層として、AlGa1−qAs(ただしqは、0≦q<1を満たす)からなるものが挙げられ、前記ゲート領域の全部または一部における前記半導体層の前記qの値が、前記ソース領域の全部または一部における前記半導体層の前記qの値または前記ドレイン領域の全部または一部における前記半導体層の前記qの値より大きいものであってもよい。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様においては、InAlGa1−x−yAs1−z(ただしx、yおよびzは、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1および0≦z≦1を満たす)からなる半導体層を有するトランジスタであって、前記半導体層が、前記トランジスタのソースとして機能するソース領域の全部または一部と、前記トランジスタのドレインとして機能するドレイン領域の全部または一部と、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に配置され、前記トランジスタのゲートとして機能するゲート領域の全部または一部とを含み、前記ゲート領域の全部または一部における前記半導体層の最大電子親和力が、前記ソース領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力または前記ドレイン領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力より小さいトランジスタを提供する。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第3の態様においては、ベース基板の上に、結晶の成長を阻害する阻害層を形成する段階と、前記阻害層に、開口を形成する段階と、前記開口の内部にInAlGa1−x−yAs1−z(ただしx、yおよびzは、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1および0≦z≦1を満たす)からなる半導体層を選択エピタキシャル成長させる段階と、を有し、前記半導体層が、前記トランジスタのソースとして機能するソース領域の全部または一部と、前記トランジスタのドレインとして機能するドレイン領域の全部または一部と、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に配置され、前記トランジスタのゲートとして機能するゲート領域の全部または一部とを含み、前記ゲート領域の全部または一部における前記半導体層の最大電子親和力が、前記ソース領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力または前記ドレイン領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力より小さくなるよう前記半導体層を形成する半導体基板の製造方法を提供する。
【0009】
前記半導体層を選択エピタキシャル成長させる段階において、前記半導体層に含まれる、前記ソース領域の全部または一部、前記ドレイン領域の全部または一部および前記ゲート領域の全部または一部を、前記阻害層をマスクとして前記開口の内部に同時に選択エピタキシャル成長させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】半導体基板100の断面を模式的に示す。
【図2】半導体層104の電子親和力が位置によって異なる様子を示す。
【図3】半導体基板200の断面を模式的に示す。
【図4】半導体基板200を上部から見た平面図である。
【図5】半導体基板300の断面を模式的に示す。
【図6】半導体基板400を上部から見た平面図である。
【図7】開口部面積とAl組成との関係を示す実験グラフである。
【図8】開口部幅とAl組成との関係を示す実験グラフである。
【図9】シミュレーションに用いたデバイス500の断面を示す。
【図10】ソース領域・ドレイン領域のAl組成とオン抵抗との関係をシミュレートした結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、半導体基板100の断面を模式的に示す。半導体基板100は、ベース基板102と半導体層104とを有する。ベース基板102は、半導体層104等ベース基板102の上に形成される半導体層を機械的に支持する。ベース基板102として、たとえばGaAs基板が挙げられる。半導体層104は、InAlGa1−x−yAs1−zからなる。ただしx、yおよびzは、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1および0≦z≦1を満たす。半導体層104として、AlGaAs、InGaAs、AlGaPあるいはInGaPが挙げられる。
【0012】
ベース基板102と半導体層104との間には任意の半導体層が形成されてもよい。また、半導体層104の上にも任意の半導体層が形成されてもよい。図1に示す半導体基板100は、半導体層104を含む複数の半導体層が積層された半導体積層がベース基板102上に形成されている場合を示している。
【0013】
半導体層104を含む半導体積層の上には、ソース電極106、ドレイン電極108およびゲート電極110を形成することができ、電界効果トランジスタを形成することができる。なお、本実施形態で説明する半導体基板100は、電界効果トランジスタ用の基板であって、未だソース電極106、ドレイン電極108およびゲート電極110は形成されていない。よって図1において、ソース電極106、ドレイン電極108およびゲート電極110は破線で示している。
【0014】
ソース電極106が形成されるであろう位置とベース基板102との間に位置する半導体積層の一領域をソース領域112とする。ソース領域112は、トランジスタのソースとして機能する。ソース領域112は、半導体層104を含む半導体積層の一領域であるから、ソース領域112には、半導体層104のうちソースとして機能する半導体層ソース部118が含まれる。すなわち、半導体層104は、ソース領域112の一部である半導体層ソース部118を含む。なお、半導体層ソース部118は、ソース領域112の全部であってもよい。すなわち、半導体層104は、ソース領域112の全部を含んでもよい。ソース領域112の全部または一部における半導体層104は、半導体層ソース部118である。
【0015】
ドレイン電極108が形成されるであろう位置とベース基板102との間に位置する半導体積層の一領域をドレイン領域114とする。ドレイン領域114は、トランジスタのドレインとして機能する。ドレイン領域114は、半導体層104を含む半導体積層の一領域であるから、ドレイン領域114には、半導体層104のうちドレインとして機能する半導体層ドレイン部120が含まれる。すなわち、半導体層104は、ドレイン領域114の一部である半導体層ドレイン部120を含む。なお、半導体層ドレイン部120は、ドレイン領域114の全部であってもよい。すなわち、半導体層104は、ドレイン領域114の全部を含んでもよい。ドレイン領域114の全部または一部における半導体層104は、半導体層ドレイン部120である。
【0016】
ゲート電極110が形成されるであろう位置とベース基板102との間に位置する半導体積層の一領域をゲート領域116とする。ゲート領域116は、ソース領域112およびドレイン領域114の間に配置される。ゲート領域116は、トランジスタのゲートとして機能する。ゲート領域116は、半導体層104を含む半導体積層の一領域であるから、ゲート領域116には、半導体層104のうちゲートとして機能する半導体層ゲート部122が含まれる。すなわち、半導体層104は、ゲート領域116の一部である半導体層ゲート部122を含む。なお、半導体層ゲート部122は、ゲート領域116の全部であってもよい。すなわち、半導体層104は、ゲート領域116の全部を含んでもよい。ゲート領域116の全部または一部における半導体層104は、半導体層ゲート部122である。半導体層ゲート部122と半導体層ソース部118との間の半導体層104は、半導体層ソース・ゲート間部124とする。半導体層ゲート部122と半導体層ドレイン部120との間の半導体層104は、半導体層ドレイン・ゲート間部126とする。
【0017】
図2は、半導体層104の電子親和力が位置によって異なる様子を示す。半導体層ゲート部122の電子親和力は、半導体層ソース部118の電子親和力より小さく、半導体層ゲート部122の電子親和力は、半導体層ドレイン部120の電子親和力より小さい。また、半導体層ソース・ゲート間部124における電子親和力は、ソース領域112からゲート領域116にかけて連続的かつ単調に小さくなっており、半導体層ドレイン・ゲート間部126における電子親和力は、ドレイン領域114からゲート領域116にかけて連続的かつ単調に小さくなっている。ここで、半導体層ソース・ゲート間部124および半導体層ドレイン・ゲート間部126における電子親和力がゲート領域116にかけて連続的かつ単調に小さくなっている例を示したが、不連続、たとえばステップ状に減少してもよい。
【0018】
半導体層ゲート部122の電子親和力、半導体層ソース部118の電子親和力および半導体層ドレイン部120の電子親和力は、図1における縦方向つまり半導体層104の厚さ方向において、連続的に変化してもよい。ただし、半導体層ゲート部122の最大電子親和力は、半導体層ソース部118の最小電子親和力または半導体層ドレイン部120の最小電子親和力より小さいことを要する。半導体層ソース・ゲート間部124における電子親和力および半導体層ドレイン・ゲート間部126における電子親和力も半導体層104の厚さ方向において、連続的に変化してもよい。半導体層104は、その電子親和力に応じて不純物濃度を変化させてもよい。
【0019】
半導体基板100では、半導体層ゲート部122の最大電子親和力が、半導体層ソース部118の最小電子親和力より小さく、半導体層ドレイン部120の最小電子親和力より小さい。この結果、半導体層104が電子供給層として機能する場合、ゲート領域116において多くの電子がチャネル層に供給され、大きな電流密度あるいは大きな利得で動作するトランジスタが作製できる。それと同時にゲート電極から電子供給層に電子が注入されるのを抑制することによりゲート耐圧が高いトランジスタが作製できる。一方、ソース領域112、ドレイン領域114において半導体層104の電子親和力は大きいので、ソース電極106、ドレイン電極108からチャネルまでの経路での抵抗を小さくし、トランジスタのオン抵抗が低減できる。つまり、大きな電流密度、大きな利得および高い耐圧での駆動と低いオン抵抗とを両立したHFETが作製できる。
【0020】
図3は、半導体基板200の断面を模式的に示す。図4は、半導体基板200を上部から見た平面図である。図3の断面は、図4のIII−III線に沿った断面である。半導体基板200は、ベース基板102の上に阻害層202が形成されている。阻害層202は半導体層104の成長を阻害する。阻害層202には、下地結晶層に達する開口204が形成されており、半導体層104は、阻害層202の開口204の内部に、選択エピタキシャル成長により形成されたものである。
【0021】
開口204は、図4に示すように、ソース領域112およびドレイン領域114を含む領域で幅が小さく、ゲート領域116を含む領域で幅が大きい。このように幅が異なる領域を有する開口204を阻害層202に設けて、半導体層104を選択エピタキシャルさせると、半導体層104を構成する3族元素または5族元素の組成が幅に応じて変化する。たとえばAlGaAsの場合、開口204の幅が大きい領域では、Al原子とGa原子の和に対するAl原子の比(以下「Al組成」という)が大きくなる。Al組成が大きいと電子親和力が小さくなる。つまり、幅が異なる開口204を形成することで、ゲート領域116における半導体層104の電子親和力を小さくし、ソース領域112およびドレイン領域114における半導体層104の電子親和力を大きくできる。この場合、半導体層104は、AlGa1−qAs(ただしqは、0≦q<1を満たす)と表すことができ、ゲート領域116における半導体層104のqの値は、ソース領域112におけるqの値またはドレイン領域114におけるqの値より大きい。
【0022】
半導体基板200は、以下のようにして製造できる。すなわち、ベース基板102の上に、阻害層202を形成する。阻害層202として酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンが例示できる。阻害層202は、たとえばスパッタリング法等公知の薄膜形成法により形成できる。次に、阻害層202に開口204を形成する。開口204は、たとえばフォトリソグラフィ法とドライエッチング法またはウェットエッチング法とを用いて形成できる。次に、開口204の内部に、半導体層104を含む単一または複数の半導体層を選択エピタキシャル成長により形成する。前記したとおり、開口204の幅を調整して、半導体層ゲート部122の電子親和力が、半導体層ソース部118の電子親和力または半導体層ドレイン部120の電子親和力より小さくなるように半導体層104を形成する。
【0023】
なお、半導体層104を選択エピタキシャル成長させるとき、半導体層104の少なくとも半導体層ソース部118、半導体層ドレイン部120および半導体層ゲート部122を、阻害層202をマスクとして開口204の内部に同時に選択エピタキシャル成長させる。半導体層104の電子親和力が異なる領域を同時に選択エピタキシャル成長させることができるので、製造プロセスを簡略化できる。
【0024】
図5は、半導体基板300の断面を模式的に示す。半導体基板300は、半導体層104に加えて、半導体層304を有する。半導体層304を構成する原子の種類、形成方法は、半導体層104と同様である。ただしAl組成等の組成あるいは不純物濃度を異ならせ、目的に応じて物性を調整できる、たとえば半導体層104を電界効果トランジスタの電荷供給層として機能させ、半導体層304を電界効果トランジスタのショットキー層として機能させることができる。
【0025】
図6は、半導体基板400を上部から見た平面図である。半導体基板400は、図4に示す開口204を複数連ねた形状の開口404を有する。開口204を複数連ねた形状の開口404を形成することで、ゲート領域116とソース領域112およびドレイン領域114とに形成される半導体層104の開口幅の違いに応じた電子親和力の違いを大きくできる。
【0026】
以上説明した半導体基板は、公知の製造方法によりHFET等の電界効果トランジスタに加工できる。よって、前記した半導体基板の各特徴を備えたトランジスタとして本発明を把握することができる。
【0027】
(実施例1)
開口の幅が1μm、100μmおよび1000μmである、半導体基板200相当の3種類の試料を作製した。ベース基板102として高抵抗のGaAs基板を用いた。GaAs基板上に、スパッタリング法により酸化シリコンを1μmの厚さで形成した。酸化シリコンに前記3種類の開口を形成した。開口の面積は各々300μm、10000μm、1000000μmであった。酸化シリコンをマスクにして、開口の内部にAlGaAsを選択エピタキシャル成長させた。エピタキシャル成長にはMOCVD法を用いた。MOCVD法では、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMG(トリメチルガリウム)およびアルシンを原料ガスに用い、反応温度を530℃とした。AlGaAsの厚さを500nmとした。各開口におけるAl組成をSIMSにより測定した。
【0028】
図7は、開口部面積とAl組成との関係を示す実験グラフであり、図8は、開口部幅とAl組成との関係を示す実験グラフである。開口部幅(開口部面積)が大きいほどAl組成が大きくなることが分かる。
【0029】
(実施例2)
デバイス500のオン抵抗をシミュレートした。図9は、シミュレーションに用いたデバイス500の断面を示す。デバイス500はHFETとした。デバイス500は、高抵抗GaAsであるベース基板502上に、バッファー層504、電子供給層506、スペーサ層508、チャネル層510、スペーサ層512、電子供給層514、ショットキー層516およびコンタクト層518を有するものとした。各層の材料、Al組成またはIn組成、膜厚および不純物濃度を表1に示す。
【表1】

【0030】
図9に示すように、コンタクト層518上にソース電極520およびドレイン電極522を配置し、ショットキー層516に接してゲート電極524を配置した。ソース電極520の幅526およびドレイン電極522の幅528は、ともに10μmとした。ゲート電極524の幅530は、0.5μmとした。ゲート電極524とソース電極520の間隔532およびゲート電極524とドレイン電極522の間隔534は、ともに0.5μmとした。以下、幅526をソース領域、幅528をドレイン領域、幅530+間隔532+間隔534をゲート領域とする。
【0031】
スペーサ層512、電子供給層514およびショットキー層516の、ソース領域、ゲート領域およびドレイン領域におけるAl組成を変化させ、9種類のシミュレーションを実施した。シミュレーションにはドリフト拡散法を用いた。ソース・ドレイン間の電圧を0.1V、ソース・ゲート間の電圧を0.5Vとしてソース・ドレイン間のオン抵抗を計算した。表2は、9種類の各シミュレーションにおけるAl組成の値を示す。
【表2】

【0032】
図10は、ソース領域・ドレイン領域のAl組成とオン抵抗との関係をシミュレートした結果を示す。図10において、実線はゲート領域におけるAl組成が0.3の場合、破線はゲート領域におけるAl組成が0.25の場合、一点鎖線はゲート領域におけるAl組成が0.225の場合を示す。ゲート領域におけるAl組成が0.225から0.3の範囲で、ソース領域・ドレイン領域のAl組成が小さくなるほどオン抵抗が低下していることがわかる。
【0033】
以上の通り、ゲート領域における半導体層のAl組成を高く維持しても、ソース領域・ドレイン領域のAl組成を低下することでHFETのオン抵抗が低くなることが確認できた。これにより、大きな電流密度あるいは大きな利得での駆動と低いオン抵抗とを両立したHFETが作製できることがわかった。
【0034】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システムおよび方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0035】
100…半導体基板、102…ベース基板、104…半導体層、106…ソース電極、108…ドレイン電極、110…ゲート電極、112…ソース領域、114…ドレイン領域、116…ゲート領域、118…半導体層ソース部、120…半導体層ドレイン部、122…半導体層ゲート部、124…半導体層ソース・ゲート間部、126…半導体層ドレイン・ゲート間部、200…半導体基板、202…阻害層、204…開口、300…半導体基板、304…半導体層、400…半導体基板、404…開口、500…デバイス、502…ベース基板、504…バッファー層、506…電子供給層、508…スペーサ層、510…チャネル層、512…スペーサ層、514…電子供給層、516…ショットキー層、518…コンタクト層、520…ソース電極、522…ドレイン電極、524…ゲート電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
InAlGa1−x−yAs1−z(ただしx、yおよびzは、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1および0≦z≦1を満たす)からなる半導体層を有し、
前記半導体層が、トランジスタのソースとして機能するソース領域の全部または一部と、前記トランジスタのドレインとして機能するドレイン領域の全部または一部と、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に配置され、前記トランジスタのゲートとして機能するゲート領域の全部または一部とを含み、
前記ゲート領域の全部または一部における前記半導体層の最大電子親和力が、前記ソース領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力または前記ドレイン領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力より小さい
半導体基板。
【請求項2】
前記半導体層は、前記ソース領域の全部または一部または前記ドレイン領域の全部または一部から前記ゲート領域の全部または一部にかけて、電子親和力が連続的かつ単調に小さくなっているものである
請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記半導体層は、その電子親和力に応じて不純物濃度が変化している
請求項1または請求項2に記載の半導体基板。
【請求項4】
ベース基板を有し、
前記半導体層が前記ベース基板の上に形成され、
前記ベース基板の上に、前記半導体層の成長を阻害する阻害層が形成され、
前記阻害層は、下地結晶層に達する開口が形成されており、
前記半導体層は、前記阻害層の前記開口の内部に、選択エピタキシャル成長により形成されたものである
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記半導体層は、電界効果トランジスタのショットキー層もしくは電荷供給層またはその両方として機能する
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記半導体層は、AlGa1−qAs(ただしqは、0≦q<1を満たす)からなり、
前記ゲート領域の全部または一部における前記半導体層の前記qの値が、前記ソース領域の全部または一部における前記半導体層の前記qの値または前記ドレイン領域の全部または一部における前記半導体層の前記qの値より大きい
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項7】
InAlGa1−x−yAs1−z(ただしx、yおよびzは、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1および0≦z≦1を満たす)からなる半導体層を有するトランジスタであって、
前記半導体層が、前記トランジスタのソースとして機能するソース領域の全部または一部と、前記トランジスタのドレインとして機能するドレイン領域の全部または一部と、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に配置され、前記トランジスタのゲートとして機能するゲート領域の全部または一部とを含み、
前記ゲート領域の全部または一部における前記半導体層の最大電子親和力が、前記ソース領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力または前記ドレイン領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力より小さい
トランジスタ。
【請求項8】
ベース基板の上に、結晶の成長を阻害する阻害層を形成する段階と、
前記阻害層に、開口を形成する段階と、
前記開口の内部にInAlGa1−x−yAs1−z(ただしx、yおよびzは、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1および0≦z≦1を満たす)からなる半導体層を選択エピタキシャル成長させる段階と、を有し、
前記半導体層が、前記トランジスタのソースとして機能するソース領域の全部または一部と、前記トランジスタのドレインとして機能するドレイン領域の全部または一部と、前記ソース領域および前記ドレイン領域の間に配置され、前記トランジスタのゲートとして機能するゲート領域の全部または一部とを含み、
前記ゲート領域の全部または一部における前記半導体層の最大電子親和力が、前記ソース領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力または前記ドレイン領域の全部または一部における前記半導体層の最小電子親和力より小さくなるよう前記半導体層を形成する
半導体基板の製造方法。
【請求項9】
前記半導体層を選択エピタキシャル成長させる段階において、前記半導体層に含まれる、前記ソース領域の全部または一部、前記ドレイン領域の全部または一部および前記ゲート領域の全部または一部を、前記阻害層をマスクとして前記開口の内部に同時に選択エピタキシャル成長させる
請求項8に記載の半導体基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−233668(P2011−233668A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101920(P2010−101920)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】