説明

半導体基板を保持するための工作物保持固定具

キャリヤと、前記キャリヤ(1)からみて外方に向く1つの保持側面(7)を有して前記キャリヤ(1)上に固定され又は固定され得る保持体(3)と、前記保持側面上の吸引端で前記保持体を貫通する少なくとも1つの陰圧チャネルであって、前記保持側面が柔軟な材料の規定された吸引構造体を有する陰圧チェネルと、を備える、平坦な半導体基板を保持するための工作物保持固定具である。前記吸引構造体は前記保持側面全体に広がり、ショア−A90未満のショア硬度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1に記載の工作物保持固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の正確な且つ位置決めされた固定は、半導体産業での数多くのプロセスに必須である。これらの半導体基板を扱うために、通常非常に薄くて影響を受けやすい半導体基板は工作物保持固定具、いわゆるチャックに置かれ、そこに固定される。チャックに半導体基板を固定する方法として知られる技術は、100ミクロン未満、特に50μm未満の厚さを有する極度に薄い半導体基板及びトポグラフィーを有する基板に対して、特に使用することが出来ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
1つの非常に頻繁に使用される固定のタイプは、真空又は陰圧を使用して行われ、真空パスが引き伸ばされた平坦で硬くなった表面上に、平坦な半導体基板が固定される。特に薄い半導体基板では、その半導体基板は真空パスに沿って壊され、又は少なくとも損傷され得る。
【0004】
依然としてより大きな問題は、非常に高いトポグラフィーを有する基板の固定であり、そのトポグラフィーは例えばいわゆるバンプによって作られる。バンプは、後に他の部品と電気接点を作るのに使用される、球状、円錐形状又は角柱状(立方形状)で付けられる導電体である。バンプは500μmを超える高さを有し得るが、典型的には4から200μmの間、通常10から150μmの間であり、全基板表面上に大多数分散され得る。このことから判断すると、半導体基板の固定は既知の方法では十分可能ではないということになる。
【0005】
もう1つの可能性は静電固定にある。しかし静電固定装置は、半導体基板上の複合回路への損傷が電場の集合によって起こり得るという欠点を有する。
【0006】
従って本発明の目的は、薄い半導体基板及びトポグラフィーを有する半導体基板が確実に且つ注意深く保持され、そして固定され得る工作物保持固定具を考案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は請求項1の特徴で達成される。本発明の有利な優位性は、その従属請求項で与えられる。本発明の構成はまた、明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に与えられる特徴の少なくとも2つの全ての組合せを包囲する。特定の値範囲において、表示された制限値内にある値はまた境界値として開示され、任意の組合せにおいて請求される。
【0008】
本発明は、工作物保持固定具の1つの保持側面上の規定された吸収構造体に、表面が柔軟な材料又は吸引構造体を有する材料を同時に使用することによって、市販の工作物保持固定具を改善するという考えに基づく。半導体基板に接触する表面上に弾力性のある材料を提供することによって、半導体基板上にトポグラフィーが存在する場合でさえ、半導体基板の注意深い保持が保証され得る。半導体基板を吸引する吸引構造体を同時に有する柔軟な材料によって、従来技術から知られる欠点は回避され、薄い半導体基板及び/又はトポグラフィーが備わった半導体基板の確実な且つ注意深い保持が可能になる。
【0009】
吸引構造体の隣接した隆起部(エレベーション)間の距離は、半導体基板の厚さに対して1:7未満の比率であるべきであり、特に1:5未満、好ましくは1:3未満、より好ましくは1:2未満である。これは半導体基板上の可能なトポグラフィーの直径に対しても、類似して適用される。吸引構造体の隣接した隆起部間の距離はそれに応じて、半導体基板の厚さ及び/又は工作物保持固定具に保持される半導体基板の個々のトポグラフィーの直径と比較して最大7倍である。本発明の1つの有利な形態では、吸引構造体が保持側面全体に広がって提供される。従って全半導体基板が注意深く保持され得る。
【0010】
更に吸引構造体がショア−A90未満のショア硬度を有して、有利に提供される。ショア−A10からショア−A70の間のショア硬度を有する柔軟な材料が、一方では安定した且つ他方では注意深い半導体基板の保持に最適であるが、それは荷重及び/又は横方向力による高圧がある程度半導体基板に作用し得るからである。更に半導体基板の高精度な位置決めに対して、半導体基板を工作物保持固定具から浮かさないことが必要である。しかし驚くべきことに、柔軟な材料と陰圧との組合せもまた、安定した横側面の誘導又は安定した横側面の固定を提供することが明らかになっている。
【0011】
吸引構造体を有する保持体は、柔軟な材料から成る保持体によって一部として形成され得る。
【0012】
特に主に保持体及び/又は半導体基板の周辺方向に向かう1又はそれ以上のパスを規定された吸引構造体が有する範囲で、特に規定された陰圧は半導体基板の全表面上に増大することができる。更に、保持体の主に周辺方向に整列されたパスによって、非常に小さい陰圧でも半導体基板を確実に固定するのに十分である。
【0013】
本発明のもう1つの有利な実施形態では、吸引構造体が、特に横断面で隣接したパスが、歯のような形に作られて提供される。
【0014】
特に隆起部及びくぼみ(depression)から成る少なくとも1つのパスが、らせん状に、特に保持体の中心Zから外へ向かって走るように、更に有利に提供される。一方ではらせん状のパスが生産技術を用いて簡単に実装され得、他方では、工作物保持固定具の中心から工作物保持固定具の周辺までの最大パスが、パスに広がった陰圧が確実に最適に作用できるように実装される。
【0015】
可能な静電変化は、電気的に導電性に作られた柔軟な材料によって、例えば工作物保持固定具の接地によって避けられ得る。
【0016】
本発明のもう1つの有利な実施形態によると、保持側面が保持平面Aを形成し、くぼみの側壁が保持平面Aに対して特に同一の角度に、特に角度W1/W2が30°から85°の間に、好ましくは50°から70°の間に提供される。角度W1はくぼみの1つ目の側壁に適用され、角度W2はくぼみの2つ目の側壁に適用される。
【0017】
ここで、吸引構造体の弾力性及び配置によって、吸引構造体が半導体基板のトポグラフィーに適合するように作られることが特に有利である。
【0018】
本発明の他の利点、特徴及び詳細は、以下に続く好ましい典型的な実施形態及び図面の使用から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】半導体基板4に適用されたトポグラフィー5の顕微鏡写真である。
【図2】本発明で請求されるような工作物保持固定具の概略図である。
【図3】本発明で請求されるような柔軟な材料を有する吸引構造体から抜粋した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面において、同一の構成要素及び同一の機能を有する構成要素は同一の参照番号で識別される。
【0021】
図1はトポグラフィー5、特に半導体基板4の表面上に分散して位置している個々のバンプ5bを有する半導体基板4の抜粋図を示す。
【0022】
図2はキャリヤ1とキャリヤ1に固定された保持体3とから成る工作物保持固定具を示す。キャリヤ1は例えばロボットアーム又はプロセスステーションによって保持するために使用され得、それ故に好ましくは硬い材料、特に金属から形成される。キャリヤ1は有利に保持体3よりも大きな領域を有する。キャリヤ1と比較して保持体3は、より柔軟な材料から形成される。柔軟な材料は例えば、バイトン、シリコーン、ゴム、NBR(ニトリルゴム)、ネオプレンなどであり得る。
【0023】
トポグラフィー5を有する半導体基板4は、保持体3のキャリヤ1からみて外方に向く保持側面7上に保持され得る。半導体基板4ではまた、そのトポグラフィー5が強調され得、それ故に保持側面7から離れて保持され得る。
【0024】
保持体3は、保持側面7上に位置する1つの吸引端8に真空を適用するために、キャリヤ1を通り抜けて示されていない真空手段までさらに延びる陰圧チャネル2によって貫通される。本発明で請求されるように、幾つかの陰圧チャネル2が保持体3上に分散して配置され得る。保持体3の中心Zの外側に陰圧チャネル2又は吸引端8を配置することが有利である。中心Zから吸引端8までの距離B1が吸引端8から保持体3の周辺9までの距離B2よりも大きい場合、特に有利である。比率B1:B2が1.5:1から3:1、好ましくは2:1であると、特に有利である。
【0025】
吸引端8は吸引構造体6のくぼみ10内に位置し、吸引構造体6を形成する隆起部11はくぼみ10に隣接する。隆起部11はこの場合歯のような形であり、くぼみ10及び隆起部11は中心Zから始まるらせん状のパス12によって形成される。らせん状のパス12が規定された吸引構造体6を形成し、中心Zから周辺9への高い流動抵抗がらせん構造によって達成され、半導体基板4の保持体3への安定した吸引を提供する。
【0026】
バンプ5bがパス12のくぼみ10に保持され得る。
【0027】
図3は保持体3の拡大された抜粋図を示す。くぼみ10の側壁S1及びS2は保持体3の保持側面7によって形成された保持平面Aに対して同一の角度であり、その角度W1及びW2は典型的な実施形態において、側壁S1及びS2と保持平面Aとの間の角度に等しい。その角度W1及びW2は30°から85°の間であり、好ましくは40°から75°の間である。
【0028】
図3において指し示された隆起部11は、本発明の1つの有利な実施形態において丸くされ得る。
【0029】
本発明の1つの特別な利点は更に、異なる半導体基板が、特に異なる直径を有する半導体基板4もまた、同一の工作物保持固定具で確実に且つ注意深く保持され得ることにある。
【0030】
保持体3と本質的に同一の外側の外形及び/又は同一の外周面及び/又は同一の直径を有する半導体基板4は、特に確実に且つ注意深く保持される。
【符号の説明】
【0031】
1 キャリヤ
2 陰圧チャネル
3 保持体
4 半導体基板
5 トポグラフィー
5b バンプ
6 吸引構造体
7 保持側面
8 吸引端
9 周辺
10 くぼみ
11 隆起部
12 パス
S1/S2 側壁
Z 中心
A 保持平面
W1 角度
W2 角度
B1 距離
B2 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリヤ(1)と、
前記キャリヤ(1)からみて外方に向く1つの保持側面(7)を有して前記キャリヤ(1)上に固定され又は固定され得る保持体(3)と、
前記保持側面(7)上の吸引端で前記保持体(3)を貫通する少なくとも1つの陰圧チャネル(2)であって、前記保持側面(7)が柔軟な材料の規定された吸引構造体(6)を有する陰圧チャネル(2)と、を備える、平坦な半導体基板(4)を保持するための工作物保持固定具。
【請求項2】
前記吸引構造体(6)が前記保持側面(7)全体に広がる、請求項1に記載の工作物保持固定具。
【請求項3】
前記吸引構造体(6)がショア−A90未満のショア硬度を有する、請求項1又は2に記載の工作物保持固定具。
【請求項4】
前記保持体(3)が柔軟な材料から成る、請求項1から3の何れか1項に記載の工作物保持固定具。
【請求項5】
前記規定された吸引構造体(6)が、特に主に前記保持体(3)及び/又は前記半導体基板の周辺方向に向かう1又はそれ以上のパス(12)を有する、請求項1から4の何れか1項に記載の工作物保持固定具。
【請求項6】
特に横断面で隣接した前記パス(12)を有する前記吸引構造体(6)が歯のような形で作られる、請求項1から5の何れか1項に記載の工作物保持固定具。
【請求項7】
特に隆起部(11)及びくぼみ(10)から成る少なくとも1つの前記パス(12)がらせん状に、特に前記保持体(3)の中心(Z)から外へ向かう、請求項1から6の何れか1項に記載の工作物保持固定具。
【請求項8】
前記柔軟な材料が電気的に導電性に作られる、請求項1から7の何れか1項に記載の工作物保持固定具。
【請求項9】
前記保持側面(7)が保持平面Aを形成し、前記くぼみ(10)の側壁(S1/S2)が前記保持平面Aに対して特に同一の角度であり、特に角度W1/W2が30°から85°の間であり、好ましくは40°から75°の間である、請求項1から8の何れか1項に記載の工作物保持固定具。
【請求項10】
前記吸引構造体(6)が前記半導体基板(4)のトポグラフィー(5)に適合するように作られる、請求項9に記載の工作物保持固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524984(P2012−524984A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−506359(P2012−506359)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002052
【国際公開番号】WO2010/121701
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(510246138)エーファウ・グループ・ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】