半導体増幅装置
【課題】 飽和領域で動作する増幅部の低温時の出力増加や出力インピーダンスの変化による消費電力や高調波レベルの変動などを抑制する多段の半導体増幅装置を提供する。
【解決手段】 高周波電力を出力する終段増幅部1に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する第1増幅素子1aと、第1増幅素子1aに前置した前置増幅部2に設けられ、高周波電力を増幅する第2増幅素子2aと、第2増幅素子2aに接続され、感温素子の抵抗値変化で第2増幅素子2aの出力電力を変化させる温度補償回路5と、第1増幅素子1aの入力側と第2増幅素子2aの出力側との間に介在し、共振インピーダンスの変化でマイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザ4とを備え、周囲温度が低下するにつれて第2増幅素子2aの出力電力を低下させることにより第1増幅素子1aの出力を飽和出力電力領域で維持するようにした。
【解決手段】 高周波電力を出力する終段増幅部1に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する第1増幅素子1aと、第1増幅素子1aに前置した前置増幅部2に設けられ、高周波電力を増幅する第2増幅素子2aと、第2増幅素子2aに接続され、感温素子の抵抗値変化で第2増幅素子2aの出力電力を変化させる温度補償回路5と、第1増幅素子1aの入力側と第2増幅素子2aの出力側との間に介在し、共振インピーダンスの変化でマイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザ4とを備え、周囲温度が低下するにつれて第2増幅素子2aの出力電力を低下させることにより第1増幅素子1aの出力を飽和出力電力領域で維持するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ装置や電子妨害装置(ECM装置)などの送信増幅部に用いる半導体増幅装置に関し、特に高出力の多段の半導体増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にレーダ装置やECM装置に搭載する送信機では、複数段の増幅器を直列接続し、高い電力利得で安定した送信電力の振幅を得るため、最終段の増幅器をコンプレッション動作させるものが用いられる。これらの多段増幅器では最終段増幅器の耐圧が所望の出力電力によって生ずる電圧振幅に対して十分にマージンがあるとは言えず、低温時の出力増加、出力インピーダンスの変化、又はインパルス状の波形印加により、半導体素子の耐圧を超える電圧振幅が生じ、素子の破損を引き起す原因となる。このような状況を解決する方法としては、従来から整合回路の最適化による保護が行われてきた。
【0003】
特開平6−69731号公報図1(特許文献1参照)には、多段増幅器の前段に入力電力に対する利得、通過位相特性が後段と逆特性となる増幅器を用い、後段増幅器の振幅歪、位相歪を前段増幅器で補償する半導体増幅器が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−69731号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のものは、前段増幅器のバイアス条件を変化させたり、デュアルゲートFETを用いた可変利得増幅器とすることなどにより、位相歪や振幅歪を低減するものであるが、これらの増幅回路は基本的に飽和出力電力よりも十分に低い動作点での歪特性の改善の回路構成となっており、飽和領域での安定動作あるいは素子保護という観点からの動作上の考慮がなされたものではない。
【0006】
この発明は上記のような課題を解消するためになされたもので、飽和領域で動作する増幅部の低温時の出力増加や出力インピーダンスの変化による消費電力や高調波レベルの大幅な変動、又は突発して発生するインパルス状の波形混入による半導体素子の破損を抑制する多段構成の半導体増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る半導体増幅装置は、高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、この第2半導体増幅素子に接続され、感温素子の抵抗値変化で前記第2半導体増幅素子の出力電力を変化させる温度補償回路と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザとを備え、周囲温度が低下するにつれて前記第2半導体増幅素子の出力電力を低下させることにより前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持するものである。
【0008】
請求項2に係る半導体増幅装置は、高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、この第2半導体増幅素子に接続され、第1感温素子の抵抗値変化で前記第2半導体増幅素子の出力電力を変化させる第1温度補償回路と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有し、共振インピーダンスを形成する線路に直列接続した可変抵抗減衰器を付加した振幅イコライザと、第2感温素子の抵抗値変化で前記可変抵抗減衰器の抵抗値を変化させる第2温度補償回路とを備え、周囲温度が低下するにつれて、前記第2半導体増幅素子の出力電力を低下させると共に前記可変抵抗減衰器の抵抗値を下げて前記第2半導体増幅素子の出力電力の一部を前記振幅イコライザ側に分岐させることにより前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持するものである。
【0009】
請求項3に係る半導体増幅装置は、高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、表面にストリップ線路とこのストリップ線路に沿って感温抵抗体膜を介して両側から前記ストリップ線路を挟むように形成した接地パターンを含むコプレナー線路を有すると共に前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザとを備え、周囲温度が低下するにつれて前記感温抵抗体膜の抵抗値を変化させて前記振幅イコライザの最大減衰量を増加し前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1による半導体増幅装置によれば、飽和出力電力で動作する終段増幅部の出力は振幅イコライザで帯域周波数内において平坦化され、周囲温度が低下するにつれて温度補償回路で前置増幅部の出力を低下させるので、終段増幅部は常に一定の出力飽和レベルで作動することになり過剰電力による消費電力の増加や半導体増幅素子の耐電力オーバーによる半導体増幅素子の破損や高調波の発生などの不都合を防止できる効果がある。
【0011】
請求項2による半導体増幅装置によれば、飽和出力電力で動作する終段増幅部の出力は振幅イコライザで帯域周波数内において平坦化され、周囲温度が低下するにつれ第1温度補償回路で前置増幅部の出力を低下させると共に第2温度補償回路で制御される振幅イコライザ側の可変抵抗減衰器の抵抗値変化で共振インピーダンスを形成する線路に一部の電力を分岐させるので終段増幅部は常に一定の出力飽和レベルで作動することになり過剰電力による消費電力の増加や半導体増幅素子の耐電力オーバーによる不都合を2重に精度良く防止できる効果がある。
【0012】
請求項3による半導体増幅装置によれば、飽和出力電力で動作する終段増幅部の出力は振幅イコライザで帯域周波数内において平坦化され、周囲温度が低下するにつれて振幅イコライザ側の感温抵抗体膜の抵抗値変化で振幅イコライザの最大減衰量を増加させるので、終段増幅部は常に一定の出力飽和レベルで作動することになり、特別な温度補償回路を付加せずとも過剰電力による消費電力の増加や半導体増幅素子の耐電力オーバーによる不都合を防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る半導体増幅装置ついて説明する。図1は、実施の形態1による半導体増幅装置のブロック構成図である。図1において、1は最終段増幅部(終段増幅部)であり、1aはMOS型FETやバイポーラ型半導体素子などを用いた第1増幅素子(第1半導体増幅素子)、1bは第1増幅素子1aの入力側の入力整合回路、1cは第1増幅素子1aの出力側の出力整合回路である。2は最終段増幅部1に前置された第1前段増幅部(前置増幅部)であり、2aはFETなどを用いた第2増幅素子(第2半導体増幅素子)、2bは第2増幅素子2aの入力側の入力整合回路、2cは第2増幅素子2aの出力側の出力整合回路である。3は第1前段増幅部2に前置された第2前段増幅部であり、3aはFETなどを用いた第3増幅素子(第3半導体増幅素子)、3bは第3増幅素子3aの入力側の入力整合回路、3cは第3増幅素子3aの出力側の出力整合回路である。
【0014】
4は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間に介在し、第1前段増幅部2からの高周波電力振幅を帯域幅内で抑圧する振幅イコライザ、5は第1前段増幅部2の第2増幅素子2aの電力増幅量を制御する第1温度補償回路(温度補償回路)、7は最終段増幅部1の出力端子であり、送信アンテナ素子などに接続される。8は第2前段増幅部3のマイクロ波電力信号の入力端子である。
【0015】
図2は、実施の形態1による半導体増幅装置の振幅イコライザの回路図であり、図2(a)は回路図、図2(b)は等価回路である。図2において、11は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間にある振幅イコライザ4の伝送線路(主線路)、12は主線路11の近傍に対向して設置したコプレナー線路であり、基材表面にストリップ線路、抵抗体膜、接地パターン及びビアホールなどで回路構成され、12aはストリップ線路、12bはストリップ線路12に沿って外側にパターン形成した抵抗体膜、12cは抵抗体膜12bを介して両側からストリップ線路12aを挟むように形成した接地パターン、12dは接地パターン12cに設けられ基材裏面パターンと接続したビアホールである。13は単一又は複数の異なる特性インピーダンスの分布定数線路を繋ぎ合わせた線路で構成されたコプレナー線路12の基材裏面のパターンを含むストリップ線路共振器である。
【0016】
次に振幅イコライザ4の動作について説明する。図2において、主線路11側からストリップ線路共振器13とコプレナー線路12側を見たインピーダンス(Zt)は、ストリップ線路共振器13の入力インピーダンス(Zr)とコプレナー線路12の入力インピーダンス(Zc)との直列接続と見なすことができる。
【0017】
例えば1〜3GHzのマイクロ波帯で数百MHzの所要周波数帯域を形成するストリップ線路共振器13はマイクロ波の波長の電気長が1/4波長や3/4波長など、1/4波長の奇数倍の電気長になる周波数において共振し、そのとき主線路11側の開放端での入力インピーダンスは無限大、すなわち、開放端の一点では開放状態となり、電流定在波の節となる。このとき、この分岐線路に高周波電流は流れ込まないことになる。このため、これに直列に接続されているコプレナー線路12にも高周波電流は流れない。したがって主線路11には並列に何も接続されていない状態と同様の状態となり、入力された信号は減衰することなく出力側に現れる。
【0018】
上記の共振周波数以外の周波数ではストリップ線路共振器13の開放端での入力インピーダンスは有限となり高周波電流が流れ込む。したがって、これに直列に接続されているコプレナー線路12にも高周波電流が流れることになる。このため、主線路11には並列に、コプレナー線路12の入力インピーダンスの実部に相当した抵抗が並列接続された状態となり、入力された信号は減衰して出力側に現れる。図3は、通過帯域(帯域周波数)における振幅イコライザ4の通過振幅(振幅)を示したものである。この減衰の周波数特性の一例では各共振周波数f1、f2から離れるに従い減衰が大きくなり、両共振周波数の中心付近で減衰が最大となる特性となる。
【0019】
図4は、最終段増幅部1の増幅素子1aの単独利得(通過振幅)の周波数特性を示したものである。一般にマイクロ波回路に組み込まれたGaAs半導体などの高出力増幅素子は図4に示すように、所要周波数帯域の下限周波数f1と上限周波数f2との両端で利得が極小で、中心周波数近傍で最も利得が大きくなる特性を有する。振幅イコライザ4のストリップ線路共振器13のN次共振周波数をf1、N+1次の共振周波数をf2に設定するようにストリップ線路共振器13の特性インピーダンスを調整すると、増幅素子と振幅イコライザ4とを直列に接続することにより総合利得周波数特性は図5に示すように平坦化できる。また、振幅イコライザ4の減衰量の最大値は、コプレナー線路12の抵抗体膜12bの材料定数、ストリップ線路12aのパターン幅、ストリップ線路12aと接地パターン12cとの間隔により設定できる。
【0020】
図6は、実施の形態1による半導体増幅装置の第1温度補償回路5の回路図である。図6において、20は直流電源、21は市販の負温度特性サーミスタ(感温素子)、22は負温度特性サーミスタ21の抵抗値に基づき第2増幅素子2aのゲート端子にかかる入力電圧をVg制御信号として変化させるアナログの可変減衰器(ATT)、23はVg制御信号による第1温度補償回路5と第2増幅素子2aとのインピーダンス調整用の伝送線路、24は市販の負温度特性サーミスタ(感温素子)、25は負温度サーミスタ24の抵抗値に基づき第2増幅素子2aのドレイン端子にかかる出力電圧をVd制御信号として変化させるアナログの可変減衰器(ATT)、26はVd制御信号による第1温度補償回路5と第2増幅素子2aとのインピーダンス調整用の伝送線路である。27は可変減衰器22、25の起動の有無を選択する可変減衰器ON/OFF選択部であり、必要な場合に外部の制御信号により作動する。図中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0021】
次に第1温度補償回路5の動作について説明する。図6において負温度特性サーミスタ21、24は第1温度補償回路5周辺の環境温度(周囲温度)の変化により、温度上昇時は常温(25℃)抵抗値とB定数で定まる値で漸増して抵抗値が上昇する。負温度特性サーミスタ21に接続される可変減衰器22は周囲温度の変化により第2増幅素子2aのゲート電位を増減させる。同様に負温度特性サーミスタ24に接続される可変減衰器25は周囲温度の変化により第2増幅素子2aのドレイン電位を増減させる。本実施の形態1では、いずれも温度上昇時は第2増幅素子2aの出力が上昇するように設定され、温度下降時は第2増幅素子2aの出力が下降(低下)するように設定される。したがってこの機能を満足すれば、負温度特性サーミスタ21、24は他の温度特性を有する感温素子を用いても良い。
【0022】
次に周囲温度の低下時に第2増幅素子2aの出力を低下させる別の手段について図7を用いて説明する。図7は、実施の形態1による半導体増幅器装置の別の実施例としての温度補償回路の回路図である。図7において、28は負温度特性サーミスタ(感温素子)、29は負温度特性サーミスタ28のアナログ信号をデジタル変換するデジタル変換器、30はデジタル変換器29のデジタル信号により主線路11に直接挿入した1dB毎に減衰量を可変するプログラマブル型の可変抵抗減衰器であり、この場合にも周囲温度の低下時は第2増幅素子2aの出力も低下するように設定される。
【0023】
以上から第1前段増幅部2の出力側に設けられた振幅イコライザ4の帯域周波数における凹状通過振幅特性と最終段増幅部1の帯域周波数における凸状通過振幅特性との相殺で最終段増幅部1では飽和出力電力時に帯域周波数全域に亘り平坦な総合利得を得ることができる。
【0024】
次に最終段増幅部1の温度特性と飽和出力電力との関係について図8を用いて説明する。図8は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間に振幅イコライザ4が接続された状態の各段増幅部の入出力特性を示したものである。図の上部に示す二本のグラフは最終段増幅部1の常温時の入出力特性(実線)および低温時の入出力特性(破線)の一例である。また、図8の下部に示す二本のグラフは第1前段増幅部2と振幅イコライザ4とが接続され、第1前段増幅部2の第2増幅素子2aに第1温度補償回路5が接続された状態での第1前段増幅部2の常温時の入出力特性(一点鎖線)および低温時の入出力特性(破線)の一例である。
【0025】
第1前段増幅部2と振幅イコライザ4とが接続された状態の入出力特性において、Aは常温での飽和出力電力領域を示す。最終段増幅部1に入力され、増幅された最終段増幅部1の出力電力をAで示す飽和出力電力(所望電力)とすると、第1前段増幅部2の入力電力が変化した場合でも、出力電力は略Aのまま保たれるため、最終段増幅部1の入力電力は一定となり、帯域周波数における通過利得の変動が抑制される。
【0026】
一方、低温時には最終段増幅部1の利得および飽和出力電力が増加することにより、最終段増幅部1の入力電力が一定のままである場合には、最終段増幅部1の出力電力は増加する。
【0027】
そこで、第1前段増幅部2に第1温度補償回路5を設け、第1前段増幅部2と振幅イコライザ4とが接続された状態の入出力特性において、低温時にはBで飽和するようにすると最終段増幅部1の入力電力もBとなり、低温時の最終段増幅部1の出力電力は、ほぼ常温での出力電力と等しい所望の電力とすることができる。このような温度補償回路は、図6に示したように第1前段増幅部2のドレイン電圧を低下させることで低温時の飽和出力電力特性を維持する。又は図7に示したように第1前段増幅部2の第2増幅素子2aの出力側に可変減衰器30を設けて実施しても良い。
【0028】
以上から飽和出力電力で動作する最終段増幅部1の出力は振幅イコライザ4で帯域周波数内において平坦化され、周囲温度が低下するにつれ第1温度補償回路5で第1前段増幅部2の出力を低下させるので、最終段増幅部1は常に一定の出力飽和レベルで作動することになり過剰電力による消費電力の増加や半導体増幅素子の耐電力オーバーによる不都合を防止できる効果がある。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態1では振幅イコライザと第1温度補償回路とを用いて一定の出力飽和レベルで作動するようにしたが、実施の形態2では振幅イコライザに温度補償回路を付加接続した場合について説明する。図9は、この発明の実施の形態2による半導体増幅装置のブロック構成図である。図9において、40は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間に介在し、第1前段増幅部2からの高周波電力振幅を帯域幅内で抑圧する振幅イコライザ、50は振幅イコライザ40に接続した第2温度補償回路である。図中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0030】
図10は振幅イコライザ40と第2温度補償回路50との関係を説明する図である。図10において、第2温度補償回路50の負温度特性サーミスタ(感温素子)28の抵抗値変化をデジタル変換器29で変換したデジタル信号を振幅イコライザ40の共振インピーダンスを形成する線路の一部に直列接続にした可変抵抗減衰器30の制御入力端子に接続する。可変抵抗減衰器30は、1dB毎に減衰量を可変するプログラマブル型の可変減衰器であり、主線路11と振幅イコライザ40とを接続するワイヤなどの電気接続手段近傍の振幅イコライザ40側に設けられる。図中、図7と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0031】
可変抵抗減衰器30は、周囲温度が常温(25℃など)から低温側に変化するときは共振インピーダンスを形成する線路のリアルインピーダンスだけ低下するようにすることで第2増幅素子2aの出力整合回路2cの電力を一部だけ振幅イコライザ40側に漏洩させることにより行われる。
【0032】
すなわち、常温などにおける帯域中心周波数に減衰量の最大があるように共振インピーダンスの負荷Q(品質係数)をあらかじめ設定し、低温時には振幅イコライザ40側にワイヤを介して出力電力の一部を漏洩させる。
なお、感温素子28は負特性サーミスタでなくとも温度による抵抗値の変化を有するものであれば正特性サーミスタを用いて回路構成しても良い。
【0033】
以上からマイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性となる共振インピーダンスを形成する線路に直列接続した可変抵抗減衰器を付加した振幅イコライザを用いて、実施の形態1で説明した第1温度補償回路5に加えて振幅イコライザ40に接続した第2温度補償回路50を作動させることにより、周囲温度が低下するにつれて、第2増幅素子2aの出力電力を低下させると共に可変抵抗減衰器30の抵抗値を下げて第2増幅素子2aの出力電力の一部を振幅イコライザ40側にエネルギーを分岐放散させることにより第1増幅素子1aの出力を飽和出力電力領域で維持することが可能である。
【0034】
実施の形態3.
実施の形態2では振幅イコライザ40に第2温度補償回路50を付加接続した場合について説明したが、実施の形態3では、振幅イコライザに温度補償機能を設けたものについて説明する。図11は、この発明の実施の形態3による半導体増幅装置のブロック構成図である。図11において、100は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間に介在し、第1前段増幅部2からの高周波電力振幅を帯域幅内で抑圧する振幅イコライザである。図中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0035】
図12は主線路11に振幅イコライザ100を設置した振幅イコライザの平面図である。図12において、120bは遷移金属酸化物を主体とし温度係数が(1,000〜10,000/℃程度の厚膜感温材料などを基材に印刷した感温抵抗体膜である。なお、感温抵抗体膜120bを除き振幅イコライザ100の他の構成は実施の形態1に示したものと同一である。すなわち、主線路11の近傍に対向して設置したコプレナー線路12は基材表面にストリップ線路12a、感温抵抗体膜120b、接地パターン12c及びビアホール12dなどで回路構成される。また、実施の形態1同様にストリップ線路共振器13は、単一又は複数の異なる特性インピーダンスの分布定数線路を繋ぎ合わせた線路で構成される。
図13は、図12に示した振幅イコライザ100のA−A断面図である。図中、図12と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0036】
次に動作について説明する。図14は実施の形態3による半導体増幅装置の振幅イコライザの等価回路図である。実施の形態2では、共振インピーダンスを形成する線路に可変抵抗減衰器30を設置したが、図12、図13に示すコプレナー線路12の感温抵抗体膜120bで自動的にコプレナー線路12の線路インピーダンスを変化させるようにする。
【0037】
すなわち、常温などにおける帯域中心周波数に一定量の減衰量があるように共振インピーダンスをあらかじめ設定し、低温時には帯域中心周波数付近に最大の減衰量があるように感温抵抗体膜120の抵抗値を変化させる。したがって第2増幅素子2aの出力は振幅イコライザ100側に一部漏洩する。
【0038】
図15は、最終段増幅部1の通過振幅と帯域周波数との関係を説明する図である。図15において、最終段増幅部1は低温時には帯域中心周波数領域で利得が大幅に上昇するが、振幅イコライザ100を用いて低温時に振幅イコライザ100側に帯域中心周波数における減衰量の最大値を設定することにより、帯域周波数に全般に亘り平坦な周波数特性の最終段増幅部の総合利得を得ることができる。
【0039】
以上からマイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性となる共振インピーダンスを形成する線路のコプレナー線路に感温抵抗体膜120bを設けた振幅イコライザを用いて、周囲温度が低下するにつれて、感温抵抗体膜120bの抵抗値を変化させて振幅イコライザ100の帯域中心周波数領域の減衰量を増加させることにより第1増幅素子1aの出力を飽和出力電力領域で維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置のブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の振幅イコライザの回路図であり、図2(a)は回路図、図2(b)は等価回路である。
【図3】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の振幅イコライザの通過振幅を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の終段増幅部増幅素子単独の利得周波数特性である。
【図5】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の終段増幅部増幅素子の総合利得周波数特性である。
【図6】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の温度補償回路の回路図である。
【図7】この発明の実施の形態1による半導体増幅器装置の別の実施例としての温度補償回路の回路図である。
【図8】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の終段増幅部増幅素子の温度特性と飽和出力電力との関係について説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態2による半導体増幅装置のブロック構成図である。
【図10】この発明の実施の形態2による半導体増幅装置の振幅イコライザと温度補償回路との関係を説明する図である
【図11】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置のブロック構成図である。
【図12】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置の振幅イコライザの平面図である。
【図13】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置の振幅イコライザの断面図である。
【図14】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置の振幅イコライザの等価回路図である
【図15】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置の終段増幅部の通過振幅と帯域周波数との関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・最終段増幅部(終段増幅部) 1a・・第1増幅素子(第1半導体増幅素子)
1b・・入力整合回路 1c・・出力整合回路
2・・前置増幅部(第1前段増幅部) 2a・・第2増幅素子(第2半導体増幅素子)
2b・・入力整合回路 2c・・出力整合回路
3・・前置増幅部(第2前段増幅部) 3a・・第3増幅素子(第3半導体増幅素子)
3b・・入力整合回路 3c・・出力整合回路
4・・振幅イコライザ 5・・温度補償回路(第1温度補償回路)
7・・出力端子 8・・入力端子 11・・主線路(伝送線路)
12・・コプレナー線路 12a・・ストリップ線路 12b・・抵抗体膜
12c・・接地パターン 12d・・ビアホール
120b・・感温抵抗体膜(感温素子)
13・・ストリップ線路共振器(ストリップ共振器)
20・・直流電源 21・・負温度特性サーミスタ(感温素子) 22・・可変減衰器
23・・伝送線路 24・・負温度特性サーミスタ(感温素子) 25・・可変減衰器
26・・伝送線路 27・・可変減衰器ON/OFF選択部
28・・負温度特性サーミスタ(感温素子) 29・・デジタル変換器
30・・可変抵抗減衰器 40・・振幅イコライザ
50・・温度補償回路(第2温度補償回路) 100・・振幅イコライザ
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーダ装置や電子妨害装置(ECM装置)などの送信増幅部に用いる半導体増幅装置に関し、特に高出力の多段の半導体増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にレーダ装置やECM装置に搭載する送信機では、複数段の増幅器を直列接続し、高い電力利得で安定した送信電力の振幅を得るため、最終段の増幅器をコンプレッション動作させるものが用いられる。これらの多段増幅器では最終段増幅器の耐圧が所望の出力電力によって生ずる電圧振幅に対して十分にマージンがあるとは言えず、低温時の出力増加、出力インピーダンスの変化、又はインパルス状の波形印加により、半導体素子の耐圧を超える電圧振幅が生じ、素子の破損を引き起す原因となる。このような状況を解決する方法としては、従来から整合回路の最適化による保護が行われてきた。
【0003】
特開平6−69731号公報図1(特許文献1参照)には、多段増幅器の前段に入力電力に対する利得、通過位相特性が後段と逆特性となる増幅器を用い、後段増幅器の振幅歪、位相歪を前段増幅器で補償する半導体増幅器が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−69731号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のものは、前段増幅器のバイアス条件を変化させたり、デュアルゲートFETを用いた可変利得増幅器とすることなどにより、位相歪や振幅歪を低減するものであるが、これらの増幅回路は基本的に飽和出力電力よりも十分に低い動作点での歪特性の改善の回路構成となっており、飽和領域での安定動作あるいは素子保護という観点からの動作上の考慮がなされたものではない。
【0006】
この発明は上記のような課題を解消するためになされたもので、飽和領域で動作する増幅部の低温時の出力増加や出力インピーダンスの変化による消費電力や高調波レベルの大幅な変動、又は突発して発生するインパルス状の波形混入による半導体素子の破損を抑制する多段構成の半導体増幅装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る半導体増幅装置は、高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、この第2半導体増幅素子に接続され、感温素子の抵抗値変化で前記第2半導体増幅素子の出力電力を変化させる温度補償回路と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザとを備え、周囲温度が低下するにつれて前記第2半導体増幅素子の出力電力を低下させることにより前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持するものである。
【0008】
請求項2に係る半導体増幅装置は、高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、この第2半導体増幅素子に接続され、第1感温素子の抵抗値変化で前記第2半導体増幅素子の出力電力を変化させる第1温度補償回路と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有し、共振インピーダンスを形成する線路に直列接続した可変抵抗減衰器を付加した振幅イコライザと、第2感温素子の抵抗値変化で前記可変抵抗減衰器の抵抗値を変化させる第2温度補償回路とを備え、周囲温度が低下するにつれて、前記第2半導体増幅素子の出力電力を低下させると共に前記可変抵抗減衰器の抵抗値を下げて前記第2半導体増幅素子の出力電力の一部を前記振幅イコライザ側に分岐させることにより前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持するものである。
【0009】
請求項3に係る半導体増幅装置は、高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、表面にストリップ線路とこのストリップ線路に沿って感温抵抗体膜を介して両側から前記ストリップ線路を挟むように形成した接地パターンを含むコプレナー線路を有すると共に前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザとを備え、周囲温度が低下するにつれて前記感温抵抗体膜の抵抗値を変化させて前記振幅イコライザの最大減衰量を増加し前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1による半導体増幅装置によれば、飽和出力電力で動作する終段増幅部の出力は振幅イコライザで帯域周波数内において平坦化され、周囲温度が低下するにつれて温度補償回路で前置増幅部の出力を低下させるので、終段増幅部は常に一定の出力飽和レベルで作動することになり過剰電力による消費電力の増加や半導体増幅素子の耐電力オーバーによる半導体増幅素子の破損や高調波の発生などの不都合を防止できる効果がある。
【0011】
請求項2による半導体増幅装置によれば、飽和出力電力で動作する終段増幅部の出力は振幅イコライザで帯域周波数内において平坦化され、周囲温度が低下するにつれ第1温度補償回路で前置増幅部の出力を低下させると共に第2温度補償回路で制御される振幅イコライザ側の可変抵抗減衰器の抵抗値変化で共振インピーダンスを形成する線路に一部の電力を分岐させるので終段増幅部は常に一定の出力飽和レベルで作動することになり過剰電力による消費電力の増加や半導体増幅素子の耐電力オーバーによる不都合を2重に精度良く防止できる効果がある。
【0012】
請求項3による半導体増幅装置によれば、飽和出力電力で動作する終段増幅部の出力は振幅イコライザで帯域周波数内において平坦化され、周囲温度が低下するにつれて振幅イコライザ側の感温抵抗体膜の抵抗値変化で振幅イコライザの最大減衰量を増加させるので、終段増幅部は常に一定の出力飽和レベルで作動することになり、特別な温度補償回路を付加せずとも過剰電力による消費電力の増加や半導体増幅素子の耐電力オーバーによる不都合を防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る半導体増幅装置ついて説明する。図1は、実施の形態1による半導体増幅装置のブロック構成図である。図1において、1は最終段増幅部(終段増幅部)であり、1aはMOS型FETやバイポーラ型半導体素子などを用いた第1増幅素子(第1半導体増幅素子)、1bは第1増幅素子1aの入力側の入力整合回路、1cは第1増幅素子1aの出力側の出力整合回路である。2は最終段増幅部1に前置された第1前段増幅部(前置増幅部)であり、2aはFETなどを用いた第2増幅素子(第2半導体増幅素子)、2bは第2増幅素子2aの入力側の入力整合回路、2cは第2増幅素子2aの出力側の出力整合回路である。3は第1前段増幅部2に前置された第2前段増幅部であり、3aはFETなどを用いた第3増幅素子(第3半導体増幅素子)、3bは第3増幅素子3aの入力側の入力整合回路、3cは第3増幅素子3aの出力側の出力整合回路である。
【0014】
4は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間に介在し、第1前段増幅部2からの高周波電力振幅を帯域幅内で抑圧する振幅イコライザ、5は第1前段増幅部2の第2増幅素子2aの電力増幅量を制御する第1温度補償回路(温度補償回路)、7は最終段増幅部1の出力端子であり、送信アンテナ素子などに接続される。8は第2前段増幅部3のマイクロ波電力信号の入力端子である。
【0015】
図2は、実施の形態1による半導体増幅装置の振幅イコライザの回路図であり、図2(a)は回路図、図2(b)は等価回路である。図2において、11は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間にある振幅イコライザ4の伝送線路(主線路)、12は主線路11の近傍に対向して設置したコプレナー線路であり、基材表面にストリップ線路、抵抗体膜、接地パターン及びビアホールなどで回路構成され、12aはストリップ線路、12bはストリップ線路12に沿って外側にパターン形成した抵抗体膜、12cは抵抗体膜12bを介して両側からストリップ線路12aを挟むように形成した接地パターン、12dは接地パターン12cに設けられ基材裏面パターンと接続したビアホールである。13は単一又は複数の異なる特性インピーダンスの分布定数線路を繋ぎ合わせた線路で構成されたコプレナー線路12の基材裏面のパターンを含むストリップ線路共振器である。
【0016】
次に振幅イコライザ4の動作について説明する。図2において、主線路11側からストリップ線路共振器13とコプレナー線路12側を見たインピーダンス(Zt)は、ストリップ線路共振器13の入力インピーダンス(Zr)とコプレナー線路12の入力インピーダンス(Zc)との直列接続と見なすことができる。
【0017】
例えば1〜3GHzのマイクロ波帯で数百MHzの所要周波数帯域を形成するストリップ線路共振器13はマイクロ波の波長の電気長が1/4波長や3/4波長など、1/4波長の奇数倍の電気長になる周波数において共振し、そのとき主線路11側の開放端での入力インピーダンスは無限大、すなわち、開放端の一点では開放状態となり、電流定在波の節となる。このとき、この分岐線路に高周波電流は流れ込まないことになる。このため、これに直列に接続されているコプレナー線路12にも高周波電流は流れない。したがって主線路11には並列に何も接続されていない状態と同様の状態となり、入力された信号は減衰することなく出力側に現れる。
【0018】
上記の共振周波数以外の周波数ではストリップ線路共振器13の開放端での入力インピーダンスは有限となり高周波電流が流れ込む。したがって、これに直列に接続されているコプレナー線路12にも高周波電流が流れることになる。このため、主線路11には並列に、コプレナー線路12の入力インピーダンスの実部に相当した抵抗が並列接続された状態となり、入力された信号は減衰して出力側に現れる。図3は、通過帯域(帯域周波数)における振幅イコライザ4の通過振幅(振幅)を示したものである。この減衰の周波数特性の一例では各共振周波数f1、f2から離れるに従い減衰が大きくなり、両共振周波数の中心付近で減衰が最大となる特性となる。
【0019】
図4は、最終段増幅部1の増幅素子1aの単独利得(通過振幅)の周波数特性を示したものである。一般にマイクロ波回路に組み込まれたGaAs半導体などの高出力増幅素子は図4に示すように、所要周波数帯域の下限周波数f1と上限周波数f2との両端で利得が極小で、中心周波数近傍で最も利得が大きくなる特性を有する。振幅イコライザ4のストリップ線路共振器13のN次共振周波数をf1、N+1次の共振周波数をf2に設定するようにストリップ線路共振器13の特性インピーダンスを調整すると、増幅素子と振幅イコライザ4とを直列に接続することにより総合利得周波数特性は図5に示すように平坦化できる。また、振幅イコライザ4の減衰量の最大値は、コプレナー線路12の抵抗体膜12bの材料定数、ストリップ線路12aのパターン幅、ストリップ線路12aと接地パターン12cとの間隔により設定できる。
【0020】
図6は、実施の形態1による半導体増幅装置の第1温度補償回路5の回路図である。図6において、20は直流電源、21は市販の負温度特性サーミスタ(感温素子)、22は負温度特性サーミスタ21の抵抗値に基づき第2増幅素子2aのゲート端子にかかる入力電圧をVg制御信号として変化させるアナログの可変減衰器(ATT)、23はVg制御信号による第1温度補償回路5と第2増幅素子2aとのインピーダンス調整用の伝送線路、24は市販の負温度特性サーミスタ(感温素子)、25は負温度サーミスタ24の抵抗値に基づき第2増幅素子2aのドレイン端子にかかる出力電圧をVd制御信号として変化させるアナログの可変減衰器(ATT)、26はVd制御信号による第1温度補償回路5と第2増幅素子2aとのインピーダンス調整用の伝送線路である。27は可変減衰器22、25の起動の有無を選択する可変減衰器ON/OFF選択部であり、必要な場合に外部の制御信号により作動する。図中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0021】
次に第1温度補償回路5の動作について説明する。図6において負温度特性サーミスタ21、24は第1温度補償回路5周辺の環境温度(周囲温度)の変化により、温度上昇時は常温(25℃)抵抗値とB定数で定まる値で漸増して抵抗値が上昇する。負温度特性サーミスタ21に接続される可変減衰器22は周囲温度の変化により第2増幅素子2aのゲート電位を増減させる。同様に負温度特性サーミスタ24に接続される可変減衰器25は周囲温度の変化により第2増幅素子2aのドレイン電位を増減させる。本実施の形態1では、いずれも温度上昇時は第2増幅素子2aの出力が上昇するように設定され、温度下降時は第2増幅素子2aの出力が下降(低下)するように設定される。したがってこの機能を満足すれば、負温度特性サーミスタ21、24は他の温度特性を有する感温素子を用いても良い。
【0022】
次に周囲温度の低下時に第2増幅素子2aの出力を低下させる別の手段について図7を用いて説明する。図7は、実施の形態1による半導体増幅器装置の別の実施例としての温度補償回路の回路図である。図7において、28は負温度特性サーミスタ(感温素子)、29は負温度特性サーミスタ28のアナログ信号をデジタル変換するデジタル変換器、30はデジタル変換器29のデジタル信号により主線路11に直接挿入した1dB毎に減衰量を可変するプログラマブル型の可変抵抗減衰器であり、この場合にも周囲温度の低下時は第2増幅素子2aの出力も低下するように設定される。
【0023】
以上から第1前段増幅部2の出力側に設けられた振幅イコライザ4の帯域周波数における凹状通過振幅特性と最終段増幅部1の帯域周波数における凸状通過振幅特性との相殺で最終段増幅部1では飽和出力電力時に帯域周波数全域に亘り平坦な総合利得を得ることができる。
【0024】
次に最終段増幅部1の温度特性と飽和出力電力との関係について図8を用いて説明する。図8は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間に振幅イコライザ4が接続された状態の各段増幅部の入出力特性を示したものである。図の上部に示す二本のグラフは最終段増幅部1の常温時の入出力特性(実線)および低温時の入出力特性(破線)の一例である。また、図8の下部に示す二本のグラフは第1前段増幅部2と振幅イコライザ4とが接続され、第1前段増幅部2の第2増幅素子2aに第1温度補償回路5が接続された状態での第1前段増幅部2の常温時の入出力特性(一点鎖線)および低温時の入出力特性(破線)の一例である。
【0025】
第1前段増幅部2と振幅イコライザ4とが接続された状態の入出力特性において、Aは常温での飽和出力電力領域を示す。最終段増幅部1に入力され、増幅された最終段増幅部1の出力電力をAで示す飽和出力電力(所望電力)とすると、第1前段増幅部2の入力電力が変化した場合でも、出力電力は略Aのまま保たれるため、最終段増幅部1の入力電力は一定となり、帯域周波数における通過利得の変動が抑制される。
【0026】
一方、低温時には最終段増幅部1の利得および飽和出力電力が増加することにより、最終段増幅部1の入力電力が一定のままである場合には、最終段増幅部1の出力電力は増加する。
【0027】
そこで、第1前段増幅部2に第1温度補償回路5を設け、第1前段増幅部2と振幅イコライザ4とが接続された状態の入出力特性において、低温時にはBで飽和するようにすると最終段増幅部1の入力電力もBとなり、低温時の最終段増幅部1の出力電力は、ほぼ常温での出力電力と等しい所望の電力とすることができる。このような温度補償回路は、図6に示したように第1前段増幅部2のドレイン電圧を低下させることで低温時の飽和出力電力特性を維持する。又は図7に示したように第1前段増幅部2の第2増幅素子2aの出力側に可変減衰器30を設けて実施しても良い。
【0028】
以上から飽和出力電力で動作する最終段増幅部1の出力は振幅イコライザ4で帯域周波数内において平坦化され、周囲温度が低下するにつれ第1温度補償回路5で第1前段増幅部2の出力を低下させるので、最終段増幅部1は常に一定の出力飽和レベルで作動することになり過剰電力による消費電力の増加や半導体増幅素子の耐電力オーバーによる不都合を防止できる効果がある。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態1では振幅イコライザと第1温度補償回路とを用いて一定の出力飽和レベルで作動するようにしたが、実施の形態2では振幅イコライザに温度補償回路を付加接続した場合について説明する。図9は、この発明の実施の形態2による半導体増幅装置のブロック構成図である。図9において、40は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間に介在し、第1前段増幅部2からの高周波電力振幅を帯域幅内で抑圧する振幅イコライザ、50は振幅イコライザ40に接続した第2温度補償回路である。図中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0030】
図10は振幅イコライザ40と第2温度補償回路50との関係を説明する図である。図10において、第2温度補償回路50の負温度特性サーミスタ(感温素子)28の抵抗値変化をデジタル変換器29で変換したデジタル信号を振幅イコライザ40の共振インピーダンスを形成する線路の一部に直列接続にした可変抵抗減衰器30の制御入力端子に接続する。可変抵抗減衰器30は、1dB毎に減衰量を可変するプログラマブル型の可変減衰器であり、主線路11と振幅イコライザ40とを接続するワイヤなどの電気接続手段近傍の振幅イコライザ40側に設けられる。図中、図7と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0031】
可変抵抗減衰器30は、周囲温度が常温(25℃など)から低温側に変化するときは共振インピーダンスを形成する線路のリアルインピーダンスだけ低下するようにすることで第2増幅素子2aの出力整合回路2cの電力を一部だけ振幅イコライザ40側に漏洩させることにより行われる。
【0032】
すなわち、常温などにおける帯域中心周波数に減衰量の最大があるように共振インピーダンスの負荷Q(品質係数)をあらかじめ設定し、低温時には振幅イコライザ40側にワイヤを介して出力電力の一部を漏洩させる。
なお、感温素子28は負特性サーミスタでなくとも温度による抵抗値の変化を有するものであれば正特性サーミスタを用いて回路構成しても良い。
【0033】
以上からマイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性となる共振インピーダンスを形成する線路に直列接続した可変抵抗減衰器を付加した振幅イコライザを用いて、実施の形態1で説明した第1温度補償回路5に加えて振幅イコライザ40に接続した第2温度補償回路50を作動させることにより、周囲温度が低下するにつれて、第2増幅素子2aの出力電力を低下させると共に可変抵抗減衰器30の抵抗値を下げて第2増幅素子2aの出力電力の一部を振幅イコライザ40側にエネルギーを分岐放散させることにより第1増幅素子1aの出力を飽和出力電力領域で維持することが可能である。
【0034】
実施の形態3.
実施の形態2では振幅イコライザ40に第2温度補償回路50を付加接続した場合について説明したが、実施の形態3では、振幅イコライザに温度補償機能を設けたものについて説明する。図11は、この発明の実施の形態3による半導体増幅装置のブロック構成図である。図11において、100は最終段増幅部1と第1前段増幅部2との間に介在し、第1前段増幅部2からの高周波電力振幅を帯域幅内で抑圧する振幅イコライザである。図中、図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0035】
図12は主線路11に振幅イコライザ100を設置した振幅イコライザの平面図である。図12において、120bは遷移金属酸化物を主体とし温度係数が(1,000〜10,000/℃程度の厚膜感温材料などを基材に印刷した感温抵抗体膜である。なお、感温抵抗体膜120bを除き振幅イコライザ100の他の構成は実施の形態1に示したものと同一である。すなわち、主線路11の近傍に対向して設置したコプレナー線路12は基材表面にストリップ線路12a、感温抵抗体膜120b、接地パターン12c及びビアホール12dなどで回路構成される。また、実施の形態1同様にストリップ線路共振器13は、単一又は複数の異なる特性インピーダンスの分布定数線路を繋ぎ合わせた線路で構成される。
図13は、図12に示した振幅イコライザ100のA−A断面図である。図中、図12と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0036】
次に動作について説明する。図14は実施の形態3による半導体増幅装置の振幅イコライザの等価回路図である。実施の形態2では、共振インピーダンスを形成する線路に可変抵抗減衰器30を設置したが、図12、図13に示すコプレナー線路12の感温抵抗体膜120bで自動的にコプレナー線路12の線路インピーダンスを変化させるようにする。
【0037】
すなわち、常温などにおける帯域中心周波数に一定量の減衰量があるように共振インピーダンスをあらかじめ設定し、低温時には帯域中心周波数付近に最大の減衰量があるように感温抵抗体膜120の抵抗値を変化させる。したがって第2増幅素子2aの出力は振幅イコライザ100側に一部漏洩する。
【0038】
図15は、最終段増幅部1の通過振幅と帯域周波数との関係を説明する図である。図15において、最終段増幅部1は低温時には帯域中心周波数領域で利得が大幅に上昇するが、振幅イコライザ100を用いて低温時に振幅イコライザ100側に帯域中心周波数における減衰量の最大値を設定することにより、帯域周波数に全般に亘り平坦な周波数特性の最終段増幅部の総合利得を得ることができる。
【0039】
以上からマイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性となる共振インピーダンスを形成する線路のコプレナー線路に感温抵抗体膜120bを設けた振幅イコライザを用いて、周囲温度が低下するにつれて、感温抵抗体膜120bの抵抗値を変化させて振幅イコライザ100の帯域中心周波数領域の減衰量を増加させることにより第1増幅素子1aの出力を飽和出力電力領域で維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置のブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の振幅イコライザの回路図であり、図2(a)は回路図、図2(b)は等価回路である。
【図3】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の振幅イコライザの通過振幅を説明する図である。
【図4】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の終段増幅部増幅素子単独の利得周波数特性である。
【図5】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の終段増幅部増幅素子の総合利得周波数特性である。
【図6】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の温度補償回路の回路図である。
【図7】この発明の実施の形態1による半導体増幅器装置の別の実施例としての温度補償回路の回路図である。
【図8】この発明の実施の形態1による半導体増幅装置の終段増幅部増幅素子の温度特性と飽和出力電力との関係について説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態2による半導体増幅装置のブロック構成図である。
【図10】この発明の実施の形態2による半導体増幅装置の振幅イコライザと温度補償回路との関係を説明する図である
【図11】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置のブロック構成図である。
【図12】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置の振幅イコライザの平面図である。
【図13】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置の振幅イコライザの断面図である。
【図14】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置の振幅イコライザの等価回路図である
【図15】この発明の実施の形態3による半導体増幅装置の終段増幅部の通過振幅と帯域周波数との関係を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1・・最終段増幅部(終段増幅部) 1a・・第1増幅素子(第1半導体増幅素子)
1b・・入力整合回路 1c・・出力整合回路
2・・前置増幅部(第1前段増幅部) 2a・・第2増幅素子(第2半導体増幅素子)
2b・・入力整合回路 2c・・出力整合回路
3・・前置増幅部(第2前段増幅部) 3a・・第3増幅素子(第3半導体増幅素子)
3b・・入力整合回路 3c・・出力整合回路
4・・振幅イコライザ 5・・温度補償回路(第1温度補償回路)
7・・出力端子 8・・入力端子 11・・主線路(伝送線路)
12・・コプレナー線路 12a・・ストリップ線路 12b・・抵抗体膜
12c・・接地パターン 12d・・ビアホール
120b・・感温抵抗体膜(感温素子)
13・・ストリップ線路共振器(ストリップ共振器)
20・・直流電源 21・・負温度特性サーミスタ(感温素子) 22・・可変減衰器
23・・伝送線路 24・・負温度特性サーミスタ(感温素子) 25・・可変減衰器
26・・伝送線路 27・・可変減衰器ON/OFF選択部
28・・負温度特性サーミスタ(感温素子) 29・・デジタル変換器
30・・可変抵抗減衰器 40・・振幅イコライザ
50・・温度補償回路(第2温度補償回路) 100・・振幅イコライザ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、この第2半導体増幅素子に接続され、感温素子の抵抗値変化で前記第2半導体増幅素子の出力電力を変化させる温度補償回路と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザとを備え、周囲温度が低下するにつれて前記第2半導体増幅素子の出力電力を低下させることにより前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持する半導体増幅装置。
【請求項2】
高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、この第2半導体増幅素子に接続され、第1感温素子の抵抗値変化で前記第2半導体増幅素子の出力電力を変化させる第1温度補償回路と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有し、共振インピーダンスを形成する線路に直列接続した可変抵抗減衰器を付加した振幅イコライザと、第2感温素子の抵抗値変化で前記可変抵抗減衰器の抵抗値を変化させる第2温度補償回路とを備え、周囲温度が低下するにつれて、前記第2半導体増幅素子の出力電力を低下させると共に前記可変抵抗減衰器の抵抗値を下げて前記第2半導体増幅素子の出力電力の一部を前記振幅イコライザ側に分岐させることにより前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持する半導体増幅装置。
【請求項3】
高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、表面にストリップ線路とこのストリップ線路に沿って感温抵抗体膜を介して両側から前記ストリップ線路を挟むように形成した接地パターンを含むコプレナー線路を有すると共に前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザとを備え、周囲温度が低下するにつれて前記感温抵抗体膜の抵抗値を変化させて前記振幅イコライザの最大減衰量を増加し前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持する半導体増幅装置。
【請求項1】
高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、この第2半導体増幅素子に接続され、感温素子の抵抗値変化で前記第2半導体増幅素子の出力電力を変化させる温度補償回路と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザとを備え、周囲温度が低下するにつれて前記第2半導体増幅素子の出力電力を低下させることにより前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持する半導体増幅装置。
【請求項2】
高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、この第2半導体増幅素子に接続され、第1感温素子の抵抗値変化で前記第2半導体増幅素子の出力電力を変化させる第1温度補償回路と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有し、共振インピーダンスを形成する線路に直列接続した可変抵抗減衰器を付加した振幅イコライザと、第2感温素子の抵抗値変化で前記可変抵抗減衰器の抵抗値を変化させる第2温度補償回路とを備え、周囲温度が低下するにつれて、前記第2半導体増幅素子の出力電力を低下させると共に前記可変抵抗減衰器の抵抗値を下げて前記第2半導体増幅素子の出力電力の一部を前記振幅イコライザ側に分岐させることにより前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持する半導体増幅装置。
【請求項3】
高周波電力を出力する終段増幅部に設けられ、マイクロ波帯域の電力を飽和出力電力で増幅する温度特性を有する第1半導体増幅素子と、この第1半導体増幅素子に前置した前置増幅部に設けられ、高周波電力を増幅する入出力整合回路を有する第2半導体増幅素子と、前記第1半導体増幅素子の入力側と前記第2半導体増幅素子の出力側との間に介在し、表面にストリップ線路とこのストリップ線路に沿って感温抵抗体膜を介して両側から前記ストリップ線路を挟むように形成した接地パターンを含むコプレナー線路を有すると共に前記マイクロ波帯域の中心周波数に設定した共振インピーダンスの変化で前記マイクロ波帯域の中心周波数領域で最大減衰する通過振幅特性を有する振幅イコライザとを備え、周囲温度が低下するにつれて前記感温抵抗体膜の抵抗値を変化させて前記振幅イコライザの最大減衰量を増加し前記第1半導体増幅素子の出力を前記飽和出力電力領域で維持する半導体増幅装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−224970(P2009−224970A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65748(P2008−65748)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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