半導体発光素子及び半導体発光装置
【課題】順方向電圧の上昇を抑制し、且つ光取り出し効率を向上させたフリップチップ実装半導体発光素子を提供する。
【解決手段】第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び第2の導電型を有する第2の半導体層160が積層された積層半導体層と、第1の半導体層と接続する第1の電極と、第2の半導体層の表面に設けた第2の電極170と、を備え、第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し、光透過性を示す透明導電層171と、透明導電層上に積層され第1の屈折率を有し光透過性を示す第1の絶縁層と、第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層172と、多層絶縁層上に積層され導電性を有する金属反射層173aと、多層絶縁層を通して設けられ一端が透明導電層の膜厚部に電気的に接続され他端が金属反射層と電気的に接続される導体部176と、を含む。
【解決手段】第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び第2の導電型を有する第2の半導体層160が積層された積層半導体層と、第1の半導体層と接続する第1の電極と、第2の半導体層の表面に設けた第2の電極170と、を備え、第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し、光透過性を示す透明導電層171と、透明導電層上に積層され第1の屈折率を有し光透過性を示す第1の絶縁層と、第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層172と、多層絶縁層上に積層され導電性を有する金属反射層173aと、多層絶縁層を通して設けられ一端が透明導電層の膜厚部に電気的に接続され他端が金属反射層と電気的に接続される導体部176と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、通常、透明電極上に、金(Au)等のボンディングワイヤと接続する部分にボンディングパッドを形成している。最近、発光波長に対して透光性の基板上に形成された半導体発光素子を裏返し、回路基板(サブマウント)またはパッケージに搭載するフリップチップボンディング(FC)実装技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透光性基板と、n型半導体層/発光層/p型半導体層が積層された半導体層と、n型半導体層に接合される負電極と、p型半導体層に接合される正電極と、正電極及び負電極にそれぞれ接続される正電極パッド及び負電極パッドとを備えたフリップチップ型半導体発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−173269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FC実装技術によれば、正電極を構成する透明導電層の膜厚を薄くすることにより、発光層から出射される光の吸収が減少する傾向がある。一方、透明導電層の膜厚を過度に薄くするとシート抵抗が増大する傾向がある。そのため、電流の拡散が不良となり、順方向電圧(Vf)が上昇するおそれがある。
また、発光層からは、基板側および基板と反対側以外の方向にも光が出力されており、このような光は、光取り出し効率の向上に貢献しないという問題がある。
本発明の目的は、半導体発光素子のFC(フリップチップ)実装技術において、順方向電圧(Vf)の上昇を抑制し、且つ発光出力(Po)を増大させて光取り出し効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下、[1]〜[10]が提供される。
[1]請求項1に係る発明は、第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の導電性を示す第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、前記第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す透明導電層と、前記透明導電層上に積層され且つ、第1の屈折率を有し前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と当該第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し当該発光層から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層と、前記多層絶縁層上に積層され且つ導電性を有する金属反射層と、前記多層絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含むことを特徴とする半導体発光素子である。
【0007】
[2]請求項2に係る発明は、前記透明導電層は、前記第2の半導体層の表面を連続的に覆うように形成された基部と、前記多層絶縁層側に当該基部より膜厚が大きい凸部を有するように形成された複数の前記膜厚部とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子である。
[3]請求項3に係る発明は、前記透明導電層の前記凸部は、一定の間隔を設けて前記基部上に配置されることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子である。
[4]請求項4に係る発明は、前記透明導電層の前記膜厚部は、一定の間隔を設けて前記基部上に配置された第1の凸部と、当該第1の凸部を互いに結合する直線状の第2の凸部を有する格子状パターンを構成することを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体発光素子である。
尚、透明導電層に形成された複数の膜厚部の配置パターンは、格子状パターンに限定されず、第2の半導体層の表面を連続的に覆う基部上に、互いに所定の間隔を設けて等間隔で又はランダムに形成されたパターン(「孤立パターン」と称する)でもよい。
[5]請求項5に係る発明は、前記多層絶縁層は、2つの前記第1の絶縁層によって1つの前記第2の絶縁層を挟み込む構造を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子である。
[6]請求項6に係る発明は、前記多層絶縁層は、前記透明導電層側の表面と前記金属反射層側の表面とに其々前記第1の屈折率を有する前記第1の絶縁層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体発光素子である。
[7]請求項7に係る発明は、前記導体部は、前記多層絶縁層の全体に分布するように複数形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体発光素子である。
[8]請求項8に係る発明は、前記第1の電極と外部との電気的な接続に用いられる第1の接続子と、前記第2の電極と外部との電気的な接続に用いられる第2の接続子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体発光素子である。
【0008】
[9]請求項9に係る発明は、半導体発光素子と当該半導体発光素子を実装する回路基板を備える半導体発光装置であって、前記半導体発光素子は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層が積層された積層半導体層と、当該n型半導体層と接続する負極と、当該p型半導体層の表面に設けた正極と、を備え、前記正極は、前記積層半導体層側と反対側に複数の凸部を有し且つインジウムを含む透明導電層と、前記透明導電層の前記凸部側に積層され且つ第1の屈折率を有し前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と当該第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し当該発光層から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層と、前記多層絶縁層上に積層され且つ銀を含む金属反射層と、前記多層絶縁層を通して形成され一端が前記透明導電層の前記凸部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される複数の導体部と、を含み、前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記正極と対向するように配置されることを特徴とする半導体発光装置である。
[10]請求項10に係る発明は、前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記負極及び前記正極と、それぞれ接続子により接続された一対の配線を備えることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の膜厚部を有しない透明導電層と屈折率が異なる複数の絶縁層からなる多層絶縁層を有しない半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:単位mW)が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】半導体発光装置の一例を示す断面模式図である。
【図2】半導体発光素子の一例を示す断面模式図である。
【図3】半導体発光素子の一例を示す平面模式図である。
【図4】積層半導体の一例を示す断面模式図である。
【図5】第1の電極の一例を示す断面模式図である。
【図6】第2の電極の一例を示す断面模式図である。
【図7】図6に示す第2の電極の一部の断面模式図である。
【図8】多層絶縁層の層構造の一例を示す断面模式図である。
【図9】透明導電層に設けた膜厚部の配置パターンの一例を示す図である。
【図10】透明導電層に設けた膜厚部の格子状パターンの一例を示す図である。
【図11】透明導電層に設けた膜厚部の孤立パターンの他の一例を示す図である。
【図12】透明導電層に設けた膜厚部の配置パターンの他の一例を示す図である。
【図13】半導体発光素子における発光強度の角度分布の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するための一例であり、実際の大きさを表すものではない。
【0012】
<半導体発光装置1>
図1は、本実施の形態が適用される半導体発光装置1の一例を示す断面模式図である。半導体発光装置1は、光を出射する半導体発光素子10と、回路基板の一例としてのサブマウント15とを備えている。サブマウント15は、半導体発光素子10を固定するとともに、半導体発光素子10に電力を供給する配線を設けている。
【0013】
半導体発光素子10は、基板110、中間層120、下地層130、積層半導体層100を備えている。また、半導体発光素子10は、正負一対の接続電極の一例として、負極として働く第1の電極180と、正極として働く第2の電極170とを備えている。積層半導体層100は、後述するように、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160から構成されている。尚、第1の電極180は、積層半導体層100の一部を切り欠いた部分に設けられている。
また、第1の電極180および第2の電極170の表面の一部を除き、中間層120、下地層130、積層半導体層100の表面および側面を覆う保護層190を備えている。尚、半導体発光素子10の詳細については後述する。
【0014】
サブマウント15は、サブマウント基板10B、サブマウント基板10B上に設けられたサブマウント配線11、12、半導体発光素子10の第1の電極180および第2の電極170とサブマウント配線11、12とを電気的に接続する接続子の一例としてのバンプ21,22を備えている。
【0015】
図1では、半導体発光素子10は、基板110側が上側に位置している。すなわち、半導体発光素子10は、裏返してサブマウント15に実装されている。このように、サブマウント15に対して、半導体発光素子10を裏返して実装することをフリップチップ(FC)実装またはフリップチップ(FC)ボンディングと呼ぶ。また、半導体発光素子10が裏返して実装されることから、この実装形式をフェイスダウン(FD)実装とも呼ぶ。
【0016】
本実施の形態における光の取り出しについて説明する。半導体発光素子10の積層半導体層100(具体的には、後述する図2における発光層150)において出射した光のうち、基板110側に進む光(矢印B)は、外部に取り出される(矢印D)。一方、発光層150が出射する光のうち、第2の電極170側に進む光は(矢印A)、第2の電極170に設けられ、発光層150が出射する光に対して反射性を示す反射層(後述する、図6に示す多層絶縁層172及び第2金属反射層173a)で反射され、基板110側に向かい、外部(図1の上側方向)に取り出される。また、積層半導体層100、中間層120、下地層130の側面から外部に取り出される光もある。以下、サブマウント15、半導体発光素子10の順に詳細な構成を説明する。
【0017】
(サブマウント15)
サブマウント15のサブマウント基板10Bとしては特に限定されず、例えば、セラミック基板、AlN(窒化アルミニウム)基板、Al(アルミ)基板、Cu(銅)基板、ガラスエポキシ基板等の絶縁性または導電性の各種の基板を選択して用いることができる。
尚、Al基板等の導電性の基板を用いるときには、サブマウント配線11,12とサブマウント基板10Bとを電気的に絶縁するため、サブマウント配線11,12の少なくとも一方は絶縁層を介して設けられている。
半導体発光素子10の第1の電極180及び第2の電極170とサブマウント基板10Bのサブマウント配線11,12とを接続するバンプ21,22としては、例えば、Sn(錫)を添加したAu(Au−Sn合金)ボールや半田ボールが用いうる。特に、接続(圧着)時の加熱温度が約300℃のAu−Sn合金が好ましい。
以下、半導体発光素子10について詳細な構成を説明する。
【0018】
<半導体発光素子10>
図2は、半導体発光素子10の一例を示す断面模式図である。図3は、図2においてIII方向からみた半導体発光素子10の一例を示す平面模式図である。図4は、半導体発光素子10を構成する積層半導体の一例を示す断面模式図である。尚、図2は、図3に示す半導体発光素子10のII−II断面図である。
図2に示すように、半導体発光素子10は、基板110と、基板110上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備える。また、半導体発光素子10は、下地層130上に積層される積層半導体層100を備えている。積層半導体層100は、下地層130側から、第1の導電型を有する第1の半導体層としてのn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層される第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層としてのp型半導体層160とから構成されている。
【0019】
半導体発光素子10は、積層されたp型半導体層160、発光層150、第1の電極180と、第2の電極170とを備えている。第1の電極180は、n型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出した半導体層露出面140cに形成される。第2の電極170は、p型半導体層160の上面160cに形成される。尚、第1の電極180と第2の電極170の詳細な構造は後述する。
【0020】
半導体発光素子10は、第1の電極180および第2の電極170と、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側)に積層される保護層190をさらに備える。ただし、保護層190は、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側)の側壁面の全域、基板110の一部の上面110cを覆うように形成される。
【0021】
第1の電極180に対しては、図2において上方側となる面の一部を露出させ、後述するように、バンプ(第1の接続子)21により外部との電気的な接続に用いられる第1の開口部180aが形成されている。同様に、第2の電極170に対しては、図2において上方側となる面の一部を露出させ、後述するように、バンプ(第2の接続子)22により外部との電気的な接続に用いられる第2の開口部170aが形成されている。
【0022】
本実施の形態の半導体発光素子10は、基板110とは反対側となる一方の面側に第1の電極180および第2の電極170が形成された構造を有している。この半導体発光素子10においては、第1の電極180を負極、第2の電極170を正極とし、両者を介して積層半導体層100(より具体的にはp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140)に電流を流すことで、発光層150が発光するようになっている。
【0023】
次に、図3に示すように、平面視したとき(図2に示す半導体発光素子10をIII方向からみた平面模式図)、第1の電極180は、平面形状が正方形の基板110の一つの角部に近接した部分に形成されている。第1の電極180は、露出した半導体層露出面140c上に形成され、さらに、第1の電極180の上面には、外部との電気的な接続に用いられる第1の開口部180aが形成されている。
第2の電極170は、第1の電極180を形成するためにエッチング等の手段により一部が除去された部分を除き、p型半導体層160の上面160cの略全面を覆うように形成されている。第2の電極170の上面には、第2の電極170を露出させ、外部との電気的な接続に用いられる第2の開口部170aが形成されている。また、後述するように、第2の電極170を構成する透明導電層171(図6参照)に設けた膜厚部171bと金属反射層とを電気的に接続する複数の導体部176が設けられている。尚、図3では、第1の電極180及び第2の電極170の表面を覆う保護層190を省略している。
次に、半導体発光素子10の各層について説明する。
【0024】
(基板110)
基板110としては、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板であれば、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。ただし、本実施の形態の半導体発光素子10は、後述するように、基板110側から光を取り出すようにフリップチップ実装されることから、発光層150から出射される光に対する光透過性を有していることが好ましい。例えば、サファイア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン等からなる基板110を用いることができる。
また、上記材料の中でも、特に、C面を主面とするサファイアを基板110として用いることが好ましい。サファイアを基板110として用いる場合は、サファイアのC面上に中間層120(バッファ層)を形成するとよい。
【0025】
(積層半導体層100)
III族窒化物半導体層の一例としての積層半導体層100は、例えば、III族窒化物半導体からなる層であって、図2に示すように、基板110上に、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層が、この順で積層されて構成されている。また、図4に示すように、n型半導体層140、発光層150及びp型半導体層160の各層は、それぞれ、複数の半導体層から構成してもよい。積層半導体層100は、さらに下地層130、中間層120を含めて呼んでもよい。ここで、n型半導体層140は、電子をキャリアとする第1の導電型にて電気伝導を行い、p型半導体層160は、正孔をキャリアとする第2の導電型にて電気伝導を行う。
尚、積層半導体層100は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する半導体層を形成できる。以下、順次説明する。
【0026】
(中間層120)
中間層120は、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、上述のように、例えば、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
中間層120は、基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和し、基板110の(0001)面(C面)上にC軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層120の上を介し、より一層結晶性の良い下地層130が積層できる。尚、本実施の形態においては、中間層120を形成することが好ましいが、行なわなくても良い。
【0027】
また、中間層120は、III族窒化物半導体からなる六方晶系の結晶構造を持つものであってもよい。また、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、単結晶構造を有するものが好ましく用いられる。III族窒化物半導体の結晶は、成長条件を制御することにより、上方向だけでなく、面内方向にも成長して単結晶構造を形成する。このため、中間層120の成膜条件を制御することにより、単結晶構造のIII族窒化物半導体の結晶からなる中間層120とすることができる。このような単結晶構造を有する中間層120を基板110上に成膜した場合、中間層120のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性及び結晶性を有する結晶膜となる。
【0028】
(下地層130)
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1−xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlxGa1−xN層が得られやすい。また、下地層130の膜厚は、生産コストの点で好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130は不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0029】
(n型半導体層140)
図4に示すように、例えば、第1の導電型を有する第1の半導体層の一例としての、電子をキャリアとするn型半導体層140は、nコンタクト層140aとnクラッド層140bとから構成されるのが好ましい。尚、nコンタクト層140aはnクラッド層140bを兼ねることも可能である。また、前述の下地層130をn型半導体層140に含めてもよい。
nコンタクト層140aは、第1の電極180を設けるための層である。nコンタクト層140aとしては、AlxGa1−xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
【0030】
また、nコンタクト層140aにはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1020/cm3、好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、第2の電極170との良好なオーミック接触を維持できる点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
nコンタクト層140aの膜厚は、0.5μm〜5μmに設定することが好ましく、1μm〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層140aの膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0031】
nコンタクト層140aと発光層150との間には、nクラッド層140bを設けることが好ましい。nクラッド層140bは、発光層150へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めを行なう層である。nクラッド層140bはAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。なお、本明細書中では、各元素の組成比を省略してAlGaNやGaInNのように記載することがある。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層140bをGaInNで形成する場合には、発光層150のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましい。
nクラッド層140bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005〜0.5μmであり、より好ましくは0.005〜0.1μmである。nクラッド層140bのn型ドープ濃度は1×1017〜1×1020/cm3が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3である。ドープ濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および発光素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0032】
尚、nクラッド層140bを、超格子構造を含む層とする場合には、詳細な図示を省略するが、100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なるとともに100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであっても良い。また、nクラッド層140bは、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
【0033】
(発光層150)
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することができる。
図4に示すような、量子井戸構造の井戸層150bとしては、Ga1−yInyN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。井戸層150bの膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1〜10nmとすることができ、好ましくは2〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層150の場合は、上記Ga1−yInyNを井戸層150bとし、井戸層150bよりバンドギャップエネルギが大きいAlzGa1−zN(0≦z<0.3)を障壁層150aとする。井戸層150bおよび障壁層150aには、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
尚、本実施の形態では、発光層150が、青色光(発光波長λ=400nm〜465nm程度)を出力するようになっている。
【0034】
(p型半導体層160)
図4に示すように、例えば、第2の導電型を有する第2の半導体層の一例としての、正孔をキャリアとするp型半導体層160は、通常、pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bから構成される。また、pコンタクト層160bがpクラッド層160aを兼ねることも可能である。
pクラッド層160aは、発光層150へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。pクラッド層160aとしては、発光層150のバンドギャップエネルギより大きくなる組成であり、発光層150へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AlxGa1−xN(0<x≦0.4)のものが挙げられる。
【0035】
pクラッド層160aが、このようなAlGaNからなると、発光層150へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層160aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
pクラッド層160aのp型ドープ濃度は、1×1018〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cm3である。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層160aは、複数回積層した超格子構造としてもよく、AlGaNとAlGaNとの交互構造又はAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
【0036】
pコンタクト層160bは、第2の電極170を設けるための層である。pコンタクト層160bは、AlxGa1−xN(0≦x≦0.4)であることが好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持および第2の電極170との良好なオーミック接触の維持が可能となる点で好ましい。
p型不純物(ドーパント)を1×1018〜1×1021/cm3の濃度、好ましくは5×1019〜5×1020/cm3の濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層160bの膜厚は、特に限定されないが、10nm〜500nmが好ましく、より好ましくは50nm〜200nmである。pコンタクト層160bの膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0037】
(第1の電極180)
図5は、第1の電極180の一例を示す断面模式図である。
第1の電極180は、n型半導体層140の半導体層露出面140c上に積層される第1金属反射層181と、図5において第1金属反射層181から上に向かって順に、第1の電極180における第1拡散防止層182a、第2拡散防止層182b、第3拡散防止層182c、第4拡散防止層182dが積層されている。第1の電極180における第4拡散防止層182d上には第1ボンディング層182eが積層され、さらに、第1ボンディング層182eの露出部位を除いて第1ボンディング層182eを覆うように積層される第1保護密着層183と有している。第1拡散防止層182a〜第4拡散防止層182dは、材料構成によりいずれかの層を省略してもよい。
【0038】
(第1金属反射層181)
図5に示すように、n型半導体層140の上には第1金属反射層181が積層されている。したがって、n型半導体層140との密着性の良い材質が好ましい。そして、第1金属反射層181の中央部は一定の膜厚を有し、ほぼ平坦に形成される一方、第1金属反射層181の端部側は膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の上面(半導体層露出面140c)に対し傾斜して形成されている。第1金属反射層181としては、アルミニウム(Al)またはAl合金が挙げられる。尚、第1金属反射層181を形成する前に、密着層を形成してもよい。また、第1金属反射層181は、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Nd(ネオジム)、Ag(銀)等の金属および少なくともこれらの1つを含む合金で構成されてもよい。なお、第1金属反射層181は、n型半導体層140に給電を行う機能も有していることから、その抵抗値は低いことが好ましい。第1金属反射層181の膜厚は、好ましくは80nm〜200nmの範囲で用いられる。膜厚が過度に薄いと、反射層としての反射率が低下する傾向がある。膜厚が過度に厚いと、半導体発光素子10の製造コストが高くなる傾向がある。
【0039】
(第1拡散防止層182a乃至第4拡散防止層182d)
第1の電極180における第1拡散防止層182a乃至第4拡散防止層182dは、接触状態にある第1金属反射層181を構成する金属と、第4拡散防止層182dを構成する金属の拡散を抑制する。
また、第4拡散防止層182dは、接触状態にある第3拡散防止層182cを構成する金属と第1ボンディング層182eを構成する金属の拡散を抑制する。第1の電極180における第1拡散防止層182a、第2拡散防止層182b、第3拡散防止層182cは、接触状態にある第1金属反射層181を構成する金属(この例では、Ag(銀))、および第4拡散防止層182dを構成する金属(この例では、Pt(プラチナ))の拡散を抑制する。第4拡散防止層182dは、接触状態にある第3拡散防止層182cを構成する金属(この例では、Ta(タンタル))と第1ボンディング層182eを構成する金属(この例では、Au(金))の拡散を抑制する。
第1の電極180においては、第1拡散防止層182a、第2拡散防止層182b、第3拡散防止層182c、第4拡散防止層182dは、第1金属反射層181の全域を覆うように形成されている。そして、各拡散防止層の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、それぞれの端部側は膜厚が漸次薄くなることにより、n型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜して形成されている。
【0040】
各拡散防止層(182a〜182d)は、それぞれの層が接触する層とのオーミックコンタクトがとれ、かつ、接触する層との接触抵抗が小さいものを用いることが好ましい。
本実施の形態では、第1拡散防止層182aとしてTa(タンタル)、第2拡散防止層182bとしてTaN(窒化タンタル)、第3拡散防止層182cとしてTa(タンタル)、第4拡散防止層182dとしてPt(プラチナ)が用いられている。
第1拡散防止層182aの膜厚は、好ましくは20nm〜200nmの範囲で用いられる。第2拡散防止層182bの膜厚は、好ましくは1nm〜50nmの範囲で用いられる。第3拡散防止層182cの膜厚は、好ましくは20nm〜200nmの範囲で用いられる。第4拡散防止層182dの膜厚は、好ましくは50nm〜200nmの範囲で用いられる。
【0041】
(第1ボンディング層182e)
図5に示すように、第1拡散防止層182a乃至第4拡散防止層182dの上面には第1ボンディング層182eが積層されている。第1ボンディング層182eは、第1拡散防止層182a乃至第4拡散防止層182dの全域を覆うように形成されている。そして、第1ボンディング層182eの中央部は一定の膜厚を有しほぼ平坦に形成される。第1ボンディング層182eの端部側は膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜して形成されている。
【0042】
第1ボンディング層182eは、後述する第2の電極170の第2ボンディング層174(図6参照)と同様、少なくとも1層以上の金属層を備える。その場合、最も外側となる最表層の金属層には、例えば、Au(金)が用いられる。また、第1ボンディング層182eの全体の厚さは、好ましくは100nm〜2μmに設定されている。膜厚が過度に薄いと抵抗が高くなる傾向がある。膜厚が過度に厚いと、発光素子の製造コストが高くなる傾向がある。
【0043】
(第1保護密着層183)
図5に示すように、第1ボンディング層182eの上には第1保護密着層183が積層されている。第1保護密着層183は第1ボンディング層182eの露出部位を除く領域を覆うように形成されている。そして、第1保護密着層183の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、第1保護密着層183の端部側はn型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜して形成されている。この第1保護密着層183の側面側の端部は、n型半導体層140の半導体層露出面140cと接するように設けられている。
【0044】
第1保護密着層183は、例えば、Au(金)で構成された第1ボンディング層182eと保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。本実施の形態において、第1保護密着層183はTa(タンタル)で形成されている。ただし、第1保護密着層183として、Ti(チタン)を用いることも可能である。第1保護密着層183の膜厚は、好ましくは1nm〜50nmの範囲で用いられる。膜厚が過度に小さいと、保護層190や第1ボンディング層182eとの密着性が低下する傾向がある。膜厚が過度に大きいと、エッチング工程における作業時間が長くなり、半導体発光素子10の製造コストが高くなる傾向がある。
【0045】
(第2の電極170)
次に、第2の電極170の構成について説明する。図6は、第2の電極170の一例を示す断面模式図である。
図6に示すように、第2の電極170は、第2の半導体層としてのp型半導体層160の上面160cに積層される透明導電層171と、この透明導電層171上面に積層される多層絶縁層172と、多層絶縁層172上面に積層される第2金属反射層173aとが積層されている。第2金属反射層173a上面には、図6において第2金属反射層173aから上に向かって順に、第2の電極170における第1拡散防止層173b、第2拡散防止層173c、第3拡散防止層173d、第4拡散防止層173eが積層されている。さらに、第4拡散防止層173e上面には、第2ボンディング層174が積層され、第2ボンディング層174の露出部位を除いて第2ボンディング層174を覆うように積層される第2保護密着層175を有している。
図6に示すように、透明導電層171は、厚さが略一定の基部171aと基部171aより厚さが大きい膜厚部としての凸部171bとから構成されている。さらに、多層絶縁層172を通して設けられ、一端が透明導電層171の膜厚部(=凸部171b)に電気的に接続され且つ他端が第2金属反射層173aと電気的に接続される導体部176を有している。透明導電層171は、前述した第1の電極180(図5参照)を形成するために、公知なエッチング等の手段によって一部が除去されたp型半導体層160の上面160cの周縁部を除くほぼ全面に形成されている。透明導電層171、多層絶縁層172及び導体部176については後述する。
【0046】
(透明導電層171)
図6に示すように、本実施の形態では、透明導電層171は、p型半導体層160の上面160cを覆うように形成された連続的な基部171aと、p型半導体層160側と反対側の多層絶縁層172側に設けた膜厚部としての複数の凸部171bとから構成されている。透明導電層171の凸部171bを設けた部分は、他の部分より厚さが大きい膜厚部を構成している。
尚、図示しないが、本実施の形態に限定されず、膜厚部を構成するために、透明導電層171の凸部171bは、基部171aのp型半導体層160側に設けてもよい。その場合、透明導電層171の多層絶縁層172側は平坦な形状に形成される。
【0047】
図7は、第2の電極170の要部を説明する図である。
図7に示すように、透明導電層171の凸部171bを設けない領域の厚さ(基部171aの厚さ(x)という。)は、本実施の形態では、5nm〜150nmの範囲より選択することができる。また、好ましくは、本実施の形態では20nm〜100nmの範囲より選択される。例えば、参考データとして、凸部171bを有しない基部171aの厚さ(x)からなる透明導電層171のシート抵抗は、製造方法にも依存するものの、膜厚が10nmの場合は無限大(∞)であり、膜厚が20nmの場合は250Ω/□、膜厚が25nmの場合は175Ω/□、膜厚が50nmの場合は72Ω/□、膜厚が100nmの場合は29Ω/□、膜厚が200nmの場合は15Ω/□である。
基部171aの厚さ(x)が過度に薄いと、p型半導体層160とオーミックコンタクトが取れにくく、また順方向電圧(Vf)が上昇する傾向がある。基部171aの厚さ(x)が過度に厚いと、発光層150からの発光及び第2金属反射層173aからの反射光の光透過性の点で好ましくない傾向がある。
尚、本実施の形態では、基部171aの中央部は一定の膜厚を有し、p型半導体層160の上面160cに対しほぼ平坦に形成される一方、基部171aの端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0048】
基部171aに凸部171bを設けた膜厚部の厚さ(y)は、本実施の形態では、100nm〜300nmの範囲より選択される。但し、y>xの関係を有する。また、当該膜厚部の厚さ(y)は、好ましくは、150nm〜250nmの範囲より選択される。膜厚部の厚さ(y)が過度に薄い場合又は過度に厚い場合、発光層150からの発光及び第2金属反射層173aからの反射光の光透過性の点で好ましくない傾向がある。尚、透明導電層171は、FC実装技術における使用において、光吸収性があるが故に特定の膜厚以下の薄膜として使用するのが好ましい。
【0049】
基部171aに凸部171bを設けた膜厚部の幅(φ1)は、本実施の形態では、10μm〜30μmの範囲より選択される。また、好ましくは、15μm〜25μmの範囲より選択される。膜厚部の幅(φ1)が過度に大きいと、当該膜厚部による光の吸収により、反射層から光の強度に影響が出る傾向がある。膜厚部の幅(φ1)が過度に小さいと、多層絶縁層172中の貫通穴(導体部176:径φ2)とのアライメントが困難になる傾向がある。本実施の形態では、膜厚部(=凸部171b)の幅(φ1)を18μmにしている。
【0050】
尚、平面視における凸部171bを含む膜厚部の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形、五角形その他の多辺形(星形を含む)、楔形等が挙げられる。また、凸部171bの縦方向の断面形状は、特に限定されず、長方形、台形、円錐、角錐、楔形等が挙げられる。また、凸部171bの膜厚部は、これらの断面形状を有する凸部171bを結合する直線状部分とから構成される格子状パターンを有してもよい(後述)。さらにまた、凸部171bの平面断面積は特に限定されず、さらに、複数の凸部171bのそれぞれの平面断面積は、同一又は異なる場合も含まれる。
【0051】
透明導電層171における凸部171bを含む複数の膜厚部は、所定の間隔(ピッチl)で設けられる。本実施の形態では、ピッチlは、10μm〜120μmの範囲より選択される。また、好ましくは、20μm〜100μmの範囲より選択される。ピッチlが過度に大きいと、凸部171bを設けた膜厚部の透明導電層171に占める割合(A/B)が小さくなり、発明の効果が低減し、順方向電圧(Vf)が増大する傾向がある。ピッチlが過度に小さいと、前記割合(A/B)が大きくなり、発光強度が向上しない傾向がある。
【0052】
図9〜図12に示すように、本実施の形態では、凸部171bを有する透明導電層171の面積は、基部171aを有する透明導電層171の総面積に対して5%〜60%の面積率(%)の範囲で設けられる。なお、前記面積率(%)を凸部171bの占有面積率(%)ともいう。さらに、凸部171bを有する透明導電層171は、好ましくは7%〜50%の面積率(%)の範囲、さらに好ましく8%〜40%の面積率(%)の範囲で設けるのが良い。
【0053】
さらに、本発明では、後述の多層絶縁層172の構造と凸部171bを含む複数の膜厚部を格子状パターン又は互いに所定の間隔を設けて等間隔で又はランダムに形成する配置パターン(孤立パターン)に設けることにより、フリップチップにおける半導体発光素子10の正面光の発光強度が格段と増大する効果がある。また、凸部171bを含む複数の膜厚部を孤立パターンに設けることにより、発光層150からの光の反射効果も高めれ、半導体発光素子10の発光出力が増大する。
また、当該孤立パターンを前述の占有面積率(%)で設けることにより、半導体発光素子10の発光出力を増大すると共に、順方向電圧(Vf)を最適な範囲に低下させることができるので好ましい。
本発明が適用される半導体発光素子10の大きさは、特に制限を受けるものではないが、例えば一辺の大きさが1cm以下の矩形チップが好ましく、また1mm以下の矩形チップや350μm角の正方形チップや長尺チップが用いられる。
【0054】
透明導電層171を構成する材料は、酸化物の導電性材料であって、発光層150から出射される波長の光を、少なくとも80%程度透過する材料が用いられる。例えば、In(インジウム)を含む酸化物の一部は、他の透明導電膜と比較して光透過性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウム錫(In2O3−SnO2))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO))、IGO(酸化インジウムガリウム(In2O3−Ga2O3))、ICO(酸化インジウムセリウム(In2O3−CeO2))等が挙げられる。尚、これらの中に、例えば、フッ素等のドーパントが添加されていてもよい。また、例えば、Inを含まない酸化物として、例えば、キャリアをドープしたSnO2、ZnO2、TiO2等の導電性材料を用いることもできる。これらの材料を用い、当該技術分野でよく知られた慣用手段によって、透明導電層171を形成できる。また、透明導電層171を形成した後、透明導電層171の透明化と更なる低抵抗化とを目的とした熱アニールを施す場合もある。
【0055】
本実施の形態において、透明導電層171の材料として、結晶構造を有するものを使用することができる。例えば、特に、六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn2O3結晶を含む透光性材料(例えば、ITO、IZO等)が好ましい。また、例えば、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOを用いる場合、エッチング性に優れたアモルファスのIZO膜を用いて特定形状に加工することができ、さらにその後、熱処理等によりアモルファス状態から結晶を含む構造に転移させ、アモルファスのIZO膜よりも透光性の優れた電極に加工することができる。
【0056】
また、透明導電層171に用いるIZO膜としては、比抵抗が最も低くなる組成を使用することが好ましい。例えば、IZO中のZnO濃度は1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%の範囲が更に好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0057】
透明導電層171に用いるIZO膜の熱処理は、O2を含まない雰囲気で行なうことが望ましく、O2を含まない雰囲気としては、N2雰囲気などの不活性ガス雰囲気や、またはN2などの不活性ガスとH2との混合ガス雰囲気などを挙げることができ、N2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気とすることが望ましい。尚、IZO膜の熱処理をN2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気中で行なうと、例えば、IZO膜を六方晶構造のIn2O3結晶を含む膜に結晶化させるとともに、IZO膜のシート抵抗を効果的に減少させることが可能である。
【0058】
IZO膜の熱処理温度は、500℃〜1000℃が好ましい。熱処理温度が過度に低いと、IZO膜を十分に結晶化できず、IZO膜の光透過率が十分に高いものとならない傾向がある。熱処理温度が過度に高いと、IZO膜は結晶化されているが光透過率が十分に高いものとならない傾向がある。また、この場合、IZO膜の下にある半導体層を劣化させるおそれもある。
【0059】
アモルファス状態のIZO膜を結晶化させる場合、成膜条件や熱処理条件などが異なるとIZO膜中の結晶構造が異なる。しかし、本発明の実施形態においては、他の層との接着性の点において、透明導電層171は材料に限定されないが結晶性の材料の方が好ましく、特に結晶性IZOの場合にはビックスバイト結晶構造のIn2O3結晶を含むIZOであってもよく、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOであってもよい。特に六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOがよい。
【0060】
特に、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べ、p型半導体層160との密着性が良いため、仕事関数が高い。また、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べて、抵抗値が低下することから、半導体発光素子10を構成した際に、順方向電圧Vfを低減できる点でも好ましい。
【0061】
(多層絶縁層172)
図6に示すように、多層絶縁層172は、透明導電層171上面に透明導電層171の表面形状を倣うように形成されている。多層絶縁層172は、第1の屈折率(nL)を有し発光層150から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と第1の屈折率より高い第2の屈折率(nH)(nL<nH)を有し発光層150から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成されている。多層絶縁層172は、第2金属反射層173aと組み合わせて、発光層150から出力される光を反射する反射膜としての機能を有している。本実施の形態では、後述するように、多層絶縁層172を貫通するように形成された導体部176が設けられている。
多層絶縁層172は、発光層150から出力される光に対し少なくとも90%程度、好ましくは95%以上の反射性を有し、透明導電層171と比べて低屈折率、且つ絶縁性を有する。
【0062】
図8は、多層絶縁層172の層構造の一例を示す断面模式図である。
前述したように、多層絶縁層172は、第1の屈折率を有する第1の絶縁層172aと第1の屈折率より高い第2の屈折率を有する第2の絶縁層172bとを、交互に積層して構成されている。特に、本実施の形態では、2つの第1の絶縁層172aによって1つの第2の絶縁層172bを挟み込む構成を採用している。図8に示す例では、6層の第1の絶縁層172aの間に5層の第2の絶縁層172bを挟み込むことにより、合計11層の積層構造を有している。
【0063】
第1の絶縁層172aおよび第2の絶縁層172bには、発光層150から出力される光に対する光透過性能が高いものが用いられる。ここで、第1の絶縁層172aとしては、例えば、SiO2(酸化ケイ素:屈折率1.48(450nm波長))やMgF2(フッ化マグネシウム)を使用することができる。第2の絶縁層172bとしては、TiO2(酸化チタン)、Ta2O5(酸化タンタル:屈折率2.16(550nm波長))、ZrO2(酸化ジルコニウム)、HfO2(酸化ハフニウム)、Nb2O5(酸化ニオブ)を使用することができる。ただし、第2の絶縁層172bとの間の屈折率の関係が満たされるのであれば、第1の絶縁層172aに、これらTiO2、Ta2O5、ZrO2、HfO2、Nb2O5を用いてもかまわない。
【0064】
本実施の形態では、第1の絶縁層172aとしてSiO2(酸化ケイ素)を用い、第2の絶縁層172bとしてTa2O5(酸化タンタル)を用いている。これらは、発光層150の発光波長λ(=400nm〜450nm)の光に対し高い光透過性を有している。
なお、発光層150の発光波長λがさらに短く、近紫外領域の光を発する場合、第2の絶縁層172bとして、Nb2O5(酸化ニオブ)、ZrO2(酸化ジルコニウム)、HfO2(酸化ハフニウム)等の、光学バンドギャップがTiO2(酸化チタン)より大きいものを使用することが望ましい。ただし、発光層150が紫外領域の光を発する場合であっても、第1の絶縁層172aにはSiO2(酸化ケイ素)を用いることができる。
【0065】
本実施の形態では、第1の絶縁層172aの層厚さdLと、第2の絶縁層172bの層厚さdHは、発光層150の発光波長λ(nm)、発光波長λにおける第1の絶縁層172aの屈折率nL、発光波長λにおける第2の絶縁層172bの屈折率nHとしたとき(nL<nH)、以下に示す式(1)及び式(2)に基づいて設定されている。尚、式中、Rは任意の実数を表す。
【0066】
【数1】
【0067】
(導体部176)
図6に示すように、複数の導体部176は、それぞれ多層絶縁層172を貫通して形成され、一端が透明導電層171の凸部171bに電気的に接続され且つ他端が第2金属反射層173aと電気的に接続されるように設けられている。導体部176は、第2の電極170全体に複数形成され、各導体部176を流れる電流が発光層150の発光に用いられる電流となる。本実施の形態では、複数の導体部176を設け、p型半導体層160の上面160cの面上において、p型半導体層160の全面に電流を拡散させ、発光層150における発光むらを低減している。
【0068】
導体部176のそれぞれの径(φ2)(図7参照)は、前述した透明導電層171の膜厚部(=凸部171b)の幅(φ1)、または、凸部171bが前述したように互いに所定の間隔を設けて等間隔又はランダムに形成された配置パターン(孤立パターン)で設けられた1単位である場合は、径(φ1)と同等もしくはそれよりも小さい範囲で設けられる。なお、本明細書中では、φ1を単に径(φ1)と記載する。本実施の形態では、導体部176の径(φ2)は透明導電層171の膜厚部の当該φ1より小さく形成され、5μm〜30μmの範囲より選択される。また、好ましくは、5μm〜20μmの範囲より選択される。本実施の形態では、導体部176の径(φ2)を8μmに形成している。尚、平面視における導体部176の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形、五角形その他の多辺形(星形を含む)、楔形等が挙げられる。
【0069】
導体部176は、例えば、予め成膜された多層絶縁層172に、ドライエッチングあるいはリフトオフ等を用いて形成された貫通孔に導電性材料を充填することにより形成することができる。導体部176は、少なくとも1種の導電性材料を用いて形成され、また複数の導電性材料を用いて形成してもよい。導体部176の形成に使用する導電性材料としては、例えば、アモルファスIZO/銀合金/Ta等が挙げられる。本実施の形態においては、多層絶縁層172に複数の導体部176を設けることにより、第2の電極170の面上において、透明導電層171を介し、p型半導体層160の全面に亘り均一に電流を拡散させる。このことにより、発光層150における発光むらを改善することを可能とする。導体部176は、ドライエッチあるいはリフトオフ等により形成された貫通孔の壁面及び底面に施される。あるいは、多層絶縁層172の貫通孔に金属を充填したものとして形成されてもよい。
【0070】
(第2金属反射層173a)
図6に示すように、第2金属反射層173aは、多層絶縁層172の全域を覆うように形成されている。第2金属反射層173aの中央部は、一定の膜厚を有しほぼ平坦に形成される一方、第2金属反射層173aの端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。第2金属反射層173aは、p型半導体層160に給電を行う機能も有しているため、接触抵抗を低く抑える必要がある。
【0071】
第2金属反射層173aは、Ag(銀)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Nd(ネオジム)Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)などの金属および少なくともこれらの1つを含む合金で構成されている。特に、第2金属反射層173aとして銀または銀合金を用いた場合は、発光層150から出射される青色〜緑色の領域の波長の光に対して、高い光反射性を有しているため好ましい。第2金属反射層173aとして銀を用いた場合、使用環境によっては耐熱性、耐高温高湿性が十分でない場合もあり、銀合金が好ましく使用される。
第2金属反射層173aの膜厚は、好ましくは80nm〜200nmの範囲で用いられ
る。膜厚が過度に薄いと、反射層としての反射率が低下する傾向がある。膜厚が過度に厚いと、半導体発光素子10の製造コストが高くなる傾向がある。
【0072】
(第1拡散防止層173b〜第4拡散防止層173e)
第2の電極170における第1拡散防止層173b〜第4拡散防止層173eは、接触状態にある第2金属反射層173aを構成する金属と、第4拡散防止層173eを構成する金属の拡散を抑制する。
また、第4拡散防止層173eは、接触状態にある第3拡散防止層173dを構成する金属と第2ボンディング層174を構成する金属の拡散を抑制する。この第1拡散防止層173b、第2拡散防止層173c、第3拡散防止層173dは、接触状態にある第2金属反射層173aを構成する金属(この例ではAg(銀))、および第4拡散防止層173eを構成する金属(この例ではPt(プラチナ))の拡散を抑制する。第4拡散防止層173eは、接触状態にある第3拡散防止層173dを構成する金属(この例では、Ta(タンタル))と第2ボンディング層174を構成する金属(この例では、Au(金))の拡散を抑制する。
【0073】
第2の電極170においては、第1拡散防止層173b、第2拡散防止層173c、第3拡散防止層173d、第4拡散防止層173eは、第2金属反射層173aの全域を覆うように形成されている。そして、第2の電極170においては、第1拡散防止層173b〜第4拡散防止層173eは、第2金属反射層173aの全域を覆うように形成されている。そして、各拡散防止層の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、それぞれの端部側は膜厚が漸次薄くなり、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0074】
第2の電極170における各拡散防止層(173b〜173e)は、それぞれの層が接触する層とのオーミックコンタクトがとれ、かつ、接触する層との接触抵抗が小さいものを用いることが好ましい。
本実施の形態では、第1拡散防止層173bとしてTa(タンタル)、第2拡散防止層173cとしてTaN(窒化タンタル)、第3拡散防止層173dとしてTa(タンタル)、第4拡散防止層173eとしてPt(プラチナ)が用いられている。
第1拡散防止層173bの膜厚は、好ましくは20nm〜200nmの範囲で用いられる。第2拡散防止層173cの膜厚は、好ましくは1nm〜50nmの範囲で用いられる。第3拡散防止層173dの膜厚は、好ましくは20nm〜200nmの範囲で用いられる。第4拡散防止層173eの膜厚は、好ましくは50nm〜200nmの範囲で用いられる。
【0075】
(第2ボンディング層174)
図6に示すように、第4拡散防止層173eの上面には、第2金属反射層173aを覆うように第2ボンディング層174が積層されている。第2ボンディング層174は、第4拡散防止層173eの全域を覆うように形成されている。第2ボンディング層174の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される。本実施の形態では、第2ボンディング層174の端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0076】
外部との電気的な接続に用いられる接続層としての第2ボンディング層174は、最も内側の第4拡散防止層173e等と接するように、少なくとも1層の金属層を備える。また、最も外側となる最表層の金属層には、例えば、Au(金)が用いられる。さらに、本実施の形態では、第2ボンディング層174として、Au(金)の単層膜を用いている。第2ボンディング層174の膜厚は、好ましくは100nm〜2μmの範囲で用いられる。膜厚が過度に薄いと抵抗が高くなる傾向がある。膜厚が過度に厚いと、発光素子の製造コストが高くなる傾向がある。
【0077】
(第2保護密着層175)
図6に示すように、第2ボンディング層174の上面および側面には、第2ボンディング層174を覆うように第2保護密着層175が積層されている。第2保護密着層175は第2ボンディング層174の露出部位を除く領域を覆うように形成されている。そして、第2保護密着層175の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、第2保護密着層175の端部側はp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。この第2保護密着層175の側面側の端部は、p型半導体層160の上面160cと接するように設けられている。
【0078】
密着層の一例としての第2保護密着層175は、Au(金)で構成された第2ボンディング層174と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。本実施の形態において、第2保護密着層175は、例えば、Ta(タンタル)で形成されている。また、第2保護密着層175として、Ti(チタン)を用いることも可能である。
第2保護密着層175の膜厚は、好ましくは5nm〜50nmの範囲で用いられる。膜厚が過度に薄いと、第2ボンディング層174と保護層190との密着性が低下する傾向がある。膜厚が過度に厚いと、エッチング工程における作業時間が長くなり、半導体発光素子10の製造コストが高くなる傾向がある。
【0079】
(保護層190)
図5又は図6に示すように、SiO2等のシリコン酸化物からなる保護層190は、第1の電極180の一部および第2の電極170の一部を除いて、これら第1の電極180および第1の電極180を覆い、且つ、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側(図2参照))を覆うように積層されている。保護層190は、外部から水等が発光層150、第2の電極170および第1の電極180に浸入するのを抑制する保護層としての機能と、発光層150から出射された光のうち、直接基板110側に向かわず、しかも、第2の電極170の第2金属反射層173aや第1の電極180の第1金属反射層181で反射されなかった光を基板110側に向けて反射する補助反射層としての機能とを有している。保護層190の膜厚は、通常50nm〜1μmの範囲内で設けられる。保護層190の膜厚が過度に小さいと保護膜としての機能を損なう恐れがあり、使用環境によっては発光出力が短期間に低下する傾向がある。
【0080】
(バンプ21,22)
図1に示したバンプ(接続子)21,22は、実装基板側に予め形成しておいたボールバンプや半田バンプに限定されず、例えば、半導体発光素子10側の第1の電極180と第2の電極170の上に、予めメッキ法や蒸着を用いて突起状にバンプを形成しておいてもよい。
本実施の形態においては、この方法により半導体発光素子10側にバンプを作製することができる。特に、フォトリソグラフィー工程によりウェハ毎にバンプを形成できるので、4インチ以上の大口径ウェハでは、実装基板毎にバンプボールを形成していくよりも、生産負荷を大幅に減らすことができる利点がある。
【0081】
(膜厚部の平面形状)
図9は、透明導電層171に設けた膜厚部(凸部171b)の配置パターンの一例を示す図である。図9には、図6に示した第2の電極170の断面模式図において、IX方向から見た凸部171bの平面模式図が示されている。尚、図9では、第1の電極180及び第2の電極170の表面を覆う保護層190を省略している。また、導体部176(図6又は7参照)を凸部171bの中央部分に円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示している。
図9(a)〜図9(c)は、基板110の一辺の長さ(L)が350mmである半導体発光素子10において、複数の膜厚部(凸部171b)が互いに間隔(ピッチl)を設けて第2の電極170の全体に配置されたパターン(「孤立パターン」と称する)を示す図である。
【0082】
前述したように、透明導電層171が膜厚部を有するように基部171aに設けた凸部171bの形状は、例えば、平面視で所定の径(φ1=18μm)を有する円形である。複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(ピッチl)を隔てて設けられている。そして、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにピッチlの(1/2)ずつ平行方向にずれるように配置されている。
ここで、図9(a)では、複数の凸部171bのピッチlは42.4μmである(パターン1)。図9(b)では、複数の凸部171bのピッチlは35.4μmである(パターン2)。図9(c)では、複数の凸部171bのピッチlは30μmである(パターン3)。
【0083】
図10(a)〜図10(c)は、透明導電層171に設けた膜厚部(凸部171b)の格子状パターンの一例を示す図である。基板110の一辺の長さ(L)が350mmである半導体発光素子10において、透明導電層171の基部171aと合わせて膜厚部を構成する凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ1=18μm)を有する複数の円形部分(第1の凸部)と、これらの円形部分を結合する直線状部分(第2の凸部)とから構成された格子状パターンを有している。尚、導体部176(図6又は7参照)は、円形部分の凸部171bの中央部分にのみ形成され、図9と同様に、円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示している。
直線状部分の膜厚は、前述の凸部171b部分と同等な膜厚を有し、直線状部分の幅は、前述の凸部171bの平面長さ(凸部171bが円形の場合、直径に相当する)か、もしくはそれ以下の大きさで設けられ、通常、5μm〜18μmの範囲内で選択される。本実施の形態では8μmである。
【0084】
図10(a)では、膜厚部のパターンは、前述した図9(a)(パターン1)に示したように、断面形状が円形(φ1=18μm)の複数の凸部171bがピッチl=42.4μmを隔てて配置され、これらの凸部171bを複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成されている(パターン4)。パターン4では、直線状の部分は、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成されている。図10(b)では、膜厚部のパターンは、円形(φ1=18μm)の複数の凸部171bの一部を残し、他の凸部171bを、基部171aの一辺に対し平行な複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成されている(パターン5)。図10(c)では、膜厚部のパターンは、図10(a)の(パターン4)と図10(b)の(パターン5)を組み合わせた格子状パターンが形成されている(パターン6)。
【0085】
図11(a)〜図11(c)は、透明導電層171に設けた膜厚部(凸部171b)の孤立パターンの他の一例を示す図である。基板110の一辺の長さ(L)が350mmである半導体発光素子10において、前述したように基部171aに設けた凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ1=18μm)を有する円形である。尚、図9と同様に、導体部176(図6又は7参照)は中央部分の円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示した。複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(ピッチl)を設けて形成されている。そして、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにずれないように配置されている。
図11(a)では、複数の凸部171bのピッチlは27μmである(IZODOT II−(1))。図11(b)では、複数の凸部171bのピッチlは25μmである(IZODOT II−(2))。図11(c)では、複数の凸部171bのピッチlは23μmである(IZODOT II−(3))。
【0086】
図12は、透明導電層171に設けた膜厚部(凸部171b)の配置パターンの他の一例を示す図である。図12(a)〜図12(d)では、半導体発光素子10の第1の電極180がn型半導体層140の中央部に設けられ、円形の第1の開口部180aが半導体発光素子10の中央部分に形成されている。
透明導電層171の膜厚部は、第1の開口部180aが形成された部分を除き、透明導電層171の基部171a上に、所定の間隔を隔てて複数の凸部171bを配置することにより構成されている。前述したように基部171aに設けた凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ1=18μm)を有する円形である。尚、図9と同様に、導体部176(図6又は7参照)は中央部分の円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示した。
【0087】
図12(a)は、膜厚部(凸部171b)の孤立パターンを示す。複数の凸部171bは、基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(56μm)を隔てて設けられ、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにピッチlの(1/2)ずつ平行方向にずれるように配置されている(IZODOT−(1))。
【0088】
図12(b)は、膜厚部の孤立パターンの他の実施形態を示す。複数の凸部171bは、基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(25μm)を隔てて設けられ、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにずれないように配置されている(IZODOT−(2))。
【0089】
図12(c)は、基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、複数の凸部171bを複数の直線状部分で接続した格子状パターンを示す。直線状の部分は、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成されている(IZODOT−(3))。
基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、基部171aの一辺に対し平行に配置された複数の凸部171bの間隔(ピッチl)は82μmである。隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにピッチlの(1/2(=41μm))ずつ平行方法にずれるように配置されている。直線状部分の幅は8μmである。尚、導体部176(図6又は7参照)は、円形部分の凸部171bの中央部分にのみ形成され、図9と同様に、円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示している。また、第1の開口部180aの周囲に設けた4個の凸部171bは、第1の開口部180aの形状に倣うように形成された幅8μmの膜厚部分によって結合されている。
【0090】
図12(d)は、基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、複数の凸部171bを、基部171aの一辺に対し平行な複数の直線状部分で接続した格子状パターンと、図12(c)に示したように、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成された格子状パターンとを組み合わせた複合パターンが形成されている(IZODOT−(4))。
【0091】
(サブマウントへの実装工程)
図1に示す半導体発光素子10は、例えば、次のような操作を経てサブマウント基板10Bに実装される。初めに、半導体発光素子10のウェハ全面にTiW/Auを公知のスパッタ法で成膜した後、公知のフォトリソグラフィー技術により第1の開口部180a及び第2の開口部170aを開口させたレジストを形成し、続いて公知の成膜法により第1の電極180と第2の電極170上に所定膜厚のAuを成長させ、バンプ21、22を形成する。AlN基板を用いたサブマウント15上に発光チップを裏返して設置し、サブマウント配線11、12と、半導体発光素子10のバンプ21、22とがそれぞれ対応するように半導体発光素子10とサブマウント15とを位置合わせして電気的に接続する。AuSn(20質量%〜25質量%)を蒸着により成膜する。
【実施例】
【0092】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
(実施例1〜2、比較例1)
図2に示すように、一辺が500μm角(正方形)の大きさを有する半導体発光素子10において、図6に示す第2の電極170を、IZO製の透明導電層171の膜厚部のパターンが、図12(c)の格子状パターン(IZODOT−(3))を有する形状に調製した。
ここで、透明導電層171は、基部171aの厚さ(x)が25nmと50nmの2種類を形成した。各透明導電層171における膜厚部の厚さ(y)は、それぞれ200nmである。凸部171bの形状は、径(φ1)18μmの円形である。複数の凸部171b間の間隔(ピッチl)は82μmである。また、凸部171b間を結合する直線状部分の幅は8μmである。また、凸部171bの占有面積率(%)は、15%である。
【0094】
次に、透明導電層171上面に、6層の第1の絶縁層172aの間に5層の第2の絶縁層172bを挟み込むことにより、合計11層の積層構造を有する多層絶縁層172を成膜した。第1の絶縁層172aは、SiO2(酸化ケイ素:屈折率1.48(450nm波長)を用いて成膜した(膜厚76nm)。第2の絶縁層172bは、Ta2O5(酸化タンタル:屈折率2.16(550nm波長))を用いて成膜した(膜厚54nm)。第2の電極170における多層絶縁層172の全体の厚さ(H)は726nmである。尚、第2金属反射層173aは、銀(Ag)とアルミニウム(Al)を用いて各々成膜した。
また、導体部176(径φ2=8μm)は、(アモルファスIZO/銀合金)を用いて、凸部171bの上面においてのみ導体部176の一端と透明導電層171とが電気的に接続するように形成した。このように調製した4種類の半導体発光素子10についてLED特性を測定した。
【0095】
また、比較例として、一定の厚さ(200nm)を有する透明導電層(IZO)上面に、多層絶縁層172に代えて、SiO2(酸化ケイ素)を用いて、厚さ(5Q=380nm)の絶縁層を成膜し、それ以外は前述と同様な操作により2種類の半導体発光素子を調製した。
尚、SiO2(酸化ケイ素)を用いて成膜した絶縁層の厚さ(5Q)は、SiO2(酸化ケイ素)の屈折率nと発光層150の発光波長λ(nm)とを用いて定義したQ=(λ/4n)の5倍の数値(380nm)である。
【0096】
次に、図1に示すように、これら6種類の半導体発光素子10をそれぞれサブマウント15に実装し、6個のフリップチップ型の半導体発光装置1を調製した。続いて、これらの6個の半導体発光装置1について、それぞれ、LED特性を測定した。結果を表1に示す。尚、表1において、Vfは順方向電圧(単位:V)であり、Poは、発光出力(単位:mW)である。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示す結果から、複数の膜厚部を有する透明導電層171と屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172を有する半導体発光素子10を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(実施例1A〜2A)では、Po@20mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、32.94mW(透明導電層の基部(x)25nm)及び32.85mW(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1A;厚みは5Q相当)では、Po@20mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、30.16mWである。
同様に、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、31.20mW(透明導電層の基部(x)25nm)及び31.55mW(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1A)では、Po@20mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、27.25mWである。
一方、順方向電圧(Vf)は、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、2.93V(透明導電層の基部(x)25nm)及び2.91V(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1A)では、Po@20mAにおける順方向電圧(Vf)は、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、3.07Vであり、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、4.31Vである。
【0099】
さらに、複数の膜厚部を有する透明導電層171と屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172を有する半導体発光素子10を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(実施例1B〜2B)では、Po@80mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、113.01mW(透明導電層の基部(x)25nm)及び113.14mW(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1B)では、Po@80mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、103.80mWである。
同様に、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、107.22mW(透明導電層の基部(x)25nm)及び108.96mW(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1B)では、Po@80mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、93.82mWである。
一方、順方向電圧(Vf)は、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、3.23V(透明導電層の基部(x)25nm)及び3.19V(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1B)では、Po@80mAにおける順方向電圧(Vf)は、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、3.38Vであり、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、4.94Vである。
【0100】
このように、表1に示す結果から、複数の膜厚部を有する透明導電層171と屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172を有する半導体発光素子10を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(実施例1〜実施例2)では、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf:V)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:mW)が増大することが分かる。
この結果から、屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172は、第2金属反射層173aと組み合わせて、発光層150から出力される光を反射する反射膜としての優れた機能を有していることが分かる。また、複数の膜厚部を有する透明導電層171を用いることにより、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層を使用する場合と略同程度の順方向電圧(Vf:V)が保持されることが分かる。
【0101】
また、本実施例欄には詳細なデータの記載を省略するが、前述の透明導電層171に関連し、凸部171bを有する透明導電層171は、8%〜40%の面積率(%)の範囲で設けるのが発光出力と順方向電圧の面で特に好ましく、最適な条件が存在することが分かった。
即ち、凸部171bの占有面積率(%)が60%を超える面積率の条件下では、8%〜40%の面積率(%)を有する条件下での発光出力比べて、当該発光出力は低下した。この条件域では、順方向電圧は低く推移した。一方、凸部171bの占有面積率(%)が8%未満の面積率の条件下では、8%〜40%の面積率(%)を有する条件下での発光出力に比べて、当該発光出力は低下し、また順方向電圧(Vf:V)も高く推移した。
【0102】
また、本実施例欄には詳細なデータの記載を省略するが、前述の複数の凸部171b間の間隔(ピッチl)は実施例1〜実施例2で用いた82μm以外にも、図9〜図12に示すようなパターン(孤立パターン)を検討し、凸部171b間の間隔(ピッチl)は10μm〜120μmの範囲が好ましいことを確認した。
ピッチlが過度に大きいと、凸部171bを設けた膜厚部の透明導電層171に占める割合(A/B)が小さくなり、前述の発明の効果が低減した。特に、順方向電圧(Vf)が増大する傾向が見られた。ピッチlが過度に小さいと、前記割合(A/B)が大きくなり、発光強度が向上しない傾向が見られた。
【0103】
図13は、半導体発光装置1における発光強度の角度分布の測定結果を示す図である。図13(a)は、実施例1A(透明導電層171の基部171aの厚さ(x)25nm/多層絶縁層172)で使用した半導体発光装置1において、第2金属反射層173aの金属が銀(Ag)の場合(太線:多層Ag増反射)とアルミニウム(Al)の場合(細線:多層Al増反射)の測定結果である。
図13(b)は、実施例2A(透明導電層171の基部171aの厚さ(x)50nm/多層絶縁層172)で使用した半導体発光装置1において、第2金属反射層173aの金属が銀(Ag)の場合(太線:多層Ag増反射)とアルミニウム(Al)の場合(細線:多層Al増反射)の測定結果である。
図13(c)は、比較例1A(一定の厚さ(200nm)を有する透明導電層(IZO)/SiO2(酸化ケイ素)絶縁層(厚さ380nm))で使用した半導体発光装置において、第2金属反射層173aの金属が銀(Ag)の場合(太点線:単層Ag増反射)とアルミニウム(Al)の場合(細点線:単層Al増反射)の測定結果である。
【0104】
図13に示す結果から、複数の膜厚部を有する透明導電層171と屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172とを組み合わせた半導体発光素子10を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(実施例1A〜2A)の場合(図13(a)〜(b))は、角度90度における発光強度(「正面光」と称する)が2000(単位なし)を超えることが分かる。
これに対し、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層(IZO)とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を有する半導体発光素子を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(比較例1A)の場合(図13(c))は、角度90度における発光強度(正面光)が1500(単位なし)にも達しないことが分かる。
これにより、本実施の形態が適用される半導体発光装置1は、正面光が増大することが分かる。
【符号の説明】
【0105】
1…半導体発光装置、10…半導体発光素子、10B…サブマウント基板、11、12…サブマウント配線、15…サブマウント、21,22…バンプ(接続子)、100…積層半導体層、110…基板、110c,160c…上面、120…中間層、130…下地層、140…n型半導体層、140c…半導体層露出面、150…発光層、160…p型半導体層、170…第2の電極、171…透明導電層、171a…基部、171b…凸部、172…多層絶縁層、173a…第2金属反射層、174…第2ボンディング層、175…第2保護密着層、176…導体部、180…第1の電極、180a…第1の開口部、181…第1金属反射層、182e…第1ボンディング層、183…第1保護密着層、190…保護層
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及び半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、通常、透明電極上に、金(Au)等のボンディングワイヤと接続する部分にボンディングパッドを形成している。最近、発光波長に対して透光性の基板上に形成された半導体発光素子を裏返し、回路基板(サブマウント)またはパッケージに搭載するフリップチップボンディング(FC)実装技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透光性基板と、n型半導体層/発光層/p型半導体層が積層された半導体層と、n型半導体層に接合される負電極と、p型半導体層に接合される正電極と、正電極及び負電極にそれぞれ接続される正電極パッド及び負電極パッドとを備えたフリップチップ型半導体発光素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−173269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、FC実装技術によれば、正電極を構成する透明導電層の膜厚を薄くすることにより、発光層から出射される光の吸収が減少する傾向がある。一方、透明導電層の膜厚を過度に薄くするとシート抵抗が増大する傾向がある。そのため、電流の拡散が不良となり、順方向電圧(Vf)が上昇するおそれがある。
また、発光層からは、基板側および基板と反対側以外の方向にも光が出力されており、このような光は、光取り出し効率の向上に貢献しないという問題がある。
本発明の目的は、半導体発光素子のFC(フリップチップ)実装技術において、順方向電圧(Vf)の上昇を抑制し、且つ発光出力(Po)を増大させて光取り出し効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下、[1]〜[10]が提供される。
[1]請求項1に係る発明は、第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の導電性を示す第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、前記第2の電極は、他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す透明導電層と、前記透明導電層上に積層され且つ、第1の屈折率を有し前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と当該第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し当該発光層から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層と、前記多層絶縁層上に積層され且つ導電性を有する金属反射層と、前記多層絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含むことを特徴とする半導体発光素子である。
【0007】
[2]請求項2に係る発明は、前記透明導電層は、前記第2の半導体層の表面を連続的に覆うように形成された基部と、前記多層絶縁層側に当該基部より膜厚が大きい凸部を有するように形成された複数の前記膜厚部とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子である。
[3]請求項3に係る発明は、前記透明導電層の前記凸部は、一定の間隔を設けて前記基部上に配置されることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子である。
[4]請求項4に係る発明は、前記透明導電層の前記膜厚部は、一定の間隔を設けて前記基部上に配置された第1の凸部と、当該第1の凸部を互いに結合する直線状の第2の凸部を有する格子状パターンを構成することを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体発光素子である。
尚、透明導電層に形成された複数の膜厚部の配置パターンは、格子状パターンに限定されず、第2の半導体層の表面を連続的に覆う基部上に、互いに所定の間隔を設けて等間隔で又はランダムに形成されたパターン(「孤立パターン」と称する)でもよい。
[5]請求項5に係る発明は、前記多層絶縁層は、2つの前記第1の絶縁層によって1つの前記第2の絶縁層を挟み込む構造を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子である。
[6]請求項6に係る発明は、前記多層絶縁層は、前記透明導電層側の表面と前記金属反射層側の表面とに其々前記第1の屈折率を有する前記第1の絶縁層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体発光素子である。
[7]請求項7に係る発明は、前記導体部は、前記多層絶縁層の全体に分布するように複数形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体発光素子である。
[8]請求項8に係る発明は、前記第1の電極と外部との電気的な接続に用いられる第1の接続子と、前記第2の電極と外部との電気的な接続に用いられる第2の接続子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体発光素子である。
【0008】
[9]請求項9に係る発明は、半導体発光素子と当該半導体発光素子を実装する回路基板を備える半導体発光装置であって、前記半導体発光素子は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層が積層された積層半導体層と、当該n型半導体層と接続する負極と、当該p型半導体層の表面に設けた正極と、を備え、前記正極は、前記積層半導体層側と反対側に複数の凸部を有し且つインジウムを含む透明導電層と、前記透明導電層の前記凸部側に積層され且つ第1の屈折率を有し前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と当該第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し当該発光層から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層と、前記多層絶縁層上に積層され且つ銀を含む金属反射層と、前記多層絶縁層を通して形成され一端が前記透明導電層の前記凸部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される複数の導体部と、を含み、前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記正極と対向するように配置されることを特徴とする半導体発光装置である。
[10]請求項10に係る発明は、前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記負極及び前記正極と、それぞれ接続子により接続された一対の配線を備えることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の膜厚部を有しない透明導電層と屈折率が異なる複数の絶縁層からなる多層絶縁層を有しない半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:単位mW)が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】半導体発光装置の一例を示す断面模式図である。
【図2】半導体発光素子の一例を示す断面模式図である。
【図3】半導体発光素子の一例を示す平面模式図である。
【図4】積層半導体の一例を示す断面模式図である。
【図5】第1の電極の一例を示す断面模式図である。
【図6】第2の電極の一例を示す断面模式図である。
【図7】図6に示す第2の電極の一部の断面模式図である。
【図8】多層絶縁層の層構造の一例を示す断面模式図である。
【図9】透明導電層に設けた膜厚部の配置パターンの一例を示す図である。
【図10】透明導電層に設けた膜厚部の格子状パターンの一例を示す図である。
【図11】透明導電層に設けた膜厚部の孤立パターンの他の一例を示す図である。
【図12】透明導電層に設けた膜厚部の配置パターンの他の一例を示す図である。
【図13】半導体発光素子における発光強度の角度分布の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するための一例であり、実際の大きさを表すものではない。
【0012】
<半導体発光装置1>
図1は、本実施の形態が適用される半導体発光装置1の一例を示す断面模式図である。半導体発光装置1は、光を出射する半導体発光素子10と、回路基板の一例としてのサブマウント15とを備えている。サブマウント15は、半導体発光素子10を固定するとともに、半導体発光素子10に電力を供給する配線を設けている。
【0013】
半導体発光素子10は、基板110、中間層120、下地層130、積層半導体層100を備えている。また、半導体発光素子10は、正負一対の接続電極の一例として、負極として働く第1の電極180と、正極として働く第2の電極170とを備えている。積層半導体層100は、後述するように、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160から構成されている。尚、第1の電極180は、積層半導体層100の一部を切り欠いた部分に設けられている。
また、第1の電極180および第2の電極170の表面の一部を除き、中間層120、下地層130、積層半導体層100の表面および側面を覆う保護層190を備えている。尚、半導体発光素子10の詳細については後述する。
【0014】
サブマウント15は、サブマウント基板10B、サブマウント基板10B上に設けられたサブマウント配線11、12、半導体発光素子10の第1の電極180および第2の電極170とサブマウント配線11、12とを電気的に接続する接続子の一例としてのバンプ21,22を備えている。
【0015】
図1では、半導体発光素子10は、基板110側が上側に位置している。すなわち、半導体発光素子10は、裏返してサブマウント15に実装されている。このように、サブマウント15に対して、半導体発光素子10を裏返して実装することをフリップチップ(FC)実装またはフリップチップ(FC)ボンディングと呼ぶ。また、半導体発光素子10が裏返して実装されることから、この実装形式をフェイスダウン(FD)実装とも呼ぶ。
【0016】
本実施の形態における光の取り出しについて説明する。半導体発光素子10の積層半導体層100(具体的には、後述する図2における発光層150)において出射した光のうち、基板110側に進む光(矢印B)は、外部に取り出される(矢印D)。一方、発光層150が出射する光のうち、第2の電極170側に進む光は(矢印A)、第2の電極170に設けられ、発光層150が出射する光に対して反射性を示す反射層(後述する、図6に示す多層絶縁層172及び第2金属反射層173a)で反射され、基板110側に向かい、外部(図1の上側方向)に取り出される。また、積層半導体層100、中間層120、下地層130の側面から外部に取り出される光もある。以下、サブマウント15、半導体発光素子10の順に詳細な構成を説明する。
【0017】
(サブマウント15)
サブマウント15のサブマウント基板10Bとしては特に限定されず、例えば、セラミック基板、AlN(窒化アルミニウム)基板、Al(アルミ)基板、Cu(銅)基板、ガラスエポキシ基板等の絶縁性または導電性の各種の基板を選択して用いることができる。
尚、Al基板等の導電性の基板を用いるときには、サブマウント配線11,12とサブマウント基板10Bとを電気的に絶縁するため、サブマウント配線11,12の少なくとも一方は絶縁層を介して設けられている。
半導体発光素子10の第1の電極180及び第2の電極170とサブマウント基板10Bのサブマウント配線11,12とを接続するバンプ21,22としては、例えば、Sn(錫)を添加したAu(Au−Sn合金)ボールや半田ボールが用いうる。特に、接続(圧着)時の加熱温度が約300℃のAu−Sn合金が好ましい。
以下、半導体発光素子10について詳細な構成を説明する。
【0018】
<半導体発光素子10>
図2は、半導体発光素子10の一例を示す断面模式図である。図3は、図2においてIII方向からみた半導体発光素子10の一例を示す平面模式図である。図4は、半導体発光素子10を構成する積層半導体の一例を示す断面模式図である。尚、図2は、図3に示す半導体発光素子10のII−II断面図である。
図2に示すように、半導体発光素子10は、基板110と、基板110上に積層される中間層120と、中間層120上に積層される下地層130とを備える。また、半導体発光素子10は、下地層130上に積層される積層半導体層100を備えている。積層半導体層100は、下地層130側から、第1の導電型を有する第1の半導体層としてのn型半導体層140と、n型半導体層140上に積層される発光層150と、発光層150上に積層される第1の導電型とは逆の第2の導電型を有する第2の半導体層としてのp型半導体層160とから構成されている。
【0019】
半導体発光素子10は、積層されたp型半導体層160、発光層150、第1の電極180と、第2の電極170とを備えている。第1の電極180は、n型半導体層140の一部を切り欠くことによって露出した半導体層露出面140cに形成される。第2の電極170は、p型半導体層160の上面160cに形成される。尚、第1の電極180と第2の電極170の詳細な構造は後述する。
【0020】
半導体発光素子10は、第1の電極180および第2の電極170と、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側)に積層される保護層190をさらに備える。ただし、保護層190は、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側)の側壁面の全域、基板110の一部の上面110cを覆うように形成される。
【0021】
第1の電極180に対しては、図2において上方側となる面の一部を露出させ、後述するように、バンプ(第1の接続子)21により外部との電気的な接続に用いられる第1の開口部180aが形成されている。同様に、第2の電極170に対しては、図2において上方側となる面の一部を露出させ、後述するように、バンプ(第2の接続子)22により外部との電気的な接続に用いられる第2の開口部170aが形成されている。
【0022】
本実施の形態の半導体発光素子10は、基板110とは反対側となる一方の面側に第1の電極180および第2の電極170が形成された構造を有している。この半導体発光素子10においては、第1の電極180を負極、第2の電極170を正極とし、両者を介して積層半導体層100(より具体的にはp型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140)に電流を流すことで、発光層150が発光するようになっている。
【0023】
次に、図3に示すように、平面視したとき(図2に示す半導体発光素子10をIII方向からみた平面模式図)、第1の電極180は、平面形状が正方形の基板110の一つの角部に近接した部分に形成されている。第1の電極180は、露出した半導体層露出面140c上に形成され、さらに、第1の電極180の上面には、外部との電気的な接続に用いられる第1の開口部180aが形成されている。
第2の電極170は、第1の電極180を形成するためにエッチング等の手段により一部が除去された部分を除き、p型半導体層160の上面160cの略全面を覆うように形成されている。第2の電極170の上面には、第2の電極170を露出させ、外部との電気的な接続に用いられる第2の開口部170aが形成されている。また、後述するように、第2の電極170を構成する透明導電層171(図6参照)に設けた膜厚部171bと金属反射層とを電気的に接続する複数の導体部176が設けられている。尚、図3では、第1の電極180及び第2の電極170の表面を覆う保護層190を省略している。
次に、半導体発光素子10の各層について説明する。
【0024】
(基板110)
基板110としては、III族窒化物半導体結晶が表面にエピタキシャル成長される基板であれば、特に限定されず、各種の基板を選択して用いることができる。ただし、本実施の形態の半導体発光素子10は、後述するように、基板110側から光を取り出すようにフリップチップ実装されることから、発光層150から出射される光に対する光透過性を有していることが好ましい。例えば、サファイア、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムアルミニウム、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化リチウムガリウム、酸化リチウムアルミニウム、酸化ネオジウムガリウム、酸化ランタンストロンチウムアルミニウムタンタル、酸化ストロンチウムチタン、酸化チタン等からなる基板110を用いることができる。
また、上記材料の中でも、特に、C面を主面とするサファイアを基板110として用いることが好ましい。サファイアを基板110として用いる場合は、サファイアのC面上に中間層120(バッファ層)を形成するとよい。
【0025】
(積層半導体層100)
III族窒化物半導体層の一例としての積層半導体層100は、例えば、III族窒化物半導体からなる層であって、図2に示すように、基板110上に、n型半導体層140、発光層150およびp型半導体層160の各層が、この順で積層されて構成されている。また、図4に示すように、n型半導体層140、発光層150及びp型半導体層160の各層は、それぞれ、複数の半導体層から構成してもよい。積層半導体層100は、さらに下地層130、中間層120を含めて呼んでもよい。ここで、n型半導体層140は、電子をキャリアとする第1の導電型にて電気伝導を行い、p型半導体層160は、正孔をキャリアとする第2の導電型にて電気伝導を行う。
尚、積層半導体層100は、MOCVD法で形成すると結晶性の良いものが得られるが、スパッタ法によっても条件を最適化することで、MOCVD法よりも優れた結晶性を有する半導体層を形成できる。以下、順次説明する。
【0026】
(中間層120)
中間層120は、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなるものが好ましく、単結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)のものがより好ましい。
中間層120は、上述のように、例えば、多結晶のAlxGa1−xN(0≦x≦1)からなる厚さ0.01〜0.5μmのものとすることができる。中間層120の厚みが0.01μm未満であると、中間層120により基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和する効果が十分に得られない場合がある。また、中間層120の厚みが0.5μmを超えると、中間層120としての機能には変化が無いのにも関わらず、中間層120の成膜処理時間が長くなり、生産性が低下するおそれがある。
中間層120は、基板110と下地層130との格子定数の違いを緩和し、基板110の(0001)面(C面)上にC軸配向した単結晶層の形成を容易にする働きがある。したがって、中間層120の上を介し、より一層結晶性の良い下地層130が積層できる。尚、本実施の形態においては、中間層120を形成することが好ましいが、行なわなくても良い。
【0027】
また、中間層120は、III族窒化物半導体からなる六方晶系の結晶構造を持つものであってもよい。また、中間層120をなすIII族窒化物半導体の結晶は、単結晶構造を有するものが好ましく用いられる。III族窒化物半導体の結晶は、成長条件を制御することにより、上方向だけでなく、面内方向にも成長して単結晶構造を形成する。このため、中間層120の成膜条件を制御することにより、単結晶構造のIII族窒化物半導体の結晶からなる中間層120とすることができる。このような単結晶構造を有する中間層120を基板110上に成膜した場合、中間層120のバッファ機能が有効に作用するため、その上に成膜されたIII族窒化物半導体は良好な配向性及び結晶性を有する結晶膜となる。
【0028】
(下地層130)
下地層130としては、AlxGayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)を用いることができるが、AlxGa1−xN(0≦x<1)を用いると結晶性の良い下地層130を形成できるため好ましい。
下地層130の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.5μm以上であり、1μm以上が最も好ましい。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlxGa1−xN層が得られやすい。また、下地層130の膜厚は、生産コストの点で好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
下地層130の結晶性を良くするためには、下地層130は不純物をドーピングしない方が望ましい。しかし、p型あるいはn型の導電性が必要な場合は、アクセプター不純物あるいはドナー不純物を添加することができる。
【0029】
(n型半導体層140)
図4に示すように、例えば、第1の導電型を有する第1の半導体層の一例としての、電子をキャリアとするn型半導体層140は、nコンタクト層140aとnクラッド層140bとから構成されるのが好ましい。尚、nコンタクト層140aはnクラッド層140bを兼ねることも可能である。また、前述の下地層130をn型半導体層140に含めてもよい。
nコンタクト層140aは、第1の電極180を設けるための層である。nコンタクト層140aとしては、AlxGa1−xN層(0≦x<1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。
【0030】
また、nコンタクト層140aにはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1020/cm3、好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、第2の電極170との良好なオーミック接触を維持できる点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeが挙げられる。
nコンタクト層140aの膜厚は、0.5μm〜5μmに設定することが好ましく、1μm〜3μmの範囲に設定することがより好ましい。nコンタクト層140aの膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0031】
nコンタクト層140aと発光層150との間には、nクラッド層140bを設けることが好ましい。nクラッド層140bは、発光層150へのキャリアの注入とキャリアの閉じ込めを行なう層である。nクラッド層140bはAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。なお、本明細書中では、各元素の組成比を省略してAlGaNやGaInNのように記載することがある。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層140bをGaInNで形成する場合には、発光層150のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましい。
nクラッド層140bの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005〜0.5μmであり、より好ましくは0.005〜0.1μmである。nクラッド層140bのn型ドープ濃度は1×1017〜1×1020/cm3が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3である。ドープ濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および発光素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0032】
尚、nクラッド層140bを、超格子構造を含む層とする場合には、詳細な図示を省略するが、100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第1層と、n側第1層と組成が異なるとともに100オングストローム以下の膜厚を有したIII族窒化物半導体からなるn側第2層とが積層された構造を含むものであっても良い。また、nクラッド層140bは、n側第1層とn側第2層とが交互に繰返し積層された構造を含んだものであってもよく、GaInNとGaNとの交互構造又は組成の異なるGaInN同士の交互構造であることが好ましい。
【0033】
(発光層150)
n型半導体層140の上に積層される発光層150としては、単一量子井戸構造あるいは多重量子井戸構造などを採用することができる。
図4に示すような、量子井戸構造の井戸層150bとしては、Ga1−yInyN(0<y<0.4)からなるIII族窒化物半導体層が通常用いられる。井戸層150bの膜厚としては、量子効果の得られる程度の膜厚、例えば1〜10nmとすることができ、好ましくは2〜6nmとすると発光出力の点で好ましい。
また、多重量子井戸構造の発光層150の場合は、上記Ga1−yInyNを井戸層150bとし、井戸層150bよりバンドギャップエネルギが大きいAlzGa1−zN(0≦z<0.3)を障壁層150aとする。井戸層150bおよび障壁層150aには、設計により不純物をドープしてもしなくてもよい。
尚、本実施の形態では、発光層150が、青色光(発光波長λ=400nm〜465nm程度)を出力するようになっている。
【0034】
(p型半導体層160)
図4に示すように、例えば、第2の導電型を有する第2の半導体層の一例としての、正孔をキャリアとするp型半導体層160は、通常、pクラッド層160aおよびpコンタクト層160bから構成される。また、pコンタクト層160bがpクラッド層160aを兼ねることも可能である。
pクラッド層160aは、発光層150へのキャリアの閉じ込めとキャリアの注入とを行なう層である。pクラッド層160aとしては、発光層150のバンドギャップエネルギより大きくなる組成であり、発光層150へのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AlxGa1−xN(0<x≦0.4)のものが挙げられる。
【0035】
pクラッド層160aが、このようなAlGaNからなると、発光層150へのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層160aの膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。
pクラッド層160aのp型ドープ濃度は、1×1018〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cm3である。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
また、pクラッド層160aは、複数回積層した超格子構造としてもよく、AlGaNとAlGaNとの交互構造又はAlGaNとGaNとの交互構造であることが好ましい。
【0036】
pコンタクト層160bは、第2の電極170を設けるための層である。pコンタクト層160bは、AlxGa1−xN(0≦x≦0.4)であることが好ましい。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持および第2の電極170との良好なオーミック接触の維持が可能となる点で好ましい。
p型不純物(ドーパント)を1×1018〜1×1021/cm3の濃度、好ましくは5×1019〜5×1020/cm3の濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。
pコンタクト層160bの膜厚は、特に限定されないが、10nm〜500nmが好ましく、より好ましくは50nm〜200nmである。pコンタクト層160bの膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0037】
(第1の電極180)
図5は、第1の電極180の一例を示す断面模式図である。
第1の電極180は、n型半導体層140の半導体層露出面140c上に積層される第1金属反射層181と、図5において第1金属反射層181から上に向かって順に、第1の電極180における第1拡散防止層182a、第2拡散防止層182b、第3拡散防止層182c、第4拡散防止層182dが積層されている。第1の電極180における第4拡散防止層182d上には第1ボンディング層182eが積層され、さらに、第1ボンディング層182eの露出部位を除いて第1ボンディング層182eを覆うように積層される第1保護密着層183と有している。第1拡散防止層182a〜第4拡散防止層182dは、材料構成によりいずれかの層を省略してもよい。
【0038】
(第1金属反射層181)
図5に示すように、n型半導体層140の上には第1金属反射層181が積層されている。したがって、n型半導体層140との密着性の良い材質が好ましい。そして、第1金属反射層181の中央部は一定の膜厚を有し、ほぼ平坦に形成される一方、第1金属反射層181の端部側は膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の上面(半導体層露出面140c)に対し傾斜して形成されている。第1金属反射層181としては、アルミニウム(Al)またはAl合金が挙げられる。尚、第1金属反射層181を形成する前に、密着層を形成してもよい。また、第1金属反射層181は、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Nd(ネオジム)、Ag(銀)等の金属および少なくともこれらの1つを含む合金で構成されてもよい。なお、第1金属反射層181は、n型半導体層140に給電を行う機能も有していることから、その抵抗値は低いことが好ましい。第1金属反射層181の膜厚は、好ましくは80nm〜200nmの範囲で用いられる。膜厚が過度に薄いと、反射層としての反射率が低下する傾向がある。膜厚が過度に厚いと、半導体発光素子10の製造コストが高くなる傾向がある。
【0039】
(第1拡散防止層182a乃至第4拡散防止層182d)
第1の電極180における第1拡散防止層182a乃至第4拡散防止層182dは、接触状態にある第1金属反射層181を構成する金属と、第4拡散防止層182dを構成する金属の拡散を抑制する。
また、第4拡散防止層182dは、接触状態にある第3拡散防止層182cを構成する金属と第1ボンディング層182eを構成する金属の拡散を抑制する。第1の電極180における第1拡散防止層182a、第2拡散防止層182b、第3拡散防止層182cは、接触状態にある第1金属反射層181を構成する金属(この例では、Ag(銀))、および第4拡散防止層182dを構成する金属(この例では、Pt(プラチナ))の拡散を抑制する。第4拡散防止層182dは、接触状態にある第3拡散防止層182cを構成する金属(この例では、Ta(タンタル))と第1ボンディング層182eを構成する金属(この例では、Au(金))の拡散を抑制する。
第1の電極180においては、第1拡散防止層182a、第2拡散防止層182b、第3拡散防止層182c、第4拡散防止層182dは、第1金属反射層181の全域を覆うように形成されている。そして、各拡散防止層の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、それぞれの端部側は膜厚が漸次薄くなることにより、n型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜して形成されている。
【0040】
各拡散防止層(182a〜182d)は、それぞれの層が接触する層とのオーミックコンタクトがとれ、かつ、接触する層との接触抵抗が小さいものを用いることが好ましい。
本実施の形態では、第1拡散防止層182aとしてTa(タンタル)、第2拡散防止層182bとしてTaN(窒化タンタル)、第3拡散防止層182cとしてTa(タンタル)、第4拡散防止層182dとしてPt(プラチナ)が用いられている。
第1拡散防止層182aの膜厚は、好ましくは20nm〜200nmの範囲で用いられる。第2拡散防止層182bの膜厚は、好ましくは1nm〜50nmの範囲で用いられる。第3拡散防止層182cの膜厚は、好ましくは20nm〜200nmの範囲で用いられる。第4拡散防止層182dの膜厚は、好ましくは50nm〜200nmの範囲で用いられる。
【0041】
(第1ボンディング層182e)
図5に示すように、第1拡散防止層182a乃至第4拡散防止層182dの上面には第1ボンディング層182eが積層されている。第1ボンディング層182eは、第1拡散防止層182a乃至第4拡散防止層182dの全域を覆うように形成されている。そして、第1ボンディング層182eの中央部は一定の膜厚を有しほぼ平坦に形成される。第1ボンディング層182eの端部側は膜厚が漸次薄くなることでn型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜して形成されている。
【0042】
第1ボンディング層182eは、後述する第2の電極170の第2ボンディング層174(図6参照)と同様、少なくとも1層以上の金属層を備える。その場合、最も外側となる最表層の金属層には、例えば、Au(金)が用いられる。また、第1ボンディング層182eの全体の厚さは、好ましくは100nm〜2μmに設定されている。膜厚が過度に薄いと抵抗が高くなる傾向がある。膜厚が過度に厚いと、発光素子の製造コストが高くなる傾向がある。
【0043】
(第1保護密着層183)
図5に示すように、第1ボンディング層182eの上には第1保護密着層183が積層されている。第1保護密着層183は第1ボンディング層182eの露出部位を除く領域を覆うように形成されている。そして、第1保護密着層183の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、第1保護密着層183の端部側はn型半導体層140の半導体層露出面140cに対し傾斜して形成されている。この第1保護密着層183の側面側の端部は、n型半導体層140の半導体層露出面140cと接するように設けられている。
【0044】
第1保護密着層183は、例えば、Au(金)で構成された第1ボンディング層182eと保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。本実施の形態において、第1保護密着層183はTa(タンタル)で形成されている。ただし、第1保護密着層183として、Ti(チタン)を用いることも可能である。第1保護密着層183の膜厚は、好ましくは1nm〜50nmの範囲で用いられる。膜厚が過度に小さいと、保護層190や第1ボンディング層182eとの密着性が低下する傾向がある。膜厚が過度に大きいと、エッチング工程における作業時間が長くなり、半導体発光素子10の製造コストが高くなる傾向がある。
【0045】
(第2の電極170)
次に、第2の電極170の構成について説明する。図6は、第2の電極170の一例を示す断面模式図である。
図6に示すように、第2の電極170は、第2の半導体層としてのp型半導体層160の上面160cに積層される透明導電層171と、この透明導電層171上面に積層される多層絶縁層172と、多層絶縁層172上面に積層される第2金属反射層173aとが積層されている。第2金属反射層173a上面には、図6において第2金属反射層173aから上に向かって順に、第2の電極170における第1拡散防止層173b、第2拡散防止層173c、第3拡散防止層173d、第4拡散防止層173eが積層されている。さらに、第4拡散防止層173e上面には、第2ボンディング層174が積層され、第2ボンディング層174の露出部位を除いて第2ボンディング層174を覆うように積層される第2保護密着層175を有している。
図6に示すように、透明導電層171は、厚さが略一定の基部171aと基部171aより厚さが大きい膜厚部としての凸部171bとから構成されている。さらに、多層絶縁層172を通して設けられ、一端が透明導電層171の膜厚部(=凸部171b)に電気的に接続され且つ他端が第2金属反射層173aと電気的に接続される導体部176を有している。透明導電層171は、前述した第1の電極180(図5参照)を形成するために、公知なエッチング等の手段によって一部が除去されたp型半導体層160の上面160cの周縁部を除くほぼ全面に形成されている。透明導電層171、多層絶縁層172及び導体部176については後述する。
【0046】
(透明導電層171)
図6に示すように、本実施の形態では、透明導電層171は、p型半導体層160の上面160cを覆うように形成された連続的な基部171aと、p型半導体層160側と反対側の多層絶縁層172側に設けた膜厚部としての複数の凸部171bとから構成されている。透明導電層171の凸部171bを設けた部分は、他の部分より厚さが大きい膜厚部を構成している。
尚、図示しないが、本実施の形態に限定されず、膜厚部を構成するために、透明導電層171の凸部171bは、基部171aのp型半導体層160側に設けてもよい。その場合、透明導電層171の多層絶縁層172側は平坦な形状に形成される。
【0047】
図7は、第2の電極170の要部を説明する図である。
図7に示すように、透明導電層171の凸部171bを設けない領域の厚さ(基部171aの厚さ(x)という。)は、本実施の形態では、5nm〜150nmの範囲より選択することができる。また、好ましくは、本実施の形態では20nm〜100nmの範囲より選択される。例えば、参考データとして、凸部171bを有しない基部171aの厚さ(x)からなる透明導電層171のシート抵抗は、製造方法にも依存するものの、膜厚が10nmの場合は無限大(∞)であり、膜厚が20nmの場合は250Ω/□、膜厚が25nmの場合は175Ω/□、膜厚が50nmの場合は72Ω/□、膜厚が100nmの場合は29Ω/□、膜厚が200nmの場合は15Ω/□である。
基部171aの厚さ(x)が過度に薄いと、p型半導体層160とオーミックコンタクトが取れにくく、また順方向電圧(Vf)が上昇する傾向がある。基部171aの厚さ(x)が過度に厚いと、発光層150からの発光及び第2金属反射層173aからの反射光の光透過性の点で好ましくない傾向がある。
尚、本実施の形態では、基部171aの中央部は一定の膜厚を有し、p型半導体層160の上面160cに対しほぼ平坦に形成される一方、基部171aの端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0048】
基部171aに凸部171bを設けた膜厚部の厚さ(y)は、本実施の形態では、100nm〜300nmの範囲より選択される。但し、y>xの関係を有する。また、当該膜厚部の厚さ(y)は、好ましくは、150nm〜250nmの範囲より選択される。膜厚部の厚さ(y)が過度に薄い場合又は過度に厚い場合、発光層150からの発光及び第2金属反射層173aからの反射光の光透過性の点で好ましくない傾向がある。尚、透明導電層171は、FC実装技術における使用において、光吸収性があるが故に特定の膜厚以下の薄膜として使用するのが好ましい。
【0049】
基部171aに凸部171bを設けた膜厚部の幅(φ1)は、本実施の形態では、10μm〜30μmの範囲より選択される。また、好ましくは、15μm〜25μmの範囲より選択される。膜厚部の幅(φ1)が過度に大きいと、当該膜厚部による光の吸収により、反射層から光の強度に影響が出る傾向がある。膜厚部の幅(φ1)が過度に小さいと、多層絶縁層172中の貫通穴(導体部176:径φ2)とのアライメントが困難になる傾向がある。本実施の形態では、膜厚部(=凸部171b)の幅(φ1)を18μmにしている。
【0050】
尚、平面視における凸部171bを含む膜厚部の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形、五角形その他の多辺形(星形を含む)、楔形等が挙げられる。また、凸部171bの縦方向の断面形状は、特に限定されず、長方形、台形、円錐、角錐、楔形等が挙げられる。また、凸部171bの膜厚部は、これらの断面形状を有する凸部171bを結合する直線状部分とから構成される格子状パターンを有してもよい(後述)。さらにまた、凸部171bの平面断面積は特に限定されず、さらに、複数の凸部171bのそれぞれの平面断面積は、同一又は異なる場合も含まれる。
【0051】
透明導電層171における凸部171bを含む複数の膜厚部は、所定の間隔(ピッチl)で設けられる。本実施の形態では、ピッチlは、10μm〜120μmの範囲より選択される。また、好ましくは、20μm〜100μmの範囲より選択される。ピッチlが過度に大きいと、凸部171bを設けた膜厚部の透明導電層171に占める割合(A/B)が小さくなり、発明の効果が低減し、順方向電圧(Vf)が増大する傾向がある。ピッチlが過度に小さいと、前記割合(A/B)が大きくなり、発光強度が向上しない傾向がある。
【0052】
図9〜図12に示すように、本実施の形態では、凸部171bを有する透明導電層171の面積は、基部171aを有する透明導電層171の総面積に対して5%〜60%の面積率(%)の範囲で設けられる。なお、前記面積率(%)を凸部171bの占有面積率(%)ともいう。さらに、凸部171bを有する透明導電層171は、好ましくは7%〜50%の面積率(%)の範囲、さらに好ましく8%〜40%の面積率(%)の範囲で設けるのが良い。
【0053】
さらに、本発明では、後述の多層絶縁層172の構造と凸部171bを含む複数の膜厚部を格子状パターン又は互いに所定の間隔を設けて等間隔で又はランダムに形成する配置パターン(孤立パターン)に設けることにより、フリップチップにおける半導体発光素子10の正面光の発光強度が格段と増大する効果がある。また、凸部171bを含む複数の膜厚部を孤立パターンに設けることにより、発光層150からの光の反射効果も高めれ、半導体発光素子10の発光出力が増大する。
また、当該孤立パターンを前述の占有面積率(%)で設けることにより、半導体発光素子10の発光出力を増大すると共に、順方向電圧(Vf)を最適な範囲に低下させることができるので好ましい。
本発明が適用される半導体発光素子10の大きさは、特に制限を受けるものではないが、例えば一辺の大きさが1cm以下の矩形チップが好ましく、また1mm以下の矩形チップや350μm角の正方形チップや長尺チップが用いられる。
【0054】
透明導電層171を構成する材料は、酸化物の導電性材料であって、発光層150から出射される波長の光を、少なくとも80%程度透過する材料が用いられる。例えば、In(インジウム)を含む酸化物の一部は、他の透明導電膜と比較して光透過性および導電性の両者がともに優れている点で好ましい。Inを含む導電性の酸化物としては、例えば、ITO(酸化インジウム錫(In2O3−SnO2))、IZO(酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO))、IGO(酸化インジウムガリウム(In2O3−Ga2O3))、ICO(酸化インジウムセリウム(In2O3−CeO2))等が挙げられる。尚、これらの中に、例えば、フッ素等のドーパントが添加されていてもよい。また、例えば、Inを含まない酸化物として、例えば、キャリアをドープしたSnO2、ZnO2、TiO2等の導電性材料を用いることもできる。これらの材料を用い、当該技術分野でよく知られた慣用手段によって、透明導電層171を形成できる。また、透明導電層171を形成した後、透明導電層171の透明化と更なる低抵抗化とを目的とした熱アニールを施す場合もある。
【0055】
本実施の形態において、透明導電層171の材料として、結晶構造を有するものを使用することができる。例えば、特に、六方晶構造又はビックスバイト構造を有するIn2O3結晶を含む透光性材料(例えば、ITO、IZO等)が好ましい。また、例えば、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOを用いる場合、エッチング性に優れたアモルファスのIZO膜を用いて特定形状に加工することができ、さらにその後、熱処理等によりアモルファス状態から結晶を含む構造に転移させ、アモルファスのIZO膜よりも透光性の優れた電極に加工することができる。
【0056】
また、透明導電層171に用いるIZO膜としては、比抵抗が最も低くなる組成を使用することが好ましい。例えば、IZO中のZnO濃度は1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%の範囲が更に好ましく、10質量%が特に好ましい。
【0057】
透明導電層171に用いるIZO膜の熱処理は、O2を含まない雰囲気で行なうことが望ましく、O2を含まない雰囲気としては、N2雰囲気などの不活性ガス雰囲気や、またはN2などの不活性ガスとH2との混合ガス雰囲気などを挙げることができ、N2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気とすることが望ましい。尚、IZO膜の熱処理をN2雰囲気、またはN2とH2との混合ガス雰囲気中で行なうと、例えば、IZO膜を六方晶構造のIn2O3結晶を含む膜に結晶化させるとともに、IZO膜のシート抵抗を効果的に減少させることが可能である。
【0058】
IZO膜の熱処理温度は、500℃〜1000℃が好ましい。熱処理温度が過度に低いと、IZO膜を十分に結晶化できず、IZO膜の光透過率が十分に高いものとならない傾向がある。熱処理温度が過度に高いと、IZO膜は結晶化されているが光透過率が十分に高いものとならない傾向がある。また、この場合、IZO膜の下にある半導体層を劣化させるおそれもある。
【0059】
アモルファス状態のIZO膜を結晶化させる場合、成膜条件や熱処理条件などが異なるとIZO膜中の結晶構造が異なる。しかし、本発明の実施形態においては、他の層との接着性の点において、透明導電層171は材料に限定されないが結晶性の材料の方が好ましく、特に結晶性IZOの場合にはビックスバイト結晶構造のIn2O3結晶を含むIZOであってもよく、六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOであってもよい。特に六方晶構造のIn2O3結晶を含むIZOがよい。
【0060】
特に、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べ、p型半導体層160との密着性が良いため、仕事関数が高い。また、熱処理によって結晶化したIZO膜は、アモルファス状態のIZO膜に比べて、抵抗値が低下することから、半導体発光素子10を構成した際に、順方向電圧Vfを低減できる点でも好ましい。
【0061】
(多層絶縁層172)
図6に示すように、多層絶縁層172は、透明導電層171上面に透明導電層171の表面形状を倣うように形成されている。多層絶縁層172は、第1の屈折率(nL)を有し発光層150から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と第1の屈折率より高い第2の屈折率(nH)(nL<nH)を有し発光層150から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成されている。多層絶縁層172は、第2金属反射層173aと組み合わせて、発光層150から出力される光を反射する反射膜としての機能を有している。本実施の形態では、後述するように、多層絶縁層172を貫通するように形成された導体部176が設けられている。
多層絶縁層172は、発光層150から出力される光に対し少なくとも90%程度、好ましくは95%以上の反射性を有し、透明導電層171と比べて低屈折率、且つ絶縁性を有する。
【0062】
図8は、多層絶縁層172の層構造の一例を示す断面模式図である。
前述したように、多層絶縁層172は、第1の屈折率を有する第1の絶縁層172aと第1の屈折率より高い第2の屈折率を有する第2の絶縁層172bとを、交互に積層して構成されている。特に、本実施の形態では、2つの第1の絶縁層172aによって1つの第2の絶縁層172bを挟み込む構成を採用している。図8に示す例では、6層の第1の絶縁層172aの間に5層の第2の絶縁層172bを挟み込むことにより、合計11層の積層構造を有している。
【0063】
第1の絶縁層172aおよび第2の絶縁層172bには、発光層150から出力される光に対する光透過性能が高いものが用いられる。ここで、第1の絶縁層172aとしては、例えば、SiO2(酸化ケイ素:屈折率1.48(450nm波長))やMgF2(フッ化マグネシウム)を使用することができる。第2の絶縁層172bとしては、TiO2(酸化チタン)、Ta2O5(酸化タンタル:屈折率2.16(550nm波長))、ZrO2(酸化ジルコニウム)、HfO2(酸化ハフニウム)、Nb2O5(酸化ニオブ)を使用することができる。ただし、第2の絶縁層172bとの間の屈折率の関係が満たされるのであれば、第1の絶縁層172aに、これらTiO2、Ta2O5、ZrO2、HfO2、Nb2O5を用いてもかまわない。
【0064】
本実施の形態では、第1の絶縁層172aとしてSiO2(酸化ケイ素)を用い、第2の絶縁層172bとしてTa2O5(酸化タンタル)を用いている。これらは、発光層150の発光波長λ(=400nm〜450nm)の光に対し高い光透過性を有している。
なお、発光層150の発光波長λがさらに短く、近紫外領域の光を発する場合、第2の絶縁層172bとして、Nb2O5(酸化ニオブ)、ZrO2(酸化ジルコニウム)、HfO2(酸化ハフニウム)等の、光学バンドギャップがTiO2(酸化チタン)より大きいものを使用することが望ましい。ただし、発光層150が紫外領域の光を発する場合であっても、第1の絶縁層172aにはSiO2(酸化ケイ素)を用いることができる。
【0065】
本実施の形態では、第1の絶縁層172aの層厚さdLと、第2の絶縁層172bの層厚さdHは、発光層150の発光波長λ(nm)、発光波長λにおける第1の絶縁層172aの屈折率nL、発光波長λにおける第2の絶縁層172bの屈折率nHとしたとき(nL<nH)、以下に示す式(1)及び式(2)に基づいて設定されている。尚、式中、Rは任意の実数を表す。
【0066】
【数1】
【0067】
(導体部176)
図6に示すように、複数の導体部176は、それぞれ多層絶縁層172を貫通して形成され、一端が透明導電層171の凸部171bに電気的に接続され且つ他端が第2金属反射層173aと電気的に接続されるように設けられている。導体部176は、第2の電極170全体に複数形成され、各導体部176を流れる電流が発光層150の発光に用いられる電流となる。本実施の形態では、複数の導体部176を設け、p型半導体層160の上面160cの面上において、p型半導体層160の全面に電流を拡散させ、発光層150における発光むらを低減している。
【0068】
導体部176のそれぞれの径(φ2)(図7参照)は、前述した透明導電層171の膜厚部(=凸部171b)の幅(φ1)、または、凸部171bが前述したように互いに所定の間隔を設けて等間隔又はランダムに形成された配置パターン(孤立パターン)で設けられた1単位である場合は、径(φ1)と同等もしくはそれよりも小さい範囲で設けられる。なお、本明細書中では、φ1を単に径(φ1)と記載する。本実施の形態では、導体部176の径(φ2)は透明導電層171の膜厚部の当該φ1より小さく形成され、5μm〜30μmの範囲より選択される。また、好ましくは、5μm〜20μmの範囲より選択される。本実施の形態では、導体部176の径(φ2)を8μmに形成している。尚、平面視における導体部176の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、台形、五角形その他の多辺形(星形を含む)、楔形等が挙げられる。
【0069】
導体部176は、例えば、予め成膜された多層絶縁層172に、ドライエッチングあるいはリフトオフ等を用いて形成された貫通孔に導電性材料を充填することにより形成することができる。導体部176は、少なくとも1種の導電性材料を用いて形成され、また複数の導電性材料を用いて形成してもよい。導体部176の形成に使用する導電性材料としては、例えば、アモルファスIZO/銀合金/Ta等が挙げられる。本実施の形態においては、多層絶縁層172に複数の導体部176を設けることにより、第2の電極170の面上において、透明導電層171を介し、p型半導体層160の全面に亘り均一に電流を拡散させる。このことにより、発光層150における発光むらを改善することを可能とする。導体部176は、ドライエッチあるいはリフトオフ等により形成された貫通孔の壁面及び底面に施される。あるいは、多層絶縁層172の貫通孔に金属を充填したものとして形成されてもよい。
【0070】
(第2金属反射層173a)
図6に示すように、第2金属反射層173aは、多層絶縁層172の全域を覆うように形成されている。第2金属反射層173aの中央部は、一定の膜厚を有しほぼ平坦に形成される一方、第2金属反射層173aの端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。第2金属反射層173aは、p型半導体層160に給電を行う機能も有しているため、接触抵抗を低く抑える必要がある。
【0071】
第2金属反射層173aは、Ag(銀)、Pd(パラジウム)、Cu(銅)、Nd(ネオジム)Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)などの金属および少なくともこれらの1つを含む合金で構成されている。特に、第2金属反射層173aとして銀または銀合金を用いた場合は、発光層150から出射される青色〜緑色の領域の波長の光に対して、高い光反射性を有しているため好ましい。第2金属反射層173aとして銀を用いた場合、使用環境によっては耐熱性、耐高温高湿性が十分でない場合もあり、銀合金が好ましく使用される。
第2金属反射層173aの膜厚は、好ましくは80nm〜200nmの範囲で用いられ
る。膜厚が過度に薄いと、反射層としての反射率が低下する傾向がある。膜厚が過度に厚いと、半導体発光素子10の製造コストが高くなる傾向がある。
【0072】
(第1拡散防止層173b〜第4拡散防止層173e)
第2の電極170における第1拡散防止層173b〜第4拡散防止層173eは、接触状態にある第2金属反射層173aを構成する金属と、第4拡散防止層173eを構成する金属の拡散を抑制する。
また、第4拡散防止層173eは、接触状態にある第3拡散防止層173dを構成する金属と第2ボンディング層174を構成する金属の拡散を抑制する。この第1拡散防止層173b、第2拡散防止層173c、第3拡散防止層173dは、接触状態にある第2金属反射層173aを構成する金属(この例ではAg(銀))、および第4拡散防止層173eを構成する金属(この例ではPt(プラチナ))の拡散を抑制する。第4拡散防止層173eは、接触状態にある第3拡散防止層173dを構成する金属(この例では、Ta(タンタル))と第2ボンディング層174を構成する金属(この例では、Au(金))の拡散を抑制する。
【0073】
第2の電極170においては、第1拡散防止層173b、第2拡散防止層173c、第3拡散防止層173d、第4拡散防止層173eは、第2金属反射層173aの全域を覆うように形成されている。そして、第2の電極170においては、第1拡散防止層173b〜第4拡散防止層173eは、第2金属反射層173aの全域を覆うように形成されている。そして、各拡散防止層の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、それぞれの端部側は膜厚が漸次薄くなり、p型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0074】
第2の電極170における各拡散防止層(173b〜173e)は、それぞれの層が接触する層とのオーミックコンタクトがとれ、かつ、接触する層との接触抵抗が小さいものを用いることが好ましい。
本実施の形態では、第1拡散防止層173bとしてTa(タンタル)、第2拡散防止層173cとしてTaN(窒化タンタル)、第3拡散防止層173dとしてTa(タンタル)、第4拡散防止層173eとしてPt(プラチナ)が用いられている。
第1拡散防止層173bの膜厚は、好ましくは20nm〜200nmの範囲で用いられる。第2拡散防止層173cの膜厚は、好ましくは1nm〜50nmの範囲で用いられる。第3拡散防止層173dの膜厚は、好ましくは20nm〜200nmの範囲で用いられる。第4拡散防止層173eの膜厚は、好ましくは50nm〜200nmの範囲で用いられる。
【0075】
(第2ボンディング層174)
図6に示すように、第4拡散防止層173eの上面には、第2金属反射層173aを覆うように第2ボンディング層174が積層されている。第2ボンディング層174は、第4拡散防止層173eの全域を覆うように形成されている。第2ボンディング層174の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される。本実施の形態では、第2ボンディング層174の端部側は膜厚が漸次薄くなることでp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。
【0076】
外部との電気的な接続に用いられる接続層としての第2ボンディング層174は、最も内側の第4拡散防止層173e等と接するように、少なくとも1層の金属層を備える。また、最も外側となる最表層の金属層には、例えば、Au(金)が用いられる。さらに、本実施の形態では、第2ボンディング層174として、Au(金)の単層膜を用いている。第2ボンディング層174の膜厚は、好ましくは100nm〜2μmの範囲で用いられる。膜厚が過度に薄いと抵抗が高くなる傾向がある。膜厚が過度に厚いと、発光素子の製造コストが高くなる傾向がある。
【0077】
(第2保護密着層175)
図6に示すように、第2ボンディング層174の上面および側面には、第2ボンディング層174を覆うように第2保護密着層175が積層されている。第2保護密着層175は第2ボンディング層174の露出部位を除く領域を覆うように形成されている。そして、第2保護密着層175の中央部は一定の膜厚を有し且つほぼ平坦に形成される一方、第2保護密着層175の端部側はp型半導体層160の上面160cに対し傾斜して形成されている。この第2保護密着層175の側面側の端部は、p型半導体層160の上面160cと接するように設けられている。
【0078】
密着層の一例としての第2保護密着層175は、Au(金)で構成された第2ボンディング層174と保護層190との物理的な密着性を向上させるために設けられている。本実施の形態において、第2保護密着層175は、例えば、Ta(タンタル)で形成されている。また、第2保護密着層175として、Ti(チタン)を用いることも可能である。
第2保護密着層175の膜厚は、好ましくは5nm〜50nmの範囲で用いられる。膜厚が過度に薄いと、第2ボンディング層174と保護層190との密着性が低下する傾向がある。膜厚が過度に厚いと、エッチング工程における作業時間が長くなり、半導体発光素子10の製造コストが高くなる傾向がある。
【0079】
(保護層190)
図5又は図6に示すように、SiO2等のシリコン酸化物からなる保護層190は、第1の電極180の一部および第2の電極170の一部を除いて、これら第1の電極180および第1の電極180を覆い、且つ、p型半導体層160、発光層150およびn型半導体層140の一部(半導体層露出面140cよりも発光層150側(図2参照))を覆うように積層されている。保護層190は、外部から水等が発光層150、第2の電極170および第1の電極180に浸入するのを抑制する保護層としての機能と、発光層150から出射された光のうち、直接基板110側に向かわず、しかも、第2の電極170の第2金属反射層173aや第1の電極180の第1金属反射層181で反射されなかった光を基板110側に向けて反射する補助反射層としての機能とを有している。保護層190の膜厚は、通常50nm〜1μmの範囲内で設けられる。保護層190の膜厚が過度に小さいと保護膜としての機能を損なう恐れがあり、使用環境によっては発光出力が短期間に低下する傾向がある。
【0080】
(バンプ21,22)
図1に示したバンプ(接続子)21,22は、実装基板側に予め形成しておいたボールバンプや半田バンプに限定されず、例えば、半導体発光素子10側の第1の電極180と第2の電極170の上に、予めメッキ法や蒸着を用いて突起状にバンプを形成しておいてもよい。
本実施の形態においては、この方法により半導体発光素子10側にバンプを作製することができる。特に、フォトリソグラフィー工程によりウェハ毎にバンプを形成できるので、4インチ以上の大口径ウェハでは、実装基板毎にバンプボールを形成していくよりも、生産負荷を大幅に減らすことができる利点がある。
【0081】
(膜厚部の平面形状)
図9は、透明導電層171に設けた膜厚部(凸部171b)の配置パターンの一例を示す図である。図9には、図6に示した第2の電極170の断面模式図において、IX方向から見た凸部171bの平面模式図が示されている。尚、図9では、第1の電極180及び第2の電極170の表面を覆う保護層190を省略している。また、導体部176(図6又は7参照)を凸部171bの中央部分に円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示している。
図9(a)〜図9(c)は、基板110の一辺の長さ(L)が350mmである半導体発光素子10において、複数の膜厚部(凸部171b)が互いに間隔(ピッチl)を設けて第2の電極170の全体に配置されたパターン(「孤立パターン」と称する)を示す図である。
【0082】
前述したように、透明導電層171が膜厚部を有するように基部171aに設けた凸部171bの形状は、例えば、平面視で所定の径(φ1=18μm)を有する円形である。複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(ピッチl)を隔てて設けられている。そして、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにピッチlの(1/2)ずつ平行方向にずれるように配置されている。
ここで、図9(a)では、複数の凸部171bのピッチlは42.4μmである(パターン1)。図9(b)では、複数の凸部171bのピッチlは35.4μmである(パターン2)。図9(c)では、複数の凸部171bのピッチlは30μmである(パターン3)。
【0083】
図10(a)〜図10(c)は、透明導電層171に設けた膜厚部(凸部171b)の格子状パターンの一例を示す図である。基板110の一辺の長さ(L)が350mmである半導体発光素子10において、透明導電層171の基部171aと合わせて膜厚部を構成する凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ1=18μm)を有する複数の円形部分(第1の凸部)と、これらの円形部分を結合する直線状部分(第2の凸部)とから構成された格子状パターンを有している。尚、導体部176(図6又は7参照)は、円形部分の凸部171bの中央部分にのみ形成され、図9と同様に、円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示している。
直線状部分の膜厚は、前述の凸部171b部分と同等な膜厚を有し、直線状部分の幅は、前述の凸部171bの平面長さ(凸部171bが円形の場合、直径に相当する)か、もしくはそれ以下の大きさで設けられ、通常、5μm〜18μmの範囲内で選択される。本実施の形態では8μmである。
【0084】
図10(a)では、膜厚部のパターンは、前述した図9(a)(パターン1)に示したように、断面形状が円形(φ1=18μm)の複数の凸部171bがピッチl=42.4μmを隔てて配置され、これらの凸部171bを複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成されている(パターン4)。パターン4では、直線状の部分は、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成されている。図10(b)では、膜厚部のパターンは、円形(φ1=18μm)の複数の凸部171bの一部を残し、他の凸部171bを、基部171aの一辺に対し平行な複数の直線状部分で接続した格子状パターンが形成されている(パターン5)。図10(c)では、膜厚部のパターンは、図10(a)の(パターン4)と図10(b)の(パターン5)を組み合わせた格子状パターンが形成されている(パターン6)。
【0085】
図11(a)〜図11(c)は、透明導電層171に設けた膜厚部(凸部171b)の孤立パターンの他の一例を示す図である。基板110の一辺の長さ(L)が350mmである半導体発光素子10において、前述したように基部171aに設けた凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ1=18μm)を有する円形である。尚、図9と同様に、導体部176(図6又は7参照)は中央部分の円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示した。複数の凸部171bは、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(ピッチl)を設けて形成されている。そして、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにずれないように配置されている。
図11(a)では、複数の凸部171bのピッチlは27μmである(IZODOT II−(1))。図11(b)では、複数の凸部171bのピッチlは25μmである(IZODOT II−(2))。図11(c)では、複数の凸部171bのピッチlは23μmである(IZODOT II−(3))。
【0086】
図12は、透明導電層171に設けた膜厚部(凸部171b)の配置パターンの他の一例を示す図である。図12(a)〜図12(d)では、半導体発光素子10の第1の電極180がn型半導体層140の中央部に設けられ、円形の第1の開口部180aが半導体発光素子10の中央部分に形成されている。
透明導電層171の膜厚部は、第1の開口部180aが形成された部分を除き、透明導電層171の基部171a上に、所定の間隔を隔てて複数の凸部171bを配置することにより構成されている。前述したように基部171aに設けた凸部171bの形状は、平面視で所定の径(φ1=18μm)を有する円形である。尚、図9と同様に、導体部176(図6又は7参照)は中央部分の円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示した。
【0087】
図12(a)は、膜厚部(凸部171b)の孤立パターンを示す。複数の凸部171bは、基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(56μm)を隔てて設けられ、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにピッチlの(1/2)ずつ平行方向にずれるように配置されている(IZODOT−(1))。
【0088】
図12(b)は、膜厚部の孤立パターンの他の実施形態を示す。複数の凸部171bは、基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、基部171a上の全体に亘り所定の間隔(25μm)を隔てて設けられ、隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにずれないように配置されている(IZODOT−(2))。
【0089】
図12(c)は、基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、複数の凸部171bを複数の直線状部分で接続した格子状パターンを示す。直線状の部分は、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成されている(IZODOT−(3))。
基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、基部171aの一辺に対し平行に配置された複数の凸部171bの間隔(ピッチl)は82μmである。隣接する一組の列において、隣の列の凸部171bとは互いにピッチlの(1/2(=41μm))ずつ平行方法にずれるように配置されている。直線状部分の幅は8μmである。尚、導体部176(図6又は7参照)は、円形部分の凸部171bの中央部分にのみ形成され、図9と同様に、円形の空白部分(径φ2=8μm)として表示している。また、第1の開口部180aの周囲に設けた4個の凸部171bは、第1の開口部180aの形状に倣うように形成された幅8μmの膜厚部分によって結合されている。
【0090】
図12(d)は、基板110の一辺の長さ(L)が500mmである半導体発光素子10において、複数の凸部171bを、基部171aの一辺に対し平行な複数の直線状部分で接続した格子状パターンと、図12(c)に示したように、透明導電層171の基部171aの一辺に対し略45度の角度で交差するように形成された格子状パターンとを組み合わせた複合パターンが形成されている(IZODOT−(4))。
【0091】
(サブマウントへの実装工程)
図1に示す半導体発光素子10は、例えば、次のような操作を経てサブマウント基板10Bに実装される。初めに、半導体発光素子10のウェハ全面にTiW/Auを公知のスパッタ法で成膜した後、公知のフォトリソグラフィー技術により第1の開口部180a及び第2の開口部170aを開口させたレジストを形成し、続いて公知の成膜法により第1の電極180と第2の電極170上に所定膜厚のAuを成長させ、バンプ21、22を形成する。AlN基板を用いたサブマウント15上に発光チップを裏返して設置し、サブマウント配線11、12と、半導体発光素子10のバンプ21、22とがそれぞれ対応するように半導体発光素子10とサブマウント15とを位置合わせして電気的に接続する。AuSn(20質量%〜25質量%)を蒸着により成膜する。
【実施例】
【0092】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0093】
(実施例1〜2、比較例1)
図2に示すように、一辺が500μm角(正方形)の大きさを有する半導体発光素子10において、図6に示す第2の電極170を、IZO製の透明導電層171の膜厚部のパターンが、図12(c)の格子状パターン(IZODOT−(3))を有する形状に調製した。
ここで、透明導電層171は、基部171aの厚さ(x)が25nmと50nmの2種類を形成した。各透明導電層171における膜厚部の厚さ(y)は、それぞれ200nmである。凸部171bの形状は、径(φ1)18μmの円形である。複数の凸部171b間の間隔(ピッチl)は82μmである。また、凸部171b間を結合する直線状部分の幅は8μmである。また、凸部171bの占有面積率(%)は、15%である。
【0094】
次に、透明導電層171上面に、6層の第1の絶縁層172aの間に5層の第2の絶縁層172bを挟み込むことにより、合計11層の積層構造を有する多層絶縁層172を成膜した。第1の絶縁層172aは、SiO2(酸化ケイ素:屈折率1.48(450nm波長)を用いて成膜した(膜厚76nm)。第2の絶縁層172bは、Ta2O5(酸化タンタル:屈折率2.16(550nm波長))を用いて成膜した(膜厚54nm)。第2の電極170における多層絶縁層172の全体の厚さ(H)は726nmである。尚、第2金属反射層173aは、銀(Ag)とアルミニウム(Al)を用いて各々成膜した。
また、導体部176(径φ2=8μm)は、(アモルファスIZO/銀合金)を用いて、凸部171bの上面においてのみ導体部176の一端と透明導電層171とが電気的に接続するように形成した。このように調製した4種類の半導体発光素子10についてLED特性を測定した。
【0095】
また、比較例として、一定の厚さ(200nm)を有する透明導電層(IZO)上面に、多層絶縁層172に代えて、SiO2(酸化ケイ素)を用いて、厚さ(5Q=380nm)の絶縁層を成膜し、それ以外は前述と同様な操作により2種類の半導体発光素子を調製した。
尚、SiO2(酸化ケイ素)を用いて成膜した絶縁層の厚さ(5Q)は、SiO2(酸化ケイ素)の屈折率nと発光層150の発光波長λ(nm)とを用いて定義したQ=(λ/4n)の5倍の数値(380nm)である。
【0096】
次に、図1に示すように、これら6種類の半導体発光素子10をそれぞれサブマウント15に実装し、6個のフリップチップ型の半導体発光装置1を調製した。続いて、これらの6個の半導体発光装置1について、それぞれ、LED特性を測定した。結果を表1に示す。尚、表1において、Vfは順方向電圧(単位:V)であり、Poは、発光出力(単位:mW)である。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示す結果から、複数の膜厚部を有する透明導電層171と屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172を有する半導体発光素子10を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(実施例1A〜2A)では、Po@20mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、32.94mW(透明導電層の基部(x)25nm)及び32.85mW(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1A;厚みは5Q相当)では、Po@20mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、30.16mWである。
同様に、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、31.20mW(透明導電層の基部(x)25nm)及び31.55mW(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1A)では、Po@20mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、27.25mWである。
一方、順方向電圧(Vf)は、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、2.93V(透明導電層の基部(x)25nm)及び2.91V(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1A)では、Po@20mAにおける順方向電圧(Vf)は、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、3.07Vであり、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、4.31Vである。
【0099】
さらに、複数の膜厚部を有する透明導電層171と屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172を有する半導体発光素子10を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(実施例1B〜2B)では、Po@80mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、113.01mW(透明導電層の基部(x)25nm)及び113.14mW(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1B)では、Po@80mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、103.80mWである。
同様に、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、107.22mW(透明導電層の基部(x)25nm)及び108.96mW(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1B)では、Po@80mAにおける発光出力Poは、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、93.82mWである。
一方、順方向電圧(Vf)は、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、3.23V(透明導電層の基部(x)25nm)及び3.19V(透明導電層の基部(x)50nm)である。これに対し、従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子(比較例1B)では、Po@80mAにおける順方向電圧(Vf)は、第2金属反射層が銀(Ag)の場合、3.38Vであり、第2金属反射層がアルミニウム(Al)の場合、4.94Vである。
【0100】
このように、表1に示す結果から、複数の膜厚部を有する透明導電層171と屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172を有する半導体発光素子10を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(実施例1〜実施例2)では、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を備えた半導体発光素子と比較して、順方向電圧(Vf:V)の上昇を抑制しつつ、発光出力(Po:mW)が増大することが分かる。
この結果から、屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172は、第2金属反射層173aと組み合わせて、発光層150から出力される光を反射する反射膜としての優れた機能を有していることが分かる。また、複数の膜厚部を有する透明導電層171を用いることにより、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層を使用する場合と略同程度の順方向電圧(Vf:V)が保持されることが分かる。
【0101】
また、本実施例欄には詳細なデータの記載を省略するが、前述の透明導電層171に関連し、凸部171bを有する透明導電層171は、8%〜40%の面積率(%)の範囲で設けるのが発光出力と順方向電圧の面で特に好ましく、最適な条件が存在することが分かった。
即ち、凸部171bの占有面積率(%)が60%を超える面積率の条件下では、8%〜40%の面積率(%)を有する条件下での発光出力比べて、当該発光出力は低下した。この条件域では、順方向電圧は低く推移した。一方、凸部171bの占有面積率(%)が8%未満の面積率の条件下では、8%〜40%の面積率(%)を有する条件下での発光出力に比べて、当該発光出力は低下し、また順方向電圧(Vf:V)も高く推移した。
【0102】
また、本実施例欄には詳細なデータの記載を省略するが、前述の複数の凸部171b間の間隔(ピッチl)は実施例1〜実施例2で用いた82μm以外にも、図9〜図12に示すようなパターン(孤立パターン)を検討し、凸部171b間の間隔(ピッチl)は10μm〜120μmの範囲が好ましいことを確認した。
ピッチlが過度に大きいと、凸部171bを設けた膜厚部の透明導電層171に占める割合(A/B)が小さくなり、前述の発明の効果が低減した。特に、順方向電圧(Vf)が増大する傾向が見られた。ピッチlが過度に小さいと、前記割合(A/B)が大きくなり、発光強度が向上しない傾向が見られた。
【0103】
図13は、半導体発光装置1における発光強度の角度分布の測定結果を示す図である。図13(a)は、実施例1A(透明導電層171の基部171aの厚さ(x)25nm/多層絶縁層172)で使用した半導体発光装置1において、第2金属反射層173aの金属が銀(Ag)の場合(太線:多層Ag増反射)とアルミニウム(Al)の場合(細線:多層Al増反射)の測定結果である。
図13(b)は、実施例2A(透明導電層171の基部171aの厚さ(x)50nm/多層絶縁層172)で使用した半導体発光装置1において、第2金属反射層173aの金属が銀(Ag)の場合(太線:多層Ag増反射)とアルミニウム(Al)の場合(細線:多層Al増反射)の測定結果である。
図13(c)は、比較例1A(一定の厚さ(200nm)を有する透明導電層(IZO)/SiO2(酸化ケイ素)絶縁層(厚さ380nm))で使用した半導体発光装置において、第2金属反射層173aの金属が銀(Ag)の場合(太点線:単層Ag増反射)とアルミニウム(Al)の場合(細点線:単層Al増反射)の測定結果である。
【0104】
図13に示す結果から、複数の膜厚部を有する透明導電層171と屈折率が異なる複数の層の積層体からなる多層絶縁層172とを組み合わせた半導体発光素子10を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(実施例1A〜2A)の場合(図13(a)〜(b))は、角度90度における発光強度(「正面光」と称する)が2000(単位なし)を超えることが分かる。
これに対し、複数の膜厚部を有しない従来の透明導電層(IZO)とSiO2(酸化ケイ素)からなる単層の絶縁層を有する半導体発光素子を用いて調製したFC(フリップチップ)型半導体発光装置(比較例1A)の場合(図13(c))は、角度90度における発光強度(正面光)が1500(単位なし)にも達しないことが分かる。
これにより、本実施の形態が適用される半導体発光装置1は、正面光が増大することが分かる。
【符号の説明】
【0105】
1…半導体発光装置、10…半導体発光素子、10B…サブマウント基板、11、12…サブマウント配線、15…サブマウント、21,22…バンプ(接続子)、100…積層半導体層、110…基板、110c,160c…上面、120…中間層、130…下地層、140…n型半導体層、140c…半導体層露出面、150…発光層、160…p型半導体層、170…第2の電極、171…透明導電層、171a…基部、171b…凸部、172…多層絶縁層、173a…第2金属反射層、174…第2ボンディング層、175…第2保護密着層、176…導体部、180…第1の電極、180a…第1の開口部、181…第1金属反射層、182e…第1ボンディング層、183…第1保護密着層、190…保護層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の導電性を示す第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、
前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、
前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、
前記第2の電極は、
他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す透明導電層と、
前記透明導電層上に積層され且つ、第1の屈折率を有し前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と当該第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し当該発光層から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層と、
前記多層絶縁層上に積層され且つ導電性を有する金属反射層と、
前記多層絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含む
ことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記透明導電層は、前記第2の半導体層の表面を連続的に覆うように形成された基部と、前記多層絶縁層側に当該基部より膜厚が大きい凸部を有するように形成された複数の前記膜厚部とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記透明導電層の前記凸部は、一定の間隔を設けて前記基部上に配置されることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記透明導電層の前記膜厚部は、一定の間隔を設けて前記基部上に配置された第1の凸部と、当該第1の凸部を互いに結合する直線状の第2の凸部を有する格子状パターンを構成することを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記多層絶縁層は、2つの前記第1の絶縁層によって1つの前記第2の絶縁層を挟み込む構造を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記多層絶縁層は、前記透明導電層側の表面と前記金属反射層側の表面とに其々前記第1の屈折率を有する前記第1の絶縁層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記導体部は、前記多層絶縁層の全体に分布するように複数形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1の電極と外部との電気的な接続に用いられる第1の接続子と、前記第2の電極と外部との電気的な接続に用いられる第2の接続子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
半導体発光素子と当該半導体発光素子を実装する回路基板を備える半導体発光装置であって、
前記半導体発光素子は、
n型半導体層、発光層及びp型半導体層が積層された積層半導体層と、当該n型半導体層と接続する負極と、当該p型半導体層の表面に設けた正極と、を備え、
前記正極は、
前記積層半導体層側と反対側に複数の凸部を有し且つインジウムを含む透明導電層と、
前記透明導電層の前記凸部側に積層され且つ第1の屈折率を有し前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と当該第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し当該発光層から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層と、
前記多層絶縁層上に積層され且つ銀を含む金属反射層と、
前記多層絶縁層を通して形成され一端が前記透明導電層の前記凸部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される複数の導体部と、を含み、
前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記正極と対向するように配置される
ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記負極及び前記正極と、それぞれ接続子により接続された一対の配線を備えることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置。
【請求項1】
第1の導電型を有する第1の半導体層、発光層及び当該第1の導電型とは逆の導電性を示す第2の導電型を有する第2の半導体層が積層された積層半導体層と、
前記第1の半導体層と接続する第1の電極と、
前記第2の半導体層の表面に設けた第2の電極と、を備え、
前記第2の電極は、
他の部分より膜厚が大きい複数の膜厚部を有し且つ前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す透明導電層と、
前記透明導電層上に積層され且つ、第1の屈折率を有し前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と当該第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し当該発光層から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層と、
前記多層絶縁層上に積層され且つ導電性を有する金属反射層と、
前記多層絶縁層を通して設けられ、一端が前記透明導電層の前記膜厚部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される導体部と、を含む
ことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記透明導電層は、前記第2の半導体層の表面を連続的に覆うように形成された基部と、前記多層絶縁層側に当該基部より膜厚が大きい凸部を有するように形成された複数の前記膜厚部とから構成されることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記透明導電層の前記凸部は、一定の間隔を設けて前記基部上に配置されることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記透明導電層の前記膜厚部は、一定の間隔を設けて前記基部上に配置された第1の凸部と、当該第1の凸部を互いに結合する直線状の第2の凸部を有する格子状パターンを構成することを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記多層絶縁層は、2つの前記第1の絶縁層によって1つの前記第2の絶縁層を挟み込む構造を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記多層絶縁層は、前記透明導電層側の表面と前記金属反射層側の表面とに其々前記第1の屈折率を有する前記第1の絶縁層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記導体部は、前記多層絶縁層の全体に分布するように複数形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1の電極と外部との電気的な接続に用いられる第1の接続子と、前記第2の電極と外部との電気的な接続に用いられる第2の接続子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
半導体発光素子と当該半導体発光素子を実装する回路基板を備える半導体発光装置であって、
前記半導体発光素子は、
n型半導体層、発光層及びp型半導体層が積層された積層半導体層と、当該n型半導体層と接続する負極と、当該p型半導体層の表面に設けた正極と、を備え、
前記正極は、
前記積層半導体層側と反対側に複数の凸部を有し且つインジウムを含む透明導電層と、
前記透明導電層の前記凸部側に積層され且つ第1の屈折率を有し前記発光層から出射される光に対して光透過性を示す第1の絶縁層と当該第1の屈折率より高い第2の屈折率を有し当該発光層から出射される光に対して光透過性を示す第2の絶縁層とを交互に積層して構成された多層絶縁層と、
前記多層絶縁層上に積層され且つ銀を含む金属反射層と、
前記多層絶縁層を通して形成され一端が前記透明導電層の前記凸部に電気的に接続され且つ他端が前記金属反射層と電気的に接続される複数の導体部と、を含み、
前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記正極と対向するように配置される
ことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
前記回路基板は、前記半導体発光素子の前記負極及び前記正極と、それぞれ接続子により接続された一対の配線を備えることを特徴とする請求項9に記載の半導体発光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−4546(P2013−4546A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130741(P2011−130741)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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