説明

半導体発光装置及びその製造方法

【課題】出射光の色ムラを抑制できる半導体発光装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体発光装置10は、上面側に凹部15aを有する基材15と、凹部15aの底面に搭載された半導体発光素子11とを備える。基材15に、凹部15a内と基材15の外面とを連結する少なくとも1つの導入口17が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体発光装置及びその製造方法に関し、特に、半導体発光素子及び当該半導体発光素子を覆う蛍光体樹脂を備える半導体発光装置において、出射光の色ムラを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な半導体発光装置100の一例を図10に示す。半導体発光装置100は、上面に凹部115aを備える基材115と、凹部115aの底面に設置された半導体発光素子111と、半導体発光素子111に対する配線のための通電ワイヤ112と、凹部115a内にて半導体発光素子111及び通電ワイヤ112を封止する蛍光体樹脂層114とを備える。蛍光体樹脂層114は、半導体発光素子111からの出射光の一部を吸収し、波長変換して再出射する蛍光体113を含む。
【0003】
半導体発光装置100は、半導体発光素子111からの出射光と、蛍光体113により波長変換して再出射された再出射光との混色光として白色光を実現している。
【0004】
また、半導体発光装置100を製造する際には、基材115の凹部115aの底面に半導体発光素子111を設置し、通電ワイヤ112による配線を行なった後、上方から凹部115a内に蛍光体樹脂を注入する。これにより、半導体発光素子111及び通電ワイヤ112を封止する蛍光体樹脂層114を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−530349号公報
【特許文献2】特開2006−286672号公報
【特許文献3】特開2005−209852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体発光素子を蛍光体樹脂により封止した前記の半導体発光装置において、色ムラが発生している。
【0007】
このことに鑑みて、本開示の技術の目的は、出射光の色ムラが抑制された半導体発光装置及びその製造方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本願発明者らは種々の検討を行ない、色ムラが発生する原因として、半導体発光素子からの出射光と蛍光体からの出射光との比率変動に着目した。更に、このような比率変動が生じる原因の1つとして、図10にも示すように、半導体発光素子111を覆う蛍光体樹脂層114の厚みが不均一となることに注目した。
【0009】
蛍光体樹脂層114が厚い部分を透過する光は、蛍光体113により波長変換された再出射光の比率が高くなるので、蛍光体113からの再出射光に近い色になる。対して、蛍光体樹脂層114が薄い部分を透過する光は、蛍光体113により波長変換された再出射光の比率が低くなるので、半導体発光素子111からの出射光に近い色になる。この結果として、色ムラが発生する。
【0010】
更に、蛍光体樹脂層114の厚さが不均一となる原因として、前記の半導体発光装置100の製造方法について検討した。前記の通り、蛍光体樹脂は、半導体発光素子111及び通電ワイヤ112を設置した後に、凹部115aの上方から注入される。この場合、半導体発光素子111及び通電ワイヤ112の影響によって、蛍光体樹脂の流れ込み量に差が発生し、結果として蛍光体樹脂層114の厚みが不均一になる。
【0011】
以上に基づき、本開示の半導体発光装置は、上面側に凹部を有する基材と、凹部の底面に搭載された半導体発光素子とを備え、基材に、凹部内と基材の外面とを連結する少なくとも1つの導入口が設けられている。ここで、基材の外面とは、下面又は外側面を指している。
【0012】
尚、導入口は、凹部の底面と基材の下面とを連結していても良い。
【0013】
また、凹部内に、半導体発光素子を覆うように形成された封止材料層と、封止材料層上に設けられた蛍光体樹脂層とを更に備えていても良い。
【0014】
このような半導体発光装置によると、蛍光体樹脂からなる蛍光体樹脂層の厚さを均一にすることができる。従って、蛍光体樹脂層の厚さの不均一に起因する色ムラが抑制された半導体発光装置が実現される。
【0015】
また、封止材料層は、透光性樹脂からなっていても良い。
【0016】
また、封止材料層は、気体からなっていても良い。
【0017】
封止材料層としては、このようなものを用いることができる。
【0018】
また、本開示の半導体装置において、凹部内に、半導体発光素子を覆うように形成された蛍光体樹脂層を更に備えていても良い。
【0019】
また、蛍光体樹脂層上に設けられ、透光性樹脂からなる封止材料層を更に備えていても良い。
【0020】
このように、半導体発光素子上を蛍光体樹脂層が覆っている構造、及び、更にその上を封止材料層が覆っている構造であっても良い。
【0021】
また、蛍光体樹脂層は、半導体発光素子による出射光の一部を吸収し、波長変換して出射する蛍光体を含んでいても良い。
【0022】
蛍光体樹脂層として、このようになっていても良い。
【0023】
また、導入口は、複数設けられていても良い。
【0024】
このようにすると、厚さがより均一な蛍光体樹脂層を有する半導体発光装置が実現される。
【0025】
また、凹部の底面における半導体発光素子の周囲に、溝が形成されていても良い。
【0026】
また、溝は、導入口と接続されていても良い。
【0027】
このようにすることによっても、厚さがより均一な蛍光体樹脂層を有する半導体発光装置が実現される。
【0028】
また、凹部における底面の周縁部に、蓄積部が形成されていても良い。
【0029】
このようにすると、凹部における底面の周縁部に蛍光体樹脂層が残留するのを避けて、色ムラの発生を更に抑制することができる。
【0030】
また、導入口内に、蓋が設けられていても良い。
【0031】
また、導入口は、基材の外側から凹部側に向かって狭くなる形状を有していても良い。
【0032】
このようにすると、導入口から導入された封止材料等の漏れを抑制することができる。
【0033】
次に、本開示の半導体発光装置の製造方法は、上面側に凹部を有し且つ凹部内と外面とを連結する少なくとも1つの導入口が設けられた基材を準備する工程(a)と、凹部の底面に、半導体発光素子を搭載する工程(b)と、工程(b)の後に、凹部内に蛍光体樹脂を導入する工程(c)と、工程(b)の後に、凹部内に封止材料を導入する工程(d)とを備え、蛍光体樹脂及び封止材料の少なくとも一方は、導入口を通じて凹部内に導入される。
【0034】
このような製造方法によると、蛍光体樹脂からなる層の厚さの均一性を高めることができ、色ムラの低減された半導体発光装置を製造することができる。
【0035】
尚、工程(d)は、工程(c)の後に行ない、封止材料は、前記導入口を通じて前記凹部内に導入されても良い。
【0036】
このようにすると、封止材料により下から持ち上げられる蛍光体樹脂層の厚さをより均一にすることができ、色ムラの発生を抑制することができる。
【0037】
また、工程(c)は、工程(d)の後に行ない、蛍光体樹脂は、導入口を通じて凹部内に導入されると共に、半導体発光素子と封止材料との間に導入されて半導体発光素子を覆うのであっても良い。
【0038】
このようにすると、封止材料層に圧迫されながら蛍光体樹脂が導入されるので、蛍光体樹脂層の厚さが均一になる。この結果、色ムラが抑制される。
【発明の効果】
【0039】
本開示の半導体発光装置及びその製造方法によると、半導体発光素子及びその上を覆う蛍光体樹脂層を備える半導体発光装置において、色ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(a)及び(b)は、本開示の一実施形態の例示的半導体発光装置について模式的に示す断面図及び平面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、例示的半導体発光装置の製造方法について説明する図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、例示的半導体発光装置における導入口の配置について、他の例を示す図である。
【図4】図4(a)及び(b)は、例示的半導体発光装置における導入口について更に説明する図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、本開示の変形例1における例示的半導体発光装置の凹部底面に設ける溝について説明する図である。
【図6】図6(a)及び(b)は、本開示の変形例2における例示的半導体発光装置について示す断面図及び平面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、本開示の変形例3における例示的半導体発光装置について示す断面図及び平面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、本開示の変形例4における例示的半導体発光装置について示す2例の断面図である。
【図9】図9(a)〜(c)は、本開示の変形例5における例示的半導体発光装置について示す3例の断面図である。
【図10】図10は、従来の半導体発光装置について示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】

以下に、本開示の実施形態に係る半導体発光装置及びその製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0042】
図1(a)及び(b)は、本実施形態の例示的半導体発光装置10の模式的な断面構成及び平面視構成を示し、図1(a)の断面が図1(b)のIa-Ia'線に対応する。但し、図1(b)において、封止材料層18及び蛍光体樹脂層14(蛍光体14a及び樹脂14b)は省略している。
【0043】
図1(a)及び(b)に示す通り、半導体発光装置10は、上面に凹部15aを有する基材15(パッケージ)と、凹部15aの底面に搭載された半導体発光素子11と、通電ワイヤ12とを備える。半導体発光素子11は、通電ワイヤ12、基材15の下面等に配置された外部接続端子(図示せず)等を介して外部と電気的に接続される。
【0044】
半導体発光素子11は、半導体基板上に半導体層の積層体が形成された構造を有し、例えば青色光を出射する。尚、半導体発光素子11をフリップチップとすることもできる。この場合には、通電ワイヤ12に代えて、半導体発光素子11の底面に設けられたバンプによって電気的接続を行なってもよい。
【0045】
基材15の凹部15aは、半導体発光素子11が搭載される底部と、半導体発光素子11の周囲を囲む側壁とにより構成されている。従って、半導体発光素子11は、発光の方向を除いて基材15に囲まれている。凹部15aの側壁は半導体発光素子11に比べて十分に高くなっており、凹部15a内に樹脂を注入して樹脂封止を行なうことができる。
【0046】
また、凹部15a内において、半導体発光素子11を封止する封止材料層18と、その上に積層された蛍光体樹脂層14とが形成されている。
【0047】
また、凹部15aの内側と、基材15の下面とを連結させる導入口17が設けられている。半導体発光装置10の例では、導入口17は、凹部15aの底面から直接、基材15の下面に貫通している。
【0048】
蛍光体樹脂層14は、半導体発光素子11からの出射光が必ず蛍光体樹脂層14内を透過するように、凹部15a内に設けられている。材料としては、例えば、シリコーン系樹脂を用いることができる。
【0049】
また、蛍光体樹脂層14は、半導体発光素子11が出射する光を透過させる樹脂14b中に、例えば青色光の波長を黄色光の波長に変換する蛍光体14aが含まれる構成である。蛍光体14aとしては、例えば、イットリウムとアルミニウムとの複合酸化物(Y3 Al5 12)からなるガーネット構造のYAG結晶を用いても良い。その他、(Y、Gd)3 Al5 12:Ce3+又は(Tb、Gd)3 Al5 12:Ce3+等を用いることも可能である。
【0050】
このような半導体発光装置10によると、半導体発光素子11から出射された出射光のうち一部は、蛍光体樹脂層14を透過する際に、蛍光体14aにより波長を変換されて再出射される。後に説明する通り、蛍光体樹脂層14の厚さの均一性が高められているので、半導体発光素子11から出射された光と、蛍光体14aから再出射された光との比率の変動が小さくなっている。このようにして、色ムラが抑制されている。
【0051】
次に、半導体発光装置10の製造方法について説明する。図2(a)〜(c)は、蛍光体樹脂層14及び封止材料層18を形成する工程を説明する図である。
【0052】
まず、図2(a)に示すように、半導体発光素子11及び通電ワイヤ12が配置された基材15を封止金型31上に搭載する。この際、封止金型31の充填口32と、基材15の導入口17との位置合わせを行なう。
【0053】
次に、図2(b)に示すように、封止金型31の充填口32を通して、導入口17から凹部15a内に液状の蛍光体樹脂14c(硬化して蛍光体樹脂層14となる材料)を導入する。
【0054】
更に、図2(c)に示すように、封止金型31の充填口32を通して、導入口17から液状の封止材料18a(硬化して封止材料層18となる材料)を導入する。
【0055】
このような順序の導入を行なうと、先に形成される蛍光体樹脂14cを、封止材料18aが下から持ち上げることになる。結果として、蛍光体樹脂層14は均一な厚さを有することになる。また、半導体発光素子11及び通電ワイヤ12の影響により発生する蛍光体樹脂14cの流れ込み量の差を小さくすることができ、凹部15aの側壁を蛍光体樹脂14cが這い上がることによって生じる厚さのバラツキを軽減できる。これらのことから、色ムラが抑制された半導体発光装置を実現することができる。
【0056】
また、封止材料18aを基材15の下面から導入口17を通じて行なうので、上面から蛍光体樹脂14cの厚さ及び偏りを測定しながら封止材料18aを導入することができる。従って、蛍光体樹脂層14の表面高さの高精度化が容易に実現される。
【0057】
尚、蛍光体樹脂14cについて、導入口17を通じて凹部15aの底面から導入する例を図2(a)及び(b)に示して説明した。しかしながら、導入口17を介することなく、凹部15aの上方から導入しても良い。この場合にも、蛍光体樹脂14cの導入後に導入口17から封止材料18aを導入することにより、蛍光体樹脂層14の厚さを均一にすることができる。
【0058】
また、封止材料層18は、蛍光体樹脂層14を構成する樹脂14bと同じ材料であってもよい。つまり、封止材料18aと同じ材料である樹脂14bと、蛍光体14aとによって蛍光体樹脂14cが構成されていても良い。また、封止材料18aとしては、透光性の材料、例えば窒素等の気体又はシリコーン系の透明樹脂等を用いても良い。
【0059】
(導入口の配置の例)
次に、基材15における凹部15aの底面に設けられる導入口17の配置について、具体例を挙げて更に説明する。
【0060】
図3(a)〜(d)は、凹部15aの底面における半導体発光素子11、通電ワイヤ12及び導入口17の配置について拡大して示す模式的な平面図である。
【0061】
図3(a)の例では、長方形状である半導体発光素子11の対向する一組の辺(短辺)にそれぞれ沿うように、2つの導入口17が配置されている。半導体発光素子11を挟んで両側に配置されていることになる。
【0062】
図3(b)の例では、図3(a)の配置に加えて、半導体発光素子11の対向するもう一組の辺(長辺)にもそれぞれ沿うように、合計4つの導入口17が配置されている。
【0063】
図3(c)の例では、半導体発光素子11のコーナー部付近にそれぞれ導入口17(合計4つ)が配置されている。
【0064】
図3(d)の例では、図3(a)の配置に加えて、半導体発光素子11の対向するもう一組の辺(長辺)にそれぞれ沿うように2つずつの導入口17が配置されている。つまり、合計6つの導入口17が設けられている。
【0065】
導入口17は、以上に例示したような配置であっても良いし、更に他の配置であっても良い。ここで、凹部15aの底面の中心に対し、半導体発光素子11及び通電ワイヤ12が対称に配置されている場合には、各導入口17についても前記底面の中心に対称に配置するのが好ましい。このようにすると、封止材料18aが凹部15a内に均等に充填されやすく、結果として、蛍光体樹脂14cの表面高さの高精度化が容易に実現される。
【0066】
また、導入口17についてより詳しく見ると、図4(a)に示すように、射出口17a及び注入口17bとからなる。射出口17aは、凹部15a内に封止材料18aを射出するために凹部15a内に繋がるように形成されている。注入口17bは、封止材料18aを注入するために封止金型31(図2(a)等を参照)と接する面に繋がるように形成されている。
【0067】
ここで、射出口17aは、既に述べた通り、凹部15aの底面に設けることが望ましい。しかしながら、凹部15aの側壁に設けることも可能である。この例を図4(b)に示す。この場合、射出口17aを設ける位置は、凹部15aの側壁におけるできるだけ底面に近い位置とする。これは、封止材料18aを蛍光体樹脂14cに対して下から導入する必要があることによる。
【0068】
また、注入口17bは、基材15の下面に設けることが望ましい。図1(a)に示したように、射出口17aを凹部15aの底面、注入口17bを基材15の下面に設けると、導入口17の長さを最短とすることができるので、封止材料18a等の導入の効率が最も高くなる。しかしながら、例えば封止金型31の構成との関係等から、注入口17bを基材15の側面に繋がるように設けても良い。
【0069】
このように、配置される導入口17の位置及び数を設定することにより、半導体発光素子11のサイズ及び形状、通電ワイヤ12の本数及び配置等を変更しても、封止材料層18の充填精度を維持することができる。
【0070】
(変形例1)
次に、変形例1について、図5(a)〜(e)を参照して説明する。ここでは、導入口17から導入される封止材料18aを誘導するために設けられる誘導溝について説明する。
【0071】
図5(a)及び(b)は、当該変形例の半導体発光装置10aの断面図及び平面図である。封止材料層18及び蛍光体樹脂層14につては図示を省略している、図1(a)及び(b)と同様である。これらの図に示す通り、基材15における凹部15aの底面に、溝19が設けられている。溝19は、半導体発光素子11を囲むように設けられる。また、各導入口17を繋ぐように溝19を設けても良い。
【0072】
図5(b)の例では、半導体発光素子11の4辺に沿って導入口17が配置されている。溝19は、これらの導入口17を繋ぐように、半導体発光素子11の外周に沿って四角形状に形成されている。
【0073】
このような溝19を設けると、導入口17から導入される封止材料18aを凹部15aの底面に平行な方向に誘導し、充填の精度を向上させることができる。また、半導体発光素子11のサイズ、通電ワイヤ12の本数等を変更した場合にも、封止材料層18の充填精度を維持することができる。更に、封止材料18aを局所的に充填することもでき、封止材料層18の厚さをより容易に性御することができる。
【0074】
図5(c)及び(d)は、溝19の平面視形状について他の例を示す拡大図である。
【0075】
図5(c)の場合、半導体発光素子11の角付近にそれぞれ導入口17が配置されている。溝19は、これらの導入口17を繋ぐように、半導体発光素子11の外周に沿って四角形状に形成されている。
【0076】
図5(d)の場合、半導体発光素子11の4辺に沿って導入口17が配置されている。溝19は、これらの導入口17を繋ぐように、半導体発光素子11を囲む楕円状に形成されている。
【0077】
溝19の平面視形状としては、このようになっていても良い。
【0078】
(変形例2)
次に、変形例2について、本変形例の半導体発光装置10bの断面図及び平面図である図6(a)及び(b)を参照して説明する。
【0079】
半導体発光装置10bにおいて、凹部15aを有する基材15、半導体発光素子11、通電ワイヤ12、導入口17、溝19等については、変形例1の半導体発光装置10aと同様である。図6(b)において、蛍光体14a及び樹脂14bの個別の図示は省略している。
【0080】
図1(a)及び(b)に示す半導体発光装置10の場合、凹部15a内において、半導体発光素子11を覆うように封止材料層18が形成され、その上に蛍光体樹脂層14が積層されている。
【0081】
これに対し、本変形例の半導体発光装置10bの場合、蛍光体樹脂層14は、半導体発光素子11の周囲(側面及び上面)を覆うように形成されている。また、蛍光体樹脂層14を覆うように、凹部15a内に、封止材料層18が形成されている。
【0082】
このような構造を得るためには、蛍光体樹脂層14よりも先に先に封止材料層18を形成する。つまり、凹部15a内に半導体発光素子11及び通電ワイヤ12を設けた後、凹部15a内に、上方又は導入口17から、封止材料18aを導入する。封止材料18aとしては、例えば、シリコーン系樹脂を用いても良い。
【0083】
この後、基材15の下面から導入口17を通じて、蛍光体樹脂14c(蛍光体14a及び樹脂14b)を導入する。このようにすると、導入される蛍光体樹脂14cは、封止材料18aに圧迫されることから、半導体発光素子11の周辺において均一な厚さを有するようになる。従って、封止材料18a及び蛍光体樹脂14cが硬化すると、均一な厚さをもって半導体発光素子11を覆う蛍光体樹脂層14が得られる。
【0084】
尚、導入口17及び溝19について、半導体発光素子11の周辺にできるだけ近付けるのが良い。これにより、蛍光体樹脂層14の厚さをより精度良く制御できる。
【0085】
このように、蛍光体樹脂層14の厚さを均一にすることができるので、色ムラが抑制された半導体発光装置を実現することができる。
【0086】
(変形例3)
次に、変形例3について、本変形例の半導体発光装置10cの断面図及び平面図である図7(a)及び(b)を参照して説明する。
【0087】
半導体発光装置10cは、凹部15aの底面外周(底面と側面との角付近)において、封止材料18aを溜めることができる蓄積部21を有している。
【0088】
本変形例においても、凹部15a内に蛍光体樹脂14cを導入した後、導入口17を通じて基材15の下面から封止材料18aを導入する。この際、蓄積部21の無い図1(a)及び(b)のような構造の場合、蛍光体樹脂14cは、凹部15aの底面外周に残留しやすい。これに対し、蓄積部21を設けると、凹部15aの底面外周において、蛍光体樹脂14cを封止材料18aにより押し退けることができ、当該部分に蛍光体樹脂14cが残留するのを抑えることができる。これにより、色ムラの抑制をより確実にすることができる。
【0089】
尚、図7(a)及び(b)に示している通り、凹部15aの底面外周付近にも導入口(導入口17c)を設けても良い。このようにすると、より確実に底面外周付近において封止材料18aにより蛍光体樹脂14cを押し退けることができる。
【0090】
(変形例4)
次に、変形例4について、図8(a)及び(b)を参照して説明する。
【0091】
図8(a)に示すように、半導体発光装置10は、導入口17を塞いで封止材料18a等を密封する蓋22を備えていても良い。このようにすると、導入口17を通じて導入された封止材料18aが硬化前に漏れ出すのを防ぐことができる。従って、半導体発光装置10をより容易に製造することができる。
【0092】
また、図8(b)に示すように、基材15の下面側から凹部15aの側に向かって細くなるテーパー形状の導入口17としても良い。このようにすると、基材15の下面側においては導入口17の開口が広いので封止材料18aの導入が容易であり、且つ、凹部15a側においては導入口17の開口が狭いので封止材料18aの漏れを抑えることができる。従って、半導体発光装置10をより容易に製造することができる。
【0093】
また、導入口17に、封止材料18aの逆流を抑える逆止弁構造を採用しても良い。これによっても、硬化前に封止材料18aが漏れ出すのを避けることができ、半導体発光装置10をより容易に製造することができる。
【0094】
(変形例5)
次に、変形例5について、図9(a)〜(c)を参照して説明する。これらの図にそれぞれ示す通り、本実施形態の半導体発光装置10において、封止材料層18及び蛍光体樹脂層14の上面は、凸状、平坦及び凹状のいずれであっても良い。このような違いは、導入口17から導入される封止材料18aの量を制御することによって実現することができる。これにより、半導体発光素子11の個数、サイズ等が異なる場合にも、それぞれ最適な厚さ及び形状を実現することができる。
【0095】
尚、図9(c)は、凹部15aの底面に2つの半導体発光素子11が搭載される例を示す図でもある。この場合、2つの半導体発光素子11の間にも導入口17を配置することにより、蛍光体樹脂層14の厚さの均一性等を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示の半導体発光装置は、色ムラの抑制された光を発することができるので、例えばテレビ、照明機器、OA機器モニタ等に用いる半導体発光装置としても有用である。
【符号の説明】
【0097】
10 半導体発光装置
10a 半導体発光装置
10b 半導体発光装置
10c 半導体発光装置
11 半導体発光素子
12 通電ワイヤ
14 蛍光体樹脂層
14a 蛍光体
14b 樹脂
14c 蛍光体樹脂
15 基材
15a 凹部
17 導入口
17a 導入口
17b 注入口
17c 射出口
18 封止材料層
18a 封止材料
19 溝
21 蓄積部
22 蓋
31 封止金型
32 充填口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側に凹部を有する基材と、
前記凹部の底面に搭載された半導体発光素子とを備え、
前記基材に、前記凹部内と前記基材の外面とを連結する少なくとも1つの導入口が設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
請求項1の半導体発光装置において、
前記導入口は、前記凹部の前記底面と前記基材の下面とを連結することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2の半導体発光装置において、
前記凹部内に、前記半導体発光素子を覆うように形成された封止材料層と、前記封止材料層上に設けられた蛍光体樹脂層とを更に備えることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項4】
請求項3の半導体発光装置において、
前記封止材料層は、透光性樹脂からなることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項5】
請求項3の半導体発光装置において、
前記封止材料層は、気体からなることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項6】
請求項1又は2の半導体発光装置において、
前記凹部内に、前記半導体発光素子を覆うように形成された蛍光体樹脂層を更に備えることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項7】
請求項6の半導体発光装置において、
前記蛍光体樹脂層上に設けられ、透光性樹脂からなる封止材料層を更に備えることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1つの半導体発光装置において、
前記蛍光体樹脂層は、前記半導体発光素子による出射光の一部を吸収し、波長変換して出射する蛍光体を含むことを特徴とする半導体発光装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つの半導体発光装置において、
前記導入口は、複数設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つの半導体発光装置において、
前記凹部の前記底面における前記半導体発光素子の周囲に、溝が形成されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項11】
請求項10の半導体発光素子において、
前記溝は、前記導入口と接続されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つの半導体発光装置において、
前記凹部における前記底面の周縁部に、蓄積部が形成されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つの半導体発光装置において、
前記導入口内に、蓋が設けられていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1つの半導体発光装置において、
前記導入口は、前記基材の外側から前記凹部側に向かって狭くなる形状を有することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項15】
上面側に凹部を有し且つ前記凹部内と外面とを連結する少なくとも1つの導入口が設けられた基材を準備する工程(a)と、
前記凹部の前記底面に、半導体発光素子を搭載する工程(b)と、
前記工程(b)の後に、前記凹部内に蛍光体樹脂を導入する工程(c)と、
前記工程(b)の後に、前記凹部内に封止材料を導入する工程(d)とを備え、
前記蛍光体樹脂及び前記封止材料の少なくとも一方は、前記導入口を通じて前記凹部内に導入されることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15の半導体発光装置の製造方法において、
前記工程(d)は、前記工程(c)の後に行ない、
前記封止材料は、前記導入口を通じて前記凹部内に導入されることを特徴とする半導体発光装置の製造方法。
【請求項17】
請求項15の半導体発光装置の製造方法において、
前記工程(c)は、前記工程(d)の後に行ない、
前記蛍光体樹脂は、前記導入口を通じて前記凹部内に導入されると共に、前記半導体発光素子と前記封止材料との間に導入されて前記半導体発光素子を覆うことを特徴とする半導体発光装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−243978(P2012−243978A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113210(P2011−113210)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】