説明

半導体発光装置

【課題】半導体発光素子および/または樹脂層の発熱を、発光素子直下のみならず、主平面方向の離れた位置で放熱することのできる発光装置を提供する。
【解決手段】基板上に発光素子が搭載され、発光素子は樹脂で覆われている。基板上には、基板の主平面方向についての熱伝導率が、厚さ方向についての熱伝導率よりも大きい異方性熱伝導材が搭載されている。異方性熱伝導材の側面は樹脂と接触している。これにより、異方性熱伝導材は、樹脂からの熱を受け取って主平面方向に伝導し、発光素子および/または樹脂から離れた位置で基板に放熱することができる。異方性熱伝導材としては、例えばシート状のグラファイトを1層以上積層したもの用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置に関し、特に放熱特性に優れた半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、その温度が高くなるほど発光効率が下がり、寿命も短くなるため、放熱効率を高めることが求められている。例えば、特許文献1には、半導体発光素子の下面電極に接続されるリードに、絶縁性接着層を介して、放熱用の金属体を固着させることにより、半導体発光素子の熱を薄い絶縁性接着層を介して効率よく金属体に伝導する構造が開示されている。
【0003】
特許文献2には、LEDチップを金属含浸炭素材に直に接するように搭載したLEDパッケージが開示されている。金属含浸炭素材は、カーボン粉末あるいはカーボン繊維を固めて焼成し、CuやAl等の金属を含浸させたものであり、高い熱伝導性を示す。
【0004】
特許文献3には、面内方向の熱伝導性が厚さ方向の熱伝導性よりも大きい異方性熱伝導層を両面から等方性熱伝導層で挟んだものを基板とし、この基板上に半導体発光素子を搭載する構成が開示されている。異方性熱伝導層を用いることにより、面内方向に熱を拡散させることを意図している。異方性熱伝導層としてはグラファイトを用いている。
【0005】
特許文献4には、金属製ヒートシンク上にLEDチップを搭載し、ヒートシンクの下には、パターン配線、絶縁層、金属コアプリント基板、本体を順に配置した構成が開示されている。本体には、熱伝導性に異方性を有するグラファイトが用いられ、LEDチップの熱の面内方向への伝導量を増加させている。
【0006】
特許文献5には、LEDチップの上に色変換のための蛍光体層が配置された構成において、蛍光体層の内部に放熱用の金属メッシュや線材を配置したものが開示されている。これにより、金属メッシュ等で蛍光体層の熱を伝導し、蛍光体層を取り囲むベース(リング)に熱伝導させ、蛍光体の温度上昇による光量低下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−208061号公報
【特許文献2】特開2006−86391号公報
【特許文献3】特開2007‐1233480号公報
【特許文献4】特開2008‐287960号公報
【特許文献5】特開2005‐311170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
青色発光素子と蛍光体層とを用いた白色発光装置では、色変換を行う蛍光体自体が発熱し、温度が上昇する。蛍光体の温度上昇は温度消光を生じるため、大出力の発光装置では大きな問題となる。特許文献5のように蛍光体層内に金属メッシュ等を配置する構成では、金属メッシュ等の熱容量が小さく、金属メッシュ等からリングに伝導できる熱量が小さい。また、リングの直下には、電気回路が設けられた絶縁基板が配置されているため、リングに伝導した熱の放熱個所が限られる。さらに、リングは、発熱源である発光素子に近い位置で絶縁基板に搭載され、搭載位置から絶縁基板に放熱するが、発光素子の下部からの熱伝導によって絶縁基板の熱伝導がすでに飽和状態である場合も多く、この場合、リングから絶縁基板への放熱を十分に行えない。
【0009】
また、特許文献1〜4に記載の構成は、いずれも発光素子の下面側の基板等に熱伝導させる構成であるため、蛍光体層を備える大出力発光素子に採用した場合、蛍光体の発熱を一端発光素子に伝達し、発光素子から基板等に伝導する必要がある。このため、蛍光体層の発熱を効率よく放熱するのは難しい。
【0010】
また、大出力の発光素子は、発光素子と基板との熱膨張係数の差から実装接合が劣化するのを防ぐため、実装基板として発光素子と熱膨張係数の近い材料、例えばセラミック等の絶縁基板を用いることが望ましい。特許文献1〜4に記載のように高熱伝導性の金属、金属含浸炭素材、異方性熱伝導層のグラファイト等の上に発光素子を実装すると、発光素子との熱膨張係数の差から実装接合の劣化が生じる可能性がある。これを防止するために、発光素子と高熱伝導性基板との間に、発光素子との熱膨張性数の近い絶縁性基板を配置する構成も考えられるが、絶縁基板の熱伝導率がボトルネックとなって熱伝達が飽和し、全体の熱伝達を向上させることが難しくなる可能性がある。
【0011】
本発明の目的は、半導体発光素子および/または樹脂層の発熱を、発光素子直下のみならず、主平面方向の離れた位置で放熱することのできる発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明によれば以下のような発光装置が提供される。すなわち、基板と、基板上に搭載された発光素子と、発光素子を覆う樹脂とを有する発光装置であって、基板上には、基板の主平面方向についての熱伝導率が、厚さ方向についての熱伝導率よりも大きい異方性熱伝導材が、その側面を樹脂と接触するように搭載されている。異方性熱伝導材には、樹脂から離れた位置にある側面に、異方性熱伝導材の前記厚さ方向の熱伝導率よりも熱伝導率の大きい伝熱材が接続され、伝熱材の一端は、基板と接している。これにより、発光素子および/または樹脂の熱を異方性熱伝導材で主平面方向に伝導し、発光素子および樹脂から離れた位置で、伝熱材を介して基板に放熱することができる。
【0013】
異方性熱伝導材としては、例えば、シート状のグラファイトを1層以上積層したものを用いることができる。
【0014】
異方性熱伝導材は、例えば、開口を有する構成とする。この場合、発光素子および樹脂は、開口内に配置する。
【0015】
基板は、例えば、金属製基板と、金属製基板の一部に搭載された絶縁性基板を含み、発光素子および樹脂は、絶縁性基板上に搭載された構造とすることができる。この場合、異方性熱伝導材は、少なくとも一辺が、絶縁性基板の一辺よりも大きく、その端部が、金属製基板上に配置されている構成とし、伝熱材は、金属製基板に搭載された異方性熱伝導材の側面と接続され、金属製基板と接するようにする。これにより、異方性熱伝導材が主平面方向に伝導した熱を、金属製基板に放熱することができる。
【0016】
上述の異方性熱伝導材の開口内の側面には、1以上の突起が設けることが可能である。これにより、樹脂から異方性熱伝導材の熱伝達効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異方性熱伝導材を用い、発光素子を覆う樹脂の熱を主平面方向に伝達して放熱することができるため、発光素子直下の基板の熱飽和等の影響を受けない、離れた部分で放熱でき、放熱効率を向上させることができる。これにより、発光素子の発光効率を向上させることができる。また、樹脂に含有される蛍光体の温度消光を防止でき、蛍光の発光効率を向上させることができる。また、放熱効率が高いことから、発光素子の駆動電流を増加させることができる。これらの相乗効果により、大出力の発光装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態の発光装置の(a)上面図、(b)断面図。
【図2】図1(b)の一部拡大断面図。
【図3】第1の実施形態の発光装置の熱伝導を示す説明図。
【図4】第1の実施形態の発光装置にヒートシンクを取り付けた装置の熱伝導を示す説明図。
【図5】第2の実施形態の発光装置の断面図。
【図6】第2の実施形態の接着部材のみで異方性熱伝導材5を基板1に接続する発光装置の(a)断面図、(b)上面図。
【図7】第2の実施形態の接着部材のみで異方性熱伝導材5を基板1に接続する発光装置の上面図。
【図8】第3の実施形態の発光装置の一部の断面図。
【図9】第4の実施形態の発光装置の一部の断面図。
【図10】第5の実施形態の発光装置の一部の断面図。
【図11】第5の実施形態の発光装置の一部の断面図。
【図12】第6の実施形態の発光装置の一部の断面図。
【図13】(a)〜(d)第7の実施形態の各種の発光装置の異方性熱伝導材5の上面形状と熱伝導を示す説明図。
【図14】実施例の発光装置の製造方法において、異方性熱伝導材の加工を示す説明図。
【図15】比較例の発光装置の熱伝導を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態の半導体発光装置について図1(a),(b)を用いて説明する。図1(a)のように、半導体発光装置は、金属基板1の上に、絶縁性基板2を固定し、その上に半導体発光素子3を実装している。絶縁性基板2の表面には、配線が配置されている。半導体発光素子3の実装方法としては、公知の手法、例えば金バンプ等を用いる。半導体発光素子3の上面および側面は、蛍光体含有樹脂層4により被覆されている。蛍光体含有樹脂層4の外形は、直方体である。
【0021】
蛍光体含有樹脂層4の周囲には、蛍光体含有樹脂層4の熱を受け取って、蛍光体含有樹脂層4から離れた位置まで熱伝導するために、シート状の異方性熱伝導材5が配置されている。異方性熱伝導材5は、主平面方向の熱伝導率が、厚さ方向の熱伝導率よりも大きい特性を持つ。異方性熱伝導材5の中央には、蛍光体含有樹脂層4と同等の大きさの四角形の開口が設けられ、開口内に蛍光体含有樹脂層4が配置されている。
【0022】
蛍光体含有樹脂層4から異方性熱伝導材5への熱伝達効率が向上させるため、異方性熱伝導材5の開口内の側面は、蛍光体含有樹脂層4の側面と隙間なく接触していることが望ましい。異方性熱伝導材5の厚さは、蛍光体含有樹脂層4の高さと同等である場合、蛍光体含有樹脂層4との接触面積が大きくなるため熱伝導量が増加し、かつ、蛍光体含有樹脂層4の上面からの出射光の妨げとならず好ましい。
【0023】
異方性熱伝導材5は、主平面方向の熱伝導率が厚さ方向の熱伝導率よりも大きいものであればどのようなものであってもよい。例えば、グラファイトをシート状にしたものや、金属箔と金属箔よりも熱伝導率の低い材料(例えば樹脂)とを交互に層状に重ねたものを用いることができる。具体的には、例えば図2のように複数のシート状のグラファイト5aを重ね、接着層5bにより接着し、さらに最下面に絶縁層5cを接着層5bにより接着したものを用いることができる。
【0024】
異方性熱伝導材5の主平面方向のサイズは、少なくとも長辺が絶縁性基板2よりも大きい。これにより、絶縁性基板2よりも離れた位置まで、蛍光体含有樹脂層4の熱を伝導することができる。
【0025】
異方性熱伝導材5は、図1(b)のように、絶縁性基板2上面と基板1上面との段差に沿うように曲がっており、異方性熱伝導材5の長手方向の両端の下面は、基板1の上面と接している。この両端には、厚さ方向に異方性熱伝導材5を貫通する孔が設けられ、ねじ6が貫通している。基板1には、異方性熱伝導材5の孔に対応する位置に、めねじ1aが設けられている。ねじ6の先端は、基板1のめねじ1aと螺合することにより基板1に固定されている。
【0026】
ねじ6は、異方性熱伝導材5の厚さ方向の熱伝導率よりも熱伝導率の高い材料からなるものを用いることが望ましい。例えば、銅やアルミニウム製であることが望ましい。ねじ6は、異方性熱伝導材5と接触している外周面において異方性熱伝導材5が主平面方向に伝導した熱を受け取って軸方向に伝導し、基板1に放熱する。
【0027】
なお、絶縁性基板2は、金属基板1よりも熱膨張係数が半導体発光素子3に近く、熱伝導率のできるだけ高い材質のものを用いる。例えば、窒化アルミ(AlN)等のセラミックス製の基板2を用いる。熱膨張係数が半導体発光素子3に近い絶縁性基板2上に半導体発光素子3を実装することにより、半導体発光素子3と実装基板(絶縁性基板2)との熱膨張係数の違いから高温時に実装接合が劣化するのを避けることができる。また、絶縁性基板2を用いることにより、絶縁性基板2の上に回路を形成することができるため、発光素子を複数個実装する場合であっても、金属基板1上に絶縁層を介して回路を形成する必要がない。
【0028】
このような第1の実施形態の半導体発光装置を発光させる場合の放熱について説明する。
【0029】
半導体発光素子3に電流を供給すると、半導体発光素子3が所定波長の光を発光し、光は蛍光体含有樹脂層4に入射する。蛍光体含有樹脂層4の蛍光体は、半導体発光素子3からの光の一部を吸収して励起され、蛍光を発する。半導体発光素子3の発した光のうち蛍光体含有樹脂層4を透過した光は、蛍光と混合され、蛍光体含有樹脂層4の上面から、外部に出射される。例えば、半導体発光素子3として青色光を発するものを用い、蛍光体として青色光を励起光として黄橙色の蛍光を発する例えばYAG蛍光体を用いることにより、白色光を発する半導体発光装置を提供できる。
【0030】
このとき半導体発光素子3および蛍光体含有樹脂層4の蛍光体は、それぞれ発熱する。図3のように、熱の一部31は、半導体発光素子3および蛍光体含有樹脂層4が接している絶縁性基板2に熱伝導し、絶縁性基板2で主平面方向に拡散して、金属基板1に放熱される。図4のように、金属基板1にヒートシンク40が接続されている構造では、金属基板1に伝導した熱は、さらにヒートシンク40に伝導し、フィン41から空気中に放熱される。
【0031】
半導体発光素子3を大出力で発光させる場合には、半導体発光素子3および蛍光体含有樹脂層4の発熱量も大きくなる。このため、絶縁性基板2の熱伝導率が十分に大きくない場合は、絶縁性基板2において熱伝達が飽和してしまい、半導体発光素子3および蛍光体含有樹脂層4の熱を十分に放熱することができないことがある。また、絶縁性基板2の熱伝導率が十分に高く、金属基板1に多くの熱を伝達できても、金属基板1の熱伝達が飽和し、半導体発光素子3および蛍光体含有樹脂層4の熱を十分に放熱することができない。
【0032】
本実施形態の発光装置は、蛍光体含有樹脂層4の側面に接するように、異方性熱伝導材5が配置されているため、蛍光体含有樹脂層4の一部の熱32を異方性熱伝導材5が直接受け取って、主平面方向に熱伝導し、金属基板1が熱飽和してない任意の場所(ねじ6の位置)で、基板1に放熱することができる。
【0033】
これにより、半導体発光素子3および蛍光体含有樹脂層4の発熱量が大きく、絶縁性基板2や、絶縁性基板2の直下の金属基板1が熱飽和する場合であっても、絶縁性基板2を介することなく、金属基板1の放熱に十分余裕のある任意の位置まで蛍光体含有樹脂層4の熱を移動させて放熱することができるため、放熱効率を向上させることができる。
【0034】
このため、熱が原因となる半導体発光素子3の発光効率の低下を防止でき、かつ、蛍光体の温度上昇による消光を防止することができるため、大きな光量を得ることができる。また、放熱効率が高いため、半導体発光素子3に大電流を投入することができ、さらに大きな光量で発光させることができる。
【0035】
つぎに、本実施形態の発光装置の製造方法について説明する。
【0036】
本実施形態の発光装置において、蛍光体含有樹脂層4の熱を異方性熱伝導材5に効率よく受け渡すために、異方性熱伝導材5の開口内の側面に、蛍光体含有樹脂層4と隙間なく密着していることが望ましい。そこで、発光装置の製造方法としては、蛍光体含有樹脂4を形成する際に、異方性熱伝導材5の開口内に未硬化の蛍光体含有樹脂を充填し、硬化させる方法を好適に用いることができる。これにより、硬化後の蛍光体含有樹脂4の側面を異方性熱伝導材5の開口内の側面に密着させることができる。
【0037】
なお、本実施形態の発光装置の製造方法は、この方法に限定されるものではなく、印刷等により蛍光体含有樹脂4を所定形状に形成・硬化後に、その側面に異方性熱伝導材5を密着させて固定する方法を用いることも可能である。
【0038】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の発光装置について図5を用いて説明する。
【0039】
図5のように、本実施形態の発光装置は、第1の実施形態と異なり、ねじ6を用いることなく、異方性熱伝導材5の熱を基板1に伝導させる構成である。具体的には、基板1上に突起状部材51を備え、異方性熱伝導材5の端部の側面は、高熱伝導性の接着部材52により突起状部材51に固定されている。例えば、タングステン、カーボン、銅、アルミ、銀、金等の高熱伝導性金属フィラーの入った熱伝導ペーストを硬化させたものを接着部材52として用いることができる。接着部材52および突起状部材51は、少なくとも厚み方向の熱伝導率が異方性熱伝導材5の厚み方向の熱伝導率よりも大きく、特に、基板1と同等以上の熱伝導率であることが望ましい。例えば、突起状部材51は、基板1と同じ材料で形成する。
【0040】
これにより、蛍光体含有樹脂4の熱は、異方性熱伝導材5の側面から異方性熱伝導材5に伝導し、主平面方向に高効率で伝導される。伝導された熱は、異方性熱伝導材5の端部の側面から高熱伝導性の接着部材52から突起状部材51に伝導し、接着部材52および突起状部材51からその直下の基板1に伝導される。これにより、半導体発光素子3および蛍光体含有樹脂層4からの熱が絶縁性基板2を介して伝導している基板1の領域(絶縁性基板2の直下)から離れた、熱飽和の恐れのない、位置で基板1に放熱することができる。
【0041】
他の構成は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0042】
なお、本実施形態では基板1上に突起状部材51を搭載したが、ヒートシンク40に突起状部材51を直接接続する構成にすることも可能である。これにより、基板1の熱飽和の影響を受けることなく、異方性熱伝導材5の熱をヒートシンク40に直接放熱することができる。
【0043】
また、図6(a),(b)に示したように、突起状部材51を用いず、接着部材52のみで基板1と異方性熱伝導材5の側面とを接続することも可能である。この場合、図7のように、異方性熱伝導材5の短手方向の両端の側面の一部を接着部材52で接続する構成とすることも可能である。接着部材52を配置する位置は、基板1上に放熱したい所望の位置に定める。
【0044】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の発光装置について図8を用いて説明する。
【0045】
図8の発光装置は、異方性熱伝導材5の開口の側面をテーパー形状とし、開口径を上部ほど大きくしたものである。蛍光体含有樹脂4の形状も、開口形状に対応する形状である。これにより、第1の実施形態の垂直な開口側面の発光装置と比較して、異方性熱伝導材5の側面と蛍光体含有樹脂層4の側面との接触面積が大きくなるため、伝熱面積が増加し、放熱効率を向上させることが可能である。
【0046】
なお、図8では、半導体発光素子3と蛍光体含有樹脂4と異方性熱伝導材5の一部のみしか図示していないが、他の構成は、第1の実施形態または第2の実施形態の発光装置と同様に構成する。
【0047】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の発光装置について図9を用いて説明する。
【0048】
図9の発光装置の異方性熱伝導材5は、複数のシート状のグラファイト5aを重ね、接着層5bにより接着した複数層構造であり、シート状のグラファイト5aの開口径を1層ごとに交互に異なる大きさにしている。これにより、図9に示すように開口の側面に凸部15を設け、凸部15が蛍光体含有樹脂4に押し込まれた構成となる。よって、異方性熱伝導材5との接触面積が大きくなり、蛍光体含有樹脂4から異方性熱伝導材5への熱伝達を効率よく行うことができる。
【0049】
なお、図9では、半導体発光素子3と蛍光体含有樹脂4と異方性熱伝導材5の一部のみしか図示していないが、他の構成は、第1の実施形態または第2の実施形態の発光装置と同様に構成する。
【0050】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の発光装置について図10および図11を用いて説明する。
【0051】
図10、図11の発光装置は、蛍光体含有樹脂層4の蛍光体粒子を沈降させ、蛍光体含有樹脂層4の下部に蛍光体粒子が高密度で含有される構成としたものである。
【0052】
そこで、図10の発光装置では、沈降した蛍光体粒子の熱を効率よく異方性熱伝導材5に伝達するように、異方性熱伝導材5を下側の層5eと上側の層5dとに分け、下側の層5eは、開口の側面をテーパーとし、上側の層5dは、開口の側面を垂直としている。
【0053】
一方、図11の発光装置では、異方性熱伝導材5の開口の側面の下部に、第4の実施形態と同様に凸部15が設けられている。
【0054】
このように、異方性熱伝導材5の開口側面の下側部分で、蛍光体含有樹脂層4の熱を効率よく受け取ることができるように構成することにより、蛍光体粒子が沈降した蛍光体含有樹脂4の放熱効率を効果的に向上させることができる。
【0055】
なお、図10、図11では、半導体発光素子3と蛍光体含有樹脂4と異方性熱伝導材5の一部のみしか図示していないが、他の構成は、第1の実施形態または第2の実施形態の発光装置と同様に構成する。
【0056】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の発光装置について図12を用いて説明する。
【0057】
図12の発光装置は、異方性熱伝導材5の上面に、光反射層121を備えている。光反射層121としては例えば、セラミック、酸化チタンなどの白色粉末を樹脂材料中に添加し、シート状に加工した白色シートを用いることができる。この白色シートを異方性熱伝導材5の上に接着層等により接着する。また、白色粉末を添加した樹脂材料を異方性熱伝導材5の上に塗布して塗膜を形成し、光反射層121を形成することも可能である。
【0058】
このように光反射層121を備えることにより、半導体発光素子3から出射された光を、光反射層121で反射することができるため、異方性熱伝導材5の光反射率が低い場合にも、異方性熱伝導材5の吸収による光量低下を抑制できる。
【0059】
なお、図12では、半導体発光素子3と蛍光体含有樹脂4と異方性熱伝導材5の一部のみしか図示していないが、他の構成は、第1の実施形態または第2の実施形態の発光装置と同様に構成する。
【0060】
(第7の実施形態)
第1〜第6の実施形態では、上面形状が長方形の異方性熱伝導材5を用いたが、熱源である蛍光体含有樹脂層4の位置と、放熱させたい位置に応じて、異方性熱伝導材5の形状を図13(a)〜(d)のように任意の形状に設計可能である。
【0061】
例えば、図13(a)のように長方形の異方性熱伝導材5を直交させて交差させた形状にすることにより、蛍光体含有樹脂4の熱を主平面方向の4方向に伝導し、端部の側面から基板1に放熱することができる。
【0062】
図13(b)のように、異方性熱伝導材5を六角形状の2辺に帯状部材が一体に接続された形状にすることにより、蛍光体含有樹脂4の熱を、蛍光体含有樹脂層4の対角方向に伝導し、放熱することができる。
【0063】
図13(c)のように、異方性熱伝導材5を円形の一部に帯状部材が一体に接続された形状にすることにより、蛍光体含有樹脂4の熱を一方向に伝導し、放熱することができる。
【0064】
図13(d)のように、異方性熱伝導材5の形状を二股に分かれた形状にすることにより、基板1上の障害物131を避けて、蛍光体含有樹脂4の熱を一方向に伝導し、障害物131よりも遠い位置に放熱することができる。
【0065】
上述してきた各実施形態では、金属製基板1上に絶縁性基板2を配置する構成であったが、金属製基板1上に絶縁層と配線層とを配置し、その上に半導体発光素子3を実装する構成にすることも可能である。この場合も、異方性熱伝導材5を配置することにより、半導体発光素子3および蛍光体含有樹脂層4の熱を、発光素子3の直下の基板のみならず、直下から離れた部分からも放熱できるため、複数個所で効率よく基板1に放熱することができる。
【0066】
上述してきた各実施形態では、蛍光体含有樹脂層の側面から異方性熱伝導材が熱を受け取る構成であったが、これに限定されているものではなく、蛍光体が含有されていない、半導体発光素子の封止樹脂や、反射リング等他の構成部材に異方性熱伝導材の側面を密着させ、これらの熱を伝導し所望位置で放熱させる発光装置の構成にすることも可能である。
【0067】
本発明の発光装置は、半導体発光素子を用いた照明装置や、車載用ヘッドランプ等に好適であり、特に、大光量の出力が望まれる発光装置に好適である。
【実施例】
【0068】
(実施例)
実施例として図1(a),(b)の発光装置を製造した。
【0069】
金属基板1として、25m角の銅製基板を用意した。金属製基板1には、後に形成する異方性熱伝導材5の貫通孔143と対応する位置にめねじ1aを形成した。
【0070】
絶縁性基板2として、予め配線パターンの形成された5mm角の窒化アルミ基板を用意し、金属基板1の上に固定した。絶縁性基板2の上には、1mm角の青色半導体発光素子3を金バンプを用いて実装した。
【0071】
20mm×4mm、厚さ40μmのシート状のグラファイト5a((株)カネカ製、商品名グラファイトシート)と、アクリル系接着剤で形成した厚さ10μmの接着層5bとを3層ずつ、交互に積層することにより接着した。最下層に厚さ50μmのポリイミドシートを絶縁層5cとして接着した。絶縁層5cの下面には、さらに厚さ10μmの接着層を形成した。1枚のシート状のグラファイト5aの熱伝導率は、厚み方向が4〜6w/mk、平面方向が1200w/mkであった。
【0072】
グラファイト5aの積層体の中央に、図14のように切断工具141を用いて1.1mm角の開口を設けた。また、長辺方向の両端部には、ねじ6を挿入するための貫通孔143をポンチやビク型等により形成した。貫通孔143の径は、ねじ6のねじ径より小さくし、ねじ6の壁面がグラファイトシートと密着しやすくした。
【0073】
これにより、開口142と貫通孔143が形成されたグラファイト5aの積層体である異方性熱伝導材5を作製した。
【0074】
次に、絶縁性基板2の半導体発光素子3が開口142内に非接触で挿入されるように、異方性熱伝導材5を絶縁性基板2に位置合わせして被せ、絶縁層5cの下面の接着により絶縁性基板2と接着した。さらに、基板1のめねじ1aと貫通孔143を位置合わせして、異方性熱伝導材5の端部を基板1と接着した。
【0075】
シリコーン樹脂にYAG蛍光体を分散し、半導体発光素子3が挿入されている異方性熱伝導材5の開口142に印刷法等により充填した。その後150℃で4時間加熱し、シリコーン樹脂を硬化させた。これにより、側面がグラファイトシート5aに密着した蛍光体含有樹脂4が形成された。
【0076】
最後にねじ6を貫通孔143に挿入し、基板1のめねじ1aと螺合させた。以上により、図1(a),(b)の発光装置を製造した。
【0077】
比較例として、図15の発光装置を製造した。この発光装置は基板1、絶縁性基板2、半導体発光素子3の構成は、上記実施例と同様であるが、異方性熱伝導材5の代わりにリング151を絶縁性基板2上に搭載し、蛍光体含有樹脂4をリング151内に充填することにより形成したものである。
【0078】
実施例の発光装置と比較例の発光装置を点灯したところ、比較例の発光装置は、半導体発光素子3と蛍光体含有樹脂層4の下部の絶縁性基板2を介して基板1に放熱したが、基板1の熱伝導率が398w/mkと大きくても、絶縁性基板2の熱伝導率が170w/mk程度であるため、絶縁性基板2がネックとなって熱拡散を十分に行うことができなかった。
【0079】
実施例の発光装置は、半導体発光素子3と蛍光体含有樹脂層4の下部の絶縁性基板2を介しての基板1への放熱のみならず、異方性熱伝導材5の主平面方向の熱伝導率が1200w/mkと大きいため、主平面方向に熱を移動させ、ねじ6の位置で基板1に放熱することができた。よって、半導体発光素子3の直下の絶縁性基板2および基板1の熱飽和の影響を受けることなく、ねじ6の直下の基板1に放熱することができた。これにより、半導体発光素子3および蛍光体の温度上昇を防ぐことができ、発光効率を高め、蛍光体の温度消光を防止できたため、さらに大電流を投入することができ、大きな出力が得られた。
【符号の説明】
【0080】
1…金属製基板、2…絶縁性基板、3…半導体発光素子、4…蛍光体含有樹脂、5…異方性熱伝導材、5a…シート状のグラファイト、5b…接着層、5d…異方性熱伝導材の上側の層、5e…異方性熱伝導材の下側の層、6…ねじ、15…凸部、51…突起状部材、52…接着部材、121…光反射層、131…障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、基板上に搭載された半導体発光素子と、前記半導体発光素子を覆う樹脂とを有し、
前記基板上には、前記基板の主平面方向についての熱伝導率が、厚さ方向についての熱伝導率よりも大きい異方性熱伝導材が、その側面を前記樹脂と接触するように搭載され、
前記異方性熱伝導材には、前記樹脂から離れた位置にある側面に、当該異方性熱伝導材の前記厚さ方向の熱伝導率よりも熱伝導率の大きい伝熱材が接続され、当該伝熱材の一端は、前記基板と接していることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体発光装置において、前記異方性熱伝導材は、シート状のグラファイトを1層以上積層したものであることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体発光装置において、前記異方性熱伝導材は、開口を有し、前記半導体発光素子および樹脂は、前記開口内に配置されていることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導体発光装置において、前記基板は、金属製基板と、当該金属製基板の一部に搭載された絶縁性基板とを含み、
前記半導体発光素子および樹脂は、前記絶縁性基板上に搭載され、
前記異方性熱伝導材は、少なくとも一辺が、前記絶縁性基板の一辺よりも大きく、その端部が、前記金属製基板上に配置され、
前記伝熱材は、前記金属製基板に搭載された前記異方性熱伝導材の側面と接続され、前記金属製基板と接していることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項5】
請求項3に記載の半導体発光装置において、前記異方性熱伝導材の前記開口内の側面には、1以上の突起が設けられていることを特徴とする半導体発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−119459(P2011−119459A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275555(P2009−275555)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】